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杭打ちでベントナイト管理を誤らない5つの数値

杭打ちでベントナイト管理が重要になる理由

杭打ちと呼ばれる施工にはさまざまな工法がありますが、場所打ち杭のように地盤を掘削して孔を形成する工法では、孔壁を安定させるためにベントナイトを含む安定液を使用することがあります。本記事では、このような安定液を用いる杭施工を中心に、実務担当者が押さえておきたい管理項目を解説します。

ベントナイトを含む安定液の役割は、単に掘削孔を液体で満たすことではありません。地盤や地下水の条件に応じて孔内に必要な液圧を与え、孔壁の崩壊や土砂の流入を抑えながら掘削を進めるために使われます。安定液の状態が施工計画で想定した範囲から外れると、掘削中の孔壁安定だけでなく、排土、スライム処理、鉄筋かご建込み、コンクリート打設まで影響する可能性があります。

そのため、ベントナイト管理では「規定量を投入したから問題ない」と考えるのではなく、作液した後の安定液そのものを測定することが重要です。掘削を開始すると、安定液には地盤由来の砂や細粒分が混入します。地下水や補給水によって希釈されることもあれば、循環を繰り返すことで当初とは異なる状態になることもあります。

朝に作った安定液の状態が良好でも、その日の掘削終了時まで同じ性状が維持されるとは限りません。深度が増し、通過する地層が変化すれば、安定液へ混入する土砂の種類や量も変わります。砂質地盤、粘性土地盤、砂礫地盤では安定液へ与える影響が異なるため、時間と深度の両方を意識して数値を追う必要があります。

ベントナイト管理で特に確認しておきたいのが、比重、ファンネル粘度、砂分率、pH、安定液位の5つです。これらは互いに異なる状態を示すため、一つだけを測ればよいものではありません。複数の測定値を組み合わせることで、孔内で何が起きているかを判断しやすくなります。

ベントナイト管理では現場ごとの基準値を優先する

ベントナイト管理について調べると、「比重はいくつならよいか」「粘度は何秒なら安全か」といった具体的な数値を知りたくなるかもしれません。しかし、実務では一つの数値をすべての杭打ち現場へ適用する考え方は避ける必要があります。

適切な管理範囲は、採用する杭工法、地盤構成、地下水条件、掘削深度、安定液の種類、配合、添加材、循環設備などによって異なります。発注者の仕様や施工計画によっても測定項目や管理範囲が設定されます。

実務資料や施工事例を見ると、ベントナイト系安定液について、比重を1.0台前半、ファンネル粘度を20秒台から30秒程度、砂分率を数%未満、pHを中性からアルカリ側の一定範囲で管理する例があります。しかし、これらはあくまで個別の仕様や施工条件で設定された例であり、全国共通の一律な合否基準ではありません。

たとえば砂質地盤で逸液や孔壁崩壊への注意が必要な現場と、比較的安定した粘性土地盤を掘削する現場とでは、安定液に求める性状が同じとは限りません。さらに、ベントナイトだけを主体とする安定液と、別の添加材を組み合わせる安定液でも管理の考え方が異なる場合があります。

したがって、現場担当者が最初に確認すべき数字は、インターネット上で見つけた参考値ではなく、その現場の施工計画書や品質管理計画に記載された基準値です。試験杭を施工している場合は、試験杭で確認した管理値や施工条件が本杭へどのように反映されているかも確認します。

この記事で紹介する5つの数値は、「この値なら必ず合格」という5種類の基準ではありません。ベントナイトを含む安定液について、現場でどの性質を数値化して管理するべきかという5つの視点です。実際の合否判定では、必ず設計図書、施工計画書、工法ごとの管理基準などを優先してください。

数値1|比重で安定液への土砂混入を確認する

1つ目の数値は比重です。比重はベントナイトを含む安定液の管理で基本となる測定項目の一つで、作液時の状態や施工中の変化を把握するために利用されます。

ここで注意したいのは、比重が高いことと、ベントナイトの品質が良いことは同じではないという点です。ベントナイトを一定量配合すれば安定液の比重は変化しますが、掘削が始まった後は地盤から混入した砂や泥によっても比重が上昇する可能性があります。

つまり、施工中に比重が上がったとき、「安定液が濃くなって孔壁が安定した」と単純に判断することはできません。掘削土砂が多く混入し、安定液が汚れているために数値が上昇した可能性もあるからです。

逆に、比重が施工計画で設定した範囲より低下した場合には、補給水や地下水などによって安定液が希釈されていないか、作液や調整方法に問題がなかったかを確認します。このときも比重だけで原因を決めず、ファンネル粘度や液位など別の項目と合わせて確認することが重要です。

たとえば、比重と粘度が同時に低下しているうえ、孔内の液位も変化しているのであれば、希釈や安定液の流出などを検討する材料になります。一方、比重と砂分率が一緒に上昇していれば、掘削土砂の混入が進んでいる可能性を確認できます。

比重管理で重要なのは絶対値だけではありません。作液直後がいくつだったか、掘削途中にどう変化したか、掘削完了後にどうなったか、スライム処理後やコンクリート打設前にどの値を示したかという推移を見ることが大切です。

毎回の測定値を杭番号、測定時刻、掘削深度と関連付ければ、「ある深度を超えたところから比重が上昇した」という変化を確認できます。地盤調査資料と照合すれば、その深度に存在する砂層や粘性土層などとの関係を検討することもできます。

また、測定器具の管理も欠かせません。安定液が付着した状態で測定したり、使用方法が測定者ごとに異なったりすると、数値の比較性が低下します。測定方法や器具の扱いを統一し、前後の数値を比較できる状態にしておくことが重要です。

数値2|ファンネル粘度で安定液の流動性を確認する

2つ目の数値はファンネル粘度です。現場では所定量の安定液が専用器具から流れ出るまでの時間を秒で測定し、安定液の流動性を確認する方法が使われます。

ベントナイト管理では、粘度が低すぎても高すぎても、その原因を確認する必要があります。粘度が低い場合は、安定液が水などによって希釈されている可能性や、想定した配合になっていない可能性を検討します。

ただし、「粘度が低いと必ず孔壁が崩れる」と断定することはできません。必要となる性状は地盤条件や使用する安定液によって異なります。あくまで施工計画で設定された管理範囲と比較して判断します。

反対に、粘度が高いほど安全というわけでもありません。ベントナイトを過剰に追加した場合だけでなく、粘性土などの細粒分が安定液へ大量に混入した場合にも、粘度が高くなることがあります。

掘削土砂によって粘度が高くなっているにもかかわらず、さらにベントナイトを追加すると、意図した改善につながらない可能性があります。そのため、粘度が管理範囲を外れた場合は、比重や砂分率、掘削している地層などを合わせて確認しなければなりません。

ファンネル粘度については20秒台や30秒程度を管理範囲として扱う施工例もありますが、その数字だけを別の現場へそのまま適用するべきではありません。使用している安定液の配合や施工計画で設定された数値を基準にします。

粘度測定では、器具の状態や測定手順によるばらつきも意識する必要があります。試料中に大きな異物が混入していたり、測定開始や終了の判断が人によって異なったりすれば、数秒程度の違いが発生する可能性があります。

したがって、測定方法をあらかじめ統一し、同じ条件で比較できるようにします。重要なのは一回の値を記録して終えることではなく、同じ測定方法を継続し、施工中の変化を追える状態にすることです。

数値3|砂分率で掘削土砂の残留状態を確認する

3つ目の数値は砂分率です。砂分率は、安定液中にどの程度の砂分が含まれているかを見るための数値で、掘削による土砂混入の状態を把握するうえで重要です。

掘削を進めれば、地盤から発生した土砂が安定液へ混入します。循環設備などによって土砂を処理していても、すべてが瞬時に除去されるわけではありません。掘削量、地盤、循環方法、処理設備の能力などによって、安定液に残る固形分は変化します。

見た目だけで安定液中の砂分量を判断するのは難しいため、必要な測定方法によって数値として把握します。砂分率が施工計画上の基準を超えて上昇している場合には、掘削土砂が十分に除去されていない可能性を確認します。

施工事例には砂分率を1%前後あるいは数%未満の範囲で管理する例がありますが、これも工法や工程による違いがあります。具体的な合否値については、その現場の品質管理基準に従うことが重要です。

砂分率は比重と組み合わせることでさらに判断しやすくなります。比重も砂分率も上昇している場合には、土砂混入の影響が考えられます。反対に、比重が変化しているのに砂分率はほとんど変わらない場合には、砂以外の細粒分や安定液そのものの配合変化など別の要因を確認します。

砂分率が特に重要になるのが、掘削完了後からコンクリート打設までの工程です。安定液中に土粒子が多く残っていれば、時間の経過によって孔底方向へ沈降する可能性があります。そのため、ベントナイト管理と孔底のスライム処理を別々の品質管理として考えないことが大切です。

砂分率が高いからといって、単に新しい安定液を追加して薄めれば十分とは限りません。原因が循環設備の能力不足や除砂状態にある場合、設備や循環方法を改善しなければ同じ状態が再発する可能性があります。

掘削速度に対して土砂処理が追い付いているか、処理設備が適切に機能しているか、孔内から戻ってくる安定液と処理後の安定液の状態にどの程度差があるかなど、工程全体を見る必要があります。

数値4|pHで安定液の状態変化を確認する

4つ目はpHです。pHは安定液の酸性やアルカリ性の程度を示す数値で、ベントナイトを含む安定液の状態変化を把握する指標の一つとして利用されます。

pHについても、一つの数値だけを見て孔壁が安定しているかどうかを判断するものではありません。比重、粘度、砂分率などとは異なる性質を示すため、ほかの測定項目と組み合わせて利用します。

実務上は中性からアルカリ側の一定範囲を管理値として設定している施工例があります。ただし、配合や添加材によって適切な範囲は異なるため、「必ずこの値でなければならない」という全国共通の数値ではありません。

pHを見るうえで注目したいのは、施工中の変化です。作液直後の数値に対して、掘削中や掘削完了後に大きな変化が生じた場合には、地下水、地盤、添加材、別材料の混入など、施工中に条件が変わっていないかを確認します。

同じ配合で作液しているにもかかわらず特定の杭だけpHが大きく異なるのであれば、その杭位置特有の地盤や地下水条件を検討する材料にもなります。ただし、数値変化だけから原因を断定するのではなく、比重、粘度、砂分率、液位の変化や施工記録と照合します。

pH測定器を使用する場合は、測定器の管理状態も重要です。必要に応じて校正状態を確認し、電極などを適切に扱います。測定機器が正しく管理されていなければ、安定液ではなく測定器側の問題によって数値がずれる可能性があります。

測定記録には数値だけでなく、測定時刻や工程も残しておくと便利です。掘削前、掘削中、掘削終了後、コンクリート打設前というように工程を明記すると、どの段階でpHが変化したかを後から追跡できます。

数値5|安定液位で孔内の水頭を管理する

5つ目は安定液位です。ここまでの比重、ファンネル粘度、砂分率、pHは主として安定液そのものの性状を見る数値でしたが、液位は孔内の安定液がどの高さに保たれているかを確認する数値です。

ベントナイトを適切に配合していても、孔内の安定液位が必要な高さより低下すれば、孔壁へ作用する液圧の条件が変わります。したがって、安定液の品質が良いことと、孔壁を安定させる条件が適切に維持されていることは分けて考える必要があります。

特に地下水が存在する地盤では、孔内外の水圧条件が孔壁の安定に関係します。施工計画では地下水位や地盤条件を踏まえて必要な安定液位を設定し、その水位を施工中に維持できているか確認します。

ここで「地下水位より必ず何m高くする」と一つの数値をすべての現場へ適用するのは適切ではありません。必要な水頭差は工法、地盤、地下水、掘削深度、ケーシングの状態などによって異なります。現場ごとに設定された管理値を優先します。

液位管理では、現在値だけでなく低下速度にも注目します。施工中に急激な液位低下が見られた場合、透水性の高い地層への逸液などが起きていないかを確認する必要があります。

たとえば、それまで一定だった液位が特定の掘削深度から急に下がり始めた場合は、その深度の地盤条件と照合します。砂礫層や空隙を含む層など、安定液が流出しやすい条件がないかを確認します。

液位が下がった場合も、単に安定液を追加して元の高さへ戻すだけで管理完了とは限りません。補給しても短時間で再び低下するのであれば、原因を確認し、施工計画に沿った対策が必要になります。

杭番号、掘削深度、時刻、液位を一緒に記録しておけば、逸液が始まった条件を後から確認しやすくなります。隣接する杭でも同じ深度で液位変化が起きれば、地盤条件との関係を検討するための有効な情報になります。

5つの数値を組み合わせてベントナイトを管理する

ベントナイト管理で重要なのは、比重、ファンネル粘度、砂分率、pH、安定液位を別々の数字として見るのではなく、相互の変化を比較することです。

たとえば比重が上昇していても、その理由は一つとは限りません。ベントナイト濃度が変化した可能性もあれば、砂や細粒分が混入した可能性もあります。そこで砂分率を確認し、同時に上昇しているのであれば、掘削土砂の影響を検討できます。

比重と粘度がともに低下したときは、安定液の希釈を疑う材料になります。さらに液位にも変化があれば、孔内外の水の移動や補給状況などを確認する必要があります。

比重と粘度が高い状態でも、砂分率が高ければ「安定液の品質が高い」とは評価できません。地盤由来の固形分が多く含まれている可能性があるため、除砂や循環設備の状態まで確認します。

pHだけが急変した場合には、配合以外の要因も検討します。このように一つの項目では原因を特定できなくても、複数項目の変化を重ねれば異常の方向性を絞り込みやすくなります。

さらに、測定値と掘削深度を関連付けることが重要です。単純に9時と10時の数値を比較するだけでなく、その間に何m掘り進め、どの地層へ到達したかを記録します。これによって安定液の変化と地盤条件を照合できます。

杭打ちのベントナイト管理は、基準表に丸を付けるためだけの測定ではありません。孔内で起きている変化を把握し、必要な施工上の判断につなげるための管理です。

測定する位置とタイミングを統一する

同じ安定液でも、採取する場所が異なれば測定値に差が生じる可能性があります。そのため、ベントナイト管理では測定項目だけでなく、試料を採取する位置とタイミングを明確にしておくことが重要です。

安定液は孔内を循環して使用される場合があり、孔から戻ってきた液、処理設備を通過した後の液、孔内にある液では、土砂の含有状態などが異なる可能性があります。

毎回異なる位置から試料を採取すると、数値の変化が施工によるものなのか、採取場所の違いによるものなのか分からなくなります。そのため、施工計画に従って採取場所を統一します。

測定タイミングも同様です。作液時だけを測定しても、掘削後の状態は把握できません。現場の管理計画に応じて、作液後、掘削途中、掘削完了時、孔底処理後、コンクリート打設前など、必要なタイミングを定めます。

すべての現場で同じ回数を測定する必要があるわけではありません。重要なのは、管理目的に合ったタイミングを事前に決め、それを継続することです。

異常値が確認された場合には、調整後の再測定も欠かせません。たとえば粘度が管理範囲を外れ、安定液を適切に処理した場合には、その後の数値がどのように変化したかを確認します。

「処置をした」という記録だけでは、安定液が実際に改善したかどうかを説明できません。処置前と処置後の数値を両方残すことで、品質管理記録として意味のある履歴になります。

測定値には時刻を記載します。これにより、掘削記録や施工写真、深度記録などと後から照合できます。数値そのものよりも、施工工程との関係が分かる記録にすることが重要です。

基準を外れたときは原因を確認してから調整する

ベントナイト管理で基準を外れたとき、すぐにベントナイトを追加することが正しい対応とは限りません。最初に行うべきなのは、どの項目がどの方向に変化し、その原因として何が考えられるかを確認することです。

粘度が低下した場合、配合不足だけでなく水による希釈が考えられます。比重も同時に低下しているのであれば、希釈の可能性を検討しやすくなります。

一方、粘度が上昇したときには、ベントナイト量の増加だけでなく地盤の細粒分混入も考えられます。比重や砂分率、掘削している地層を確認しないまま材料を追加すると、かえって安定液の状態を悪化させる可能性があります。

砂分率が高い場合には、ベントナイトの配合より、掘削土砂の除去状態を確認することが重要です。循環設備が正常に機能しているか、処理能力を超える速度で掘削していないか、配管や槽内で土砂が堆積していないかなどを確認します。

液位が急激に下がっているのであれば、補給だけでなく逸液の有無を考えます。補給した安定液がどの程度の速度で減るかを確認し、掘削深度や地層との関係を整理します。

pHに大きな変化が生じた場合は、水や材料などの条件に変化がなかったか確認します。

重要なのは、「異常値を確認する、原因を検討する、処置する、再測定する」という流れです。結果だけ正常値に戻すのではなく、何が原因で、どのような処置によって改善したかまで記録します。

この履歴があれば、同じ現場の別の杭で類似した変化が起きたときにも参考にできます。ベントナイト管理を個々の測定作業で終わらせず、施工条件を学習するためのデータとして扱うことが大切です。

ベントナイト管理とスライム処理を一体で考える

場所打ち杭では、掘削完了後の孔底状態も品質管理上の重要な確認事項です。孔底に掘削土砂が残った状態で次工程へ進めば、杭先端部の品質に影響する可能性があります。

ベントナイトを含む安定液の管理とスライム処理は、別々の作業として切り離すべきではありません。安定液中に砂や細粒分が多く含まれていれば、時間の経過によって一部が沈降し、孔底の状態が変化する可能性があるからです。

たとえば掘削完了直後に孔底処理を実施しても、その後の鉄筋かご建込みなどに時間がかかり、安定液中の固形分が沈降すれば、コンクリート打設前には再び孔底状態を確認する必要が生じる場合があります。

そのため、砂分率や比重の測定結果は、安定液だけの管理値として見るのではなく、スライムの再沈降を考える材料としても扱います。

ここで重要なのが時間です。孔底処理を終了した時刻とコンクリート打設を開始した時刻が分かれば、その間にどの程度時間が経過したかを把握できます。安定液の数値と合わせれば、再確認が必要かどうかを判断する材料になります。

また、スライム処理後に安定液の測定を行い、その値が施工計画上の管理範囲にあることを確認する運用も考えられます。具体的な測定方法や判定方法は現場ごとの計画に従います。

ベントナイト管理は掘削を続けるためだけに行うものではありません。掘削を完了した孔を次工程へ適切な状態で引き渡すための品質管理でもあります。

コンクリート打設前の安定液管理を重視する

ベントナイト管理では作液時の数値が注目されがちですが、最終的に重要なのは、コンクリート打設へ移る時点で孔内が施工計画上適切な状態に保たれているかどうかです。

作液からコンクリート打設までには、長い時間がかかる場合があります。その間に掘削土砂が混入し、安定液を循環させ、必要に応じて補給や調整を行います。

掘削終了後には孔底処理や鉄筋かご建込みなども行われます。そのため、施工開始時の安定液が良好だったことだけでは、打設直前の状態を説明できません。

コンクリート打設前には、施工計画で要求される項目について測定し、必要な管理範囲にあることを確認します。基準を外れている場合には、原因に応じた処置を行い、必要に応じて再測定します。

ここでの確認は、単に帳票を埋めるためではありません。コンクリート打設が始まると孔内の状態を確認したり、安定液管理をやり直したりすることが難しくなります。そのため、次工程へ進む前の重要な確認点になります。

打設直前の記録には、測定日時、杭番号、比重、粘度、砂分率、pH、必要に応じた液位などを残します。さらに孔底処理の終了時刻や打設開始時刻を関連付けると、施工履歴をより明確にできます。

掘削時の数値と打設前の数値を比較することで、安定液が工程の中でどの程度変化したかも確認できます。複数本の杭を同じ方法で記録すれば、現場全体の傾向も把握しやすくなります。

杭ごとに数値と施工履歴を残す

ベントナイト管理の数値は、測っただけでは十分ではありません。どの杭で取得した値なのかを明確にし、施工履歴と結び付けて残すことが重要です。

杭本数の多い現場では、同じ日に複数の杭について安定液を測定することがあります。記録方法が統一されていないと、後から見たときに「この測定値はどの杭のものか」「掘削途中なのか打設直前なのか」が分からなくなる可能性があります。

そのため、杭番号、施工位置、日時、測定工程、採取場所、測定値を一つの記録体系で整理します。

比重が管理範囲を外れた場合には、処置内容と再測定値を同じ杭の履歴へ残します。砂分率が高かった場合も、除砂や安定液処理などを行った時刻とその後の数値を記録します。

掘削深度も重要な情報です。たとえば20m付近から液位低下が起こった場合、その深度と地盤調査資料を照合できます。別の杭でも同じ深度で同様の変化が起これば、偶然ではなく地層条件との関係を検討しやすくなります。

施工写真も履歴へ結び付けておくと便利です。安定液の測定状況、循環設備、孔口周辺、鉄筋かご建込み、コンクリート打設前後などの写真に杭番号や時刻を対応させれば、数値だけでは分からない現場状態を確認できます。

試験杭を施工する場合には、試験杭と本杭の記録形式をそろえると比較しやすくなります。試験杭で比重や粘度がどのように変化したか、本杭でも同様の傾向が再現しているかを確認できます。

杭打ちの品質管理では、最終的に施工した杭を後から確認できる記録体系を作ることが大切です。ベントナイト管理の数値は、そのための重要な施工データになります。

LRTK Phoneで杭位置と施工記録を結び付ける

杭打ち現場では、ベントナイト管理の数値だけでなく、それがどの杭位置で取得された情報かを確実に管理する必要があります。杭番号が多くなったり、複数班が作業したりすると、写真と帳票、杭番号、時刻が分散しやすくなります。

こうしたときは、位置情報を施工記録へ加えることで整理しやすくなります。LRTK Phoneを活用すれば、現場で取得した位置情報と杭位置を関連付けながら記録する運用を検討できます。

たとえばベントナイトの測定を行った杭について、杭番号だけではなく位置情報も記録します。測定時刻や現場写真を同時に整理すれば、後からその杭の施工履歴を確認しやすくなります。

複数本の杭が近接し、写真だけではどの杭を撮影したのか判断しづらい現場では、位置情報を補助情報として利用する意味があります。杭位置、測定日時、施工写真、安定液管理記録が関連付いていれば、確認作業の負担を抑えやすくなります。

また、液位低下や安定液性状の変化が特定エリアで集中している場合にも、位置との関係を確認できます。複数の杭で似た変化が見られれば、地盤調査資料と照らし合わせながら、その場所の地盤条件との関係を検討できます。

ただし、LRTK Phoneによる位置記録がベントナイトの測定そのものを代替するわけではありません。比重、粘度、砂分率、pHなどは、それぞれ現場で定められた測定方法に従って確認する必要があります。

位置情報は、測定結果について「どこで、いつ、どの杭に対して取得したか」を明確にするための情報として使います。

現場で記録した情報をさらに整理する場合には、LRTK Phoneで取得した位置情報と施工写真などをクラウド環境へ集約し、必要に応じて点群などの現場データと組み合わせて管理する方法も考えられます。施工時に取得したデータを一時的な記録で終わらせず、後から確認できる形にしておくことが、杭打ち現場のデジタル管理では重要です。

まとめ

杭打ちでベントナイト管理を誤らないためには、配合量だけを見るのではなく、施工中の安定液そのものを数値で確認することが重要です。

特に確認しておきたいのが、比重、ファンネル粘度、砂分率、pH、安定液位の5つです。

比重は安定液の状態を把握する基本的な数値ですが、ベントナイト濃度だけでなく掘削土砂の混入でも変化するため、砂分率などと合わせて判断します。

ファンネル粘度は安定液の流動性を見るための数値です。低ければ必ず悪い、高ければ必ず良いというものではなく、施工計画で設定した管理範囲との比較が必要です。

砂分率は、掘削によって安定液中へ取り込まれた砂分の状態を確認するうえで重要です。砂分率が高い場合には、ベントナイトの追加だけではなく、循環や除砂、掘削条件まで確認します。

pHは安定液の状態変化を把握する補助的な指標になります。単独で孔壁の安定を判断するのではなく、ほかの測定値や材料、地下水条件などと合わせて確認します。

そして安定液位は、孔内の水頭条件を管理するために重要です。安定液の性状が施工計画上適切でも、必要な液位を維持できなければ孔壁を取り巻く条件が変化します。

これらの5つについて参考となる数値例はありますが、すべての場所打ち杭へ共通して適用できる一律の合否値ではありません。実際の施工では、設計図書、施工計画書、承認された配合や品質管理基準を優先してください。

さらに重要なのは一回の測定値ではなく、時間と工程に沿った変化です。作液時、掘削途中、掘削完了時、孔底処理後、コンクリート打設前など、現場で定めたタイミングで測定し、前後の推移を確認します。

管理値を外れた場合には、すぐにベントナイトを追加して数字だけを合わせるのではなく、希釈、土砂混入、逸液、循環設備、地盤条件など原因を検討します。そのうえで必要な処置を行い、再測定によって状態を確認することが大切です。

記録についても、数値だけを残して終わらせないようにします。杭番号、位置、測定時刻、掘削深度、工程、処置内容、再測定結果まで関連付ければ、後から施工状況を再確認できる記録になります。

杭打ちのベントナイト管理は、単なる材料管理ではありません。掘削孔を施工中に安定させ、スライム処理や鉄筋かご建込みを経て、コンクリート打設へ適切につなげるための工程全体の品質管理です。

比重、ファンネル粘度、砂分率、pH、安定液位という5つの数値を個別に見るのではなく、杭位置、深度、時間、地盤条件と結び付けて管理することで、現場で起きている変化を把握しやすくなります。

さらに施工記録を位置情報まで含めて整理したい場合は、ベントナイト管理表や施工写真と杭位置を関連付ける手段として、LRTK Phoneの活用を検討してみてください。

現場を3Dで残して、あとから測る。
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