土地改良区の賦課金は、農業用水路、排水路、揚水機場、ため池、農道などの土地改良施設を維持管理し、地域の営農環境を支えるための重要な財源です。賦課金の徴収が予定どおり進まなければ、施設の点検や補修、電気設備の運転、除草、浚渫、災害時の応急対応といった日常業務にも影響が及ぶ可能性があります。 一方、滞納の原因は単純な支払い拒否だけではありません。賦課通知が旧住所へ送られている、相続や農地の売買後も組合員情報が更新されていない、納期限を失念している、賦課金の計算根拠が理解されていないなど、徴収管理の仕組みによって防げる問題も含まれます。 土地改良区が滞納を減らすためには、納期限を過ぎてから督促を強化するだけでは不十分です。賦課台帳の整備、通知内容の改善、納期限前後の連絡、滞納整理簿による進捗管理、相談から滞納処分までの判断基準を一つの流れとして設計する必要があります。 この記事では、土地改良区の実務担当者に向けて、賦課金滞納を減らす徴収管理の5つの工夫を解説します。土地改良法や各土地改良区の定款、規約、総会または総代会の議決内容を確認しながら、地域の実情に合った運用へ落とし込むことが大切です。
土地改良区の賦課金滞納が徴収管理に及ぼす影響
土地改良区の賦課金には、事務運営費や施設の維持管理費などに充てる経常的な賦課金のほか、土地改良事業に伴う負担金や償還金などに充てる特別な賦課金があります。実際の区分、賦課対象、算定基準、徴収時期、納付方法は土地改良区によって異なるため、それぞれの定款、規約、予算、総会または総代会の議決内容に基づいて運用することが前提です。 賦課金の滞納が増えると、最初に問題となるのは資金繰りです。年度内に予定していた収入が入らなければ、維持管理費や事業費の支出時期とのずれが生じます。少額の滞納でも長期間にわたり積み重なると未収額が膨らみ、翌年度以降の予算編成や施設管理計画へ影響する可能性があります。 徴収事務そのものの負担も増加します。督促状の作成、返戻郵便の確認、電話連絡、訪問、納付相談、入金照合、記録更新などに時間がかかり、通常業務が圧迫されます。担当者ごとに対応方法が異なる場合には、引き継ぎのたびに経緯を調べ直さなければならず、連絡漏れや二重連絡も発生しやすくなります。 さらに重要なのが、組合員間の公平性です。納期限までに納付している組合員がいる一方で、長期間にわたる滞納が事実上放置されているように見えると、土地改良区の運営に対する信頼が損なわれます。ただし、公平性を確保することは、すべての滞納者へ機械的に同じ言葉を投げかけることではありません。同じ条件には同じ手順を適用しつつ、災害、病気、相続手続中、経営状況の急変、通知先の不明など、個別事情を確認できる仕組みも必要です。 滞納の背景には、賦課台帳と現況の不一致が隠れている場合もあります。農地の売買、相続、貸借、住所変更、法人化、地区除外、地目や面積に関する変更などが土地改良区へ適切に通知されていなければ、賦課通知が現在の関係者へ届かないことがあります。行政機関で別の手続を終えていても、土地改良区の台帳が自動的に更新されるとは限りません。 そのため、徴収率という結果だけを見ていても、根本的な改善にはつながりにくいのです。賦課前の台帳整備から、納期限前の案内、入金確認、督促、相談、滞納整理までを一連の業務として捉える必要があります。滞納を減らす徴収管理とは、強い督促を行うことではなく、誤りや行き違いを減らし、納付者が理解して期限内に納めやすい環境を整えたうえで、未納案件には一貫した手順で対応することです。
工夫1 賦課台帳と組合員情報を納付前に整える
最初の工夫は、賦課通知を発送する前に、賦課台帳、組合員名簿、土地原簿、送付先情報を点検することです。徴収管理の入口で情報が誤っていれば、丁寧な通知や早期督促を行っても効果は限られます。 点検では、組合員の氏名または名称、住所、連絡先、組合員資格に関係する土地、地番、地目、面積、賦課区分、賦課単価、過年度の未収額、送付先の指定などを相互に確認します。共有名義、相続手続中、法人の代表者変更、遠隔地居住、複数地区にまたがる土地など、誤りが生じやすい案件には確認区分を設けておくと効率的です。 住所不明や返戻郵便が発生した案件を、その年度だけの問題として処理しないことも重要です。返戻理由、確認した連絡先、照会先、再発送日、今後の送付先を台帳へ反映しなければ、翌年度も同じ作業が繰り返されます。返戻郵便を受け取った担当者が個人のメモだけで処理するのではなく、更新が必要な案件として管理する仕組みが必要です。 農地の売買や相続、貸借などによって組合員資格に変更が生じた場合には、関係者から土地改良区への通知が必要になることがあります。土地改良区側では、どのような変更時に、どの様式を、誰が提出する必要があるのかを分かりやすく案内することが欠かせません。窓口で口頭説明するだけでなく、賦課通知への案内同封や定期的な広報によって、変更届の存在を周知するとよいでしょう。 ここで注意したいのは、土地の所有者、耕作者、実際に納付する人が常に同一とは限らない点です。関係者間で費用を分担している場合でも、土地改良区が誰に賦課すべきかは、法令、定款、資格関係、届出内容などに基づいて判断する必要があります。私人間の契約だけを理由に、土地改良区の台帳上の賦課先を自動的に変更することは避けなければなりません。 賦課額の算定では、台帳に登録された面積へ単価を掛けるだけで終わらせず、賦課対象区域、事業区分、田畑などの区分、減免の有無、過年度修正の反映状況まで確認します。前年度から大きく増減した人、初めて賦課される人、賦課対象から外れる人を抽出し、理由を確認する差分点検が有効です。 賦課データを作成する職員と承認する職員を分け、作成、確認、承認、通知発送の各段階を記録することも大切です。少人数の土地改良区で完全な役割分担が難しい場合でも、賦課件数、調定額、前年度との差、台帳更新件数などを確認するチェック表を設ければ、見落としを減らせます。 台帳の精度向上は、誤った請求を防ぐだけではありません。通知が正しい相手へ届き、問い合わせに根拠を示して回答できるようになるため、納付者の不信感を減らす効果も期待できます。滞納が発生してから相手を探すのではなく、賦課前に連絡可能な状態をつくることが徴収管理の基本です。
工夫2 賦課根拠と納付方法を分かりやすく伝える
二つ目の工夫は、賦課通知を単なる請求書ではなく、納付者が内容を確認して期限内に行動できる案内として設計することです。賦課金に慣れている組合員には問題のない表現でも、新たに農地を取得した人、相続人、地域外に住む所有者には分かりにくい場合があります。 賦課通知には、対象年度、納付義務者、対象となる土地、賦課区分、算定の基礎、納付額、納期限、納付方法、問い合わせ先を整理して表示します。土地が複数ある場合には、どの土地に対する賦課なのかを確認できる明細を添えると、問い合わせ時の行き違いを減らせます。 経常的な賦課金と事業負担などに関係する賦課金が併存する場合には、それぞれが何に使われるものかを簡潔に説明します。金額だけを示されると、納付者は前年との差や負担の必要性を理解しにくくなります。用排水施設の維持管理、揚水設備の運転、補修、事務運営など、賦課金の役割を一般向けの言葉で伝えることが重要です。 ただし、説明を分かりやすくするために、法令や定款にない独自の意味を付け加えてはいけません。実際の賦課根拠と異なる説明や、特定の支出だけに使われるように見える表現は避けます。通知文は、会計担当者だけでなく、賦課決定に関わる担当者や責任者も確認し、議決内容や予算との整合を取る必要があります。 前年から賦課額が変わった場合には、変更理由を確認できる案内が有効です。面積の変更、賦課単価の変更、事業区分の変更、過年度調整など、主な理由を説明できるようにします。すべてを通知書に書き込むと読みにくくなる場合は、問い合わせ時にすぐ回答できる説明資料を内部で準備しておきます。 納付方法は、土地改良区が採用できる範囲で複数用意すると、失念や手間による未納を減らしやすくなります。窓口納付、金融機関での振込、口座からの自動引き落としなど、それぞれの手続、利用開始の期限、必要な届出を明確に伝えます。新しい納付方法を導入する場合には、手数料の負担、入金データの受け取り方、本人との照合方法、過年度分の扱い、誤入金への対応を事前に整理することが欠かせません。 口座からの自動引き落としを利用している場合でも、残高不足や口座変更によって納付できないことがあります。引き落とし不能が判明した後、いつ、どの方法で再案内するかを決めておく必要があります。引き落としを再度行うのか、別の納付方法を案内するのかが曖昧だと、納付者も対応できません。 電子メールや携帯電話への短文通知を補助的に使う場合は、本人の同意、連絡先の確認、個人情報の取扱い、誤送信防止を徹底します。通知本文に必要以上の個人情報や土地情報を記載せず、正式な賦課通知との関係も明確にします。電子的な連絡だけで法令や定款に基づく正式な手続を代替できるとは限らないため、位置付けを分けて運用することが必要です。 問い合わせ窓口では、誰が対応しても基本的な説明がそろうように、想定質問と回答方針を共有します。「農業をしていない」「水を使っていない」「土地を貸している」「すでに売却した」「相続したばかり」といった質問には、個別の資格関係や届出状況を確認して答えなければなりません。電話だけで即断せず、対象土地と台帳を確認してから回答する手順を定めると、誤案内を防げます。 分かりやすい通知は、賦課金への理解を促すだけでなく、台帳の誤りを早期に発見する機会にもなります。納付者からの問い合わせを苦情として処理するのではなく、台帳整備や案内改善につなげる情報として蓄積することが大切です。
工夫3 納期限前後の連絡と法定督促を工程化する
三つ目の工夫は、納期限前の案内から法令に基づく督促までを年間工程として定めることです。滞納が発生するたびに担当者が個別判断すると、対応時期が遅れたり、同じ条件の滞納者に異なる対応をしたりする原因になります。 最初に、賦課決定、通知発送、納期限、入金データの受領、消込、未納者抽出、納付案内、督促状発行、その後の催告や相談という流れを時系列で整理します。各工程について、担当者、確認者、使用する帳票、記録先、完了期限を決めます。 納期限前には、賦課通知が届いていない可能性や納期限の失念を想定した案内を行います。全員に追加通知を行う方法のほか、過去に失念が多い人や返戻歴がある人を対象にする方法もあります。ただし、対象者の選び方が担当者の感覚だけにならないよう、抽出条件を定める必要があります。 納期限の直後には、入金反映の時間差を考慮して未納者を抽出します。納付済みなのに未納として連絡してしまうと、土地改良区への信頼を損ないます。入金日、入金方法、名義、対象年度、対象者を確認し、名義が異なる入金や複数年度分の一括納付も照合します。 口頭や任意の案内と、土地改良法に基づく督促状は区別して管理しなければなりません。土地改良法では、賦課金等を滞納する者がいる場合、督促状により期限を指定して督促することが定められています。正式な督促を電話や通常の案内文だけで済ませることは避け、督促状の発行日、送付先、指定期限、対象債権、送付方法を記録します。 督促状を発行する期限については、それぞれの土地改良区の定款を確認する必要があります。一般的な定款例には納付期限後の一定期間内に督促状を発する規定がありますが、実際の運用は自らの定款や関係規程に従わなければなりません。年間予定へあらかじめ発行日を組み込み、担当者の多忙を理由に遅れないようにします。 督促状には、対象年度、未納額、当初納期限、督促後の指定期限、納付方法、問い合わせ先などを正確に記載します。延滞金、過怠金、督促に伴う費用などを扱う場合は、法令、定款、規約その他の根拠を確認し、担当者の判断で加算や免除を行わないようにします。 送付後に郵便が返戻された場合は、返戻日と理由を記録し、住所調査や関係者への確認を進めます。再送した場合も、最初の送付記録を消さず、経過が分かる形で残します。電話連絡を行った場合は、通話日時、相手、確認した内容、納付予定、再連絡日を記録します。 工程化の利点は、督促を早く行えることだけではありません。未納案件がどの段階にあるかを一覧で把握でき、対応漏れを防げます。担当者が交代しても同じ手順を継続でき、理事会や監事へ徴収状況を説明するときにも根拠を示しやすくなります。 また、納期限前の案内、納期限後の納付勧奨、法的な督促、その後の催告を文書上でも区別することで、相手に現在の段階を明確に伝えられます。表現が強すぎる文書を初期段階から送ることや、反対に長期滞納へ通常の案内だけを繰り返すことを防げます。
工夫4 滞納整理簿で原因と対応履歴を一元管理する
四つ目の工夫は、滞納整理簿を整備し、未収額だけでなく原因、連絡状況、次の対応まで管理することです。滞納者の一覧に氏名と金額だけを並べても、徴収業務の進捗管理には十分ではありません。 滞納整理簿には、納付義務者、対象土地、賦課年度、賦課区分、当初納期限、未収額、督促状発行日、督促後の期限、返戻の有無、連絡履歴、相談内容、納付予定、分割納付の状況、次回対応日、担当者などを記録します。過年度分がある場合は、年度ごとの債権を区別して確認できるようにします。 対応履歴は、単に「電話済み」と書くのではなく、いつ、誰が、誰に、何を確認し、どのような回答があったかを残します。「来月払う」という回答があった場合も、具体的な予定日、納付方法、再確認日まで記録しなければ、再び放置される可能性があります。 滞納原因には、通知未達、納期限の失念、名義変更未処理、賦課内容への疑問、納付方法の不便、資金事情、相続関係の未整理、納付者不明、連絡拒否など、さまざまなものがあります。原因を分類すれば、土地改良区全体としてどの対策を優先すべきかが見えてきます。 例えば、通知未達が多ければ住所確認と変更届の周知を見直します。納期限の失念が多ければ事前案内や自動引き落としの案内を強化します。賦課内容への疑問が多ければ、通知書の明細や説明資料を改善します。相続関係の未整理が多ければ、必要な届出と相談窓口を分かりやすく示します。このように、滞納整理簿は督促対象者を管理するだけでなく、徴収管理全体を改善する材料になります。 案件は、発生年度、未収額、滞納期間、連絡可能性、納付意思、過去の約束履行状況、資格関係の確認状況などによって整理します。ただし、金額が小さいから放置してよいわけではありません。少額でも長期間放置すれば未収管理が複雑になり、公平性にも影響します。少額案件には効率的な定型手順を適用し、高額または長期の案件には責任者を含めた個別確認を行うなど、処理方法を分けます。 滞納整理簿の更新日を決めることも重要です。担当者が必要なときだけ開く台帳では、情報が古くなります。入金データを受領した日、督促状を発送した日、電話連絡を行った日など、更新すべきタイミングを明確にします。月ごとに未収残高と対応状況を確認し、次回対応日を過ぎた案件を抽出する仕組みも有効です。 個人情報を扱うため、閲覧権限、保管場所、持ち出し、印刷物の管理、保存期間も定めます。滞納理由や家庭事情などは特に慎重な取扱いが必要です。業務に必要な範囲を超えて記録せず、役員や職員の間でも必要な情報だけを共有します。 集計時には、当年度の賦課調定額、徴収済額、当年度未収額、過年度分の徴収額、過年度未収残高を分けて確認します。当年度の徴収率だけが高くても、過年度未収が増えていれば改善したとはいえません。経常的な賦課金と特別な賦課金を区分し、過去数年間の推移を確認すると、滞納が一時的なものか構造的なものかを判断しやすくなります。 担当者の評価を徴収額だけに結び付けることは避けたほうが安全です。台帳誤りの解消、返戻先の確認、相談記録の整備、長期案件の方針決定など、将来の滞納を防ぐ活動も重要です。数字と業務品質の両方を確認することが、持続可能な徴収管理につながります。
工夫5 相談対応と滞納処分への移行基準を明確にする
五つ目の工夫は、納付相談を受ける段階と、法令に基づく次の手続へ進む段階の判断基準を明確にすることです。事情を確認せず強い対応へ進めば対立を招きますが、相談を理由に期限のない先送りを続けても公平性を保てません。 納付相談では、まず本人確認と対象債権の確認を行います。そのうえで、未納となった理由、通知の受領状況、賦課内容への疑問、納付可能な時期、今後の連絡方法を確認します。相手の説明を聞くことと、土地改良区が賦課内容を再確認することを分けて進めると、感情的な対立を避けやすくなります。 賦課内容に疑問が示された場合は、その場で納付拒否と判断せず、対象土地、賦課基準、議決内容、台帳更新履歴を確認します。土地改良区側に誤りがあれば、所定の手続に従って修正します。誤りがない場合も、計算過程や賦課根拠を説明し、質問と回答を記録します。 一時的に納付が難しいという相談について、分割納付や納付時期の調整を扱えるかどうかは、土地改良区の定款、規約、内部規程、議決内容などを確認して判断します。担当者が口頭で独自に支払条件を約束してはいけません。利用できる制度がある場合には、申出方法、承認者、納付計画、適用条件、約束が守られなかった場合の扱いを統一します。 分割納付を認める場合も、滞納整理簿上では完納まで未収として管理します。最初の支払いがあっただけで案件を終了せず、各回の納付日と残額を更新します。約束した日に納付がなかった場合は、いつ再連絡し、どの段階へ戻すかを事前に決めます。 災害、病気、経営環境の急変などを理由とする相談では、減免や猶予に相当する取扱いが可能かを根拠に照らして確認します。事情が深刻であることだけを理由に担当者が独断で決めるのではなく、必要な申請、確認資料、決定権者を定めます。同様の事情に対する判断が年度や担当者によって大きく変わらないよう、過去の取扱いも参照できる状態にしておくことが重要です。 一方、連絡に応じない、納付約束が繰り返し守られない、長期間にわたり未納が続くといった案件では、通常の案内を繰り返すだけでなく、次の手続を検討する必要があります。どの条件で責任者へ報告し、理事会などで対応方針を確認するかを内部基準として整理します。 土地改良法第39条では、督促後も指定期限までに完納されない場合に、市町村へ徴収を請求できる仕組みが定められています。市町村は請求を受けた場合、地方税の滞納処分の例によって処分することとされています。また、市町村による対応が法令上の一定期間内に進まない場合には、都道府県知事の認可を受けたうえで土地改良区の理事が処分を行える場合があります。 ただし、滞納処分は通常の電話催告や訪問徴収の延長として簡単に実施できるものではありません。督促の適法性、債権額、納付義務者、時効、送達、財産調査、認可、処分記録など、多くの確認が必要です。土地改良区だけで判断を進めず、都道府県、市町村、土地改良事業団体連合会、必要に応じて法律や徴収実務の専門家へ相談することが重要です。 滞納処分へ進む可能性を通知する場合も、威圧的な文言を用いるのではなく、現在の未納額、これまでの督促、指定期限、今後取り得る手続を正確に伝えます。法令上可能な措置と、実際に決定済みの措置を混同しないよう注意します。 相談対応と厳格な手続は対立するものではありません。早い段階で相談できる窓口を用意し、それでも解消しない案件には定められた手順で対応することが、公平で説明可能な徴収管理につながります。
徴収管理の改善を定着させる実行手順
徴収管理を改善するときは、最初から大規模な仕組みへ変更するのではなく、現在の業務を可視化して問題の大きい部分から見直します。まず、賦課決定から完納までの業務を時系列で書き出し、誰が何を行っているかを確認します。 現状整理では、賦課台帳の更新時期、通知発送日、納期限、入金確認日、未納者の抽出日、督促状の発行日、相談記録の保存方法、長期滞納案件の報告先を確認します。担当者しか分からない作業や、実施時期が決まっていない作業があれば、それが対応漏れの原因になっていないかを調べます。 次に、過去数年間の滞納を原因別に分類します。返戻郵便、名義変更、相続、納期限の失念、口座引き落とし不能、賦課内容への疑問、支払困難、連絡不能などに分けると、予防できる滞納と個別対応が必要な滞納を区別できます。 改善の優先順位は、件数だけでなく未収額、滞納期間、事務負担、再発頻度を踏まえて決めます。例えば、返戻郵便の件数が多い場合は、発送前の住所確認と返戻後の更新手順を先に整えます。納期限の失念が多い場合は、通知書の見直しや事前案内を優先します。長期案件が放置されている場合は、責任者を決めて対応方針を個別に確認します。 運用手順を決めた後は、賦課通知、納付案内、督促状、相談記録、滞納整理簿などの様式をそろえます。帳票ごとに目的を明確にし、通常の案内と正式な督促が混同されないようにします。様式を変更したときは、法令、定款、規約、個人情報保護、会計処理との整合も確認します。 新しい運用は、まず一つの年度や限定した範囲で試し、問い合わせ件数、返戻件数、納期限内の納付状況、督促後の納付状況、職員の作業時間などを確認します。電子化や自動化を導入しても、入力データが誤っていれば誤った処理を早く行うだけになってしまいます。台帳点検と承認の仕組みを残しながら効率化を進めることが大切です。 定着のためには、月次または一定の周期で進捗を確認します。未収残高だけでなく、督促未発行件数、返戻未処理件数、次回対応日超過件数、納付相談中の件数、長期滞案件の方針決定状況を確認すると、業務の停滞を早期に見つけられます。 年度末には、徴収実績とともに運用上の問題を振り返ります。どの案内が分かりにくかったか、どの台帳項目で誤りが多かったか、どの時期に問い合わせが集中したかを整理し、翌年度の通知文や年間工程へ反映します。 担当者が交代しても徴収管理の品質が変わらないよう、年間予定、操作手順、確認項目、相談時の判断経路を文書化します。例外案件についても、個人情報へ配慮しながら判断の考え方を共有すると、同様の案件へ一貫した対応ができます。 徴収管理は会計担当者だけの業務ではありません。組合員情報を管理する担当者、農地の異動や地区除外を扱う担当者、土地改良施設を管理する技術担当者、役員、監事が情報を共有する必要があります。賦課の根拠となる土地や施設の現況と、会計上のデータを切り離さずに扱うことが改善の定着につながります。
現場情報を賦課台帳の精度向上につなげる
土地改良区の賦課管理では、書類上の情報と現地の状況が一致しているかを確認しなければならない場面があります。対象土地の位置、用排水施設との関係、区域の境界、農地の利用状況などが不明確であれば、問い合わせへの説明や台帳更新に時間がかかります。 現地確認を行うときは、確認対象の地番、台帳上の組合員、賦課区分、確認目的を整理してから訪問します。現場では、確認日時、担当者、位置、写真、確認内容を記録し、事務所へ戻った後に台帳と照合します。単に写真を撮影するだけでは、後からどの場所の記録か分からなくなることがあるため、位置情報と関連付けて管理することが有効です。 ただし、現地で確認した畦畔や耕作範囲が、そのまま公的な筆界や権利関係を示すとは限りません。測位結果や現況写真は台帳確認の参考資料として扱い、登記、換地関係書類、土地原簿、届出などの正式な資料と区別します。境界や権利関係に疑義がある場合は、関係機関や専門家による確認が必要です。 現地記録の方法を統一すると、担当者による記録品質の差を減らせます。撮影方向、対象物、位置、コメント、台帳番号などの記録項目を決め、事務所のデータと同じ識別情報を使います。変更前と変更後の状況を比較できるようにすれば、農地や施設の変化を追いやすくなります。 高精度な位置情報を取得できる測量機器を利用する場合も、衛星の受信環境、補正情報の状態、周囲の樹木や建物、測定方法によって精度は変化します。測位状態を確認し、必要に応じて既知点との照合や再測定を行うことが大切です。測定値だけを見て確定的な判断をしないよう、利用目的と必要精度を事前に定めます。 現場情報が整理されれば、賦課台帳の確認だけでなく、施設管理、補修計画、組合員への説明にも活用できます。徴収管理と現場管理を別々の記録にせず、対象土地や施設を共通の識別情報で結び付けることが、土地改良区全体の事務効率向上につながります。
まとめ
土地改良区の賦課金滞納を減らすには、滞納後の督促だけに力を入れるのではなく、賦課前から完納までの業務全体を見直す必要があります。賦課台帳と組合員情報を整備し、納付者が理解しやすい通知を作成したうえで、納期限前後の連絡と法令に基づく督促を計画的に実施することが基本です。 未納が発生した後は、滞納整理簿へ原因、対応履歴、納付予定、次回対応日を記録します。相談には個別事情を確認しながら対応しつつ、担当者の裁量だけで条件を変えない仕組みが必要です。長期滞納については、通常の案内を繰り返すだけでなく、法令や定款に沿って責任者、役員、関係機関へつなぐ基準を明確にします。 土地改良区ごとに賦課基準や組織体制は異なるため、他地域の方法をそのまま導入するのではなく、自らの定款、規約、総会または総代会の議決内容、行政庁の指導を確認しながら運用を整えることが重要です。 現地と台帳の不一致が徴収事務の負担になっている場合には、対象土地や施設の位置、写真、確認履歴を一体的に記録する方法も役立ちます。土地改良の現場確認を位置情報とともに効率化したい場合は、LRTK Phoneの詳細をご覧ください。