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杭打ちで吊りワイヤーの損傷を防ぐ5つの使用前確認

杭打ちで吊りワイヤーの使用前確認が重要な理由

杭打ち工事では、既製コンクリート杭や鋼管杭、施工機械の部材、吊り治具など、重量があり細長い物をクレーン等で扱う場面があります。長尺の杭は、重量だけでなく重心位置、吊り点、建て起こし中の姿勢変化、風による振れを考慮しなければなりません。地面に横置きした杭を立て起こす作業では、杭の姿勢が変わるにつれて、吊りワイヤーに作用する力の向きや各脚への荷重配分も変化します。

現場で吊りワイヤーと呼ばれる玉掛け用ワイヤロープは、多数の素線をより合わせた構造です。柔軟に曲がる一方、キンク、局部的なつぶれ、鋭い角への接触、繰り返し摩耗、腐食などによって性能が低下するおそれがあります。表面が一見きれいでも、素線切れ、径の減少、よりの乱れ、アイ部や圧縮止め部の変形があれば、健全なものと同じ条件で使用できるとは限りません。

前回問題なく使用できたことも、今回の使用可否を保証するものではありません。前回の作業で杭と地面の間に挟まれた、角部へ強く当たった、地面を引きずった、吊り荷が急回転した、泥水が付着した、保管中に雨水や重量物の影響を受けたという履歴があれば、次の使用前に状態が変わっている可能性があります。厚生労働省が公表する災害事例でも、玉掛け用ワイヤロープを作業開始前に点検し、キンクや型崩れがあるものを使用しないことが再発防止策として示されています。([あんぜんサイト][1])

使用前確認では、外観だけでなく、当日の吊り荷に対する能力、吊り角度、掛け方、金具との組み合わせまで確認します。複数本で吊る場合、吊り荷重量を単純に本数で割った値が各脚の張力になるとは限りません。重心の偏り、脚長差、吊り点の高さ、吊り角度により、一部の脚へ荷重が集中することがあります。

また、使用前の目視確認と、法令、社内基準、施工計画、製造者情報に基づく定期点検は役割が異なります。作業直前に見るだけで定期点検を省略してよいわけではなく、定期点検済みだから当日の確認が不要になるわけでもありません。異常の判断に迷う場合は、試し吊りで性能を確かめようとせず、使用を保留して、玉掛け用具の管理責任者や適切な知識を持つ者へ確認することが基本です。

確認1 吊り荷に適した仕様と使用荷重かを確認する

一つ目は、吊りワイヤーの仕様と能力が、当日の杭、吊り方、使用環境に適合しているかを確認することです。外観に異常がなくても、必要な使用荷重を満たさないものは使用できません。杭本体の種類、長さ、単位重量、全重量、重心位置、吊り点、建て起こし方法、使用本数、吊り角度を施工計画や作業手順と照合します。

吊り荷重量には、杭本体だけでなく、吊り治具、連結金具、仮設部品、杭に残った土砂や水など、実際に一緒に持ち上がるものを含めて考えます。搬入された杭の規格や長さが計画と異なる場合は、以前の吊り具選定をそのまま流用せず、重量と重心を確認し直します。重量が推定にとどまる場合は、根拠のない概算で進めず、図面、出荷資料、計量記録など確認可能な情報を用います。

吊りワイヤーについては、径、構成、長さ、端末形式、識別番号、使用荷重または使用条件を、管理台帳や表示と照合します。表示が読めない、管理番号を追えない、仕様や能力を確認できないものは、見た目が似ているという理由だけで選びません。別用途のワイヤロープや、履歴が不明なものが混在しないように、使用可能品、点検待ち品、使用禁止品を区分します。

複数本で吊る場合は、各脚にかかる張力を吊り角度込みで確認します。ワイヤーが水平方向へ開くほど、各脚の張力は大きくなる傾向があります。吊り角度の表し方は資料や製造者によって、脚と鉛直線の角度、脚間角度などが使われるため、数字だけを見て解釈しないことが重要です。採用する計算方法、角度の定義、荷重分担の前提を統一し、製造者が示す使用条件を超えないようにします。

長尺杭では、重心のずれや吊り点の高さの差により、一部の脚が先に張ることがあります。地切り前にたるみをゆっくり取り、全脚が予定した位置で張り始めるかを確認します。ただし、地切りは能力が不明なワイヤーを試験するための工程ではありません。仕様と外観の確認を終えたうえで、吊り荷の安定と掛け方を最終確認する工程です。

杭を横置きから立て起こす場合は、開始から建て込み姿勢までの動きを想定します。途中でワイヤーが継手、突起、吊り治具の縁へ移動しないか、保護材がずれないか、補助吊り側の荷重が抜ける過程で急な衝撃が生じないかを確認します。作業途中で吊り点や吊り方を変更する場合は、変更後の荷重条件を改めて確認します。

フック、シャックル、リンクなどとの組み合わせも能力確認の一部です。ワイヤーのアイに対して金具が小さすぎると曲げが局部化し、大きすぎると正しい受け部へ収まらない場合があります。金具単体の使用荷重だけでなく、荷重方向、ピン径、アイとの接触状態、横荷重の有無を確認します。計画と異なる吊りワイヤーや金具へ交換した場合は、交換品について最初から照合をやり直します。

確認2 キンクやつぶれなどの変形を確認する

二つ目は、ワイヤー全長にキンク、つぶれ、扁平化、よりの乱れ、波打ち、局部的な径変化がないかを確認することです。可能な範囲で明るく安全な場所へ広げ、巻いた状態の外側だけではなく、少しずつ向きを変えながら全周を見ます。泥や付着物が異常を隠している場合は、素線を傷つけない方法で確認できる状態にします。

キンクは、輪ができた状態で引っ張られたり、ねじれたまま張力が加わったりしたときに生じやすい変形です。外観を手で伸ばして直線状に見せても、素線やストランドの並び、内部の応力状態が元に戻るわけではありません。キンクが確認されたワイヤロープは、外見を整えて再使用するのではなく、使用禁止基準に従って隔離します。

局部的なつぶれや扁平化は、杭と地面の間への挟み込み、車両や重機による踏み付け、狭い金具部での圧迫などで発生します。円形に近い断面が崩れると、素線やストランドの荷重分担が変わるおそれがあります。つぶれを見つけた場合は、その一点だけでなく前後のよりの乱れ、素線切れ、径の変化も確認します。

ストランドが外側へ浮く、かご状に膨らむ、より目が開く、局部的に細くなるといった状態にも注意が必要です。吊り荷の急な回転や、ねじれを拘束した状態での荷重負担が原因となる場合があります。前回の作業で杭が回転した、ワイヤーが金具に噛み込んだ、急停止したという履歴があれば、該当箇所を重点的に確認します。

径を測る場合は、ノギス等を使い、定めた位置と方向で測定します。押しつぶして小さく測ったり、山と谷を不統一に測ったりすると、記録を比較できません。公称径、初期測定値、過去の点検値と照合し、法令上の使用禁止基準と、製造者または現場で定めたより厳しい管理基準の双方を確認します。

アイの付け根、シンブルに沿う部分、圧縮止め部の直近は、曲げや接触が集中しやすく、直線部より見えにくい箇所です。金具を外せる状態で内側まで確認し、見えない部分を推測で済ませません。疑わしい変形がある場合は、少しだけ荷重をかけて様子を見るのではなく、使用前の段階で取り外します。

確認3 素線切れや摩耗や腐食を確認する

三つ目は、素線切れ、摩耗、腐食、熱影響を確認することです。ワイヤロープは多数の素線で構成されるため、一部が切れても直ちに全体が分離するとは限りません。そのため、突出した素線が少ない、まだ形を保っているという理由で軽視しないことが大切です。

クレーン等安全規則第215条では、玉掛けに使用するワイヤロープについて、ワイヤロープ一よりの間で素線数の10パーセント以上が切断しているもの、直径の減少が公称径の7パーセントを超えるもの、キンクしたもの、著しい形崩れまたは腐食があるものを使用してはならないと定めています。厚生労働省の玉掛け作業の安全に係るガイドラインに示された点検判定では、素線切れ、摩耗量、キンク、変形、さび・腐食、アイ部、編み込み部を確認し、直径減少については公称径の7パーセント未満であることを判定基準としています。これらは最低限の法令・行政上の基準として扱い、製造者や現場の基準がより厳しい場合は、その厳しい側に従います。([都道府県労働局所在地一覧][2])

素線切れを確認するときは、全長を目視し、必要に応じて適切な手袋を用いて安全に触診します。素手で強くなぞると、切れた素線でけがをするおそれがあります。発見した場合は、本数だけでなく、一より間の範囲、発生位置、短い範囲への集中、アイの付け根や杭との接触位置との関係を確認します。

突出した素線を工具で切って見えなくしても、素線切れという損傷自体は解消しません。切断や折り取りを現場判断で行うと、異常位置を追えなくなることもあります。使用可否は法令、ガイドライン、製造者基準、社内基準に基づいて判断し、基準確認前に再使用しません。

摩耗は、素線表面が平らになる、局部的に強い光沢が出る、径が減るといった形で現れます。地面を引きずる、杭の同じ角へ繰り返し当てる、ワイヤー同士をこすらせると、特定箇所に摩耗が集中します。泥の中の砂や砕石も研磨材のように働くため、泥の上だったから傷まないとは判断できません。

腐食は、赤さびの広がり、より目へのさびの入り込み、粉状のさび、孔食のような局部腐食、潤滑状態の低下などとして現れます。表面を清掃して色が薄くなっても、断面減少や内部腐食が回復するわけではありません。曲げたときにより目からさび粉が出る、素線間の動きが不自然に硬いなどの兆候があれば、内部状態も含めた判断が必要です。

溶接や切断作業の近くで保管した場合は、火花、高温金属片、アーク痕、局部的な変色や溶け跡がないかを確認します。熱影響の程度を外観だけで断定できない場合は使用を保留します。玉掛け用ワイヤロープを溶接電流の経路にしないよう、作業区画と保管位置も管理します。

確認4 端末部と吊り金具の状態を確認する

四つ目は、アイ、シンブル、編み込み部、圧縮止め部と、フック、シャックル、リンク、杭側の吊り治具を確認することです。ワイヤー本体が正常でも、端末部や金具に異常があれば、荷重経路全体として安全とはいえません。

アイ部分では、つぶれ、よりの乱れ、内周の摩耗、素線切れ、形状の偏りを確認します。外側だけでなく、フックやシャックルに接触する内側を見ます。編み込み部がある場合は、緩み、抜け、形崩れがないかを確認し、現場で独自に編み直したり、形を整えたりしません。

シンブルは、割れ、開き、つぶれ、ずれ、脱落、著しい摩耗がないかを確認します。シンブルが変形すると、ワイヤーが金具へ直接当たり、狭い範囲に曲げと摩耗が集中する場合があります。土砂や金属片の噛み込みも取り除き、ワイヤーを傷つけていないかを見ます。

圧縮止め部では、合金部の摩耗、傷、変形、広がり、ワイヤーの抜け出しを確認します。厚生労働省のガイドラインは、圧縮止め部について、合金の厚みが元の厚みの3分の2以上あり、著しい傷がないこと、著しい変形や広がりがないことを判定基準にしています。([厚生労働省][3]) 現場でたたく、加熱する、溶接する、局部的に強く加圧するといった補修は行わず、必要な措置は定められた管理の下で実施します。厚生労働省のガイドラインも、点検結果により補修が必要な場合、加熱、溶接または局所高加圧による補修を行わないよう示しています。

フックでは、口の開き、ねじれ、曲がり、摩耗、き裂の疑い、外れ止め装置の作動を確認します。外れ止め装置を備えたクレーンで荷をつり上げる場合は、その装置を使用する必要があります。([厚生労働省][4]) ただし、外れ止め装置は荷重を受ける受け部ではありません。アイはフックの奥へ正しく収め、先端や外れ止めへ押し付けた状態で吊りません。

シャックルは、本体とピンが正規の組み合わせであること、ピンが所定位置まで入っていること、ねじ部に損傷や土砂詰まりがないこと、本体に開き、縮み、ねじれ、摩耗、き裂がないことを確認します。別のシャックルのピンを流用しません。ワイヤーが片側へ寄る、ピンへ斜めに荷重がかかるなど、製造者が想定しない横荷重が生じる配置も避けます。

杭側の吊り治具や取付部についても、変形、ボルトの緩み、ピンの抜け止め、溶接部の異常、土砂の噛み込みを確認します。クレーンのフックから杭の吊り点までを一続きの荷重経路として見て、どこか一箇所でも仕様不明や異常があれば使用を保留します。

確認5 掛け方と接触箇所と使用環境を確認する

五つ目は、ワイヤーを杭へ掛けた状態で、掛け方、接触箇所、周囲環境を確認することです。保管時に健全だったワイヤーでも、鋭い角へ直接掛ける、地面との間に挟む、ワイヤー同士を交差させると、一回の作業で損傷することがあります。

鋼材の切断面、継手部、補強部、突起、溶接部など、曲率の小さい角へ直接当てないようにします。必要に応じて、吊り荷、ワイヤー、荷重条件に適合する当て物や保護材を用い、巻き上げ中にずれたり抜けたりしないように配置します。柔らかい布を挟めば十分とは限らず、荷重による押しつぶれ、滑り、切断、脱落を考慮して選びます。

ワイヤーが細いピンや小さな曲率で急に折れ曲がっていないかも確認します。曲げが局部化すると、外側素線の負担や摩耗が増えるおそれがあります。フック、シャックル、リンク、吊り治具の寸法がワイヤーに適しているか、アイがねじれず自然な方向へ伸びるかを見ます。

複数本を使用する場合は、ワイヤー同士が交差して強くこすれないようにします。荷重前には離れていても、たるみを取ると中央へ寄ることがあります。杭の建て起こし中に、別のワイヤーや金具へ乗り上げないか、補助吊り側のワイヤーが急に緩んで跳ねないかまで動作を想定します。

杭と地面の間にワイヤーが挟まれている場合は、力任せに引き抜きません。杭を安全に支持し、ワイヤーから荷重が抜けた状態で掛け直します。砕石、金属片、切断くずがある地面へ直接置かず、車両や重機が通る範囲から離した置場を確保します。

杭打ち機のリーダー、配管、足場、アウトリガー、仮設材、架空線などとの干渉も確認します。地切り位置で離れていても、旋回、起伏、巻き上げ、建て起こしによって接触する場合があります。吊り荷の移動経路と退避場所を事前に確認し、障害物を除去できない場合は作業方法を見直します。

長尺杭は風を受けて回転や振れが生じることがあります。風速だけで一律に安全を断定せず、クレーンの取扱説明書、施工計画、作業中止基準、杭の受風面積、周囲条件を照合します。作業床の不陸やぬかるみで玉掛け者が安定した姿勢を取れない場合も、掛け位置のずれや転倒につながるため、足元と杭の置場を整えてから作業します。

掛け終わったら、ねじれ、たるみ、交差、保護材の位置、金具の向き、吊り角度、障害物との距離を確認します。関係者が吊り荷の下や危険範囲から退避したことを確かめ、合図を統一して、ゆっくりたるみを取ります。わずかに地切りした段階で、杭の傾き、ワイヤーの偏り、金具の反転、異音、保護材のずれがあれば、安全な位置へ戻して掛け直します。

使用前確認を確実にする作業手順

使用前確認を確実にするには、担当者ごとの経験だけに任せず、順序と記録項目を統一します。作業前打ち合わせで、当日の吊り荷、吊り方、使用する玉掛け用具、玉掛け作業者、合図者、クレーン運転者、立入禁止範囲、異常時の中止手順を確認します。

最初に施工計画や作業手順と現物の杭を照合し、種類、長さ、重量、重心、吊り点が予定どおりかを確認します。次に、使用予定のワイヤーと金具の識別番号、仕様、使用荷重、点検期限、使用禁止表示の有無を確認します。

その後、安全な場所でワイヤー全長を確認します。キンクやつぶれなどの変形、素線切れ、摩耗、腐食、熱影響、アイ、編み込み、圧縮止め部を順に見ます。外観だけでは判定できない径や摩耗量は、定めた測定方法で確認します。

フック、シャックル、リンク、吊り治具を確認した後、杭へ掛けます。掛けた状態で、角当たり、保護材、ねじれ、交差、脚長、吊り角度、金具の向き、周囲干渉を再確認します。保管時点検に合格していても、掛けた状態に問題があれば作業を進めません。

確認結果は、識別番号、点検日時、点検者、使用作業、異常の有無、対応内容が追えるように記録します。作業途中でワイヤーや金具を交換した場合は、交換品について同じ手順を繰り返します。吊り荷、吊り点、吊り方が変わった場合も、能力と掛け方を確認し直します。

異常を発見したときの対応

異常を発見した場合は、荷重をかけずに使用を中止します。軽微に見える変形を地切りで確かめたり、異音が出るか試したりしません。使用禁止品は使用可能品から隔離し、誰が見ても分かる表示を付け、決められた場所へ移します。

異常箇所について、管理番号、発見日時、発見者、位置、種類、推定原因、対応を記録します。写真を残す場合は、管理番号、全体、異常位置が分かる中景、異常部の拡大を対応させます。写真だけで使用可否を断定せず、必要な現物確認を行います。

判断に迷う場合は、管理責任者や適切な知識を持つ者へ確認し、基準が確認できるまで使用しません。別の適合品へ交換するときも、交換品の仕様、能力、外観、端末、金具との組み合わせを確認します。

変形部をたたいて戻す、加熱する、溶接する、圧着部を独自に締め直す、突出素線を隠すといった処置を現場判断で行いません。廃棄と決まったものは、誤って再使用できない状態とし、使用停止から廃棄までの担当と保管場所を明確にします。

また、交換だけで終わらせず、原因を確認します。杭の角、吊り治具の寸法、保護材のずれ、地面への引きずり、挟み込み、吊り荷の回転、保管時の圧迫が原因なら、同じ方法で交換品を使うと再発します。作業手順、置場、保護方法、吊り点、金具選定を見直します。

使用中と使用後に吊りワイヤーを傷めない管理

使用中は、たるみをゆっくり取り、急激な巻き上げや急停止を避けます。杭が地面や仮設材へ引っ掛かった状態で巻き上げを続けると、引っ掛かりが外れた瞬間に衝撃荷重が生じるおそれがあります。周囲を確認し、無理なく地切りできる状態を整えます。

吊り上げた杭が想定以上に傾いた場合は、作業員が吊り荷へ近づいて手で直そうとせず、安全な位置へ降ろします。荷重がかかったワイヤーや金具を触らず、吊り点、脚長、重心、掛け位置を確認してからやり直します。

旋回、起伏、巻き上げは合図者と運転者が連携し、吊り荷の振れを抑えます。杭の姿勢が変化する間も、ワイヤーが継手へ移動していないか、保護材がずれていないか、金具が反転していないかを確認します。異常な動きを見つけた場合は、無理に工程を続けません。

杭を降ろすときは、敷材と置場を整え、ワイヤーを杭の下へ挟まないようにします。杭が安定し、ワイヤーから荷重が完全に抜けたことを確認してから外します。荷重が残った状態で強く引き抜くと、つぶれや摩耗の原因になります。

使用後は、泥、砂、セメント系材料を含む付着物、水分を確認し、製造者や管理手順に適合する方法で清掃と乾燥を行います。金属工具で強く削る、火で乾かす、適合不明の薬品を使うなど、新たな損傷を与える方法は避けます。

保管は、雨水、泥、溶接火花、車両通行、重量物の落下や圧迫を避け、床へ直接置かず、過小な曲げ径で巻かない方法とします。使用可能品、点検待ち品、使用禁止品を分けます。厚生労働省のガイドラインも、玉掛用具を腐食や損傷を防止する適切な方法で保管するよう示しています。

使用後点検では、当日杭や金具へ接触した箇所を重点的に見ます。新たな光沢、素線の浮き、つぶれ、径変化、保護材の破損があれば記録します。引っ掛かり、強い衝撃、挟み込み、予想外の回転があった場合は、外観に目立つ異常がなくても履歴を残し、必要な追加点検を行います。

杭打ち作業の記録を安全管理に生かす方法

吊りワイヤーの記録は、点検済みという一言だけでなく、どの用具を、いつ、どの杭、どの吊り方で使ったかを追える内容にします。管理番号、仕様、点検日、点検者、使用日、使用作業、異常、処置、交換理由を整理します。

同じ位置に摩耗が繰り返される場合は、ワイヤーだけでなく、杭の角や吊り治具の形状、保護材の位置に原因がある可能性があります。特定作業後に泥の付着や腐食が増える場合は、清掃、乾燥、保管の方法を見直します。交換理由を、キンク、摩耗、腐食、端末異常、識別不明などに分類すると、改善すべき工程を把握しやすくなります。

写真記録では、管理番号と現物を対応させ、全体、異常位置、拡大を一組として残します。寸法を記録するときは、測定位置、測定方向、測定器、値、比較基準をそろえます。条件が異なる測定値を並べても、径減少の傾向を正しく判断できません。

記録は、次の作業前に現場で参照できる状態にします。紙と電子データが分散している場合は、管理番号から最新の判定と履歴へたどれるようにします。複数班が同じ用具を使う現場では、交代時に使用中止情報が確実に伝わる仕組みが必要です。

定期点検の時期と担当者を定め、点検結果に応じて必要な措置を講じることは、厚生労働省のガイドラインにも示されています。 使用前確認、定期点検、使用後確認を役割ごとに運用し、どれか一つで代替しないことが重要です。

まとめ

杭打ちで吊りワイヤーの損傷を防ぐには、外観を短時間見るだけでなく、吊り荷の条件、ワイヤーの能力、変形、素線切れ、摩耗、腐食、端末部、金具、掛け方、周囲環境を順に確認する必要があります。

最初に、杭と治具を含む吊り荷重量、重心、吊り点、使用本数、吊り角度を整理し、識別できる適合品を選びます。次に、全長を広げてキンク、つぶれ、よりの乱れ、径変化を確認します。素線切れや径減少については、クレーン等安全規則第215条の使用禁止基準を最低限として確認し、製造者や現場の基準がより厳しい場合はその基準に従います。

アイ、シンブル、編み込み、圧縮止め部と、フック、シャックル、吊り治具も荷重経路の一部です。掛けた後は、角当たり、保護材、交差、ねじれ、金具の向き、周囲干渉を再確認し、ゆっくり地切りします。異常があれば安全な位置へ戻し、使用を中止します。

異常品は隔離して誤使用を防ぎ、現場判断による加熱、溶接、たたき直し、局部高加圧などを行いません。損傷原因を調べ、吊り点、治具、保護材、置場、保管方法、操作方法まで改善することで再発防止につながります。

さらに、管理番号、使用履歴、点検結果、異常位置、交換理由を記録し、次の作業前に参照できるようにします。杭打ちの施工写真や位置情報、点検記録を現場で整理する場合は、LRTK Phoneで記録を取得し、LRTKクラウドで共有・管理し、必要に応じてLRTK点群CADで点群や現場情報と関連付けて確認する方法があります。導入にあたっては、対象業務、使用環境、運用手順を確認し、吊りワイヤーの使用可否そのものは法令、点検基準、製造者情報、現場の安全管理体制に基づいて判断することが重要です。

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