LRTKレフィクシア株式会社

法面の吹付面温度差で浮き疑いを絞る赤外線5活用

法面のモルタル吹付面やコンクリート吹付面では、表面だけを見ると健全に見えても、背面に空洞や剥離、浮きが進んでいる場合があります。目視でひび割れやはらみが確認できれば判断しやすい一方、初期段階の浮きは見逃されやすく、打音調査も広い法面全体を短時間で確認するには手間がかかります。そこで役立つのが、吹付面の温度差を手がかりに異常の疑い箇所を絞り込む赤外線調査です。

赤外線調査は、温度の高低だけで直ちに浮きを断定する方法ではありません。日射、風、雨、湧水、植生、汚れ、材料の違いなど、多くの条件が表面温度に影響します。そのため、法面で赤外線を活用する際は、温度差を「異常の証拠」としてではなく、「重点確認すべき候補を抽出する情報」として扱うことが重要です。広い吹付面の中から疑わしい範囲を絞り、近接目視や打音確認、過去の補修履歴と組み合わせることで、点検の精度と効率を高めやすくなります。

法面の吹付面で赤外線調査が有効な理由

法面の吹付面に発生する浮きは、表面材と背面地山、あるいは既設吹付材と補修材の間に密着不良や空隙が生じることで進行します。浮きが大きくなると、ひび割れ、段差、はらみ、剥落、落下片の発生につながり、道路、歩道、民地、施設、作業員に対する危険要因になります。特に老朽化した吹付法面では、表面の風化、凍結融解、雨水浸透、背面水圧、地山の緩みなどが複合して、局所的な剥離が進むことがあります。

従来の確認方法としては、目視点検、近接確認、打音調査、クラックスケールによるひび割れ幅確認、浮き部のマーキングなどがあります。これらは重要な方法ですが、広い法面全体をすべて近接で確認するには時間と足場、交通規制、安全対策が必要です。高所や急勾配の法面では、点検員が近づける範囲にも制約があります。遠望目視だけでは、表面色の変化や細いひび割れを拾えても、背面の空洞や初期の浮きまでは判断しにくいのが実情です。

赤外線調査は、この弱点を補うための一次スクリーニングとして活用できます。吹付面の背面に浮きや空隙があると、健全部と比べて熱の伝わり方や冷め方が変わる場合があります。日射で温められる時間帯や、日射後に冷えていく時間帯では、健全部と浮き疑い部の表面温度に差が現れることがあります。この温度差を面的に把握できれば、法面全体の中で重点的に近接確認すべき場所を絞り込みやすくなります。

ただし、赤外線画像に温度差が出たからといって、その部分が必ず浮いているとは限りません。法面は屋外構造物であり、日射の当たり方、雲の通過、風の強さ、表面の湿り、湧水、苔、土砂付着、補修跡、吹付厚の違い、植生の影、排水施設の周辺条件などが複雑に影響します。したがって、赤外線調査は単独で結論を出すものではなく、異常候補を見つけるための広域把握の手段として位置づけることが大切です。

実務での狙いは、「浮きの有無を一枚の画像で断定すること」ではありません。むしろ、広い法面のどこを先に確認するべきか、どの範囲を打音調査に回すべきか、前回点検から温度異常範囲が拡大していないか、補修後の境界部に不自然な変化が出ていないかを判断することにあります。赤外線をうまく使えば、点検の見落としを減らし、危険度の高い箇所に人員と時間を集中させることができます。

活用1 温度差が出やすい時間帯を選んで撮影する

赤外線調査の精度を左右する大きな要素は、撮影する時間帯です。吹付面の浮き疑いは、健全部との熱の伝わり方の違いとして現れるため、温度変化がほとんどない時間帯では差が出にくくなります。曇天が長く続いた直後や、雨で表面が濡れている状態、風が強く表面温度が均一化しやすい状態では、画像上の差が小さくなったり、別の要因による温度むらが強く出たりします。

一般に、法面の吹付面では、日射で表面が温められていく時間帯、または日射が弱まり表面が冷えていく時間帯に温度差が出やすくなります。浮きや空隙がある部分は、背面との熱のやり取りが健全部と異なるため、周囲より温まり方や冷め方が変わることがあります。たとえば、日射を受けている時間帯に浮き疑い部が周囲より高温に見える場合もあれば、冷却過程で周囲より温度が残るように見える場合もあります。どちらの傾向になるかは、材料、厚さ、空隙の状態、含水、方位、季節条件によって変わります。

そのため、現場では単に「午前がよい」「午後がよい」と決め打ちするのではなく、対象法面の日射条件を事前に確認することが重要です。東向き法面であれば朝から午前に温まりやすく、西向き法面であれば午後に日射の影響を受けやすくなります。北向き法面や樹木の影が多い法面では、そもそも温度差が出にくいこともあります。南向きで日射が強い法面では温度差が出やすい一方、影の境界や照り返しによるむらも拾いやすくなります。

撮影計画では、法面の向き、撮影可能な位置、日射の入り方、前日の降雨、当日の風、表面の乾き具合を確認しておくと、温度画像の解釈が安定します。特に雨上がり直後は、濡れた部分が蒸発によって冷えたり、湧水部と単なる湿潤部の区別がつきにくくなったりします。表面が濡れていると赤外線画像に強いむらが出やすいため、浮き疑いの抽出には慎重さが必要です。

同じ法面を複数回撮影できる場合は、時間帯を変えて比較する方法も有効です。朝、昼、夕方の画像を比較すると、温度異常が一時的な日射影なのか、同じ位置に繰り返し現れる傾向なのかを見分けやすくなります。浮き疑いとして注目すべきなのは、条件が変わっても同じ範囲に不自然な温度差が繰り返し出る箇所です。逆に、雲の影や樹木の影と連動して移動する温度差は、構造的な異常ではなく環境影響である可能性が高くなります。

撮影時には、可視画像と赤外線画像の対応関係を残すことも欠かせません。赤外線画像だけでは、後から見たときに法面のどの位置を撮ったのか分かりにくくなります。排水溝、法枠、伸縮目地、既設補修跡、樹木、集水桝、管理用階段など、位置の目印になるものを含めて撮影しておくと、後の照合が容易になります。温度差を発見するだけでなく、現地で確認できる位置情報として残すことが、実務では大きな価値になります。

活用2 健全部との相対比較で浮き疑いを読む

赤外線調査でよくある誤解は、ある温度以上なら異常、ある温度以下なら健全といった絶対値で判断しようとすることです。法面の吹付面は屋外にあり、季節、時刻、方位、天候、材料色、表面の粗さによって温度が大きく変わります。そのため、温度の絶対値だけで浮き疑いを判断するのは危険です。実務では、同じ条件を受けている周辺の健全部と比べて、局所的に温度差があるかを見る相対比較が基本になります。

まず重要なのは、比較対象となる健全部を設定することです。ひび割れが少なく、補修跡や湧水、苔、土砂付着が目立たず、日射条件が近い範囲を健全部の目安として選びます。その健全部と比べて、円形、楕円形、帯状、またはひび割れに沿った不自然な温度差が出ている箇所を確認します。浮き疑い部は、単なる表面汚れと異なり、一定のまとまりを持った温度分布として現れることがあります。

温度差を見る際は、周囲との境界の出方にも注目します。自然な日射むらや材料色の違いによる温度変化は、広い範囲でなだらかに変わることが多い一方、浮きや剥離に関連する温度差は、比較的まとまった範囲に局所的に現れる場合があります。もちろん、境界が明瞭であれば必ず浮きというわけではありませんが、同じ吹付面の中で急に温度分布が変わる部分は、近接確認の候補として扱う価値があります。

ひび割れ周辺の温度差も重要です。吹付面にひび割れがある場合、その周辺から雨水が浸入し、背面の密着低下や空隙の拡大につながることがあります。赤外線画像でひび割れに沿って温度差が出ている場合は、単なる表面クラックではなく、背面に影響が及んでいる可能性を考える必要があります。特に、ひび割れの交差部、水平ひび割れ、法肩からの水みちとつながるひび割れ、過去の補修境界に沿ったひび割れは、重点的に見たい箇所です。

補修跡の周辺では、健全部との比較がやや難しくなります。補修材の種類や厚さ、施工時期、表面色が異なると、熱の吸収や放熱の傾向も変わるためです。補修跡そのものが周囲と違う温度に見える場合、それだけで異常とは判断できません。ただし、補修範囲の端部だけに帯状の温度差が出ている、補修跡の一部だけが周囲と異なる反応をしている、過去の剥落箇所周辺に温度異常が集中しているといった場合は、再劣化や端部からの浮きの可能性を考えるべきです。

相対比較を行う際には、画像の表示設定にも注意が必要です。赤外線画像は、表示する温度範囲を変えるだけで、異常が強く見えたり弱く見えたりします。現場で見た印象だけに頼ると、実際より危険に見積もったり、逆に見落としたりする可能性があります。記録として残す場合は、温度範囲、撮影時刻、天候、法面方位、撮影位置、対象範囲を合わせて整理し、後から同じ条件で比較できるようにしておくことが望ましいです。

また、温度差の大きさだけでなく、面積も見ておく必要があります。小さな温度差でも、広い範囲に連続していれば、吹付面全体の密着低下や背面水の影響を疑う材料になります。逆に、温度差が大きくても点状で、表面の汚れや小さな欠けに一致するだけであれば、緊急性は低い可能性があります。温度差、形状、連続性、周辺変状の有無を合わせて読むことで、浮き疑いの絞り込み精度が高まります。

活用3 日射・湧水・汚れによる誤判定を避ける

赤外線調査で最も注意したいのは、浮きではない温度差を浮き疑いとして拾いすぎることです。法面の吹付面には、温度差を生む要因が多く存在します。日射の当たり方、樹木や電柱の影、雲の通過、表面の濡れ、湧水、苔、草、土砂、白華、錆汁、補修材の違い、吹付厚の違いなどが、赤外線画像に温度むらとして現れます。これらを整理せずに温度画像だけを見ると、調査結果が過大評価になり、不要な近接確認や補修判断につながります。

日射による影響は特に大きいです。法面に部分的な影がかかると、その部分だけ表面温度が低くなります。樹木の枝葉によるまだらな影、法肩の構造物による影、隣接斜面の影、管理用階段や防護柵の影は、赤外線画像上では一見すると異常範囲のように見えることがあります。影による温度差は、可視画像と照合すると形状が分かりやすい場合が多いため、赤外線画像と同時に通常画像を必ず残すことが大切です。

湧水や湿潤も誤判定の大きな要因です。吹付面の水抜き孔周辺、ひび割れ沿い、法肩からの浸透水が出る位置、排水施設の周辺では、表面が濡れて温度が低く見えることがあります。水分が蒸発するときに表面温度が下がるため、湿潤範囲は周囲と異なる温度分布になります。ただし、湧水そのものは法面管理上の重要な変状です。浮きではないから無視してよいという意味ではありません。むしろ、湧水や湿潤が継続する箇所は、背面の水圧上昇や吹付材の劣化につながる可能性があるため、別の観点で重点確認すべきです。

汚れや付着物も温度に影響します。黒ずんだ汚れは日射を吸収しやすく、周囲より高温に見えることがあります。苔や藻が付着している部分は、水分を含みやすく、周囲より低温に見えることもあります。土砂が薄く乗っている部分、落葉が付着している部分、鳥のふんや錆汁の跡なども、表面の熱特性を変えます。赤外線画像で異常に見えた範囲が、可視画像では単なる汚れや付着物に一致する場合は、浮き疑いとしての優先度を下げる判断が必要です。

補修跡や材料の違いにも注意します。吹付面は一度に施工されたように見えても、過去に部分補修されている場合があります。補修時期が違えば、表面の色、粗さ、厚さ、含水状態が変わり、温度反応も異なります。補修跡全体が周囲と違う温度に見えるだけであれば、材料差の可能性があります。一方で、補修跡の端部、既設部との取り合い、補修材の中央部に不自然な局所温度差がある場合は、密着不良や再劣化の疑いとして確認する価値があります。

風の影響も軽視できません。強い風が吹くと、表面温度が急速に均一化し、浮き疑いによる温度差が見えにくくなることがあります。また、風向きによって法面の一部だけが冷やされると、構造的な異常とは関係のない温度むらが出ることもあります。調査記録には、晴れや曇りだけでなく、風の強さや体感的な状況も書き添えておくと、後から画像を読み返すときに役立ちます。

誤判定を避けるには、赤外線画像を単独で見ないことが基本です。可視画像、現地メモ、ひび割れ位置、湧水位置、補修履歴、法面の方位、撮影時刻を重ねて判断します。温度差が出た箇所について、「影ではないか」「濡れではないか」「汚れではないか」「材料違いではないか」「撮影角度の影響ではないか」を一つずつ確認するだけで、浮き疑いとして残す範囲をかなり絞れます。赤外線調査の価値は、異常をたくさん拾うことではなく、確認すべき異常候補を実務上使える精度まで絞り込むことにあります。

活用4 目視・打音・過去履歴と重ねて範囲を絞る

赤外線調査で温度差を確認した後は、必ず他の点検情報と重ねて判断します。法面の浮き疑いを絞るうえで、目視、打音、過去履歴は欠かせません。赤外線で異常候補を抽出し、目視で表面変状を確認し、必要に応じて打音で浮きの有無を確かめる流れにすると、広い法面でも調査の優先順位を組みやすくなります。

目視確認では、赤外線画像で温度差が出た範囲に、ひび割れ、はらみ、段差、剥落跡、漏水跡、白華、錆汁、植生の侵入、吹付材の風化、表面の浮き上がり感がないかを確認します。温度異常とひび割れが重なる場合、背面に水が回っている可能性や、吹付材が地山から離れ始めている可能性を考えます。温度異常が水抜き孔の周辺に集中している場合は、排水機能の低下や背面水の流れも確認対象になります。

打音確認は、赤外線で抽出した範囲の信頼性を高めるために有効です。吹付面を軽く打診し、健全部と異なる濁った音、空洞音、響きの違いがあるかを確認します。赤外線で温度差が出ていて、かつ打音でも異常が確認できる場合は、浮き疑いの優先度が高まります。逆に、赤外線では温度差があるものの、打音や目視で異常が見られず、可視画像上で汚れや影に一致する場合は、経過観察や再撮影の対象として扱う判断もあります。

過去履歴との照合も重要です。過去に剥落があった範囲、補修した範囲、ひび割れ注入を行った範囲、湧水対策を行った範囲、点検で要注意とされた範囲は、再劣化が起こりやすい場所です。赤外線画像でこれらの範囲と重なる温度差が出ていれば、単発の温度むらではなく、履歴と整合する変状として扱えます。特に補修境界の端部は、水の侵入や材料のなじみの違いによって劣化が再開しやすいため、赤外線調査で注目すべき場所です。

また、法面全体の排水系統と重ねると、温度差の意味が読みやすくなります。法肩排水、縦排水、横排水、小段排水、集水桝、水抜き孔の位置を確認し、温度異常が水の流れと関係していないかを見ます。たとえば、法肩からの流入水が集まりやすい位置に温度異常があり、ひび割れや湿潤も確認できる場合は、背面水の影響を疑う根拠になります。吹付面の浮きは、単なる材料劣化だけでなく、水の侵入や排水不良と結びつくことが多いため、排水との関係を外して判断しないことが大切です。

赤外線、目視、打音、履歴を重ねる際は、確認結果を同じ図面や写真上に整理すると実務で使いやすくなります。温度差が出た範囲、ひび割れ位置、打音異常範囲、湧水位置、補修跡、落石や剥落片の確認位置を一元化すれば、補修設計や関係者説明にもつなげやすくなります。現場で撮った画像が多くても、位置が曖昧なままだと判断材料として弱くなります。どの法面の、どの段の、どの排水施設の近くなのかが分かる記録にすることが重要です。

赤外線調査の結果を現地で確認する際は、安全にも注意が必要です。浮き疑いがある吹付面の直下に長時間立ち入る、剥落の可能性がある範囲を無防備に打診する、急斜面で無理に近接する、といった行動は避けるべきです。赤外線は離れた位置から候補を拾える点に利点があるため、その利点を生かして、危険箇所への接近を最小限にしながら確認計画を立てます。近接が必要な場合は、交通規制、立入禁止、親綱、足場、昇降設備、監視員配置など、現場条件に応じた安全対策を先に整えます。

活用5 補修優先度と点検記録に落とし込む

赤外線調査で浮き疑いを絞った後は、結果を補修優先度に落とし込むことが重要です。温度差がある箇所を見つけるだけでは、管理業務としては不十分です。その範囲がどれほど危険なのか、どの順番で近接確認するのか、応急措置が必要なのか、次回点検で追跡すればよいのかを判断できる形に整理する必要があります。

優先度を考える際は、温度差の有無だけでなく、位置条件を重視します。道路や歩道、駐車場、民家、鉄道、施設、作業ヤードなど、人や車両が通る場所の上部にある浮き疑いは、同じ規模でも優先度が高くなります。法面の高い位置にある浮き疑いは、剥落した場合の落下距離が大きく、二次被害につながりやすいため注意が必要です。小段や防護施設で受けられる位置なのか、直接落下する位置なのかによっても判断は変わります。

変状の組み合わせも優先度に大きく影響します。赤外線で温度差があり、ひび割れがあり、打音でも異常があり、さらに湧水や湿潤が確認される場合は、単独の温度異常より優先度を高く見ます。温度差の範囲が広がっている、前回より温度異常が明瞭になっている、補修跡周辺で再び異常が出ている、といった経時変化も重要です。赤外線調査は一回限りの判断だけでなく、過去画像と比較することで変状の進行を捉える使い方に向いています。

記録では、温度異常の範囲をできるだけ具体的に残します。単に「法面に温度差あり」と書くのではなく、法面番号、測点、段数、排水施設からの位置、撮影方向、撮影時刻、天候、表面状態、温度差の傾向、可視画像での特徴、近接確認の結果を整理します。後から別の担当者が見ても、同じ場所を再確認できることが大切です。点検記録は、担当者の記憶に頼らず、次回点検や補修判断に引き継げる形にする必要があります。

補修優先度の整理では、緊急対応、早期詳細調査、経過観察、通常管理といった区分に分けると運用しやすくなります。緊急対応に近いのは、剥落片がすでに確認されている、浮き範囲が広い、打音異常が明瞭、通行部直上に位置する、降雨後に水が絡む、ひび割れが進行しているといった場合です。早期詳細調査に回すのは、赤外線で明瞭な温度差があり、目視でも何らかの変状があるものの、ただちに剥落するかは判断しきれない場合です。経過観察とする場合でも、次回の撮影条件や確認時期を決めておくことが重要です。

応急措置が必要な場合は、浮き疑い範囲への立入防止、通行規制、防護ネットや仮設防護、排水の切り回し、表面水の流入抑制、剥落片の除去などを検討します。ただし、浮き範囲を無理に叩き落とす、安易に表面だけを補修する、原因となる水の処理をせずに塞ぐといった対応は、かえって変状を見えにくくしたり、背面水を閉じ込めたりすることがあります。赤外線で見つけた異常は、補修の入り口であり、原因確認と安全確認を踏まえて対応を決めるべきです。

記録の継続性を高めるには、同じ位置、同じ角度、近い時間帯で再撮影できるようにしておくと効果的です。法面の全景写真に撮影位置を示し、赤外線画像と可視画像をセットで保存します。前回と同じ条件で比較できれば、温度異常範囲の拡大や縮小、ひび割れとの関係、補修後の変化を把握しやすくなります。特に老朽化した吹付法面では、一度の点検で終わらせず、定点比較によって変状の進行を追う考え方が重要です。

赤外線調査を現場運用に定着させる注意点

赤外線調査を法面点検に取り入れる際は、機器を用意するだけでなく、運用ルールを決めることが大切です。誰が撮っても同じように判断できるように、撮影条件、記録項目、確認手順、判定の流れを整理しておく必要があります。担当者によって撮影時間や距離、画像の残し方がばらばらになると、せっかくの温度画像も比較しにくくなります。

まず、調査目的を明確にします。浮き疑いの一次抽出なのか、補修後の確認なのか、定期点検の補助なのか、災害後の緊急確認なのかによって、必要な撮影範囲や確認レベルが変わります。災害後であれば、剥落や崩落の危険がある範囲を遠方から安全に把握し、立入可否や応急措置の判断につなげることが優先されます。定期点検であれば、同じ法面を継続的に比較し、変化を拾うことが目的になります。

次に、赤外線画像の見方を共有します。温度差があるから異常、温度差がないから健全という単純な判断ではなく、周辺条件との相対比較、可視画像との照合、目視変状との一致、打音結果との整合を確認する流れを決めます。現場で判断に迷った場合は、異常候補として残し、後で複数人で確認できるようにしておくことが望ましいです。特に温度画像は見た目の印象に引っ張られやすいため、判断基準を文章で残すことが大切です。

撮影距離と角度にも注意が必要です。法面を斜めから撮影すると、遠い部分の解像度が低くなり、細かい温度差が分かりにくくなります。できるだけ対象面に正対する位置から撮影し、広範囲の全景と、異常候補の拡大画像を組み合わせて残します。急勾配や高所で正対が難しい場合でも、撮影位置を記録しておけば、画像の見え方を解釈しやすくなります。

赤外線調査は、万能な非破壊検査ではありません。浮きがあっても温度差が出にくい条件がありますし、浮きがなくても温度差が出る条件があります。厚い吹付材、日射が弱い法面、湿潤が強い法面、表面状態が複雑な法面では、判定が難しくなります。したがって、結果を過信せず、疑わしい範囲は近接確認や打音確認につなげる前提で使うべきです。

一方で、赤外線調査には大きな利点があります。広い法面を面的に把握し、近接点検の対象を絞り込めること、点検員が危険箇所へ不用意に近づく前に状況を見られること、温度分布という客観的な記録を残せることです。特に、法面管理では「どこから確認するか」を決めることが現場の効率と安全に直結します。赤外線は、その優先順位づけを支援する道具として有効です。

また、若手担当者や発注者への説明にも役立ちます。目視写真だけでは伝わりにくい浮き疑い範囲を、温度分布として示すことで、なぜその場所を重点確認するのかを説明しやすくなります。ただし、説明時には「温度差があるため浮きの可能性がある」「近接確認で最終判断する」という表現にとどめ、赤外線画像だけで断定しない姿勢を保つことが信頼性につながります。

現場運用としては、定期点検、出水後点検、地震後点検、補修後確認の中に、赤外線による広域確認を組み込む方法が考えられます。特に、過去に剥落や浮きが確認された法面、交通量の多い道路沿いの法面、背面水の影響を受けやすい法面、補修を繰り返している法面では、赤外線による記録を蓄積することで、変状の進行管理がしやすくなります。

まとめ

法面の吹付面における浮きは、表面から判断しにくい一方で、進行すると剥落や落下物につながる重要な変状です。赤外線調査は、吹付面の温度差を手がかりに、広い法面の中から浮き疑い箇所を絞り込む有効な方法です。ただし、温度差は日射、影、風、雨、湧水、汚れ、補修跡、材料差などにも左右されるため、赤外線画像だけで浮きを断定することは避けるべきです。

実務で大切なのは、温度差が出やすい時間帯を選び、健全部との相対比較で異常候補を拾い、日射や湿潤などの誤判定要因を除外し、目視や打音、過去履歴と重ねて確認することです。そのうえで、通行部への影響、剥落時の危険性、ひび割れや湧水との組み合わせ、前回からの変化を踏まえて補修優先度に落とし込みます。赤外線調査は、点検作業を置き換えるものではなく、点検の順番と重点範囲を決めるための実務的な支援手段です。

法面管理では、見落としを減らすことと、危険な場所へ不用意に近づかないことの両方が求められます。赤外線による面的な把握を取り入れれば、近接確認や打音調査の対象を絞りやすくなり、限られた時間の中でも優先度の高い変状に集中できます。さらに、同じ位置から継続的に記録すれば、浮き疑い範囲の変化や補修後の状態も追跡しやすくなります。

これからの法面点検では、現地で得た温度画像、可視画像、位置情報、点検メモを一体で残し、次回の判断に使える形にすることがますます重要になります。吹付面の温度差をただ眺めるのではなく、浮き疑いを絞り、確認順を決め、補修判断につなげる記録として活用することが、現場の安全性と管理精度を高めます。こうした法面の現地確認や記録整理を効率化したい場合は、位置情報付き写真、点検メモ、図面情報を一体で管理できる現場記録ツールの活用を検討するとよいです。

現場を3Dで残して、あとから測る。
実際の画面と動画で使い方を確認できます。

LRTK Phoneの使い方・実例を見る
資料請求導入相談
現場をスマホで3DスキャンLRTK Phone実例を見る