杭打ち工事では、杭芯位置、鉛直度、施工深度、支持層への到達状況などに注意が集まりやすい一方、施工方法によってはセメントミルクの配合や注入管理も重要な施工管理項目になります。とくに既製杭を用いる埋込み系の杭工事では、根固めや杭周部の固定などを目的としてセメントミルクを使用する場合があり、施工後には地中の状態を直接確認しにくくなるため、施工中の管理が重要です。
セメントミルクの配合ミスというと、水とセメントの計算を間違える場面だけを想像しがちです。しかし実務では、設計図書と施工計画書で条件が異なっている、古い配合指示が作業場所に残っている、1バッチ当たりの数量と杭1本当たりの数量を取り違える、計量設備の設定値と実際の投入量が一致していない、洗浄後の残水を見落とすといった複数の要因が重なることで起こる可能性があります。
また、施工方法によっては根固めに使用する液と杭周部に使用する液で目的や管理条件が異なる場合があります。名称や数字だけを覚えて作業すると、条件変更時に取り違えが生じるおそれがあります。重要なのは、担当者の記憶だけに頼らず、異なる資料、設備表示、実測値、施工記録を相互に照合できる仕組みをつくることです。
この記事では、「杭打ち」で検索して施工管理の方法を確認したい実務担当者に向けて、セメントミルク配合ミスを防ぐための4つの照合を中心に、施工前、練混ぜ、注入、施工後の記録まで順を追って解説します。具体的な配合値や試験基準は工法、設計図書、施工計画、適用する基準によって異なるため、この記事では特定の数値を一律の基準として示さず、確認方法と考え方を整理します。
杭打ちでセメントミルクの配合管理が重要な理由
杭打ちは、現場によって採用される施工方法が異なります。杭を打撃や圧入によって施工する方法もあれば、地盤を掘削して既製杭を建て込む方法もあります。そのため、「杭打ち」という言葉だけから、すべての工事で同じセメントミルクを同じ方法で使用すると考えることはできません。
セメントミルクを用いる施工では、その目的を施工前に明確にしておく必要があります。たとえば杭先端付近の根固めに使用する場合と、杭周部の固定を目的として使用する場合では、施工工程や管理方法が異なることがあります。工法ごとの施工要領や設計条件に応じて配合、注入量、施工位置、確認方法を管理することが基本です。
セメントミルクの管理が難しい理由の一つは、施工後の確認が容易ではないことです。地上構造物であれば、施工後に寸法を測ったり外観を確認したりできます。しかし、杭先端や杭周部へ注入された材料は施工完了後には地中にあり、完成した状態を直接目視することが難しくなります。
そのため、施工前の配合確認、材料投入時の計量、練混ぜ状態、注入時の数量、施工時刻、対象杭などを記録し、施工中の情報から品質を確認できる状態にすることが重要になります。
さらに、配合ミスは一度発生すると連続しやすい点にも注意が必要です。最初のバッチで設備設定を間違えたまま作業を続ければ、複数のバッチに同じ誤りが繰り返される可能性があります。配合条件の取り違えに気付かず複数本の杭を施工した場合には、確認すべき範囲も広がります。
だからこそ、杭打ち現場では「経験者がいるから大丈夫」と考えるのではなく、間違いが発生しても早い段階で発見できるように照合を組み込むことが有効です。一つの数字を一度確認して終わるのではなく、異なる情報源を比較して同じ結果になることを確認します。
配合と注入量を分けて管理する
セメントミルク管理では、まず「配合」と「注入量」を別のものとして整理する必要があります。
配合とは、セメントと水などをどのような割合や数量で練り混ぜるかという製造条件です。一方、注入量とは、その配合でつくったセメントミルクを対象部分へどれだけ使用したかという施工量です。
この二つは関連していますが、同じ管理項目ではありません。
配合が計画どおりでも、必要な施工箇所への注入量が不足していれば、計画どおりに施工されたとは判断しにくくなります。反対に、予定した数量を注入していても、そもそもの配合が違っていれば同様です。
現場では一日のセメント使用量や練混ぜ回数が分かりやすい数字として残るため、「予定していた材料を使い切ったから問題ない」と考えてしまう場合があります。しかし総使用量が合っていることと、それぞれのバッチが正しい配合だったことは別です。
たとえば杭1本につき複数バッチを使用する施工で、あるバッチだけ水量を誤っていたとしても、一日のセメント総使用量だけを確認していると発見できないことがあります。逆に、バッチごとの配合記録があっても、どの杭へ何バッチ使用したか分からなければ注入量の検証が難しくなります。
そのため、配合管理と注入管理を別々に行ったうえで、最後に杭番号や施工時刻によって結び付ける考え方が重要です。
配合指示書には、単にセメント量と水量を書くのではなく、その数値が1バッチ当たりなのか、杭1本当たりなのか、あるいは別の管理単位なのかを明確にしておく必要があります。数字だけを並べると、施工担当者が異なる単位として受け取る可能性があります。
単位についても同様です。質量、容量、割合など異なる種類の数字を同じ欄で扱う場合には、単位を省略しないことが重要です。現場で普段使用している数値だからと単位を書かなければ、担当者交代時や条件変更時に誤読が起こりやすくなります。
配合と注入量を最初から分離して考えておくことが、以降の4つの照合を正しく行うための土台になります。
照合1 設計図書・施工計画書・配合指示を合わせる
第一の照合は、施工の基準となる資料を一致させることです。
杭打ちで使用するセメントミルクの条件は、現場担当者がその日の感覚で決めるものではありません。設計図書、承認された施工計画、採用する工法の施工要領、現場で使用する配合指示などを確認し、その工事で採用すべき条件を特定します。
ここで起こりやすい問題が、資料の版違いです。
工事着手前の施工計画から施工条件が変更され、最新版の資料では配合や施工数量が修正されているにもかかわらず、ミキサー周辺に置かれた配合表だけが旧版のまま残っていれば、作業員は古い数値を正しいものとして使用する可能性があります。
最新版を配布しただけでは十分とは限りません。旧版を回収する、使用停止を明示する、更新日や版番号を分かりやすく表示するなど、どの資料が現在有効なのかを判断できる状態にします。
また、同じ工事区間だからといってすべての杭が必ず同じ条件とは限りません。杭径、杭長、施工位置、地盤条件、施工区分などによって施工条件が設定される場合があります。そのため、施工する杭番号と適用する配合条件が対応しているかを施工前に確認する必要があります。
実務では、設計図書に示された内容を施工計画書へ反映し、さらに施工計画書の内容を現場用の配合指示へ落とし込む流れになります。この転記の段階で数字を誤ることがあります。
したがって、配合指示書だけを見るのではなく、その数字の出所まで戻って照合することが大切です。
また、「配合A」「配合B」のような略号だけを使用すると、作業員が記号と用途を取り違える可能性があります。現場内で略号を使う場合でも、根固め用なのか杭周用なのか、どの杭に適用する条件なのかが同時に分かるようにしておくと確認しやすくなります。
施工開始前の打合せでは、数値を読み上げるだけでなく、「今日の対象杭に使用する条件はどれか」「途中で変更する条件があるか」「変更するとしたらどの杭からか」まで確認しておくことが有効です。
この最初の照合で目指すのは、現場で参照する正しい条件を一つにすることです。複数の正しそうな資料が並んでいる状態をなくし、今日の施工ではどの数値を使用するのかが誰にでも分かる状態をつくります。
照合2 配合計算・計量値・実投入量を合わせる
第二の照合では、計算上の配合と実際の材料投入量を一致させます。
配合計算書に正しい数字が書かれていても、その数字どおりに材料が投入されなければ実際のセメントミルクは計画した配合になりません。
水については、給水設備や計量設備の表示を確認し、設定値と実際の計量値を照合します。セメントについても、使用する供給方法に応じて、予定量と実投入量が一致しているか確認します。
ここで重要なのは、「設定値」と「実測値」を同じものとして扱わないことです。
設備に正しい数字を入力していたとしても、実際の計量結果がその数字と一致しているとは限りません。計量機器の状態、ゼロ点、設備設定、操作ミスなどによって差が生じる可能性があります。
したがって、その日の初回バッチでは特に、配合計算、設備設定、実際の計量表示を順に確認することが大切です。
一つのバッチを単位として記録すると、照合しやすくなります。たとえば第1バッチについて、予定したセメント量、水量、実際の計量値、練混ぜ時刻を一つの記録として整理します。第2バッチ以降も同じ方法で管理すれば、後から異常が判明した場合に対象となるバッチを特定しやすくなります。
1バッチ当たりの製造量を途中で変更する場合には、特に注意が必要です。
たとえば施工条件や設備運用の都合で1バッチの量を変更したとき、セメント量だけ新しい数量へ変更し、水量が以前の設定のまま残っていれば配合が変わります。反対に水量だけ変更しても同様です。
そのため、製造量を変更するときは一つの数値だけを書き換えるのではなく、配合全体を改めて計算し、双方を再照合します。
計算作業を電子化している場合でも、確認は必要です。計算式が正しくても、入力欄に前日の数値が残っていれば正しい結果にはなりません。自動計算だから間違わないのではなく、入力値と出力値の両方を見る必要があります。
また、転記回数を必要以上に増やさないことも配合ミス防止に役立ちます。計量値を一度紙に書き、それを別の帳票へ写し、さらに別の記録へ入力すると、数字を書き写すたびに誤記の機会が増えます。
可能であれば元の計量記録を残し、集計値をそこから確認できるようにします。重要なのは、きれいな帳票を作ることではなく、実際に何を計量したかを追跡できることです。
照合3 設備設定・残水・練混ぜ状態を合わせる
第三の照合では、配合表の数字だけでは確認できない設備内部の条件を確認します。
特に見落とされやすいのが残水です。
ミキサーや貯留槽を洗浄した後、設備内部に水が残っていることがあります。その状態で配合表どおりの水とセメントを投入すると、帳票上は正しくても、実際には残水分だけ水量が増える可能性があります。
同じように、前のバッチのセメントミルクが槽内や配管に残っている場合もあります。配合を切り替えるときには、設備設定だけを新しい数字へ変更しても、設備内部の状態が完全に切り替わっているとは限りません。
したがって、始業時、洗浄後、長時間停止後、配合変更後などは、槽や配管の状態を確認してから新しいバッチを開始することが大切です。
練混ぜ時間や練混ぜ状態も確認対象です。
セメントと水の量が正しくても、十分に練り混ぜられていなければ均質な状態にならない可能性があります。適用する施工計画や施工要領に従い、所定の練混ぜ工程を守る必要があります。
現場でセメントミルクの流れ方がいつもと違う、ポンプで送りにくい、設備の負荷が大きいと感じた場合にも注意が必要です。
こうした状況で、施工性を改善するために現場判断で水を追加すると、当初の配合条件が変わってしまいます。状態に違和感がある場合は、材料投入量、練混ぜ工程、設備状態、配管の詰まりなど、原因を確認することが先です。
自動計量設備を使用している場合も、人による確認を完全になくすことは避けたいところです。設定値が正しく入力されているか、実際の計量値が計画値と合っているかを確認します。
条件変更時には、誰が、いつ、何の設定を変更したかを記録しておくと追跡しやすくなります。
根固め用から杭周用へ切り替えた時刻が記録されていれば、その前後に製造したバッチがどちらの用途だったのかを確認できます。反対に、切替時刻の記録がないと、後から帳票を見たときに境目が分からなくなることがあります。
設備設定の照合では、「入力した値」「実際に計量された値」「設備内部の状態」という三つを分けて確認することがポイントです。
照合4 品質確認・注入記録・材料使用量を合わせる
第四の照合では、製造したセメントミルクの確認結果と、実際の杭への注入記録、材料使用量をつなげます。
セメントミルクについては、工事の条件に応じて所定の品質確認や試験が行われます。具体的な確認項目、試験方法、試験頻度、管理値については、設計図書や施工計画、適用する施工管理基準に従う必要があります。
ここで重要なのは、品質確認の結果を単独の記録として終わらせないことです。
たとえば「午前中に採取した試料」という記録だけでは、後日確認するときに、どの杭へ使用したセメントミルクだったのか判断できない場合があります。
試料採取時刻、バッチ番号、対象杭、使用目的などを関連付けておけば、確認結果に異常があった場合にも対象範囲を絞り込みやすくなります。
同時に見たいのが材料使用量です。
施工前には、当日の杭本数や計画注入量などから、ある程度の材料使用量を把握できます。施工終了後に実際の材料使用量と比較し、大きな差がある場合には理由を確認します。
ただし、予定数量と実使用量に差があるだけで直ちに配合不良と判断するものではありません。施工条件、余剰分、設備や配管内の残量、洗浄など、数量差には複数の要因が考えられます。
重要なのは、差が生じた理由を追跡できることです。
たとえば一日のバッチ数、各バッチの製造量、各杭への注入量、施工後の残量が記録されていれば、材料収支を確認しやすくなります。
反対に、セメントの総使用量しか残っていない場合は、「材料は使った」ということは分かっても、「どの杭にどれだけ使用したか」までは分かりません。
第四の照合によって、施工前に計画した配合と数量、施工中に製造した数量、実際の注入数量、施工後の材料使用量がつながります。
根固め用と杭周用の取り違えを防ぐ
施工方法によっては、根固めに使用するセメントミルクと杭周部に使用するものを区分して管理する必要があります。
両者の目的が異なる場合には、配合条件や施工方法も必ずしも同一ではありません。そのため、「セメントミルク」という一つの名前だけで管理すると、用途の取り違えにつながる可能性があります。
現場の配合指示では、数字だけでなく用途を明確にすることが重要です。
たとえば「配合1」とだけ表示すると、その数字を見た人が根固め用なのか杭周用なのかを記憶で判断することになります。記号を使用する場合でも、用途を併記して誰が見ても判断できる状態にします。
特に注意したいのが切替時です。
朝から同じ条件で連続施工している間は作業手順が安定しやすい一方、途中で用途や条件が切り替わると操作ミスが入りやすくなります。
切替時には、新しい配合指示を確認し、設備設定を変更し、初回となるバッチの実計量値まで確認します。配管や貯留槽に切替前の材料が残っている可能性についても、施工計画や使用設備に応じて確認が必要です。
また、切替対象となる杭番号を事前に共有しておくことも有効です。
「次の杭から変更」とだけ伝えると、施工班とプラント側で認識している「次の杭」がずれる可能性があります。具体的な杭番号や施工区分を使って伝えることで、認識違いを減らせます。
杭打ち現場では複数の作業が同時進行するため、口頭連絡だけに頼らないことが重要です。
水セメント比の読み違いを防ぐ
セメントミルク配合を考えるとき、水セメント比は基本となる管理指標の一つです。
一般に水セメント比は、水の質量をセメントの質量で割った割合として扱います。ただし、実際に採用する値は工法や設計条件によって異なるため、現場ごとの設計図書や施工計画で確認することが前提です。
注意したいのは、水セメント比の数値だけを口頭で伝えないことです。
「今日はこの数字で」とだけ伝えると、それが水セメント比なのか、別の数量なのか、1バッチの材料量なのかが曖昧になります。施工管理では、数字と意味をセットで伝える必要があります。
また、水セメント比を理解していても、1バッチ当たりの製造量を変えたときに計算を誤ることがあります。
セメント量を変更したのであれば、それに対応する水量も配合条件に従って変える必要があります。水だけ以前の設定が残っていれば、想定した水セメント比にはなりません。
そのため、製造量の変更時には、一方の材料だけを見るのではなく、水とセメントの両方を新しい配合表と照合します。
表計算などで配合を計算している場合も、計算式があるから安心とは限りません。
前日の入力値が残っている、参照している欄がずれている、単位が違う数値を入力しているなど、入力段階の誤りは自動計算では防げません。
最終的には、配合表に示された水量とセメント量、設備の設定、実際の投入量が一致しているかを確認する必要があります。
初回バッチと条件変更時の確認を厚くする
すべてのバッチを同じ方法で確認することも大切ですが、特に配合ミスが入りやすい変化点を重点的に管理すると効率的です。
最も重要な変化点の一つが、その日の初回バッチです。
始業時には設備の立上げ、材料搬入の確認、杭芯の確認、施工機械の準備など複数の作業が重なります。前日の設備設定が残っていることや、洗浄後の残水が残っていることも考えられます。
そのため初回バッチでは、使用する配合指示、設備設定値、実計量値、槽内の状態、練混ぜ状況を一つずつ確認することが重要です。
初回で条件が正しいことを確認できれば、連続施工中は設定の変化や計量値の異常に注目しやすくなります。
次に重要なのが配合変更時です。
用途が変わる、対象杭の施工条件が変わる、1バッチの量を変えるなど、何らかの条件変更があれば、その直後のバッチを「新しい初回」と考えて再確認します。
休憩後や長時間停止後も同様です。
停止中に設備を洗浄した、材料を補給した、別の担当者が操作したといった変化があれば、再開時に以前と完全に同じ状態とは限りません。
担当者交代時にも、現在使用している配合条件と次の対象杭を引き継ぐ必要があります。「いつもと同じ」という伝え方ではなく、具体的な条件を確認します。
こうした変化点を重点管理することで、一つのミスが複数バッチへ連続する可能性を抑えやすくなります。
セメントミルクの注入量まで一体で管理する
正しい配合のセメントミルクを製造できても、それだけで杭打ちの施工管理が完了するわけではありません。
次に確認すべきなのが、計画した場所へ計画した方法で注入されているかです。
注入量は施工方法や杭の条件によって管理されます。具体的な必要量や管理方法は設計図書、施工計画、工法の施工要領に従って確認します。
配合と注入量を関連付けるためには、どのバッチをどの杭へ使用したかを記録しておくことが有効です。
たとえば一つの杭に複数バッチを使用した場合、それぞれのバッチ番号と使用量が分かれば、後で配合記録と照合できます。
逆に、配合記録と注入記録が別々に保存され、共通する番号や時刻がなければ、後から組み合わせることが難しくなります。
注入時には、設備の表示値だけではなく、施工計画上の数量との比較も重要です。予定より少ない、あるいは大きく異なる場合には、理由を確認します。
単に不足分を追加すればよいという考え方ではなく、なぜ差が生じたのかを見ることが重要です。設備表示、配管状態、記録方法、施工条件など、差の原因を確認したうえで施工計画に沿って対応します。
配合確認と注入量確認を一体化すると、「正しくつくったか」と「正しく使ったか」の両方を確認できるようになります。
異常を見つけたときに影響範囲を追えるようにする
施工中に計量値の異常や配合間違いの疑いが見つかったとき、重要なのはそのまま施工を続けないことです。
どの時点から異常が始まった可能性があるのかを確認し、対象となるバッチと杭を特定します。
このとき役立つのがバッチ番号と杭番号の対応記録です。
たとえば「第5バッチの水量に疑いがある」と分かった場合、第5バッチを使用した杭が記録されていれば、確認対象を絞り込めます。
一方、一日の総使用量だけしか記録していなければ、どの杭へその材料が入ったのかを特定しにくくなります。
異常の疑いがある場合には、施工計画や現場の管理体制に従って責任者へ報告し、必要な確認を行います。すでに注入した場合は、対象杭、施工時刻、注入量、使用バッチなどを整理します。
重要なのは、施工記録の数字を後から帳尻合わせすることではありません。
施工中の異常を早く見つけ、どこまで影響している可能性があるのかを追跡できることが、施工管理では重要です。
設備側に原因があるのであれば設備を確認し、材料計量に原因があるのであれば計量工程を確認します。原因を特定しないまま数字だけ修正すると、同じ問題が再び起こる可能性があります。
その日の施工記録には、異常が発生したことだけでなく、どのような確認を行い、どの時点で正常状態へ戻ったのかまで残しておくと、後日の確認がしやすくなります。
杭番号を軸に施工記録をつなげる
杭打ちの施工記録には、配合以外にも多くの情報があります。
杭芯位置、施工開始時刻、掘削深度、支持層に関する確認、杭建込み、施工終了時刻、セメントミルクのバッチ、注入量、写真などです。
これらを別々の帳票として保存するだけでは、後から一つの杭の履歴を確認するときに時間がかかります。
そこで、杭番号を共通の軸として記録をつなげます。
ある杭番号を確認すれば、その杭をいつ施工し、どのバッチのセメントミルクを使用し、どれだけ注入し、どの写真が対応するのかを追える状態が理想です。
杭本数が多い現場ほど、この整理が重要になります。
施工中は担当者が各杭の位置を把握していても、数か月後に図面と大量の写真だけを見て、どの写真がどの杭だったかを正確に判断することは難しくなります。
写真にも杭番号や施工時刻を関連付けておけば、確認しやすくなります。
また、記録はできるだけ施工時点で残すことが大切です。
作業終了後にまとめて思い出しながら記録すると、バッチ番号や時刻の順序を取り違える可能性があります。現場の負担を考慮しながら、記録項目を整理し、施工中に無理なく残せる仕組みにする必要があります。
記録の目的は帳票を増やすことではありません。
後から「この杭はどの条件で施工されたのか」という質問に対して、必要な情報を追跡できる状態をつくることです。
LRTK Phoneで杭位置と施工記録を整理する
杭番号を軸に施工記録を整理するとき、位置情報を加えることで現場との対応関係をさらに把握しやすくなる場合があります。
そのための選択肢として活用できるのがLRTK Phoneです。
LRTK Phoneを使って現場の位置情報を取得し、杭位置や写真、施工記録と関連付けておけば、杭番号だけで管理する場合よりも、現地のどの位置に関する記録なのか確認しやすくなります。
たとえば施工前に対象杭の位置を確認し、その杭について施工時の記録や写真を整理しておくと、後日記録を確認するときにも図面と現場位置を対応させやすくなります。
セメントミルクの配合確認写真についても、単にミキサーや計量表示を撮影するだけでは、その写真がどの杭の施工に対応するのか分からなくなることがあります。
杭番号、撮影時刻、施工位置、バッチ番号などを関連付けて整理することで、施工記録としての追跡性を高めやすくなります。
ただし、LRTK Phoneを利用すればセメントミルクの配合管理そのものが不要になるわけではありません。
配合については、設計図書、施工計画、配合指示、計量値、設備状態、品質確認などを現場の管理方法に従って確認する必要があります。LRTK Phoneは、それらの施工情報へ位置という軸を加え、現場と記録を結び付けるために活用するものです。
また、高精度なGNSS測位を利用する場合でも、測位環境への配慮が必要です。杭打ち機、大型車両、建物、仮設構造物などによって上空視界が制限される場所では、測位状態が影響を受ける場合があります。
取得した位置情報を利用する際には、測位状態を確認し、必要に応じて既知の位置との整合を確認しながら記録することが重要です。
杭打ちが完了すると杭の多くは地中へ入り、施工中に確認できた情報を後から目視で再確認することは難しくなります。だからこそ、施工時点で杭位置、配合、注入量、写真、施工時刻などを整理しておく意味があります。
セメントミルクの配合記録を単独で保存するのではなく、現場の位置や杭番号と一緒に管理することで、施工記録全体をより利用しやすい形にできます。
まとめ
杭打ちでセメントミルクの配合ミスを防ぐためには、一枚の配合表を確認して終わりにするのではなく、異なる情報を相互に照合する管理が重要です。
一つ目は、設計図書、施工計画書、現場で使用する配合指示の照合です。最新版の条件が正しく現場へ反映されているか、対象杭と使用する条件が一致しているかを確認します。
二つ目は、配合計算、計量値、実投入量の照合です。計算書に正しい数字が書かれていても、実際の投入量が一致しなければ計画した配合にはなりません。設備設定だけでなく、実際の計量表示まで確認することが大切です。
三つ目は、設備設定、残水、練混ぜ状態の照合です。洗浄水や前バッチの残液が設備内に残っていれば、配合表どおりに材料を投入しても実際の状態が変わる可能性があります。始業時、洗浄後、配合変更後、長時間停止後は特に注意が必要です。
四つ目は、品質確認、注入記録、材料使用量の照合です。製造したセメントミルクがどの杭へ使用され、どれだけ注入されたのかを記録し、一日の材料使用量とも照らし合わせます。
さらに、根固め用と杭周用など異なる目的のセメントミルクを扱う場合は、条件変更時の取り違え防止が重要です。数字や略号だけで伝えず、用途、杭番号、切替時刻まで明確にします。
特に初回バッチ、配合変更時、洗浄後、長時間停止後、担当者交代時は配合ミスが入り込みやすい変化点です。これらを「新しい初回」と考え、配合指示から実投入量まで改めて確認すると、誤った状態が複数バッチへ続くリスクを抑えやすくなります。
そして、施工後に追跡できるよう、杭番号を軸にバッチ番号、配合記録、注入量、施工時刻、写真などを結び付けておくことも欠かせません。杭打ちは完成後に地中の施工状況を直接確認しにくいからこそ、施工中に残す記録が重要になります。
杭位置と施工記録をさらに分かりやすく結び付けたい場合には、位置情報を取得できるLRTK Phoneの活用も有効です。配合管理そのものは設計図書や施工計画に基づいて確実に行い、その記録に位置情報を加えることで、どの杭についての施工記録なのかを後から追いやすい管理につなげられます。