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法面工事で樹木は残せる?伐採前に確認する4条件

法面工事で樹木を残せるかは現地条件で判断する

法面工事を計画している場所に樹木があると、「すべて伐採しなければ工事できないのか」「できれば既存の木を残したい」と悩むことがあります。住宅地に近い斜面では目隠しや景観を維持したい場合があり、道路沿いや公園、事業所の敷地では既存の緑をできるだけ残したいという要望が出ることもあります。

結論からいえば、法面工事を行うからといって、斜面上の樹木を必ずすべて伐採するとは限りません。ただし、樹木を残せるかどうかは、見た目や所有者の希望だけでは判断できません。法面の地質や勾配、樹木の位置、根系の状態、施工する工法、排水計画、工事用機械の配置、完成後の維持管理などを総合的に確認する必要があります。

とくに注意したいのは、「根が土を押さえているから木は残したほうがよい」という単純な考え方です。樹木の根が表層土の保持や侵食抑制に寄与する場合はありますが、根が存在していれば斜面全体が安全になるわけではありません。斜面の安定には、土質や地質、地下水、湧水、地形、勾配など多くの条件が関係します。

反対に、「法面工事では樹木が邪魔になるから全部切ったほうがよい」と決めることも適切とは限りません。樹木や下草を一度に除去すると地表が露出し、施工途中の降雨によって表面侵食が生じやすくなる場合があります。伐採する場合であっても、その後の法面整形、排水、法面保護まで含めて施工順序を考えることが重要です。

実務では、樹木を残せるかではなく、「樹木を残した状態でも法面の安全性、施工性、排水機能、維持管理性を確保できるか」という視点で検討すると整理しやすくなります。

その判断で特に確認したいのが、樹木と根系による斜面への影響、工事との干渉、樹木自体の健全性、完成後の維持管理という4条件です。

条件1 樹木の位置と根系が法面の安定に与える影響を確認する

樹木を残すか判断するとき、最初に確認したいのが樹木の位置と根系です。図面上で幹が施工範囲から外れているだけでは、保存できるとは判断できません。

樹木の根は幹の真下だけに存在するわけではなく、周囲の地盤へ広がっています。どの程度広がるかは樹種、樹齢、土質、岩盤の深さ、水分条件などによって異なります。そのため、掘削範囲が幹からある程度離れていても、施工によって根の一部を切断する可能性があります。

切土を行う法面では特に注意が必要です。樹木の幹を残したまま斜面側を掘削すると、斜面方向へ伸びていた根が切断される場合があります。外観上は施工前と同じように樹木が立っていても、地中では支持条件が変わっている可能性があります。

施工直後に異常が見られなくても、その後の強風や長雨によって樹木が傾いたり、根元の地盤に亀裂が生じたりする可能性も考えておかなければなりません。

法肩付近の大きな樹木についても慎重な確認が必要です。樹木は風を受けるため、幹や枝にかかった力が根を介して地盤へ伝わります。とくに樹高が高い木や樹冠が大きい木では、強風時の影響も無視できません。

樹木が斜面に生えているからといって、斜面安定に必ず有利とは限らない点も重要です。浅い表土の上に大木が生えている場合や、すでに地盤に変状がある場合などは、樹木と地盤の状態を個別に確認する必要があります。

現地で樹木を見る際には、周囲の斜面にも目を向けます。

根元付近に新しい亀裂がないか、地表に段差が生じていないか、局所的な沈下や隆起がないか、土砂が流れた跡がないか、湧水が出ていないかといった状態を確認します。こうした変状がある場合は、樹木保存の可否を考える前に、法面そのものの状態を把握することが重要です。

樹木の傾きについても、単純に見た目だけで判断することは避けます。樹木は斜面上で光を求めて傾いて成長する場合もあるため、幹が傾いているだけで斜面変動が発生しているとはいえません。

一方、複数の樹木が同じ方向へ傾いている、根元周辺に亀裂や段差がある、以前と比べて傾きが変わっているといった兆候が重なる場合は、地盤の変状との関連を慎重に確認する必要があります。

伐採する場合も根系への配慮は必要です。幹を切っても根は地中に残ります。残った根は時間とともに状態が変化するため、伐採した瞬間に斜面条件が固定されるわけではありません。

このように、樹木を残すかどうかは幹の位置だけでなく、根系と周囲の地盤を含めて検討することが第一の条件になります。

条件2 掘削・法面保護工・排水工との干渉を確認する

2つ目に確認したいのが、樹木を残した状態で計画された法面工事を施工できるかどうかです。

樹木そのものに問題がなくても、掘削、法面保護工、排水工、仮設工、工事用機械の作業範囲と干渉するのであれば、そのまま残すことは難しくなります。

まず確認するのは、完成する法面の位置と樹木の位置関係です。

切土法面では、設計された勾配や形状に合わせて地盤を掘削します。完成線の外側に幹が残っていても、根元ぎりぎりまで切土する計画であれば、樹木への影響が大きくなる可能性があります。

樹木の部分だけを避けて土を残す方法が適切とは限りません。法面の途中に局所的な突出部ができれば、水が集まりやすくなったり、法面保護工を連続して施工しにくくなったりする場合があります。

次に確認したいのが法面保護工との関係です。

植生を利用した法面保護であれば既存樹木を残せる場合もありますが、採用する工法や施工範囲によって条件は異なります。法枠工や吹付工などを施工する場合には、樹木の幹や根が施工範囲と干渉する可能性があります。

削孔を伴う工法では、樹木を避けるために施工位置を任意に変更できるとは限りません。現場で樹木を発見してから部材や削孔位置を変更すると、設計条件との整合を確認する必要が生じます。

そのため、保存したい樹木がある場合は、施工開始後ではなく、計画や施工準備の段階で位置関係を確認しておくことが重要です。

さらに重要なのが排水計画です。

法面工事では、雨水や地下水を適切に処理することが斜面管理の基本になります。法肩排水、縦排水、法尻の排水施設などが必要な場所に樹木がある場合、保存を優先することで排水経路が不自然になる可能性があります。

法面に水を集中させないことは重要です。樹木を避けるために水路を複雑に曲げたり、必要な排水位置を変更したりする場合は、排水機能に問題がないか慎重に確認する必要があります。

完成後についても考えておきます。樹木の落葉や枯れ枝によって排水溝や集水部がふさがれる可能性があります。根が成長することによって排水施設周辺へ影響する場合も考えられます。

そのため、現在施工できるかだけでなく、完成後に清掃や点検が可能かという視点も必要です。

重機の作業範囲も重要です。

法面工事では掘削機械、搬入車両、削孔機械、資材を運ぶ機械などが使用されることがあります。幹自体が施工線の外側にあっても、枝が旋回範囲へ張り出していれば安全な作業を妨げる可能性があります。

枝を剪定することで対応できる場合もありますが、大きな枝を切れば樹木の状態にも影響します。幹位置だけでなく、樹冠のおおよその範囲も把握しておくと、施工計画を立てやすくなります。

さらに、完成構造物だけでなく仮設設備まで含めて確認する必要があります。

作業足場、防護設備、仮設排水、資材置き場、施工用通路などが樹木と干渉する場合があります。完成時には残せるように見える樹木でも、施工過程で必要な作業空間を確保できなければ、保存方法を再検討しなければなりません。

樹木を残せるか判断するときは、完成形だけでなく施工の全工程と重ねて確認することが大切です。

条件3 樹木の健全性と倒木リスクを確認する

3つ目の条件は、残そうとしている樹木そのものの状態です。

樹木が施工に干渉せず、根系への影響も小さいとしても、樹木自体が著しく弱っている場合には、残すことが適切とは限りません。

現地では、幹の腐朽、空洞、裂け、枯れ枝、根元の損傷、著しい傾斜などがないか確認します。ただし、外観だけでは樹木内部の状態まで分からない場合があります。

特に、倒れた場合に道路、建物、駐車場、歩行者空間などへ影響する場所では、必要に応じて樹木管理に詳しい専門家の確認を検討することが重要です。

法面工事では、工事によって樹木の生育環境が変化する点にも注意します。

施工前には周囲を地盤で支持されていた樹木でも、切土によって片側の土がなくなれば条件は変わります。根が露出したり切断されたりすると、樹木が施工前と同じ状態で存続できるとは限りません。

反対に、樹木を残したまま周囲へ盛土する場合も慎重な検討が必要です。既存の根元周辺を大きく埋めると、生育条件が変わる可能性があります。樹木保存を目的として幹だけを地表に出せばよいとは限りません。

施工中の損傷も見落とせません。

保存する木の幹に重機を接触させないことはもちろんですが、根元周辺を工事車両が繰り返し走行することや、資材、掘削土などを長期間置くことも避けたいところです。

樹木を保存すると決めた場合には、「伐採しない」という指示だけでなく、施工中にどの範囲を保護するのかを関係者で共有しておく必要があります。

周囲の木を伐採した結果、残した樹木が受ける風の条件が変わることにも注意します。

樹林の内部にあった樹木は、周囲の木によって風が弱められていた可能性があります。周辺を大幅に伐採して一本または数本だけ残すと、以前より風を直接受けやすくなる場合があります。

法肩や道路沿いなどで大木を残す場合は、施工直後だけでなく、その後の強風時まで考えて安全性を検討することが大切です。

樹木を残すことが景観上望ましくても、その木が倒れた場合の影響が大きければ管理上のリスクになります。反対に、健全で工事との干渉が小さく、維持管理もしやすい樹木であれば、保存できる可能性があります。

そのため、保存の判断では樹木を景観要素としてだけ見るのではなく、将来も斜面上に存在する構成物の一つとして考える必要があります。

条件4 工事後も点検と維持管理を続けられるか確認する

4つ目の条件は、法面工事が終わった後も樹木を含めて管理できることです。

工事中に問題なく保存できたとしても、樹木によって法面の点検ができなくなったり、排水施設の維持管理が難しくなったりするのであれば、長期的には問題になる場合があります。

法面の点検では、亀裂、侵食、はらみ出し、沈下、湧水、排水状態などを確認することがあります。

樹木や下草が密集していると地表面が見えにくくなり、小さな変状を発見しにくくなることがあります。保存する樹木の周囲に必要な点検経路を確保できるか、根元まで安全に近づけるかという確認が必要です。

排水施設についても同様です。

樹木の近くでは落葉や枯れ枝が排水溝へたまりやすくなることがあります。集水桝や側溝などを定期的に清掃する必要がある現場では、作業員が安全に清掃できるかも確認しておきます。

樹木の成長も忘れてはいけません。

施工時には構造物や排水施設と十分に離れていても、年月が経過すると幹や根、枝が成長します。樹木と構造物との間隔が小さい場合は、将来的な干渉についても考えておく必要があります。

また、保存した樹木を誰が管理するのかも明確にしておきたいポイントです。

施工担当者と完成後の維持管理担当者が異なる場合、保存した樹木について十分な情報が引き継がれないことがあります。

どの木を意図的に残したのか、施工中に根が露出した場所はなかったか、周囲にはどのような排水施設があるのかといった情報が残っていれば、その後の点検で判断しやすくなります。

施工前、施工中、完成後の写真を同じ対象について記録しておくことも有効です。幹の傾き、根元の地盤、周囲の法面形状などを比較すれば、時間の経過による変化を確認しやすくなります。

樹木を残すという判断は工事完了時までの話ではありません。将来にわたって点検できること、必要に応じて剪定や伐採、排水清掃などを行えることまで含めて検討する必要があります。

法面工事の前に樹木の現況を記録する

樹木を残す可能性がある場合は、法面工事の施工前に現況を記録しておくことが重要です。

最初に確認したいのが、法面全体と樹木の位置関係です。

どこに樹木があるかだけではなく、法肩、法尻、既存構造物、道路、建物、排水施設などとの位置関係を整理します。樹木が多い現場では一本ずつ識別できるようにしておくと、設計者、施工者、発注者などの間で対象を取り違えにくくなります。

「法面中央の大きな木」「道路側の木」といった表現だけでは、現場条件の変化や担当者の交代によって認識がずれることがあります。個別に識別できる情報を残しておくほうが管理しやすくなります。

幹の位置だけでなく、幹の大きさ、樹高のおおよその状態、傾斜方向、樹冠の広がり、外観上の異常なども記録しておくと、施工前後の比較に役立ちます。

次に、現況と設計を照合します。

完成法面の位置、掘削範囲、排水施設、法面保護工、施工機械の作業範囲、仮設設備などと樹木位置を重ね、どこで干渉が発生する可能性があるかを確認します。

ここで重要なのは、施工計画を確認する前に「この木は絶対に残す」と固定しないことです。

現況では残せそうに見えても、法面の掘削線や排水施設との干渉が判明することがあります。樹木の保存方針は、現況把握と設計条件の照合を行ったうえで決めることが重要です。

さらに、伐採する可能性がある樹木についても位置と状態を記録しておきます。

伐採前の状態が残っていれば、施工後に法面形状がどのように変化したか確認しやすくなります。また、根株を除去した位置が分かっていれば、その周囲に沈下や侵食などが発生したときの参考情報にもなります。

法面工事では完成形の記録だけでなく、施工前にどのような状態だったかを残すことが重要です。樹木を保存する場合も伐採する場合も、施工前の情報が後の判断材料になります。

樹木を残す場合に施工中注意したいポイント

保存する樹木を決めたら、施工中の管理方法を明確にします。

現場では、保存対象が図面上では決まっていても、実際の作業が始まると重機の旋回や資材置き場などによって樹木周辺が使用されることがあります。

そのため、保存対象を現地で識別できるようにし、関係する作業員へ共有することが重要です。

特に注意したいのが根元周辺です。

幹に直接接触しなくても、樹木の周囲を重機や車両が繰り返し走行すると、地盤条件が変化する可能性があります。掘削土や資材を根元周辺へ大量に仮置きすることも避けたいところです。

掘削中に大きな根が現れた場合の対応も事前に考えておきます。

施工の支障になる根を現場判断ですべて切断すると、残す予定だった樹木へ予想以上の影響が及ぶ可能性があります。一方、根を守るために必要な掘削を行わず、設計された法面形状を変更することも適切とは限りません。

想定外の根が確認された場合は、樹木保存と法面工事の両方への影響を整理したうえで対応を判断することが重要です。

施工中の雨水管理にも注意します。

法面を掘削している途中では、完成後とは地形が異なります。仮排水が不十分だと、残した樹木の根元へ雨水が集中することがあります。

反対に、施工によって従来の水の流れをふさいでしまう場合もあります。降雨前後には、樹木周辺を含めて地表水の流れや湧水状態を確認します。

大雨や強風の後には、保存した樹木の状態も確認するとよいでしょう。

根元の地盤に新しい亀裂がないか、以前より傾いていないか、枝が損傷していないかを確認します。施工前の写真があれば、変化の有無を比較しやすくなります。

樹木保存では「伐採しなかった」という結果だけでなく、施工によってどのような影響が加わったかを記録することが重要です。

樹木を伐採する場合は根株の処理まで検討する

4条件を確認した結果、樹木を残すことが難しい場合は伐採を検討します。

ただし、法面工事では幹を切れば樹木に関する作業が終わるわけではありません。伐採後に残る根株や根系をどう扱うかも施工計画の一部です。

根株を残したまま施工する場合、法面整形や法面保護工の支障にならないか確認します。

大きな根株が法面表面から突出していると、計画された形状へ整形できない場合があります。また、法面保護工を連続して施工できない原因となることもあります。

一方、根株を除去する場合には周辺の地盤を掘削する必要があります。

大木ほど根株の周囲を大きく掘ることになり、もともとの地盤が乱される範囲も広くなる可能性があります。抜根後に空隙や軟らかい部分を残さないよう、法面整形と一体で処理を考える必要があります。

水の処理も重要です。

根が伸びていた場所や抜根後の掘削部に水が集中すると、局所的な侵食につながる可能性があります。根株処理だけを独立した作業とせず、排水や法面保護と合わせて施工方法を検討することが大切です。

根株を残す場合は将来的な変化にも配慮します。

地中に残った根は時間とともに状態が変化します。そのため、「根を残せば地盤を保持できる」「抜根すれば安全になる」と一律に考えることはできません。

地盤条件、根株の大きさ、施工する工法などに応じて処理方法を検討する必要があります。

伐採作業そのものについても、法面では平坦地と異なる危険があります。

斜面上で木を倒す方向、周辺の道路や建物、作業員の退避場所、伐採材を搬出する経路などを確認し、安全な施工計画を立てることが重要です。

樹木伐採は法面工事の単なる前準備ではなく、斜面状態を変化させる工程の一つと考える必要があります。

樹木の保存と法面工法は切り分けて検討する

樹木を残したい現場では、保存しやすい工法を最初に探したくなることがあります。しかし、法面工法は樹木だけを基準に決めるものではありません。

法面工事の方法を検討する際には、地質、土質、法面勾配、法長、地下水、湧水、既存の変状、周辺構造物、要求される安全性などを総合的に考えます。

表面の侵食を抑えることが目的なのか、表層の崩壊へ対応する必要があるのか、さらに深い範囲の安定性を確認する必要があるのかによって、必要な対策は異なります。

樹木を残すために必要な対策を省略してしまっては、本来の法面工事の目的を果たせません。

たとえば排水施設が必要な位置に樹木がある場合、保存を優先して排水をなくすのではなく、別の位置や方法で必要な排水機能を確保できるか検討します。

法面保護工や補強工との干渉についても同様です。

樹木を残すために構造を任意に変更するのではなく、設計上必要な性能を満たしたうえで保存できるかを確認します。それが難しい場合には、樹木の保存方針自体を見直す必要があります。

つまり、樹木保存は法面工事の目的ではなく、必要な安全性や機能を満たしたうえで検討する条件の一つです。

この順序を逆にしないことが、実務上の重要なポイントです。

樹木を残す判断で起こりやすい失敗

樹木を残す法面工事では、いくつか注意したい判断があります。

まず避けたいのが、「以前から倒れていない木だから問題ない」という判断です。

工事前に長期間安定していた樹木でも、切土によって周囲の地盤や根系の条件が変われば、工事後も同じ状態が続くとは限りません。施工前の実績だけではなく、施工後に何が変わるかを確認する必要があります。

反対に、「樹木があるから全部伐採すれば安全になる」という考え方にも注意が必要です。

樹木や植生を一度に除去すると、施工途中で地表が露出します。大雨が予想される時期などには、裸地となった法面から土砂が流出する可能性もあります。

伐採が必要であれば、その後の整形や法面保護へ円滑に移れるよう施工順序を考えておくことが大切です。

幹だけを見て保存範囲を決めることも失敗につながります。

根は周囲へ広がっているため、幹から離れた場所を掘削した際に太い根が現れる場合があります。樹木は平面的な一点ではなく、地中と上空へ広がる存在として扱う必要があります。

さらに、保存する樹木が関係者間で明確になっていないケースもあります。

発注者は残したいと考えていても施工担当者に伝わっていなければ、施工開始時に伐採されてしまう可能性があります。逆に、現場判断で樹木を残した結果、後から排水施設との干渉が判明することもあります。

誰が見ても保存対象を特定できる状態にし、計画図面や施工情報と対応させることが重要です。

完成直後だけを見て保存が成功したと判断することにも注意します。

施工による根への影響や周囲の風環境の変化は、しばらくしてから表面化する場合があります。保存した樹木については、完成後の点検まで含めて管理することが大切です。

測量と位置情報を使って保存対象を管理する

樹木を残しながら法面工事を進める場合は、測量や位置情報を使って対象を明確にすると管理しやすくなります。

樹木が数本であれば写真や図面上の記号だけでも把握できますが、広い法面や樹木の多い現場では、どの木を示しているのか分かりにくくなることがあります。

施工前に樹木の位置を計測し、設計された法面や施工範囲と照合すれば、保存候補と施工干渉が考えられる樹木を整理しやすくなります。

ただし、幹の位置を測定しただけで保存可否を決めることはできません。

樹木は根と枝が周囲へ広がるため、幹の位置は管理上の基準点として利用し、実際の判断では根系や樹冠、施工方法なども含めて確認する必要があります。

位置情報と写真を組み合わせる方法も有効です。

施工前に幹、根元、周辺の法面を撮影し、それぞれの樹木の位置と関連付けて管理すれば、工事中や完成後に同じ対象を確認しやすくなります。

広い法面では、写真だけを保存しても後から撮影場所が分からなくなることがあります。位置情報を併せて管理しておけば、経年変化を比較する際にも役立ちます。

また、計画された施工範囲を現地で確認できれば、保存対象が切土線や排水施設へどの程度近いかを把握する際の参考になります。

ただし、現地で利用する測位結果や表示には、使用条件や設定による誤差が含まれる可能性があります。画面上に表示された位置だけで重要な判断を完結させず、必要に応じて設計図面や測量成果、基準点などと照合します。

重要なのは、樹木保存の判断を感覚だけに頼らないことです。

どの樹木を残したのか、施工計画とどのような位置関係だったのか、施工前後でどのように変化したのかを記録として残せれば、その後の維持管理にもつながります。

法面工事後も樹木と斜面を一体で点検する

法面工事が完成して樹木を残した場合は、樹木と法面を一体で点検します。

樹木だけが健全でも、その根元周辺で侵食や亀裂が進んでいれば注意が必要です。反対に、法面構造物に問題がなくても、樹木が弱って倒木の可能性が高まっている場合は対応が必要になることがあります。

点検では、施工完成時の状態との違いを確認します。

樹木の傾きが変わっていないか、根元に亀裂が生じていないか、地表面が持ち上がっていないか、根が露出していないかなどを見ます。

法面全体についても、侵食、土砂流出、湧水、排水施設の閉塞などがないか確認します。

大雨後は特に水の流れに注目します。

樹木の根元へ雨水が集中していないか、排水溝から水があふれた形跡がないか、落葉や土砂によって排水が妨げられていないかを確認します。

強風後には、幹や枝だけでなく根元の地盤も見ます。

樹木が大きく揺れると根を介して周囲の地盤へ力が伝わるため、根元に変化がないか確認することが重要です。

施工前や完成時の写真があれば、現在の状態との比較がしやすくなります。

同じ樹木を継続して追跡するためには、撮影位置や対象を明確にしておくことが有効です。多数の樹木を残した法面では、位置情報と記録を関連付けておくことで対象を取り違えにくくなります。

法面工事は、施工が完了した時点で管理が終了するものではありません。

特に既存樹木を残した場合は、その成長や老朽化、周囲の地盤変化、排水状態などが時間とともに変化します。施工時に残せたという事実だけではなく、長期的に安全な状態を維持できるかを継続して確認することが大切です。

まとめ

法面工事で樹木を残せるかどうかは、一律には決められません。樹木をすべて伐採する必要がない現場もありますが、景観や希望だけを理由に保存することも避ける必要があります。

伐採前に特に確認したいのは、樹木の位置と根系が法面へ与える影響、掘削や法面保護工、排水工との干渉、樹木自体の健全性と倒木リスク、完成後に点検と維持管理を続けられるかという4条件です。

樹木の根が表層の保持に寄与する場合はありますが、根があるだけで法面全体が安全になるわけではありません。切土によって根を切断すれば樹木の支持条件が変化する可能性があり、大径木であれば強風時の影響も考える必要があります。

工事との干渉についても、幹が完成法面から外れているだけでは十分ではありません。根系、樹冠、掘削範囲、法面保護工、排水施設、重機の作業範囲、仮設設備まで含めて施工可能かを確認する必要があります。

樹木を残す場合は、施工中の保護も重要です。幹への接触だけでなく、根元周辺の走行、資材の仮置き、掘削による根の切断、雨水の集中などにも注意します。

一方、伐採する場合も幹を切るだけで終了ではありません。根株を残すのか除去するのか、抜根した部分をどのように整形するのか、排水をどのように処理するのかまで法面工事の一部として検討します。

また、法面工法は樹木保存だけを基準に決めるものではありません。地質、土質、勾配、地下水、湧水、既存変状などを踏まえ、法面に必要な安全性や機能を確保することが優先されます。その条件を満たしたうえで、残せる樹木を検討するという順序が重要です。

樹木を保存する可能性がある現場では、施工前の位置や状態を記録しておくことで判断しやすくなります。どの木を残したのか、施工範囲とどのような位置関係だったのか、工事によって周辺がどう変化したのかを残しておけば、完成後の点検にも活用できます。

施工前、施工中、完成後の状態を同じ対象について記録し、位置情報と関連付けて管理すれば、多数の樹木がある法面でも対象を把握しやすくなります。

LRTK Phoneを活用すると、法面の現況把握や位置情報付きの現場記録を行い、施工計画との位置関係を確認する作業に活用できます。樹木を残すか伐採するかを現場の印象だけで決めるのではなく、位置、施工範囲、法面の状態を記録しながら関係者で共有することが、法面工事を適切に進めるための重要な準備になります。

現場を3Dで残して、あとから測る。
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