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12条点検で外壁タイルの浮きを見逃さない打診調査7ポイント

12条点検と外壁タイル打診調査の基本

12条点検は、一般に建築基準法第12条に基づく定期報告制度のうち、建築物の定期調査を指す実務上の呼び方です。建築物の使用開始後も安全性や適法な状態を維持するため、対象建築物の所有者または管理者が、法令で定められた資格者に調査させ、その結果を特定行政庁へ報告します。対象となる用途、規模、報告時期、提出様式などは全国一律ではなく、国の指定に加えて特定行政庁の指定や運用が関係するため、調査前に所管行政庁の最新案内を確認する必要があります。

外壁の調査では、外装仕上げ材の種類を正しく区別することが出発点です。タイル、石張り、モルタルなどであっても、湿式の張付け工法と乾式工法では告示上の調査項目や確認方法が異なります。外観だけで工法を決めつけず、仕上表、立面図、外壁詳細図、改修図、施工記録、現地の端部納まりを照合し、どの部分が打診等の対象になるかを整理します。

現行の告示では、乾式工法を除くタイル、石張り等やモルタル等について、開口隅部、水平打継部、斜壁部等のうち手の届く範囲をテストハンマーによる打診等で確認し、その他の部分を必要に応じて双眼鏡等を用いた目視で確認する方法が示されています。異常が認められた場合は、落下により歩行者等へ危害を加えるおそれのある部分を全面的な打診等で確認することが基本です。

さらに、竣工後、外壁改修後、または危害を加えるおそれのある部分の全面的な打診等を実施した後から10年を超え、かつ直近3年以内に当該部分の全面的な打診等を実施していない場合は、原則として危害を加えるおそれのある部分を全面的に確認します。ただし、3年以内に外壁改修等を行うことが確実な場合や、別途歩行者等の安全を確保するための対策を講じている場合など、告示上の例外があります。したがって、築10年という数字だけで全外壁の調査方法を決めるのではなく、前回の全面打診等の実施日、改修範囲、危害のおそれがある部分、例外条件、所管行政庁の運用を資格者が確認することが重要です。

また、所定の落下防止措置を備え、必要な試験資料、仕上表、立面図、断面図、施工記録等を確認できる外壁タイルについては、別途歩行者等の安全を確保するための対策を講じているものとして扱える場合があります。これは外観だけで判断できる例外ではありません。必要資料が確認できない場合は、落下防止措置付きであると推測して調査を省略せず、従前の考え方に沿って全面打診等の要否を検討します。

打診調査の目的は、仕上げ面を軽く打撃したときの音質や器具へ返る感触の違いから、浮きが疑われる範囲を把握することです。ただし、打診音だけで剥離界面、残存付着力、将来の剥落時期まで確定できるわけではありません。目視所見、打診反応、位置、広がり、仕上げ構成、過去の補修、周囲の利用状況を総合し、法定報告、応急措置、詳細調査、改修計画へつなげる必要があります。

外壁タイルの浮きが生じる仕組みと見逃しのリスク

湿式のタイル仕上げは、タイル、張付け材料、下地モルタル、コンクリート躯体など複数の層で構成されることがあります。浮きは、これらの材料の接着界面などに間隙や剥離が生じ、周辺の健全部と異なる状態になったものです。発生する位置は一つではなく、タイルと張付け材料の間、張付け材料と下地の間、下地モルタルと躯体の間など、工法や施工状態、経年変化によって異なります。

浮きの原因も一つに限定できません。下地処理や材料の塗付け状態、養生など施工時の条件が影響する場合があるほか、日射による温度変化、乾湿の繰返し、躯体や下地のひび割れ、雨水の浸入、凍結融解、地震や振動、目地やシーリングの劣化などが複合する場合があります。見た目に大きな異常がなくても内部で付着低下が進んでいることがある一方、汚れや変色だけで浮きと断定することもできません。

浮きを見逃した場合の大きな問題は、将来の剥落につながる可能性を適切に評価できなくなることです。特に、出入口、歩道、敷地内通路、駐車場、駐輪場、搬入口、隣地利用範囲、低層屋根、バルコニーなど、人や物が存在する場所の上部では、落下物が事故につながるおそれがあります。ただし、浮きが確認された部分のすべてが直ちに剥落するわけではありません。浮きの広さ、ひび割れ、欠損、はらみ、タイル寸法、高さ、落下経路、下部の利用状況などを組み合わせ、緊急性を判断します。

見逃しは修繕計画にも影響します。位置や範囲が曖昧であれば、詳細調査で同じ場所を再確認できず、仮設範囲や補修数量の検討も不安定になります。12条点検を提出のための単発作業にせず、次回調査や改修へ引き継げる基礎資料を残すことが大切です。

ポイント1 調査対象範囲を図面と現地で照合する

最初に確認すべきことは、どの立面のどの範囲を、どの方法で調べるかです。範囲が曖昧なまま現場へ入ると、打診技術が適切でも重要な外壁面を調べ残す可能性があります。立面図、仕上表、竣工図、改修図、前回の定期調査報告書、外壁調査図、補修完了図などを集め、外装仕上げ材の種類と施工範囲を立面ごとに整理します。

図面上で同じタイル仕上げに見えても、増築部だけ工法が異なる、低層部だけ改修されている、一部が乾式工法へ変更されていることがあります。現地では、タイル寸法、目地形状、見切り、金物、端部納まり、補修跡を確認し、図面との差を洗い出します。工法を確定できない部分は推測で対象外にせず、追加資料の確認や必要な調査へつなげます。

次に、落下した場合に歩行者等へ危害を加えるおそれがある部分を平面図と立面図の両方で整理します。道路や歩道に面する外壁だけでなく、敷地内通路、出入口、搬入口、駐車区画、設備点検通路、隣接地、屋上、低層屋根なども確認します。普段は人通りが少なくても、清掃員や設備管理員が通る場所、特定の時間帯だけ利用される場所があります。調査当日の一時的な状況だけで対象を狭めないことが重要です。

過去に全面打診等や外壁改修を行っている場合は、実施年月と範囲を確認します。外壁改修済みという記録だけでは、全立面を改修したのか、部分補修なのか、注入なのか、張替えなのかが分かりません。改修範囲図、工事写真、施工記録、完了報告を照合し、どの面のどの高さまで処置したかを特定します。

調査対象図には、実施範囲だけでなく未調査範囲も示します。隣地へ立ち入れない、設備や看板が障害になる、庇上へ安全に接近できない、植栽を移動できないなどの理由を記録し、未調査部を結果から消さないことが大切です。対象面、対象外面、未調査部、調査方法の違いを明確にすると、打診漏れと報告上の誤解を防げます。

ポイント2 打診前の目視で劣化の連続性を読む

打診を始める前に、外壁全体を目視して劣化の分布を把握します。目視の目的は外観だけで浮きを確定することではありません。水の流れ、ひび割れの方向、補修跡、目地の切れ、変形などを確認し、重点的に打診すべき範囲と再確認箇所を予測することです。

まず離れた位置から立面全体を観察し、膨らみ、波打ち、タイルのずれ、色調の不連続、汚れ、白華、さび汁、ひび割れ、欠損、剥落跡、張替え跡を確認します。近接目視だけでは、ひび割れが複数階に連続しているか、雨だれがどの開口部から始まっているかなどの全体像を把握しにくいため、遠景、中景、近景の順で確認すると分布を整理しやすくなります。

近接目視ではタイル表面だけでなく、目地、シーリング、開口部周囲、金物周辺、設備配管の貫通部、笠木、水切り、異種材料の取合いを見ます。白華や汚れがある場所では、その部分だけでなく上方の水の入口と下方への広がりも追います。ひび割れは位置と方向を記録し、開口隅から斜めに延びるもの、階境付近を横方向に走るもの、材料の取合いに沿うものなどを周辺打診の手掛かりにします。

ただし、ひび割れがあるから必ず広範囲に浮いている、白華があるから剥落寸前であると断定してはいけません。目視所見は打診範囲の設定と判定の補助に使い、最終的には打診反応や周辺状況と合わせて評価します。

補修跡も重点的に確認します。注入孔、色の異なる目地、部分的な張替え、被覆仕上げなどがある場合は、補修範囲の内外を比較します。補修部が常に健全とは限らず、補修端部や未補修部に浮きが残っていることもあるため、過去の範囲図と現地を照合しながら確認します。

ポイント3 打診の強さと移動間隔を一定にする

打診による判定を安定させるには、器具の種類だけでなく、当て方、力、速度、移動間隔をできるだけ一定にします。場所ごとに強くたたいたり弱くなぞったりすると、同じ壁面でも音の印象が変わり、浮きの境界を誤りやすくなります。

仕上げを損傷させない程度の力で打診し、壁面に対する角度と接触状態をそろえます。タイル中央だけを大きな間隔で確認すると、小さな浮きや端部の異常を取りこぼす可能性があります。一方、劣化部を必要以上に強く打撃すると、仕上げへ不用意な衝撃を与えるおそれがあります。タイル寸法、形状、目地幅、張り方に応じた間隔で連続的に走査します。

走査順序も統一します。上から下、左から右など立面ごとに方向を決め、途中を飛ばさないようにします。異常音を確認したら、その位置を中心に縦横へ範囲を広げ、周囲の基準音へ戻る境界を探ります。境界が不明瞭な場合は、方向を変えて再打診し、隣接部との比較を繰り返します。

タイル中央、端部、目地付近では音や感触が変わることがあります。目地を直接強く打つのではなく、タイル上の位置をそろえて比較し、仕上げ構成に応じて判断します。小口タイル、大判タイル、モザイク状の仕上げなど、寸法や形状が異なる面を同一の感覚だけで判定しないことも重要です。

複数の調査者が担当する場合は、開始前に同一壁面の代表箇所を一緒に確認し、基準感覚を合わせます。調査途中でも相互確認を行い、音の表現、マーキング、範囲の囲み方、記録区分を統一すると、成果図のばらつきを抑えられます。

ポイント4 音の高低だけで浮きを断定しない

高い音なら健全、低い音なら浮きという単純な二分法は避けます。打診音は、タイルの厚さや寸法、目地、下地構成、空隙の位置と広さ、含水状態、壁端部や開口部との距離などによって変化します。同じ建物でも仕上げ仕様が変われば、基準となる音も変わることがあります。

判定では、絶対的な音の高さより、同一仕様と考えられる周辺部との相対比較を重視します。外観上の異常が少ない範囲で基準となる反応を確認したうえで、濁り、反響、響き方、器具へ返る感触の変化を確認します。異常が疑われる場合は一度で確定せず、周囲から入り直して再確認します。

開口部の近く、壁の角、庇の先端、薄い立上り、設備ボックス周辺などでは、形状や境界の影響で中央部と異なる響きになることがあります。反対に、広い範囲が同様に浮いていると、近くに健全部がなく、異常音を通常音と誤認する可能性があります。同一仕様の別階や別立面とも比較し、目視所見や改修履歴を重ねて判断します。

打診反応だけで剥離界面を確実に特定することも困難です。タイル裏の浮きと下地モルタルを含む浮きでは、補修方法や安全性の検討が異なる場合がありますが、音だけで明確に区別できないことがあります。改修設計や安全評価に必要な情報が不足する場合は、部分的な撤去確認、付着状態の試験、下地確認など、目的に応じた追加調査を検討します。

記録上の表現も統一します。現場での浮き疑い、再確認が必要な箇所、資格者が最終的に判定した箇所を混同しないようにし、調査補助者のマーキングだけで法定報告の判定を確定しないことが大切です。

ポイント5 開口部や打継部などの重点箇所を丁寧に調べる

外壁全体を必要な範囲で確認したうえで、開口隅部、水平打継部、斜壁部などを重点的に調べます。これらは告示にも示されている代表的な確認箇所であり、目視所見と打診反応を組み合わせて周辺まで追う必要があります。

窓や扉の開口隅では、躯体や下地の動きに伴うひび割れが斜め方向へ連続することがあります。ひび割れの線だけを打診するのではなく、その両側へ範囲を広げ、浮きが面状に広がっていないかを確認します。窓上部、水切り、シーリング周辺では雨水の流れも同時に見ます。

水平打継部や階境付近は、下地条件や躯体の挙動が変化する境界となる場合があります。横方向の汚れやひび割れが見られるときは、走査方向を縦横に変え、階をまたいだ分布を立面図へ記録します。

斜壁、庇の立上り、セットバック部、パラペット周辺などは、正面から見えにくく、日射や雨水の影響、形状変化による負担が偏ることがあります。安全な接近方法を確保し、面の上端、下端、折れ曲がり部を連続して確認します。

異種材料の取合い、増築部との境界、伸縮調整目地周辺、設備配管や看板支持部の周囲、外壁固定金物の周辺も注意が必要です。さび汁やひび割れがある場合は、タイル仕上げだけでなく金物や躯体側の劣化も考え、他の調査項目と関連づけます。

過去に浮きが多かった立面や漏水履歴のある室の外側も重点範囲です。前回図に浮きがあるのに今回は反応が異なる場合は、補修済みなのか、記録位置がずれているのか、判定条件が異なるのかを確認します。過去結果をそのまま写すことも、今回の反応だけで消去することも避け、変化を説明できる形に整理します。

ポイント6 外壁へ安全かつ十分に接近できる方法を選ぶ

打診調査は、調査者が外壁へ適切に接近し、安定した姿勢で一定の角度と力を保てることが前提です。地上から長い器具を伸ばして届く部分だけを調べる、窓から無理に身を乗り出す、障害物越しに斜めから打診するといった方法は、安全性だけでなく調査品質も低下させます。

接近方法は、建物高さ、外壁形状、敷地条件、道路使用の可否、屋上からのアクセス、低層屋根の状態、庇や設備、隣地条件などを踏まえて選定します。足場、高所作業用設備、ロープを用いる方法、既設の昇降設備などには、それぞれ適用条件と制約があります。必要範囲を確認できるか、壁面に正対できるか、安定姿勢を保てるか、緊急時に退避できるかを事前に検討します。

調査中は落下物と第三者への対策も必要です。浮きや欠損が進行した部分を打診した際に、小片が落下する可能性があります。地上に立入制限範囲を設け、利用者や通行者が入らないよう誘導します。出入口上部では建物運用側と時間を調整し、一時的な通行切替や監視体制を計画します。

強風、降雨、雷、高温などは、高所作業の安全と判定条件に影響します。作業方法ごとの中止基準を事前に定め、当日の状況によって無理に続行しないことが大切です。壁面が濡れている場合は打診反応の印象が変わる可能性があるため、乾湿状態も記録します。

設備、植栽、看板、日よけ、配管が壁面を覆っている場合は、その背面が未調査になりやすくなります。移動できないときは、見える範囲だけで異常なしとせず、調査不能範囲と理由を図面へ残します。必要に応じて別方向からの目視、別手法、設備更新時の追加調査へつなげます。

安全計画と調査計画は一体で考えます。安全な方法で必要範囲へ届かない場所は、打診精度を論じる以前に未調査です。仮設を減らすことだけを優先せず、法令上必要な部分と建物固有の危険箇所を確認できる方法を選びます。

ポイント7 浮きの位置と範囲を再現できる形で記録する

打診調査は、異音を聞き分けただけでは完了しません。後日、別の担当者が同じ場所を特定し、詳細調査、改修、次回点検で比較できる記録にする必要があります。北面に浮きありという文章だけでは、位置、高さ、広さが分からず、再調査が必要になります。

基本は立面図へのマッピングです。立面を通り芯、階、開口部、目地、タイル割りなどで区分し、浮きと判定した範囲、浮きが疑われる範囲、未調査範囲を区別して示します。点状、帯状、面状の範囲を同じ記号で表すと補修方法を検討しにくいため、図示方法を統一します。欠損、ひび割れ、白華、さび汁、補修跡も必要に応じて別記号で重ね、打診反応との関係が分かるようにします。

写真は全景、中景、近景を組み合わせます。近景だけでは位置を特定できないため、階数、窓番号、通り芯、外壁の特徴などが分かる写真を残します。写真番号と立面図の記号を対応させ、報告書から現地へ戻れる構成にします。

数量化するときは測定方法と集計単位を明確にします。タイル枚数、実測面積、格子単位の概算などでは結果が変わります。未調査面積を調査済み面積と混同すると、浮きの割合が実態より小さく見えることがあります。調査対象面積、実施面積、未調査面積、浮き判定面積を分けて管理します。

調査日、天候、壁面の乾湿、使用した方法、接近方法、調査者、障害物、立入制限、未調査理由も記録します。複数日に分けた場合は日ごとの条件差を残します。現場でマーキングする場合は所有者と方法を確認し、消失に備えて当日中に図面と写真へ反映します。

記録の目的は浮き面積を大きく見せることでも小さく見せることでもありません。確認した事実、資格者の判定、確認できなかった範囲を分け、第三者が追跡できる状態にすることです。

打診調査と赤外線調査を適切に使い分ける

外壁タイル調査では、打診と同等以上の精度を有する方法として赤外線調査を利用できる場合があります。赤外線装置を地上に設置する方法だけでなく、所定の条件を満たす無人航空機による赤外線調査も位置づけられています。ただし、赤外線装置で撮影したという事実だけで、法定調査として打診と同等以上の精度が確保されたことにはなりません。

赤外線調査は、外壁表面の温度分布から、内部の間隙などに起因する温度差を捉えて浮きを推定する方法です。広い壁面を非接触で確認できる可能性がある一方、天候、環境温度、風速、日射、壁面方位、撮影時刻、タイルの種類、撮影角度、離隔距離、周辺建築物からの放射熱、調査前の降雨、軒裏、出隅、入隅などの影響を受けます。

事前調査では、赤外線調査に適する部分と適さない部分を明確にし、同一部位で打診との検出状況を照合します。検出が難しいと判断される部分は、測定条件を変えるか、打診へ切り替えます。建物全体を一つの方法で統一するのではなく、立面や部位ごとに目視、打診、赤外線を組み合わせる考え方が必要です。

成果には、調査実施体制、調査日、天候と環境条件、機器の設置位置、調査方法ごとの範囲、打診との照合範囲、浮き判定図、熱画像、可視画像などを整理します。適用できなかった部分を明示し、撮影画像だけで異常なしとしないことが重要です。

浮きや剥落の兆候を確認した後の対応

浮きや剥落の兆候を確認したら、まず落下時の影響を評価します。出入口、歩道、常時人が滞在する場所、車両動線、隣地利用範囲などに面し、欠損、はらみ、剥離、ひび割れの拡大が見られる場合は、報告書の完成を待たずに所有者または管理者へ共有し、安全確保を検討します。

安全確保には、危険範囲への立入制限、通行経路の変更、落下防護、専門業者による緊急処置などがあります。ただし、現場担当者が安易にタイルを撤去したり、一律に処置したりすると、周辺を損傷させるおそれがあります。建物の利用状況と外壁状態を踏まえ、資格者、設計者、施工者などと方法を決めます。

次に、調査結果を位置、範囲、緊急性、原因の可能性に分けて整理します。点在しているのか、ひび割れ沿いに連続しているのか、過去補修部の周辺に集中しているのかによって、詳細調査や改修の考え方が変わります。剥落部がある場合は、落下した材料、露出した下地、周囲の浮き、水分の影響も確認します。

12条点検は外壁改修工事そのものではありません。是正が必要な状態を確認した後は、所有者側が詳細調査、設計、工法選定、施工、完了確認を進めます。報告書では確認した事実と推奨対応を区別し、原因や補修効果を未確認のまま断定しないことが重要です。

補修後は処置した場所と方法を記録し、次回調査へ引き継ぎます。部分補修であれば、補修範囲外に浮きが残る可能性があります。改修済みと一括記載せず、立面図で範囲を示し、その後の観察記録も残します。

建物管理者が調査前に準備しておく情報

調査精度は当日の打診作業だけで決まりません。建物管理者が資料と現場条件を整えることで、範囲の誤りや手戻りを減らせます。確認申請関係図書、検査済証、竣工図、立面図、仕上表、外壁詳細図、増改築図を可能な範囲で準備し、図面と現況が一致しない可能性があれば調査者へ伝えます。

外壁改修と補修の履歴も集めます。実施年月、施工範囲、工法、工事写真、完了図、施工中に確認された浮き範囲があると、今回の結果を評価しやすくなります。漏水、タイル片の落下、地震後の点検、強風後の異常、利用者からの申告も重要な情報です。

前回の定期調査報告書は、結果表だけでなく、立面調査図、写真、指摘事項、改善記録まで確認します。提出版と社内保管版が異なる場合は、どちらが最終版か明確にします。落下防止措置付き外壁タイルとして例外扱いを検討する場合は、固定方法を示す試験資料、仕上表、張付け位置の立面図、断面や金物固定方法を示す図書、施工記録などを準備します。

現場では、駐車車両、植栽、置場、看板、仮設物の移動を調整します。利用者へ日程を周知し、出入口の一時制限、窓際作業への配慮、打診音の発生などを案内します。屋上や機械室を経由する場合は、鍵、入室手続、設備管理者の立会いも手配します。

隣地や道路からの作業が必要な場合は、計画段階で条件を確認します。許可や調整が間に合わなければ重要立面が未調査になる可能性があります。調査会社へ任せきりにせず、所有者、管理者、管理組合、テナント、隣地などの調整窓口を明確にします。

打診調査で起こりやすい見落としと防止策

起こりやすい見落としの一つは、外観だけで仕上げ工法を判断することです。タイル調のパネル、被覆された既存タイル、改修で工法が変わった部分は遠景だけでは区別しにくいため、図面、改修記録、端部納まりを確認します。

低層部で異常が少なかったため、高所も健全だと考えることも危険です。高所は日射、風雨、形状、改修履歴が低層部と異なる場合があります。低層部の結果を上層部へそのまま当てはめず、必要範囲へ接近できる方法または適切な代替調査を計画します。

調査者ごとの判定差にも注意します。開始前の基準合わせ、代表箇所の相互確認、記録区分の統一、責任者による確認を行い、同程度の反応が立面ごとに別判定になることを防ぎます。

異音を見つけた時点で満足し、境界を追わないことも見落としにつながります。異常点の周囲を縦横に広げ、基準音へ戻る位置まで確認します。境界を追わなければ、補修数量や危険範囲を過小評価する可能性があります。

目視異常と打診結果を別々に記録すると、劣化の連続性が分からなくなります。ひび割れ、白華、さび汁、欠損、補修跡と浮き範囲を同じ立面図で関連づけ、写真番号も対応させます。

未調査部を異常なしと同じ扱いにしてはいけません。設備裏、隣地側、庇上、広告物の背面などは確認できなければ判定不能です。範囲と理由を示し、追加確認の要否を検討します。

報告提出をゴールにすることも避けます。浮きや剥落の兆候が見つかった後に、対応期限、責任者、安全措置、詳細調査、予算化、工事、完了確認、次回点検への引継ぎが決まっていなければ、安全改善につながりません。管理台帳で対応状況を追跡します。

まとめ

12条点検で外壁タイルの浮きを見逃さないためには、打診器具の扱いだけでなく、調査対象の設定、事前目視、判定基準の統一、重点部位、安全な接近、再現可能な記録までを一つの流れとして整える必要があります。

第一のポイントは、仕上げ工法、改修履歴、危害を加えるおそれのある部分を図面と現地で照合することです。第二のポイントは、打診前に外壁全体を目視し、ひび割れ、水分影響、補修跡の連続性を読むことです。第三のポイントは、打診の力、角度、間隔、走査順序をできるだけ一定にすることです。第四のポイントは、音の高低だけで断定せず、同一仕様の周辺部との相対比較と再打診で判断することです。第五のポイントは、開口隅部、水平打継部、斜壁部、材料の取合いなどを重点的に確認することです。第六のポイントは、必要範囲へ安全かつ十分に接近できる方法を選び、未調査部を曖昧にしないことです。第七のポイントは、浮きの位置、範囲、写真、調査条件を後から再現できる形で記録することです。

全面打診等の要否は築年数だけで機械的に決まりません。前回の全面打診等や外壁改修の時期、危害を加えるおそれのある部分、告示上の例外、落下防止措置付き外壁タイルに必要な資料、所管行政庁の運用を確認します。赤外線調査を使う場合も、撮影の可否ではなく、対象部位で打診と同等以上の精度を確保できる条件か、適用困難部をどう補完するかを検討します。

外壁タイル調査の価値は報告書を提出することだけではなく、剥落事故を防ぎ、修繕の優先順位を明確にし、継続的な建物管理へつなげることにあります。位置付き写真や現場メモの整理を補助する場合は、LRTK Phoneで位置情報を取得し、LRTKクラウドで写真や座標を共有し、必要に応じてLRTK点群CADで周辺形状や記録を整理する流れを検討できます。ただし、これらは現場記録を支援する手段であり、打診による浮きの判定や法定報告を代替するものではありません。最終的な調査方法と判定は、対象建築物の条件を確認した資格者が行う必要があります。

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