LRTKレフィクシア株式会社

配電設備の防火区画貫通部を安全に保つ5つの点検基準

建物内の配電設備では、幹線ケーブル、分岐ケーブル、電線管、ケーブルラックなどが壁や床を通過します。通過する壁や床が防火区画を構成している場合、貫通部分には区画に求められる防火性能を損なわないための処理が必要です。しかし、竣工時には適切に処理されていても、設備の増設、ケーブルの撤去、支持金物の緩み、充填材の劣化などによって、貫通部の状態が変わることがあります。 防火区画貫通部の異常は、配電設備の通常運転に直ちに影響しない場合が多いため、日常点検では見落とされがちです。通電状態や絶縁性能に問題がなくても、区画に隙間や損傷があれば、火災時に炎、熱、煙が隣接区画へ広がる経路になるおそれがあります。配電設備の保守担当者には、電気的な異常だけでなく、ケーブル経路を含む建築側の防火機能にも目を向けることが求められます。 この記事では、配電設備の防火区画貫通部を安全に保つための5つの点検基準を解説します。点検前に確認すべき資料、現場で見落としやすい変化、不具合を発見した場合の対応、記録を継続的な管理につなげる方法まで、実務担当者が現場で活用しやすい形で整理します。

防火区画貫通部が配電設備の安全を左右する理由

防火区画は、建物内で発生した火災の拡大を一定範囲に抑え、避難や消防活動に必要な時間を確保するための重要な仕組みです。防火区画を構成する壁や床にケーブルを通すための開口を設けた場合、そのままでは区画が連続しません。開口とケーブルの間を、設計条件に適合する材料や構成で処理し、壁や床に必要な性能を維持する必要があります。 建築基準法施行令では、防火区画に関する基準に加え、給水管、配電管その他の管が防火区画等を貫通する場合の構造上の条件が定められています。ただし、必要な措置は建物の用途、区画の種類、壁や床の構造、貫通する設備、採用された構造方法などによって異なります。そのため、現場で一律の数値や材料だけを基準に判断するのではなく、対象建物に適用される法令、設計図書、認定内容、施工要領を照合することが重要です。 配電設備では、電気室から各階へ伸びる幹線、電気設備用の縦シャフト、天井裏のケーブルラック、床下配線などに多数の貫通部が存在します。これらの場所は増改修の影響を受けやすく、ケーブルが追加されるたびに貫通処理へ手が加えられることがあります。新しいケーブルを通すために充填材を一部取り除き、その復旧が不十分なままになると、見た目には小さな隙間でも本来の施工条件から外れる可能性があります。 反対に、撤去したケーブルの跡も注意が必要です。ケーブルだけを引き抜くと、その形状に沿った穴が残ることがあります。外から見える側だけを簡易的に埋めても、壁の内部や床の下面まで必要な処理が復旧されているとは限りません。片側から見て隙間がないように見えても、それだけで健全と判断しない姿勢が必要です。 防火区画貫通部は、ケーブルの絶縁抵抗や負荷電流のように測定値だけで状態を判定できる設備ではありません。開口寸法、壁や床の厚さ、ケーブルの種類と本数、充填材の厚さ、補助材の配置、施工方向など、複数の条件を組み合わせて確認します。したがって、点検の目的は単に穴の有無を探すことではなく、施工時に成立していた防火上の条件が現在も保たれているかを確かめることにあります。

点検前に区画と貫通処理の条件を確認する

点検を始める前に、まず建物内のどの壁や床が防火区画を構成しているかを確認します。見た目が厚い壁であることや、電気室との境界であることだけでは、防火区画かどうかを正確に判断できません。防火区画図、建築図、電気設備図、竣工図、改修図、施工記録などを照合し、対象となる区画線とケーブル経路を重ねて確認します。 竣工後に間仕切りや用途が変更されている建物では、現在の区画と古い図面が一致していない場合があります。図面だけを信頼するのではなく、防火戸、シャッター、壁の表示、設備用シャフトの構成なども現場で確認し、疑問があれば建築設備の管理担当者や設計者へ照会します。区画の特定が曖昧なままでは、点検対象の漏れや不要な補修につながります。 次に、各貫通部に採用された処理方法を確認します。国土交通大臣の認定を受けた構造方法が用いられている場合は、認定番号、適用できる壁や床、開口寸法、ケーブルや配管の条件、必要な構成材料、施工上の制限などを確認します。認定された区画貫通構造については国土交通省が情報を公開していますが、現場の適否は番号の存在だけでなく、実際の施工が適用条件を満たしているかによって判断する必要があります。 現場に認定表示や施工表示がある場合は、表示内容を撮影し、竣工資料に記載された内容と照合します。ただし、表示が残っていることだけで適正とは判断できません。反対に、表示が見当たらないことだけで直ちに不適合とも断定できません。施工時期や工法によって表示方法が異なることがあるため、資料をたどって確認し、根拠が判明しない箇所は要調査として管理します。 点検前には作業安全も整理します。受電中の配電設備付近では、ケーブルや金属製の支持材へ不用意に触れないことが基本です。高所、狭いシャフト、床開口周辺では、墜落や物体落下への対策も必要になります。古い建物では既存材料の種類が不明なこともあるため、粉じんを発生させる切削、穴あけ、材料の引き抜きなどを点検の延長で安易に行ってはいけません。外観確認を超える調査が必要な場合は、停電範囲、作業資格、建材調査、養生方法を含めて別途計画します。 点検票には、貫通部を特定できる識別番号、建物名、階、室名、壁または床の別、区画の種類、ケーブル経路、処理方法、前回状態を記載しておくと効率的です。現場で初めて対象を探す運用では、暗所や天井裏にある小さな貫通部が抜けやすくなります。事前に図面上で点検順序を決め、貫通部ごとに確認する仕組みを整えることが、5つの点検基準を確実に適用する土台になります。

点検基準1 開口部と充填材に隙間や損傷がないか

第1の点検基準は、開口部と充填材に隙間、亀裂、脱落、浮きなどがないことです。防火区画貫通部の外観点検では、ケーブルと充填材の境界、充填材と壁または床の境界、複数材料を組み合わせた部分の接合部を重点的に確認します。中央部だけがきれいでも、開口の端部に細い隙間が連続していることがあります。 亀裂を見つけた場合は、長さだけでなく、幅、深さ、位置、進行性を確認します。表面仕上げだけの浅いひび割れなのか、充填層の奥まで達している可能性があるのかによって対応が異なります。現場で深さを確認するために工具を差し込むと、健全な部分まで損傷させるおそれがあるため、外観だけで判断できない場合は専門者による調査へ切り替えます。 柔軟性のある材料では、ケーブルの周囲から材料が離れていないか、表面に収縮や硬化が見られないかを確認します。板状の材料を組み合わせた構成では、板のずれ、欠け、割れ、固定部の緩みを確認します。繊維状やブロック状の材料では、局部的な沈み込み、抜け、圧縮不足が疑われる部分を探します。見た目の色や質感だけで材料を決めつけず、施工資料と照合することが大切です。 床の貫通部では、上面からの目視だけでは不十分な場合があります。床下側に必要な材料が脱落していたり、補助材が外れていたりする可能性があるため、安全に接近できる範囲で下面も確認します。壁貫通部についても、片側だけでなく可能な限り両側を確認します。反対側がテナント区画、機械室、閉鎖された天井内などにある場合は、点検不能として放置せず、未確認面があることを記録します。 貫通部に紙、布、一般的な発泡材、用途不明の詰め物などが追加されていないかも確認します。隙間風や害虫対策のために現場判断で材料が詰め込まれると、元の構成が見えなくなるだけでなく、施工条件を損なうことがあります。表面を塗装したり、別のシーリング材で覆ったりした跡も、補修履歴を確認する手掛かりになります。 軽微に見える隙間でも、その場で一般的な充填材を足して完了としてはいけません。防火性能は材料単体ではなく、壁や床、開口、ケーブル、充填材、補助材を含む構成として確認されます。補修の要否や方法は、採用工法の資料と現状を照合して決めます。点検担当者は、隙間を発見する役割と、補修方法を設計する役割を分けて考えることが重要です。

点検基準2 使用材料と施工状態が確認資料に合っているか

第2の点検基準は、現場の使用材料と施工状態が、設計図書、施工要領、認定内容などの確認資料に合っていることです。防火区画貫通部は、表面が隙間なく埋まっているだけでは健全と判断できません。外観が似ている材料でも、用途や性能、施工できる厚さ、組み合わせ条件が異なる場合があります。 確認では、壁と床のどちらに用いる工法か、区画を構成する部材の種類と厚さが対象条件に含まれているかを見ます。軽量な間仕切り壁へ適用する構成と、コンクリート壁へ適用する構成が同じとは限りません。床用の構成を壁へ流用したり、施工可能な方向と異なる向きで使用したりすると、想定された性能を確認できない可能性があります。 貫通するケーブルについても、種類、本数、外径、束ね方、ケーブルラックや電線管の有無などを確認します。一本の細いケーブルを通す構成と、多数のケーブルを束ねて通す構成では、火災時の挙動や隙間の形状が異なります。認定工法が採用されている場合は、適用できる開口寸法、占積の条件、ケーブル相互の間隔、壁や床からの離隔、必要な充填深さなどを施工資料で確認します。 材料の施工厚さは、表面からの見た目だけでは分からないことがあります。過去の施工写真、施工中の測定記録、材料使用量、施工者の記録が残っていれば、外観点検の結果と合わせて確認します。根拠資料がない箇所で、点検担当者が材料を削って厚さを測る行為は避けます。破壊を伴う確認が必要であれば、補修まで含めた調査計画を立てる必要があります。 固定金物、補助板、支持材などが構成の一部になっている場合は、それらの欠落や取り付け状態も確認します。内装工事や設備改修の際に、作業の支障になる部材として取り外され、元に戻されていないことがあるためです。表面の充填材だけに注目すると、背面側の補助材や開口周囲の固定状態を見落とします。 表示ラベルには、工法を識別できる情報、施工年月、施工者、対象区画などが記載されていることがあります。文字が消えて読めない場合や、表示内容と現場の構成が一致しない場合は、写真だけで判定せず、竣工資料や改修履歴まで確認します。同じ壁に複数の貫通部が並ぶ場所では、表示と対象箇所の対応が入れ替わっていないかにも注意が必要です。 確認資料との一致を判断できない場合は、問題なしとして処理するのではなく、判定保留として管理します。資料不足と施工不良は同じ意味ではありませんが、防火性能を説明できない状態を放置することも適切ではありません。設計者、建築設備の管理担当者、専門施工者などへ確認し、必要に応じて復旧方法を決めます。

点検基準3 ケーブルの増設や撤去で条件が変わっていないか

第3の点検基準は、竣工後のケーブル増設や撤去によって、貫通処理の成立条件が変わっていないことです。配電設備は建物の運用に合わせて更新されるため、貫通部の状態も変化します。負荷設備の追加、盤の更新、通信配線の増設、不要回路の撤去などが行われた箇所は、重点的に確認する必要があります。 増設時によく起こるのは、既存の充填材へ小さな穴を開けてケーブルを通し、周囲を十分に復旧していない状態です。ケーブルの周囲に環状の隙間が残る場合や、奥側の材料が押し出されている場合があります。表側だけに材料を塗り足すと、内部に空洞が残ったまま外観だけが整うこともあります。 ケーブル本数の増加によって、適用できる開口寸法や充填状態の条件から外れていないかも確認します。開口内にケーブルを過度に詰め込むと、ケーブル同士の間へ必要な材料を施工できなくなる場合があります。特に束の中心部は外から見えにくく、周囲を覆っただけでは内部の状態を確認できません。増設本数だけでなく、ケーブル外径、束ね方、開口内の配置が変わっていないかを見ます。 新しいケーブルが既存材料を押し上げたり、板状材料を変形させたりしている場合もあります。増設作業時にケーブルを強く引くと、充填材と壁の境界が剥がれることがあります。ケーブルラックの位置が変更され、貫通部へ斜めにケーブルが入るようになった場合は、開口端部への接触や偏った荷重も確認します。 撤去後は、ケーブル跡の穴が確実に復旧されているかを確認します。撤去対象のケーブルを途中で切断し、貫通部内に残置している場合は、その状態が既存工法の条件に影響しないかを判断しなければなりません。使われていないケーブルだから防火上の影響がないとは限りません。残置の可否は電気設備の管理だけでなく、貫通処理の適用条件からも確認します。 予備開口や将来増設用の空きスペースも点検対象です。蓋が外れている、仮塞ぎの材料が劣化している、増設後に表示が更新されていないといった変化が起きやすいためです。将来用として設けた部分であっても、現在の防火区画に開口が存在する以上、運用中に必要な状態を保つ必要があります。 増設や撤去を設備工事の完了だけで終わらせず、防火区画の復旧確認までを工事手順に含めることが重要です。施工前の写真、施工中の構成、完了後の両面写真を残し、変更したケーブルと貫通部をひも付けます。工事担当者と施設管理者の間で復旧確認の責任範囲を明確にすると、後から施工者や変更内容が分からなくなる事態を防ぎやすくなります。

点検基準4 ケーブルと貫通処理に無理な荷重がかかっていないか

第4の点検基準は、ケーブルや電線管が適切に支持され、貫通処理へ無理な荷重がかかっていないことです。防火区画貫通部に用いる材料は、ケーブルラックや配管を支持するための構造ではありません。支持金物が緩んだり、吊り材が変形したりすると、ケーブルの重量や引張力が貫通部へ集中し、隙間や亀裂を生じさせることがあります。 床貫通部では、立ち上がる幹線ケーブルの重量が下方向へ作用します。ケーブル支持が不足すると、充填材へケーブルが食い込んだり、材料が床下面から押し出されたりする可能性があります。上階から確認したときに異常がなくても、下面側では材料の変形や脱落が進んでいる場合があるため、上下両側の確認が重要です。 壁貫通部では、ケーブルラックと開口の位置関係を確認します。ラックが下がると、ケーブルが開口の下端へ押し付けられます。反対に、配線変更でケーブルが上方へ強く引かれると、充填材との境界に隙間ができます。ケーブルが不自然に曲がっている、表面に擦れた跡がある、貫通部の片側だけに偏っているといった状態は、支持位置や張力に問題がある兆候です。 電線管が貫通する箇所では、管の固定状態、継手の緩み、腐食、変形を確認します。管が振動する設備につながっている場合、その振動が貫通部へ伝わる可能性があります。空調機、ポンプ、生産設備などの運転開始後に振動条件が変化することもあるため、停止中の外観だけでなく、必要に応じて安全な距離から運転時の揺れや異音も確認します。 ケーブルラックや支持金物を増設した際に、防火区画を構成する壁や床へ新たな穴を開けていないかも確認します。支持材用の小さな穴であっても、区画への影響を確認する必要があります。また、支持金物の固定作業によって既存の貫通処理が欠けたり、工具が接触して表面を損傷したりすることがあります。 地震、設備の移設、建物の変形などがあった後は、通常点検とは別に貫通部を確認します。壁とラックの相対変位によってケーブルが引っ張られたり、充填材が押しつぶされたりする可能性があるためです。大きな損傷が見当たらなくても、前回写真と比較してケーブルの位置や材料の形状が変わっていないかを確認すると、初期の異常を見つけやすくなります。 荷重や支持の異常が原因で隙間が生じた場合、充填材だけを補修しても再発するおそれがあります。先に支持金物の緩み、ケーブルの張力、ラックの変形などの原因を解消し、その後に適切な方法で貫通処理を復旧することが基本です。原因と結果を分けずに確認することが、再発防止につながります。

点検基準5 周辺環境による劣化や再発の兆候がないか

第5の点検基準は、漏水、結露、腐食、振動、汚損など、周辺環境による劣化や再発の兆候がないことです。防火区画貫通部の材料が適切でも、設置環境が変化すると状態を長期間保てない場合があります。点検では貫通部そのものだけでなく、周囲の壁、床、天井、配管、ケーブルラックまで視野を広げます。 水分の影響は特に注意が必要です。床面に水染みがある、壁を伝った跡がある、材料が変色している、表面に膨れや崩れが見られる場合は、上階の漏水、配管からの結露、外壁からの浸水などを調べます。材料の変色だけで直ちに性能低下とは断定できませんが、吸水や繰り返しの乾湿が疑われる場合は、施工資料に基づいて健全性を確認する必要があります。 金属製スリーブや支持金物に腐食がある場合は、表面のさびだけでなく、固定力や周辺材料への影響を確認します。腐食生成物による膨張が周囲の材料を押し出し、亀裂を生じさせることがあります。ケーブルラックの腐食が進んでいると支持性能にも関係するため、防火処理だけを個別に補修せず、電気設備全体の保全課題として扱います。 粉じんや油分が多い場所では、表面の汚れによって細い亀裂や隙間が見えにくくなります。ただし、点検のために強くこすったり、溶剤を使用したりすると材料を傷める可能性があります。清掃方法が不明な場合は、施工資料や管理基準を確認し、乾いた柔らかい用具による周辺清掃など、影響の少ない方法から検討します。 設備の振動が繰り返し加わる場所では、前回点検時と比較して亀裂が伸びていないか、ケーブル周囲の隙間が広がっていないかを確認します。単独の写真だけでは変化を判断しにくいため、同じ方向と距離から定点撮影を行うと有効です。亀裂幅を記録する場合も、測定位置が毎回変わらないよう識別情報を残します。 貫通部の前に収納物や資材が置かれ、点検できない状態も管理上の異常です。異常が発生しても確認できず、改修工事でさらに損傷させる可能性があります。扉付きの点検口がある場合は、開閉できるか、点検に必要な空間が確保されているかを確認します。点検口の内部に鋭利な金属端部や落下物がある場合は、無理に手を入れず、安全な作業方法を整えます。 周辺環境に原因がある場合、貫通部の補修だけでは再発を防げません。漏水経路の修理、結露対策、振動源の確認、支持方法の改善、点検空間の確保などを先行または並行して実施します。防火区画貫通部を単独の部位として見るのではなく、建築、電気、機械設備が接する境界として管理することが重要です。

不具合を発見したときの安全な対応

点検で隙間、脱落、材料不明、ケーブル増設跡などを発見した場合は、最初に場所と状態を記録します。識別番号、階、室名、壁または床の別、確認方向、異常の範囲を残し、全景写真と近接写真を撮影します。写真には対象の位置関係が分かるよう、周辺のラックや壁面も含めます。 その場で手直しできそうに見えても、一般的なシーリング材やモルタルを無条件に追加してはいけません。既存工法と異なる材料を重ねると、適用条件を確認できなくなり、後の調査も難しくなります。応急措置が必要な場合も、建物の管理責任者、設計担当者、専門施工者などと協議し、使用材料、施工範囲、復旧期限を明確にします。 不具合の緊急度は、開口の大きさだけで決めないことが重要です。竪穴区画、避難経路に接する区画、電気室や重要設備室との境界、多数のケーブルが集中する箇所などでは、異常の影響が大きくなる可能性があります。区画の役割、隣接室の用途、火災時の影響、異常の進行性を考慮して優先順位を決めます。 補修前には原因を確認します。ケーブル増設時の復旧漏れであれば、同じ工事で触れたほかの貫通部も調査します。支持金物の変形が原因なら、支持を直さずに充填材だけを補修しても再発する可能性があります。漏水が原因なら、水分の供給を止め、必要な乾燥や材料交換の条件を確認します。 補修完了後は、表面だけでなく、確認可能な両面、表示、支持状態、周辺環境まで再点検します。施工中の写真や使用材料の情報も台帳へ登録します。補修後の状態を基準写真として残せば、次回点検で変化を比較できます。工事完了書類を受け取るだけでなく、現場の識別番号と記録が一致しているかまで確認することが大切です。

点検頻度と対象範囲の決め方

防火区画貫通部の点検頻度は、すべての建物に同じ間隔を機械的に当てはめるのではなく、適用される法令、所管行政庁の扱い、建物用途、設計図書、施設の保全基準などを確認して設定します。法定の調査や検査の対象となる場合は、その要件に従う必要があります。自主点検については、設備変更の多さや環境条件を踏まえて計画します。 ケーブルの追加や撤去が頻繁な施設では、定期点検だけでなく、工事完了時の都度確認が重要です。半年後や一年後の定期点検まで待つ運用では、復旧漏れが長期間残る可能性があります。工事の終了条件に防火区画貫通部の確認を含め、工事担当者と施設管理者の双方で状態を確認する仕組みが有効です。 漏水、地震、火災、設備の大規模な移設など、貫通部へ影響する出来事があった場合は臨時点検を行います。天井改修、間仕切り変更、シャフト内作業など、直接ケーブルを扱わない工事でも貫通部が損傷する可能性があります。工事範囲と防火区画図を事前に照合し、影響が考えられる箇所を抽出します。 点検対象は、目につきやすい電気室内だけに限定しないことが大切です。天井裏、床下、設備用シャフト、倉庫の奥、機械室との境界などにも貫通部があります。隠蔽されていて通常点検では確認できない箇所は、点検不能の理由と範囲を台帳に記録し、点検口の設置や改修工事に合わせた確認を検討します。 初回点検では、全数の位置把握と識別番号の付与に重点を置きます。その後は、全数点検と重点点検を組み合わせる方法も考えられます。ただし、重点点検だけに移行する場合は、選定根拠を明確にし、未確認箇所が固定化しないようにします。変更の多い箇所、過去に不具合があった箇所、漏水や振動の影響を受ける箇所は、確認頻度を高める対象になります。

写真と台帳で防火区画貫通部を継続管理する

防火区画貫通部は、現在の状態だけでなく、いつ、どの工事で、どのように変化したかを追跡できることが重要です。台帳には、識別番号、建物、階、室名、壁または床の別、区画の種類、貫通設備、施工方法、確認資料、点検日、判定、是正状況を記録します。 識別番号は、図面、現場表示、写真、点検票で統一します。同じシャフト内に似た貫通部が並ぶ場合は、番号だけでなく、基準となる壁、扉、盤、柱などとの位置関係も残します。写真を見ても対象箇所を特定できなければ、次回点検で正確な比較ができません。 撮影では、周辺を含む全景、貫通部全体、異常箇所の近接、表示内容の順に記録すると整理しやすくなります。可能であれば毎回同じ方向から撮影し、壁の反対側や床下面の写真も関連付けます。寸法を示す必要がある場合は、安全に配慮し、対象を傷つけない方法で測定します。 判定区分は、単純な良否だけでなく、健全、経過観察、要調査、要補修、点検不能などに分けると実務に適します。材料や工法を確認できない箇所を健全扱いにせず、根拠確認が必要な状態として残せます。要補修の箇所には担当者と期限を設定し、完了写真や確認資料が登録されるまで未完了として管理します。 配電設備の改修申請や作業許可と貫通部台帳を連動させることも有効です。ケーブルが防火区画を通る工事では、施工前に対象番号を確認し、施工後に復旧記録を提出する流れを設けます。これにより、施設管理者が把握しないまま貫通部へ変更が加えられるリスクを抑えられます。

まとめ

配電設備の防火区画貫通部を安全に保つには、開口部の隙間だけを見るのではなく、材料と施工条件、ケーブル増減、支持状態、周辺環境を一体として確認する必要があります。点検基準となるのは、開口部や充填材に損傷がないこと、確認資料と施工状態が合っていること、設備変更後も適用条件が保たれていること、貫通処理へ無理な荷重がかかっていないこと、劣化を招く環境や再発兆候がないことの5点です。 不具合を発見した場合は、用途不明の材料で安易に埋めず、採用工法と原因を確認してから復旧します。補修後は、施工内容、使用材料、確認写真を台帳へ反映し、次回点検で変化を追える状態にすることが重要です。 貫通部の場所や点検写真、是正状況を現場で記録し、関係者へ共有する運用を整える場合は、LRTK Phoneの活用も検討できます。屋内では衛星測位を利用しにくい場所があるため、階、室名、設備番号、図面上の位置などと写真を組み合わせて管理することがポイントです。配電設備の点検記録を現場ごとの確実な履歴として残し、防火区画貫通部の小さな変化を見逃さない保全体制につなげましょう。

現場を3Dで残して、あとから測る。
実際の画面と動画で使い方を確認できます。

LRTK Phoneの使い方・実例を見る
資料請求導入相談
現場をスマホで3DスキャンLRTK Phone実例を見る