道路や駐車場などの舗装工事では、設計どおりの厚さが確保されているかを確認することが、施工品質を管理するうえで重要です。舗装厚が不足すると、交通荷重に対する耐久性や舗装構造全体の性能に影響する可能性があります。一方で、舗装が完成すると下層が見えなくなるため、表面を確認するだけでは実際の層厚を把握できません。
従来の舗装厚管理では、指定箇所の高さ測定やコア採取などによって厚さを確認する方法が用いられてきました。しかし、限られた測定点だけでは、施工範囲全体の厚さのばらつきや局所的な不足を把握することが難しい場合があります。
そこで活用が進んでいるのが、3D計測による施工前後の点群比較です。舗装前の下地表面と舗装後の仕上がり面をそれぞれ3次元データとして取得し、同じ位置の高さを比較することで、舗装厚の分布を面的に把握できます。
ただし、点群を重ね合わせるだけで正確な舗装厚が求められるわけではありません。計測精度、座標の整合性、施工段階、表面の凹凸などによって結果が変わるため、適切な測定計画とデータ処理が必要です。
この記事では、舗装の厚さを3D計測で確認するための5つの実務手順を解説します。施工前後の点群取得から厚さ分布の算出、厚さ不足の疑いがある箇所の抽出、現地確認、施工記録への活用まで、現場で押さえるべきポイントを具体的に紹介します。
3D計測で舗装の厚さを把握する基本原理
舗装の厚さを3D計測で把握する基本的な考え方は、施工前後の表面の高さの差を求めることです。
例えば、舗装前の路盤表面の標高が10.000m、舗装後の表面の標高が10.060mだった場合、同じ平面位置で比較した鉛直方向の高さの差は60mmです。施工前後に下地の変形などがなく、対象とする舗装層の上下境界を正しく計測できていれば、この高さの差を当該層の厚さとして扱うことができます。
3D計測では、地表面や舗装面を多数の3次元座標として記録します。この座標の集合が点群データです。各点には平面位置と高さの情報が含まれるため、施工前後で同じ位置の高さを比較することによって、舗装厚の分布を推定できます。
従来の点測定と比較した大きな特徴は、舗装範囲を面的に確認できることです。施工延長が長い道路や幅の広い駐車場でも、必要な範囲を適切な密度で計測すれば、特定の測点だけでは見つけにくかった局所的な高さの変化を把握しやすくなります。
例えば、道路中央部では計画厚さが確保されていても、路肩側や排水施設の周囲で厚さが不足している可能性があります。こうした箇所を高さの差分データから抽出できれば、追加測定や現地確認の対象を絞り込めます。
また、厚さの数値を平面上に色分け表示することで、施工範囲全体の傾向を直感的に確認できます。厚い部分と薄い部分を区別できるため、施工管理者だけでなく、現場作業員や品質管理担当者との情報共有にも役立ちます。
ただし、ここで重要なのは、完成後の舗装表面だけを計測しても、舗装厚は直接わからないという点です。完成した表面の高さが設計値と一致していても、下地の高さが設計と異なれば、実際の舗装厚が不足している可能性があります。
そのため、信頼性のある厚さ評価には、施工前の下地表面と施工後の舗装表面の両方を記録することが基本になります。
さらに、舗装が複数の層で構成されている場合には、各層の施工前後を区別する必要があります。路盤、基層、表層などの境界面をそれぞれ計測できれば層別の厚さを評価できますが、最下層と完成面だけを比較しても、途中の各層の厚さまでは特定できません。
3D計測によって得られる厚さは、原則として対応する上下の表面間の幾何学的な高さの差です。材料の密度、締固め状態、内部空隙などを直接測定するものではありません。また、設計上の鉛直厚さと、傾斜面に直交する方向の厚さは異なる場合があります。
厚さの算出方向や評価方法を事前に統一しておくことが、信頼できる測定結果を得るための出発点になります。
手順1:測定対象と厚さの判定条件を決める
最初に行うのは、計測機器を準備することではなく、どの舗装層の、どの範囲について、何を厚さとして評価するかを明確にすることです。この条件が曖昧なまま点群を取得すると、データは残っていても施工後に比較できないという問題が起こります。
まず、施工図面や設計データから舗装構成を確認します。下層路盤、上層路盤、基層、表層など、工事ごとに対象層と設計厚さは異なります。新設舗装と既設舗装の切削・打換えでは、比較すべき施工前の面も異なります。例えば、表層の厚さを確認するなら、表層を敷き均す直前の基層上面と、表層の締固め後の上面を比較する必要があります。
切削オーバーレイの場合は、切削後の路面を下側の基準面とし、新しく舗設した面との高さの差を確認する考え方が基本になります。ただし、施工途中で局所的な補修や不陸整正を行った場合には、その工程によって比較対象の面が変わります。作業履歴を確認し、どの時点の表面を基準にするかを決めてください。
次に、計測範囲を決めます。道路延長と幅員だけでなく、路肩、交差点の隅部、マンホール周辺、排水施設付近、既設舗装との接続部分など、厚さの変動が生じやすい位置も含めて考えます。ただし、段差や構造物の近傍は点群の欠測や誤認識が生じやすいため、一般の舗装面とは別の確認方法を併用する計画が有効です。
厚さの判定基準も、計測前に明確にしておきます。設計厚さそのものと、出来形管理上の規格値や判定条件は同じとは限りません。個別の測定値、平均値、測定密度、対象工種、施工規模などに応じて扱いが変わる場合があります。発注者の仕様書や当該工事に適用される施工管理基準を確認し、現場独自の注意喚起値と正式な合否判定を混同しないことが大切です。
計測精度についても逆算して検討します。例えば、数mm程度の不足を発見したいのに、施工前後の高さの差にそれ以上の不確かさが残る方法を使っていては、判定結果に十分な信頼性を持たせられません。使う計測機器の公称性能だけでなく、現場条件を含めた実測精度が目的に合うかどうかを確認します。
この段階で、使用する水平座標系、標高の基準、工事基準点、点群の保存形式、測定時期、責任者、再測定が必要となる条件まで取り決めておくと、後の工程が円滑になります。特に施工前の計測は、舗装を始めた後では取り直せない場合があります。測定計画を工程表に組み込んでおくことが、厚さ管理の成否を左右します。
手順2:舗装前の下地を3D計測する
次に、舗装厚の下側の境界となる面を3D計測します。ここで取得するデータは厚さ算出の基準となるため、施工後の計測と同等か、それ以上に慎重な管理が求められます。
計測するタイミングは、対象層を施工する直前が基本です。下地の整正や締固めが完了し、施工上の最終状態になった段階で記録します。整正前に計測した高さを使うと、その後の整正や補修による変化が舗装厚に含まれてしまう可能性があります。工程に変更があった場合は、下地の再計測が必要か判断してください。
計測前には、表面の状態を確認します。砕石の大きな浮き、土砂の堆積、資材の仮置き、測量の妨げになる機械や車両などがあると、実際の下地ではないものを点群として取り込むおそれがあります。水たまりがある場所や反射状態の悪い場所も、使用する計測方式によってはデータが不安定になります。安全を確保したうえで、可能な範囲で不要物を取り除きます。
3D計測には、地上型のレーザー計測、移動しながら取得するレーザー計測、写真を利用した3次元復元など、複数の方法があります。広い舗装面を扱う場合には測定速度が重要ですが、層厚管理では特に高さ方向の精度が重要です。作業の速さだけで計測方式を選ばず、対象面の材質、形状、必要な測定密度、確認できる実測精度を踏まえて判断します。
現場での作業では、計測範囲が連続するように取得経路を組み立てます。端部や障害物の陰は欠測しやすいため、取得方向を変えたり、近接して補足計測したりすることが有効です。下地面を点群として広く取得できても、必要な場所にデータがなければ後から厚さを算出できません。
また、施工前後を共通の座標系で扱えるよう、工事基準点や確認点を確保します。計測時に用いた基準点の識別情報、計測日、計測範囲、機器設定、標高の取り扱いを記録しておきます。衛星測位を利用する場合は、周辺の建物や樹木、構造物などによる受信環境の悪化にも注意が必要です。
点群取得後は、その場で簡単な品質確認を行います。範囲に抜けがないか、表面が不自然に波打っていないか、周囲の構造物や確認点の高さに食い違いがないかを確かめます。必要に応じて独立した高さ測定を行い、点群から得られる値と比較します。
重要なのは、取得したファイルを保存することだけで作業を完了させないことです。舗装が始まる前に下地の計測結果を確認し、不足箇所があれば補測する運用にしておくと、施工後に比較できない範囲が生じるリスクを減らせます。
手順3:舗装後の仕上がり面を3D計測する
施工前の下地データを取得したら、対象となる舗装層の施工後に上側の境界面を3D計測します。ここで注意したいのは、敷き均し直後の状態と、締固め後の完成状態を区別することです。
一般に、敷き均した材料は締固めによって高さが変化します。したがって、設計上の完成厚さを確認する目的であれば、所定の施工工程が完了し、管理対象として定めた状態の表面を測る必要があります。敷き均し時の厚さ管理に利用するデータと、完成後の出来形確認に利用するデータを混在させないことが重要です。
施工直後の舗装面は、材料の種類や温度、表面状態によって計測条件が変わります。安全管理上の立入制限を守り、測定に適した時点で取得します。舗装面に残った小石、泥、資材、タイヤに付着した異物などを表面の一部として取り込むと、厚さを実際より大きく推定する原因になります。
施工後も、施工前と同じ水平座標系および標高基準を使います。現場で手軽に取得できる点群であっても、基準が異なる2つのデータをそのまま比較することはできません。異なる機器や測定方式を組み合わせる場合は、座標の整合性と高さ精度を個別に確認する必要があります。
可能であれば、施工前に設けた確認点のうち、施工の影響を受けない位置を引き続き利用します。工事によって移動する仮設物や施工中に高さが変わり得る物体を基準にすると、施工前後の位置合わせに誤差が入りやすくなります。基準として利用した点自体が安定しているかも確認してください。
計測範囲は、施工前データと重複する部分を十分に確保します。施工後のデータだけが広くても、施工前の下地が記録されていない場所では厚さの差分を直接求められません。また、舗装の端部は形状が急に変化しやすいため、中央部と同じ方法で一律に計算すると誤差が大きくなることがあります。
施工後に取得したデータについても、欠測、ノイズ、異常な標高変化を確認します。特に光沢のある表面や水分の影響を受けた場所は、測定方式によってはデータが不安定になる可能性があります。不自然な凹凸が見つかった場合には、実際の施工不良なのか、計測上の問題なのかを切り分ける必要があります。
さらに、完成面の高さが時間の経過や追加施工によって変わる現場では、測定時点を明記します。施工前後のデータがあっても、その間に下地の変形、追加の不陸整正、補修などが行われていれば、単純な高さの差が目的の舗装層だけを表すとは限りません。記録写真や日報と照合できるようにしておくと、後から判断しやすくなります。
手順4:施工前後の点群を位置合わせして厚さを算出する
両時点の点群がそろったら、データを共通の座標上に配置し、同じ平面位置で標高を比較します。この処理が厚さ分布を求める中心工程です。
最初に確認するのは、座標系と高さの基準です。施工前の点群がある標高基準で作成され、施工後の点群が別の高さ基準で作成されている場合、見た目では似た形状に重なっていても、厚さの計算値がずれます。水平座標、鉛直座標、単位、必要な変換条件を確認し、同じ位置が同じ座標として表現される状態にします。
次に、施工の影響を受けていない基準点や安定した構造物を利用して、位置合わせの妥当性を確認します。ここで避けたいのは、施工前後で高さが変わった舗装面そのものを、差が小さくなるよう自動的に重ねてしまうことです。そのような位置合わせでは、本来検出すべき厚さの変化まで打ち消されるおそれがあります。比較の基準は、施工によって変化していない位置に置く必要があります。
位置合わせが完了したら、対象範囲をそろえます。施工前後の両方で点群が存在する共通領域を抽出し、車両や資材などの不要な点を除去します。ただし、異常値を除去するときに実際の低い部分まで削ってしまわないよう、除去条件と処理履歴を残すことが重要です。
厚さの算出では、点群の各点を無条件に1対1で結び付ける方法よりも、共通の平面位置に対して上下の表面標高を求める方法が基本となります。例えば、一定の間隔で平面上に格子を設け、各格子位置に対応する施工前と施工後の標高を推定します。そのうえで、施工後の標高から施工前の標高を差し引きます。
計算式は「推定厚さ=施工後の表面標高-施工前の下地標高」です。例えば同じ位置で、施工前の標高が25.120m、施工後の標高が25.186mなら、鉛直方向の高さの差は66mmとなります。設計厚さが70mmであれば、設計値との差はマイナス4mmです。ただし、この数値だけで直ちに不合格とは判断せず、測定の不確かさや適用される判定基準を確認します。
格子間隔を細かくすれば、必ず精度が高くなるわけではありません。元の点群の密度や精度が不足している状態で格子だけを細かくしても、実測していない場所を補間した値が増えるだけです。測定密度、舗装表面の粗さ、現場で検出したい変化の大きさを踏まえて、計算間隔を設定してください。
点群の分布に偏りがある場合、局所的に標高の推定が不安定になります。格子内の代表高さを平均値、中央値、近傍点からの補間値などのどれで求めるかによっても結果が変わります。そのため、計算方法を統一し、データが不足した格子を無理に補間して正常と扱わないことが重要です。
算出した厚さは、平面上に色分けして分布を確認すると実務で利用しやすくなります。設計厚さに近い場所、薄い傾向のある場所、厚い傾向のある場所を区別すると、施工状況を面的に把握できます。一方、色分けの範囲設定によっては小さな変化が極端に見えることもあるため、表示した値と実際の数値を併せて確認します。
なお、ここで求めているのは原則として鉛直方向の標高差です。勾配のある場所では、舗装面に直交する厚さとは一致しません。設計図書がどの方向の厚さを規定しているかを確認し、必要であれば別の幾何学的な評価を行います。異なる計算方向の数値を同じ意味で比較しないことが大切です。
手順5:厚さ不足の疑いがある箇所を抽出し現地確認する
厚さ分布を作成した後は、不足が疑われる場所を抽出し、現地確認につなげます。3D計測の有用性は、単に厚さを数値化することではなく、確認すべき箇所を具体的に示せることにあります。
まず、設計厚さと比較した差分を整理します。例えば、設計厚さ80mmの範囲で、点群から求めた厚さが72mmの場所があれば、設計値より8mm薄いという計算結果になります。しかし、これをそのまま施工不良と断定することはできません。計測精度、表面の凹凸、厚さの評価方法、工事に適用される規格値などを確認する必要があります。
実務上は、単独の格子だけで極端な値が出ているのか、一定の範囲に薄い傾向が連続しているのかを区別すると判断しやすくなります。孤立した極端な数値はノイズや補間の影響で生じることがあります。一方、隣接する複数の格子で同じ傾向が続いている場合には、下地の局所的な盛り上がりや敷き均しのばらつきなど、実際の施工状態に原因がある可能性も考えられます。
厚さ不足の疑いがある範囲を見つけたら、点群の断面表示などで施工前後の高さの変化を確認します。差分図だけを見るのではなく、下地側が高いのか、仕上がり面側が低いのかを分けて考えることで、原因を整理しやすくなります。施工範囲の端部や排水施設周辺では、対象外の構造物を計算に含めていないかも確認してください。
現地で再確認するときには、点群の座標を利用して対象箇所を特定します。平面位置だけでなく、測点、車線、道路中心からの離れ、近くの構造物などを組み合わせて示すと、作業員が同じ場所を確認しやすくなります。位置情報付きの現場写真を併用すれば、どの地点でどのような疑義があったかを記録できます。
必要に応じて、別の計測方法で高さを再確認します。コア採取などによる直接的な厚さ確認が必要となる場合もあります。点群による推定値と直接確認した値が食い違う場合は、単にどちらかを採用するのではなく、計測時点、測定位置、表面の代表高さ、座標の整合性などを見直します。
正式な合否判定や是正の要否は、当該工事の契約条件、施工管理基準、監督職員との協議結果に従って判断します。3D計測で薄い傾向が見つかったことと、規格上の不合格が確定したことは区別する必要があります。
改善が必要な場合には、対象範囲と確認結果を施工記録に残し、次の工程に進む前に対応を検討します。上層の舗装を施工してしまうと、下層の状態を直接確認しにくくなるためです。3D計測を施工途中の管理に組み込むことで、問題の早期発見と手戻りの抑制につなげられます。
3D計測の厚さ判定で見落としやすい誤差と対策
舗装厚の3D計測では、高さの差が数mmから数cmの範囲で問題になることがあります。そのため、地形の大まかな形状を把握する目的で十分な測定精度でも、層厚を判定する目的には不足する場合があります。点群が細かく見えることと、絶対的な高さが正しいことは別の問題です。
施工前と施工後の高さをそれぞれ測る場合、双方の誤差が厚さの結果に影響します。例えば、施工前と施工後の高さ測定に、それぞれ独立したランダム誤差として標準偏差5mmがあると仮定すると、差分の標準偏差は約7.1mmになります。これは分散を合成した場合の計算例であり、実際の精度を示すものではありません。共通の系統誤差がある場合や測定条件が異なる場合には、別の評価が必要です。
特に注意したいのが、高さ基準のずれです。施工前後で異なる基準を使用していたり、座標変換が適切でなかったりすると、計算結果全体が一方向に偏る可能性があります。測定箇所が数多くあっても、共通する高さのずれは平均化だけでは解消しません。施工の影響を受けない確認点で双方のデータを点検することが有効です。
平面位置のずれも厚さ計算に影響します。例えば、横断勾配が5%の面で比較位置が水平方向に10cmずれると、勾配方向のずれだけで高さに約5mmの差が生じ得ます。実際には勾配の向きや面の形状によって影響は異なりますが、傾いた舗装面で厚さを評価する場合には、高さ精度だけでなく水平位置の整合性も重要です。
舗装表面の凹凸も誤差要因です。粗い路盤や骨材のある面は、同じ小さな範囲でも測定点の高さがばらつきます。施工前後で点の密度や照射方向が異なると、表面を代表する高さの求め方が結果に影響します。平均値を用いる場合でも、対象範囲やノイズ除去方法を統一する必要があります。
また、欠測を補間した値を、実際の測定値と同じ信頼度で扱うことは避けてください。車両の陰や障害物の近くにデータがない場合、周辺の値から推定した厚さは不確かになります。欠測範囲を表示し、必要に応じて追加計測の対象とするほうが安全です。
衛星測位を利用する計測方式では、上空の見通しや反射波の影響を受けることがあります。地上型や移動型のレーザー計測でも、機器の設置状態、姿勢推定、観測距離、反射面の条件などに注意が必要です。いずれの方式であっても、製品の仕様に記載された精度を現場全体で無条件に達成できるとは考えず、実際の計測条件で精度確認を行います。
舗装厚が薄いことを検出したい場合には、「どの程度の厚さ不足を、どの程度の確からしさで区別できるか」を考える必要があります。例えば、推定厚さが設計値より3mm小さくても、高さ差の不確かさがそれを大きく上回っていれば、その結果だけで3mmの施工不足があるとは断定できません。逆に、複数の独立した確認方法で同じ場所に明確な不足傾向が認められれば、追加確認の必要性は高まります。
最終的には、点群の取得精度、基準点の検証結果、補間条件、計算方法を一体で管理することが重要です。厚さ分布の見た目だけで判断せず、測定値がどのような条件から得られたかを説明できる状態にしておくことで、確認結果の信頼性が高まります。
出来形管理と施工記録に活かすポイント
3D計測で得られる舗装厚の分布は、現場の品質確認に加えて、出来形管理や施工記録の整理にも活用できます。ただし、現場内の自主的な確認と、発注者に提出する正式な出来形管理資料では、求められる条件が異なる場合があります。
出来形管理への適用を考える際には、対象工種、測定項目、計測技術、精度確認、測定密度、帳票の形式などが、適用する要領や契約条件に合っているかを確認します。3D計測を実施したという事実だけで、従来のすべての検査や品質試験を省略できるわけではありません。点群による面管理が認められる範囲と、別途確認が必要な項目を整理しておくことが大切です。
施工記録には、少なくとも比較した上下の面が何を表しているかがわかる情報を残します。例えば、「基層施工後」と「表層締固め後」といった工程名と日時を明確にしておくと、後で厚さを再計算する際にも対象を間違えにくくなります。座標系、標高基準、使用機器、精度確認の結果、計測担当者、使用したデータの版なども追跡できることが望まれます。
厚さ分布は、全体を一枚の図で示すだけでなく、問題が疑われた位置の詳細な数値や断面データと結び付けると効果的です。平均厚さが設計値に近くても、局所的に薄い部分が存在する可能性があります。逆に、一部に極端な値があるだけで、工区全体が同じ状態だと判断することも適切ではありません。全体傾向と局所的な変化を区別して記録します。
施工中の利用では、日々のデータを次の工程へ引き継げる運用が重要です。下地の計測を担当した人と舗装後の計測を担当した人が異なる場合でも、データの保存先や命名規則、基準点の情報が共有されていれば、施工前後の比較を進めやすくなります。特定の担当者しかデータの意味を理解できない状態を避けることが、継続的な管理につながります。
さらに、異常が見つかった場所の写真、測点、再確認の結果、是正の経緯を関連付けて管理すると、単なる測量成果ではなく、施工品質を説明する記録として活用できます。後日、舗装状態に関する問い合わせがあった際にも、どの工程で何を確認し、どのように対応したかを追跡しやすくなります。
データの保存では、加工後の厚さ分布だけでなく、元の点群や計算条件も保持することが重要です。後から判定条件を変更した場合や、特定地点の計算値を再確認したい場合に、元データが残っていなければ検証できません。共有範囲や保存期間は、工事の情報管理ルールに従って定めます。
よくある疑問と実務上の判断
「施工後の舗装面だけを3D計測すれば厚さがわかるのか」という疑問がありますが、原則として、それだけでは実際の層厚を直接把握できません。完成面と設計面を比較すれば、仕上がり高さの差は確認できます。しかし、施工前の下地が設計どおりの高さである保証がなければ、その差を舗装厚と同一視することはできません。
「舗装前の点群を取り忘れた場合はどうするのか」という場合には、まず施工記録や既存の測量成果から下地の標高を確認できるか検討します。ただし、過去の地形データや設計上の標高は、舗装直前の下地表面を正確に表しているとは限りません。実測した上下の面がそろわない場合は、その制約を明示し、必要に応じて直接測定による確認を検討します。
「厚さ不足は色分け図だけで判断できるのか」という点にも注意が必要です。色分け図は薄い傾向のある場所を発見するために有効ですが、計測誤差や補間の影響も色として表れます。異常な領域を抽出した後に、元の点群、断面形状、確認点、施工記録などを照合して判断する必要があります。
「3D計測を使えばコア採取が不要になるのか」という問いに対しても、一律には答えられません。3D計測で評価できる項目と、直接的な厚さ確認や材料試験が求められる項目は異なります。工事に適用される基準や契約条件によって必要な検査が決まるため、3D計測だけで全てを代替できると考えるのは適切ではありません。
「小規模な補修工事にも使えるのか」という疑問については、測定範囲と求める精度が合っていれば、局所的な舗装補修にも利用する余地があります。ただし、狭い範囲ほど端部や構造物の影響が大きくなる場合があります。必要な範囲を確実に計測できる方法を選び、局所的な詳細測定と組み合わせることが現実的です。
「点群の密度を増やせば厚さの精度も上がるのか」という疑問もあります。点が増えることで形状を細かく表現しやすくなりますが、座標の系統的なずれや高さの基準の誤りは、点数を増やしても解消しません。点群の密度と計測精度を別々に確認することが必要です。
このように、3D計測は舗装厚の確認を効率化する有用な手段ですが、正しく使うためには、何が実測値で、何が推定値で、どこからが追加確認の対象なのかを明確にしておく必要があります。
まとめ:施工前後の記録をつなげて厚さ不足を早期に見つける
舗装の厚さを3D計測で確認するには、施工後の路面を測るだけでなく、施工前の下地を適切な時点で記録し、両方の点群を同じ座標と高さの基準で比較することが重要です。測定対象と判定条件を決め、下地を計測し、仕上がり面を計測し、共通位置の標高差から厚さを求め、薄い傾向がある箇所を現地で確認するという流れが基本になります。
3D計測による面的な厚さ分布は、従来の限られた測定箇所だけでは把握しにくい施工上のばらつきを発見する手掛かりになります。一方、点群から求めた差分には計測誤差や補間の影響が含まれるため、算出値だけで厚さ不足を断定せず、必要な追加計測や検査と組み合わせることが大切です。
施工前後の点群とともに、計測日時、位置情報、現場写真、確認結果、是正履歴を管理しておけば、異常箇所の特定から後日の説明まで一貫して対応しやすくなります。厚さ管理の精度を高めるには、3D計測そのものと同じくらい、測った位置と施工工程を正しく結び付ける記録の仕組みが重要です。
こうした現場記録の整理には、位置情報と結び付いた写真撮影や施工状況の共有を支援するLRTK Phoneも活用できます。3D計測で確認した箇所の位置を記録し、その地点の現場写真や確認内容を関連付けて管理することで、測定結果を現場の判断と施工履歴につなげやすくなります。舗装厚の点群比較による確認と、LRTK Phoneを活用した現場写真・位置情報・施工記録の管理を組み合わせ、施工品質を継続して確認できる体制づくりに役立ててください。