配電設備の接地は、地絡事故や絶縁劣化などによって生じる電流を大地へ流し、人体や機器への危険を抑えるための重要な設備です。接地極や接地線は地中、基礎周辺、屋外盤の下部など見えにくい場所に設けられることが多いため、腐食、断線、端子の緩み、土壌環境の変化といった異常が進んでも、外観だけでは気づけない場合があります。 接地抵抗は、一度低い値を確認すれば以後も維持されるとは限りません。降雨量、乾燥、凍結、地下水位、周辺工事、埋戻し土の状態などによって測定値が変わるほか、接地極や接続部の劣化によって長期的に上昇することもあります。そのため、単に基準値を下回っているかを確認するだけでなく、同じ条件で測定し、過去の記録と比較して変化を捉えることが大切です。 この記事では、配電設備を管理する実務担当者に向けて、接地抵抗上昇を早期に捉えるための5つの測定ポイントを解説します。測定方法の選び方から補助接地極の配置、接続部の確認、土壌条件の記録、経年変化の評価まで、現場で再現しやすい管理方法に重点を置いて整理します。
配電設備で接地抵抗を管理する目的
配電設備に設けられる接地には、地絡時の電位上昇を抑えること、保護装置を適切に動作させること、機器の金属製外箱などに危険な電圧が残る可能性を低減することなど、複数の役割があります。接地抵抗が想定より高くなると、設備設計時に見込んでいた保護性能を確保できないおそれがあります。 ただし、接地抵抗を測定するだけで上昇そのものを防げるわけではありません。測定の役割は、接地極、接地線、接続部、周辺土壌に生じた変化を数値として早期に把握し、必要な調査や補修につなげることです。点検では、測定値を合否判定だけに使うのではなく、設備の状態を示す時系列データとして扱う必要があります。 接地抵抗の上昇要因は一つではありません。接地極の腐食によって大地との有効な接触面積が減少する場合もあれば、接地線の素線切れや接続端子の緩みにより電気的な経路が悪化する場合もあります。地表面の舗装、盛土、掘削、排水設備の変更によって、接地極周辺の水分状態や土壌構成が変わることもあります。 一方で、実際の接地設備に異常がなくても、補助接地極の位置、測定用リード線の接続状態、近接する埋設金属物、地中の迷走電流などの影響によって、高い値や不安定な値が表示されることがあります。したがって、測定値が上昇したときは、直ちに接地極の劣化と決めつけず、測定条件と設備状態を順番に切り分けなければなりません。 一般的な直読式の接地抵抗測定では、測定対象の接地極と補助接地極を用い、電圧と測定電流の関係から抵抗値を求めます。測定原理を理解せず表示値だけを記録すると、補助接地極同士の干渉や接触不良を見落としやすくなります。測定方法は設備の接地構成によって選ぶ必要があり、単独接地、複数の接地極を接続した連接接地、網状に構成された接地では、測定結果が表す範囲も異なります。 また、配電設備の接地に求められる条件は、接地の種類、電路の構成、電圧、保護装置の動作条件などによって異なります。数値だけを一般化せず、最新の法令、技術基準の解釈、保安規程、設計図書、施工仕様、設備管理基準を確認することが必要です。経済産業省は電気設備の技術基準とその解釈を改正に応じて公開しているため、現場では使用中の資料が最新版かどうかも確認します。経済産業省の電気事業法に関する告示・内規等
測定前に接地方式と判定条件を確認する
接地抵抗測定を始める前に、何を測定し、その数値をどの基準で評価するのかを明確にします。同じ接地端子に見えても、単独の接地極へつながっている場合と、建物の接地網や複数設備の接地極へ連結されている場合では、測定値の意味が異なります。 最初に確認したいのは、接地系統図、単線結線図、接地極配置図、竣工時の試験記録、過去の点検記録です。接地線がどの機器からどこを通り、どの接地極または接地網に接続されているかを整理します。図面と現況が一致しない場合は、推測で測定点を決めず、端子表示、配線経路、導通状態などを確認して実際の構成を把握します。 測定値を法令上の要求値と比較する場合は、対象となる接地工事の区分や保護装置の条件を取り違えないことが重要です。社内管理値が法令上の要求より厳しく設定されている設備もあります。判定欄には単に「良」や「不良」と記載するのではなく、適用した判定基準とその根拠となる文書を残すと、担当者が交代しても同じ条件で評価できます。 測定方法も事前に決めます。補助接地極を用いる方法は、対象接地極そのものの状態を確認しやすい一方、周囲に十分な打設場所が必要です。クランプ式の測定は接地線を外さず作業できる場合がありますが、電流が戻る複数の接地経路が存在することを前提とした測定です。孤立した一つの接地極では測定できないことがあり、表示値も対象接地極単体ではなく接地ループ全体の抵抗を含みます。 簡易的な二極法では、利用する既知の接地側の抵抗や接続経路が測定結果に含まれます。便利な方法であっても、通常の三極法と同じ数値として扱えるとは限りません。異なる測定方法の値を同じグラフに並べる場合は、方法の違いを明記しなければ誤った傾向判断につながります。 作業安全の確認も欠かせません。接地線を不用意に切り離すと、設備の保護機能が一時的に失われたり、接地線に流れていた電流によって危険な電位差が生じたりする可能性があります。停電の要否、開閉操作、無電圧確認、残留電荷、誘導電圧、他系統からの回り込みを確認し、設備の管理責任者が定めた手順に従います。測定は必要な知識と権限を持つ作業者が実施し、雷が接近している状況や安全な作業空間を確保できない状況では中止します。
測定ポイント1 毎回の測定条件をそろえる
接地抵抗の変化を正しく捉える第一のポイントは、測定条件をできる限りそろえることです。測定器、測定方式、接続位置、補助接地極の方向や間隔が毎回異なると、設備の変化よりも測定条件の違いが大きく表れることがあります。 測定点には固有の名称や管理番号を付け、盤名称だけでなく端子位置まで識別できるようにします。同じ盤に複数の接地端子がある場合は、どの端子から測定したのかを記録します。端子の上流側と下流側を取り違えたり、接地網へ接続された状態と切り離した状態が混在したりすると、過去値との比較が成立しません。 使用する接地抵抗計は、測定範囲、分解能、使用可能な環境、測定方式が対象設備に適しているかを確認します。測定器の自己診断、電池残量、リード線の断線、端子の汚れなども事前に点検します。定期的な校正や社内で定めた精度確認の履歴がない測定器では、わずかな経年変化を評価しにくくなります。 測定用リード線は必要な長さまで伸ばし、余った部分を巻いたまま密集させないようにします。電流用と電位用のリード線を長い距離にわたって束ねると、誘導の影響を受ける可能性があります。踏まれる場所、車両の通行経路、水たまり、高温部、鋭利な金属部を避けて敷設し、端子表示に従って正しく接続します。 一回表示された値だけで判定せず、同じ条件で複数回測定して再現性を確認することも重要です。測定のたびに値が大きく変動する場合は、接地極の劣化より先に、端子の接触、補助接地極、リード線、周囲ノイズなどを疑います。測定器が補助接地極の抵抗や外来電圧を確認できる場合は、その表示も記録します。 過去データとの比較では、測定値だけでなく測定方法の変更履歴を確認します。以前は接地網へ接続したまま測定し、今回は単独の接地極として測定したのであれば、値が高くなっても劣化とは限りません。設備の構成変更、接地線の追加、盤の更新などによって並列経路が増減した場合も、見かけの接地抵抗は変化します。 現場で再現性を高めるには、接続箇所と補助接地極の位置を写真や配置図で残します。補助接地極までの距離は歩数だけでなく、一定の方法で計測した値を記録します。次回の作業者が同じ場所へ配置できるよう、基準となる構造物や恒久的な目印との位置関係を残すことが有効です。
測定ポイント2 補助接地極を適切に配置する
補助接地極を用いる測定では、その配置が測定精度を大きく左右します。一般的には、測定対象となる接地極、電位を測る補助接地極、測定電流を流す補助接地極を配置します。各接地極の周囲には電位が変化する範囲が生じるため、互いの影響が重なる位置に補助接地極を置くと、真の値から外れた結果になることがあります。 接地極間の距離は、すべての現場で同じ固定値にすればよいわけではありません。測定対象の接地極の形状、埋設深さ、複数極の広がり、接地網の規模、土壌の性質によって必要な距離が変わります。測定器の取扱説明、設備の測定手順、接地設備の設計条件を確認し、対象に対して十分な間隔を確保します。 基本的な配置では、測定対象の接地極と電流用の補助接地極を結ぶ方向を定め、その間に電位用の補助接地極を設置します。ただし、直線状に置いたという事実だけでは配置の妥当性を確認できません。電位用補助接地極を基準位置から前後へ移動して再測定し、値が大きく変わらない範囲が得られるかを確認します。位置を少し変えただけで値が連続的に増減する場合は、電位分布の影響が重なっている可能性があります。 十分な距離を確保できない狭い敷地では、無理に一方向の値だけを採用せず、配置方向を変えた測定や別の測定方法を検討します。接地極の近くに地中配管、基礎鉄筋、埋設ケーブル、金属柵、他の接地極があると、それらが測定電流の経路に影響することがあります。地上から見えない埋設物もあるため、設備図や埋設物管理図を確認することが重要です。 補助接地極は土壌へ確実に接触させます。表面に砕石、乾燥した砂、アスファルト、厚い敷石などがある場所では、補助接地極を挿しただけでは十分な接触が得られないことがあります。打設可能な場所を選び、測定器が示す補助接地状態を確認します。打設深さや処置は、測定器の手順と現場の安全条件に従います。 補助接地極側の接触を改善するために土壌を湿らせる場合は、その目的と範囲を明確にします。測定対象の接地極周辺へ水をまくと、対象そのものの接地抵抗を一時的に低下させ、通常状態を反映しない結果になる可能性があります。補助接地極だけの接触改善と、測定対象周辺の土壌条件変更を混同してはいけません。 一般的な接地抵抗測定では、測定対象と二つの補助接地極の相互影響を避けることが重要とされています。表示値が得られたかどうかだけでなく、配置変更に対する安定性を確認することで、測定結果の信頼性を高められます。日本電気技術者協会による接地抵抗測定の解説
測定ポイント3 接地線と接続部の状態を確認する
第三のポイントは、接地極だけでなく、測定端子から接地極までの電気的な経路を確認することです。測定値の上昇原因が地中の接地極にあるとは限らず、接地線、圧着部、ボルト接続部、試験端子、接続箱などの劣化によって抵抗が増えている場合があります。 測定前の外観点検では、接地線の変色、緑青、赤さび、被覆の割れ、素線の露出、断面減少、機械的な傷、過熱痕を確認します。端子部では、ボルトの緩み、座金の欠落、異種金属接触による腐食、浸水、泥の堆積、結露などを確認します。地表へ立ち上がる部分は、草刈り、掘削、車両接触、動物などによる損傷を受けやすいため、重点的に見ます。 外観が正常でも、内部で素線が切れていたり、圧着部の奥で腐食していたりすることがあります。必要に応じて接地線の導通や接続部の状態を確認し、接地極まで連続した経路が確保されているかを調べます。ただし、導通試験で抵抗が低いからといって、大地との接触状態まで良好とは限りません。導通確認と接地抵抗測定は目的が異なるため、結果を分けて記録します。 複数の設備が一つの接地網へつながっている場合、別の接地経路を通じて測定電流が流れ、劣化した接地極が見かけ上隠れることがあります。全体として低い値が得られても、特定の接地線が断線している可能性は残ります。接地網全体の接地抵抗と、各設備から接地網までの導通状態を組み合わせて確認することが必要です。 反対に、接地線を切り離して単独測定しようとすると、供用中の設備では危険が生じる場合があります。接地線には通常時でも漏れ電流、誘導電流、ノイズ電流などが流れている可能性があります。切離しの可否は設備状態と作業手順に基づいて判断し、必要な停電、検電、保護措置を実施します。値を正確に測りたいという理由だけで、安全確認を省いてはいけません。 試験用端子や接地端子箱を設けている設備では、点検後の復旧確認も重要です。締付け不足、接続忘れ、工具の置き忘れ、端子箱の閉め忘れがあると、測定作業そのものが新たな異常原因になります。復旧後は目視だけでなく、必要に応じて導通を確認し、作業前後の状態を記録します。 接続部を清掃または補修した結果、接地抵抗が低下した場合は、地中の接地極ではなく接続部が主因だった可能性があります。その場合も単に「改善」と記載するだけでなく、どの接続部にどのような異常があり、どの処置で数値が変化したかを残します。この記録が蓄積されると、同種設備で優先して確認すべき箇所が分かるようになります。
測定ポイント4 土壌と気象条件を記録する
接地抵抗は土壌の電気的な性質に強く影響されます。一般に、土壌中の水分が減少すると抵抗率が高くなりやすく、乾燥期には接地抵抗が上昇することがあります。反対に、降雨直後は接地極周辺の水分が増え、通常より低い値が得られる場合があります。 このため、測定日時だけでなく、天候、降雨の有無、最後の降雨からの経過時間、地表の乾湿、気温、地盤の凍結状況などを記録します。地下水位や排水状況を把握できる設備では、その情報も比較材料になります。数値の変化と環境条件を一緒に見ることで、季節変動と設備劣化を区別しやすくなります。 毎年の定期測定を実施する場合は、できるだけ近い時期、近い時間帯、近い条件で行うと比較しやすくなります。ただし、同じ月に測定すれば必ず同じ土壌状態になるわけではありません。長雨の年と少雨の年では条件が異なるため、日付だけでなく実際の地盤状態を記録します。 接地性能の管理では、降雨後に低い値が出る時期だけを選んで測定するのではなく、乾燥期など接地抵抗が高くなりやすい条件も把握することが大切です。定期点検時の値が良好でも、年間を通じて十分な性能が維持されているとは限りません。重要設備では、通常の定期測定に加え、長期乾燥後などの条件で確認する方法も検討します。 ただし、乾燥時に測定値が上昇したからといって、すべてを自然な季節変動として扱うのは危険です。前年の同時期より大きく上昇している場合や、近隣の同種接地極と異なる変化を示す場合は、腐食や断線などを疑う必要があります。環境条件を記録する目的は異常を免責することではなく、変化の原因を適切に切り分けることです。 周辺工事による土壌環境の変化にも注意します。接地極付近の掘削や埋戻し、舗装、排水溝の新設、建物増築、植栽撤去、法面整備などによって、水分の保持状態や電流経路が変わることがあります。工事で接地線が損傷していなくても、埋戻し材料や締固め状態の違いによって測定値が変化する場合があります。 地盤改良材、融雪剤、海岸部の塩分、工場由来の化学物質などは、土壌の導電性だけでなく接地極の腐食にも影響する可能性があります。一時的に抵抗値が低くても、長期的には接地極の劣化が進んでいることがあります。接地抵抗の低さだけで健全性を判断せず、材料の腐食状態や設置環境を含めて評価することが重要です。
測定ポイント5 単発値ではなく経年変化で判断する
第五のポイントは、測定値を時系列で管理することです。接地抵抗が管理値を下回っているかという判定は必要ですが、それだけでは劣化の初期段階を捉えられません。管理値まで余裕がある設備でも、数年間にわたって上昇が続いていれば、将来の不適合につながる可能性があります。 経年管理では、竣工時または接地設備を更新した直後の値を初期値として残します。その後の測定値を同じ条件で並べ、上昇幅、上昇率、季節変動の範囲を確認します。単年度の小さな差だけで異常と判断するのではなく、測定誤差や環境変化を考慮しながら、複数回の傾向を見ます。 たとえば、雨天後の測定値と長期乾燥後の測定値を直接比較すると、設備劣化以上の差が現れることがあります。この場合は、同じ季節や近い地盤条件のデータ同士を比較するとともに、すべての値を残して変動範囲を把握します。条件の異なる測定結果を削除するのではなく、条件情報を付けて解釈できる形にすることが重要です。 測定値が急に低下した場合も確認が必要です。一般には低い値が望ましいと考えられますが、接地網への意図しない接続、他設備との並列経路、埋設金属物との接触などによって、見かけ上低くなっている可能性があります。設備改修の直後に値が大きく変わった場合は、接地構成が設計どおりかを確認します。 異常判定には、絶対値、前回差、長期傾向の三つを組み合わせます。絶対値が要求条件を満たしていても急上昇している場合は要注意とし、反対に前回差が小さくても要求条件を満たしていなければ対策が必要です。長期的に緩やかな上昇が続く設備では、次回点検までの期間を短縮するなど、状態に応じた管理が有効です。 設備ごとのデータだけでなく、同じ敷地内にある複数の接地極を比較する方法もあります。多くの測定点が同じ方向へ変化している場合は、乾燥や地下水位など共通の環境要因が考えられます。一つの測定点だけが上昇している場合は、その接地極、接地線、接続部に固有の異常がある可能性が高まります。 測定器や測定方法を変更した場合は、可能であれば旧条件と新条件による重複測定を行い、数値差を確認します。機器更新の境目で測定値が変わると、その差が設備変化なのか測定系の違いなのか判断できなくなるためです。記録には測定器の識別番号、測定方式、使用レンジ、点検または校正の状態を含めます。
接地抵抗が上昇したときの切り分け手順
接地抵抗の上昇を確認したときは、最初に測定の再現性を確認します。リード線の差込み、端子の接触、補助接地極の打設状態、電池残量、測定器の警告表示を点検し、同じ条件で再測定します。一度目と二度目の値が大きく異なる場合は、設備劣化の評価へ進む前に測定系を安定させます。 次に、電位用補助接地極の位置を前後へ変えて測定します。位置によって値が大きく変化する場合は、補助接地極の距離不足や周辺埋設物の影響が考えられます。可能であれば配置方向も変え、測定値の安定する条件を探します。敷地条件によって適切な配置を確保できない場合は、その制約を記録し、別方式による確認を検討します。 測定条件に問題が見当たらなければ、接地端子、接地線、接続箱、地表への立上がり部を確認します。清掃や増締めだけで処置を終えず、腐食による断面減少、圧着不良、浸水経路、機械的損傷がないかを調べます。補修後に再測定し、処置前後の差を残します。 その後、周辺環境の変化を確認します。前回測定以降に掘削、舗装、盛土、排水工事、建物増築、地中配管工事などが行われていないかを調べます。施工図面や工事写真だけでなく、現場担当者への聞き取りも役立ちます。接地極付近で重機作業が行われていた場合は、接地線の引張りや接地極の損傷も疑います。 乾燥などの季節要因が考えられる場合でも、管理値を超えた状態を放置してよいとは限りません。必要な接地性能は実際の環境条件の中で確保される必要があります。測定値の扱い、応急処置、使用継続の可否、再測定時期は、設備の責任者や電気保安を担当する有資格者が、保安規程と設備条件に基づいて判断します。 原因を特定できない場合や、接地極の腐食・破断が疑われる場合は、専門的な調査を行います。接地極の追加、打替え、接続方法の変更、土壌改良などは、周辺設備への影響や腐食促進の可能性を含めて設計する必要があります。測定値だけを下げるために、現場判断で塩類などを投入する方法は、腐食や周辺環境への影響が懸念されるため避けます。
接地抵抗上昇を抑える保全と記録の進め方
接地抵抗の長期的な安定には、測定と補修を別々に考えず、設計、施工、点検、更新を一つの管理サイクルとして扱うことが重要です。接地極の材質、寸法、埋設位置、接続方法は、土壌条件、腐食環境、必要な接地性能、将来の点検性を考慮して決めます。 施工時には、接地極の位置、深さ、数量、接続部、接地線の経路を記録します。完成後に地表から見えなくなる部分は、埋戻し前の写真と位置情報を残しておくと、将来の調査や更新が容易になります。図面上の位置だけでは現場で特定できないことがあるため、周辺の恒久構造物との位置関係も記録します。 接地線の立上がり部や点検端子は、浸水、衝撃、草刈り、車両接触などから保護しながら、測定時に安全にアクセスできる構造とします。点検性を考えず完全に埋め込んでしまうと、異常時の切り分けに時間がかかります。反対に、誰でも触れられる状態では、緩みや誤操作の原因になるため、設備環境に応じた保護が必要です。 定期点検では、接地抵抗の測定周期をすべての設備で一律にするだけでなく、重要度や劣化傾向に応じて見直します。過去に急上昇した設備、腐食性の高い場所にある設備、周辺工事の多い設備、乾燥の影響を受けやすい設備は、重点管理の対象とします。異常がない設備でも、測定条件と記録様式を維持し、比較可能なデータを蓄積します。 記録には、測定点名称、設備番号、接地方式、測定方法、測定器、測定日時、測定値、補助接地極の配置、天候、地表状態、外観所見、前回値、判定、処置内容、次回確認時期を含めます。写真には接地端子だけでなく、盤全体、周辺地盤、補助接地極の配置が分かる構図も含めると、後から測定状況を再現しやすくなります。 異常値への対応履歴も重要です。再測定した結果だけを最終値として残すのではなく、最初に確認した値、疑った原因、変更した条件、補修内容、補修後の値を連続して記録します。異常値を削除してしまうと、次回同じ現象が起きたときに原因を比較できません。 接地設備の記録は、紙の点検票、写真、図面、表計算データなどに分散しやすい情報です。測定点ごとに履歴を追える管理番号を設け、写真と数値を関連づけることで、担当者が変わっても過去の状態を確認できます。配電設備の数が多い場合は、地図または構内配置図から測定点を探せる管理方法も有効です。
まとめ
配電設備の接地抵抗上昇を早期に捉えるには、表示された数値だけを見るのではなく、測定条件と設備状態を一体で管理することが重要です。第一に測定器、接続位置、測定方法をそろえ、再現性のあるデータを取得します。第二に補助接地極を適切に配置し、位置を変えても値が安定することを確認します。第三に接地極だけでなく、接地線や接続部の腐食、緩み、断線を調べます。第四に土壌の乾湿、降雨、凍結、周辺工事などを記録します。第五に単発の合否ではなく、初期値や過去値との比較から上昇傾向を判断します。 測定値が高くなった場合は、測定ミス、補助接地極の配置、接続部の異常、土壌条件、接地極の劣化という順序で切り分けると、原因を整理しやすくなります。法令上または設備上の要求値を超えた場合や、安全性に疑いがある場合は、現場だけで判断せず、設備責任者や電気保安を担当する有資格者へ報告し、必要な使用制限、詳細調査、補修を実施します。 接地抵抗管理の精度を高める鍵は、同じ測定点へ確実に戻り、同じ条件で測り、過去の写真や数値と比較できる状態をつくることです。接地極の位置や点検履歴を現場単位で整理したい場合は、位置情報を活用した記録手段としてLRTK Phoneの導入も検討できます。LRTK Phoneを接地抵抗計の代わりにするのではなく、測定位置、現場写真、測定結果を関連づける補助として活用することで、配電設備の継続的な点検と引継ぎを進めやすくなります。