架線撤去作業で感電と落下の危険が高まる理由
架線撤去作業は、電気設備を扱う作業と高所作業が同時に進むため、複数の重大な危険が重なりやすい作業です。通電している架線に接触すれば感電につながるおそれがあり、停電後であっても別系統からの回り込み、誘導電圧、誤操作による再送電などを考慮しなければなりません。一方、高所では作業姿勢が不安定になりやすく、架線や金具を外した反動によって足元を崩す可能性があります。
架線は、単に空中へ張られた電線ではありません。支持線、吊架線、引留金具、がいし、振止め、接続金具、支柱、アンカーなど、複数の部材によって所定の位置に保持されています。線材や支持金具には張力や自重が作用しており、一つの部材を外すことで、それまで分散していた荷重が別の支持点へ移る場合があります。そのため、外したい部材だけを見て作業を進めると、隣接部材の急な移動や支持構造の変形を招くおそれがあります。
特に危険なのが、張力が残った状態で線材を切断する場面です。架線は外観上ほとんど動いていなくても、内部には大きな引張力が作用していることがあります。切断した瞬間に線材の端部が跳ねたり、固定金具が飛散したりすれば、高所作業者の墜落や地上作業者への直撃につながります。長尺の線材は風の影響も受けやすく、切断後に予想外の方向へ振れる可能性があります。
停電に関する認識のずれも大きな危険です。設備管理側では一部区間だけを停電したつもりでも、現場側がより広い範囲を停電区間だと理解していれば、通電部へ接近することになります。架線が複数並んでいる現場では、対象設備の取り違えも起こり得ます。停電したという連絡だけで安全と判断せず、対象設備の識別、現場での検電、法令と設備管理者の手順に基づく短絡接地までを一連の手順として管理することが重要です。
高所作業では、工具を両手で操作するために姿勢が不安定になる場面があります。切断工具や締付工具へ力を加えた際、部材が急に外れると身体が工具を押していた方向へ流れます。足場が狭い、手すりがない、墜落制止用器具の取付位置が不適切といった条件が重なると、小さな反動でも墜落につながりかねません。
地上にも危険があります。撤去材をそのまま落とすと、作業員、車両、建物、線路、道路などへ衝突する可能性があります。線材が地上へ着いた後に跳ね返ることや、巻かれた線材が急に広がることも考えられます。高所だけを危険区域として扱うのではなく、撤去材が動く可能性のある範囲全体を管理しなければなりません。
架線撤去を安全に行うには、感電防止、墜落防止、張力管理、落下物対策、重機との接触防止を別々に考えるのではなく、一つの施工手順として組み合わせる必要があります。実際の作業では、関係法令、設備管理者の規程、施工計画書、作業手順書などを確認し、必要な資格や教育を受けた作業者が責任者の指揮のもとで実施します。
架線撤去を始める前に押さえる安全管理の前提
安全な架線撤去は、現場へ到着してから方法を考えるのではなく、事前調査と施工計画から始まります。まず確認したいのは、撤去する架線の種類、電圧区分、支持方式、対象区間、引留位置、分岐位置、接続されている設備です。架線の名称だけで判断せず、設備番号、支柱番号、図面上の位置、現地表示を照合し、対象物を明確にします。
図面がある場合でも、現地の状態が図面どおりとは限りません。長期間使用されている設備では、改修、増設、仮設、部分撤去などによって、図面と現況が一致していないことがあります。図面に記載のない接続線、接地線、通信線、補助線などが存在する可能性もあるため、現地調査を省略しないことが大切です。
現地調査では、架線だけでなく、支柱やアンカーの状態も確認します。腐食、ひび割れ、変形、傾斜、ボルトの緩みなどがあると、架線を外した際の荷重変化によって支持物が不安定になるおそれがあります。残置する設備へどのような力が残るかを把握し、必要に応じて仮支持や補強を計画します。
作業に必要な資格、特別教育、技能講習、安全衛生教育についても事前に確認します。電気設備、高所作業、足場、揚重設備など、作業内容によって求められる知識や資格は異なります。作業責任者、停電操作の担当者、検電と接地の担当者、高所作業者、地上作業者、合図者、重機操作者などの役割を整理し、担当者の資格や経験を確認します。
使用する工具や機材は、撤去対象に適合している必要があります。切断工具、張力を解放する機材、仮支持用のロープ、荷下ろし用の設備、検電器、短絡接地器具、墜落制止用器具などを点検し、損傷、変形、腐食、作動不良がないことを確認します。検電器については検電性能を、短絡接地器具については取付金具や接地導線の損傷の有無を、その日の使用開始前に確認します。現場で不足が判明してから、代用品を使って作業を続けることは避けます。
天候条件も計画へ反映します。強風時には長い線材やロープが大きく振られ、張力解放や荷下ろしを制御しにくくなります。雨天時には足場や昇降設備が滑りやすくなり、視界も悪化します。雷の接近時には、落雷だけでなく誘導による電気的危険が高まる可能性があります。作業を開始できる条件だけでなく、中止する条件もあらかじめ決めておく必要があります。
地上の立入管理も重要です。架線撤去では、切断した部材が真下に落ちるとは限りません。張力によって横方向へ跳ねたり、風によって振れたりする可能性があります。撤去材の長さ、作業高さ、荷下ろし経路を考慮して立入禁止区域を設定し、第三者が侵入しないよう監視します。
ステップ1 撤去範囲と作業責任を明確にする
最初のステップでは、何をどこまで撤去するのかを明確にします。対象区間の始点と終点、支持点、分岐、引留部、接続部、残置設備との境界を図面と現地の両方で確認します。似た架線が並んでいる場所では、色や高さだけで判断せず、設備番号や接続先をたどって対象を特定します。
長い区間を撤去する場合は、作業区画を分けることが有効です。一度に広い範囲を扱うと、停電区間、接地位置、撤去済み区間、残置区間の把握が難しくなります。支柱間や引留区間など、設備構造に応じた単位で作業を分割し、区画ごとに完了を確認してから次へ進みます。
作業区画を決める際には、架線へ作用している力の流れを考慮します。途中の支持点だけを外すと、残った引留部や支柱へ荷重が集中する場合があります。どの位置で仮支持し、どの方向へ張力を抜き、どの順番で部材を外すかを計画します。
責任区分も明確にします。停電操作を指示する者、停電完了を確認する者、検電を行う者、短絡接地器具を取り付ける者、高所作業を指揮する者、揚重設備へ合図する者、作業終了を判定する者を定めます。一人が複数の役割を担う場合でも、どの立場でどの判断をするかを明確にします。
作業開始条件を共有することも欠かせません。停電操作、再送電防止措置、検電、必要な短絡接地、足場点検、墜落防止設備の確認、立入禁止措置が完了するまで、架線へ触れないことを全員で確認します。作業の進み具合を優先して、一部の条件が整う前に準備作業を始めることは避けます。
地上作業者と高所作業者の配置も計画します。高所作業の直下に地上作業者を立たせないことが基本です。荷下ろし時に地上で線材を誘導する必要がある場合は、落下経路を避け、十分な距離を確保した位置から介錯用のロープなどで制御します。
作業範囲内に道路、線路、建物、機械、第三者の通路がある場合は、必要な規制や養生を行います。撤去材が通行区域へはみ出す可能性があるときは、通行を一時的に止めるなど、作業と周辺利用を分離する方法を検討します。
ステップ2 停電操作と再送電防止を確実にする
架線撤去は、原則として対象設備を停電し、誤って再送電されない状態を確保してから行います。停電操作は、設備管理者が定めた手順に従い、対象回路と開閉装置を照合しながら進めます。架線の撤去担当者が独自の判断で開閉装置を操作してはいけません。
停電範囲を確認する際は、電源がどの方向から供給されているかを把握します。通常の供給方向だけでなく、予備回路、連系回路、自家発電設備、蓄電設備、別系統からの回り込みなどを考慮します。一つの開閉装置を開放しただけで安全だと判断せず、通電する可能性のあるすべての経路を確認します。
停電操作を行った後は、再送電防止措置を実施します。開路に用いた開閉器に対し、作業中の施錠、通電禁止に関する所要事項の表示、または監視人の配置など、法令と設備管理者の規程に基づく措置を講じます。鍵や管理札は、誰が保管し、誰の確認で解除できるのかを定めます。
停電完了の連絡では、対象区間を具体的に伝えます。単に停電完了と伝えるだけでは、隣接区間や別回路も停電していると誤解される可能性があります。対象となる設備番号、区間の始点と終点、操作完了時刻、通電中の隣接設備などを確認し、受信者が復唱して認識を合わせます。
停電区間の近くに通電中の架線が残る場合は、撤去材や工具が接近しないための対策が必要です。線材は切断後に振れることがあるため、作業前の位置だけでなく、最大限動いたときの範囲を想定します。必要な離隔の確保、囲い、絶縁用防護具、監視人の配置など、電圧区分と作業条件に適合する措置を講じます。
重要なのは、停電完了の連絡を受けても、直ちに設備へ触れないことです。停電操作の対象を誤っている可能性や、別の経路から電圧が加わっている可能性が残ります。現地で対象電路を識別して検電し、高圧または特別高圧の電路では短絡接地器具を用いて確実に短絡接地するまでは、架線が充電されているものとして扱います。厚生労働省+1
作業中に停電区間や開閉状態を変更する必要が生じた場合は、作業を中断します。現場作業者を安全な位置へ退避させ、短絡接地の状態や作業範囲を確認してから、改めて停電手続きを行います。口頭の簡単な連絡だけで停電範囲を変更して作業を続けないことが重要です。
ステップ3 検電と接地で電気的危険を抑える
停電操作が完了した後は、現場で撤去対象の電路が無電圧であることを検電によって確認します。検電器は、対象設備の電圧区分や種類に適合したものを使用します。使用前には外観と検電性能を点検し、機器の取扱説明書や設備管理者の手順に従って正常に作動することを確認します。
検電する対象を正しく識別することが重要です。複数の架線が並ぶ場所では、誤って別回路を検電し、撤去対象も無電圧だと思い込む危険があります。設備番号、支持金具、架線の接続先、図面上の位置を照合し、撤去対象そのものを確認します。
検電時は、無電圧が確認されるまで活線として扱います。作業者は定められた保護具や絶縁用具を使用し、身体や工具が不用意に設備へ近づかない姿勢を取ります。検電器の使用方法は機器の仕様と設備管理者の手順に従い、自己流で判断しないことが必要です。
作業範囲が長い場合や、途中に開閉装置や接続部がある場合は、一か所の検電だけで安全を確認できるとは限りません。電気的に分離された区間がないかを確認し、作業範囲と回路構成に応じた位置で検電します。切断によって新たに区間が分かれる場合も、作業手順に応じた確認が必要です。
開路した電路が高圧または特別高圧であった場合は、検電器具で停電を確認したうえで、誤通電、他電路との混触、他電路からの誘導による感電を防ぐため、短絡接地器具を用いて確実に短絡接地します。低圧電路を含むその他の条件では、残留電荷、誘導、電源の回り込みなどを評価し、法令、設備管理者の規程、作業手順に従って必要な措置を講じます。「現場条件に応じて接地する」という曖昧な判断だけで、高圧・特別高圧の短絡接地を省略してはいけません。厚生労働省
短絡接地器具は対象設備に適合するものを使用し、取付金具や接地導線に損傷がないことを確認します。取付位置は、作業区間を保護できるように設定します。両側から通電する可能性がある区間では、作業位置を挟むような短絡接地が必要となる場合があります。具体的な位置や数量は、設備構成、作業内容、管理規程に基づいて決めます。
短絡接地器具の取付順序と取り外し順序は、設備管理者が定めた手順に従います。取付時と取り外し時では安全な順序が異なるため、経験だけで作業しないことが重要です。接地導線が撤去する架線や荷下ろし用のロープと絡まない位置へ配置し、作業中に損傷しないよう保護します。
短絡接地器具を取り付けた後は、接地位置と保護範囲を全員へ伝えます。器具へ識別表示を設け、担当者や取付場所を記録すると、取り外し忘れや他班による誤撤去を防ぎやすくなります。接地位置を変更する必要がある場合は、作業を中断し、責任者の確認を受けてから実施します。
ステップ4 作業床と墜落防止設備を整える
架線撤去では、安定した作業床を確保することが墜落防止の基本です。高さ二メートル以上の箇所で墜落により危険を及ぼすおそれがある作業では、原則として足場などにより作業床を設けます。作業床の設置が困難な場合は、墜落制止用器具を使用させるなど、法令と作業条件に適合する代替措置が必要です。脚立や狭い足場で身体を伸ばし、無理な姿勢のまま線材を切断する作業は避けます。あんぜん情報
足場を使用する場合は、設置状態、固定状態、床材のずれ、手すり、幅木、昇降設備などを点検します。作業床の上に撤去材や工具を置き過ぎると、つまずきや踏み外しの原因になります。必要な物だけを持ち込み、取り外した部材は容器へ回収します。
移動式の作業床を使用する場合は、地盤の強度、傾斜、段差、開口部、埋設物などを確認します。作業床を上昇させる前に、上空の架線や構造物との位置関係を確認し、設備へ接触しないようにします。作業位置を変更する際の移動方法も、使用する設備の取扱条件と現場の規程に従います。
墜落制止用器具を使用する場合は、使用する設備で指定された、または強度が確認された取付設備を確保します。近くにあるからという理由だけで、撤去する架線や強度不明の金具へ取り付けてはいけません。墜落時の荷重に耐えられる取付点を選び、取付位置、ランヤードの長さ、落下距離、下方の障害物を確認します。
墜落制止用器具を装着していても、必要なクリアランスが不足すれば地面や下部構造物へ衝突する可能性があります。取扱説明書と作業計画に基づいて取付位置を決め、移動時にも未接続の状態が生じないよう作業方法を定めます。ランヤードが切断工具、線材、荷下ろし用のロープへ絡まないよう、経路を整理します。
工具の落下防止も欠かせません。高所で使用する工具は、作業を妨げない方法で落下を防止します。取り外したボルト、ナット、金具、切断片を作業床へ置きっぱなしにせず、回収容器へ入れます。小さな部品でも、高所から落下すれば地上作業者へ重大な傷害を与えるおそれがあります。
作業床の直下には人を入れないことを基本とします。荷下ろしのため地上作業者が近づく場合でも、高所作業者が部品を外している最中は退避させます。高所から荷下ろしを始める前に合図を行い、地上側が安全な位置にいることを確認します。
ステップ5 架線の張力を段階的に解放する
架線撤去で最も慎重な判断が必要になるのが、張力の解放です。架線は、径間、温度、線材の種類、支持方式、引留構造などによって異なる張力を受けています。見た目のたるみだけで力の大きさを判断することはできません。
撤去前には、線材がどこで引き留められ、どの支持点へ力を伝えているかを確認します。図面、施工記録、設備仕様、現地の支持状態を照合し、切断や金具の取り外しによって動く可能性がある部材を把握します。腐食や変形が見つかった場合は、予定していない場所から破断する可能性も考慮します。
張力を解放する前に、線材を仮支持します。仮支持は、線材の自重だけでなく、残っている張力や切断後の動きに耐えられるように計画します。作業者が手で保持しながら切断する方法では、予想外の力が発生した際に対応できません。
張力調整部や引留部を操作する場合は、一度に大きく緩めないことが重要です。少しずつ張力を抜き、架線、金具、支柱、アンカーの状態を確認しながら進めます。異音、急な変位、支柱の傾き、金具の変形が見られた場合は、直ちに作業を止めます。
線材を切断する場合は、切断後に端部が動く方向を予測します。作業者は線材の延長方向、たわみの内側、巻き込みや跳ね返りが想定される範囲から外れます。切断工具を操作する者と線材の動きを制御する者の役割を分け、責任者の合図があるまで切断しません。
複数の線材や支持部材が組み合わされている場合は、撤去順序が重要です。吊架線、支持線、補助線、結束線、振止めなどを不用意に外すと、他の線材が移動することがあります。単純に上から順に外すのではなく、荷重が安全に移る順序を検討します。
長期間使用された線材には、曲げやねじれが残っている場合があります。固定を外した瞬間に回転したり、巻き癖によって広がったりする可能性があります。切断端部を身体へ向けず、仮支持や保持設備を利用して挙動を制御します。
張力が解放されたことを確認してから、次の金具や線材を外します。一つの部材を外すたびに、残置設備の状態と仮支持の荷重を確認します。作業速度を優先して複数箇所を同時に外すと、異常が発生した位置や原因を把握しにくくなります。
ステップ6 撤去材を制御しながら荷下ろしする
切断した架線や取り外した金具は、自由落下させず、動きを制御しながら地上へ下ろします。落下させると、地上作業者への直撃だけでなく、周辺設備の損傷、道路や線路への飛び出し、線材の跳ね返りにつながります。
荷下ろし方法は、撤去材の長さ、重量、形状、作業高さ、周辺環境を考慮して決めます。ロープで降ろす場合は、撤去材が途中で抜け落ちないよう確実に保持します。揚重設備を使用する場合は、定格荷重、作業半径、設置地盤、周辺設備との離隔を確認します。
長尺の架線を一点だけで吊ると、端部が大きく振れたり、重心が移動して姿勢が変わったりします。必要に応じて複数点で保持し、介錯用のロープを使って回転や振れを抑えます。介錯用のロープを持つ作業者は、撤去材の真下や移動方向へ立たないようにします。
荷下ろしの合図は、一人の合図者へ統一します。高所作業者、地上作業者、揚重設備の操作者が別々に指示を出すと、予期しない動作につながります。緊急停止については、危険を発見した者が誰でも合図を出せるようにします。
線材を地上へ降ろす場所は、事前に整理します。通路や重機の走行経路へ置かず、転がり、巻き戻り、跳ねを防ぐ状態で固定します。切断端部は鋭利になることがあるため、作業者が不用意に接触しないよう向きや保管方法を決めます。
撤去材を短く切り分ける場合も、内部に残るねじれや反発に注意します。地上へ下ろした後だから安全とは限りません。線材を固定してから切断し、端部が跳ねる方向に人を立たせないようにします。
金具やがいしなどを下ろす際は、個々の重量だけでなく、重心や壊れやすさを確認します。複数の部材をまとめて吊ると、途中で接触して結束が緩む可能性があります。荷姿を安定させ、一回ごとの荷下ろし量を無理に増やさないことが重要です。
荷下ろしが終わった後は、支持物にボルトや鋭利な金具が残っていないか確認します。残置が必要な部材については、緩み、変形、腐食、突出がないか点検します。撤去材の一部を仮置きしたまま次の区画へ進む場合は、第三者が近づかないよう区画を明確にします。
ステップ7 終了確認後に接地を外して引き渡す
架線の撤去が完了しても、すぐに短絡接地器具を取り外してはいけません。まず、作業範囲全体を点検し、作業者、工具、仮設材、ロープ、撤去材が危険な位置に残っていないことを確認します。複数の班が作業している場合は、各班の責任者から完了報告を受けます。
残置設備の状態も確認します。架線を一部撤去したことで、残った線材の張力や支持物への荷重が変わっている場合があります。支柱の傾き、金具の変形、ボルトの緩み、線材の異常なたるみなどがないかを点検します。
撤去した架線と接続されていた端部については、必要な端末処理が行われていることを確認します。絶縁、防水、防食、表示など、設備管理者の基準に従って処理します。不要な導体や金具が残り、後から通電部と誤認される状態を避けます。
高所の作業床や足場から、工具、切断片、結束線、仮支持材を回収します。小さな金属片でも、通電設備の近くに残れば短絡や設備損傷の原因となる可能性があります。地上の撤去材も整理し、通行や再送電後の設備運用に支障がないことを確認します。
短絡接地器具を取り外す前に、全員を安全な位置へ退避させます。器具を外した後は、対象設備がいつでも充電される可能性があるものとして扱います。取り外しは、設備管理者が定める順序に従い、担当者と責任者の確認のもとで行います。
短絡接地器具の数量と位置は、取り付け時の記録と照合します。一か所でも取り外し忘れがあると、再送電時に重大な事故や設備損傷を招く可能性があります。作業区間を順に巡回し、短絡接地器具、管理札、仮設材が残っていないことを確認します。
短絡接地器具の取り外し後は、停電操作の責任者へ作業完了を報告します。撤去した範囲、残置設備の状態、器具取り外しの完了、作業者の退避、工具の回収状況を具体的に伝えます。設備管理者の指示があるまでは、現場側の判断で再送電や試運転を行いません。
再送電後の確認が必要な場合は、安全な位置から異常の有無を監視します。異音、発煙、放電、異常な振動などが見られた場合は、設備へ近づかず、直ちに操作責任者へ連絡します。
架線撤去作業の連絡と合図を統一する
架線撤去では、作業者同士の連絡不足が事故の引き金になります。特に停電、検電、短絡接地、張力解放、切断、荷下ろし、短絡接地器具の取り外しの各段階では、責任者の許可を受けてから次へ進む仕組みが必要です。
作業開始前の打合せでは、当日の撤去区間、停電範囲、通電中の隣接設備、短絡接地位置、作業順序、退避場所、中止条件を確認します。図面や写真を使い、口頭説明だけでなく、全員が同じ設備を認識できるようにします。
無線などを使用する場合は、作業開始前に通信状態を確認します。支柱の陰、建物の内部、トンネル、高所などでは通信が不安定になる場合があります。連絡が取れなくなったときは作業を止めることを、あらかじめ決めておきます。
合図は短く、意味が重複しない表現に統一します。張力解放、切断開始、巻上げ、巻下げ、停止、緊急停止などの合図を決め、受信者が復唱します。騒音が大きい現場では、手信号や表示を併用します。
揚重作業の合図者は原則として一人に定めます。複数の人が同時に指示を出すと、操作者がどちらに従うべきか判断できません。ただし、危険を発見した場合の緊急停止は、誰でも指示できるようにします。
作業交代がある場合は、引継ぎを確実に行います。交代者へ、撤去済みの区間、残っている張力、短絡接地位置、仮支持の状態、予定外の設備、当日の変更事項を伝えます。途中参加者が古い計画だけを見て作業を始めないようにします。
異常発生時に作業を止める判断基準
安全な現場では、作業を続ける技術だけでなく、止める判断が重視されます。架線撤去中に計画と異なる状態が見つかった場合は、その場で手順を変更して対応するのではなく、いったん作業を中止します。
停止すべき異常には、図面にない線材や接続部の発見、検電時の反応、短絡接地器具の異常、支柱や金具の急な変形、想定以上の張力、仮支持のずれ、通信手段の不調などがあります。天候の急変、雷の接近、強風、第三者の侵入も中止判断の対象です。
線材を切断し始めた後に異常を感じた場合は、無理に切断を完了させようとしないことが重要です。可能な範囲で工具と線材を安定させ、周囲へ停止を伝えます。張力が不明な状態で再び切断を進めず、仮支持や作業者の位置を見直します。
体調不良や集中力の低下も見逃せません。高所作業では、疲労、暑さ、寒さ、長時間の不自然な姿勢によって判断力が低下します。作業者が異常を申し出やすい環境をつくり、交代や休憩を行います。
作業再開時は、責任者だけでなく関係者全員へ変更内容を共有します。仮支持の追加、切断位置の変更、荷下ろし方法の変更などがあれば、施工計画や作業手順へ反映し、変更後の危険を再評価します。
撤去前後の記録を設備管理へ生かす
架線撤去の記録は、施工報告だけでなく、対象設備の誤認防止と将来の維持管理に役立ちます。撤去前には、対象区間、支柱番号、接続部、引留部、分岐、周辺設備を記録します。
写真は、部材の状態が分かる近景と、位置関係が分かる遠景の両方を残します。支柱番号や設備番号と写真を関連付けると、後から撤去位置を確認しやすくなります。撮影方向や撮影位置も記録すると、施工前後の比較に役立ちます。
作業中は、検電、短絡接地、仮支持、張力解放、荷下ろしなどの重要な工程を記録します。ただし、記録を優先して危険区域へ立ち入ってはいけません。撮影担当者の位置と撮影時期も事前に決めます。
撤去後には、残置設備、端末処理、支持物、撤去材の回収状況を確認し、記録します。施工前と同じ方向から撮影すると、撤去範囲と残置設備の変化を比較しやすくなります。
図面と現況が異なっていた場合は、相違点を設備管理者へ報告します。撤去済みの架線が図面上に残っていたり、残置設備が記載されていなかったりすると、次回の点検や改修で誤認が発生する可能性があります。完成図や設備台帳を現況に合わせて更新します。
位置情報付き写真や点群などを活用すると、支柱、支持点、残置設備の位置関係を共有しやすくなります。ただし、記録機器の測定結果には使用環境や方法による誤差が含まれるため、管理に必要な精度を確認し、重要な寸法は定められた測量方法で確認します。
まとめ
架線撤去作業で感電と落下を防ぐためには、停電、検電、短絡接地、高所作業、張力解放、荷下ろし、終了確認を一連の安全手順として管理することが重要です。停電したという連絡だけで架線へ触れず、現場で対象設備を識別し、無電圧を確認します。開路した電路が高圧または特別高圧である場合は、短絡接地器具を用いて確実に短絡接地してから作業へ進みます。
高所では、安定した作業床と墜落防止設備を整え、工具や部品の落下を防ぎます。架線を切断する前には力の作用方向を確認し、仮支持を設けて張力を段階的に解放します。切断した線材は自由落下させず、動きを制御しながら安全な場所へ荷下ろしします。
作業終了時には、作業者、工具、仮設材、短絡接地器具の状況を確認し、残置設備が安定していることを点検します。短絡接地器具を外した後は架線が充電される可能性があるものとして扱い、設備管理者の指示に従って引き渡します。
計画と異なる状況を見つけた場合は、無理に作業を続けず、いったん停止して危険を再評価することが必要です。現場の経験だけに頼るのではなく、責任区分、作業開始条件、中止条件、合図、記録方法を明確にすることで、感電、墜落、落下物、線材の跳ねによる事故を防ぎやすくなります。
架線の撤去前後を位置情報付き写真や点群で記録し、現場と事務所の間で共有する仕組みを整える際は、LRTK Phoneの活用も検討できます。LRTK Phoneは測位写真や絶対座標付き点群の取得・共有に利用できますが、法令上の検電、短絡接地、設備点検、所定の測量や安全確認を代替するものではありません。Lefixea+2Lefixea+2