排煙口の墨出しは、天井面に開口位置を示すだけの作業ではありません。排煙区画、排煙方式、ダクト経路、天井仕上げ、照明や感知器などの設備配置、点検空間、下地補強までを一つの位置情報にまとめ、施工可能な形へ落とし込む工程です。見た目では小さな移動でも、その変更によってダクトが梁に当たる、接続部が納まらない、天井材の割付が崩れる、点検口から操作部へ届かないといった手戻りが起こることがあります。
排煙設備は、火災時の煙を屋外へ排出し、避難や消防活動を支えるための建築設備です。関係法令上の適用条件や要求性能は、建物用途、規模、区画、排煙方式などによって異なります。そのため、現場判断だけで排煙口を移動したり、開口寸法を縮めたりすることは避け、承認された設計図書と施工図、機器承認図を基準に調整しなければなりません。墨出し担当者には、意匠、建築、空調、防災、電気の情報を重ね合わせ、施工可能な位置へ具体化する役割が求められます。
本記事では、機械排煙の排煙口を中心に、ダクト接続と天井割付を整えるための5つの確認を解説します。自然排煙方式を採用する部分では確認対象が異なるため、当該工事の設計図、設備仕様、施工要領、適用法令を読み分けながら活用してください。
排煙口の墨出しが難しい理由
排煙口は天井仕上げ面に見える器具ですが、実際には天井裏の排煙ダクト、接続金物、開閉機構、操作系統、支持材、補強下地などと一体で成立します。天井面だけを見て位置を決めると、表面上は整っていても、天井裏で接続できない可能性があります。反対に、ダクト施工だけを優先すると、照明列や天井目地から排煙口だけがずれ、仕上げ品質を損なうことがあります。
排煙口の位置決めが難しいもう一つの理由は、複数の基準が同時に存在することです。建築側には通り芯、壁芯、仕上げ面、天井高さがあります。設備側にはダクト芯、器具外形、接続口寸法、操作部位置があります。意匠側には天井材の割付、照明配置、見付けの整列があります。防災側には排煙区画、作動範囲、排煙性能に関わる条件があります。これらの基準が図面ごとに別々に表現されるため、墨出し前に基準同士の関係を整理しなければなりません。
さらに、現場では設計図から施工図への具体化が進む途中で、梁せい、天井懐、配管経路、照明器具の寸法などが更新されます。古い図面を基に墨出しすると、後から正しい位置へ修正する必要が生じます。墨出しの精度だけでなく、使用する図面の版、承認状況、変更履歴を確認することが、手戻り防止の第一歩です。
建築基準法施行令第126条の3では、排煙機を設ける排煙設備について、排煙口、風道その他煙に接する部分を不燃材料で造ることなど、構造上の条件が定められています。したがって、排煙口の墨出しは単なる内装位置決めではなく、設計された排煙システムを現場へ正しく反映する作業として扱う必要があります。
墨出し前に確定すべき設計情報
墨出しを始める前に、排煙設備図だけで位置を決めないことが重要です。平面図、天井伏図、ダクト施工図、排煙区画図、断面図、矩計図、構造図、設備総合図、器具承認図、天井下地図を照合します。図面ごとに位置が異なる場合は、現場で都合のよい図を選ぶのではなく、設計者や施工管理者を交えて正しい位置を確定します。
最初に確認するのは、対象となる排煙口の識別情報です。系統番号、排煙区画、器具記号、口径または開口寸法、設置高さ、操作方式、接続するダクト系統を一致させます。同じ形状の排煙口が並んでいても、接続先や作動区画が異なる場合があります。位置だけが合っていても系統を取り違えれば、完成後の作動確認で重大な不整合が判明するおそれがあります。
次に、基準位置を明確にします。設計図の寸法が通り芯から排煙口芯までなのか、壁仕上げ面から器具端までなのか、天井目地を中心とした割付寸法なのかを読み取ります。排煙口の外形寸法と天井開口寸法は同じとは限りません。器具の見付け、取付枠、下地開口、ダクト接続部はそれぞれ寸法が異なるため、何を墨として示すのかを事前に決めます。
天井高さも重要です。天井仕上げ面の高さ、下地材の位置、天井懐、上部の梁下、ダクト下面を断面で確認します。平面上ではダクトが接続できるように見えても、梁下と天井下地の間に必要な高さがなければ施工できません。接続部に偏心管や変形管が必要になる場合は、その製作寸法と取付空間を見込んで位置を調整します。
また、施工前に未確定事項を一覧化しておくと判断が安定します。たとえば、照明器具の最終寸法が未承認、天井目地の基準が未決定、ダクトの分岐位置が調整中、点検口位置が保留といった状態です。未確定のまま墨を確定すると、現場では墨が既成事実として扱われ、後から変更しにくくなります。仮墨と確定墨を色や記号で区別し、承認後に確定する運用が有効です。
確認1 排煙区画と排煙方式を取り違えない
第一の確認は、墨出し対象がどの排煙区画に属し、どの排煙方式で計画されているかです。機械排煙では排煙口からダクトを通して排煙機へ煙を導くため、排煙口の位置だけでなく、系統、ダクト経路、作動範囲の整合が必要です。自然排煙では外気に通じる開口部の位置、有効開口面積、開放方法などが主な確認対象となるため、機械排煙口と同じ考え方で扱うことはできません。
排煙区画図では、防煙壁などによる区画境界、排煙口が受け持つ範囲、隣接区画との関係を確認します。天井伏図で見たときに近い排煙口やダクトへ接続すればよいわけではありません。隣の区画の排煙ダクトへ誤接続すると、設計された作動区画と異なる系統になり、火災時の機能に影響するおそれがあります。ダクト施工図には排煙区画名や系統番号を明記し、天井面の墨にも識別記号を併記すると取り違えを減らせます。
排煙口を天井割付の都合で移動したい場合は、移動可能範囲を現場だけで判断しません。移動によって排煙区画内の配置、ダクト経路、圧力損失、接続形状、作動機構、周辺の煙層形成に影響する可能性があるためです。意匠上の整列を目的とする小さな移動でも、設備設計者や防災担当者の確認を受け、変更図や承認記録を残します。
また、排煙口付近に天井段差、下がり天井、梁型、間仕切り上部のふさぎがある場合は、平らな天井面と同じ条件では考えられません。段差や梁型は煙の流れや煙層の形成に影響することがあるため、墨出し時には天井伏図だけでなく断面図を確認し、排煙口と周辺形状の関係を照合します。
法令上の設置対象や必要性能は、建物用途、規模、居室条件、区画方法などにより異なります。過去の類似現場の寸法や経験だけを根拠にせず、当該工事に適用される法令、告示、確認済みの設計図書、設計者の指示を優先することが大切です。
確認2 ダクト接続方向と開口寸法を合わせる
第二の確認は、排煙口とダクトを無理なく接続できる位置、向き、高さになっているかです。排煙口の中心を天井に墨出ししても、ダクト接続口が器具中心にあるとは限りません。器具によっては接続口が片側へ寄り、開閉機構や操作部が反対側に配置されます。承認図を確認し、器具外形、天井開口、接続口中心、接続方向を分けて墨へ反映します。
まず、ダクトの直線部分が排煙口へどの方向から入るかを確認します。梁、ブレース、床段差、配管ラック、照明ボックスなどが近い場合、平面上の最短経路では接続できないことがあります。接続直前で急な曲がりや大きな偏心が必要になると、製作や取付が難しくなり、圧力損失にも影響する可能性があります。排煙口の位置を確定する前に、天井裏で実際に組み立てられる経路を断面で検討します。
次に、開口寸法を整理します。現場で必要なのは、器具の見付け寸法だけではありません。天井材に設ける仕上げ開口、下地材の開口、補強枠の内寸、ダクト接続部の外形、取付金物の逃げを確認します。開口を大きくしすぎると器具の縁で隠せず、仕上げ補修が必要になります。小さすぎると器具が入らず、天井材や下地を切り直すことになります。
天井ボードを先行して張る場合は、開口墨を天井面へ正確に移す必要があります。天井下地の段階で排煙口芯と開口四隅を示し、ボード施工後に基準墨から再確認できるよう逃げ墨を残します。開口墨だけを下地材へ記しても、ボードで隠れると位置を復元できません。壁面や柱面に基準線と寸法を記録し、仕上げ後も再現できる状態にします。
ダクトを先行施工する場合は、吊り込み後の位置ずれに注意します。吊りボルトや支持材の調整、継手の差し込み、被覆がある場合の厚み、支持金物の納まりによって、接続口中心が設計位置からずれることがあります。ダクト端部を固定する前に排煙口の確定墨と照合し、必要に応じて支持位置や接続管を調整します。排煙口側で無理に引き寄せると、器具や天井下地へ不要な力がかかるため避けます。
建築基準法第12条に基づく定期報告の対象となる建築物や建築設備では、機械排煙設備の排煙口について、開放状況、排煙風量、排煙風道との接続状況などが検査項目となります。完成時に接続できているだけでなく、開放動作や排煙性能を妨げない納まりとすることが重要です。墨出し段階から接続方向と操作空間を確保しておくことが、後工程の確認を円滑にします。
確認3 天井割付と仕上げ納まりを整える
第三の確認は、排煙口を天井割付の中へ無理なく納めることです。天井伏図では、天井材の目地、照明列、空調吹出口、吸込口、感知器、スプリンクラーヘッド、放送設備、点検口などが同じ面に配置されます。排煙口だけを設備図の座標どおりに設置すると、目地をまたぐ、照明列から微妙にずれる、器具間隔が不均等になるなど、完成後に目立つ不整合が生じます。
天井割付を整える際は、最初に天井の基準線を確認します。室の中心を基準に左右対称で割り付けるのか、廊下芯に合わせるのか、入口側から定尺材を割り付けるのかによって、目地位置は変わります。設備器具の配置を確定した後に天井割付を考えるのではなく、天井材と設備器具を同じ図面上で調整します。
排煙口の見付けが正方形や長方形の場合、天井目地との関係が特に目立ちます。目地に器具端を合わせるのか、目地間の中央に配置するのか、照明器具の列と芯を合わせるのかを決めます。ただし、意匠上の整列だけで排煙口を移動してはいけません。ダクト接続、排煙区画、作動条件を守れる範囲で調整し、調整可能範囲を超える場合は設計変更として扱います。
天井材の割付によっては、排煙口の開口が野縁や下地材と重なります。その場合、単に下地を切断すると天井の強度や器具支持に影響するため、補強枠や支持方法を事前に決めます。排煙口の重量をどの部材で支持するかは、器具仕様、承認図、施工要領に従います。墨出し図には、仕上げ開口だけでなく補強範囲と支持位置も表現すると施工ミスを減らせます。
曲面天井、傾斜天井、ルーバー天井、段差天井では、平面図上の中心と見付け上の中心が一致しないことがあります。斜面に沿った寸法と水平投影寸法を混同すると、現場で位置がずれます。こうした天井では基準断面を設定し、仕上げ面に沿う寸法、鉛直高さ、水平座標を分けて指示します。ルーバー内に排煙口を設ける場合は、ルーバー材が開口や作動を妨げないこと、点検時に器具へ到達できることも確認します。
仕上げ材の種類も納まりに影響します。岩綿吸音板、化粧ボード、金属パネル、システム天井などでは、開口加工や見切りの方法が異なります。現場で加工できる範囲、端部の欠けや変形を避ける寸法、交換可能なパネル単位を考慮し、排煙口位置を決めます。見た目を整えるだけでなく、将来の点検や交換で天井を大きく壊さずに済む割付が望まれます。
確認4 他設備との離隔と点検性を確保する
第四の確認は、排煙口周辺に施工、作動、点検に必要な空間を確保することです。天井面では器具同士が重なっていなくても、天井裏ではダクト、配管、ケーブルラック、照明ボックス、点検口、吊り材が干渉することがあります。設備総合図を使い、平面と断面の両方から確認します。
照明器具との関係では、見付けの間隔だけでなく、照明器具上部の電源部や取付金物を含めた外形を確認します。埋込形の器具は天井裏で大きな箱形になるため、排煙ダクトの曲がりや接続部と当たりやすくなります。感知器や放送設備は小さく見えても、配線ルートや支持材が必要です。天井面の器具外形だけを基準に離隔を判断しないことが大切です。
スプリンクラーヘッドなどの防災設備とは、それぞれの機能を妨げない配置が必要です。排煙口の開放部や可動部の近くに別の器具を寄せすぎると、作動や点検の支障になることがあります。必要な離隔は一律ではないため、各設備の設計条件、承認図、施工要領を照合します。現場で見た目だけを優先して器具を密集させることは避けます。
点検性では、排煙口本体だけでなく、開閉機構、操作部、接続部、必要に応じてダンパーなどの点検対象へ到達できるかを確認します。点検口を設けても、その真上に配管やケーブルラックがあれば手が入りません。点検口から目視できるだけでなく、工具を入れ、部品を外し、復旧できる作業空間が必要です。天井割付上の美観を優先して点検口を離しすぎると、完成後の維持管理が難しくなります。
点検口の位置は、排煙口との関係だけで決めず、天井下地、照明、他設備、室内用途を含めて調整します。家具や固定什器の上部、常時立ち入りできない場所、扉の開閉範囲、厨房機器の上部などは、点検作業に適さない場合があります。完成後の利用状況を想定し、脚立を安全に設置できる場所から点検できる計画にします。
排煙口が壁際や梁型近くにある場合は、器具の開閉軌跡と仕上げ面の離隔を確認します。設置時には納まっていても、開放時に羽根やパネルが壁、見切り、照明器具へ当たることがあります。墨出し時に閉鎖状態の外形だけを確認せず、開放状態の最大外形を承認図から読み取ります。操作ワイヤーや電気配線がある場合は、可動部へ巻き込まれない経路も確保します。
建築基準法第12条に基づく定期報告制度では、対象となる建築物や建築設備について、経年劣化や作動状況などを定期的に確認します。施工時に点検経路を確保しておくことは、完成検査だけでなく、建物供用後の維持管理にも直結します。
確認5 基準墨と高さを統一して記録を残す
第五の確認は、位置と高さの基準を統一し、誰が見ても復元できる記録を残すことです。排煙口の墨出しでは、中心墨、開口墨、器具外形墨、ダクト接続芯など複数の線を使います。線の意味が共有されていないと、天井業者は開口墨、ダクト業者は器具芯だと思い込み、異なる位置で施工することがあります。
墨の種類は、現場共通の記号と色分けで管理します。たとえば中心を十字、仕上げ開口を実線、補強範囲を別記号で示し、近くに器具記号と寸法を書きます。ただし色だけに頼ると、照明条件や汚れで判別しにくくなるため、文字と記号も併用します。仮墨と確定墨を明確に分け、変更前の墨は確実に消すか無効表示を行います。
平面位置は、通り芯や基準壁から二方向の寸法で押さえます。一方向だけの寸法では、同じ距離上の別位置へ誤って設置する可能性があります。長い廊下では、片側から寸法を追い続けると累積誤差が生じやすいため、複数の基準点から照合します。部屋ごとの仕上げ寸法に依存する場合は、下地段階と仕上げ段階で壁位置の基準が変わることを見込みます。
高さは、床仕上げ面からの寸法なのか、構造床からの寸法なのか、天井仕上げ面を基準とするのかを明記します。天井高さが部屋ごとに異なる場合や、段差天井がある場合は、同じ高さ記号を一律に使わないよう注意します。ダクト接続芯の高さと排煙口見付け面の高さは別の情報です。断面図や現場指示図に両方を記載し、接続部の寸法関係を明確にします。
墨出し後は、基準点を含む全景写真、器具記号が読める近景写真、寸法確認写真、天井裏の干渉確認写真を残します。写真だけでは位置を数値で復元できないため、通り芯からの座標、天井高さ、開口寸法、図面番号、図面版、確認日、確認者も記録します。変更があった場合は、変更理由と承認者を追記し、古い記録と混同しないよう管理します。
記録の目的は、責任の所在を示すことだけではありません。天井材で墨が隠れた後に位置を再確認する、施工後の検査で設計図と照合する、改修時に既存設備を把握するといった場面で役立ちます。排煙口は天井裏に多くの構成部材を持つため、完成後に見えなくなる情報を施工中に残す価値が高い設備です。
排煙口を墨出しする実務手順
実務では、最初に最新図面を集約し、排煙口ごとの一覧を作成します。器具記号、設置室、排煙区画、系統番号、器具寸法、天井開口寸法、接続方向、設置高さ、操作方式をそろえます。図面間で不一致があれば、この段階で質疑を出します。現場へ行ってから図面の違いに気づくと、その場の判断で仮置きしやすくなるため、机上確認を先に行うことが重要です。
次に、現場の基準墨を確認します。通り芯、返り墨、陸墨、天井高さ基準が正しいかを、建築担当者と共有します。壁仕上げ前であれば、仕上げ厚を考慮して排煙口位置を出します。軽量下地壁は施工途中で位置が調整されることもあるため、確定した壁基準かどうかを確認します。
その後、天井裏の現況を確認します。梁、デッキ、ブレース、配管、ダクト、ケーブルラック、吊りボルト、下地材を見て、施工図どおりの空間があるかを確認します。図面上で干渉がなくても、実際の吊り材位置や継手の張り出しによって納まらないことがあります。必要に応じて、排煙口位置から上部を鉛直に追い、接続予定位置を現物で確認します。
現況確認後、排煙口中心を二方向の基準から墨出しします。中心を出したら、器具の向きと接続方向を表示します。長方形の排煙口では、中心だけでは九十度回転した状態でも取り付けられてしまうため、長辺方向と操作部側を明記します。続いて、承認図に基づいて天井仕上げ開口と下地補強範囲を示します。
墨出しが終わったら、天井伏図の割付と照合します。目地、照明列、周辺器具との関係を天井面で確認し、見付け上の不自然なずれがないかを見ます。同時に、天井裏でダクト接続が成立するかを再確認します。表と裏のどちらか一方だけで合否を判断しないことがポイントです。
最後に、建築、設備、電気、防災の関係者で確認し、確定墨として承認します。変更が必要な場合は、変更後の位置を図面へ反映し、古い位置表示を残しません。現場写真と寸法記録を保存し、天井下地施工、ダクト接続、ボード開口の各担当者へ共有します。
排煙口の墨出しで起こりやすい手戻り
よくある手戻りの一つは、排煙口の中心とダクト接続口の中心を同じだと思い込むことです。器具外形だけを基に開口すると、接続口が梁側へ寄り、ダクトをつなげられない場合があります。承認図で接続部の偏心寸法を確認し、天井面の中心と天井裏の接続芯を分けて管理する必要があります。
次に多いのは、天井伏図と設備施工図の更新時期が異なり、位置が食い違うケースです。設備側は梁回避のため位置を変更している一方、意匠側は元の割付のままということがあります。どちらか一方を正と決めつけず、変更理由を確認したうえで統合図を更新します。
天井開口の寸法違いも起こりやすい問題です。器具外形寸法をそのまま開口寸法として切る、取付枠の掛かりを見込まない、補強材の厚みを考慮しないといった原因があります。天井業者へ渡す寸法は、承認図に示された施工開口寸法であることを確認します。器具の呼び寸法やダクト寸法から推測してはいけません。
高さ方向では、天井懐不足による手戻りが目立ちます。排煙口本体は入っても、上部の接続管や開閉機構が梁下へ当たることがあります。平面調整だけでは解決できないため、断面図を作成し、梁下、天井下地、器具上端、ダクト下面の関係を確認します。
点検口の位置不良も完成後に問題になります。排煙口のすぐ近くに点検口があっても、開口方向が逆、内部に配管がある、工具を振れないなど、実際には点検できないことがあります。点検口位置を墨出しする際は、作業者の手と工具の動きを想定し、必要に応じて作業範囲を天井下地へ示します。
変更墨が残ったまま施工されることもあります。赤、青、黒など複数の墨が残り、どれが確定位置か分からなくなる状態です。変更時は古い墨を消すか無効印を付け、確定日と図面番号を記します。口頭だけで変更を伝えず、図面と現場表示を同時に更新します。
多職種調整を円滑にする伝達方法
排煙口の位置調整は、一つの職種だけでは完結しません。建築担当者は天井割付と下地補強、空調担当者は排煙ダクトと器具接続、電気担当者は電源や信号線、防災担当者は作動系統、内装担当者は開口加工と仕上げを確認します。それぞれの図面を個別に回すだけでは、境界部分の責任が曖昧になります。
調整会議では、排煙口ごとに未決事項を具体化します。単に「天井内で調整」と記すのではなく、どの梁を避けるのか、どちらへどの程度移動可能か、天井目地を優先する範囲はどこか、点検口をどの側へ設けるかを決めます。決定事項は図面上へ反映し、担当者、決定日、承認者を記録します。
現場では、排煙口の中心墨だけでなく、器具記号、系統番号、接続方向、開口寸法を一つの表示としてまとめると伝達しやすくなります。文字が多すぎると見づらいため、共通記号を決め、詳細は図面番号で参照できるようにします。現場表示と図面の記号を一致させることで、施工者が別の器具を取り付けるミスを防げます。
調整内容を写真で共有する場合は、排煙口位置だけを拡大して撮らず、通り芯や壁、照明列など周辺基準が分かる全景も撮影します。近景だけでは、どの部屋のどの位置か判断できません。写真に器具番号と方向を付記し、図面上の位置と関連付けます。
また、天井が閉じる前に中間確認を設けることが有効です。排煙ダクトが接続され、支持材と補強が施工され、配線や操作部が納まった状態で確認します。この時点なら修正範囲を抑えられます。天井仕上げ後に不具合が見つかると、ボード撤去、再塗装、器具再取付など複数工程へ影響します。
施工後と検査前に確認したい事項
施工後は、まず排煙口の位置、向き、外観を設計図と照合します。天井目地からのずれ、器具の傾き、枠と仕上げ面の隙間、開口周囲の欠け、固定不良がないかを確認します。複数の排煙口が並ぶ場合は、個別寸法だけでなく、列としての通りや高さも見ます。
次に、排煙口が支障なく開放するかを確認します。羽根やパネルが照明、壁、見切り、天井材へ当たらないこと、途中で引っ掛からないこと、復旧操作ができることを確認します。作動確認は関係者の管理下で行い、連動する設備や警報への影響を把握したうえで実施します。
天井裏では、排煙口とダクトの接続部に外れ、隙間、著しい変形、無理な引張りがないかを見ます。支持材が器具やダクトの重量を計画どおりに受け、天井仕上げ材へ不要な負担をかけていないかも確認します。可動部や操作部の近くに配線や被覆材が入り込み、動きを妨げていないことも重要です。
点検口から必要箇所へ到達できるかも実際に確認します。目視だけで済ませず、点検蓋を開け、手や工具を入れられるかを確かめます。点検口の開閉が照明器具や壁へ当たる、固定家具の設置後に脚立を置けないといった問題は、建物の引渡し前に解消します。
定期検査の対象となる機械排煙設備では、排煙口の開放状況、排煙風量、排煙風道との接続状況、排煙機の作動状況などが確認項目に含まれます。排煙口の風量測定については、国土交通省告示に基づく検査方法として、同一断面内から偏りなく五か所を抽出し、各点を三十秒以上測定する方法が示されています。実際の測定範囲、測定位置、判定方法は、適用される検査基準や検査計画に従い、有資格者や担当者の指示のもとで確認します。墨出し担当者は、測定や点検を妨げない開口形状と周辺空間が確保されているかを確認します。
検査で位置変更や施工不良が見つかった場合は、その場しのぎの補修で終わらせず、原因が図面、墨出し、施工、変更管理のどこにあったか整理します。同じ系統や同じ階の排煙口にも同様の不具合がないか水平展開して確認します。個別の一台だけを直すと、別の場所で同じ問題が再発する可能性があります。
まとめ
排煙口の墨出しを正確に行うには、天井面の位置だけでなく、排煙区画、排煙方式、ダクト接続、器具の開閉機構、天井下地、仕上げ割付、他設備との干渉、点検空間までを一体で確認する必要があります。最初の確認は、対象となる排煙区画と系統を取り違えないことです。次に、器具中心と接続口中心の違いを把握し、無理のないダクト経路と正しい開口寸法を確保します。そのうえで、天井目地や照明列との関係を整え、他設備との離隔と将来の点検性を守ります。最後に、平面位置と高さの基準を統一し、施工後にも復元できる記録を残します。
排煙口は、小さな位置ずれでも複数職種の手戻りにつながることがある設備です。だからこそ、墨出しを単なる線引きではなく、設計情報を現場で統合する確認工程として扱うことが大切です。最新図面の版管理、承認図による寸法確認、平面と断面の照合、天井閉鎖前の中間確認を徹底すれば、ダクト接続と天井割付の両立がしやすくなります。
現場の基準点、排煙口位置、天井裏の状況、変更履歴を位置情報とともに整理すると、施工前後の確認や関係者への共有が行いやすくなります。墨出し記録の効率化や現況確認の精度向上を検討する際は、承認された現場運用に沿ってLRTK Phoneを記録手段の一つとして活用できます。