配電設備に使用される高圧・特別高圧ケーブルでは、導体の周囲に金属シースや金属遮へい層が設けられています。これらは電界を制御し、地絡電流の通路を確保し、外部への電気的影響を抑えるうえで重要な役割を持ちます。一方、単心ケーブルの金属シースを両端で接地すると、導体電流によってシースに誘起された電圧が閉回路を形成し、シース循環電流が流れることがあります。
シース循環電流が大きくなると、ケーブル導体以外でもジュール損失が発生し、ケーブルの許容電流が低下する可能性があります。接続箱、接地線、ボンド線、端末部などに局部的な温度上昇が生じると、絶縁部材や接続部の劣化を早める要因にもなります。また、三相間の配置やケーブル長、接地経路が不均衡な場合には、相ごとのシース電流に差が生じ、異常を見逃しやすくなります。
ただし、循環電流を減らすために接地線を安易に取り外したり、接地抵抗を意図的に大きくしたりする方法は適切ではありません。接地方式の変更は、シース電圧、接触電圧、地絡時電流、過電圧、保護装置の動作、作業員の安全などを総合的に検討して決定する必要があります。
本記事では、配電設備の実務担当者を対象に、ケーブルシース循環電流が発生する仕組み、現場での確認方法、循環電流を抑えるための5つの接地対策、施工後の試験や維持管理の注意点を解説します。
ケーブルシース循環電流とは
ケーブルシース循環電流とは、主に単心ケーブルの金属シースや金属遮へい層が複数地点で接地され、閉回路が形成されたときに流れる電流です。交流電流がケーブル導体を流れると、導体の周囲に時間的に変化する磁界が発生します。この磁界が金属シースと鎖交することで、シースの長手方向に誘起電圧が発生します。
シースが一端だけで接地され、反対側が電気的に開放されている場合には、通常運転中の循環電流が流れる閉回路は形成されません。ただし、非接地側のシースには誘起電圧が現れるため、電圧の大きさを確認し、安全に処理する必要があります。
これに対し、シースの両端を接地すると、シース、ボンド線、接地線、接地網などによる閉回路ができます。誘起電圧がこの回路を駆動し、シース循環電流が流れます。循環電流の大きさは、導体電流、ケーブル長、ケーブルの配置、相間距離、シース回路のインピーダンス、接続方法などによって変化します。
三相の単心ケーブルを正三角形に近い形で配置した場合と、横一列に配置した場合でも、各シースに誘起される電圧は異なります。横一列配置では中央相と外側相の磁気的条件が異なるため、相ごとのシース電流が不均衡になりやすい傾向があります。布設途中で相配置や離隔が変わる場合も、誘起電圧のバランスが崩れる原因になります。
なお、金属シースに流れる電流がすべて循環電流とは限りません。地絡、絶縁劣化、迷走電流、接地系統からの流入、計測対象以外の回路との共通接続などによっても電流が流れる可能性があります。測定値だけを見て原因を断定せず、回路構成と運転状態を照合することが重要です。
シース循環電流が発生する仕組み
シース循環電流を理解するには、導体電流、誘起電圧、閉回路の3つに分けて考えると整理しやすくなります。
最初の要素は導体電流です。負荷電流が大きいほど導体の周囲に発生する磁界も大きくなり、一般にシースへ誘起される電圧も増加します。そのため、軽負荷時には問題が見えなくても、夏季や生産設備の稼働時など、負荷が増加した条件でシース電流が大きくなる場合があります。
次の要素は、金属シースに発生する誘起電圧です。誘起電圧はケーブル長に影響され、接地区間が長いほど大きくなる傾向があります。また、三相導体とシースの相対位置、相間距離、隣接回路の電流、並行する金属構造物などの影響も受けます。
最後の要素が閉回路です。シースの両端が接地されていると、誘起電圧によりシース回路へ電流が流れます。複数の接地網が接続されている場合や、接続箱内のボンド線が他回路と共通化されている場合には、設計時に想定していなかった経路で電流が流れることもあります。
循環電流の概略は、誘起電圧をシース回路のインピーダンスで除した関係として考えられます。ただし、循環電流を減らす目的で接地線を細くしたり、接続部に抵抗を持たせたりする対策は避けなければなりません。接地回路の抵抗増加は、地絡時の安全性や保護装置の動作に悪影響を与える可能性があるためです。
実務では、循環電流だけを単独で最小化するのではなく、通常運転時の損失、地絡時の電位上昇、作業員が触れる可能性のある部分の電圧、雷や開閉による過電圧、ケーブルの許容電流を同時に評価します。接地方式を変更すると、循環電流が減る一方でシース電圧が上昇することがあるため、必ず両方を確認する必要があります。
循環電流が配電設備へ与える影響
シース循環電流による代表的な影響は、金属シースでの電力損失です。金属シースには抵抗があるため、電流が流れると発熱します。導体だけでなくシースでも熱が発生すると、ケーブル全体の温度が上昇しやすくなり、同じ周囲条件でも導体へ流せる電流が小さくなる可能性があります。
ケーブルの許容電流は、導体損失、シース損失、誘電体損失、周囲温度、土壌の熱抵抗、管路内の放熱条件、隣接回路の影響などを考慮して決定されます。シース循環電流が設計時の想定より大きい場合、実際の温度上昇が計算条件を上回ることがあります。
特に注意したいのが、接続箱や接地線端子での局部発熱です。端子の締付け不足、接触面の腐食、異種金属接続、ボンド線の素線切れなどがあると、接触抵抗が増加します。同じシース電流でも接触抵抗が高い部分では発熱が集中し、変色、絶縁材の硬化、被覆の変形、焦げたような臭いなどが現れる場合があります。
相ごとのシース電流が不均衡な状態も重要な兆候です。ケーブル配置が非対称である場合には一定の差が生じることがありますが、過去の測定結果から急に差が拡大した場合は、ボンド線の断線、接地端子の緩み、接続箱内の誤結線、シースの損傷などを疑う必要があります。
循環電流は保護装置の誤動作や不動作に直接結び付くとは限りませんが、零相電流の検出方法や接地線の通し方によっては、計測値へ影響する可能性があります。ケーブルのシース接地線を変流器にどのように通すか、接地線をどの位置で分岐するかによって検出条件が変わるため、保護回路の構成も確認しなければなりません。
接地対策の前に確認する現場条件
接地方式を見直す前に、現状の回路を正確に把握する必要があります。図面上では単点接地になっていても、現場では接続箱、架台、盤の接地母線、避雷設備、通信設備の接地などを介して、実質的に複数点接地になっていることがあります。
最初に確認するのは、ケーブルの種類です。単心ケーブルか多心ケーブルか、金属シースの材質と構造は何か、遮へい層がどのように接続されているかを確認します。金属シース、銅テープ遮へい、銅線遮へいなどでは、抵抗や許容電流、接続方法が異なります。
次に、ケーブルルートと布設形態を確認します。三相ケーブルが正三角形配置か横一列配置か、途中で配置が入れ替わっていないか、ケーブル同士の離隔が一定か、他回路と長距離にわたり並行していないかを調べます。管路、トラフ、ラック、直接埋設などの布設方法も記録します。
接続箱や端末部については、ボンド線の接続先、接地線のサイズ、接地極との関係、シース電圧を制限する機器の有無を確認します。接地線が設備の更新工事や改修工事で追加され、設計時と異なる回路が形成されていないかも重要です。
測定時には、各相の導体電流とシース電流を同時刻に記録します。シース電流だけを測っても、負荷電流との関係が分からなければ評価が難しくなります。負荷率、運転中の設備、周囲温度、測定位置、測定器のレンジ、クランプ方向なども併せて残します。
可能であれば、軽負荷時と高負荷時の両方で測定します。導体電流の増加に伴ってシース電流もおおむね比例して増える場合は、電磁誘導による循環電流が主な要因である可能性があります。一方、負荷と関係なく大きな電流が流れる場合や、特定相だけ変動する場合は、別の電流経路も検討する必要があります。
接地対策1 単点接地方式を採用する
単点接地方式は、ケーブルシースを一端だけで接地し、通常運転時にシース循環電流が流れる閉回路を形成しない方法です。比較的短いケーブル区間で、循環電流による損失を抑えたい場合に有効な方式です。
単点接地では、接地点側のシース電位は接地電位に近くなりますが、反対側の非接地端には誘起電圧が発生します。この誘起電圧は、導体電流、ケーブル長、相配置などによって変化します。したがって、単点接地へ変更する場合は、循環電流が流れなくなることだけで判断せず、非接地端のシース電圧が許容範囲内に収まることを確認しなければなりません。
非接地端を完全に放置するのではなく、通常時は絶縁状態を保ちながら、雷や開閉サージ、地絡時などの一時的な過電圧を制限する構成を検討します。必要に応じてシース電圧を制限する機器を設置し、短時間の過電圧を安全に接地へ逃がせるようにします。
単点接地方式で重要なのは、意図しない第二接地点を作らないことです。接続箱の外箱、ケーブル支持金具、端末の金属部、シース引出し線などが接触すると、設計上は単点接地でも実質的な両端接地になる場合があります。絶縁板や絶縁支持部材を使用する箇所では、施工後に絶縁状態を確認します。
また、単点接地された区間で地絡が発生した場合、シースや接地線にどのような電流が流れるかを事前に検討します。接地線の断面積は通常運転時の電流だけではなく、地絡電流の大きさと継続時間を考慮して選定する必要があります。
単点接地は循環電流抑制に有効ですが、長距離ケーブルへ無条件に適用できる方式ではありません。区間が長くなるほど非接地端の誘起電圧が高くなる可能性があるため、許容される区間長を計算し、必要に応じて接地区間を分割します。
接地対策2 クロスボンディング方式を採用する
長距離の単心ケーブルでは、クロスボンディング方式が循環電流とシース電圧の両方を抑える対策として用いられます。クロスボンディングは、ケーブルルートを複数の小区間に分け、各相のシース接続を区間ごとに入れ替えることで、シースに誘起される電圧を相互に打ち消す方法です。
一般的には三つの小区間を一つの大区間として構成し、各小区間の長さや磁気的条件をできるだけそろえます。三相の誘起電圧が適切に合成されれば、大区間全体の残留電圧が小さくなり、シース回路に流れる循環電流を抑えられます。
ただし、クロスボンディングは結線を入れ替えるだけで成立するものではありません。小区間の長さが大きく異なる場合、相配置が途中で変化する場合、他回路からの誘導条件が不均衡な場合には、誘起電圧が十分に相殺されないことがあります。
接続箱内での結線間違いも重大な問題です。図面上の相表示と現地のケーブル識別が一致していないと、期待した順序でシースを交差接続できません。施工前にケーブル相、シース引出し線、接続箱端子を対応付け、施工後には導通確認と絶縁確認を実施します。
クロスボンディング区間では、リンクや接続導体の状態も管理対象になります。リンクの取り付け位置が誤っている、締付けが不足している、接触面が腐食していると、シース電流が不均衡になったり、接続部が発熱したりします。
設計時には、各小区間の誘起電圧、残留電圧、通常運転時のシース電流、地絡時の電流経路を計算します。施工完了後には、各接続点の結線が設計どおりであることを確認し、実負荷時のシース電流を測定して計算結果と比較します。
クロスボンディングは長距離回路で効果が期待できますが、接続箱の数が増え、施工と保守が複雑になります。点検時にリンクを取り外した後、誤った位置へ戻してしまう事故を防ぐため、識別表示、写真記録、復旧確認の手順を整えておくことが大切です。
接地対策3 接地区間を分割して接地点を適正化する
ケーブルルートが長く、単点接地ではシース誘起電圧が高くなりすぎる場合には、接地区間を分割する方法を検討します。長い区間を複数の短い区間に分けることで、各区間に発生する誘起電圧を抑えやすくなります。
区間分割では、どこに接続箱や接地点を設けるかが重要です。単純に等距離で分割するだけでなく、ケーブルの相配置が変わる位置、管路からラックへ移る位置、他回路との並行条件が変化する位置、保守作業が可能な位置などを考慮します。
接地点を増やしすぎると、複数点接地による閉回路が形成され、循環電流が再び増える可能性があります。そのため、各区間を単点接地とするのか、クロスボンディング区間として構成するのか、両端接地を許容する短区間とするのかを明確にします。
接地方式の境界では、シース電位が急に変化することがあります。接続箱の金属外箱、ケーブルシース、接地線、周囲の金属構造物の間に電位差が生じないよう、接触可能部分の配置と絶縁を検討します。
また、両端接地を残す区間では、循環電流による損失を許容できる長さかどうかを確認します。短区間であっても、導体電流が大きい回路や相間距離が広い回路では、無視できない電流が流れる可能性があります。
既設設備を改修する場合には、停電可能時間や接続箱の設置スペースなどの制約があります。すべてを一度に変更できないときは、測定結果からシース電流が特に大きい区間を特定し、優先順位を付けて対策します。ただし、部分的な変更によって別の区間へ電流が集中しないよう、回路全体をモデル化して確認することが必要です。
接地区間を適正化するときは、設備台帳と現地表示も更新します。接地点の位置が図面に反映されていないと、将来の改修工事で誤って接地線が追加されるおそれがあります。接地方式、接続箱番号、リンク状態、非接地端の位置、シース保護機器の位置まで記録します。
接地対策4 相配置とケーブル布設条件をそろえる
シース循環電流は接地方法だけでなく、ケーブルの相配置や布設状態からも大きな影響を受けます。接地方式を変更する前に、三相ケーブルの配置をできるだけ対称にし、区間全体の磁気的条件をそろえることが重要です。
単心ケーブルを正三角形に近い配置で布設すると、各相の磁気的条件をそろえやすくなります。一方、横一列配置では外側相と中央相の条件が異なるため、各シースの誘起電圧や循環電流に差が生じやすくなります。
現場では、ラックの曲がり、他設備との干渉、接続箱への引込みなどにより、ケーブルの並び順や相間距離が途中で変わることがあります。短い区間の変化であっても、全長が長い場合には誘起電圧のバランスへ影響する可能性があります。
三相ケーブルの並び順を途中で入れ替える場合は、計画的な相配置変更として設計しなければなりません。施工上の都合だけで相の位置を変更すると、クロスボンディングの区間条件が崩れたり、相ごとの誘起電圧が不均衡になったりします。
複数回路を同じラックや管路へ布設する場合は、隣接回路からの磁気的影響も考慮します。回路ごとの負荷電流や位相関係が異なると、単独回路として計算した結果と現場の測定値が一致しないことがあります。
ケーブルの固定金具にも注意が必要です。単心交流ケーブルの周囲に磁性体で閉じた経路を形成すると、金具の発熱や損失増加を招く可能性があります。使用する固定部材や貫通部の構造は、単心交流ケーブルに適したものとします。
相配置の是正は、循環電流を完全になくす対策ではありません。しかし、各相の誘起電圧を均衡させ、クロスボンディングの相殺効果を高め、局部的なシース電流の偏りを抑えるうえで有効です。
施工後には、設計図だけでなく現地の相配置を確認します。ケーブルラック上で相表示が見えにくい場合は、接続箱付近、曲がり部、立上り部などに識別表示を設け、将来の点検時にも配置を追跡できるようにします。
接地対策5 接地回路とシース保護を一体で設計する
シース循環電流を抑えるには、接地方式だけでなく、接地回路、シース電圧の制限、地絡時の保護を一体で設計する必要があります。
単点接地やクロスボンディングでは、通常運転時に接地されていないシース部分や、接続箱内のリンク間に電圧が発生します。通常時の誘起電圧が管理範囲内であっても、雷、開閉操作、地絡などによって一時的に高い電圧が発生する可能性があります。
この過電圧を抑えるため、必要に応じてシース電圧を制限する機器を設置します。選定時には、通常運転時のシース電圧で不要に動作しないこと、想定される過電圧を制限できること、地絡時のエネルギーに耐えられることを確認します。
シース電圧を制限する機器は、接続導体が長いと十分な効果を発揮できないことがあります。接続導体のインダクタンスによって過電圧が加わる可能性があるため、接続経路は可能な範囲で短く、不要なループを作らない構成とします。
接地線やボンド線についても、通常時の循環電流だけでなく地絡時の電流を考慮します。断面積、導体材質、接続端子、機械的強度、腐食環境を確認し、想定される地絡電流と遮断時間に耐えられる構造とします。
接地抵抗を小さくすれば必ずシース循環電流が減るわけではありません。両端接地回路では、接地経路のインピーダンスが小さくなることで循環電流が増える場合もあります。一方で、接地抵抗を意図的に大きくすることは、地絡時の電位上昇や保護装置の動作へ影響するため適切ではありません。
重要なのは、通常運転時に不要な閉回路を作らず、異常時には安全に電流を流せる経路を確保することです。通常時と異常時では求められる動作が異なるため、シース接地、接地網、過電圧保護、地絡保護を別々に検討するのではなく、一つのシステムとして設計します。
接地網が複数存在する設備では、接地網間の電位差にも注意します。受電設備、変電設備、建築設備、通信設備などの接地がどこで接続されているかを確認し、ケーブルシースが意図しない連絡導体にならないようにします。
施工後に実施する測定と確認
接地対策は、設計どおりに施工しただけでは完了しません。施工後の試験によって、接地方式、絶縁状態、結線、シース電流が想定どおりであることを確認します。
最初に行うのは目視確認です。接地線とボンド線の接続先、端子表示、リンクの位置、締付け状態、絶縁支持部材の有無を確認します。クロスボンディングでは、各相のシースが設計どおりの順序で接続されていることを一本ずつ追跡します。
次に、導通確認を行います。シース、ボンド線、接地線の接続が必要な箇所で確実に導通しているか、絶縁すべき箇所で不要な導通がないかを確認します。単点接地区間では、非接地側が架台や接続箱外箱を介して接地されていないことが重要です。
シースの健全性を確認する試験については、ケーブルの種類、製造者の仕様、設備の試験基準に従って実施します。試験電圧や試験方法を誤るとケーブルへ不要な負担を与える可能性があるため、現場判断で値を決めないようにします。
通電後は、各相の導体電流とシース電流を測定します。シース電流は、接地線やボンド線をクランプ式の測定器で測る方法があります。ただし、複数の導体をまとめて測ると電流が相殺されることがあるため、どの導体に流れる電流を測定しているかを明確にします。
測定値を評価するときは、絶対値だけでなく導体電流に対する割合、相間差、過去値との差を確認します。負荷電流が異なる条件で単純にシース電流だけを比較すると、増加原因を誤って判断する可能性があります。
接続箱、接地端子、ボンド線では温度も確認します。通電直後ではなく、負荷が安定してから測定すると、継続的な発熱を把握しやすくなります。相ごとに同じ構造であれば、同一条件における温度差が異常発見の手掛かりになります。
試験結果は、測定日時、負荷電流、周囲温度、測定位置、接地方式、リンク状態とともに記録します。将来の定期点検で同じ位置、同じ方法により再測定できるようにすることが重要です。
維持管理で見落としやすい異常
シース循環電流の問題は、設備の新設時だけでなく、運用開始後の改修や経年劣化によって発生することがあります。
見落としやすい事例の一つが、設備改修時に追加された接地線です。安全のために金属部を接地した結果、単点接地区間へ第二接地点が形成される場合があります。既設の接地方式を確認せず、外箱、架台、シース引出し線を接続しないよう注意が必要です。
接続箱の点検後にリンクを誤って復旧する事例もあります。クロスボンディング区間では、リンクの位置が一つ違うだけで誘起電圧の相殺条件が崩れます。取り外し前の状態を記録し、復旧後に複数人で照合する手順が有効です。
端子の緩みや腐食によって接触抵抗が増えると、シース電流そのものが大きくなくても局部発熱が発生します。端子表面の変色、被覆の硬化、周囲部材の変形、異臭などを確認します。
シース電流が以前より減少した場合も、必ずしも改善したとは限りません。ボンド線の断線や接続不良によって電流が流れなくなっている可能性があります。循環電流の減少だけを見て正常と判断せず、導通とシース電圧を併せて確認します。
特定相だけシース電流が増えた場合には、相配置の変化、接地線の誤結線、隣接回路の増設、ケーブル損傷などを調べます。三相すべてが同じ割合で増加した場合は、負荷電流の増加や運転条件の変化を確認します。
定期点検では、通常時の電流測定だけでなく、設備変更履歴との照合が重要です。ケーブルルートの変更、接続箱の更新、盤の交換、接地網の改修などが行われた場合は、シース接地回路への影響を再評価します。
接地対策を安全に進めるための注意点
ケーブルシースの接地方式を変更する作業は、単なる接地線の付け替えではありません。通常運転時のシース電流を減らす一方で、非接地端の電圧上昇や地絡時の安全性を損なう可能性があるため、電気的な検討と安全管理が必要です。
現地でシース接地線を取り外す前には、対象回路を確実に停止し、残留電荷や誘起電圧がないことを確認します。隣接する活線回路から誘導を受ける場合があるため、対象回路が停電しているだけで安全とは限りません。
接地線を開放した状態では、シースに電圧が現れる可能性があります。作業中に仮接地が必要となる場合は、作業手順と接続順序を明確にし、作業完了後に仮設接地を確実に撤去します。
循環電流が大きいという理由だけで、既設の両端接地を一端開放することは避けなければなりません。開放後のシース電圧、接触電圧、過電圧、地絡電流経路を確認し、必要なシース保護を設けたうえで変更します。
また、設計計算では通常負荷だけでなく、将来の負荷増加も考慮します。現在の導体電流では問題がなくても、設備増設後に誘起電圧やシース電流が増加する可能性があります。
接地対策後には、保護装置の検出条件が変わっていないか確認します。接地線の通し方や接続位置を変更すると、零相電流の検出回路へ影響する場合があります。必要に応じて保護回路の試験を実施します。
設計、施工、試験、保守の各段階で情報が分断されると、接地方式の意図が失われやすくなります。接地方式を示す単線結線図だけでなく、接続箱内部のリンク構成、ケーブル相配置、測定位置、シース保護機器の配置を一体で管理することが重要です。
まとめ
配電設備のケーブルシース循環電流は、単心ケーブルの導体電流によってシースへ誘起された電圧が、複数の接地点によって形成された閉回路を流れることで発生します。循環電流が大きくなると、シース損失の増加、許容電流の低下、接続部の発熱、相間不均衡などにつながる可能性があります。
有効な対策としては、単点接地方式の採用、クロスボンディング方式の採用、接地区間の適切な分割、相配置と布設条件の均等化、接地回路とシース過電圧保護の一体設計が挙げられます。
ただし、循環電流だけを減らす目的で接地線を取り外したり、接地抵抗を大きくしたりしてはいけません。接地方式の変更によってシース電圧や接触電圧が上昇する場合があるため、通常運転時と地絡時の両方を評価する必要があります。
現場では、各相の導体電流とシース電流を同時に測定し、相間差、負荷との関係、過去値からの変化を確認します。接続箱の結線、ボンド線の導通、端子の発熱、意図しない第二接地点も点検対象です。
さらに、接地方式や接続状態を継続的に管理するには、図面だけでなく現地の位置情報と写真を結び付けることが有効です。接続箱、接地点、ケーブルルート、相配置、測定位置を現場で記録し、関係者間で共有できれば、点検漏れや復旧間違いを減らしやすくなります。
配電設備の接地点やケーブルルートを位置情報付きで記録し、施工時と点検時の状態を分かりやすく残す方法として、LRTK Phoneの活用へつなげてみてください。