LRTKレフィクシア株式会社

傾斜地の杭打ちで注意することは?安全確保の6項目

傾斜地で杭打ちを行う場合、平坦な施工ヤードと同じ感覚で作業を進めることはできません。杭打ち機は大きな機体重量を持ち、杭材の吊り込みや建て込み、掘削、圧入、打撃など、施工方法に応じて機械の姿勢や地盤へ加わる荷重の状態が変わります。地盤の局所的な沈下や作業地盤の傾きは、機械の不安定化、杭芯のずれ、資材の転動、作業員の転倒など複数の問題につながる可能性があります。

特に傾斜地では、見た目には締まっている地盤でも盛土端部の支持状態が十分でなかったり、雨水が集まる場所だけ軟弱化していたりすることがあります。施工開始時には問題がなくても、杭打ち機の往復や杭材運搬車両の通行によって作業地盤が徐々に乱れ、時間の経過とともに安全条件が変化することもあります。そのため、施工前に一度確認して終わりではなく、作業の進行に合わせて地盤、機械、資材、排水、測量、安全設備を繰り返し確認する考え方が重要です。

この記事では、「杭打ち」で検索している施工管理者、現場監督、測量担当者、杭工事担当者などを想定し、傾斜地の杭打ちで安全確保のために押さえておきたい6項目を実務的な視点から解説します。施工方法、機械の種類、地盤条件によって適用される法令上の措置や必要な対策は異なるため、実際の現場では労働安全衛生関係法令、施工計画、機械の取扱説明書・仕様、元請けや現場の安全ルールなどと照合して判断してください。

傾斜地の杭打ちで安全確保が難しくなる理由

傾斜地での杭打ちが難しい理由の一つは、機械の重量を受ける地盤条件が場所によって変わりやすいことです。平坦に見える作業地盤を造成しても、その下に切土部分と盛土部分が混在していれば、同じ荷重を受けたときの変形の仕方が異なる可能性があります。杭打ち機の左右で支持状態が変われば、機械の姿勢に影響し、杭の建て込みや鉛直管理にも注意が必要になります。

また、傾斜地では高い側から低い側へ水が流れやすいため、雨水や湧水が特定の場所へ集中することがあります。排水経路が十分でなければ、作業地盤表面がぬかるむだけでなく、地盤内部まで含めて支持状態が変わる可能性があります。始業時には安定していても、降雨後や重機通行後には条件が変わっている場合があるため、状態に応じた再確認が欠かせません。

さらに、傾斜地の杭打ちでは杭材の仮置きにも制約が生まれます。長尺の杭材を勾配方向へ置けば、支持や固定の方法によっては転動や滑動の危険が高まります。杭材を吊り上げる際も、機械と杭材、補助作業員の位置関係が平坦地より複雑になりやすく、作業半径や吊り荷の移動範囲を踏まえた配置計画が重要です。

施工精度の面でも傾斜の影響があります。杭芯の測設位置が正しくても、杭打ち機の据付位置が制限されることで作業姿勢が難しくなったり、測量機器を設置できる位置が限られたりします。地形によって見通しが悪くなれば、合図者とオペレーターの意思疎通にも影響します。このように、傾斜地の杭打ちは単に斜面上で杭を施工する作業ではなく、地盤、機械、搬入、排水、測量、安全管理を一つの施工システムとして考える必要があります。

1. 地形と地盤の状態を施工前に確認する

最初に確認したいのは、杭芯そのものだけではなく、杭打ち機が移動し、旋回し、施工する範囲全体の地形と地盤です。設計図や測量成果から施工位置を把握するだけでは、現場で杭打ち機を安全に据えられるとは限りません。施工ヤードの高低差、斜面の向き、法肩や法尻との位置関係、既設構造物、埋設物、排水施設などを現地で確認し、杭施工時の機械配置まで具体的に想定することが重要です。

特に注意したいのが、切土と盛土の境界付近です。造成された傾斜地では、外観上は連続した平場でも、その下の地盤構成が一様ではない場合があります。盛土端部や埋め戻し部分などでは、重機荷重を受けたときの変形が周囲と異なる可能性があります。杭打ち機の片側だけがそのような場所へ乗る配置になる場合は、地盤の確認や補強、機械位置の変更を含め、施工計画に照らして検討する必要があります。

地表面の状態を見る際は、大きな陥没だけでなく、小さな変状にも注目します。車輪やクローラの通過跡が深く残っている場所、水が染み出している場所、ひび割れが続いている場所、土が局所的に盛り上がっている場所などは、地盤状態を再確認するきっかけになります。傾斜地では一部の変形が斜面方向へ連続することもあるため、外観だけで安全性を決めつけず、機械荷重や地盤条件と合わせて確認することが大切です。

杭打ち機だけでなく、杭材運搬車や揚重用の機械、掘削土や施工材料を運ぶ車両がどこを通るかも施工前に整理します。杭打ち機用の作業地盤が安定していても、搬入車両が路肩寄りを繰り返し走行することで周辺地盤が乱れ、その影響が施工箇所へ及ぶことがあります。傾斜地では「杭を施工する場所」と「そこへ到達するまでの経路」を分けずに確認することが重要です。

地下のガス導管、地中電線路などを損壊するおそれがある場合は、現場内の目視だけで判断するのではなく、管理者への確認などにより事前に有無や状態を調査し、その結果に応じた措置を講じる必要があります。これは労働安全衛生規則でも、くい打機またはボーリングマシンを使用する作業について定められている事項です。 厚生労働省

また、現況地盤高を把握しておくと、施工中の変化にも気づきやすくなります。杭芯周辺だけでなく、作業地盤の代表点、路肩付近、排水が集中する場所などを基準としておけば、沈下や段差が疑われた際に施工前との比較がしやすくなります。目視確認に加えて位置や高さを記録することで、「何となく下がったように見える」という感覚的な判断から、変化を比較できる管理へ移行できます。

2. 杭打ち機を据える作業地盤を安定させる

傾斜地の杭打ちで安全性を左右しやすいのが、杭打ち機を支える作業地盤です。杭打ち機は杭を施工する地点に到達できればよいわけではなく、施工中の機械荷重や動作を受けても安定した状態を保てる支持条件が必要です。造成した平場が見た目に水平でも、表層だけを均した状態では十分とは限りません。地盤の支持状態、締固め、排水、段差、端部までの余裕などを総合的に確認します。

動力を用いるくい打機等について、労働安全衛生規則では倒壊防止措置が定められており、軟弱な地盤に据え付けるときは脚部または架台の沈下を防止するため敷板、敷角等を使用すること、施設や仮設物に据え付けるときは耐力を確認して不足時に補強すること、脚部や架台が滑動するおそれがあるときは固定することなどが求められています。現場では機種や据付方式に応じて、該当する法令とメーカーの条件を確認したうえで具体的な方法を決める必要があります。 厚生労働省

作業地盤を確認するときは、機械本体が停止する位置だけを見るのではなく、施工中にクローラなどの支持部分が通過する範囲、旋回時に必要となる空間、杭材を吊り込む側の作業スペースまで含めて確認することが重要です。狭い傾斜地では機械配置を無理に成立させようとすると、斜面端部へ寄り過ぎたり、資材との離隔が不足したりする場合があります。施工できるかどうかだけでなく、安定した姿勢で一連の作業を完了できるかという視点で判断します。

敷鉄板などを使用して荷重を分散する場合も、設置するだけで安全が確保されるわけではありません。下地に大きな凹凸があれば、鉄板が十分に地盤へなじまず、一部へ荷重が集中する可能性があります。また、鉄板の継ぎ目に段差が生じると、杭打ち機の移動時に姿勢が変化する原因になります。設置後の状態だけでなく、重機が通行した後に浮き、ずれ、沈み込みなどが発生していないかを確認することが大切です。

傾斜地では作業地盤の低い側にも注意が必要です。平場を確保するために盛土を行った場合、低い側は盛土厚が大きくなりやすく、端部へ機械が近づくほど支持条件が変わることがあります。杭施工位置だけを基準に機械を置くのではなく、機械の支持部分が法肩や盛土端部に対してどの位置になるのかも確認します。必要に応じて施工順序や機械配置を見直し、無理に端部へ寄せる計画を避けることが重要です。

作業地盤は施工開始前に整備すれば終わりではありません。杭打ちを繰り返すと、杭打ち機が同じ経路を何度も移動し、杭材運搬車も往復します。その結果、局所的なわだちや沈下、鉄板のずれが生じる場合があります。前日に問題がなかった場所でも翌日に同じ状態とは限りません。始業時、重機移動後、降雨後、異常を感じたときなど、現場条件に応じた節目で状態を見直す運用が重要です。

3. 杭打ち機の姿勢と支持状態を施工中も確認する

杭打ちでは、杭打ち機を所定位置へ据えた後の姿勢管理が施工精度と安全性の両方に関係します。特に傾斜地では、作業地盤に局所的な沈下が生じただけでも機械の姿勢が変化する可能性があります。施工開始時に水平やリーダー等の姿勢を確認していても、その状態が施工終了まで維持されるとは限らないため、施工中の変化を確認することが重要です。

杭打ち機の姿勢が変化すると、杭材の建て込みやリーダーなどの鉛直管理にも影響します。杭芯位置へ合わせた時点では問題がなくても、掘削や圧入などの施工に伴って機械の支持状態が変われば、杭の位置や傾斜を再確認する必要が生じます。異常な揺れや傾き、通常と異なる挙動が見られた場合に、そのまま施工を継続せず、原因と安全条件を確認する判断基準を現場内で共有しておくことが大切です。

傾斜地では、機械を移動させるときも姿勢が変化します。施工位置間を短距離移動するだけでも、段差や鉄板の境界、勾配変化部を通過すれば重心や接地状態が変わります。杭材や付属設備を保持した状態で移動できるかどうか、どの姿勢で移動すべきかは機械の仕様や施工計画によって異なるため、取扱説明書や定められた手順に従う必要があります。

また、くい打機等の組立て、解体、変更または移動については、労働安全衛生規則で作業方法・手順等を定めて労働者に周知し、作業を指揮する者を指名して、その直接の指揮の下で行わせることが定められています。傾斜地では移動時の地盤条件が場所ごとに変わりやすいため、オペレーター個人の経験だけに依存せず、現場で定めた手順と役割分担に沿って実施することが重要です。 厚生労働省

杭施工時には、地盤条件によって機械の挙動が通常時と変わることがあります。硬い地層や転石などに当たった可能性がある場合は、施工記録と地盤情報を照合しながら、施工速度の急な変化、機械の振動や傾き、地表面の変状などを確認します。異常が疑われる場合は、原因を整理して安全条件を確認したうえで作業を再開することが大切です。

機械の姿勢確認では、「杭が鉛直に見えるから機械も問題ない」と一つの情報だけで判断しないことも重要です。杭の位置、機械本体の姿勢、作業地盤の沈下、支持部分の接地状態などをそれぞれ確認すると、異常の兆候を発見しやすくなります。施工前の確認値や写真を残しておけば、施工途中で疑問が生じた際にも比較しやすくなります。

4. 搬入路と資材の置き場を安全に計画する

傾斜地の杭打ちでは、杭打ち機を安全に据えることに意識が集中しやすい一方で、杭材や施工資材の搬入経路が見落とされることがあります。しかし、長尺で重量のある杭材を扱う現場では、搬入から仮置き、吊り込みまでを一連の作業として計画する必要があります。

まず確認したいのが搬入路の幅、勾配、曲がり、路肩の状態です。大型車両が進入できても、方向転換や退出が安全に行えるとは限りません。特に傾斜地では、低い側の路肩へ車両荷重が集中すると、路肩や周辺地盤へ影響する可能性があります。車両がどこまで進入し、どの位置で荷下ろしを行い、どの経路で退出するのかを事前に具体化しておくことが大切です。

杭材の仮置きでは、斜面方向への転動や滑動を考慮します。円形断面の杭材だけでなく、断面形状や支持方法によっては接地状態が安定しにくいものがあります。地盤に勾配が残っている場所へ安易に直接置くのではなく、施工方法や資材の形状に合わせた支持・歯止め等の方法を検討し、意図しない移動を防ぐ必要があります。仮置き場所は杭打ち機の作業範囲や車両動線とも干渉しない位置に設定します。

資材を便利な場所へ置き過ぎることも危険につながります。杭芯の近くへ杭材を集めれば吊り込み距離は短くできますが、作業員の通路が狭くなったり、杭打ち機が旋回する空間を圧迫したりする可能性があります。傾斜地では利用できる平場が限られるため、資材置き場、重機動線、歩行者通路を平面だけでなく高低差も含めて考えることが重要です。

杭材を吊り込む場面では、吊り荷の下や吊り荷が通過する範囲へ不用意に人が入らないよう、施工方法に応じた立入管理を行います。また、くい打機等の運転については一定の合図と合図を行う者を定め、その合図を使用することが労働安全衛生規則で定められています。死角が生じる場合は、誰が合図を担当するか、必要に応じてどのように連絡を中継するかを事前に整理し、複数人から相反する指示が出ない運用にすることが大切です。 厚生労働省

搬入計画は施工順序とも関係します。奥側の杭を先に施工した方が安全なのか、手前から進めた方が作業地盤を維持しやすいのかは、現場条件によって異なります。施工済みの杭や掘削箇所、仮設物によって後から車両経路が狭くなることもあるため、全杭の施工順序と資材搬入を合わせて検討することが重要です。

5. 雨水・湧水・天候による地盤変化を見逃さない

傾斜地で特に注意したいのが水です。雨水は高い側から低い側へ流れるため、作業地盤の一部へ水が集中することがあります。表面排水が悪ければ、水たまりができるだけでなく、地盤内部へ水が浸透して支持状態が変化する可能性があります。杭打ち機のような重量機械を扱う現場では、「表面の水が引いたから施工できる」と外観だけで判断しないことが大切です。

施工前には、雨水がどこから流入し、どこへ排水されるのかを確認します。造成前の自然地形と造成後の作業地盤では水の流れ方が変わることがあり、施工ヤードを平坦にしたことで従来とは異なる場所へ水が集まる場合もあります。排水溝や集水箇所を設けている場合でも、土砂や施工材料で閉塞していないかを定期的に確認する必要があります。

湧水がある現場ではさらに注意が必要です。降雨とは関係なく特定の場所が湿っている、作業地盤から水が染み出す、同じ場所だけ地盤が軟らかいといった状況があれば、周囲の地盤条件を含めて確認します。水の出口だけを処理しても、地下の水みちや地層条件によっては別の場所へ影響が現れる可能性があります。

雨天後に杭打ちを再開するときは、施工機械の位置だけでなく、搬入路、資材置き場、歩行者通路、法肩、排水経路まで再確認します。車両の通行によって泥が移動し、鉄板上へ滑りやすい土が載っていることもあります。作業員が安全に歩ける状態か、合図者が無理な姿勢で移動することにならないかといった人の動線にも目を向けます。

天候の変化は施工中にも起こります。雨や風によって作業の危険性が高まる場合は、現場で定めた中止基準、施工計画、機械や吊り具の使用条件などに基づき、作業継続の可否を判断します。特に長尺の杭材を吊り上げる作業では風の影響を受ける可能性があるため、一般論だけで一律の数値基準を示すのではなく、使用機械、杭材、施工方法、現場条件に応じて判断することが重要です。

重要なのは、天候を単独の要素として扱わないことです。前日の雨で地盤が弱ったところへ車両通行が重なり、その後の杭打ち機移動で沈下が発生するなど、複数の要因が組み合わさって問題が現れる場合があります。そのため、降雨量などの数値だけを見るのではなく、現在の作業地盤がどのような状態になっているかを現地で確認することが安全管理につながります。

6. 杭芯・測量・合図・立入管理を一体で運用する

傾斜地の杭打ちでは、安全管理と施工精度管理を別々に考えないことが重要です。杭芯を正確に測設しても、測量担当者が杭打ち機の危険範囲へ頻繁に立ち入るような方法では安全上の課題が残ります。逆に、安全距離を優先するあまり杭位置や鉛直確認が不十分になれば、施工後の手直しや工程への影響につながる可能性があります。

杭芯を測設するときは、基準点が施工機械や資材配置によって使えなくならないよう計画します。傾斜地では設置できる場所が限られるため、一つの基準点だけに依存すると、杭打ち機や杭材で視通が遮られた際に再測設が難しくなることがあります。施工前に複数方向から位置を確認できる体制や予備の基準を準備しておくと、杭芯の再確認や施工後確認を行いやすくなります。

また、杭芯そのものが正しくても、施工途中で逃げ杭やマーキングが消える場合があります。杭打ち機の移動、泥、雨水、資材の仮置きなどが原因です。そのため、施工直前に杭番号と杭芯位置を照合する運用が重要です。傾斜地では似た景色が続き、施工ヤードも狭くなりやすいため、隣の杭と取り違えないよう番号管理と測量成果を一致させます。

合図については、杭材の吊り込み、機械移動、杭芯合わせ、施工開始、中断など、作業の節目ごとに誰が指示を出すのかを明確にします。前述のとおり、くい打機等の運転では一定の合図と合図者を定めることが法令で求められています。傾斜や資材で死角が生じる場合は、中継方法を定めるなど、現場条件に合わせて連絡方法を整えます。 厚生労働省

立入管理も杭打ち作業の基本です。杭打ち機の周囲だけでなく、杭材の吊り上げ範囲、旋回・移動範囲、ワイヤロープや滑車装置周辺など、それぞれの機械構造や施工方法で生じる危険区域を確認して管理します。労働安全衛生規則では、運転中のくい打機等について、巻上げ用ワイヤロープの屈曲部の内側への立入りを禁止する措置も定めています。単に「機械から何メートル離れる」と一律に考えるのではなく、機械の可動範囲と法令上の立入禁止箇所を確認して区画することが重要です。 厚生労働省

測量をデジタル化する場合も、機器を導入するだけでは安全管理にはなりません。位置情報を現地で確認できる仕組みを使えば、杭芯や基準点の確認を効率化できる可能性がありますが、表示位置、座標系、既知点との照合、測位状態などを確認したうえで利用する必要があります。測量担当者が機械近傍へ入る回数を減らせる運用を検討しつつ、最終的な施工判断は現場の測量管理と安全手順に基づいて行うことが大切です。

傾斜地の杭打ちで起こりやすい見落とし

傾斜地の杭打ちでは、一つ一つの対策を実施していても、それぞれが分断されていると見落としが発生します。たとえば作業地盤を整備していても、その後に杭材運搬車が同じ場所を何度も通れば状態は変化します。杭打ち機の据付時に姿勢を確認していても、施工途中で地盤が沈下すれば再確認が必要になります。

見落としにつながりやすい考え方の一つが、「昨日施工できた場所だから今日も同じ条件だろう」という思い込みです。杭施工が進むにつれて機械の動線が変わり、施工済み杭や資材によって配置条件も変化します。雨が降っていなくても、掘削に伴う水や泥の持ち込みなどで作業地盤の状態が変わることがあります。前日の状態をそのまま前提にせず、当日の現況を確認することが重要です。

次に注意したいのが、杭芯確認に集中し過ぎることです。杭打ちでは設計位置へ正確に杭を施工することが重要ですが、測量担当者が杭芯を追うあまり重機との位置関係への注意が薄れることがあります。杭芯確認の方法そのものを安全な位置から実施できるよう計画し、必要以上に機械へ近づかなくても確認できる場面を増やすことが望まれます。

斜面の低い側だけを危険と考えることも見落としにつながります。低い側では盛土端部や転落などへの注意が必要ですが、高い側では雨水や土砂が作業地盤へ流れ込む可能性があります。法面から落石や土砂移動が起こるおそれがある現場では、杭打ち機の足元だけではなく周囲の斜面状態も確認します。

また、杭施工が予定どおり進まないときほど安全確認を省略しないことが重要です。地盤条件の違いにより施工速度が落ちたり、杭材の交換や機械位置の修正が必要になったりすると、工程を取り戻そうとして確認作業が短縮されがちです。しかし、通常と異なる作業が発生している場面では、人の配置や機械姿勢も変化しやすくなります。作業内容を変更するときは、安全条件も変わっていないかを合わせて確認することが大切です。

さらに、応援作業員や新たに現場へ入る担当者への情報共有も重要です。傾斜地では「この路肩側へ寄らない」「この場所は降雨後に軟弱化しやすい」「この経路は杭材搬入時に立入りを制限する」といった現場固有の注意点が生まれます。常時現場にいる担当者には当たり前でも、新しく入った人には分かりません。危険箇所と作業ルールを見える化し、作業前に共有することで思い込みによる行動を減らしやすくなります。

安全確保と施工精度を両立する記録の考え方

傾斜地の杭打ちでは、施工記録を出来高確認のためだけに残すのではなく、安全条件の変化を追うためにも活用できます。記録する対象として考えたいのは、杭番号や施工日時だけではありません。杭打ち機の据付状態、作業地盤、杭芯、資材配置、排水状況などを施工の節目で残しておくと、後から状態を比較しやすくなります。

特に写真は、同じ方向、同じ対象を意識して撮影すると比較しやすくなります。単に現場全景を毎日撮るだけでは、作業地盤の沈下や鉄板のずれなど小さな変化を確認しにくい場合があります。杭打ち機の支持部分、路肩、排水箇所など、確認したい対象を決めて記録することが重要です。

測量値についても同様です。必要に応じて作業地盤の代表点や杭芯周辺の高さを確認しておけば、沈下が疑われたときに施工前との違いを把握しやすくなります。ただし、数値があることだけで安全を判断するのではなく、目視、機械の挙動、地盤状態などと合わせて確認することが大切です。

杭ごとの施工状況を位置情報と結び付けて整理すると、傾斜地のように杭配置が複雑な現場でも管理しやすくなります。「どの杭を施工したか」「次にどの杭へ移動するか」「その周辺の作業地盤に問題はないか」を一続きで確認できれば、施工順序の取り違えを防ぐだけでなく、重機移動前の確認にも利用できます。

現場で位置情報を扱う方法としては、測量機器や位置情報を扱える端末を利用する選択肢があります。LRTK Phoneのように現地で位置情報を確認できる仕組みを活用する場合も、画面上の表示だけで施工位置を決めるのではなく、現場の基準点や既知点との整合、測位状態、座標系や高さの設定などを確認することが前提です。杭芯確認や現場記録をデジタル化する目的は、人による確認をなくすことではなく、確認漏れや情報の分断を減らすことにあります。

記録を共有するときは、施工担当者と測量担当者で別々の資料を持つだけではなく、共通の杭番号を使って情報を結び付けることも有効です。杭番号、位置、施工日、確認写真などの対応関係が明確になれば、後から異常が見つかった場合にも該当箇所を追いやすくなります。

傾斜地の現場では地形が複雑なため、平面図だけでは現場の位置関係を直感的につかみにくいことがあります。現地の位置情報と記録を組み合わせることで、杭施工の進捗と周辺条件を確認しやすくなる可能性があります。ただし、どのデジタル手段を利用する場合でも、現地確認を省略するためではなく、現地確認をより確実にする補助として運用することが重要です。

まとめ|傾斜地の杭打ちは「足元・姿勢・変化」の継続確認が重要

傾斜地の杭打ちでは、杭を設計位置へ施工する技術だけでなく、杭打ち機を安全に支える作業地盤、地盤の変化、搬入経路、資材配置、排水、測量、安全な作業動線まで含めた総合的な管理が求められます。平坦地では問題になりにくい小さな高低差や水の流れが、傾斜地では機械の安定性や作業員の安全へ影響する可能性があります。

安全確保の6項目として特に意識したいのは、施工前に地形と地盤を把握すること、安定した作業地盤を確保すること、杭打ち機の姿勢と支持状態を継続確認すること、搬入路と資材置き場を計画すること、雨水や湧水による変化を見逃さないこと、そして杭芯・測量・合図・立入管理を一体で運用することです。どれか一つだけを徹底すればよいのではなく、施工の進行に合わせて相互に確認することが重要です。

特に覚えておきたいのは、傾斜地の安全条件は固定されたものではないという点です。始業時には安定していた作業地盤でも、杭打ち機や運搬車両が繰り返し通行すれば状態は変わります。晴天が続いていても湧水によって局所的に軟弱化する場合があります。杭施工の進行によって重機の配置や資材動線も変化します。そのため、「施工前に確認したから大丈夫」とせず、節目ごとに足元、機械姿勢、周辺状況を見直す運用が欠かせません。

また、安全管理と施工精度管理は別々の業務ではありません。安定した作業地盤は杭芯や鉛直を管理するうえでも重要であり、正確な測量と位置管理は杭打ち機の不要な移動を減らすことにもつながります。杭番号や位置、施工状況を分かりやすく共有できれば、施工順序の確認や次の機械配置も計画しやすくなります。

傾斜地のように現場条件が複雑な杭打ちでは、位置確認や記録の方法を見直すことも施工管理を効率化する一つの方法です。現地で杭芯や基準位置を確認し、施工状況を位置情報と結び付けて記録できれば、担当者間で同じ場所を確認しやすくなります。こうした現場の測量や位置管理をよりデジタルに進めたい場合は、LRTK Phoneを活用した現地測位や記録の方法も選択肢として検討できます。

現場を3Dで残して、あとから測る。
実際の画面と動画で使い方を確認できます。

LRTK Phoneの使い方・実例を見る
資料請求導入相談
現場をスマホで3DスキャンLRTK Phone実例を見る