LRTKレフィクシア株式会社

配電設備の直列リアクトル異音を切り分ける7つの診断項目

配電設備に設置される直列リアクトルから、これまで聞こえなかったうなり音、振動音、金属が触れ合うような音が発生すると、設備担当者は故障の前兆ではないかと不安を感じます。しかし、直列リアクトルは通電中に電磁力や磁わいの影響を受けるため、正常な状態でも一定の音や振動を生じることがあります。音が聞こえたという事実だけで、直ちに内部故障と判断することはできません。 一方、以前より音が大きくなった、負荷の変化に伴って音質が変わる、特定の相だけ温度が高い、焦げ臭さや変色があるといった兆候が重なっている場合は、電流の不平衡、高調波の増加、締結部の緩み、絶縁劣化などを疑う必要があります。異音の原因を適切に切り分けるには、聴覚だけに頼らず、運転条件、電気量、温度、振動、外観、保全履歴を組み合わせて評価することが重要です。 本記事では、配電設備の直列リアクトルで異音が発生したときに確認したい7つの診断項目を、現場での安全確保と記録方法を含めて解説します。

直列リアクトルから音が発生する仕組み

直列リアクトルは、一般に進相コンデンサと組み合わせて使用され、高調波の影響を抑えることや、コンデンサ投入時の突入電流を抑制することなどを目的として設置されます。配電設備では、受電電力の力率改善を図るために進相コンデンサ設備が用いられ、その回路に直列リアクトルが組み込まれていることがあります。 直列リアクトルの巻線に交流電流が流れると、鉄心や巻線には周期的な電磁力が作用します。鉄心を使用する構造では、磁束の変化によって鉄心がわずかに伸縮する磁わいも発生します。これらの力が鉄心、巻線、絶縁材、支持金具、外箱などに伝わることで、うなり音や微細な振動が生じます。そのため、一定の低いうなり音が聞こえること自体は、必ずしも異常を意味しません。 重要なのは、音の有無ではなく、基準となる正常時の状態からどのように変化したかです。音圧が明らかに増えた、低いうなり音に高い音が混ざるようになった、断続的な打音が発生するようになった、運転開始から時間がたつほど音が大きくなるといった変化は、原因を調べるきっかけになります。 また、直列リアクトルから聞こえるように感じても、実際には隣接する進相コンデンサ、電磁接触器、開閉器、変圧器、盤の扉、換気装置などが音源になっている場合があります。盤や架台を伝わる振動によって発生位置が分かりにくくなることもあるため、音源を決めつけずに周辺設備を含めて確認する必要があります。

異音診断を始める前の安全確認

直列リアクトルの異音確認では、充電部への接近、アーク、感電、火傷などの危険を考慮しなければなりません。音源を探すために顔や手を盤内へ近づける行為や、運転中の機器に触れて振動を確かめる行為は避けます。点検は設備の管理区分、作業手順、必要な資格、保護具、接近限界などを確認したうえで、事業所の安全規程に従って実施します。 盤扉を開ける必要がある場合は、通電状態での開放が認められている設備か、作業者に必要な教育や資格があるか、アーク事故に対する保護が確保されているかを事前に確認します。異音の程度が大きい場合や、煙、強い異臭、著しい変色、部品の変形が認められる場合は、無理に接近して調査を続けず、安全な位置から状態を確認し、設備責任者へ連絡します。 停止して詳細点検を行うときは、単に開閉器を切るだけでは不十分です。電源の遮断、誤投入防止、無電圧の確認、必要な接地、進相コンデンサの残留電荷への対応など、設備に定められた停電作業手順を守ります。進相コンデンサには放電装置が設けられている場合がありますが、放電完了を外観だけで判断してはいけません。所定の待機時間や確認方法は、設備の仕様、回路構成、保守要領に従います。 異音診断の目的は、原因を早く見つけることだけではありません。調査中の事故を防ぎ、異常を拡大させず、安全な判断につなげることが最優先です。測定器の定格、測定箇所、測定方法も事前に確認し、不明な状態で通電部へ測定端子を当てることは避けます。

診断項目1 運転条件と異音の発生タイミング

最初に確認したいのは、異音がいつ、どのような運転条件で発生したかです。異音が常時発生しているのか、進相コンデンサの投入直後だけなのか、負荷が増えた時間帯に強くなるのかによって、疑うべき原因が変わります。 投入時に短時間だけ大きな音が発生する場合は、投入時の過渡現象や突入電流の影響を受けている可能性があります。ただし、投入のたびに衝撃的な音が続く、以前より音が大きくなった、保護装置が動作する、開閉器にも異常な振動があるという場合は、通常の投入現象だけで片付けず、回路と機器の状態を詳しく確認する必要があります。 運転中に連続して音が大きくなる場合は、負荷電流、高調波電流、電圧変動、周囲温度、冷却状態などとの関係を調べます。工場設備であれば、大容量の電力変換装置、溶接設備、整流負荷、速度制御装置などの稼働時間と異音の発生時間が重なっていないかを確認します。特定の設備が運転したときだけ異音が強くなるなら、負荷側から流入する高調波の影響を疑う手掛かりになります。 異音の発生時刻だけでなく、消失する条件も重要です。負荷が下がると静かになるのか、進相コンデンサを回路から切り離すと止まるのか、複数段あるコンデンサ設備の特定段を投入したときだけ発生するのかを記録します。ただし、原因確認のために設備を不用意に開閉することは避け、操作は運用手順と責任者の判断に従って行います。 周囲温度や天候との関係も確認します。高温時だけ音が変わる場合は、部材の熱膨張、冷却条件、負荷の季節変動が関係している可能性があります。雨天や高湿度の後に異音が発生する場合は、盤内への湿気の侵入、絶縁物表面の汚損、結露なども確認対象になります。発生条件を時系列で整理すると、電気的な原因と機械的な原因を切り分けやすくなります。

診断項目2 音質と発生位置

異音は「大きい」「小さい」だけでなく、音質、周期、継続時間、発生位置に分けて記録します。低く連続するうなり音、細かいびびり音、金属同士が触れるような音、周期的な打音、放電を思わせる断続音では、想定される原因が異なります。 低いうなり音が負荷電流に応じて変化する場合は、鉄心の磁束や電磁力に関係している可能性があります。従来と同程度で安定しており、温度や電流にも異常がなければ、直ちに故障とは限りません。一方、うなり音が急に増えた場合や、音に粗さが加わった場合は、過電流、高調波、締結部の緩み、鉄心や巻線の固定状態の変化などを検討します。 細かいびびり音は、外箱、端子カバー、盤の扉、保護網、銘板、配線支持材などの共振で発生することがあります。直列リアクトル本体が振動源であっても、実際に大きな音を放射している部分が盤の薄板や扉であるケースもあります。この場合、音が大きい場所と不具合が存在する場所が一致するとは限りません。 金属的な打音や不規則な衝撃音がある場合は、支持金具の緩み、部品の接触、固定部の劣化などを慎重に確認します。放電を疑わせるパチパチという音や、音と同時に臭気、発光、変色が認められる場合は、絶縁異常の可能性を考え、安全を確保して運転継続の可否を判断します。 音源の特定には、毎回同じ安全な位置から聞き比べることが有効です。正面、側面、背面などの観測位置を決め、直列リアクトル本体、盤扉、開閉器、コンデンサ、換気部のどこで音が強いかを比較します。聴診棒のように導電性のある器具を通電設備へ近づける方法は危険を伴うため、安易に行いません。測定機器を使用する場合も、対象設備に適した非接触方式や安全な設置方法を選びます。 録音データを利用するときは、自動音量調整や周囲騒音によって実際の音の大きさが変わって記録される可能性があります。そのため、録音だけで正常と異常を判定せず、測定位置、距離、扉の開閉状態、周囲設備の稼働状況を併記することが大切です。

診断項目3 三相の電圧・電流と不平衡

直列リアクトルの異音を電気的に切り分けるうえで、三相の電圧と電流の確認は基本となります。特定の相だけ電流が大きい、三相の値に継続的な差がある、過去の測定値から増加しているといった状態では、直列リアクトル、進相コンデンサ、接続部、保護装置を含む回路の異常を疑います。 進相コンデンサの素子劣化や容量変化、ヒューズの動作、端子接続不良などがあると、相ごとの電流バランスが崩れることがあります。その結果、特定相の直列リアクトルに通常とは異なる電磁力や発熱が生じ、音の変化として現れる可能性があります。ただし、不平衡の原因は直列リアクトル本体に限らないため、コンデンサ回路全体を確認することが必要です。 測定では、異音発生中の値だけでなく、正常時の基準値、設備の負荷、投入段数、母線電圧、周囲温度も記録します。同じ電流値であっても、設備の定格や運転条件によって評価は変わります。単一時点の測定結果だけを見て過負荷や異常と断定せず、銘板値、設計資料、保護設定、過去の傾向と照合します。 電圧が想定より高い状態では、進相コンデンサ回路に流れる電流や直列リアクトルの磁束状態へ影響する可能性があります。また、軽負荷時に進相コンデンサが過剰に投入されていると、受電点の力率や電圧の状態が適切でない場合があります。自動力率調整を行う設備では、投入と開放が短時間に繰り返されていないかも確認します。 電流値が安定せず周期的に変動する場合は、負荷設備の運転パターン、コンデンサ段の制御、接触器の状態などを合わせて調べます。電流の変化と異音の強弱が同期しているなら、電気的な励振が音に影響している可能性が高まります。反対に、電流がほぼ一定なのに音だけが不規則に変化する場合は、固定部や筐体の共振など、機械的な原因も視野に入ります。

診断項目4 高調波と共振の可能性

高調波は、直列リアクトルの異音や過熱を考える際に見落とせない要素です。配電系統に電力変換装置や整流回路を含む負荷が増えると、基本波以外の周波数成分を含む電流が流れることがあります。高調波電流が直列リアクトルへ流入すると、磁束や電磁力の波形が複雑になり、通常とは異なる音質や振動が生じる可能性があります。 直列リアクトルは、高調波への対策を考慮して進相コンデンサと組み合わせられますが、設置されているからといって、あらゆる高調波条件で問題が生じないとは限りません。系統構成、リアクトルとコンデンサの組み合わせ、設備容量、負荷側の高調波発生量などによって状況は変化します。設備の増設や生産機器の更新後に異音が始まった場合は、変更前後の負荷構成を比較することが重要です。 高調波を確認するときは、総合的なひずみの指標だけでなく、どの次数の成分が増えているか、電圧と電流のどちらに顕著な変化があるか、時間帯によってどのように推移するかを見ます。測定値の評価には、受電設備の構成や測定点の違いも影響するため、測定位置と運転状態を明確に記録します。 異音の周波数成分を分析できる場合は、電源周波数との関係や、その整数倍の成分が強くなっていないかを確認する方法もあります。ただし、盤や建屋の固有振動によって特定の音が増幅されることがあり、音の周波数だけで高調波の次数や故障箇所を確定することはできません。電気量の測定結果と照合して判断します。 共振が疑われる場合は、直列リアクトル単体ではなく、進相コンデンサ容量、リアクトルの仕様、母線の短絡容量、負荷構成、他のコンデンサ設備の投入状態などを含めた系統全体の検討が必要です。設備の定数や回路構成を確認せずに容量変更や機器追加を行うと、新たな問題を招くおそれがあります。必要に応じて設備設計者や保守を担当する専門技術者へ解析を依頼します。

診断項目5 温度上昇・臭気・変色

異音に温度上昇が伴っているかどうかは、緊急度を判断する重要な材料です。直列リアクトルは運転中に発熱しますが、定格、周囲温度、通風条件、負荷電流などによって通常時の温度は異なります。表面が温かいという理由だけで異常とは判断できないため、同一条件における過去値や三相間の差を比較します。 非接触で表面温度を確認する場合は、測定距離、測定角度、対象表面の材質、放射率、周囲からの反射などが測定結果に影響します。光沢のある金属面は実際と異なる温度を示すことがあるため、数値をそのまま絶対的な温度として扱うのではなく、同じ条件での相対比較や経時変化の把握に利用します。 特定の相、端子、巻線付近だけが周囲より高温になっている場合は、電流不平衡、接続部の抵抗増加、巻線の異常、高調波電流などを疑います。直列リアクトル本体は均等に見えても、端子部や接続導体に局所的な発熱が生じている場合があります。温度分布を確認するときは、本体だけでなく端子、ケーブル接続部、ヒューズ、開閉器、進相コンデンサの接続部も対象にします。 焦げ臭いにおい、樹脂が加熱されたようなにおい、油や絶縁材料に由来すると考えられる異臭は、絶縁物や接続部の過熱を示す可能性があります。異臭が強い場合は、臭いの発生源を探すために盤へ接近し続けるのではなく、安全を確保し、運転停止を含む対応を検討します。 変色、すす、塗装の浮き、絶縁物のひび、端子周辺の黒化、巻線表面の異常なども重要な兆候です。ただし、ほこりや経年による色の違いを熱劣化と誤認することもあります。過去の写真と比較し、変化がいつから生じたかを確認すると判断しやすくなります。 異音、温度上昇、異臭、変色が同時に認められる場合は、単なる共振音よりも電気的または熱的な異常の可能性を重く見ます。反対に、音だけが変化し、電流、温度、外観に変化がない場合は、筐体や支持部の機械的な振動も含めて調査します。

診断項目6 締結部・支持部・筐体の状態

直列リアクトルの異音は、電気的な異常だけでなく、機械的な緩みや共振によっても発生します。鉄心、巻線、絶縁部材、支持金具、基礎ボルト、盤のパネルなどは、通電中の微振動や温度変化を繰り返し受けます。固定状態が変化すると、正常な電磁振動が増幅され、びびり音や打音として聞こえることがあります。 停止・無電圧・放電確認後の点検では、直列リアクトル本体の固定、架台、基礎、支持金具、端子部、接地線、盤扉、カバー、保護網などを確認します。目視では、ボルト周辺のずれ、座金の浮き、塗膜の割れ、摩耗粉、接触痕、長穴部分の移動などが手掛かりになります。振動で部品同士が接触していると、接触部分だけ塗装が剥がれていることもあります。 締結部を確認する際は、増し締めをすればよいと短絡的に考えないことが大切です。端子や構造部には所定の締付条件があり、過大な締付けは部品の変形、ねじ部の損傷、絶縁物への過度な応力につながります。締付けが必要な場合は、設備の図面、保守要領、指定された締付条件を確認し、適切な工具と手順で実施します。 盤扉や外箱の共振を疑う場合でも、運転中に手で押さえて音の変化を試すことは危険です。非充電部に見える部分でも、設備の状態によっては感電やアークの危険があります。確認が必要な場合は停止後にクリアランス、パッキン、ヒンジ、ラッチ、カバーの固定などを点検します。 床や架台から振動が伝わり、他の盤や建屋部材が音を発している場合もあります。直列リアクトルの近傍だけでなく、基礎、共通架台、隣接盤のパネル、ケーブルラックなども確認すると、振動の伝達経路を把握しやすくなります。防振材が使用されている場合は、硬化、割れ、つぶれ、位置ずれなどがないかを見ます。 清掃状態も見逃せません。異物がカバーや換気部へ接触していると、振動によって音が発生することがあります。また、粉じんの堆積は放熱や絶縁状態に影響する可能性があります。清掃を行う際も、設備に適した方法を選び、絶縁物や巻線を傷めないようにします。

診断項目7 絶縁状態と周辺機器の影響

異音が直列リアクトル内部の絶縁劣化や放電に関係している可能性もあります。絶縁物の汚損、吸湿、ひび割れ、熱劣化、巻線の損傷などが進むと、放電音、異臭、変色、絶縁抵抗の低下といった兆候が現れる場合があります。ただし、音だけで内部絶縁の状態を断定することは困難です。 停止後の点検では、絶縁物表面の汚れ、炭化痕、沿面放電を疑う痕跡、ひび割れ、変形、巻線表面の異常などを確認します。絶縁抵抗測定やその他の試験を行う場合は、直列リアクトル単体に適した試験条件を確認し、接続されている進相コンデンサや計器類への影響を考慮します。回路を切り離さずに試験すると、正しい評価ができないだけでなく、周辺機器へ不適切な電圧を加えるおそれがあります。 異音の原因が周辺機器にある可能性も十分に考えられます。進相コンデンサの膨れ、漏れ、端子異常、容量変化、保護用ヒューズの状態、開閉器の接触不良、電磁接触器のチャタリングなどは、直列リアクトルの電流や振動へ影響します。コンデンサ設備が複数段で構成されている場合は、特定段の投入時だけ異音が生じないかを運転履歴から確認します。 制御電圧の低下や接点の劣化により、電磁接触器が細かく開閉を繰り返すと、機械的な異音が直列リアクトル付近から聞こえるように感じることがあります。また、自動制御の設定や検出値が適切でないと、コンデンサ段の投入と開放が頻繁になり、リアクトルと開閉器の双方に繰り返しの負担が加わる可能性があります。 保全履歴では、直列リアクトルの交換時期だけでなく、進相コンデンサ、開閉器、ヒューズ、制御装置、負荷設備の変更時期も確認します。異音が設備更新や負荷増設の直後に始まっている場合は、その変更内容が原因究明の重要な手掛かりになります。 絶縁診断や内部調査は、設備の構造と試験方法に関する知識を必要とします。外観と一般測定だけで原因が特定できない場合は、分解や試験を独自に進めず、設備管理者、保守担当者、設計者などと協議して診断範囲を決めます。

複数の診断結果を組み合わせる判断方法

直列リアクトルの異音は、単独の測定結果で判断するよりも、複数の兆候を組み合わせて評価することが重要です。音が増加していても、三相電流、表面温度、外観が安定し、盤扉の固定状態に変化が見つかった場合は、機械的な共振が主因である可能性があります。 一方、異音の増加と同時に、特定相の電流増加、局所的な温度上昇、焦げ臭さ、絶縁物の変色が認められる場合は、電気的または熱的な異常を優先して考えます。負荷設備の稼働に同期して高い音が増え、高調波成分にも変化が見られるなら、負荷側からの高調波流入や回路条件の変化を調べる必要があります。 診断では、原因を一つに絞り込もうとするあまり、別の異常を見落とさないようにします。例えば、直列リアクトルの振動で盤扉が共振している場合でも、振動そのものが高調波電流の増加によって強くなっている可能性があります。この場合、盤扉の固定だけを直して音を小さくしても、根本的な電気的要因が残ることがあります。 判断の基準には、設備固有の正常値を用いることが理想です。同型機との比較は有効ですが、設置場所、負荷、通風、経年、回路構成が異なれば、音や温度も一致しません。日常点検で蓄積した同一設備の過去データは、異常傾向を判断するうえで大きな価値があります。 運転継続の可否は、異音の大きさだけで決めません。煙、発光、強い異臭、急激な温度上昇、保護装置の動作、筐体の変形など、事故につながり得る兆候を優先して判断します。停止による影響が大きい設備であっても、安全上の懸念がある場合は、関係者間で速やかに情報を共有し、設備の運用規程に基づいて対応します。

再現性のある点検記録を残す方法

異音診断の精度を高めるには、担当者が変わっても比較できる記録を残すことが重要です。「大きな音がした」「いつもと違った」という記述だけでは、後日の比較や専門技術者への説明が難しくなります。 記録には、点検日時、設備番号、対象回路、進相コンデンサの投入段数、負荷状況、母線電圧、各相電流、周囲温度、盤扉の状態、異音の発生位置、音質、継続時間などを含めます。異音が特定の負荷設備と連動している場合は、その設備の運転状態も記録します。 写真は、撮影位置と方向を固定すると経時比較がしやすくなります。直列リアクトル全体、端子部、支持部、盤内部、銘板、変色や接触痕の拡大写真を使い分けます。撮影時に充電部へ接近する必要がある場合は、写真記録を優先して安全を損なうことがないようにします。 録音や動画を残す場合は、対象からの距離、撮影方向、周囲の稼働機器、盤扉の開閉状態を記載します。毎回条件が違う録音を音量だけで比較すると、実際には変化がないのに大きくなったように聞こえることがあります。可能な範囲で同じ位置、同じ距離、同じ設定を用いることが大切です。 測定値には、使用した測定器、測定点、測定時間、運転条件を関連付けます。温度画像だけを保存しても、どの設備をどの方向から撮影したのか分からなければ、後から活用できません。設備番号や位置情報と写真をひも付け、再点検時に同じ場所へたどり着ける状態にしておきます。 記録は異常発生後だけでなく、正常時から蓄積します。正常時の音、電流、温度、振動を把握していれば、小さな変化を捉えやすくなります。異常の有無を一回ごとに判定するだけでなく、時間の経過に伴う変化を追うことが予防保全につながります。

異音を確認したときの初動対応

直列リアクトルの異音を確認したら、まず安全な位置から煙、発光、異臭、著しい振動、変形、保護装置の動作がないかを確認します。緊急性の高い兆候がある場合は、設備に定められた連絡体制と停止手順に従います。原因を確かめるために接近したり、盤を開放したりすることを優先してはいけません。 直ちに危険が認められない場合は、発生時刻、運転状態、音質、継続時間を記録し、電流や温度など安全に取得できる情報を集めます。その後、過去記録との比較、同一回路の周辺機器確認、負荷運転との対応関係の整理を進めます。 異音が一度消えた場合でも、記録を残さずに正常と判断するのは避けます。投入時だけ発生する音や、特定の負荷条件で発生する音は、点検時に再現しないことがあります。発生条件が分かれば、計画停止時の点検範囲や測定内容を具体化できます。 応急対応で音が小さくなった場合も、原因が解消されたかを確認します。盤扉の固定を調整して音が止まっても、直列リアクトルの振動が増加した原因が別に残っている可能性があります。処置前後の電流、温度、振動を比較し、一定期間の経過観察を行います。 交換や仕様変更が必要と判断された場合は、直列リアクトルだけでなく、組み合わせる進相コンデンサ、回路電圧、設備容量、高調波条件、保護協調などを確認します。外形や定格電流が近いという理由だけで代替機器を選定すると、回路として適切に機能しない可能性があります。設備の設計条件を把握した専門技術者と協議して選定します。

配電設備の点検記録をLRTK Phoneで管理する考え方

配電設備の異音管理では、測定値だけでなく、どの設備を、どの位置から、どの条件で確認したかを明確にすることが重要です。構内に複数の受変電設備、屋外盤、コンデンサ設備が点在している場合は、設備名称だけでは場所の取り違えが起こることがあります。 屋外設備の位置と点検写真を関連付けて管理する方法として、LRTK Phoneを活用できます。点検対象の位置情報と現場写真をひも付けておけば、同じ形式の設備が複数ある現場でも、どの場所で異音や変色を確認したのかを整理しやすくなります。修繕担当者への情報共有や、次回点検時の対象設備の特定にも役立ちます。 異音が聞こえた位置、周辺設備の配置、撮影方向などを記録しておくと、音源の推定や振動の伝達経路を検討する際の補助情報になります。ただし、位置情報や写真は異音の原因を直接診断するものではありません。電流、温度、高調波、絶縁状態などの測定結果と組み合わせて活用することが前提です。 また、建屋内、地下、金属構造物の近傍などでは、衛星信号を利用した測位が安定しないことがあります。そのような場所では、位置情報だけに依存せず、設備番号、盤名称、系統、階層、区画、撮影方向などを併記します。屋外で位置を取得する場合も、現場の受信環境や測位状態を確認し、必要な精度が得られているかを確かめます。 日常巡視、異音発生時の臨時点検、停止後の詳細点検、修繕後の確認という一連の記録を同じ設備単位で整理すると、変化を追いやすくなります。配電設備の点検情報を位置と写真で分かりやすく残したい場合は、LRTK Phoneを活用した現場記録の方法を検討してみてください。

まとめ

配電設備の直列リアクトルから発生する音には、正常な電磁振動によるものと、電気的・熱的・機械的な異常に伴うものがあります。音が聞こえるという一点だけで故障を断定するのではなく、正常時からの変化を捉えることが診断の出発点です。 異音を切り分ける際は、運転条件と発生タイミング、音質と発生位置、三相の電圧・電流、高調波、温度・臭気・変色、締結部・支持部、絶縁状態と周辺機器という7つの項目を確認します。複数の兆候を照合することで、機械的な共振なのか、負荷や高調波に起因する振動なのか、過熱や絶縁劣化を伴う異常なのかを判断しやすくなります。 診断では安全確保を最優先とし、通電設備へ不用意に接近したり、運転中の機器へ触れたりしないことが重要です。停止点検では、電源遮断、誤投入防止、無電圧確認、残留電荷への対応など、設備ごとの手順を確実に守ります。 さらに、正常時から電流、温度、音、外観を記録しておけば、異音が発生した際に変化を客観的に比較できます。屋外に点在する配電設備の位置と写真を一体的に残す場合は、LRTK Phoneを活用し、再現性のある点検記録づくりへつなげることが有効です。

現場を3Dで残して、あとから測る。
実際の画面と動画で使い方を確認できます。

LRTK Phoneの使い方・実例を見る
資料請求導入相談
現場をスマホで3DスキャンLRTK Phone実例を見る