切盛土計算で借土量と残土処分量を同時に把握する理由
造成工事の切盛土計算では、現況地盤を掘り下げる切土量と、計画地盤まで土を積み上げる盛土量を算出します。しかし、実際の施工計画に必要なのは、切土量と盛土量だけではありません。現場内で発生した土をどれだけ盛土へ転用できるのか、転用しても不足する土をどれだけ外部から搬入するのか、利用できずに余る土をどれだけ場外へ搬出するのかまで整理する必要があります。
外部から搬入する土が借土であり、現場内で利用せずに搬出する土が残土です。借土量と残土処分量を正しく把握できなければ、施工途中で盛土材が不足したり、仮置き場が残土で埋まったりするおそれがあります。搬入車両や搬出車両の台数も見通せず、工程、車両動線、周辺環境への配慮にも影響します。
切土量と盛土量の単純な差だけで借土量や残土処分量を決めることはできません。掘削前の土と掘削後の土、締め固めた後の土では体積が異なるためです。また、現場で掘削した土のすべてが盛土材として使えるとは限りません。表土、泥状の土、異物を含む土、含水量が高い土などは、使用箇所や施工条件によって転用できない場合があります。
例えば、計算上の切土量が一万立方メートル、盛土量が九千立方メートルであれば、一見すると千立方メートルの残土が発生し、借土は不要に見えます。しかし、切土のうち二千立方メートルが盛土に適さない場合、有効な転用土は八千立方メートル以下になります。さらに締固めによる体積減少を考慮すると、盛土材が不足し、借土が必要になる可能性があります。同時に、使用できない二千立方メートルは残土として搬出しなければなりません。
このように、同じ工事で借土と残土が同時に発生することは珍しくありません。土量の総量だけでなく、土質、用途、発生時期、体積変化を含めて収支を組み立てることが重要です。
配電設備の新設や更新に伴う造成工事でも、借土量と残土処分量の把握は欠かせません。受変電設備を設置するヤード、機器基礎、構内道路、ケーブル埋設区間、排水設備、接地設備などでは、場所ごとに必要な地盤高さや材料条件が異なります。一般造成には利用できる発生土でも、埋設管の周囲や機器基礎付近には使用しにくいことがあります。
借土量と残土処分量を同時に求めるには、現況地盤と計画地盤の整理から始め、切土量と盛土量の算出、発生土の分類、土量状態の換算、収支計算、施工条件の反映という順序で進めます。各段階の前提を記録しておけば、設計変更や現場条件の変化があった場合にも計算を更新しやすくなります。
ステップ1 現況地盤と計画地盤の計算条件を統一する
最初のステップは、切盛土計算に使用する現況地盤と計画地盤の条件をそろえることです。ここで条件がずれていると、その後の計算を細かく行っても、借土量と残土処分量の精度は高まりません。
現況地盤とは、造成工事を始める前の地表面です。計画地盤とは、施工によって仕上げる予定の地表面です。基本的には、計画地盤が現況地盤より低い部分が切土となり、計画地盤が現況地盤より高い部分が盛土となります。
まず、現況地盤の測量成果について、座標、高さの基準、測定時期、測点位置を確認します。異なる基準で取得した高さを混在させると、地盤全体が実際より高く、または低く計算される可能性があります。広い造成地では、わずかな高さの差でも面積を掛けると大きな土量差になります。
例えば、一万平方メートルの範囲で平均五センチメートルの高さのずれがあれば、単純計算で五百立方メートルの差になります。測点ごとの差は小さく見えても、借土車両や残土搬出車両の計画へ影響する量になることがあります。
現況地盤を測定してから着工までに期間が空いている場合は、現地の状態が変化していないかを確認します。別工事による掘削や盛土、伐採、資材の仮置き、降雨による侵食、既設構造物の撤去などが行われていれば、過去の測量成果をそのまま使用できない場合があります。
計画地盤については、図面に示された高さが何の仕上がり面を表すのかを明確にします。舗装面、路盤面、造成地盤面、基礎底面など、図面の種類によって高さの意味が異なります。
構内道路の計画高さが舗装表面を示しているにもかかわらず、その高さまで土を盛る計算にすると、舗装や路盤の厚さに相当する分だけ盛土量を過大に見積もります。反対に、造成地盤面までしか計算していないのに、実際には表土や植栽基盤を追加する場合は、その分の材料が不足する可能性があります。
配電設備の設置ヤードでは、設備基礎、排水勾配、浸水対策、構内道路との接続などを考慮して地盤高さが決められます。平面図だけでなく、縦断図、横断図、基礎図、排水計画図などを確認し、計画面を一つの地形として矛盾なく整理することが必要です。
計算範囲の統一も重要です。敷地境界までを対象とするのか、実際の施工区域だけを対象とするのか、法面、取付道路、仮設ヤードを含むのかを決めます。切土計算と盛土計算で対象範囲が異なると、土量収支が合わなくなります。
法面がある場合は、法肩と法尻の位置を計画面へ反映します。平坦な造成面だけを比較し、周辺へすり付ける斜面を除外すると、切土量または盛土量が不足します。既設地盤との接続部では、計画面と現況面が交差する位置を確認し、計算範囲の重複や欠落を防ぎます。
また、既設建物、基礎、舗装、側溝、擁壁などが存在する範囲は、単純な地形差だけでは計算できません。撤去する構造物と残置する構造物を区別し、撤去後に生じる空間や埋戻しの有無を別途整理します。
このステップでは、次の計算へ進む前に、現況面、計画面、対象範囲、高さの基準、計算時点を統一しておくことが重要です。計算条件を図面や記録として残しておけば、後から数値の根拠を確認しやすくなります。
ステップ2 区画ごとの切土量と盛土量を算出する
現況地盤と計画地盤の条件を統一したら、対象地を適切な区画に分けて切土量と盛土量を算出します。敷地全体の総量だけでなく、どこで土が発生し、どこで土が必要になるのかを把握することがポイントです。
切盛土量を求める方法には、一定の大きさに区切った格子を使う方法、複数の断面から体積を求める方法、測点を三角形で結んだ地表面を比較する方法などがあります。どの方法が適しているかは、施工範囲の形状、地形の複雑さ、必要な精度、利用できる測量成果によって異なります。
格子による方法では、対象地を一定間隔の格子に分け、各格子点の現況高さと計画高さの差を求めます。その高さの差と格子面積から、格子ごとの切土量または盛土量を計算します。
平坦で大きな造成面では扱いやすい方法ですが、法面、段差、側溝、擁壁、既設道路の端部など、地形が急に変化する場所では格子間隔を細かくする必要があります。格子が粗すぎると、局所的な高低差が平均化され、実際の土量との差が大きくなる可能性があります。
一つの格子内に切土と盛土の境界が存在する場合は、格子全体を切土または盛土のどちらかにまとめないことが重要です。現況面と計画面が交差する位置を求め、切土部分と盛土部分を分けて計算します。境界付近の処理が粗いと、切土量と盛土量の両方が過大になる場合があります。
断面を利用する方法は、道路、ケーブル埋設区間、排水路など、細長い施工範囲で使いやすい方法です。一定間隔で横断面を作成し、それぞれの切土面積と盛土面積を求めます。隣り合う断面の平均面積に断面間距離を掛けることで、その区間の土量を計算します。
ただし、断面間で地形や計画形状が大きく変わる場所では、中間断面を追加する必要があります。法面の開始位置、道路幅員の変化、構造物との接続部などを断面がまたぐ場合、両端の平均だけでは正確に表現できないことがあります。
地表面を三角形の集合として表現する方法は、複雑な地形に対応しやすい方法です。現況の測点と計画地盤の構成点を利用してそれぞれの面を作り、その差から切土量と盛土量を求めます。
この方法では、地形の折れ線を正しく設定することが重要です。法肩、法尻、道路端、側溝の縁などを無視して点を結ぶと、実際には存在しない斜面や窪みが作られ、計算結果が変わります。使用する点の密度だけでなく、地形の特徴をどこで区切るかが精度を左右します。
配電設備の造成では、敷地を設備設置ヤード、構内道路、法面、排水施設周辺、ケーブル経路、資材置場などに分けて計算すると、施工計画へ反映しやすくなります。
区画ごとに切土量と盛土量を整理すれば、切土が多く発生する場所から盛土が必要な場所までの運搬距離を検討できます。現場内で土を運ぶための車両動線、仮置き場所、他工種との干渉も把握しやすくなります。
総切土量と総盛土量が同程度であっても、発生場所と使用場所が離れていれば、場内運搬の負担が大きくなります。また、設備基礎工事や構内道路工事の順序によっては、同じ土を転用するために一度仮置きしなければなりません。
計算結果は、切土と盛土を相殺せず、それぞれ別の数値として保持します。例えば、切土が五千立方メートル、盛土が四千立方メートルである場合、差し引き千立方メートルだけを記録すると、発生土の品質や転用量を検討できません。
このステップで算出する土量は、現況面と計画面の幾何学的な差です。まだ借土量や残土処分量ではありません。次のステップで、切土のうち盛土へ転用できる量を分類します。
ステップ3 発生土を転用土と処分対象土に分類する
切土として掘削する土のすべてを、盛土や埋戻しに利用できるとは限りません。借土量と残土処分量を求めるためには、発生土を性状や用途に応じて分類し、利用可能な量を算出する必要があります。
まず確認したいのが表土です。地表付近の土には、植物の根、有機物、腐植などが含まれていることがあります。このような土は、重要な構造物を支持する盛土や構内道路の路体として使用しにくい場合があります。
一方で、表土を緑地の復旧や植栽基盤へ利用できる場合があります。その場合は、処分対象として一括計上せず、一般盛土とは別の用途に利用する土として管理します。掘削時から分けて保管しなければ、他の土と混ざり、利用しにくくなる可能性があります。
次に、盛土材として使用する土の性状を確認します。含水量が高く泥状になった土、締め固めにくい土、大きな石が多い土、異物を含む土などは、そのまま利用できない場合があります。
ただし、現時点で締固めにくいからといって、直ちに全量を残土と判断する必要はありません。乾燥、ばっ気、異なる性状の土との混合、粒径の調整などにより、利用できることがあります。調整場所、作業時間、天候、施工工程を考慮し、現場で実行可能かを判断します。
技術的には改良可能でも、仮置き場所がない場合や、盛土施工までに調整する時間がない場合は、実務上の転用が難しくなります。発生土の利用可能性は、土質だけではなく、場所と時間の条件を含めて評価することが重要です。
配電設備工事では、使用箇所によって土に求める条件が異なります。広いヤードの一般盛土に利用できる土でも、機器基礎の周辺、ケーブル管路の周囲、排水構造物の近くには適さない場合があります。
埋設管の周囲へ大きな石を含む土を戻すと、締固め時や完成後に管へ局部的な力が加わるおそれがあります。接地線の周辺でも、石やコンクリート片を含む土は施工時の損傷要因になり得ます。そのため、発生土を利用する場所ごとに条件を分ける必要があります。
既設設備の更新工事では、過去の埋戻し土に舗装片、コンクリート片、配管片、廃材などが混在していることがあります。外観だけでは土質を判断しにくいため、掘削状況を確認しながら分類します。
発生土は、実務上、一般盛土へそのまま利用できる土、調整後に利用できる土、用途を限定すれば利用できる土、場内利用が難しい土という考え方で整理できます。具体的な判定は、設計条件、地盤調査、施工計画、現地確認などに基づいて行います。
再利用可能な切土量は、次の関係で整理できます。
再利用可能切土量=総切土量-場内利用できない土量-別用途へ振り分ける土量
別用途へ振り分ける土には、緑地へ利用する表土、将来工事用として場内保管する土、仮設工事へ利用する土などが含まれます。これらは一般盛土には使用しませんが、必ずしも場外処分する残土ではありません。
処分対象土量を算出する際は、土質上利用できない土だけでなく、工程上利用できない土も考慮します。例えば、工事序盤に盛土を完成させる必要があり、転用予定の切土が工事後半まで発生しない場合です。この場合、先に借土を搬入し、後から発生する切土を残土として搬出する可能性があります。
また、切土の発生場所から盛土箇所まで車両が通行できない場合や、仮置きすると設備工事の支障になる場合も、場内転用量が制限されます。
このステップでは、総切土量を一つの数値として扱わず、土質、用途、発生時期ごとに分けることが大切です。分類を細かくしすぎると管理が複雑になりますが、少なくとも転用可能な土と処分する可能性が高い土は分けておかなければなりません。
ステップ4 土量変化率を使って同じ状態へ換算する
切土量と盛土量を正しく比較するためには、土がどの状態にあるときの体積なのかをそろえる必要があります。同じ土でも、掘削前、掘削後、締固め後では体積が異なるからです。
掘削前に地盤中にある土の体積は、地山状態の土量として扱われます。切土計算で現況地盤と計画地盤の差から求める体積は、基本的に地山状態を基準とした量です。
土を掘削すると、粒子のかみ合わせが緩み、粒子間の空隙が増えます。そのため、掘削後の土は地山状態より体積が大きくなる場合があります。この状態がほぐれた土の量です。残土を車両へ積み込むときや、借土を搬入した直後の状態は、ほぐれた状態に近いと考えられます。
盛土として敷きならし、転圧して締め固めると、空隙が減少して体積が小さくなります。計画地盤の表面差から求めた盛土量は、完成後の形状を示しているため、締固め後の体積として整理する必要があります。
このため、地山状態で求めた切土量と、締固め状態で必要となる盛土量をそのまま差し引くことはできません。
例えば、地山状態で千立方メートルの土を掘削しても、その土が締固め後に千立方メートルの盛土になるとは限りません。土質や締固め条件によっては、締固め後の体積が地山状態より小さくなり、千立方メートル分の盛土を完成させるには、千立方メートルを超える地山土量が必要になることがあります。
借土量と残土処分量を同時に求める場合は、すべての数値を一つの状態へ換算して比較します。ここでは、完成後の盛土量に合わせて、締固め状態を基準にする考え方が分かりやすいでしょう。
再利用可能な切土を締固め後の土量へ換算する場合は、次のように整理します。
有効転用土量=再利用可能切土量×地山状態から締固め状態への換算係数
換算係数は土質、粒度、含水状態、施工方法、締固めの程度などによって異なります。すべての工事で一律の数値を使えるわけではありません。地盤調査、試験結果、試験施工、類似工事の施工実績などを参考に設定します。
借土についても、盛土として不足する締固め土量と、搬入時のほぐれ土量を区別します。完成後に必要な土量が千立方メートルであっても、搬入する土の量が千立方メートルで足りるとは限りません。
借土の搬入量は、次の考え方で求められます。
借土搬入量=不足する締固め土量÷搬入土の締固め換算係数
残土処分量を運搬計画へ反映する場合は、地山状態の残土量を、掘削後のほぐれた土量へ換算します。
残土搬出時土量=残土の地山土量×地山状態からほぐれ状態への換算係数
地山状態で五百立方メートルの残土であっても、掘削後に体積が増えれば、搬出時には五百立方メートルを超える場合があります。仮置き場の必要面積や搬出車両の計画は、ほぐれた状態の土量を基準に検討する必要があります。
一方、工事の設計数量や発生土量を管理する際は、地山状態を基準にすることがあります。設計数量と車両の積載記録を直接比較すると差が生じやすいため、どの状態へ換算した数値なのかを明記します。
盛土施工では、敷きならし、転圧、地盤へのなじみ、不陸の修正などにより、計画上の体積だけでは不足することがあります。必要に応じて施工上の余裕を考慮しますが、根拠なく一定の割合を加えることは避けます。
測量精度、地形の複雑さ、盛土厚、土質、締固め方法、余掘りの可能性などを確認し、どの要因に対する余裕なのかを明確にします。余裕量を借土へ一律に加えると、工事終盤に土が余り、新たな残土が発生することがあります。
土量計算書には、各数値の単位だけでなく、地山、ほぐれ、締固めのどの状態を示すのかを記載します。例えば、切土量三千立方メートルとだけ記載するのではなく、地山状態の切土量であることを明らかにします。
状態の異なる土量を同じ列や同じ項目で扱わないことが、借土量と残土処分量の計算ミスを防ぐ基本です。
ステップ5 土量収支から借土量と残土処分量を求める
現況地盤と計画地盤から切土量と盛土量を求め、発生土を分類し、同じ状態へ換算したら、土量収支を作成します。ここで借土量と残土処分量を同時に算出します。
最初に、完成後に必要となる盛土量を集計します。造成地盤の盛土だけでなく、基礎周辺、管路、側溝周辺などの埋戻し土も対象にします。ただし、砕石、砂、その他の指定材料を使用する部分は、一般土の盛土量と分けます。
例えば、ケーブル管路の周囲に特定の粒度を持つ材料を使用する計画であれば、その部分を場内発生土で賄えるとは限りません。一般盛土と指定材料を混在させると、転用可能な土量を過大に計算することになります。
次に、再利用可能切土量を締固め状態へ換算し、有効転用土量を求めます。
有効転用土量=再利用可能切土量×締固め状態への換算係数
必要盛土量が有効転用土量を上回る場合、その不足分が締固め状態を基準とした借土必要量です。
借土必要量=必要盛土量-有効転用土量
この計算結果が正の値であれば、場内発生土だけでは盛土を完成できません。借土として実際に搬入する量は、搬入土の状態と締固め換算係数を考慮して求めます。
一方、有効転用土量が必要盛土量を上回る場合は、利用可能な土が余ります。ただし、締固め状態の余剰量を、そのまま地山状態の残土量として扱うことはできません。
まず、必要盛土量を完成させるために使用する切土の地山相当量を求めます。
盛土へ使用する地山相当量=必要盛土量÷締固め状態への換算係数
次に、再利用可能切土量から、盛土へ使用する地山相当量を差し引きます。
転用可能土の余剰量=再利用可能切土量-盛土へ使用する地山相当量
この余剰量に、初めから盛土へ利用できない土や、工程上転用できない土を加えることで、残土候補量を求めます。
残土候補量=転用可能土の余剰量+利用不能土量+工程上転用できない土量
ただし、残土候補量のすべてを場外処分するとは限りません。表土を緑地へ再利用する場合、別の工区へ転用する場合、場内の将来工事用として保管する場合は、その量を差し引きます。
最終残土処分量=残土候補量-場内別用途利用量-場内保管量
この収支計算により、借土量と残土処分量を一つの流れの中で把握できます。
具体的な考え方を例で確認します。地山状態の総切土量が八千立方メートル、そのうち盛土へ利用できない土が二千立方メートル、再利用可能切土量が六千立方メートルだったとします。
計画盛土量が締固め状態で六千立方メートルあり、地山状態から締固め状態への換算係数を仮に〇・九として計算すると、有効転用土量は五千四百立方メートルです。
有効転用土量=六千立方メートル×〇・九=五千四百立方メートル
計画盛土量は六千立方メートルなので、締固め状態で六百立方メートル不足します。
借土必要量=六千立方メートル-五千四百立方メートル=六百立方メートル
この例では総切土量が計画盛土量を上回っていますが、土質上利用できない土と締固めによる体積変化があるため、借土が必要です。同時に、利用できない二千立方メートルは残土候補になります。
このように、借土が発生するから残土は発生しない、残土が発生するから借土は不要という関係ではありません。異なる用途に適した土が必要な場合や、発生時期が合わない場合には、両方が同時に発生します。
配電設備工事では、一般盛土に場内発生土を利用しながら、基礎周辺や埋設物周辺には別の性状の材料を搬入する場合があります。この場合、一般盛土の収支と指定材料の収支を分けて計算します。
借土量と残土処分量を求めたら、計算値をそのまま最終値にせず、次のステップで施工順序や仮置き条件を反映します。
ステップ6 施工順序と現場条件を反映して確定する
計算上の土量収支が成立していても、そのまま現場で実行できるとは限りません。最後のステップでは、切土と盛土の施工時期、仮置き場所、場内運搬、天候、他工種との関係を反映し、借土量と残土処分量を確定します。
最初に、切土が発生する時期と盛土が必要になる時期を並べます。盛土工事が先に始まり、転用予定の切土が後工程で発生する場合、計算上は土量が足りていても、施工時点では材料が不足します。
この場合、盛土工程を変更して切土の発生を待つ、先行して切土区画を施工する、借土を搬入する、といった方法を検討します。工程を変更できず、借土を先に搬入した場合、後から発生した切土を使う場所がなくなり、残土として搬出することがあります。
次に、仮置き場所を確認します。切土を一時的に保管できれば、発生時期と使用時期の差を調整できます。しかし、仮置き場の容量が不足していると、転用可能な土であっても場外へ搬出せざるを得ません。
仮置き土は、種類ごとに分けて管理します。一般盛土へ利用する土、含水調整が必要な土、表土、処分予定土を同じ場所に積むと、利用可能な土まで混ざり、転用できなくなる可能性があります。
仮置き場の地盤状態や排水も重要です。雨水がたまりやすい場所へ土を置くと、含水量が増えて締固めにくくなることがあります。周辺への土砂流出、既設排水路の閉塞、車両通行への影響にも配慮します。
場内運搬経路も確認します。切土区画から盛土区画までの経路に段差や狭い部分がある場合、想定した車両を使用できない可能性があります。稼働中の配電設備がある敷地では、保守作業や緊急時の通行を妨げない経路を確保しなければなりません。
架空線や既設設備の近くを運搬車両が通る場合は、車両の高さや荷台操作時の安全性を確認します。土量計画だけで場内転用を決めず、安全に運搬できるかを含めて判断します。
天候も転用可能量へ影響します。計画段階では利用可能と判断した土でも、長雨によって含水量が高くなると、盛土への使用を一時的に見合わせる場合があります。乾燥を待てる工程であれば転用できますが、待機期間を取れない場合は、借土への切り替えや残土搬出が必要になることがあります。
反対に、乾燥しすぎた土では、締固めに適した状態へ調整する必要が生じることがあります。利用可能量は固定値ではなく、現場の状態に応じて変動するものとして扱います。
配電設備の工事では、造成、基礎、ケーブル管路、接地、排水、設備据付などが並行して進むことがあります。造成を完了した場所を後工程で再掘削すると、新たな発生土と埋戻し需要が生じます。
工事前半の造成土量だけで借土と残土を確定すると、後から行う設備基礎や管路の掘削土が収支から漏れる可能性があります。工事全体の掘削と埋戻しを時系列で整理し、発生土の利用先を決めます。
また、基礎コンクリートや埋設構造物が土中で占める体積も考慮します。掘削した空間のすべてを土で埋め戻すわけではないため、構造物の体積に相当する土は余剰になる可能性があります。
最終的な計画では、地山状態の切土量、締固め状態の盛土量、有効転用土量、借土必要量、搬入時の借土量、地山状態の残土量、搬出時のほぐれ土量、仮置き量を区別して整理します。
数値の横には、使用した換算係数、転用可能率、算定時点、対象区画を記録します。これにより、施工中に条件が変化した場合でも、影響する項目を見つけて再計算できます。
配電設備工事で追加計上すべき土量
配電設備の設置や更新を伴う工事では、造成面の切盛土計算だけでは土量を把握できません。基礎、埋設物、排水設備、既設構造物の撤去などに伴う土量を追加で計上する必要があります。
機器基礎では、基礎の底面まで地盤を掘削します。掘削範囲は基礎本体の外形より広くなることがあり、作業空間や型枠設置のための余掘りが生じます。
掘削土量から基礎コンクリートの体積を差し引き、さらに基礎周囲の埋戻しに必要な量を整理します。基礎本体が占める部分には土を戻さないため、その分の掘削土は他の盛土へ転用するか、残土として搬出します。
基礎周辺の埋戻しに場内発生土を使用できない場合は、別の材料を搬入します。その場合、掘削土が残土になる一方、埋戻し用の借土が必要となり、借土と残土が同時に発生します。
ケーブル溝や埋設管路では、掘削断面全体から、管、保護材、構造物などが占める体積を差し引いて埋戻し土量を求めます。管の周囲へ別材料を使用する場合は、その体積も一般土の埋戻し量から除外します。
例えば、掘削土量が百立方メートルであっても、管や構造物が十立方メートル、指定材料による埋戻しが二十立方メートルであれば、元の掘削土を戻せる空間は単純計算で七十立方メートルです。残りの土は、他の場所へ転用しなければ残土になります。
排水側溝、集水ます、排水管なども同様です。排水構造物の体積と基礎材の体積を考慮し、掘削土と埋戻し土を別々に計算します。
既設設備の撤去工事では、基礎や地下構造物を撤去した跡に空間が残ります。この空間を埋め戻す場合は、新たな盛土需要として加えます。既設基礎を撤去したことで、場内発生土だけでは埋戻し量が足りず、借土が必要になることがあります。
反対に、新設基礎の体積が大きければ、掘削土が余って残土量が増えます。新設と撤去を同時に行う工事では、両方の体積を工事全体で整理すると、場内転用の可能性を判断しやすくなります。
地盤改良を行う場合も、工法に応じた土量変化を確認します。土を掘削して別材料へ置き換える場合は、掘削土が残土となり、置換材料が借土になります。原位置の土へ材料を混合する場合は、混合後の体積や地盤高さへの影響を考慮します。
構内道路では、舗装、路盤、路床の構成を確認します。造成地盤の盛土量と、砕石など別材料の量を分けなければなりません。舗装面の計画高さだけを使って一般土の盛土量を求めると、路盤材料の厚さ分だけ過大になります。
浸水対策として設備ヤードを周辺地盤より高くする場合は、盛土量が大きくなる可能性があります。ただし、土量を減らすためだけに計画高さを下げると、排水勾配や浸水対策に影響します。土量収支と設備の安全性を切り離さずに検討することが重要です。
仮設道路や機器搬入路に一時的な盛土を行う場合は、設置時の借土だけでなく、撤去時の残土も検討します。工事中だけ使用する土であっても、最終的に場内へ転用できなければ搬出が必要です。
設備据付後に仮設盛土を撤去する計画であれば、工事終盤に残土が集中する可能性があります。搬出時期、車両動線、周辺作業との干渉を事前に整理します。
計算ミスを防ぐ確認ポイント
借土量と残土処分量の計算では、数式そのものより、前提条件の混在によってミスが生じることがあります。特に注意したいのが、土量状態、計算範囲、構造物体積、土質分類、施工時期の五つです。
土量状態については、地山、ほぐれ、締固めを混在させないようにします。切土量が地山状態、盛土量が締固め状態であるにもかかわらず、換算せずに差し引くと、借土量や残土処分量が正しく求まりません。
計算範囲については、切土と盛土で同じ境界を使用します。法面やすり付け部を片方の計算だけに含めると、収支が合わなくなります。別の担当者が作成した計算結果を統合する場合は、対象範囲の重複にも注意します。
構造物の体積については、基礎、管路、側溝、砕石層など、土に置き換わる部分を明確にします。掘削土量と埋戻し土量が同じになるとは限りません。
土質分類では、転用可能率を根拠なく設定しないことが重要です。地盤調査で確認した性状が敷地全体に均一に分布しているとは限りません。施工中の確認結果に応じて、利用可能量を更新できるようにします。
施工時期については、工事全体の合計だけでなく、時期ごとの収支を確認します。最終的に切土と盛土が均衡していても、必要な時点で土がなければ借土が発生します。
計算結果を極端に細かい桁まで示すことにも注意が必要です。現況測量、地盤形状、土質、換算係数には一定の不確かさがあります。計算上は小数点以下まで求められても、その精度が現場で確保できるとは限りません。
一方で、大まかに丸めすぎると、広い敷地では大きな差になります。計算方法、測量精度、施工管理の単位に合わせて、適切な桁で整理します。
土量計算を見直す際は、総切土量、再利用可能切土量、転用土量、利用不能土量、借土量、残土処分量の関係が矛盾していないかを確認します。
地山状態を基準にした場合、概念上は次の関係で確認できます。
総切土量=盛土へ転用する切土量+場内別用途利用量+場内保管量+残土処分量
盛土側は、次の関係で確認できます。
必要盛土量=場内転用土の締固め後土量+借土の締固め後土量
この二つを混同せず、状態をそろえて確認することが大切です。
また、搬入量と搬出量の両方が大きい場合は、その理由を確認します。土質条件、指定材料、施工時期、仮置き容量などの理由があれば問題ありませんが、換算や分類の誤りによって不要な借土と残土が計上されている可能性もあります。
施工中に借土量と残土処分量を更新する方法
着工前に算出した借土量と残土処分量は、施工中の実績に応じて更新する必要があります。現況地盤の差、予想外の土質、設計変更、追加掘削などにより、当初計画と実際の土量が変わることがあるためです。
まず、着工前の基準データを保存します。現況地盤、計画地盤、対象範囲、区画別の切土量と盛土量、転用可能率、換算係数、借土計画量、残土処分計画量を一式で残します。
計算結果だけを保存するのではなく、使用した地形データや前提条件を保存することが重要です。設計変更があった際に、どの条件を変更すれば再計算できるのかを把握しやすくなります。
施工中は、掘削が完了した区画、盛土が完了した区画、仮置き場など、変化した場所を定期的に確認します。毎回敷地全体を測定する必要はありませんが、土が大きく移動した場所は記録します。
掘削前後の地盤を比較すれば、実際の切土量を把握できます。盛土前後の地盤を比較すれば、施工した盛土量を確認できます。ただし、締固め前と締固め後では地盤高さが異なるため、測定時点を記録します。
仮置き土も土量収支の一部です。掘削量、盛土使用量、残土搬出量だけを比較し、仮置き量を除外すると収支が合いません。
一定期間の収支は、次の考え方で確認できます。
切土発生量+借土搬入量=盛土使用量+残土搬出量+仮置き増加量+その他利用量
実際には各数値の状態を統一する必要がありますが、この関係を区画別、期間別に確認すると、記録漏れや数量差を見つけやすくなります。
仮置き場が複数ある場合は、場所ごとに土量と土質を管理します。利用可能な土と処分対象土を混在させると、残土処分量の見込みが変わる可能性があります。
搬入車両や搬出車両の記録も活用します。ただし、車両台数だけで正確な土量を確定することは難しい場合があります。積み方、含水状態、土質によって、一台当たりの見かけの体積が変わるためです。
車両記録は搬入出の流れを把握する資料として利用し、施工出来形や仮置き量の測定結果と照合します。差が継続して発生する場合は、換算係数や一台当たりの想定量を見直します。
掘削中に利用しにくい土が確認された場合は、転用可能率を更新します。場内転用量が減ると、借土量と残土処分量が同時に増える可能性があります。工事終盤まで変更を反映しないと、借土手配や残土搬出が間に合わなくなるおそれがあります。
設計地盤の高さや法面形状が変更された場合は、変更部分の面積だけでなく、周辺との接続部も再計算します。地盤高さの変更によって、切土と盛土の境界や法尻の位置が変わることがあるためです。
定期的に土量収支を更新すれば、今後必要となる借土、残土搬出量、仮置き場の空き容量、搬出入時期を予測できます。土工担当者だけでなく、設備基礎、管路、排水、設備据付の担当者とも共有することで、後工程の掘削や埋戻しを含めた調整がしやすくなります。
LRTK Phoneを活用した土量管理
借土量と残土処分量を適切に管理するには、現場の地形変化を継続して記録することが重要です。着工前の現況地盤だけでなく、掘削後、盛土途中、完成時、仮置き中の形状を確認することで、計画値と実績値の差を把握しやすくなります。
LRTK Phoneは、対応する環境や運用条件のもとで位置情報を取得し、現場の測点や施工範囲を記録する用途に活用できます。切土区画、盛土区画、法肩、法尻、仮置き場、基礎周辺などの位置を現地で確認し、土量管理に必要な情報を整理できます。
施工前に現況地盤の要点を記録し、掘削後に同じ区画を測定すれば、実際の地盤変化を確認するための資料になります。盛土施工でも、施工前、施工途中、締固め後の高さを区別して記録することで、計画高さまでの不足や過剰を把握しやすくなります。
仮置き土では、外周、裾部、頂部などの位置を記録し、形状の変化を確認します。場内に残っている土の量を把握できれば、今後の盛土へ転用できる量と、最終的に搬出する残土量を見直せます。
土量計算へ利用する際は、高さの基準、座標の扱い、測定時点、測定箇所を統一します。異なる基準で取得したデータを混在させると、地盤高の差が実際の施工変化なのか、測定条件の差なのか判断しにくくなります。
配電設備が稼働している現場では、測定精度だけでなく安全な作業方法を優先します。立入制限、充電部との離隔、工事車両の動線、足元の状態などを確認し、現場の管理ルールに従って測定します。
取得した情報だけで施工可否を判断するのではなく、設計図面、地盤条件、締固め状況、土質確認の結果と組み合わせて利用することが重要です。位置や高さが計画どおりでも、盛土の品質が確保されているとは限りません。
着工前、掘削後、盛土途中、完成時という同じ流れで記録を残すと、どの段階で土量差が発生したかを追いやすくなります。借土を追加手配する時期や、残土搬出を増やす時期も早めに判断できます。
現場で取得した情報と土量計算を区画単位で結び付けることで、計算書だけでは把握しにくい施工中の変化を管理できます。借土の過剰搬入や残土処分の遅れを防ぐためにも、日々の地形確認を土量収支の更新へつなげることが大切です。
まとめ
借土量と残土処分量を同時に求める切盛土計算では、総切土量と総盛土量を単純に差し引くだけでは十分ではありません。現況地盤と計画地盤の条件を統一し、区画ごとの切土量と盛土量を算出したうえで、発生土の利用可能性と体積変化を反映する必要があります。
第一のステップでは、現況面、計画面、高さの基準、計算範囲をそろえます。第二のステップでは、地形や施工目的に応じた方法で切土量と盛土量を別々に算出します。
第三のステップでは、発生土をそのまま転用できる土、調整後に利用できる土、用途を限定して利用する土、場内利用が難しい土へ分類します。第四のステップでは、地山、ほぐれ、締固めという土の状態を統一し、換算係数を使って比較可能な量へ変換します。
第五のステップでは、必要盛土量と有効転用土量を比較して借土量を求め、利用不能土や余剰土から残土処分量を算出します。第六のステップでは、施工順序、仮置き場、天候、場内運搬、他工種との関係を反映し、実行可能な土量計画へ仕上げます。
配電設備工事では、設備基礎、ケーブル管路、接地設備、排水構造物、既設基礎の撤去、仮設道路などが土量収支へ影響します。造成地盤だけでなく、工事期間全体の掘削と埋戻しを時系列で整理することが重要です。
着工後は、実際の切土量、盛土量、仮置き量、借土搬入量、残土搬出量を確認し、計画を継続的に更新します。土質や設計条件が変化した場合は、転用可能量を見直し、借土不足や残土の滞留を早期に防ぎます。
現場の地形を施工段階ごとに記録し、計画値と実績値を比較する手段として、LRTK Phoneを活用できます。切土、盛土、仮置き土の変化を区画ごとに把握し、借土量と残土処分量の見直しにつなげることで、土量計算を実際の施工管理に生かせます。