杭打ちにおける拡底部の役割と形成不良のリスク
本記事では、主にアースドリル工法などで軸部を掘削した後、杭先端付近を拡底バケット等で拡大掘削し、鉄筋かごを建て込んでコンクリートを打ち込む場所打ちコンクリート拡底杭を対象とします。拡底部の施工方法、適用範囲、検査方法、管理値は工法ごとに異なるため、実際の施工では設計図書、工法固有の認定・評定資料、施工指針、施工計画書および監理者等の指示を優先しなければなりません。公共建築工事の標準仕様でも、拡底杭工法は試験杭の結果と工法ごとに定められた条件に基づいて施工し、施工記録も工法固有の条件に従う考え方が示されています。([国土交通省][1])
拡底部は、杭先端付近の断面を軸部より広げた部分です。設計上は、杭先端から支持地盤へ荷重を伝える条件の一つとして、拡底径、拡底高さ、傾斜部の形状、先端深度、支持層への根入れなどが設定されます。したがって、所定の位置に計画した形状が形成されていない場合や、孔底に多量のスライムが残っている場合は、設計時に想定した支持条件と異なるおそれがあります。
形成不良は、拡底径が不足する状態だけではありません。拡底開始位置のずれ、拡底部の偏り、掘り残し、過掘削、拡底部上部の崩落、孔底への土砂堆積なども品質上の確認対象です。また、掘削直後に形状が確保されていても、鉄筋かごの建込みや待機時間中に孔壁が崩れれば、コンクリート打込み時の状態は変わります。
地中に形成される拡底部は、地上から直接目視できません。そのため、支持層の確認、掘削深度、拡底機構の作動記録、孔壁測定、安定液または泥水の状態、スライム処理、排出土、コンクリート投入量など、複数の情報を組み合わせて品質を判断します。国土交通省の公共建築工事標準仕様書でも、掘削形状、支持層、孔壁、安定液、スライム処理、鉄筋かご、コンクリート打込みおよび投入量などを確認・記録する考え方が示されています。([MLIT][1])
拡底部の形成不良は、一つの原因だけで生じるとは限りません。支持層深度の読み違い、拡底バケットの作動不良、刃先の摩耗、掘削機の鉛直性不足、孔壁安定の悪化、スライム処理不足、工程間の長い待機などが重なる場合があります。完成時の一項目だけで合否を判断するのではなく、施工前の準備からコンクリート打込みまでを一連の工程として管理することが重要です。
管理項目1 設計条件と支持地盤を照合する
一つ目の管理項目は、杭ごとの設計条件と、施工中に確認した支持地盤の情報を照合することです。予定深度に到達したという事実だけで拡底作業へ移るのではなく、その位置の土質が設計で想定した支持層と整合しているかを、工法ごとに定めた方法で確認します。
施工前には、杭番号ごとに軸部径、拡底径、拡底高さ、杭先端深度、拡底部上端および下端、支持層への根入れ、杭頭高さなどを整理します。同一現場でも、杭位置や負担荷重により仕様が異なる場合があります。隣接杭の条件を取り違えないよう、施工指示書や管理画面では杭番号と設計条件を一対一で対応させます。
深度管理では、基準点を統一します。設計基準高さ、施工時の作業床高さ、ケーシング天端、掘削機の深度表示などが混在すると、拡底位置を誤る原因になります。掘削具の先端位置と拡底刃の位置にも差があるため、使用する掘削具の寸法を踏まえ、機械表示と実際の拡底形成位置の関係を施工前に確認します。
支持層の確認には、地盤調査資料だけでなく、試験杭や先行杭の結果、掘削深度、掘削速度や機械負荷の変化、排出土の土質などを用います。公共建築工事の標準仕様では、試験杭で掘削中の孔壁、泥水または安定液、掘削深さ、掘削形状、スライム、施工時間等を確認し、掘削速度の変化や掘削土と地盤調査資料・設計図書との照合により管理基準を定める考え方が示されています。([MLIT][1])
ただし、機械負荷が上昇したことだけで支持層到達と断定するのは安全ではありません。刃先の摩耗、掘削土のかみ込み、回転数や押込み条件の変更でも負荷は変化します。排出土についても、孔内液との混合や採取時期によって見え方が変わります。複数の根拠が整合していることを確認し、判断根拠を記録します。
地盤調査地点と杭位置が離れている場合や、支持層上面が傾斜している場合は、杭ごとに到達深度が変わる可能性があります。先行杭の深度は有力な参考情報ですが、その深度を後続杭へ機械的に当てはめるのではなく、各杭の施工情報と照合して使用します。
予定深度で支持層を確認できない場合は、現場担当者だけで拡底位置や杭長を変更しません。施工計画で定めた連絡経路に従い、施工管理者、工事監理者、設計関係者、専門工事業者などへ報告し、追加掘削、設計照査、施工条件変更の要否を協議します。
支持層が予定より浅く確認された場合も、直ちに拡底位置を浅くできるとは限りません。杭頭高さ、杭長、根入れ、拡底部全体が入る地層、周辺杭との関係などを確認する必要があります。拡底部上部が崩れやすい地層にかかる可能性がある場合は、孔壁安定と工程時間も含めて施工方法を再確認します。
管理項目2 拡底掘削機構と施工手順を管理する
二つ目の管理項目は、拡底バケット等の掘削機構と施工手順を、工法固有の管理基準に従って管理することです。拡底部は、単に所定深度で掘削具を回転させれば形成されるものではありません。拡底機構が所定の状態で作動し、指定された回転、押込み、上下動、掘削時間などが確保されている必要があります。
施工前には、拡底部を形成する翼、刃先、リンク、ピン、ストッパー、接続部などを点検します。点検項目は機種と工法により異なりますが、開閉動作、異物のかみ込み、変形、摩耗、緩み、油圧系統または機械式作動部の異常を確認します。地上での無負荷動作だけでは地中での作動を完全に保証できないため、工法が定める作動確認方法と施工中の確認方法を併用します。
刃先の摩耗や欠損は、掘削効率や形状に影響します。左右で摩耗状態が異なる場合には、偏った掘削の一因になる可能性があります。交換基準、点検頻度、点検時期は、地盤の硬さ、施工本数、異常負荷の有無、工法の施工指針に基づいて設定します。
拡底翼の開き量や作動状態を表示値で管理する工法では、施工前の校正または照合が必要です。表示値の意味が、油圧、ストローク、開度、機械位置のいずれを示すのかを理解し、実際の拡底径との関係を確認します。表示があるからといって、すべての工法で地中の形状を直接測定しているわけではありません。
掘削具や延長部材を交換した場合は、深度補正を再確認します。掘削機の表示深度が掘削具先端を示すのか、別の基準点を示すのかにより、拡底部の上端・下端との関係が変わります。補正値を口頭だけで伝えず、施工指示書、機械設定、チェックシートへ反映します。
施工手順には、拡底開始深度、翼を開く操作、回転開始、回転方向、回転数、押込み、上下移動範囲、作動時間、翼を閉じる操作、引上げ方法などを明記します。これらの条件は工法ごとに異なるため、一般的な経験値よりも、認定・評定資料、施工指針、試験杭で定めた管理値を優先します。場所打ちコンクリート拡底杭の評定工法では、適用範囲、安定液、スライム処理、先端検査方法などの管理条件が工法ごとに設定されており、一律の数値で管理できないことに注意が必要です。([日本建設業連合会][2])
施工中は、工法で取得する圧力、回転負荷、回転数、ストローク、深度、施工時間などの履歴を確認します。期待した変化が現れない場合は、翼の作動不足、空転、刃先の摩耗、表示系統の異常などを検討します。ただし、負荷の変化だけで拡底径を確定することはできないため、孔壁測定や掘削土、施工履歴等と組み合わせて評価します。
急激な負荷上昇が生じた場合は、硬い介在物、掘削具のかみ込み、偏心、孔壁との接触などの可能性があります。無理に操作を続けると機械損傷や孔壁悪化につながるおそれがあるため、安全に停止できる状態を確保し、異常時手順に従って原因を確認します。
拡底作業後は、翼が所定の状態に戻ったことを確認してから引き上げます。開いたまま、または閉鎖が不十分なまま引き上げると、拡底部上部や軸部の孔壁を傷める可能性があります。異常な抵抗を感じた場合は、無理に引き抜かず、深度、回転状態、開閉状態、孔内水位を確認します。
点検は始業前だけでなく、施工中にも行います。一定本数の施工後、硬質地盤の掘削後、異常負荷後、刃先交換後、掘削具構成の変更後など、工法で定めた時期に確認し、点検記録を施工した杭番号と関連付けます。
管理項目3 孔壁の安定と孔内状態を管理する
三つ目の管理項目は、拡底形成後からコンクリート打込みまで、孔壁と孔内の状態を安定させることです。拡底部が一度形成されても、孔壁崩落や土砂の再沈降が起これば、打込み時の形状や孔底状態は変化します。
孔壁の保持方法は工法によって異なります。アースドリル工法では一般に安定液を用いますが、オールケーシング工法などでは管理方法が異なります。そのため、孔内液面や液性状に関する記述を、すべての拡底杭へ一律に適用してはいけません。採用工法の施工指針と施工計画に従い、必要な孔壁保持方法を実施します。([MLIT][1])
安定液または泥水を用いる場合は、液面を施工計画の管理範囲に保ち、地下水や周辺地盤の条件に対して孔壁を保持できる状態を維持します。液面は掘削中だけでなく、掘削具の引上げ、孔壁測定、鉄筋かご建込み、トレミー管建込み、スライム処理、コンクリート打込み前の待機中にも確認します。
掘削具を急速に引き上げると、孔内液面が変動することがあります。引上げ時には、工法で定めた速度を守り、液面、振動、抵抗、土砂の流出状況を監視します。急な液面低下や土砂量の増加が見られた場合は、単なる供給不足だけでなく、逸液、孔壁崩落、地盤中への流出などの可能性を確認します。
安定液を使用する場合は、密度、粘性、砂分、pHその他の項目のうち、工法と施工計画で指定されたものを管理します。必要な管理値は工法によって異なるため、一般記事の数値を流用せず、認定・評定資料や施工指針の基準を使用します。日建連の調査でも、安定液や一次・二次スライム処理の管理基準値は評定工法ごとに設定されています。([日本建設業連合会][2])
孔内液の上部が清浄に見えても、孔底付近に細粒分や掘削土が存在する場合があります。拡底掘削では軸部より広い範囲を掘削するため、排出されなかった土砂や浮遊粒子が沈降する可能性があります。上部の外観だけで孔底の良否を判断せず、工法で定めたスライム確認と処理を行います。
拡底形成後の待機時間は、孔壁と孔底の双方に影響します。形成後に長時間放置すると、周辺地盤の緩みや細粒分の沈降が進む可能性があります。拡底作業を始める前に、孔壁測定、鉄筋かご、トレミー管、コンクリート供給、人員、検査体制の準備を確認し、不要な待機を減らします。
雨天時は、杭孔周辺への地表水と土砂の流入を防ぎます。作業床の排水が悪いと、孔内へ濁水や泥土が入り、安定液管理や孔底処理に影響する可能性があります。掘削土や資機材で排水経路が塞がれていないかも確認します。
鉄筋かごの建込みでは、孔壁へ過度に接触させないよう、中心位置と鉛直性を管理します。引っ掛かりや異常抵抗が生じた場合に無理に押し込むと、孔壁を傷めて土砂を落下させるおそれがあります。予定深度へ入らない場合は、かご寸法、継手、スペーサー、孔壁形状、孔底堆積を確認します。
管理項目4 掘削データと排出土を照合する
四つ目の管理項目は、施工データ、掘削土、孔壁測定などの情報を照合し、単一の値へ依存しないことです。地中の拡底形状は、作動圧力や掘削時間だけでは確定できません。記録された操作が正しくても、機構不良、掘り残し、孔壁崩落が生じている可能性があるためです。
記録項目には、杭番号、拡底開始・終了深度、回転数、回転時間、押込み、上下移動、作動圧力、回転負荷、翼の開閉状態などがあります。実際に取得できる項目と意味は工法・機械により異なります。取得できない項目を推定で埋めるのではなく、工法で定めた代替確認方法を記録します。
自動記録を使用する場合も、深度計、圧力計、ストローク表示などの基準確認が必要です。施工開始前、掘削具交換後、作業床高さ変更後、機械構成変更後には、表示の基準と補正値を確認します。データファイルは施工日時だけでなく、杭番号と確実にひも付けます。
施工データは、最終値や平均値だけでなく、時間履歴を確認します。途中の停止、圧力低下、過大負荷、回転数変化、深度のずれなどは、平均値では見えなくなることがあります。異常が出た時刻と、そのときの掘削具位置、操作、排出土の状態を対応させます。
排出土は、支持層確認や掘削状況を推定するための補助情報です。色、粒径、硬さ、砂分、粘性などを地盤調査資料や試験杭と比較します。ただし、孔内液との混合、土のほぐれ、含水量、採取時刻により状態が変わるため、排出土だけで拡底形状や掘削体積を確定してはいけません。
拡底部の設計形状から追加掘削体積の目安を算出し、排出土量と比較する方法は、工法や現場条件によっては補助管理として利用できます。ただし、地上で測った排出土量は、ほぐれ、液体混入、軸部からの残土、孔壁崩落の影響を受けます。設計体積との一致を合否基準にするのではなく、同じ測定方法での杭間比較や、異常傾向の把握に使用します。
排出土が先行杭より著しく少ない場合は、翼の作動不足、掘削時間不足、刃先摩耗、排出不良、孔内残留などを検討します。反対に著しく多い場合は、過掘削だけでなく、軸部や拡底部上側からの崩落土混入も疑います。量の多さを、十分な拡底ができた証拠とみなすことはできません。
排出土の土質が予定した支持層と異なる場合は、支持層深度のずれ、別層の混入、崩落土の混入などを確認します。採取位置、採取時刻、工程を統一し、必要に応じて写真や試料を残します。写真には杭番号と採取工程が分かる情報を含めます。
孔壁測定を行う工法では、測定結果を機械データと照合します。測定装置の適用範囲、測定精度、測定方向、孔内の濁り、測定器の傾きなどが結果へ影響するため、測定条件も記録します。公共建築工事標準仕様書では、超音波測定器による孔壁確認は特記によるものとされており、すべての現場で同一方法を義務付けるものではありません。([MLIT][1])
先行杭のデータは後続杭の基準資料として有効ですが、差があるだけで不良と断定してはいけません。地盤変化、刃先交換、機械設定、作業床高さ、施工手順の変更など、数値が変わった理由を確認します。説明できない差がある場合に、追加確認の対象として扱います。
管理項目5 孔底処理と出来形確認を徹底する
五つ目の管理項目は、拡底掘削後のスライム処理、孔壁・拡底形状の確認、鉄筋かごおよびトレミー管の建込み、コンクリート打込みまでを連続して管理することです。拡底形状が適切でも、孔底に過大なスライムや崩落土が残れば、杭先端部の品質に影響するおそれがあります。
スライム処理の方法、実施時期、完了判定は工法ごとに異なります。一次スライム処理と二次スライム処理を行う工法もありますが、呼称や工程は一律ではありません。処理時間だけで完了と判断せず、孔底深度、採取物、排出される土砂や液体、工法所定の検査結果などにより完了を確認します。
拡底部は軸部より広いため、処理器具の作用範囲と拡底形状の関係を確認します。中央部だけを処理して周辺部に土砂が残ることがないよう、工法で定められた器具と手順を用います。掘削具を再投入する場合は、形成した孔壁を傷めないよう慎重に操作します。
孔底処理の前後では、孔底深度と排出物の状態を確認します。深度が変化した場合は、堆積物を除去できた可能性がありますが、新たな崩落が生じた可能性もあります。深度だけで判断せず、孔壁、液面、排出土、施工時間と照合します。
出来形確認の対象は、拡底径、拡底高さ、拡底位置、軸部径、孔底深度、孔壁状態などです。ただし、どの項目をどの装置で確認するかは、採用工法の認定・評定資料と施工計画で定めます。評定工法では、先端検査方法や安定液、スライム処理の管理値が工法ごとに異なるため、他工法の判定基準を流用してはいけません。([日本建設業連合会][2])
測定値に予定寸法との差が見られた場合は、直ちに実形成不良と決めつけず、測定条件と装置の適用範囲を確認します。同じ位置の再測定、異なる方向からの測定、機械履歴、排出土、孔底深度などを照合し、測定誤差と実際の異常を切り分けます。
鉄筋かごやトレミー管の建込み後は、孔壁から土砂が落下したり、浮遊粒子が再沈降したりする可能性があります。コンクリート打込み前に行う最終確認や二次スライム処理の要否は、工法と施工計画に従います。建込み後の再確認が困難な工法では、代替管理方法を事前に明確にします。
コンクリートは、孔底処理の代わりにはなりません。トレミー打込みで孔内液や細粒分を上方へ置換することを期待して、過大なスライムを残したまま打ち込んではいけません。孔底状態を所定の基準へ整えたうえで、トレミー管の先端位置、コンクリート中への埋込み、連続打込み、打上がり高さを管理します。公共建築工事標準仕様書でも、スライム処理後に鉄筋かごを設置して直ちにコンクリートを打ち込み、トレミー管先端をコンクリート中に保持しながら連続して打ち上げる考え方が示されています。([MLIT][1])
コンクリートの理論量と実投入量の比較も補助的な確認になります。実投入量は孔壁の凹凸、余盛り、配管内残量、計測方法などの影響を受けます。差が大きい場合は、孔壁崩落、過掘削、打上がり高さ、数量記録の誤りなどを確認しますが、投入量だけで拡底部の出来形を判定しません。
拡底部の品質は、掘削完了時だけで確定するものではありません。形成した形状を維持し、スライムを処理し、鉄筋かごを適切に配置し、コンクリートを連続して充填するまでを一連の品質管理として扱います。
拡底部の形成不良を疑うべき兆候
拡底部の異常は、コンクリート打込み前に把握できれば、追加確認や是正を検討できます。異常の兆候は工法によって異なりますが、通常杭や試験杭の傾向から外れた変化を見逃さないことが重要です。
拡底機構の作動操作を行ったのに、工法で想定される圧力、ストローク、負荷、回転数の変化が現れない場合は、開閉不足、空転、かみ込み、表示系統の異常などを疑います。反対に、負荷が急上昇した場合は、硬い介在物、偏心、孔壁との接触、機構部の異常などを確認します。
施工時間が先行杭より極端に短い場合は、必要な操作が完了していない可能性があります。極端に長い場合は、硬質地盤、刃先摩耗、排出不良、機構不良などが考えられます。ただし、時間だけで合否を判断せず、深度、負荷、回転、排出土、孔壁測定と照合します。
排出土量や土質が先行杭と大きく異なる場合も確認が必要です。量が少ない場合は掘削不足や孔内残留、量が多い場合は過掘削や孔壁崩落の可能性があります。想定支持層と異なる土質が増えた場合は、別層や崩落土の混入を確認します。
安定液を使用する工法では、液面の急低下、繰り返す液面変動、管理値から外れた液性状が兆候になります。補給して液面が戻っても、逸液や孔壁異常の原因が残っていないかを確認します。
掘削具の引上げ時に異常な抵抗がある場合は、翼の閉鎖不足、土砂のかみ込み、孔壁への接触などを疑います。無理に引き上げると孔壁を傷める可能性があるため、工法の異常時手順に従います。
スライム処理を続けても多量の土砂が排出される場合は、孔底の残土だけでなく、新たな孔壁崩落が続いている可能性があります。処理時間を延ばすだけでなく、孔壁、液面、地盤条件、待機時間を確認します。
鉄筋かごの建込み中に引っ掛かり、傾き、急な沈下、予定深度との差が生じた場合は、孔壁形状、スペーサー、継手、孔底堆積などを確認します。無理な押込みで孔壁を傷めないことが重要です。
異常を確認した場合の対応手順
異常を確認した場合は、原因が分からないまま操作を継続しません。まず機械と杭孔を安全な状態に保ち、杭番号、時刻、深度、操作内容、表示値、孔内液面、排出土、作業員の所見を記録します。
次に、機械側と地盤・孔内側の要因を切り分けます。機械側では、拡底機構、刃先、接続部、油圧または駆動系、深度計、表示装置を確認します。孔内側では、支持層、排出土、孔壁、液面、スライム、先行杭との差を確認します。
掘削具を地上へ引き上げて点検する場合は、引上げ中の孔壁と液面への影響を考慮します。翼が閉じていない可能性がある場合や異常抵抗がある場合は、通常手順で無理に引き抜かず、専門工事業者の異常時手順に従います。
拡底不足が疑われても、直ちに追加回転や追加掘削を行うとは限りません。機構が正常に作動していなければ同じ操作を繰り返しても改善せず、孔壁が不安定な状態では過掘削や崩落を拡大するおそれがあります。
追加施工、再掘削、施工深度変更、補強、施工中止などの判断は、施工計画で定めた関係者と協議します。工法固有の認定・評定条件や設計条件に関わる変更を、現場担当者だけで決定してはいけません。
協議に時間を要する場合は、孔内状態を維持する管理を続けます。安定液を使用する場合は液面と性状を監視し、周辺排水、作業床、地表水流入を確認します。待機が長くなった場合は、孔壁測定やスライム処理の再実施要否を判断します。
追加施工や再処理を行った場合は、当初施工と分けて記録します。追加した深度、時間、回転、圧力、排出土、測定、スライム処理、関係者の承認、最終判定を残します。最終値だけを記録すると、品質判断の経緯を説明できません。
同じ異常が複数杭で続く場合は、個別杭の問題に限定せず、刃先摩耗、深度補正、機械設定、安定液、施工手順、地盤想定などの共通要因を見直します。対策は後続杭の施工計画とチェック項目へ反映します。
施工記録を品質管理に活用する方法
拡底部は完成後に直接確認しにくいため、施工記録が品質を説明する重要な資料になります。国土交通省の公共建築工事標準仕様書では、すべての杭について、配筋、杭先端の土質、孔壁、安定液または泥水、掘削深さ、支持層深さ、掘削形状、スライム処理、鉄筋かご、コンクリート投入量、施工時間などを記録する考え方が示されています。([MLIT][1])
基本情報として、杭番号、施工位置、施工日、使用機械、掘削具、作業床高さ、担当者を記録します。続いて、軸部掘削、支持層確認、拡底掘削、孔壁測定、スライム処理、鉄筋かご建込み、トレミー管建込み、コンクリート打込みを工程順に関連付けます。
深度には基準を明記します。設計基準高さからの標高なのか、作業床からの深度なのか、ケーシング天端を基準にした値なのかを区別します。作業床高さや機械基準が変わった場合は、補正値と変更時刻を記録します。
支持層確認は、確認済みという結果だけでなく、根拠を残します。掘削速度、負荷、排出土、試験杭、地盤調査資料との照合内容を記載します。工法で監理者等の立会いや承認が必要な場合は、その記録も残します。
自動取得データは、杭番号と確実に対応させます。再施工や中断がある場合は、データ区間を分け、どの操作がどの記録に対応するかを明確にします。時刻だけに依存した管理は、施工順の変更や並行作業で取り違えやすくなります。
排出土や孔壁測定の写真には、杭番号、工程、時刻、採取位置または測定方向を記録します。写真は補助資料であり、写真だけで拡底径や支持層を判定しません。測定装置を使用した場合は、装置名、校正・点検状況、測定条件も残します。
安定液や泥水の記録は、測定値だけでなく測定時刻と工程を含めます。拡底前、拡底後、鉄筋かご建込み後、コンクリート打込み前では同じ測定値でも意味が異なります。採取位置と測定方法をそろえることで、時系列比較がしやすくなります。
スライム処理は、開始・終了時刻だけでなく、完了判定の方法と結果を記録します。孔底深度、採取物、排出物、工法所定の検査値、再処理の有無を残します。鉄筋かご建込み後に二次処理を行った場合は、一次処理と区別します。
コンクリート打込みでは、開始・終了時刻、投入量、トレミー管の管理、打上がり高さ、中断の有無、フレッシュコンクリート試験などを記録します。理論量との差が大きい場合は、原因確認の結果も残します。
記録は異常杭だけ詳しくするのではなく、通常杭も同じ様式で作成します。通常時のデータが蓄積されることで、後続杭の異常傾向、刃先摩耗、地盤変化、待機時間の増加を発見しやすくなります。
入力後は、別の担当者が杭番号、単位、深度基準、設計条件との整合を確認する仕組みが有効です。施工当日であれば確認できる内容も、時間が経過すると再現が難しくなります。
電子記録を利用する場合は、杭番号の選択、必須項目、機械データ、写真、承認履歴を一つの単位で管理できるようにします。特定の製品名を前提にせず、現場の通信環境、端末の防塵防水性、バックアップ、アクセス権、改ざん防止、データ保管期間を考慮して選定します。
まとめ
杭打ちで拡底部の形成不良を防ぐには、拡底径だけでなく、設計条件、支持地盤、拡底機構、孔壁、孔内液、施工データ、スライム処理、コンクリート打込みを一連の工程として管理する必要があります。
一つ目は、設計条件と支持地盤の照合です。予定深度だけに依存せず、試験杭、掘削速度、機械負荷、排出土、地盤調査資料を工法所定の方法で照合し、支持層確認の根拠を残します。
二つ目は、拡底掘削機構と施工手順の管理です。翼や刃先の点検、深度補正、開閉操作、回転、上下動、施工時間を、工法固有の施工指針と試験杭で定めた管理値に従って確認します。
三つ目は、孔壁と孔内状態の管理です。安定液を使う工法では液面と性状を管理し、掘削具の引上げ、孔壁測定、鉄筋かご建込み、待機中にも状態を確認します。孔壁保持方法が異なる工法へ、安定液の管理を一律に適用しないことも重要です。
四つ目は、施工データと排出土の照合です。圧力、負荷、時間、深度、排出土量などは重要な補助情報ですが、単独で拡底形状を保証するものではありません。孔壁測定、支持層確認、スライム処理と組み合わせて評価します。
五つ目は、孔底処理と出来形確認です。工法所定の方法でスライムを処理し、拡底形状と孔底状態を確認したうえで、鉄筋かごとトレミー管を建て込み、コンクリートを連続して打ち込みます。コンクリート打込みをスライム処理の代わりにしてはいけません。
異常を確認した場合は、原因不明のまま追加操作を行わず、機械側と地盤・孔内側を切り分け、関係者と協議します。工法固有の条件や設計条件に関わる変更は、承認手続きを経て記録します。
拡底杭の管理値や検査方法は工法ごとに異なります。一般的な記事の内容をそのまま現場基準にせず、設計図書、認定・評定資料、施工指針、施工計画書を確認し、杭ごとの施工記録を後続杭の品質管理へ活用することが重要です。([国土交通省][1])