LRTKレフィクシア株式会社

架線の横振れが大きい区間を特定する5つの測定方法

架線の横振れが大きい区間では、集電装置との接触状態が不安定になったり、支持金具や振止め部材に想定以上の荷重が加わったりする可能性があります。ただし、目視巡視だけで横振れの大きさや発生区間を正確に判断することは簡単ではありません。観察する時刻、風向、風速、列車通過の有無、架線温度などによって、見え方が大きく変わるためです。

また、架線が軌道中心から左右に配置されている状態と、風や振動によって時間的に動く横振れは区別して考える必要があります。設計上の偏位が大きく見えても、必ずしも異常な横振れとは限りません。反対に、静止時の位置が適正でも、特定の風向や列車通過時にだけ大きく振れる場合があります。

横振れが大きい区間を特定するには、単一の測定値だけで判断せず、静的な架線位置、時間的な変位、支持構造物の動き、風や温度などの外部条件を関連付けることが重要です。本記事では、架線の横振れを調査する実務担当者に向けて、現場で活用しやすい5つの測定方法と、測定結果から重点点検区間を絞り込む考え方を解説します。

架線の横振れを測る前に理解しておきたいこと

架線の横振れを測定する際は、最初に何を横振れとして扱うのかを整理する必要があります。一般に横振れという言葉は、風圧や振動などによって架線が軌道の左右方向へ動く現象を指します。しかし、現場では設計上の偏位、支持点間の曲線形状、支持柱の傾斜、曲線区間における引留め方向の影響なども、横方向の変位として観測されます。

したがって、ある時点の架線位置を一度測っただけでは、静的な偏位と動的な横振れを分離できません。横振れ量を把握するためには、同じ位置を一定時間観測し、その間に生じた最大位置と最小位置の差を求める方法が基本になります。静止状態の中心位置から左右へどの程度動いたかを整理すれば、単なる架線位置のずれと、時間的な振れを区別しやすくなります。

横振れの対象も明確にしなければなりません。トロリ線だけを測るのか、ちょう架線やき電線を含めるのか、ハンガーや曲線引金具、振止め金具の動きまで確認するのかによって、測定方法は変わります。集電状態を評価する目的であれば、集電装置が接触する高さ付近のトロリ線の動きを中心に確認します。一方、設備全体の健全性を評価する場合は、支持点、可動ブラケット、がいし、金具類、支持柱の変位も合わせて確認する必要があります。

横振れの大きさだけでなく、振れ方にも注目します。ゆっくりと片側へ移動して戻る動き、短い周期で左右に往復する動き、列車通過直後に振幅が増える動き、風が弱まった後も振動が残る動きでは、考えられる原因が異なります。周期的な振動が続く場合は、風と架線系の固有振動が関係している可能性があります。特定方向の風で片側への変位が大きくなる場合は、周辺地形や構造物による局所的な風の集中も考えられます。

許容できる横振れ量は、設備方式、線路条件、列車速度、集電装置の有効範囲、支持間隔、曲線半径、架線高さなどによって異なります。すべての現場に共通する一つの数値で異常を判定するのではなく、設計図、維持管理基準、施工記録、過去の測定値などと比較することが重要です。

測定前にそろえる基準と計画

横振れ測定を始める前に、対象区間をどの単位で分けるかを決めます。支持点間を一つの測定区間として扱う方法が基本ですが、長い径間、曲線区間、橋梁部、トンネル坑口、切土と盛土の境界、建物間の狭い区間などでは、径間内をさらに分割した方が異常位置を特定しやすくなります。

測点には、支持柱番号、径間番号、線路方向の距離、上下線の別、軌道中心からの位置などを関連付けます。同じ場所を繰り返し測定できるように、測点の名称と位置を統一することが重要です。現場写真だけで管理すると、似た形状の支持柱や金具を取り違える可能性があります。位置情報、設備番号、撮影方向、測定日時を一つの記録としてまとめると、後日の比較が容易になります。

測定条件もあらかじめ設定します。無風に近い状態の基準測定、通常の風がある状態、強風が予想される状態、列車通過前後など、複数条件で測る計画が有効です。無風時に静的位置を確認し、風があるときの位置との差を求めれば、風による影響を評価しやすくなります。

ただし、強風時に作業員が架線へ接近する測定は危険を伴います。危険な気象条件で現場作業を強行するのではなく、安全な離隔を確保できる遠隔撮影や常設センサーを使うなど、測定方法を選び分ける必要があります。

測定時間についても統一が必要です。数秒間だけ観測すると、たまたま振れが小さい瞬間を記録してしまうことがあります。反対に、長時間のデータを無条件に集めると、異なる風向や列車通過条件が混在し、比較しにくくなります。一定時間ごとに区切り、各時間帯の最大値、最小値、平均位置、振動周期などを整理する方法が実務的です。

架線温度や外気温も記録します。架線は温度変化によって伸縮し、張力やたるみ、支持点間の形状が変化します。自動張力調整装置がある設備でも、装置の動作範囲、摩擦、移動部の状態などにより、区間ごとの差が生じることがあります。測定値を季節間で比較するときは、温度条件の違いを無視しないことが大切です。

測定方法1 固定カメラと基準尺で時系列変位を捉える

横振れを直接確認しやすい方法が、固定カメラによる時系列撮影です。対象となる架線と、その近くに設定した位置基準を同じ画面内に収め、一定時間連続して撮影します。撮影した映像を時間ごとに確認し、架線が画面上で左右へどの程度移動したかを読み取ります。

この方法の利点は、横振れの最大値だけでなく、動きの過程を確認できることです。風が吹いた瞬間に急激に片側へ移動するのか、ゆっくりと振幅が増えるのか、列車通過後に振動が続くのかを映像として残せます。異常が断続的に発生する区間では、一点測量よりも原因を把握しやすい方法です。

撮影では、カメラを手持ちにせず、動かない構造物や専用の固定台に設置します。カメラ自体が風や地盤振動で動くと、その動きが架線の横振れとして記録されてしまいます。画面内には、架線とは別に動かない基準点を二点以上入れておくと、撮影中にカメラが動いていないか確認できます。

基準尺を設置できる場合は、架線と同程度の距離に配置することが望まれます。カメラから架線までの距離と、カメラから基準尺までの距離が大きく異なると、画面上の長さを実際の変位量へ換算する際に誤差が生じます。架線付近へ基準尺を設置できない場合は、事前に測量した複数の固定点を画面上の基準として使い、画像座標を実座標へ変換します。

撮影方向も重要です。線路方向に近い角度から撮ると、横方向の動きを比較的捉えやすくなります。ただし、架線の奥行き方向の動きが画面上の横移動として現れることもあるため、対象径間の向きと撮影位置を考慮しなければなりません。可能であれば、異なる方向から二台のカメラで同時撮影すると、実際の三次元的な動きを推定しやすくなります。

撮影速度は、想定する振動周期に応じて設定します。ゆっくりした横振れだけを確認する場合は一般的な動画でも対応できますが、短周期の振動や列車通過時の瞬間的な変位を確認する場合は、より細かい時間間隔で撮影できる機器が必要です。

映像解析では、トロリ線の輪郭や金具の特定点を追跡し、時間ごとの位置を数値化します。最大変位だけでなく、中心位置、左右の振幅差、振動回数、振動が収束するまでの時間を記録すると、区間ごとの特徴を比較できます。映像を目視で確認するだけでは担当者による判断差が生じやすいため、同じ基準点を使って数値化することが重要です。

固定カメラによる測定は、トンネル坑口、橋梁上、建物の間、谷部など、風が局所的に強くなる場所の調査に向いています。風向と撮影時刻を合わせて記録すれば、特定方向の風に対して横振れが増える区間を絞り込めます。

測定方法2 測量機器で架線の静的位置を測る

測量機器を使った方法は、架線の静的な位置、偏位、高さ、支持点間の形状を確認するために有効です。横振れそのものは時間的な動きですが、静的位置に異常がある区間では、風や列車通過による変位が加わったときに、集電上の余裕が小さくなる可能性があります。

測定では、軌道中心や既知点を基準として、トロリ線の左右位置を求めます。支持点直下だけでなく、径間中央や四分点など複数位置を測ることで、支持点間の曲線形状を把握できます。支持点の位置が適正でも、径間中央で片側へ大きく寄っている場合は、金具の調整状態、支持条件、張力、曲線引きなどを確認する必要があります。

架線を直接視準できる測量機器を使用する場合は、測定対象を明確にします。トロリ線は細く、背景に構造物や他の電線が重なると誤って別の対象を測るおそれがあります。同じ地点を複数回測定し、値が安定しているかを確認することが大切です。

静的位置の測定では、軌道側の基準にも注意します。軌道中心の設定がずれていれば、架線偏位の値も同じだけずれます。レール頭部の摩耗、軌間の変化、カント、曲線部の基準設定などを考慮し、どの位置を軌道中心としているかを記録します。過去のデータと比較する際は、同じ基準と計算方法を使用しなければなりません。

異なる気温で測定した結果を比較すると、架線の伸縮や支持構造物の温度変形が含まれる可能性があります。測定日時、外気温、日射条件、架線温度の推定値などを記録し、条件が近いデータ同士を比較します。特に、日射を受ける側と日陰側で支持構造物の温度差が生じる場所では、時刻によって位置が変化することがあります。

静的位置測量の強みは、広い区間を同じ座標基準で比較できることです。複数径間の架線位置を一覧化すると、横方向の変位が連続的に増えている区間、特定の支持点を境に位置が変化している区間、径間長に対して中央部の偏りが大きい区間などを抽出できます。

一方、一回の測量だけでは動的な最大横振れ量は分かりません。そのため、静的位置の測定結果は、固定カメラや変位センサーによる時系列測定を行う場所を選ぶための一次調査として活用すると効果的です。

測定方法3 三次元点群で架線と支持構造物の形状を比較する

三次元点群を利用すると、架線だけでなく、支持柱、ブラケット、がいし、金具、軌道、周辺構造物を同じ空間上で記録できます。横振れが大きい区間を調べる際には、架線の位置だけを見るのではなく、支持構造物の傾きや変形、径間長、周辺の障害物との離隔などを総合的に確認できる点が利点です。

点群測定では、対象区間を複数方向から計測し、架線が欠けないようにします。細い電線は、測定角度、距離、背景、表面状態などによって点が取得しにくい場合があります。一方向からの測定だけでは、他の電線や金具の陰に隠れる部分が生じるため、測定位置を変えて補います。

取得した点群から軌道中心線を設定し、一定間隔ごとにトロリ線の横位置を抽出します。支持点、径間中央、曲線引金具付近などの断面を作成すると、架線がどの位置で大きく片側へ寄っているかを視覚的に確認できます。連続する複数径間を同じ座標上で比較すれば、局所的な異常と広い範囲の傾向を分けやすくなります。

支持柱の傾斜も確認対象です。支持柱が軌道側や線路方向へ傾いている場合、ブラケット先端や架線支持位置も移動します。柱脚付近の地盤沈下、基礎周辺の洗掘、衝突痕、部材の変形などがないか、現地確認と点群形状を照合します。

また、橋梁や高架構造物では、架線支持部だけでなく、構造物全体の変形や伸縮が架線位置へ影響することがあります。点群を定期的に取得して差分比較すれば、支持位置が継続的に移動しているか、季節による一時的な変化かを判断する材料になります。

ただし、通常の点群は測定した瞬間や一定時間内の形状を表すものであり、高速で動く横振れの最大値をそのまま記録できるとは限りません。取得中に架線が動いていると、点群が太く見えたり、複数位置に分散したりすることがあります。この分散を横振れの参考情報として使える場合もありますが、測定機器の誤差や位置合わせのずれと区別する必要があります。

LRTK Phoneを活用すると、現場周辺の三次元形状や位置情報付きの記録を取得し、支持柱番号や測点と関連付けて整理しやすくなります。特に、一次調査として広い区間を記録し、架線位置の偏り、支持柱の傾き、周辺構造物との関係を確認する用途に適しています。動的な横振れ量については、固定撮影や変位センサーなどの時系列測定と組み合わせて評価します。

点群による調査では、毎回同じ座標系、同じ基準点、同じ抽出位置を使用することが重要です。測定時期ごとに基準が変わると、本当の変位と位置合わせ誤差を区別できません。基準点の健全性を確認し、点群の位置合わせ精度も記録します。

測定方法4 走行時の映像と位置情報で連続的に確認する

長い路線から横振れの疑いがある区間を探す場合は、走行時の映像と位置情報を組み合わせた連続測定が有効です。地上の一点から観測する方法では、多数の径間を調査するために時間がかかります。走行しながら架線を連続撮影すれば、広い範囲から特徴的な区間を抽出できます。

撮影では、架線と集電装置周辺が安定して映るようにカメラを固定します。車体振動やカメラの傾きが映像に含まれるため、架線の画面上の動きをそのまま横振れ量として扱うことはできません。車体や屋根上の固定部、軌道方向などを基準として映像を補正し、架線と集電装置の相対位置を確認します。

走行映像で注目するのは、架線が集電装置の有効範囲内をどのように移動しているか、接触位置が急激に変化していないか、特定の支持点通過時に左右の動きが増えていないかという点です。映像だけでなく、走行速度、位置、時刻を同期させることで、異常が現れた地点を現地の支持柱番号や距離程へ結び付けられます。

同じ区間を異なる速度や異なる気象条件で測定すると、横振れの再現性を確認できます。毎回ほぼ同じ位置で異常が現れる場合は、支持条件や架線形状など設備側の要因が疑われます。風の強い日だけ異常が現れる場合は、局所風や防風条件の影響を重点的に調べます。

走行測定では、時間同期のずれが区間特定の誤差につながります。映像時刻、位置情報、速度データ、設備番号の記録時刻をそろえます。数秒のずれでも、走行速度によっては測定位置が数十メートル以上変わることがあります。調査開始前に各機器の時刻を合わせ、測定後には既知の構造物を使って位置の整合を確認します。

また、架線の動きに見える現象が、実際には車体の左右動や軌道変位による場合があります。軌道状態、車体加速度、映像内の固定構造物などと比較し、車両側の動きと架線側の動きを分離します。可能であれば、同一地点を地上の固定カメラでも撮影し、走行映像と照合します。

走行測定は広範囲のスクリーニングに適していますが、単独で最終判定を行う方法ではありません。異常候補区間を抽出した後、地上測量、固定カメラ、点群、変位センサーなどを使って詳細測定を行う流れが効率的です。

測定方法5 変位センサーと気象観測を組み合わせる

特定区間の横振れを継続的に監視する場合は、変位センサーと気象観測を組み合わせる方法が有効です。固定カメラによる観測でも時間変化を記録できますが、長期間の連続監視では、測定値を自動的に記録できるセンサーが役立ちます。

架線へ直接センサーを取り付ける方法は、設備への影響、絶縁、重量増加、保守性などを慎重に検討する必要があります。そのため、架線から安全な距離を保った位置に非接触式の変位センサーを設置し、対象点までの距離や位置を測る方法が考えられます。支持金具やブラケットの動きを確認する場合は、構造物側へ変位計や加速度計を設置する方法もあります。

測定間隔は、想定する横振れの周期に合わせます。測定間隔が長すぎると、最大変位を記録できず、実際より小さな振幅として評価してしまいます。反対に、必要以上に細かい間隔で長期間記録すると、データ量が増え、確認作業が難しくなります。事前の短時間測定で代表的な振動周期を確認し、それを捉えられる記録間隔を設定します。

横振れデータだけを見ても、なぜ振幅が増えたのか分からない場合があります。そこで、風速、風向、外気温、降雨、列車通過時刻などを同じ時刻基準で記録します。風速が一定値を超えたときだけ振幅が増えるのか、特定方向の風で片側への変位が大きくなるのか、列車通過と風が重なったときに最大になるのかを分析します。

風速計の設置位置にも注意が必要です。架線から離れた地上付近の風速と、架線高さ付近の風速は一致しない場合があります。建物、法面、防音壁、樹木、橋桁などによって風向や風速が局所的に変化するためです。可能な範囲で架線の高さや対象区間の環境に近い位置で測定し、センサー周辺の遮蔽物も記録します。

支持柱やブラケットに加速度計を設置すると、目視では分かりにくい短周期の振動を捉えられます。架線の横変位と支持構造物の加速度が同じ時刻に増えていれば、支持系全体が振動している可能性があります。架線だけが大きく動き、支持構造物の動きが小さい場合は、張力、径間長、金具状態、架線固有の振動などを重点的に確認します。

長期監視では、センサーの基準ずれや固定部の緩みも確認します。センサー自体が傾いたり、取付台が振動したりすると、架線の変位として誤記録されます。定期的に既知距離を測り、基準値が維持されているかを確認する必要があります。

変位センサーと気象データを組み合わせると、最大横振れ量だけでなく、発生条件を明らかにできます。対策の優先順位を決める際には、振幅が大きい区間だけでなく、比較的弱い風でも頻繁に振れる区間や、振動が長時間収束しない区間にも注意します。

5つの方法を組み合わせて区間を絞り込む

架線の横振れ調査では、最初からすべての地点へセンサーを設置する必要はありません。広い区間を効率よく調べるには、調査段階ごとに測定方法を使い分けます。

最初の段階では、過去の巡視記録、集電状態に関する記録、設備補修履歴、強風時の運行記録などを確認します。トロリ線の偏摩耗、金具の緩み、ハンガー位置の変化、支持柱の傾きなどが繰り返し記録されている場所は、横振れの重点調査候補になります。

次に、測量機器や三次元点群を用いて、対象区間の静的な架線位置を連続的に測定します。この段階では、設計位置との差、隣接径間との不連続、支持柱やブラケットの変形、径間中央の偏りなどを確認します。静的な形状に特徴がある区間を抽出すれば、詳細な動的測定の対象を減らせます。

広い範囲を走行映像で確認できる場合は、静的位置調査と並行して異常候補を抽出します。映像上で接触位置が急変する場所や、架線の左右動が目立つ場所を、位置情報と設備番号へ関連付けます。

候補区間が絞られた後は、固定カメラを設置して時系列変位を測ります。無風時、通常風時、列車通過時などの条件を分けて撮影し、最大振幅と発生条件を確認します。横振れが頻繁に発生する場所や、強風時にだけ急激に増える場所では、変位センサーと気象計による継続観測を検討します。

判定では、最大横振れ量だけを並べるのではなく、静的な中心位置に動的な振幅を加えたとき、集電上の余裕がどの程度残るかを確認します。中心位置が軌道中心に近い区間では、同じ振幅でも両側に余裕があります。一方、静的に片側へ寄っている区間では、小さな横振れでも限界へ近づく可能性があります。

隣接径間との比較も重要です。単独の測定値だけでは、地域特有の風や設備方式による通常の変動か、局所的な異常かを判断しにくいからです。同じ構造、同程度の径間長、同じ時間帯の隣接区間を比較し、特定地点だけ振幅や振動時間が大きいかを確認します。

横振れが大きい区間を見つけた後は、原因を一つに決め付けず、支持金具、架線張力、ハンガー配置、径間長、曲線条件、支持柱の傾き、周辺風環境などを順番に調べます。測定値は異常区間を特定する手掛かりであり、設備状態を総合的に判断するための資料として使用します。

測定誤差を減らす記録とデータ整理

測定結果の信頼性を高めるには、測定値と同じくらい測定条件の記録が重要です。同じ区間を再測定しても、観測位置や基準が変われば正確な比較ができません。

記録には、測定日時、測定者、測点名、支持柱番号、径間番号、測定方向、使用した基準点、測定機器の設置位置、架線までのおおよその距離を含めます。気象条件として、風速、風向、気温、天候、降雨の有無も記録します。列車通過の影響を調べる場合は、通過時刻、走行方向、速度条件を測定データへ関連付けます。

写真や映像には、どちらの方向を向いて撮影したかが分かる情報を残します。現場では設備が連続しており、後から映像だけを見ても位置を判断できない場合があります。撮影開始時に設備番号や測点標識を画面へ入れる方法も有効です。

測量値や点群は、共通の座標基準で管理します。測定ごとに任意の原点を設定すると、時期の異なるデータを重ねられません。基準点が移動していないかを定期的に確認し、基準点自体に異常が疑われる場合は別の安定点から検証します。

映像解析では、画面のひずみや遠近差を補正します。画面端では形状が変形しやすく、同じ画素数の移動でも実際の変位量が異なることがあります。測定対象をできるだけ画面中央へ配置し、事前に既知寸法を撮影して換算精度を確認します。

データ整理では、最大値だけでなく、最小値、平均位置、振幅、振動周期、継続時間を残します。一度だけ発生した極端な値は、実際の横振れの可能性がある一方、映像の乱れ、対象の誤認、センサーの一時的な異常である場合もあります。元の映像や波形へ戻り、異常値が生じた時刻の状況を確認します。

比較用の基準区間を設定することも効果的です。構造条件が似ており、過去に異常が確認されていない区間を同時に測れば、対象区間の横振れが相対的に大きいかを判断できます。気象条件が変わりやすい現場では、別の日に測った値よりも、同じ時間帯に測った近接区間の値が参考になる場合があります。

データを保存する際は、測定値と元データの関係が分かるようにします。集計結果だけを残すと、後から判定基準を変更したときに再解析できません。元映像、点群、センサー記録、位置情報、現場写真を測点単位で整理し、集計結果から元データを追跡できる状態にします。

安全管理と現場運用で注意する点

架線周辺の測定では、測定精度よりも先に安全を確保しなければなりません。架線が通電している状態では、直接接触していなくても、接近距離や使用機材の長さによって危険が生じる可能性があります。測定作業は、設備管理者が定める作業手順、停電手続、接近限界、保安体制に従って実施します。

測量用のポール、三脚、基準尺、カメラ固定具などを使用する場合は、転倒時にも架線や周辺設備へ接近しない位置へ設置します。強風時は機材が転倒したり、部材が飛散したりするおそれがあります。横振れを観測するために風が強い条件を選ぶ場合でも、作業員が危険区域へ入らずに測定できる方法を優先します。

線路内や線路近接部で作業する場合は、列車運行との調整、見張り体制、退避経路の確保が必要です。撮影画面や測定機器に集中すると、周辺状況への注意が低下しやすいため、測定担当者と安全確認担当者の役割を分けます。

夜間測定では、照明が架線の識別やカメラ映像へ影響します。照明のちらつきや反射が、架線輪郭の誤検出につながることがあります。照明器具の設置位置と電源ケーブルの取り回しも、列車や作業員の動線を妨げないようにします。

ドローンなどの飛行機器を架線近傍で使用する方法は、接触、墜落、電磁環境、運行への影響などを考慮しなければなりません。単に上空から撮影しやすいという理由だけで採用せず、関係規程、設備管理者の許可、飛行環境、安全距離を確認します。架線へ接近させなくても測定できる地上方法がある場合は、より安全な方法を優先します。

センサーを長期間設置する場合は、取付部の緩み、落下防止、耐候性、絶縁、保守時の干渉を確認します。測定機器が設備の保守作業を妨げたり、新たな振動や荷重を発生させたりしてはなりません。設置後には、通常の設備巡視で異常の有無を確認できるようにします。

測定によって横振れが大きい区間を特定しても、現場で直ちに金具を調整するとは限りません。架線系は複数部材の張力と支持条件によって成り立っているため、一部分の調整が隣接径間へ影響する可能性があります。設計条件、施工記録、設備全体の状態を確認し、必要な手続と検討を経て対策を決定します。

まとめ

架線の横振れが大きい区間を特定するには、目視だけではなく、静的な位置と時間的な動きを分けて測定することが重要です。固定カメラによる時系列撮影では、横振れの最大値や振動の継続時間を確認できます。測量機器による静的位置測定では、架線偏位や支持点間形状の異常を把握できます。

三次元点群を利用すれば、架線、支持柱、ブラケット、軌道、周辺構造物を同じ空間上で確認でき、横振れが生じやすい構造条件を探れます。走行映像と位置情報を組み合わせる方法は、長い路線から異常候補区間を抽出する一次調査に適しています。変位センサーと気象観測を組み合わせれば、横振れが発生する風向、風速、列車通過条件を継続的に分析できます。

実務では、広い区間を走行映像や点群で確認し、静的位置に特徴がある場所を抽出した後、固定カメラやセンサーで詳細測定する流れが効率的です。測定日時、気象条件、架線温度、列車通過時刻、測定方向をそろえて記録し、隣接区間や過去データと比較することで、横振れが局所的な異常なのか、通常の変動なのかを判断しやすくなります。

特に重要なのは、最大横振れ量だけで結論を出さないことです。静的な中心位置、左右の振幅、振動周期、継続時間、支持構造物の変位、周辺の風環境を総合的に確認する必要があります。測定結果を設備番号や位置情報と結び付けて保存すれば、次回点検や補修計画にも活用できます。

架線周辺の三次元形状を位置情報付きで記録し、支持柱や軌道との位置関係を現場で効率よく整理したい場合は、LRTK Phoneの活用をご検討ください。

現場を3Dで残して、あとから測る。
実際の画面と動画で使い方を確認できます。

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