LRTKレフィクシア株式会社

配電設備のケーブルシース循環電流を減らす7つの接地改善

配電設備でケーブルシース循環電流が問題になる理由

配電設備に単心の交流電力ケーブルを使用すると、導体を流れる交流電流によって周囲に変動磁界が発生します。ケーブルの金属シースや金属遮へい層が複数地点で接地され、電気的な閉回路を形成している場合、この磁界によって生じた誘起電圧がシース回路を駆動し、循環電流が流れることがあります。

この記事では、主に金属シースまたは金属遮へい層を備えた三相単心交流ケーブルを想定します。実際に採用できる接地方式は、電圧階級、ケーブルと付属品の仕様、線路長、布設条件、系統の地絡電流、接地網の構成によって異なるため、設備ごとの設計計算とメーカー資料、適用規格を優先して判断する必要があります。

シース循環電流は、負荷設備へ有効な電力を供給するための電流ではありません。しかし、金属シースや接続線には電気抵抗があるため、循環電流が流れると損失が熱に変わります。循環電流が大きい状態では、ケーブルの温度上昇、接続部の局所的な過熱、送電損失の増加、許容電流の低下につながる可能性があります。

特に注意したいのは、三相単心ケーブルを平面状に配置している線路です。平面配置では中央相と外側相で磁気的な条件が異なりやすく、各相のシース誘起電圧や循環電流に差が生じる場合があります。また、相間隔が一定でない区間、曲がりが多い区間、複数回線が近接する区間、鋼製構造物の近くを通る区間でも、三相の条件がそろいにくくなります。

負荷電流の増加も重要な要因です。設備新設時には問題が目立たなかったケーブルでも、生産設備の増設、運転方法の変更、回線構成の変更などによって負荷電流が増えると、シース誘起電圧と循環電流が増加することがあります。設計当初の負荷条件だけを基準に管理していると、現在の運用状態とのずれを見落としかねません。

ケーブルや接地線の発熱を発見した際、導体の過負荷だけを原因と決めつけるのは適切ではありません。ケーブル温度には、導体損失、シース損失、周囲温度、布設環境の熱抵抗、近接ケーブルの発熱、接続部の接触抵抗などが複合的に影響します。導体電流が定格範囲内でも、シース循環電流や接続部の抵抗が大きければ温度上昇が目立つ可能性があります。

一方で、循環電流を減らすために接地線を安易に外すと、金属シースの対地電圧が上昇するおそれがあります。接地方式は、通常運転時の損失だけでなく、感電防止、故障電流経路の確保、外被絶縁の保護、雷や開閉による過電圧への対応にも関係します。

したがって、配電設備のシース循環電流対策では、単純に接地点を減らすのではなく、ケーブル線路全体を一つの電気回路として評価する必要があります。通常時の電流と温度、事故時の電圧と故障電流、接地設備の能力、ケーブル外被と付属品の耐電圧を確認し、安全性を維持しながら損失を減らすことが基本です。

ケーブルシース循環電流が発生する仕組み

交流電流がケーブル導体を流れると、導体の周囲には電流の大きさと位相に応じた磁界が発生します。金属シースはこの磁界と鎖交するため、電磁誘導による電圧が生じます。シースの両端が接地されていると、金属シース、ボンディング線、接地線、接地網などを通じて閉回路が形成され、その回路へ循環電流が流れます。

循環電流の大きさは、シースに生じる誘起電圧と、閉回路全体のインピーダンスによって変わります。ここでいうインピーダンスには、金属シースの抵抗、ボンディング線や接地線の抵抗とインダクタンス、端子の接触抵抗、接地網を通る経路などが含まれます。接地抵抗だけを測定しても、循環電流の全体像を判断できるとは限りません。

シース誘起電圧は、ケーブル長、導体電流、周波数、相配置、相間隔、周囲の金属構造物、隣接回線との位置関係などによって変化します。一般に、線路が長く、導体電流が大きいほど、シースに生じる電圧も大きくなる傾向があります。ただし、三相の配置やシースの接続方法によって相互に打ち消される成分もあるため、線路長だけで判断することはできません。

三相単心ケーブルを正三角形に近い形で配置すると、各相の磁気的な条件を比較的そろえやすくなります。これに対して平面配置では、中央相と外側相が受ける影響が異なります。さらに、途中で相配置が変わったり、曲線部だけ相間隔が広がったりすると、各区間の誘起電圧が不均衡になります。

配電設備では、ケーブルの布設スペースや施工性を優先した結果、設計図上の配置と実際の配置が異なる場合があります。ピット内でケーブルが交差している、支持金具の位置によって相間隔が変わっている、別回線が後から追加されているといった状況は、シース電流の計算条件を変える要因です。

また、シース循環電流と渦電流損失は区別して考える必要があります。循環電流は、接地やボンディングによって形成された回路を主に線路方向へ流れる電流です。渦電流は、変動磁界によって金属シースなどの内部に局部的に生じる電流です。一点接地によって線路方向の循環電流を抑えても、金属部に生じるすべての損失がなくなるわけではありません。

シース電流には、電磁誘導以外の要素が含まれることもあります。異なる接地網の電位差、他設備から流入する電流、外被絶縁の劣化による漏れ電流、意図しない金属接触などです。負荷電流とおおむね連動して増減する電流であれば電磁誘導との関係を検討しやすい一方、負荷と関係なく流れる電流については、別の電流経路も調査する必要があります。

接地改善前に確認する測定項目

接地方式を改善する前には、現状の結線と運転状態を把握します。最初に確認したいのは、竣工図や改修図に記載された接地方式と、現場の接続状態が一致しているかどうかです。一点接地として設計されていても、保守作業時に仮設接地線が追加されたり、金属製の支持物を通じて接地されたりすると、実際には多点接地になっている場合があります。

確認する資料には、単線結線図、ケーブル布設図、接続箱の内部結線図、接地系統図、ケーブル仕様書、試験記録、改修履歴などがあります。図面が更新されていない場合は、現場確認の結果を基に現状図を作成します。接地方式を正確に判断できないまま対策を進めると、必要な保護接地を外したり、誤った結線を追加したりするおそれがあります。

現地では、ケーブルの種類、導体断面積、金属シースの材質、線路長、相配置、接続部の位置、接地線の接続先、接地線の長さと断面積を確認します。ケーブルがトレイ、管路、ピット、地中などのどの環境に布設されているかも重要です。鋼製管や磁性体の支持金具が単心ケーブルを相別に囲んでいる場合は、別の誘導加熱や損失の問題を生じる可能性もあるため、布設状態を含めて点検します。

電流測定では、三相の導体電流とシース電流を可能な限り同じ時刻に測ります。導体電流とシース電流を異なる負荷状態で測ると、両者の関係を正しく比較できません。測定値には、回線構成、運転中の負荷、測定時刻、周囲温度を併記します。

シース電流は、各相の絶対値だけでなく、導体電流に対する比率と相間差を確認します。負荷電流の増減に応じてシース電流も変化するか、中央相だけ大きくないか、接続箱の前後で値が変わっていないかを調べることで、発生要因を絞り込みやすくなります。ただし、シース電流比に設備横断で使える一律の正常値や異常値があるわけではありません。設計計算、ケーブルと付属品の仕様、過去の同条件データを基準に評価します。

温度測定では、ケーブル本体だけでなく、終端部、接続箱、ボンディング線、接地線、接地端子を確認します。特定の端子だけ温度が高い場合は、循環電流の大きさに加えて、緩み、腐食、圧着不良、接触面の汚損なども疑います。温度は負荷と運転時間の影響を受けるため、測定条件を記録し、過去の同条件データと比較します。

接地抵抗や導通抵抗の測定も有効ですが、接地抵抗が低ければシース循環電流も小さくなるとは限りません。両端接地された回路では、回路インピーダンスが下がることで循環電流が増える場合があります。保安上必要な接地性能と、平常時の循環電流対策は分けて検討しなければなりません。

外被絶縁の状態も重要です。シースを大地から絶縁する設計であっても、外被の傷、接続箱への浸水、絶縁支持部の汚損によって意図しない接地点が生じることがあります。外被絶縁試験を行う場合は、シース電圧制限器や監視回路など接続機器の仕様を確認し、必要な切離しと復旧を管理して、試験電圧による損傷を防ぐ手順が必要です。

運転中の接地線を試しに外して電流変化を見るような作業は避けます。接地線を開放した瞬間にシース電位が上昇し、アークや感電につながる可能性があります。測定と試験は、設備の電圧階級や接地方式を理解した技術者が、安全手順を定めて実施する必要があります。

接地改善1 両端接地の適用条件を見直す

一つ目の改善は、現在採用している両端接地が線路条件に適しているかを見直すことです。両端接地ではシースの両端が接地されるため、通常時のシース対地電圧を抑えやすく、構成も比較的分かりやすいという利点があります。一方で、シース回路が閉じるため、単心ケーブルでは循環電流が生じやすくなります。

短い構内配線や負荷電流が小さい線路では、両端接地によるシース損失が実用上問題にならない場合があります。しかし、線路長や負荷電流が増えると、シース損失がケーブルの温度と許容電流へ与える影響も大きくなります。設備増設後も従来の接地方式を使い続けている場合は、現在の最大負荷と将来負荷を基に再評価することが重要です。

両端接地を継続する場合は、シース損失を含めたケーブルの熱的な検討が必要です。導体だけの損失で許容電流を判断すると、実際の温度上昇を過小評価する可能性があります。周囲温度、ケーブル本数、布設間隔、土壌や管路の熱条件、近接回線の負荷を含めて評価します。

相配置の改善も検討対象です。施工条件が許す場合には、三相単心ケーブルの配置を可能な限り対称にし、相間隔をそろえることで、各相の誘起条件を近づけられる可能性があります。ただし、配置変更が他の回線や放熱条件、曲げ半径、支持構造へ与える影響も確認しなければなりません。

両端接地から別方式へ変更する場合、片側の接地線を外すだけでは不十分です。非接地点側には誘起電圧が生じるため、終端部や接続箱の絶縁構造、シース電圧保護、表示、作業時の安全対策が必要になります。事故時の故障電流経路も変わるため、保護装置の動作条件を再確認します。

接地方式の変更は、平常時の損失対策であると同時に、設備保護方式の変更です。設計計算、絶縁協調、保護協調、接地線やボンディング線の短時間耐電流、外被と付属品の耐電圧を確認したうえで実施します。現場の温度が高いという理由だけで、接地線を単独で撤去してはいけません。

接地改善2 短い区間では一点接地を検討する

二つ目の改善は、比較的短いケーブル区間に一点接地を適用できるか検討することです。一点接地では、金属シースを一方の地点で接地し、反対側を大地から絶縁します。線路方向の閉回路が形成されにくくなるため、通常時のシース循環電流を抑えやすい方式です。

一点接地の効果は大きい一方で、非接地点側のシースには誘起電圧が現れます。この電圧は、導体電流や線路長が増えるほど大きくなる傾向があります。したがって、一点接地を採用できる区間長は一律ではなく、ケーブル配置、最大負荷、周辺回線、外被と付属品の絶縁性能などを基に決める必要があります。

評価では、通常運転時だけでなく、最大負荷時、負荷不平衡時、回線切替時、短絡・地絡時に生じるシース電圧を確認します。並行する別回線がある場合、対象ケーブルが停止中でも誘導電圧が生じる可能性があります。停止した導体を無電圧と確認しても、シースまで安全な電位になっているとは限りません。

非接地点側の構造も重要です。金属シースを接地された筐体や支持金具から確実に絶縁しなければ、一点接地として機能しません。接続箱内の絶縁支持部、ケーブル外被、貫通部、シール部などを点検し、湿気や汚損による漏れ経路がないことを確認します。

一点接地では、シースを両端接地していたときの電位均等化や故障電流経路が変わります。そのため、系統条件によっては、ケーブルルートに沿った接地連続導体など、両端の接地設備を低インピーダンスで連続させる別経路が必要です。要否と断面積は、想定地絡電流、保護装置の遮断時間、接地網の配置、接触電圧などを基に決めます。

一点接地を採用した場所には、接地点と非接地点を明確に表示します。保守担当者が安全確保のために接地線を追加した結果、意図しない両端接地になることを防ぐためです。現場表示だけでなく、結線図、点検要領、作業手順書も更新します。

異常時のシース電圧を抑える必要がある場合は、通常時には絶縁状態を維持し、過電圧時に電位を制限するシース電圧制限器などの保護構成を検討します。保護要素を設ける場合は、通常時の最大誘起電圧で不要に導通せず、想定される異常電圧とエネルギーに対して適切に機能する定格を選定します。

一点接地は循環電流低減に有効ですが、すべての線路へ適用できるわけではありません。ケーブル線路が長い場合や、最大負荷時の誘起電圧が高くなる場合には、区間分割やクロスボンディングなど別の方式を検討します。

接地改善3 長距離線路ではクロスボンディングを適正化する

三つ目の改善は、長距離の単心ケーブル線路でクロスボンディングを適正に構成することです。クロスボンディングは、線路を複数の小区間に分け、各区間の金属シースを相順に入れ替えて接続する方式です。各小区間で生じる誘起電圧をベクトル的に組み合わせ、一つの大区間の両端で合成誘起電圧を小さくすることで、閉回路に流れる循環電流を抑えます。各小区間のシース対地電圧そのものがゼロになるわけではないため、外被と接続箱の絶縁設計は別途必要です。

一般的には、三つの小区間を一つの大区間として扱い、各小区間でシースの接続相を順番に交差させます。三つの区間で線路長、相配置、負荷電流などの条件がそろっていれば、各区間の誘起電圧を相殺しやすくなります。長い線路では、この大区間を必要に応じて繰り返します。

クロスボンディングの問題は、施工や改修時の誤結線が外観だけでは分かりにくいことです。接続箱の端子にシース線が接続されていても、相の順序が誤っていれば、誘起電圧の打消しが成立しません。一か所の誤結線によって特定相のシース電流やシース電圧が大きくなる場合もあります。

接続箱では、入線側と出線側、導体相、シース相、接地側、保護側を明確に識別します。端子表示が経年で消えている場合や、改修によって相名称が変わっている場合は、停電と安全措置を確実にしたうえで導通試験などによりケーブル端を追跡し、現物に基づいて結線表を作成します。

工事後は、接続箱を閉じる前に結線を複数人で確認します。写真だけでは立体的な交差関係が分かりにくいため、端子番号と接続先を文字で記録することが重要です。試験用の短絡線や仮設接地線が残っていないことも確認します。

クロスボンディングを採用していても、外被絶縁の劣化やシース電圧制限器の短絡故障によって途中に接地点が生じると、設計どおりの電圧分担になりません。接続箱内の結線だけでなく、各小区間の外被絶縁と接地状態も点検対象です。

改善後には、大区間の両端や中間接続部で各相のシース電流と必要なシース対地電圧を測定します。三相の値が完全に一致するとは限りませんが、一相だけ著しく大きい場合や、負荷電流に対して設計値や過去値を超える電流が流れる場合は、結線順序、区間条件、意図しない接地点を再確認します。

接地改善4 小区間の長さと相配置をそろえる

四つ目の改善は、クロスボンディングを構成する小区間の電気的条件をできるだけそろえることです。誘起電圧を打ち消すためには、単に三つの区間へ分割するだけでなく、それぞれの区間で生じる電圧の大きさと位相を近づける必要があります。

小区間の長さが大きく異なると、各区間の誘起電圧も不均衡になります。地形、建物、マンホール位置、接続作業用スペースなどの制約により、区間長を完全に同じにできない場合もあります。その場合は、距離の差だけを見るのではなく、各区間の相配置や周辺条件を含めて誘起電圧を評価します。

相配置が区間ごとに異なる場合にも注意が必要です。ある区間では正三角形に近い配置で、別の区間では平面配置になっていれば、同じ長さでも誘起条件が異なります。立上り部、曲線部、接続部付近で相間隔が変化する場合も、計算条件へ反映させる必要があります。

既設設備の調査では、図面上のルート長だけでなく、実際の布設状態を確認します。ケーブルの余長が接続箱付近で大きな輪になっている、相ごとの曲げ経路が異なる、支持位置のずれによって相間隔が変わっているといった状態は、小区間の電気的な不均衡につながります。

他回線との位置関係も確認します。隣接する高負荷回線から受ける磁気的な影響が小区間ごとに異なれば、三相の誘起電圧を十分に打ち消せないことがあります。後からケーブルが増設された設備では、竣工当初の計算条件から変化している可能性があります。

負荷電流の相間不平衡も打消し効果に影響します。一相の電流が他相と異なる状態が継続すると、三相対称を前提としたシース電圧の相殺が不十分になります。接地方式だけでなく、単相負荷の配分や運転方法も見直すことで、シース電流の偏りを改善できる場合があります。

小区間の条件を完全にそろえられない場合は、残留する誘起電圧と循環電流が、外被や付属品の耐電圧、接触電圧、熱設計、許容電流の条件を満たすか確認します。必要に応じて、接続位置の変更、区間分割の再検討、相配置の変更などを行います。現場の施工性だけで区間を決めず、電気的なバランスを含めて判断することが重要です。

接地改善5 ボンディング線と接地線の構成を適正化する

五つ目の改善は、ボンディング線と接地線の断面積、長さ、経路、接続方法を適正化することです。これらの線は、通常時のシース回路を構成するだけでなく、異常時には大きな故障電流や過渡電流を分担する可能性があります。

接地線の断面積は、通常時に流れる循環電流だけで決めてはいけません。短絡や地絡が発生したときの電流値、保護装置が遮断するまでの時間、接地線の許容温度上昇などを考慮します。循環電流を制限する目的で細い接地線へ変更すると、事故時に過熱や断線を起こすおそれがあります。

ボンディング線が必要以上に長いと、抵抗とインダクタンスが増えます。特に過渡的な電圧へ対応する回路では、線の長さ、曲げ、ループの大きさが保護性能へ影響する場合があります。接続箱から接地母線や保護要素までの配線は、設計された経路で短く施工し、余長を大きな輪にして残さないことが基本です。

各相のボンディング線は、可能な範囲で同じ長さと同等の経路にします。一相だけ配線が長い、一相だけ別の金属構造物に沿っている、一相だけ接続方法が異なると、回路インピーダンスに差が生じます。クロスボンディングで誘起電圧を均衡させても、接続線の条件が異なればシース電流の偏りにつながります。

接地端子の状態も確認します。ボルトの緩み、接触面の酸化、異種金属の接触、圧着不良、浸水などがあると接触抵抗が増加し、局所発熱が起こります。発熱した端子は抵抗がさらに増え、温度上昇が進む可能性があります。温度測定だけでなく、停電時の外観確認や接続状態の点検を組み合わせます。

腐食した端子を更新して接触抵抗を下げると、両端接地回路の循環電流が以前より増えることがあります。これは接続部の修理が不適切だったという意味ではなく、回路全体のインピーダンスが変わった結果です。端子の健全化後にはシース電流を再測定し、接地方式そのものが適切かを改めて評価します。

接地線を接続する接地網についても確認が必要です。線路両端が異なる接地網へ接続され、その間に電位差があると、電磁誘導とは別の電流がシース回路を流れる場合があります。接地線の接続先と接地網の構成を把握し、平常時と故障時の電位差を含めて不要な電流経路がないかを調べます。

接地改善6 意図しない接地点と並列経路を解消する

六つ目の改善は、図面に記載されていない接地点や並列導通経路を特定し、適切に解消することです。一点接地やクロスボンディングとして設計されていても、金属シースが別の経路で大地へつながっていれば、シース循環電流が流れる閉回路が形成されます。

意図しない接地点になりやすい箇所には、金属製の接続箱、接地されたケーブルトレイ、支持金具、金属管、架台、試験用接地線、仮設配線などがあります。ケーブル外被の損傷部が湿った構造物へ接触し、電気的な経路を形成することもあります。

接続箱内では、シース端子と筐体が絶縁されるべき構造になっているかを確認します。絶縁支持部に汚れや水分が付着すると、乾燥時には絶縁されていても、高湿度時や浸水時だけ漏れ電流が流れる場合があります。雨天後にシース電流が変化する場合は、湿気や浸水の影響も疑います。

外被損傷は、目視できる場所だけで発生するとは限りません。地中管路への引込み時に生じた傷、支持金具との長期的な擦れ、接続部のシール不良などが原因になることがあります。区間ごとの外被絶縁を確認し、異常がある場合は位置を絞り込んで補修します。

ただし、不要な経路を除去する際には、保護接地まで誤って外さないよう注意します。接続箱の筐体接地、作業者が触れる金属部の接地、故障電流を流すための接地と、シース電位を制御する機能上の接地は、目的が異なります。どの接続が何のために設けられているかを図面上で整理したうえで作業します。

外被絶縁試験のためにシース電圧制限器や監視回路を切り離した場合は、試験後の復旧確認が欠かせません。保護要素を復旧し忘れると異常時のシース電圧を制限できず、逆に試験用の短絡線を残すと意図しない接地点になります。切離し箇所と復旧状態をチェックシートで管理します。

意図しない接地点の改善後は、絶縁抵抗だけでなく、運転状態でのシース電流も再確認します。絶縁状態が改善しても、別の経路が残っている可能性があるためです。負荷電流とシース電流の関係、相間差、天候による変化を確認し、改善効果を判断します。

接地改善7 シース電圧保護と監視を一体化する

七つ目の改善は、シース循環電流対策とシース電圧保護を分離せず、一体的に設計・管理することです。一点接地やクロスボンディングによって循環電流を減らすと、シースの一部は常時接地から切り離されます。その結果、通常運転時や事故時にシース対地電圧が生じます。

通常時の誘起電圧は、線路長、負荷電流、相配置によって変わります。短絡や地絡、雷、開閉操作などが発生した場合には、通常時より高い過渡電圧が生じる可能性があります。この電圧がケーブル外被、接続箱、絶縁支持部の耐力を超えないように保護する必要があります。

シース電圧制限器を使用する場合は、通常時の最大誘起電圧では不要に導通せず、異常時には適切に電圧を制限し、想定エネルギーに耐える定格を選びます。定格が低すぎると通常時から電流が流れて接地点のように働き、循環電流が増える可能性があります。定格が高すぎると外被や接続部を十分に保護できないおそれがあります。

シース電圧制限器の接地線や接続線は、短く適切な経路で施工します。保護要素自体が正常でも、接続線が長く大きなループを形成していると、過渡電圧に対する実際の保護効果が変化する場合があります。接続箱内の端子、絶縁距離、配線の交差、接地先を含めて確認します。

シース電圧制限器の短絡故障は、意図しない接地点を形成する原因になります。シース循環電流が以前より増えた場合や、一相だけ大きくなった場合は、誤結線や外被絶縁だけでなく、保護要素の状態も点検します。反対に、開放状態や接続不良があると、異常時の電圧を制限できません。

監視項目には、シース電流、必要に応じたシース対地電圧、接地線温度、接続箱温度、外被絶縁、端子状態を含めます。すべてを常時監視できない設備でも、定期点検時に同じ位置と同じ条件で測定し、経時変化を確認することが重要です。

点検周期は、電圧階級、設備の重要度、負荷率、布設環境、過去の異常履歴に応じて設定します。負荷設備の増設、回線切替、ケーブル接続工事、地絡事故、接続箱への浸水などがあった場合は、通常の周期を待たずに臨時点検を行います。

測定結果には導体電流を併記します。シース電流が増加していても、導体電流も同じ傾向で増えている場合と、導体電流が変わらないのにシース電流だけ増えた場合では、想定される原因が異なります。後者では、誤結線、絶縁低下、シース電圧制限器の短絡、端子状態の変化などを優先して調べます。

改善工事後に実施する効果確認

接地改善工事を行った後は、循環電流が減ったことだけで完了としないことが重要です。改善後の接地方式が設計どおりに構成され、シース電圧、温度、絶縁、安全性が許容範囲にあることを確認します。

最初に、各相の導体電流とシース電流を測定します。工事前後の結果を比較する際は、回線構成、負荷電流、周囲温度、運転継続時間をできるだけそろえます。条件が異なる場合は、導体電流に対するシース電流の比率も参考にしますが、比率だけで合否を決めず、絶対値、設計値、端子や接続線の許容電流を確認します。

一点接地へ変更した場合は、非接地点側のシース対地電圧を確認します。通常負荷だけでなく、想定する最大負荷での値を計算し、実測可能な範囲で整合性を確認します。測定位置によって電位が異なる可能性があるため、接続箱、終端部、接地側などの位置を明確に記録します。

クロスボンディングを改善した場合は、各大区間のシース電流と相間バランスを確認します。一相だけ大きな値が残る場合は、接続順序、区間長、相配置、接触抵抗、意図しない接地点を再点検します。

温度確認では、ケーブル表面、接続部、接地線、ボンディング線、接続箱端子を測定します。工事直後は温度が安定していない場合があるため、負荷が一定時間継続した状態で確認します。過去の温度と比較する際は、周囲温度との差も確認します。

停電状態では、接地線とボンディング線の導通、外被絶縁、端子の締付状態、シース電圧制限器の接続を確認します。試験のために切り離した回路がすべて復旧されていることを、記録と現物の両方で確認します。

通常運転の測定だけでは、短絡や地絡時の性能を直接確認できません。そのため、故障電流計算、接地電位上昇、接地線と接地連続導体の短時間耐量、外被と接続部の耐電圧、保護装置の動作条件を設計資料で確認します。

端子や接続線は、温度変化や振動によって施工後に状態が変わることがあります。工事直後の確認に加え、一定期間運転した後に再点検し、その後の定期点検へ移行すると変化を把握しやすくなります。増し締めを行う場合は、設備仕様と規定トルクに従い、過度な締付けによる端子損傷を避けます。

接地方式を変更するときの安全上の注意

ケーブルの金属シースは主導体ではありませんが、常に安全な無電圧部とは限りません。運転中のケーブルでは誘起電圧が生じ、対象回線を停止していても、近接する運転回線から電磁誘導や静電誘導を受ける可能性があります。

接地線やボンディング線の切離し作業では、作業前にシース電圧と電流を確認し、設備ごとの手順に基づく放電、短絡、作業用接地を行います。運転中に接地線を外し、変化を観察するような試験は、アーク、感電、機器損傷につながるおそれがあります。

接地方式を変更すると、故障電流の流れ方が変わります。保護装置が想定した電流を検出できるか、接地線や接地連続導体が事故電流に耐えられるか、接触電圧が許容範囲に収まるかを確認します。循環電流低減だけを目的に判断してはいけません。

一点接地の非接地点やクロスボンディング用接続箱には、誘起電圧が存在する可能性を表示します。点検者が通常の接地端子と誤認しないよう、接地点、非接地点、シース電圧制限器、試験端子を識別します。

高温になっている接地線や端子を運転中に動かすことも避けます。接触不良がある端子では、わずかな振動で接続が開放され、アークが発生する可能性があります。異常温度を確認した場合は、周囲への立入りを管理し、安全に停止できる手順を検討します。

工事は、設備の接地設計と保護方式を理解した技術者の管理下で、法令や事業場の保安規程に応じた資格、選任、作業体制を確保して行います。電気主任技術者、設計担当者、施工担当者、保守担当者の間で、変更内容、試験方法、復旧条件を共有します。

作業後は、工具、仮設接地線、試験用短絡線の残置がないことを確認します。接続箱のカバー、シール、防水部材、絶縁カバーも確実に復旧します。接続箱への浸水は、端子腐食だけでなく、意図しない接地やシース電圧制限器の劣化につながるため、防水状態の確認が重要です。

配電設備の記録管理まで含めて改善する

シース循環電流への対策を長期間維持するには、工事そのものだけでなく、図面と点検記録の管理方法を改善する必要があります。接地方式が複雑な線路では、数年後の保守担当者が設計意図を理解できなければ、誤った接地追加や結線変更が発生する可能性があります。

記録には、ケーブルルート、接続箱の位置、接地方式、各区間の長さ、相配置、端子番号、シース電圧制限器、接地連続導体の配置を含めます。クロスボンディングでは、入線側と出線側のシースがどの端子を通じて接続されているかを明確にします。

測定記録には、導体電流、シース電流、シース対地電圧、温度、周囲温度、回線構成、測定日時を残します。数値だけでなく、測定した端子や接地線の位置を特定できるようにします。同じ名称の接続箱が複数ある設備では、設備番号や位置情報を使用すると誤認を防ぎやすくなります。

改修工事を行った場合は、変更前後の結線を記録します。工事後の状態だけを残すと、異常発生時に何が変わったのかを追跡できません。変更理由、計算条件、使用した部材の仕様、試験結果もまとめて保管します。

写真記録は、全景、設備番号、端子表示、接続状態が分かるように撮影します。接続部だけを拡大した写真では場所を特定できないため、全景から詳細へ段階的に撮影する方法が有効です。撮影位置と対象設備を対応付けることで、次回点検時の比較もしやすくなります。

点検履歴を蓄積すると、負荷増加に伴ってシース電流が増えているのか、負荷とは無関係に接続状態が変化しているのかを判断しやすくなります。単発の測定値だけで正常・異常を決めず、同じ条件で取得した過去データとの傾向比較を行います。

現場記録をデジタル化する場合は、写真、位置、設備番号、測定値を一つの記録として管理できる仕組みが有効です。長いケーブルルートに複数の接続箱がある設備では、どの地点のシース電流や温度なのかを地図や座標と対応させることで、再点検や補修箇所の特定を効率化できます。

まとめ

配電設備のケーブルシース循環電流は、単心交流ケーブルの導体電流によって生じた磁界が金属シースへ電圧を誘起し、両端接地などによって形成された閉回路へ電流が流れる現象です。循環電流が大きくなると、シース損失、ケーブル温度、接続部の発熱が増加し、ケーブルの許容電流や設備の信頼性に影響する可能性があります。

接地改善では、まず両端接地の適用条件を見直します。短い区間では一点接地を検討し、長距離線路ではクロスボンディングを適正化します。さらに、小区間の長さと相配置をそろえ、ボンディング線と接地線の構成を整え、意図しない接地点や並列経路を解消します。

循環電流を減らすだけでなく、シース対地電圧と異常時の安全性を管理することも重要です。一点接地やクロスボンディングでは、接地から切り離された箇所に誘起電圧が生じます。ケーブル外被、接続箱、シース電圧制限器、接地線、必要に応じた接地連続導体の能力を確認し、通常時と事故時の双方で安全な構成にします。

改善前後には、導体電流、シース電流、シース電圧、温度、絶縁状態を可能な限り同じ条件で確認します。シース電流比だけに一律の判定値を当てはめず、設計値、設備仕様、過去の同条件データと比較します。工事直後だけでなく、一定期間運転した後にも再測定し、端子や接続線の状態が安定していることを確かめます。

接地線を外す行為は、単なる配線変更ではなく、設備の保護方式を変更する行為です。現場判断で実施せず、設計計算、絶縁協調、保護協調、安全手順を確認したうえで、必要な資格と管理体制の下で計画的に進める必要があります。

また、改善効果を維持するには、接続箱の位置、結線、測定値、写真、改修履歴を継続して管理することが欠かせません。配電設備の長いケーブルルートを効率よく点検し、位置情報付きの写真と測定記録を対応付ける方法を検討する際は、現場記録を支援するLRTK Phoneの活用も選択肢になります。

現場を3Dで残して、あとから測る。
実際の画面と動画で使い方を確認できます。

LRTK Phoneの使い方・実例を見る
資料請求導入相談
現場をスマホで3DスキャンLRTK Phone実例を見る