LRTKレフィクシア株式会社

配電設備の赤外線診断で誤判定を減らす7つの撮影条件

配電設備の赤外線診断で誤判定が起こる理由

配電設備の点検では、接続部の緩み、接触抵抗の増加、過負荷、相間の負荷不平衡などによって生じる温度上昇を早期に把握するため、赤外線カメラを用いた診断が活用されています。設備を停止せずに表面温度の分布を確認できることは大きな利点であり、目視だけでは気づきにくい異常の兆候を見つける手段として有効です。

ただし、赤外線画像に高温部分が写っているからといって、直ちに設備異常と判断できるわけではありません。赤外線カメラが測定しているのは対象物の内部温度ではなく、表面から放射される赤外線エネルギーをもとに算出した見かけの温度です。そのため、対象物の材質、表面の光沢、撮影角度、周囲の熱源、風、日射、撮影距離などによって表示温度が変化します。

たとえば、金属光沢の強い端子や母線は周囲の熱を反射しやすく、実際には発熱していない部分が高温に見えることがあります。反対に、接続部が実際に発熱していても、表面の放射率設定や焦点が適切でなければ、温度上昇を小さく表示して見逃す可能性があります。設備の負荷が軽い時間帯に撮影すれば、異常箇所が十分に発熱せず、正常と判断してしまうこともあります。

赤外線診断で重要なのは、一枚の画像や一つの温度数値だけで結論を出さないことです。撮影時の運転状態、周囲環境、測定条件、過去画像、同一構造部位との比較を組み合わせ、異常の可能性を段階的に評価する必要があります。赤外線画像は異常箇所を確定する検査というより、詳しく調べるべき場所を絞り込むための情報として扱うと、判断の安全性が高まります。

また、同じ配電設備を継続して点検する場合は、毎回異なる条件で撮影するよりも、一定のルールを決めて撮影したほうが温度変化を追いやすくなります。負荷率、撮影位置、角度、距離、放射率設定、周囲温度などを可能な範囲でそろえることで、画像同士を比較できるようになり、単発の測定では分からない劣化傾向も捉えやすくなります。

ここからは、配電設備の赤外線診断で誤判定を減らすために確認したい七つの撮影条件を解説します。いずれか一つだけを守ればよいものではなく、複数の条件を組み合わせて撮影の再現性を高めることが大切です。

撮影条件1 設備に適切な負荷がかかっている状態で撮影する

配電設備の発熱状態は、流れている電流の大きさによって変化します。端子の緩みや接触抵抗の増加があっても、負荷電流が小さい状態では温度上昇が目立たないことがあります。そのため、赤外線診断を実施するときは、設備がどの程度の負荷で運転しているかを確認しなければなりません。

通常の運転時より負荷が大幅に低い状態で撮影した画像を見て、温度上昇がないため正常と判断するのは危険です。設備の使用状況に日内変動や季節変動がある場合は、負荷が高くなりやすい時間帯や時期を把握し、実際の運用を妨げない範囲で診断時期を計画します。生産設備、空調設備、照明設備など、接続されている負荷の種類によって電流の変動傾向は異なります。

撮影時には、可能であれば電流値や負荷率を確認し、赤外線画像と一緒に記録します。三相回路の場合は各相の電流を把握することで、温度差が接続不良によるものなのか、負荷不平衡によるものなのかを検討しやすくなります。特定の相だけ電流が大きければ、その相の温度が高くなること自体は不自然とは限りません。

一方、各相の電流が同程度であるにもかかわらず、同じ構造の接続部のうち一か所だけが高温であれば、接触抵抗の増加や締結状態の変化などを疑う材料になります。ただし、赤外線画像だけで原因を特定せず、負荷電流、外観、変色、異臭、異音、過去の点検記録なども確認して総合的に判断します。

設備の運転開始直後も注意が必要です。通電から十分な時間が経過していなければ、発熱と放熱が安定せず、温度分布が変化している途中の場合があります。設備の種類や負荷状況によって温度が安定するまでの時間は異なるため、一律の時間で判断するのではなく、運転履歴と温度推移を確認することが重要です。

反対に、設備停止後に撮影した場合、異常箇所の温度が急速に低下していることがあります。停止後の画像だけでは運転中の最高温度を把握できないため、原則として安全が確保された運転状態での撮影を検討します。ただし、充電部に接近する行為や盤を開放した状態での撮影には危険が伴います。作業方法は設備管理者の手順、リスク評価、必要な保護具、作業者の資格や教育状況を踏まえて決定しなければなりません。

赤外線診断の計画段階では、単に撮影日時を決めるだけでなく、その時間帯に想定される負荷も確認します。前回と今回の画像を比較するときも、表示温度だけではなく負荷条件が近いかを確認することが欠かせません。負荷が異なる画像同士を比較して温度が上昇したと判断すると、実際には電流増加による正常な変化を設備劣化と誤認する可能性があります。

撮影条件2 対象物の放射率と表面状態を確認する

赤外線カメラで表面温度を推定するときに大きな影響を与えるのが放射率です。放射率は、対象物が赤外線を放射する性質を示す値であり、材質だけでなく表面の粗さ、塗装、酸化、汚れ、腐食などによっても変化します。

一般に、塗装面や絶縁被覆、汚れのある面は、磨かれた金属面より赤外線を放射しやすい傾向があります。一方、光沢のある金属表面は放射率が低く、周囲から入射した赤外線を反射しやすくなります。このような面では、カメラの表示温度が対象物本来の表面温度を正確に示さない場合があります。

配電設備には、銅やアルミニウムの母線、端子金具、締結ボルト、絶縁物、樹脂被覆、塗装鋼板など、さまざまな表面が混在しています。同じ画面内に写っていても、材質や表面状態が違えば、単純な温度比較ができないことがあります。金属部と絶縁被覆部の表示温度に差があっても、それだけで一方が異常とは判断できません。

赤外線カメラの放射率設定は、使用する機器の取扱説明書や社内の測定手順に従って設定します。ただし、設定画面に入力した値だけを信用するのではなく、測定対象の表面状態を現場で確認する必要があります。同じ材質でも、酸化した部分、磨かれた部分、塗装された部分では条件が変わるためです。

継続的な点検では、可能な範囲で同じ表面を同じ条件で測定することが重要です。前回は絶縁被覆部、今回は光沢金属部というように測定位置が変わると、実際の温度変化ではなく放射率の違いが数値差として表れます。温度測定点を画像上で明確にし、次回も同じ位置を確認できるようにしておくと比較精度が高まります。

光沢面を測定するときは、表示される絶対温度だけでなく、同じ材質、同じ形状、同じ角度にある部位との温度差に注目する方法があります。三相の同一構造部分や、複数回路の同一形式端子を比較すれば、放射率の影響が完全にはなくならないものの、異常候補を絞り込みやすくなります。

ただし、比較する部位の表面状態が同じとは限りません。一か所だけ油分やほこりが付着している場合や、酸化の程度が異なる場合は、放射率の差によって温度差が強調されることがあります。赤外線画像と可視画像を対応させ、変色、汚損、腐食、塗装状態なども確認することが大切です。

表面に測定用の処置を行う方法もありますが、充電部への貼り付けや塗布は感電、短絡、絶縁性能低下などの危険につながる可能性があります。現場判断で実施せず、設備管理者の承認、停止措置、使用材料の適合性、安全手順を確認したうえで行う必要があります。赤外線診断の精度向上よりも、設備と作業者の安全を優先することが基本です。

撮影条件3 撮影距離と撮影角度を一定にする

赤外線カメラには、一つの測定画素が対象物のどの範囲を捉えるかという限界があります。撮影距離が遠くなるほど、一つの画素が受け持つ実際の面積が広がり、小さな端子や局所的な発熱部を正確に捉えにくくなります。

高温部が画素より小さい場合、その周囲の低温部分と平均化され、実際より低い温度として表示されることがあります。画像上では高温部分が見えていても、最高温度が正確に測定できているとは限りません。小さなボルト接続部やケーブル端末を遠距離から撮影するときは、特に注意が必要です。

必要な撮影距離は、カメラの画素数、レンズ、視野角、最小焦点距離、測定対象の大きさによって異なります。使用機器の仕様を確認し、測定対象が十分な画素数で写る位置から撮影します。画像を後から拡大しても、撮影時に取得されていない温度情報が増えるわけではありません。遠くから撮った不鮮明な画像をデジタル拡大しても、局所発熱の評価精度は改善しません。

一方、安全確保のために対象物へ過度に接近することは避けなければなりません。必要な測定精度と安全距離の両方を満たせない場合は、適切なレンズや測定方法を検討し、無理な姿勢や接近による撮影を行わないことが重要です。扉や遮蔽物を開けなければ対象が見えない場合も、作業者個人の判断で開放せず、定められた安全手順に従います。

撮影角度も表示温度に影響します。対象面に対して極端に斜めから撮影すると、見かけの放射率が変化したり、周囲の熱源が反射して写り込んだりする可能性があります。可能な範囲で対象面に対して正面に近い位置から撮影し、前回点検と同じ角度を保つことが望まれます。

ただし、正面からの撮影にこだわるあまり、充電部の前に身体を入れたり、危険区域へ立ち入ったりしてはいけません。安全な立ち位置を優先し、その範囲で再現可能な撮影位置を決めます。床面や盤面に恒久的な目印を設ける場合は、通行や保守作業の妨げにならない方法を選びます。

比較診断を行う設備では、撮影位置を文章だけでなく可視画像でも記録すると効果的です。盤全体が分かる写真、撮影対象へ近づいた写真、赤外線画像を一組として保存すれば、次回の担当者も同じ位置と角度を再現しやすくなります。

撮影距離を記録するときは、カメラから盤までの距離だけではなく、実際に測定している部品までのおおよその距離を意識します。盤の奥にある母線や端子を扉側から撮影する場合、盤面までの距離と対象物までの距離は異なります。測定設定に距離入力が必要な機器では、この違いを考慮して設定します。

撮影条件4 周囲からの反射と外来熱を避ける

赤外線画像に表示される高温部分が、対象物自身の発熱ではなく、周囲の熱源が反射したものである場合があります。特に表面が滑らかな金属部は反射の影響を受けやすく、作業者の体温、照明、暖房機器、日射を受けた壁、近接する高温配管などが写り込むことがあります。

反射による高温像は、カメラや作業者が移動すると位置や形が変わることがあります。異常が疑われる部分を見つけた場合は、安全を確保したうえで、わずかに撮影位置や角度を変えて画像の変化を確認します。高温像が対象部品上の同じ位置に残るのか、視点の変化に伴って移動するのかを見ることで、反射の可能性を検討できます。

ただし、高温像が動かなかったからといって、必ず対象物が発熱しているとは限りません。周囲に固定された大きな熱源がある場合は、角度を少し変えただけでは反射像が大きく動かないこともあります。可視画像で周辺環境を確認し、赤外線画像の視野外にある熱源についても注意を払います。

屋外の配電設備では、太陽光による影響が大きくなります。金属製の盤や機器外箱は日射で加熱され、内部の電気的発熱とは関係なく高温になります。日陰側と日なた側の温度差を接続不良と誤認したり、夕方になっても残る蓄熱を運転負荷による発熱と判断したりする可能性があります。

屋内でも、窓から差し込む日射、天井照明、暖房設備、蒸気配管、炉、乾燥設備などが測定へ影響します。撮影前に周辺を見渡し、対象物へ直接熱を与えるものや、光沢面へ反射しそうなものがないか確認します。

作業者自身も反射源になります。対象に近づいて正面から構えると、低放射率の金属面に作業者の顔や身体の熱が反射することがあります。三相端子の中央だけが不自然に高温に見える場合などは、作業者やカメラの位置との関係も確認します。

盤の点検窓越しに撮影する場合は、窓材の赤外線透過特性にも注意が必要です。可視光では透明に見える材料でも、赤外線を十分に透過するとは限りません。また、窓表面の汚れ、傷、結露、取り付け角度などが画像へ影響することもあります。点検窓を使用するときは、使用する波長帯や対応条件を含め、設備側と撮影機器側の仕様を確認します。

反射や外来熱を完全に排除できない場合は、その影響を記録し、絶対温度による断定を避けます。同一構造部位との比較、負荷電流との関係、時間経過による温度変化など、別の情報を組み合わせて評価することが重要です。

撮影条件5 風雨や日射などの環境条件をそろえる

配電設備の表面温度は、電気的な発熱だけでなく周囲環境による放熱の影響を受けます。屋外設備では風、雨、気温、湿度、日射が変わるため、同じ設備を同じ負荷で撮影しても表示温度が異なることがあります。

風が強いと対象物の表面から熱が奪われ、異常箇所の温度上昇が小さく見える場合があります。接続部で発熱が生じていても、風による冷却が強ければ周囲との温度差が縮小します。前回は無風、今回は強風という条件で画像を比較すると、設備状態が改善していなくても温度が低下したように見える可能性があります。

雨や水滴も測定へ影響します。対象表面が濡れると気化熱や水による冷却が起こり、表面温度が低下することがあります。また、水膜によって見かけの放射特性が変化し、乾燥時とは異なる温度分布になる可能性があります。降雨中や降雨直後の画像を、乾燥時の基準画像と単純に比較するのは適切ではありません。

日射は対象物を直接加熱するため、屋外設備の診断で特に注意が必要です。日中に日射を受けた盤は、電気的な負荷が低くても高温になる場合があります。部品ごとの温まり方は材質、色、向き、熱容量によって異なるため、画像内に不均一な温度分布が生じます。

日射の影響を避けるには、対象物が直射日光を受けていない時間帯を選ぶ方法があります。ただし、日陰になった直後でも設備内部や外箱に熱が残っていることがあります。単に日が当たっていないことだけで判断せず、撮影前の天候や日射履歴も確認します。

周囲温度も重要な記録項目です。同じ部位が同じ温度であっても、周囲温度との差によって異常の意味が変わることがあります。気温が低い日に表面温度が高く見える場合と、気温が高い日に同じ表面温度を示す場合では、温度上昇の程度が異なります。温度差を評価するときは、基準とする周囲温度をどこで測ったかも明確にしておきます。

屋内設備では空調の吹き出しも影響します。盤の片側だけに冷風が当たると、同じ負荷の回路であっても左右で温度差が生じることがあります。換気扇の作動状態、盤内ファンの運転、扉の開閉状態によっても温度分布は変わります。

継続点検では、可能な範囲で天候や時間帯をそろえます。完全に同一条件にできない場合は、風の有無、降雨、日射、周囲温度、湿度、空調状態などを記録し、画像比較時の補足情報として残します。環境条件の違いが大きい画像は、温度数値を直接比較するのではなく、参考データとして扱う判断も必要です。

撮影条件6 焦点と画素数を意識して対象を明瞭に写す

赤外線画像の焦点が合っていないと、高温部分と周囲の温度が混ざり、最高温度が低く表示されることがあります。可視画像として輪郭が何となく見えていても、温度測定に必要な鮮明さが確保されているとは限りません。

特に小さな端子、ボルト、ヒューズ接続部、ケーブル接続部などを測定する場合は、対象部品の境界が分かるように焦点を合わせます。自動焦点機能がある場合でも、盤内の格子、保護カバー、手前の配線などに焦点が合い、確認したい奥側の部品がぼやけることがあります。撮影後に画像を確認し、対象位置が明瞭に写っているかを確かめます。

赤外線画像の画素数は、一般的な可視画像より限られていることがあります。画面上で大きく表示されていても、実際の温度測定に使われている画素が少なければ、小さな発熱を十分に捉えられません。対象物が画面内で占める面積を確保し、必要に応じて撮影範囲を分けます。

盤全体を一枚に収める画像は、設備配置や異常箇所の位置関係を把握するために役立ちます。しかし、盤全体画像だけで小さな接続部の温度を正確に評価するのは難しい場合があります。全景画像で異常候補を確認し、必要な部分を安全な距離から拡大して撮影するなど、目的の異なる画像を組み合わせると記録性が高まります。

温度範囲の設定も画像の見え方に影響します。表示範囲を狭くすると小さな温度差が強調され、設備全体が大きく変色しているように見えることがあります。反対に表示範囲が広すぎると、局所的な温度差が目立たなくなります。同じ温度分布でも表示設定によって印象が変わるため、色の違いだけで異常の程度を判断しないことが重要です。

自動調整された画像同士を並べると、それぞれ異なる最低温度と最高温度で表示されている場合があります。前回画像では赤くなかった部分が今回画像で赤く表示されていても、実際の温度が上昇したとは限りません。比較時には温度目盛り、表示範囲、測定点の数値を確認し、可能であれば同じ表示条件で見比べます。

最高温度の自動検出機能も補助的に使用します。画面内に反射像、照明、高温配管などが含まれていると、本来確認したい接続部ではなく別の場所を最高温度として示すことがあります。測定点や測定範囲は対象部品に合わせて設定し、周囲の不要な熱源を含めないようにします。

撮影後の画像処理だけで測定品質を補うことには限界があります。焦点、距離、角度、画素数が不十分な画像は、後から色調を変更しても正確な温度情報にはなりません。現場で画像の鮮明さと測定対象を確認し、必要であればその場で撮り直す運用が重要です。

撮影条件7 比較対象と撮影時期をそろえる

赤外線診断では、単独の温度値よりも、同じ条件にある部位同士の温度差や、同じ部位の経時変化が重要な判断材料になります。比較対象の選び方が不適切だと、正常な温度差を異常と判断したり、異常な温度上昇を見逃したりする可能性があります。

三相回路を比較する場合は、各相の負荷電流が同程度か確認します。電流が異なる状態で表面温度だけを比較しても、接続状態の違いなのか負荷の違いなのかを判別しにくくなります。また、相ごとにケーブルの太さ、配線経路、周囲の通風状態が異なる場合も、単純な比較はできません。

複数の同一回路を比較する場合も、負荷の種類や運転状態を確認します。同じ形式の遮断器や端子であっても、接続されている設備の運転率が違えば温度は変わります。外観が同じという理由だけで比較対象に選ぶのではなく、電気的条件と設置条件が近い部位を選ぶ必要があります。

過去画像との比較では、撮影時期をそろえることが望まれます。夏季と冬季、昼間と夜間、稼働日と休業日では、周囲温度や負荷状態が大きく異なります。定期点検の周期だけを決めるのではなく、設備の負荷が現れやすい時期を考慮して撮影計画を立てます。

前回と同じ部位を撮影するためには、設備番号、盤名称、回路名称、相、部品位置を明確に記録します。似た構造の盤が並んでいる現場では、画像だけを見てもどの設備か分からなくなることがあります。撮影の前後に盤名称や管理番号が確認できる可視画像を残し、赤外線画像と関連付けます。

温度上昇の傾向を見る場合は、測定点の位置をそろえることも大切です。前回はボルト頭部、今回はケーブル被覆というように測定位置がずれると、異なる材質と熱伝導条件を比較することになります。画像上の測定点を保存し、次回も同じ場所を選べるようにします。

同じ設備を複数回撮影して温度が上昇していた場合でも、直ちに劣化が進行したとは断定できません。負荷電流、周囲温度、風、日射、盤扉の開閉状態などの違いを確認する必要があります。反対に表示温度がほぼ同じでも、前回より負荷が低い状態で同じ温度を示していれば、発熱状態が悪化している可能性があります。

赤外線診断の比較では、温度だけでなく温度差と条件を一組として管理します。いつ、どこを、どのような負荷と環境で撮影したかを残すことで、画像が設備保全に使える情報になります。

配電設備の赤外線画像で注意したい代表的な誤判定

配電設備の赤外線診断では、画像上の特徴から原因を早合点しないことが重要です。代表的な誤判定の一つが、反射を局所発熱と判断することです。金属面の一部だけが高温に見えるときは、周囲の熱源、作業者、日射などが写り込んでいないか確認します。

次に注意したいのが、負荷不平衡を接続不良と判断するケースです。三相のうち一相だけが高温であっても、その相に流れる電流が大きければ、温度差が生じることがあります。温度画像と同時に電流値を確認しなければ、締結部の異常と負荷条件の違いを区別できません。

反対に、各相の温度が同じであることを理由に正常と判断するのも適切ではありません。三相すべてに過大な負荷がかかっている場合や、同様の劣化が複数箇所で進んでいる場合は、相互の温度差が小さくても設備全体が高温になっている可能性があります。周囲温度、定格、負荷電流、過去データと照合して評価します。

ヒューズや遮断器の構造上生じる温度差を異常と判断するケースもあります。機器内部の発熱部、熱の伝わり方、放熱構造によって、外表面に一定の温度分布が現れることがあります。正常状態の基準画像や同型機器との比較がないまま、表面温度の高低だけで異常を決めることは避けます。

ケーブル接続部の発熱が周囲へ伝わり、原因箇所とは異なる位置が最高温度になることもあります。熱は金属部や導体を通じて移動するため、画像上の最高温度点が必ずしも不具合の発生点とは限りません。温度分布の広がり方、電流方向、接続構造を確認し、必要に応じて停止後の詳細点検につなげます。

盤内の上部が高温になる現象をすべて異常と判断することも誤判定につながります。盤内では温められた空気が上昇するため、上部の部品や外板が高温になる場合があります。ただし、自然対流による温度上昇と局所的な電気異常が同時に起きることもあるため、位置だけで正常と決めつけることはできません。

温度表示が測定範囲の上限や下限に近い場合は、設定や機器仕様の確認も必要です。測定範囲を外れていると正確な温度が得られない場合があります。画像上に数値が表示されていても、その数値が測定条件内で有効かを確認します。

異常判定の基準をすべての設備へ一律に適用することも避けるべきです。許容される温度や温度上昇は、設備の種類、部品、絶縁材料、負荷条件、周囲温度、設計条件によって異なります。メーカー資料、設備仕様、保全基準、過去の正常データなどを確認し、対象設備に適した判断を行います。

赤外線診断の再現性を高める記録方法

赤外線診断は、撮影した瞬間だけでなく、後から画像を比較し、対応の優先順位を検討することに価値があります。そのためには、画像と撮影条件を一体として記録する必要があります。

最低限、設備名称、盤番号、回路名称、撮影箇所、撮影日時、運転状態、負荷電流、周囲温度、天候、撮影距離、撮影角度、放射率設定などを記録します。すべての項目を毎回詳細に入力することが難しい場合でも、診断結果に影響しやすい条件は省略しないようにします。

赤外線画像だけでは、対象部品の位置や構造が分かりにくいことがあります。赤外線画像と同じ方向から可視画像を撮影し、両者を対応させて保存すると、点検後の確認や補修指示がしやすくなります。盤全体、対象回路、局所部の順に画像を残すと、設備に詳しくない担当者でも位置を把握しやすくなります。

ファイル名や記録番号には統一したルールを設けます。撮影者ごとに異なる名称を付けると、過去画像の検索や比較に時間がかかります。設備番号、撮影日、撮影箇所などを一定の順序で記録し、同じ設備の履歴を追えるようにします。

異常候補を記録するときは、画像上の最高温度だけでなく、比較対象の温度、周囲温度、負荷電流も残します。最高温度が変わらなくても、比較部位との温度差が拡大していれば、状態変化を検討する材料になります。

判定結果は、正常か異常かの二択だけで管理しないほうが実務的です。撮影条件が不十分で再測定が必要な状態、経過観察が必要な状態、停止点検を検討する状態など、社内の保全方針に合わせて段階的に分類します。撮影条件に問題がある画像を正常記録として残すと、次回点検で誤った基準に使われる可能性があります。

補修や増し締め、部品交換などを行った場合は、作業後の再撮影結果も関連付けます。作業前後の画像、負荷条件、温度差を比較することで、対策の効果を確認できます。ただし、締結部の増し締めは、停止、無電圧確認、締付条件などを含む適切な作業手順で行う必要があり、赤外線画像を見た作業者がその場で安易に実施してはいけません。

撮影地点が多数ある場合は、設備図面や配置図と記録を関連付ける方法も有効です。どの盤のどの面を、どの方向から撮影したかが分かれば、点検漏れや設備の取り違えを防ぎやすくなります。

配電設備を安全に撮影するための基本事項

配電設備の赤外線診断は非接触で行える点検ですが、撮影対象が充電部に近いため、作業方法によっては感電、アーク、短絡、転倒などの危険があります。非接触測定であることと、安全な作業であることは同じではありません。

盤扉を開ける必要がある場合は、設備管理者が定めた手順に従います。作業範囲、立入制限、必要な保護具、作業人数、監視者の要否、接近可能な距離、緊急時の対応などを事前に確認します。資格や教育を受けていない作業者が、画像を撮るためだけに充電部へ近づくことは避けなければなりません。

撮影に集中すると、周囲への注意が低下しやすくなります。カメラ画面を見ながら後退し、段差や資材につまずく事故も考えられます。撮影前に足元と退避経路を確認し、必要に応じて撮影者とは別に周囲を監視する担当者を配置します。

金属製のストラップ、三脚、延長器具などを使用する場合は、充電部への接触や落下の危険を検討します。盤内へ器具を差し込んで撮影距離を縮めるような方法は、短絡や感電につながるおそれがあります。測定精度を上げるためであっても、安全距離を損なう方法は選択しません。

屋外設備では、雨天時の感電危険、足元の滑り、落雷、強風なども考慮します。画像品質だけでなく、作業環境が安全かを確認し、危険がある場合は日程変更を検討します。

異常な高温、焦げ臭、発煙、異音などを確認した場合は、撮影を続けることよりも安全確保を優先します。設備から距離を取り、関係者へ連絡し、事業所の緊急対応手順に従います。原因を詳しく撮影しようとして接近することは避けます。

赤外線画像で異常が疑われた後の詳細点検も、原則として適切な停止措置と無電圧確認を行った状態で実施します。赤外線診断は、安全な分解や電気測定を省略するための手段ではなく、追加点検の必要性や優先順位を判断するための情報です。

赤外線診断を設備保全へ生かす運用手順

赤外線診断を設備保全に生かすには、撮影担当者だけに判断を任せるのではなく、計画、撮影、評価、対応、再確認までを一連の運用として整える必要があります。

まず、対象設備と撮影箇所を決めます。受変電設備、分電盤、配線接続部、遮断器、ヒューズ、母線、ケーブル端末などから、重要度、故障時の影響、過去の不具合、負荷状況を踏まえて優先順位を設定します。設備数が多い場合は、すべてを同じ頻度で撮影するのではなく、重要設備や高負荷設備を重点的に管理する方法があります。

次に、撮影時の標準条件を定めます。負荷の確認方法、撮影位置、撮影距離、撮影角度、画像の保存方法、周囲温度の記録方法などを可能な範囲で統一します。現場条件によって標準位置から撮影できない場合は、変更理由を記録します。

撮影時には、赤外線画像だけでなく可視画像と運転情報を残します。異常候補を見つけた場合は、角度を変えた確認、同一構造部位との比較、負荷電流の確認を行い、反射や負荷差による誤判定を減らします。ただし、安全を損なう追加撮影は行いません。

評価段階では、一つの温度数値だけで優先順位を決めないことが重要です。温度差、負荷、設備の定格、周囲条件、経時変化、故障時の影響などを合わせて検討します。測定条件が不十分な場合は、異常なしと処理せず、条件を整えた再撮影を計画します。

異常の可能性が高い場合は、設備管理者や電気保安の担当者へ情報を共有し、停止点検や補修の要否を検討します。赤外線画像だけを見て原因を決めつけず、締結状態、接点、導体、絶縁物、換気状態、負荷配分などを確認します。

補修後は、可能な範囲で同等の負荷条件において再度撮影します。温度が低下したか、相間や同一部位との温度差が縮小したかを確認し、作業結果を記録します。補修直後に負荷が低ければ、改善したように見える可能性があるため、作業前後の負荷条件をそろえることが重要です。

定期的に記録を見直し、同じ箇所で異常候補が繰り返されていないか、特定の盤や回路に偏っていないかを確認します。単発の異常対応だけでなく、設計、負荷配分、換気、点検周期などの改善につなげることで、赤外線診断の価値が高まります。

まとめ

配電設備の赤外線診断で誤判定を減らすには、画像に表示された温度だけではなく、撮影時の条件を管理することが重要です。設備に十分な負荷がかかっているか、対象物の放射率や表面状態を把握しているか、適切な距離と角度で撮影しているかを確認しなければなりません。

さらに、周囲の熱源や作業者の反射、風雨や日射、焦点、画素数、比較対象、撮影時期なども診断結果へ影響します。条件が異なる画像を単純に比較すると、正常な温度変化を異常と判断したり、本来の異常を見逃したりする可能性があります。

赤外線画像は、接触不良や過負荷などの原因を単独で確定するものではありません。負荷電流、設備構造、可視画像、過去記録、周囲環境などと組み合わせ、異常の可能性を絞り込むために活用します。異常が疑われる場合は、適切な安全措置を講じたうえで詳細点検や補修を行う必要があります。

継続点検では、同じ設備を同じ位置、距離、角度、負荷条件で撮影し、画像と撮影条件を一体で残すことが大切です。設備番号や回路名称だけでなく、撮影地点の位置情報や周辺状況も整理しておけば、次回点検時の再現性を高められます。

広い施設や屋外の配電設備を管理する現場では、赤外線画像だけでなく、どこで撮影した記録なのかを正確に共有できる仕組みが求められます。点検地点の座標記録、設備周辺の現況取得、クラウド上での情報共有を効率化したい場合は、LRTK Phoneを活用した現場記録の整備へつなげる方法もあります。

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