LRTKレフィクシア株式会社

配電設備のケーブルシース電流異常を調べる5ステップ

ケーブルシース電流を調べる目的と基礎知識

配電設備に使用される電力ケーブルには、導体や絶縁体に加えて、金属遮蔽層、金属シース、外部半導電層、外被などが設けられているものがあります。ケーブルの構造や電圧区分によって各部の名称と役割は異なりますが、本記事では、金属遮蔽層や金属シースから接地線、ボンディング線へ流れる電流を広い意味でケーブルシース電流として説明します。

交流電流がケーブル導体を流れると、その周囲に変化する磁界が発生します。この磁界の影響によって金属シースには電圧が誘起されます。さらに、金属シースが両端で接地されている場合や、複数のシースを接続した回路が形成されている場合には、誘起電圧によって循環電流が流れることがあります。

そのため、ケーブルシースに電流が流れているという事実だけで、直ちに設備異常と判断することはできません。接地方式、ケーブルの配置、回路長、負荷電流、相配列、金属シースの抵抗などによっては、健全な設備でも一定のシース電流が測定されます。重要なのは、その電流が設備の設計や従来の運転状態から見て妥当か、過去と比べて増えていないか、三相のうち一相だけ偏っていないかを確認することです。

シース電流の異常が疑われる代表的な状況には、定期点検で前回より大きな値が測定された場合、特定相の接地線だけが発熱している場合、接続箱や端末部の周辺に変色や腐食が見られる場合、降雨後にシース電流が増える場合などがあります。また、ケーブルの更新、接続箱の改修、接地線の引き直し、運転回線の変更を行った後に、相間差や区間差が大きくなることもあります。

異常なシース電流を放置すると、金属シースや接地線での損失が増え、ケーブルの許容電流に影響する可能性があります。接続端子の接触抵抗が増加している場合には、局部的な発熱が進むことも考えられます。片端接地を前提とした回路で意図しない接地点が生じれば、本来抑えられていた循環電流が流れる可能性もあります。

一方、シース電流の測定値だけで、主絶縁の劣化やケーブルの残存寿命を直接判断することは困難です。シース電流は、接地回路やシース回路の状態を把握するための重要な指標ですが、絶縁診断、外被の健全性確認、接続部の点検、負荷履歴などと組み合わせて評価する必要があります。

調査を進めるときは、単に電流値を測るのではなく、どの接地方式で、どの経路を通って、その電流が流れているのかを説明できる状態にすることが大切です。以下では、配電設備の実務担当者がケーブルシース電流の異常を調べるための流れを、5つのステップに分けて解説します。

ステップ1 設備構成と異常が現れる条件を整理する

最初のステップは、対象となる配電設備の構成と、異常が疑われた条件を整理することです。調査対象が曖昧なまま測定を始めると、異なる回路や異なる運転条件の数値を比較し、正常な変動を異常と判断するおそれがあります。

まず、シース電流異常が疑われたきっかけを明確にします。定期点検で過去値より増えていたのか、三相のうち一相だけ値が大きかったのか、接地線の発熱や変色が見つかったのか、接続箱周辺で異臭や腐食が確認されたのかを整理します。異常を発見した日時、天候、設備の運転状態も記録しておきます。

次に、対象ケーブルの始点と終点、敷設経路、接続箱の位置、端末部の位置、回路長、ケーブル構造、相配列、並列回線の有無を確認します。竣工図、単線結線図、ケーブル接続図、接地系統図、過去の改修記録が残っている場合は、それらを現地の状態と照合します。

特に注意したいのは、図面と現地の接続状態が一致しているとは限らないことです。過去の応急処置や部分更新によって、接地線の引き回しや接続端子が変更されている場合があります。図面上では片端接地であっても、現地では金属製の支持部材や別の接地線を介して意図しない接地点が生じている可能性があります。

対象ケーブルの接地方式も確認します。片端接地方式なのか、両端接地方式なのか、クロスボンド方式なのかによって、正常時に想定されるシース電流の傾向が変わります。接地方式が不明なままでは、測定値が大きいか小さいかを適切に判断できません。

運転条件としては、各相の負荷電流、三相の負荷バランス、運転中の回線数、並列回線の負荷分担、主要負荷設備の稼働状態を確認します。一般に、導体を流れる電流が変化すれば、シースに誘起される電圧や循環電流も変化します。負荷が大きい時間帯だけシース電流が増える場合と、負荷に関係なく高い値が続く場合では、優先して確認すべき原因が異なります。

異常が発生する時間帯も重要です。常時高いのか、特定の設備を運転したときだけ上昇するのか、開閉操作後に変化するのか、降雨後だけ増えるのかを調べます。天候との関係が見られる場合は、接続箱への水分侵入、外被損傷部からの接地、接地極周辺の状態変化などが候補になります。ただし、雨天時に値が増えたという一度の結果だけで原因を断定せず、同様の条件で再現するかを確認します。

測定対象となる導体も明確にします。ケーブルシース電流を調べる場合には、シース接地線、ボンディング線、接続箱内部の接続導体などを測定します。複数の接地線をまとめて測定すると、別回路の電流が合算されたり、方向の異なる電流が相殺されたりする可能性があります。どの導体を測定しているのかを図面上で確認し、測定点ごとに識別番号を付けることが有効です。

このステップでは、異常判定のための比較対象も決めます。設計時の計算値、竣工時の測定値、過去の定期点検値、同じ構成を持つ健全回路の値、三相の平均値などを候補にします。配電設備ごとに条件が異なるため、設備全体へ一律の基準値を当てはめるのではなく、対象設備の履歴と構成を基準に評価することが重要です。

ステップ2 測定箇所と測定条件を統一する

設備構成を整理したら、シース電流を測定する位置と条件を決めます。シース電流は測定位置や周辺磁界の影響を受けるため、再現性のある方法で測定しなければ、設備状態の変化と測定誤差を区別できません。

測定箇所としては、ケーブル端末部のシース接地線、接続箱のボンディング線、クロスボンド接続部、共通接地母線へ接続される前の個別接地線などが考えられます。対象設備の接地方式を踏まえ、シース電流が通過する経路を確認してから測定点を選定します。

両端接地方式では、ケーブルの始端側と終端側の両方で測定することが有効です。両端の測定値を比較することで、途中区間から別の経路へ電流が流れていないか、接地回路に偏りがないかを検討できます。クロスボンド方式では、主要な接続箱ごとに測定し、小区間単位で電流分布を追えるようにします。

測定には、想定される電流範囲に適したクランプ式電流計や電流センサーを使用します。微小なシース電流を調べるときに大電流用の測定器を使用すると、分解能が不足することがあります。反対に、測定範囲が狭すぎると、負荷変動や一時的な電流増加によって測定上限を超える可能性があります。事前に過去値や概算値を確認し、適切な測定レンジを選びます。

負荷設備の種類によっては、商用周波数以外の電流成分が含まれる場合があります。波形が大きくひずんでいると、測定方式によって表示値に差が出る可能性があります。必要に応じて、ひずみ波形の実効値を測定できる機器や、一定時間の波形を記録できる装置を使用します。

クランプ式の測定器を使用する際は、センサーの接合面にごみやさびが付着していないか、クランプが完全に閉じているかを確認します。接地線をクランプの中央付近に配置し、周辺の大電流導体や磁性体から受ける影響にも注意します。測定前にはゼロ点を確認し、必要に応じて同じ場所を複数回測って再現性を確かめます。

同一箇所を継続して点検する場合は、接地端子からの距離、クランプの向き、測定者の立ち位置まで可能な範囲で統一します。測定位置を写真や略図に残し、次回も同じ箇所を測定できるようにします。接続箱の名称だけでは位置を再現できない場合があるため、端子番号や接地線の識別表示も記録します。

シース電流と同時に、各相の負荷電流を記録することも欠かせません。シース電流が増加していても、負荷電流が前回より大きければ、その影響を考慮する必要があります。負荷変動の大きい設備では、シース電流と負荷電流を同じ時刻に記録し、運転状態との関係を確認します。

短時間の測定だけでは傾向を把握できない場合は、一定期間の連続測定を検討します。最大値だけでなく、平均的な値、上昇が続いた時間、負荷設備の始動や停止との対応を記録します。瞬間的な変化を恒常的な異常と誤認しないためにも、時間変化を確認することが重要です。

測定値が安定しない場合には、すぐに設備異常と判断せず、クランプの閉じ方、計器のレンジ、周辺磁界、接地線の振動などを確認します。可能であれば、別の測定器でも同じ箇所を測定し、計器固有の誤差や不具合を切り分けます。

なお、シース接地線を取り外して電流計を直列に接続する方法は、通常の運転中調査では避ける必要があります。接地回路を開放すると、シース電圧が上昇し、感電や絶縁破壊につながるおそれがあります。回路の開放を伴う試験は、停電、検電、放電、接地などの安全措置を行い、設備管理者が定めた手順に従って実施します。

ステップ3 相間・区間・時間変化を比較する

シース電流を測定した後は、単独の数値だけで判断せず、相間、区間、時間変化の三つの方向から比較します。この比較によって、異常が一相に限定されているのか、特定の接続箱を境に発生しているのか、運転条件に応じて変化しているのかを把握できます。

最初に確認したいのが三相間の差です。同じ構造のケーブルが同じ経路に敷設され、負荷もおおむね平衡している場合、三相のシース電流は近い傾向を示すことがあります。ただし、ケーブル配置が非対称である場合、相配列が途中で変化している場合、接地線の長さや引き回しが異なる場合には、健全な状態でも相間差が生じます。

そのため、現在の三相差だけを見て異常と決めるのではなく、過去の測定結果と比較します。以前から一定の差が存在し、その差がほぼ変わっていなければ、設備固有の特性である可能性があります。一方、一相だけが前回から大きく増加している場合は、その相に対応するシース回路や接続部を重点的に調べます。

三相すべてのシース電流が同程度に増えている場合は、負荷電流の増加、運転回線数の変更、ケーブル配置の変更、近接回線からの電磁的影響などを確認します。一相だけ増えている場合は、ボンディング線の誤接続、接地端子の接触不良、意図しない接地点、外被損傷などが候補になります。

次に、ケーブル区間ごとの違いを確認します。始端側、終端側、各接続箱、クロスボンド接続部で測定した値を、ケーブル経路に沿って並べます。ある接続箱を境に値が大きく変化している場合は、その接続箱内部の結線や、そこから分岐する接地経路に異常がある可能性があります。

個別の接地線では小さい値であるにもかかわらず、共通接地母線で大きな電流が測定される場合は、複数回路の電流が合流している可能性があります。他の配電設備や金属構造物から流れ込む電流が含まれていることもあるため、共通接地部の測定値を、そのまま特定ケーブルのシース電流と判断しないようにします。

始端側と終端側の電流に大きな差がある場合は、途中区間で電流が別経路へ分流している可能性を検討します。外被損傷部が大地や金属製支持物と接触している場合、設計図面にはない接地点が形成されることがあります。また、接続箱の内部でシースと接地系統が意図せず接続されている場合にも、電流経路が変化します。

時間変化の比較では、シース電流と負荷電流の相関を確認します。負荷電流の増減に合わせてシース電流も増減する場合は、電磁誘導による循環電流の影響が大きいと考えられます。ただし、誘導による電流であっても、設計時より大きな負荷が継続している場合や、接地線が過熱している場合には対策が必要です。

負荷電流がほぼ一定であるにもかかわらず、シース電流だけが不規則に変化する場合は、接続部の接触状態、湿気や水分の影響、周辺設備の運転、外被損傷部の接地状態などを確認します。接触不良箇所では、温度上昇や振動によって接触状態が変化し、測定値が不安定になることがあります。

降雨後にシース電流が増える場合は、接続箱への浸水、結露、外被損傷部からの接地が候補になります。ただし、土壌の含水状態によって接地抵抗が変化し、設備全体の電流分布が変わることも考えられます。天候との関連性を判断するには、複数回の測定によって再現性を確かめることが必要です。

比較結果は、測定値の一覧だけでなく、ケーブル経路図上に整理すると分かりやすくなります。各測定点へ相別のシース電流、負荷電流、測定日時、前回値との差を記入します。電流が増加し始める位置や、相間差が大きくなる区間を図面上で確認することで、次の接地回路調査を効率的に進められます。

ステップ4 接地方式とシースボンディング回路を確認する

相間差や区間差を把握したら、設計上の接地方式と現地のシースボンディング回路を確認します。シースに電圧が誘起されても、電流が流れる閉回路が形成されなければ、大きな循環電流は生じにくくなります。逆に、本来存在しない接地経路が形成されると、シース電流が増加する可能性があります。

片端接地方式では、一般にシースの一端を接地し、反対側を接地から絶縁します。この方式はシースの循環電流を抑えやすい一方、非接地側には誘起電圧が生じます。非接地側が外被損傷や誤配線によって接地されると、両端を結ぶ電流経路が形成され、シース電流が増えることがあります。

片端接地の設備で異常が疑われる場合は、非接地側の絶縁状態、接続箱内部の配線、金属製支持部材との接触、接地線の追加接続などを確認します。シース電圧を制限するための保護回路が設けられている場合には、その接続状態や外観も調査対象になります。保護回路が短絡状態になっていれば、通常とは異なる接地経路が形成される可能性があります。

両端接地方式では、金属シースが始端側と終端側の接地を通じて閉回路を形成するため、導体電流による誘起電圧で循環電流が流れます。その大きさは、ケーブルの相配列、敷設間隔、回路長、シース抵抗、接地線の抵抗などに影響されます。

両端接地方式でシース電流が増えた場合は、まず負荷電流の増加を確認します。増設や設備更新によって負荷が設計時より増えていれば、誘起電圧と循環電流も変化する可能性があります。また、ケーブルの移設や支持方法の変更によって相間距離が変わり、各相に誘起される電圧のバランスが崩れることもあります。

単心ケーブルを三相で敷設している場合、相配列やケーブル間隔はシース電流に影響します。途中区間だけ配列が変わっていないか、改修工事で一相の位置だけ移動していないか、近くに別の大電流回路が追加されていないかを確認します。支持金具や金属構造物がシース回路へ電気的に接続されていないかも調べます。

クロスボンド方式では、ケーブルシースを複数の小区間に分け、接続箱で各相のシースを順次入れ替えることで、区間ごとの誘起電圧を相殺します。正常に構成されていれば、大区間全体のシース電圧と循環電流を抑えやすくなります。

クロスボンド回路で異常が生じた場合には、接続順序の間違い、ボンディング線の断線、端子の緩み、接続箱内部の誤結線、小区間長の不均衡などを確認します。外観上は接続されていても、端子内部で素線が切れている場合や、腐食によって接触抵抗が増えている場合があります。

過去にケーブルの一部区間だけを更新している場合も注意が必要です。交換したケーブルの長さ、シースの電気抵抗、接続位置が既設区間と異なると、各小区間の誘起電圧が十分に相殺されない可能性があります。結線自体に誤りがなくても、区間条件の変化によってシース電流が増えることがあります。

接地端子やボンディング端子では、緩み、腐食、変色、発熱の痕跡を確認します。端子の接触抵抗が増えると、電流値が大きくなくても局部的に発熱する場合があります。運転中は外観や表面温度を確認し、増し締めや分解点検は停電後に実施します。

接地線の識別表示だけで接続先を判断することは避けます。長期間使用された設備では、改修時に表示が更新されていない場合があります。接続箱番号、端子番号、相別表示、ケーブル区間を照合し、必要に応じて停電状態で導通を確認します。現地で判明した接続状態は図面へ反映し、次回調査で同じ確認を繰り返さないようにします。

ステップ5 接続不良や外被損傷の原因を絞り込む

接地方式とボンディング回路を確認したら、異常電流を生じさせる具体的な原因を絞り込みます。調査は、運転中に安全に実施できる確認と、停電後に行う詳細試験に分けて進めます。

運転中に確認できる項目としては、接地線や端子部の表面温度、変色、腐食、異音、異臭、振動などがあります。特定相の接地端子だけが周囲より高温である場合は、接触抵抗の増加が疑われます。ただし、日射、周辺設備の放熱、盤内の気流なども温度へ影響するため、同じ条件にある他相や健全部と比較します。

端子の接触不良では、電流値が大きく変化しなくても発熱が進む場合があります。シース電流だけでなく、端子の温度差や変色の有無を確認することが重要です。負荷が高い時間帯と低い時間帯で温度を比較すると、通電による発熱か、外部からの熱影響かを判断しやすくなります。

接続箱や端末部では、水分侵入の痕跡を確認します。パッキンの劣化、ふたの締結不良、排水部の詰まり、結露、内部の腐食生成物などがある場合、本来絶縁されるべき部分に電流経路が形成される可能性があります。降雨後にシース電流が変化する設備では、防水状態を重点的に確認します。

外被損傷も、意図しない接地点を形成する原因の一つです。ケーブルの施工時に付いた傷、支持金具との接触、振動、経年劣化、周辺工事による損傷などによって、金属シースが大地や金属構造物へ接触することがあります。

片端接地方式のケーブルで外被損傷が生じると、非接地側にも接地経路が形成され、循環電流が流れる可能性があります。両端接地方式やクロスボンド方式でも、途中区間の接地点によって電流分布が変わり、相間差や区間差が拡大することがあります。

外被損傷が疑われる場合は、停電後にシースと大地間の絶縁状態を確認します。試験方法や試験条件は、ケーブル構造、設備仕様、経年状態、管理基準に合わせて選定します。根拠なく高い試験電圧を加えると、健全な外被や付属品へ不要な負担を与える可能性があるため、設備管理者が定めた試験要領に従います。

ボンディング線や接地線の断線が疑われる場合は、停電後に導通確認を行います。外観上はつながっていても、端子内部で素線が切れていたり、圧着部が腐食していたりする場合があります。接触抵抗を測定できる場合は、同じ構造の健全部と比較し、局部的に高い箇所がないかを確認します。

クロスボンド回路では、各相の接続順序も詳細に確認します。一つの接続箱で相の入れ替えを誤ると、各区間の誘起電圧が十分に相殺されず、シース電流が増える可能性があります。端子表示だけに頼らず、図面、ケーブル識別、導通確認結果を組み合わせて接続を追跡します。

シース電流の波形に高い周波数成分が多く含まれている場合は、負荷設備から発生する高調波電流の影響も検討します。負荷設備の運転とシース電流の変化を照合し、特定の設備を運転したときだけ増えるかを確認します。ただし、波形のひずみがあるからといって直ちにケーブル異常とは限らないため、接地回路や周辺設備を含めて評価します。

共通接地網や金属構造物を通る迷走電流にも注意が必要です。ケーブルシース、建物の鉄骨、配管、接地母線などが複数箇所で接続されると、設計時に想定していない分流が生じることがあります。測定点を増やして電流の流入側と流出側を追い、回路全体で電流経路を説明できるかを確認します。

原因候補を見つけても、すぐに単一の原因へ決めつけないことが重要です。外被損傷と端子腐食が同時に存在するなど、複数の要因が重なっている可能性があります。補修後は、補修前と同じ負荷条件、同じ測定位置、同じ測定器で再測定し、相間差や区間差が改善したかを確認します。

補修によってシース電流が低下しても、過去の健全時より高い状態が続く場合は、別の原因が残っている可能性があります。対象区間だけでなく、その前後の接続箱や接地回路まで調査範囲を広げ、電流経路を再確認します。

シース電流の測定値を評価するときの注意点

ケーブルシース電流には、すべての配電設備へ共通して適用できる単一の異常値があるわけではありません。正常時の値は、ケーブルの構造、接地方式、負荷電流、回路長、敷設間隔、相配列、周辺設備などによって変わります。

そのため、測定値の絶対値だけで正常か異常かを判断するのは適切ではありません。設計時の計算値、竣工時の測定値、過去の点検記録、同一構成の健全回路、三相間の差などを組み合わせて評価します。

過去から長期間ほぼ一定であった値が急に増えた場合は、絶対値がそれほど大きくなくても確認が必要です。一方、測定値が以前から高めであっても、負荷電流や設備構成に応じた値であり、温度上昇や相間差が安定している場合には、直ちに故障とは限りません。

三相平均からの差を見る方法も有効ですが、設備固有の非対称性を考慮する必要があります。ケーブル配置や接地線の長さが異なれば、健全時から相間差が存在する場合があります。現在の差だけではなく、その差が過去からどのように変化したかを確認します。

負荷電流に対するシース電流の割合も、経年変化を追うための参考になります。同程度の負荷条件でシース電流だけが増えていれば、接地回路やシース状態の変化が疑われます。ただし、両者が単純な比例関係になるとは限らないため、割合だけで原因を断定しないことが大切です。

温度の評価も欠かせません。同じシース電流であっても、接地端子の接触抵抗が高い場合には局部的な発熱が大きくなります。電流値が過去と変わらなくても、端子温度が上昇している場合には接続状態を確認します。

反対に、測定時の温度が低いから問題がないとも言い切れません。負荷が小さい時間帯に測定している場合や、通電時間が短い場合には、発熱が十分に現れていない可能性があります。負荷の高い時間帯を含めて経過を確認することが必要です。

一度の測定で判断できない場合は、監視レベルを設定して継続測定します。通常負荷時、高負荷時、降雨前後、設備の始動前後など、原因候補に応じて測定条件を変えます。変化が繰り返し現れるかを確認することで、偶然の測定誤差と設備状態の変化を区別しやすくなります。

ケーブルシース電流調査で守る安全管理

ケーブルシース電流の調査では、接地線だから安全であると思い込まないことが重要です。金属シースや接地線には、正常運転時でも電流が流れ、場所によっては電位差が生じる可能性があります。接地線の断線や接触不良がある設備では、通常より高いシース電圧が発生していることも考えられます。

運転中の測定は、設備管理者が定めた作業範囲と安全距離を守って行います。充電部が露出する盤内や接続箱内で作業する場合は、必要な資格、保護具、立入管理、監視体制を整えます。測定器は、対象設備の電圧区分や使用環境に適合したものを使用します。

接続箱のふたや盤の扉を開ける前には、外部から異常な発熱、変色、異臭、異音がないかを確認します。内部異常が進行している場合、開放操作によって状態が変化する可能性があります。著しい発熱や煙などが見られる場合は、無理に近づかず、設備責任者へ連絡して運転停止を含む対応を検討します。

運転中にシース接地線やボンディング線を取り外してはいけません。回路を開放すると、誘起電圧によってシース電位が上昇し、感電や絶縁破壊を生じるおそれがあります。端子の増し締め、接続変更、導通確認、絶縁試験などは、原則として停電後に行います。

停電作業では、回路の停止だけでなく、検電、放電、接地、誤投入防止などの措置を実施します。電力ケーブルは静電容量を持つため、停電後や試験後にも電荷が残る可能性があります。所定の手順で放電し、無電圧を確認してから接続部へ触れます。

調査中にシース電流が急激に増えた場合や、接地線の温度が短時間で上昇した場合は、測定を続けることより安全確保を優先します。作業者は安全な位置へ退避し、電気主任技術者など設備保安を担当する責任者へ連絡します。調査担当者だけの判断で接地線を外したり、運転状態を変更したりしないことが必要です。

調査結果を配電設備の保全に生かす方法

シース電流の異常原因を調べた後は、測定結果と補修内容を保全記録へ反映します。記録が不足していると、次回点検で同じ位置を測定できず、経年変化を正しく比較できません。

記録には、測定日時、天候、周囲温度、対象回路、ケーブル区間、接続箱番号、測定位置、相別、負荷電流、シース電流、使用した測定器、測定レンジ、運転状態を含めます。端子温度を測定した場合は、測定位置と周囲温度も残します。

測定点はケーブル経路図や接地系統図に記入します。似た形状の接続箱が複数並ぶ現場では、箱の名称だけで測定位置を再現するのが難しい場合があります。接続箱番号、端子番号、相別表示、周辺状況が分かる写真を組み合わせると、次回点検の再現性を高められます。

補修を行った場合は、補修前後を同じ条件で測定します。端子を清掃または締め直した場合には、シース電流と端子温度の両方を比較します。外被損傷を補修した場合には、補修後の絶縁状態とシース電流の変化を対応させて記録します。

異常値が見られるものの、直ちに停止や補修が必要と判断できない場合は、点検周期を短くして経過を監視します。負荷が高くなる時期、雨の多い時期、設備更新後など、異常が現れやすい条件に合わせて追加測定を計画します。

同じ時期に施工された複数回路で似た異常が見つかった場合は、個別故障だけでなく、施工方法や接地構成に共通する要因を検討します。同型の接続箱や同じ敷設環境を持つ区間へ点検範囲を広げることで、他の異常を早期に発見できる可能性があります。

更新計画を検討するときは、シース電流だけでケーブルの残存寿命を判断しないようにします。主絶縁の診断結果、外被の状態、接続部の劣化、負荷履歴、故障履歴、浸水や振動などの敷設環境を総合的に評価します。シース電流は有効な監視指標ですが、ケーブル全体の健全性を示す唯一の指標ではありません。

まとめ

配電設備のケーブルシース電流異常を調べるときは、最初にケーブルの構造、接地方式、敷設経路、負荷状態、異常が発生する条件を整理します。設備の前提条件を明確にすることで、正常な循環電流を異常と誤認するリスクを抑えられます。

次に、測定位置と測定条件を統一し、シース電流と負荷電流を対応させて記録します。相間、区間、時間変化を比較することで、一相だけの異常なのか、特定の接続箱を境にした異常なのか、負荷や天候に連動する異常なのかを絞り込めます。

その後、片端接地、両端接地、クロスボンドなどの接地方式を確認し、現地の接続状態が図面と一致しているかを調べます。接続端子の緩み、ボンディング線の断線、接続箱への水分侵入、シース外被の損傷、意図しない多点接地などを段階的に確認することが重要です。

シース電流には設備ごとの特性があるため、一律の数値だけで正常と異常を判断することはできません。過去値、三相間の差、区間差、負荷電流との関係、端子温度、天候との関係を組み合わせて評価します。補修後は同じ条件で再測定し、異常傾向が改善したことを確認します。

また、シース接地線やボンディング線を運転中に取り外す行為は危険です。接続変更、導通確認、絶縁試験、端子の分解点検などは、停電と必要な安全措置を行ったうえで実施します。

継続的な保全では、測定位置を正確に残すことも欠かせません。広い構内に点在する配電設備の端末部、接続箱、接地箇所を位置情報とともに記録し、点検写真や測定値を対応させれば、次回点検で同じ場所を確実に確認しやすくなります。現地の点検位置を高精度に記録し、設備情報の整理へつなげる方法として、LRTK Phoneの活用も検討できます。

現場を3Dで残して、あとから測る。
実際の画面と動画で使い方を確認できます。

LRTK Phoneの使い方・実例を見る
資料請求導入相談
現場をスマホで3DスキャンLRTK Phone実例を見る