配電設備の赤外線点検で分かること
配電設備の赤外線点検は、設備を運転した状態で表面温度の分布を確認し、接続部の緩み、接触抵抗の増加、過負荷、相間の負荷不平衡、機器内部の異常などが疑われる箇所を探す点検方法です。目視では変色や変形が現れていない段階でも、周囲より温度が高い部分を捉えられる可能性があり、停電を伴う精密点検の対象を絞り込むためにも役立ちます。
配電設備で発生する異常発熱は、電流が流れることで生じる正常な温度上昇と、接触抵抗や過電流などによって生じる異常な温度上昇が混在しています。そのため、赤外線画像の中に温度の高い部分が写っただけでは、直ちに故障と判断することはできません。電流値、周囲温度、設備の運転時間、材質、表面状態、撮影角度などを合わせて確認し、なぜその箇所が高温に見えるのかを整理する必要があります。
赤外線点検の利点は、非接触で温度分布を確認できることです。充電中の導体や機器へ接触せずに測定できるため、日常巡視や定期点検に組み込みやすく、設備を停止できない施設でも異常の兆候を把握できる場合があります。一方で、赤外線カメラが測定しているのは基本的に撮影対象の表面から放射される赤外線です。盤の扉、保護カバー、絶縁板、透明な窓などの奥にある接続部の温度を、そのまま正確に測定できるとは限りません。
赤外線点検を効果的に使うには、単に温度の最高値を探すのではなく、設備の構造と電流経路を理解したうえで、比較対象を決めて観察することが重要です。三相回路であれば各相の同じ位置を比較し、複数の同型機器があれば同じ負荷条件の機器同士を比較します。また、過去の点検画像と比較して温度差が拡大していないかを確認すると、単発の測定だけでは判断しにくい劣化傾向を把握しやすくなります。
赤外線点検だけでは異常を断定できない理由
赤外線画像には、実際の過熱とは異なる要因で高温または低温に見える部分が生じます。金属の光沢面は周囲の熱を反射しやすく、撮影者、照明、日射、近くにある高温機器などが映り込むことがあります。反射による見かけの高温を接続不良と誤認すると、不要な停電や分解点検につながるおそれがあります。逆に、表面の放射率設定が実際の状態と合っていなければ、本当に温度が上昇している箇所を低く評価してしまう可能性もあります。
設備の負荷状態も判断を大きく左右します。接触抵抗による発熱は、一般に電流が増えるほど大きくなります。軽負荷時に撮影した結果が正常に見えても、高負荷時には温度が上昇することがあります。そのため、点検時の電流が通常運転時や最大負荷時と比べてどの程度だったのかを確認しなければ、異常がないとは判断できません。
また、点検対象が十分に熱的な定常状態へ近づいていない場合もあります。設備を起動した直後は、導体、端子、機器外装の温度上昇が途中段階にあり、部位ごとの温度差が明確に現れないことがあります。反対に、負荷を停止した後では温度が急速に低下し、異常箇所を特定しにくくなります。点検時刻だけでなく、運転開始からの経過時間や直前の負荷変動も記録しておくことが重要です。
赤外線カメラの表示温度には、測定距離、焦点、対象物の大きさ、視野内の背景、周囲温度なども影響します。小さな端子を遠距離から撮影すると、測定範囲の中に端子以外の背景が含まれ、表示温度が平均化されることがあります。画像がぼやけている場合も、最高温度を正しく捉えられない可能性があります。
このため、赤外線点検は故障を断定する検査ではなく、異常の疑いがある箇所を見つけ、追加確認の優先順位を決める診断手段として位置付けるのが適切です。温度差が大きい箇所を発見した場合は、負荷電流の測定、締結状態の確認、接触抵抗の確認、絶縁状態の確認、停電後の目視点検などを組み合わせて原因を切り分けます。
確認1 点検時の負荷率と運転状態を確認する
過熱箇所を見逃さないための第一の確認は、赤外線画像を撮影したときの負荷率と運転状態です。設備に流れる電流が小さければ、接続部に抵抗増加があっても発熱が小さく、周囲との温度差が現れにくいことがあります。撮影画像だけを保存し、電流値を記録していない場合、後から温度の妥当性を評価することが難しくなります。
点検前には、対象回路の通常負荷、点検時負荷、想定最大負荷を可能な範囲で確認します。三相回路では、各相の電流値も重要です。一つの相だけ温度が高い場合でも、その相の電流が他相より大きければ、負荷不平衡による正常な温度差である可能性があります。一方、電流がほぼ同じにもかかわらず、一つの相の端子や接続部だけが高温であれば、接触抵抗の増加などを疑う根拠になります。
変圧器、遮断器、開閉器、母線、ケーブル端末などは、運転を開始してから温度が安定するまで一定の時間を要します。始業直後や設備切替直後に点検すると、異常箇所の温度上昇が十分に現れていない場合があります。可能であれば、日常的に負荷が高くなる時間帯を把握し、その時間帯に点検します。ただし、最大負荷時の点検が作業上危険になる場合や、設備周辺への立入りが制限される場合は、安全を優先して計画を調整します。
季節による負荷の違いにも注意が必要です。空調設備、加熱設備、冷凍設備、照明設備などの使用状況によって、同じ配電盤でも夏季と冬季では電流が大きく変わることがあります。前回の画像と比較する場合は、単に表面温度を比べるのではなく、周囲温度と負荷電流が近い条件かを確認します。条件が異なる場合は、その差を記録したうえで評価します。
負荷率が低い状態でしか点検できない場合は、異常なしと断定せず、測定条件を明記することが大切です。「低負荷のため異常発熱を十分に評価できない」「高負荷時に再測定が必要」といった判断を記録しておけば、次回点検の時期と条件を明確にできます。
発電設備や予備回路など、普段は通電していない設備についても注意が必要です。無負荷または待機状態で赤外線点検を実施しても、主回路接続部の異常を確認できる範囲は限られます。試運転や負荷運転を計画できる設備では、運転条件と安全手順を整えたうえで点検する必要があります。
確認2 放射率と反射の影響を確認する
第二の確認は、撮影対象の放射率と周囲からの反射です。赤外線カメラは、対象物から放射される赤外線を基に温度を算出します。しかし、対象物の材質や表面状態によって赤外線の放射しやすさは異なります。塗装面、樹脂、ゴム、酸化した金属面などは比較的測定しやすいことがありますが、磨かれた金属面や光沢のある端子は反射の影響を受けやすくなります。
光沢のある金属面を正面から撮影すると、撮影者自身や周辺機器の熱が映り込み、実際より高温に見える場合があります。反射が疑われるときは、撮影角度を変えて高温部分の位置が移動するかを確認します。角度を変えると高温表示が移動する場合は、反射の可能性があります。実際の発熱であれば、撮影位置を多少変えても、電気的な接続箇所を中心とした温度分布が残ることが一般的です。
放射率の設定値は、表示温度に影響します。設定が実際の表面状態と大きく異なると、温度値の信頼性が低下します。ただし、現場ではすべての材質について正確な放射率を把握することが難しい場合があります。そのような場合は、絶対温度だけに依存せず、同じ材質、同じ表面状態、同じ撮影条件にある箇所同士の温度差を重視します。
例えば、同じ遮断器の三相端子を比較する場合、各端子の材質と表面状態がほぼ同じであれば、放射率設定に多少の誤差があっても相対的な温度差は把握しやすくなります。ただし、一つの端子だけ腐食、汚れ、塗装、変色などがある場合は、表面状態の違いが表示温度へ影響することがあります。可視画像も同時に確認し、表面状態の差を記録します。
盤内には、光沢のある母線、ボルト、圧着端子、絶縁被覆、樹脂ケースなど、放射率の異なる材料が混在しています。画面内の最高温度だけを追うと、測定しやすい樹脂部分と測定しにくい金属部分を単純比較してしまうことがあります。温度評価は材質ごと、部位ごとに行い、異なる表面同士の数値をそのまま比較しないことが重要です。
日射を受ける屋外設備では、太陽光による加熱と反射の両方を考慮します。日当たりのよい面だけが高温の場合、それが内部の電気的異常によるものか、外部からの加熱によるものかを切り分ける必要があります。可能であれば日射条件が異なる時間帯にも確認し、日陰側との比較や、設備停止後の冷却状態の観察を行います。
確認3 同一条件の相間比較と類似設備比較を行う
第三の確認は、単独の温度値ではなく、同一条件にある部位との比較です。配電設備の赤外線点検では、周囲より何度高いかという温度差が、異常を見つける重要な手掛かりになります。ただし、比較対象を誤ると、正常な温度差を異常と判断したり、異常な温度差を見落としたりすることがあります。
三相回路では、各相の同じ位置を比較します。上流側端子と下流側端子、端子表面とケーブル被覆など、構造や役割の異なる箇所を比較しても適切な評価になりません。遮断器の一次側であれば一次側の三相端子同士、二次側であれば二次側の三相端子同士を比較します。ケーブル端末でも、各相の接続位置と撮影距離をそろえることが重要です。
相間比較では、負荷電流の差も確認します。温度が高い相に他相より大きな電流が流れている場合、電流差による温度上昇が含まれています。それでも温度差が不自然に大きい場合や、端子の一点だけに局所的な高温が集中している場合は、接続状態の確認が必要です。
単相回路や各相の負荷が大きく異なる設備では、相間比較だけで評価することが難しくなります。その場合は、同型機器、同じ定格、同程度の負荷で運転している別回路との比較が有効です。同じ分電盤内に複数の類似回路がある場合は、正常と考えられる回路の温度分布を基準として観察します。
設備の左右や上下で放熱条件が異なる場合にも注意します。盤の上部は内部の温かい空気が集まりやすく、下部より温度が高くなることがあります。隣接する発熱機器の影響を受ける端子や、換気口の近くにある機器も、周辺条件によって温度が変化します。比較対象は、負荷だけでなく、設置位置、通風、周囲の発熱源なども近い箇所を選びます。
異常発熱の形状も判断材料になります。接続不良が疑われる場合は、ボルト締結部や端子接触部を中心に局所的な高温が現れ、そこから導体方向へ熱が広がることがあります。過負荷の場合は、端子一点だけではなく、導体、機器本体、ケーブルなどが比較的広い範囲で温度上昇することがあります。ただし、熱の広がり方は構造や放熱条件によって変わるため、画像だけで原因を断定せず、追加測定につなげます。
確認4 接続部と隠れた過熱箇所を確認する
第四の確認は、発熱しやすい接続部を漏れなく見ることと、外部から見えない箇所の存在を意識することです。配電設備では、母線の接続部、ケーブル端末、圧着端子、遮断器端子、開閉器接触部、ヒューズ取付部、変圧器端子などが重点確認箇所になります。これらは電流経路の中で機械的に接続されている部分であり、締結力の低下、接触面の劣化、腐食、施工状態などによって接触抵抗が増える可能性があります。
赤外線点検では、目立つ機器本体だけを撮影し、端子の奥側や下側を見落とすことがあります。特に、ケーブルが密集した盤内では、手前のケーブルによって奥の端子が隠れます。一方向からの撮影だけで済ませず、安全な範囲で左右や斜め方向から確認します。撮影角度を変えることで、手前の導体に隠れていた接続部が見える場合があります。
盤の扉や保護カバーが閉じた状態では、内部の過熱箇所を直接測定できません。扉の表面温度に異常がなくても、内部に局所的な過熱がないとは限りません。金属製の扉は内部の熱を広い範囲へ拡散するため、小さな接続部の過熱が表面に明確に現れない場合があります。また、扉と内部機器の距離がある場合や、換気によって熱が移動する場合も、外面温度だけで内部状態を評価することは困難です。
点検口や赤外線点検用の窓が設けられている設備では、視野に入る範囲と窓の特性を確認します。窓を通して測定する場合、使用されている材料によって赤外線の透過特性が異なるため、通常の開放状態と同じ条件で測定できるとは限りません。設備の仕様や点検方法を確認し、窓越しの表示温度を絶対値として扱うのか、同条件での比較値として扱うのかを決めます。
遮断器や開閉器では、外部端子だけでなく、内部接点で発熱している可能性もあります。内部接点は直接撮影できないことが多いため、端子付近や機器外装の温度分布から異常の兆候を探します。一次側と二次側で温度の広がり方が異なる場合や、同型機器と比較して筐体の一部だけが高温の場合は、内部異常の可能性も含めて追加点検を検討します。
配電盤内の制御機器についても見逃しは禁物です。主回路ほど大電流ではなくても、電磁接触器、継電器、端子台、制御用変圧器、電源装置などで異常発熱が生じることがあります。主回路だけを撮影して点検を終了せず、日常的に通電している制御回路も確認します。ただし、機器ごとに正常な発熱量は異なるため、同型機器や過去画像との比較が欠かせません。
確認5 温度差の推移と再現性を確認する
第五の確認は、一回の測定結果だけで判断せず、温度差の推移と再現性を見ることです。赤外線点検では、その日の負荷、周囲温度、風、日射、換気状態などによって測定結果が変化します。一度だけ高温に見えた箇所が、別の角度や別の時刻では正常に見える場合、反射や一時的な運転条件の影響を受けている可能性があります。
異常が疑われる箇所を発見したら、同じ点検の中で撮影角度と距離を変え、温度分布が再現するかを確認します。可能であれば、少し時間を置いて再撮影し、負荷電流と温度差の変化も確認します。電流がほぼ一定なのに温度差が拡大している場合は、熱が定常状態へ近づいている途中か、異常発熱が継続している可能性があります。
過去の点検結果との比較では、画像の撮影条件をそろえることが重要です。撮影位置、距離、角度、放射率設定、温度表示範囲などが大きく異なると、同じ設備でも見え方が変わります。前回画像の構図を確認できるようにし、できる限り同じ位置から撮影します。
絶対温度だけでなく、比較対象との温度差を記録すると、周囲温度が異なる季節でも傾向を把握しやすくなります。例えば、対象端子の温度、同じ回路の他相端子の温度、盤内温度、周囲温度、負荷電流を記録しておけば、次回点検時に条件を比較できます。
温度差が小さくても、点検のたびに上昇している場合は注意が必要です。前回よりわずかに高いだけで直ちに故障とはいえませんが、同程度の負荷条件で温度差が継続的に拡大している場合は、劣化が進行している可能性があります。点検周期を短くする、停電点検時の重点箇所に指定するなど、傾向に応じて対応します。
一方、温度差が大きく見えても、負荷が前回より大幅に増えている場合は、その影響を考慮しなければなりません。温度と電流の関係は設備構造や放熱条件によって単純には決まらないため、負荷の違いを数値だけで機械的に補正するのではなく、同一条件での再測定を優先します。
配電設備ごとに重点確認したい過熱箇所
受変電設備では、変圧器の一次側端子、二次側端子、ケーブル接続部、母線接続部などを確認します。変圧器本体には正常運転でも温度上昇がありますが、局所的な高温、相ごとの不自然な差、端子周辺だけの集中した発熱がないかを観察します。冷却用の通風経路がある場合は、吸気口や排気口の閉塞、周辺への物品配置なども合わせて確認します。
高圧または低圧の開閉機器では、主回路端子、接続導体、機器外装の温度分布を確認します。内部接点を直接見られない場合でも、同型機器との比較や、一次側と二次側の温度分布の違いが手掛かりになります。異常が疑われる場合は、開閉回数、遮断履歴、負荷電流、過去の保守履歴も確認します。
分電盤では、主幹端子、分岐端子、母線、接続ケーブルを順番に確認します。負荷の大きい回路だけでなく、端子の緩みや施工状態によっては比較的小さな負荷の回路でも局所的な発熱が生じることがあります。端子が密集しているため、撮影対象を見失わないよう、可視画像と赤外線画像を対応させて記録します。
ケーブルでは、端末部、接続部、曲げの集中している箇所、他の発熱機器に近接している箇所を確認します。ケーブル全体が高温の場合は、過負荷、周囲温度、束ね方、通風状態などの影響を検討します。一部だけが局所的に高温の場合は、接続状態や外部からの熱影響を確認します。
コンデンサやリアクトルなどの機器では、機器本体、端子、接続導体の温度分布を確認します。同一構成の複数機器がある場合は、温度差を比較します。外装全体の温度上昇と、端子部だけの局所的な温度上昇では、疑う原因が異なる場合があります。
盤内の電源装置や制御用機器は、通常運転でも一定の発熱があります。単に温度が高いという理由だけで異常と判断せず、通風口の閉塞、周囲機器からの熱、同型機器との差、過去からの変化を確認します。ファンを備えた機器では、回転状態や異音、フィルターの汚れなども点検対象になります。
赤外線点検の見逃しを減らす撮影手順
赤外線点検を始める前に、対象設備の単線結線図、盤配置、回路名称、通常負荷を確認します。設備の構成が分からないまま撮影すると、どの端子がどの回路に対応しているか判断できず、異常を発見しても原因調査へつなげられません。点検対象と撮影順序を事前に決め、同じ設備を毎回同じ順番で確認できるようにします。
撮影時は、まず盤全体の温度分布を確認し、その後に主幹、母線、分岐端子、接続部などへ範囲を絞ります。最初から一つの端子だけを拡大すると、隣接機器との比較や熱の広がり方を確認できません。全体画像と詳細画像の両方を残すことで、局所的な高温が設備全体の中でどの位置にあるか分かりやすくなります。
焦点は測定対象に正確に合わせます。画像がぼやけていると、小さな過熱箇所の最高温度が低く表示される可能性があります。端子やボルトなど対象が小さい場合は、測定距離を適切にし、温度測定範囲の中に背景が入りすぎないようにします。ただし、充電部へ不用意に接近してはならず、安全距離と作業手順を優先します。
温度表示の範囲を自動調整だけに任せると、画像ごとに色の基準が変わり、比較しにくくなることがあります。同じ設備の相間比較や前回画像との比較では、可能な範囲で表示条件をそろえます。ただし、色だけで異常を判断せず、測定点の温度値と比較対象の温度値を記録します。
撮影した赤外線画像には、対象設備名、盤名称、回路名称、撮影日時、撮影位置を対応付けます。可視画像も残しておけば、後から赤外線画像の高温箇所がどの端子に該当するか確認しやすくなります。撮影直後に画像を確認し、対象名の取り違えや焦点不良がないかを確認することも重要です。
異常が疑われる箇所は、一枚だけで終わらせず、全体、接続部周辺、異なる角度から撮影します。負荷電流を測定できる場合は、画像と同じ時刻の値を記録します。撮影後に負荷を測定すると、その間に運転条件が変化している可能性があるため、なるべく近い時刻に記録します。
異常温度を発見した後の対応
高温箇所を発見した場合は、まず設備名称、回路、部位、温度、比較対象との温度差、負荷電流、周囲温度を記録します。そのうえで、反射、日射、表面状態、撮影角度などによる見かけの高温ではないかを確認します。異なる角度から再撮影し、高温部分が同じ位置に再現するかを見ます。
異常の疑いが残る場合は、設備の重要度、温度差の大きさ、負荷の状況、故障時の影響などを踏まえて対応の優先度を決めます。ただし、温度だけを基準に一律の処置を決めると、設備固有の正常温度や測定条件を見落とす可能性があります。メーカーが示す使用条件、社内基準、保安規程、過去実績などを確認して判断します。
運転中に直ちに危険が生じる可能性がある場合は、設備責任者へ速やかに連絡し、負荷の低減、回路切替、停止などを検討します。操作は設備の運用手順と権限に従って実施し、点検者の判断だけで不用意に開閉操作を行わないことが重要です。
停電点検が可能になったら、端子の緩み、変色、腐食、絶縁物の変形、焦げ跡、異臭などを確認します。締結部を確認する場合は、設備の構造、指定された締付方法、使用部材の状態を確認し、単純な増し締めだけで済ませないようにします。接触面の損傷や端子の変形がある場合は、部品交換や接続のやり直しが必要になることがあります。
補修後は、外観確認や必要な電気的試験を行い、復電後に同程度の負荷条件で再度赤外線点検を実施します。補修前後の画像を比較し、温度差が改善したかを確認します。補修直後に負荷が低い場合は、改善したと断定せず、通常負荷時の再点検を予定します。
赤外線点検を安全に行うための注意点
配電設備の赤外線点検は非接触ですが、充電部の近くで作業する可能性があります。非接触であることと、感電やアークによる危険がないことは同じではありません。扉を開けて点検する場合は、設備の電圧、構造、接近可能な範囲、必要な保護具、作業人数、監視体制などを事前に確認します。
盤内を見やすくするために、身体や撮影機器を充電部へ近づける行為は避けます。ストラップ、ケーブル、工具、衣服の一部などが盤内へ入り込まないようにします。撮影機器を片手で持った状態では姿勢が不安定になることがあるため、足元と退避経路を確保します。
盤の扉や保護カバーを開放する作業については、設備管理者が定めた手順に従います。点検のために保護板を取り外したり、内部へ手を入れたりする行為は、赤外線撮影とは別の危険作業になります。必要な資格、教育、作業許可、停電措置などを確認し、赤外線画像を撮りやすくする目的だけで安全措置を省略してはなりません。
異常発熱が疑われる箇所を発見しても、運転中に端子やケーブルへ触れて状態を確認してはいけません。温度を確かめるために手を近づける行為も危険です。異音、異臭、変色、煙などが確認された場合は、設備から安全な距離を取り、緊急時の連絡手順に従います。
屋外設備では、雨、強風、足場、周辺交通などの条件も確認します。雨天時に扉を開放すると、設備内部へ水分が入るおそれがあります。強い日射がある場合は測定精度への影響だけでなく、作業者の暑熱負担にも注意が必要です。測定条件が適切でない場合は、無理に実施せず日程を調整します。
点検記録を保全計画に活用する方法
赤外線点検の価値は、高温箇所を発見することだけではありません。点検結果を継続して蓄積することで、設備ごとの温度傾向を把握し、点検周期や更新計画を検討する材料にできます。そのためには、毎回の記録項目と撮影方法をそろえる必要があります。
記録には、設備名称、設置場所、回路名称、撮影日時、撮影者、運転状態、負荷電流、周囲温度、対象温度、比較対象温度、温度差、撮影距離、撮影角度、放射率設定などを含めます。すべてを一度に詳細記録することが難しい場合でも、少なくとも設備を特定する情報、負荷、温度差、画像の対応関係は残します。
判定結果だけでなく、その根拠も記録します。「異常なし」とだけ記載するのではなく、「三相電流がほぼ同等で相間温度差は小さい」「低負荷のため高負荷時に再確認する」など、測定条件を含めて記録します。これにより、次回の担当者が前回の判断を検証できます。
異常箇所には、対応状況をひも付けます。発見日、再点検日、停電点検日、補修内容、補修後の温度などを一連の履歴として管理すれば、類似設備で同じ異常が発生していないかを調べやすくなります。接続部の過熱が繰り返される場合は、個別端子の問題だけでなく、施工方法、振動、温度変化、負荷変動などの共通原因も検討できます。
赤外線画像のファイル名だけで設備を管理すると、画像が増えたときに対象を特定しにくくなります。設備台帳や点検記録と画像を対応付け、検索できる状態にしておくことが重要です。盤番号や回路番号の表記を統一し、現場で使われている呼称と図面上の名称が一致しているかも確認します。
赤外線点検を日常保全へ定着させるポイント
赤外線点検を継続的な保全活動へ定着させるには、熟練者の感覚だけに依存しない点検手順が必要です。どの設備を、どの負荷条件で、どの方向から撮影するかを決め、点検者が変わっても同じ部位を比較できるようにします。
点検対象が多い施設では、設備の重要度によって優先順位を付けます。停止した場合の影響が大きい回路、常時高負荷で運転する回路、過去に接続不良が発生した設備、振動や腐食の影響を受けやすい設備などは、重点的な確認対象になります。
点検周期は、設備の重要度、運転状況、設置環境、過去の異常履歴などを基に決めます。すべての設備を同じ頻度で撮影するのではなく、異常傾向がある設備は周期を短くし、安定している設備は他の点検結果と合わせて見直します。ただし、赤外線点検の頻度を増やすことだけで安全性が確保されるわけではありません。停電を伴う点検、清掃、締結状態の確認、絶縁診断などと組み合わせることが重要です。
担当者教育では、カメラの操作だけでなく、電流経路、設備構造、反射、放射率、負荷条件の考え方を共有します。高温表示を見つける技術よりも、その表示が実際の過熱なのかを切り分ける力が重要です。実際の正常画像と異常画像を用いて比較方法を整理すると、点検品質をそろえやすくなります。
また、撮影地点を現場で再現できる仕組みを整えると、経年比較の精度が上がります。盤の正面だけでなく、撮影位置や対象端子を記録し、次回も近い条件で撮影できるようにします。位置情報、現場写真、設備名称を関連付けて管理すれば、広い施設や屋外設備でも対象箇所の取り違えを減らせます。
まとめ
配電設備の赤外線点検で過熱箇所を見逃さないためには、温度の高い部分を探すだけでは不十分です。点検時の負荷率と運転状態、放射率と反射、同一条件での比較、接続部と隠れた箇所、温度差の推移と再現性という五つの確認を組み合わせる必要があります。
赤外線画像に表示された温度は、設備の状態だけでなく、電流、周囲温度、材質、表面状態、撮影角度、距離などの影響を受けます。絶対温度だけで故障を判断せず、相間比較、類似設備比較、過去画像との比較を行い、測定条件も合わせて記録することが重要です。
異常が疑われる箇所を発見した場合は、反射や負荷条件を再確認し、安全を確保したうえで追加点検へつなげます。補修後も同程度の負荷で再測定し、温度差が改善したかを確認します。こうした流れを設備台帳や保全履歴へ反映することで、赤外線点検を単発の撮影作業ではなく、予防保全の判断材料として活用できます。
さらに、撮影位置、設備名称、現場写真、点検履歴を一体的に管理できれば、次回点検で同じ箇所を再現しやすくなり、担当者が変わっても比較の精度を保ちやすくなります。配電設備が広い範囲に点在する現場では、位置情報を扱えるLRTK Phoneも活用候補に加え、赤外線点検の記録と設備位置を結び付ける運用を検討すると、異常箇所の共有や再点検を進めやすくなります。