12条点検で広告塔・看板を確認する重要性
広告塔や看板は、建物名、店舗名、施設案内などを表示するために広く設置されています。一方、屋上や外壁など風雨を受けやすい位置に設けられることが多く、劣化が進むと面板、文字、照明カバー、固定金物などの脱落や、支持部材の変形につながるおそれがあります。
一般に12条点検と呼ばれる業務には複数の調査・検査がありますが、この記事では主に建築基準法第12条に基づく特定建築物の定期調査を想定します。国土交通省が示す調査項目には、外壁に緊結された広告板等の本体と支持部分、屋上や屋根に設置された広告塔等の本体、接合部、支持部分の劣化・損傷に関する確認が含まれています。ただし、定期報告の対象建築物、報告時期、提出先などは法令と特定行政庁の指定を確認する必要があります。国土交通省+2国土交通省+2
表示面がきれいでも、内部鉄骨、ボルト、溶接部、建物側の取付金物で腐食が進んでいる場合があります。広告表示の貼り替えや外装塗装によって外観だけが新しくなり、古い支持材の状態を把握しにくくなることもあります。そのため、表面の美観と支持構造の安全性を分けて確認することが大切です。
屋上広告塔や突出看板は風を受ける面積が大きく、接合部には繰り返し力が作用します。長期間の振動や変位によって、ボルトの緩み、溶接部周辺の亀裂、支持材の変形などが生じる可能性があります。ただし、目視で異常が見えないことだけを根拠に、内部や隠蔽部まで健全と断定することはできません。
広告塔や看板の安全管理では、異常の有無だけでなく、落下した場合の影響も考えます。主要出入口、歩道、駐車場、駐輪場などの上に設置された部材は、小さくても高所から落下すれば人や車両へ被害を与えるおそれがあります。調査結果を維持管理や是正判断へ確実につなげる視点が必要です。
広告塔・看板に関係する点検範囲の整理
最初に、対象が建物の外壁や屋上に取り付けられた広告板・広告塔なのか、地面に基礎を設けた独立型の広告塔・広告板なのかを整理します。この区分によって、特定建築物の定期調査、工作物に関する建築手続き、屋外広告物条例に基づく許可や安全点検など、確認すべき制度が変わる場合があります。
外壁に緊結された広告板では、看板本体だけでなく、支持金物や緊結状態が定期調査の対象項目となります。屋上や屋根の広告塔等についても、本体、接合部、支持部分等の劣化や損傷を確認する項目があります。したがって、面板の汚れや表示内容だけを見るのではなく、建物との接続部分まで含めて確認することが重要です。国土交通省+2愛知県建築住宅センター+2
一方、地上に独立して設けられた広告塔や広告板は、特定建築物の定期調査に含まれる屋上広告塔や外壁広告板と同じ扱いになるとは限りません。規模等によって建築基準法上の工作物として確認申請が必要になる場合があるため、工作物確認の資料や検査関係書類の有無を確認します。高さなどの要件や既存物の扱いは、設置場所を管轄する行政窓口へ確認するのが安全です。船橋市公式サイト
屋外広告物については、地方公共団体の条例や規則で許可、更新、安全点検、点検者の要件、報告様式などが定められている場合があります。建築基準法上の定期調査と屋外広告物条例上の点検は、目的や対象、方法が同一とは限りません。両方の対象になる看板もあるため、一方を実施したことだけで他方の手続きも完了したと判断しないことが大切です。山梨県公式サイト+3国土交通省+3国土交通省+3
実務では、看板ごとに設置場所、形式、概算寸法、設置高さ、支持方法、建物への固定先、設置時期、許可番号、改修履歴を整理します。屋上広告塔、壁面看板、突出看板、自立看板、案内板などに識別番号を付け、図面と現地写真を対応させると点検漏れを防ぎやすくなります。
前回の定期調査報告書に記載がない看板でも、直ちに対象外とは判断できません。前回調査後に追加されたもの、改修で位置や支持方法が変わったもの、当時は確認できなかったものが存在する可能性があります。現在の設置状況を基準に、図面、許可資料、過去写真を照合して範囲を決めます。
視点1 基礎・架台・支柱の傾きや変形
一つ目の視点は、基礎、架台、支柱に傾きや変形がないかを確認することです。屋上広告塔では脚部や架台、自立看板では基礎や支柱が全体を支えるため、上部の表示面が健全に見えても、支持部分に異常があれば安全性へ影響する可能性があります。
まず、対象から距離を取り、全体の姿勢を確認します。支柱が傾いていないか、表示面がねじれていないか、左右の高さや隙間に不自然な差がないかを見ます。過去の写真があれば、できるだけ同じ方向から比較することで、ゆっくり進んだ変化を把握しやすくなります。
自立型の広告塔や看板では、基礎周辺の地盤、舗装、縁石なども確認します。沈下、陥没、ひび割れ、基礎との隙間、雨水が集まる形跡がある場合は、支持条件が変化している可能性があります。駐車場内では、車両接触の跡や支柱の局部変形、防護柵の損傷も確認します。
支柱根元をコンクリートや仕上げ材で覆っている場合は、境界部のひび割れ、欠損、隙間、さび汁を見ます。根元は水分が残りやすく、外観から見えない部分で腐食が進むことがあります。さび汁が確認されたときは、表面清掃だけで終わらせず、発生源を調べる必要があります。
屋上広告塔では、架台脚部、ベースプレート、アンカー周辺、コンクリート立上り、防水層、排水状況を確認します。防水改修材や保護材で固定部が覆われていると、アンカーやプレートを直接確認できない場合があります。そのときは確認不能の範囲を記録し、異常なしと推定で処理しないことが重要です。
変形した支柱や架台を現場で押し戻したり、腐食部を強くたたいたりすることは避けます。劣化した接合部に力を加えると、亀裂や脱落を誘発する危険があります。位置、方向、範囲、周囲の状況を記録し、必要に応じて構造に詳しい専門者による追加調査へつなげます。
視点2 鉄骨・ボルト・溶接部の腐食や緩み
二つ目の視点は、鉄骨、ボルト、溶接部などの接合状態です。落下事故は面板だけでなく、支持材の断面減少、ボルトの欠落、接合部の破損などによって生じる可能性があります。
鉄骨部材では、塗膜の変色、膨れ、剥がれ、さび、層状の腐食、穴あき、角部の欠損を確認します。水がたまりやすい水平材の上面、部材の下端、重なり部、溶接部周辺、異種材料の接触部は、外から見える面より劣化が進んでいる場合があります。
箱形看板や内照式看板は、面板や側板に覆われて内部鉄骨を確認しにくい構造です。安全に開閉できる点検口がある場合は、内部の雨水跡、結露、さび汁、堆積物、固定されていない残置物などを確認します。ただし、腐食した点検口は開けた後に閉鎖できなくなることがあるため、無理な開放は避けます。
ボルト接合部では、ナット、ボルト、座金の欠落、接合面の隙間、孔周辺の変形、ボルト周囲のさび汁を確認します。塗料やシール材で覆われている場合は、外観だけで締付け状態を断定できません。また、締付け確認を行う場合も、構造や施工方法を理解せずに増し締めすると部材を損傷する可能性があるため、専門者の判断が必要です。
溶接部では、溶接線に沿った亀裂、端部の割れ、母材との境界部の変形、局部的な塗膜割れや腐食を確認します。塗膜割れが直ちに溶接亀裂を意味するとは限りませんが、接合部に動きが生じている手掛かりになることがあります。
管理者から、強風時の金属音、以前より大きな揺れ、壁や屋上への振動、部品の落下などの情報が寄せられている場合は、点検時に再現しなくても記録します。天候によって現れ方が変わる異常は、日常管理者の聞き取りが重要です。
腐食部へ塗装を施しても、失われた部材断面は回復しません。構造上の影響は部材寸法、荷重、支持条件、接合方法によって異なるため、目視だけで安全性を断定できない場合は、寸法計測、板厚確認、接合部調査などを検討します。
視点3 建物側の取付部と外壁の劣化
三つ目の視点は、看板を固定する建物側の状態です。壁面看板や突出看板では、看板本体が健全でも、アンカー、ブラケット、固定先の躯体、外壁下地などに異常があれば落下リスクが残ります。
取付部では、アンカーボルト、固定プレート、ブラケット、方杖、振れ止め材などを確認します。アンカー周辺のさび汁、ひび割れ、欠損、浮き、プレートと壁面の隙間、座金の変形などは、緊結状態や雨水浸入を検討する手掛かりになります。
看板がどの部材へ固定されているかは、外観だけでは分からない場合があります。外壁仕上げを貫通して柱、梁、コンクリート壁などへ固定されているのか、外装下地へ取り付けられているのかを、図面や施工写真で確認します。位置変更や改修が行われていると、現在の固定位置が当初図面と一致しないこともあります。
外壁がタイル、パネル、金属板などで仕上げられている場合は、看板周辺のひび割れ、浮き、変形、目地切れ、局部的なさび汁を確認します。看板の取付部からの浸水が外壁内部へ影響する場合もあれば、外壁側の劣化が支持部分へ影響する場合もあります。
突出看板では、上下のブラケット、方杖、振れ止め材が当初どおり残っているかを確認します。外壁改修や看板更新の際に一部が撤去、切断、位置変更されていないか、復旧後に接合状態が変わっていないかも資料と照合します。
取付部を覆う化粧カバーがある場合は、カバー自体の固定状態と、内部を確認できる構造かどうかを把握します。見えない部分を異常なしとして扱わず、確認できなかった理由と追加確認の要否を記録します。
地上からの撮影や拡大観察は、変形、欠損、著しい腐食の把握に役立つことがあります。しかし、ボルトの緩み、金物の裏側、壁との接触面などは判定できない場合があります。必要な精度に応じて、安全な近接方法や別の調査方法を選びます。
視点4 面板・文字・外装部材の脱落兆候
四つ目の視点は、面板、文字、縁材、側板、底板など、看板外周の部材です。これらは支持鉄骨より軽い場合でも、高所から脱落すれば人や車両へ被害を与えるおそれがあります。
面板では、割れ、浮き、膨らみ、ずれ、たわみ、端部のめくれを確認します。複数のパネルを接合している場合は、継ぎ目の開き、段差、押さえ材の変形、固定ねじの欠落を見ます。隙間から風が入り込むと面板へ追加の力が作用する可能性があるため、端部の小さな変化も記録します。
切文字や箱文字では、正面だけでなく側面からも確認します。文字が壁面から浮いている、傾いている、固定部が変形している、側面カバーが外れかけている場合は、脱落につながる可能性があります。接着剤だけで固定されているように見えても、施工仕様を確認せずに安全性を判断しないことが大切です。
箱形看板では、側板、底板、角部、留め具の腐食や変形を確認します。底部は内部に入った雨水や結露水が集まりやすいため、水抜き孔の詰まり、さび汁、長時間続く水滴なども手掛かりになります。
シート状の表示材では、端部の剥がれ、裂け、たるみ、ばたつきを確認します。表示材自体が軽量でも、繰り返しの動きがフレームや固定部へ影響する可能性があります。表示更新を繰り返した看板では、不要なねじ穴や金具が残されていないかも確認します。
変色や汚れだけで構造上の危険を判断することはできません。ただし、局所的なさび汁、塗膜の膨れ、継ぎ目周辺の変色は、内部への浸水や腐食を示す場合があります。美観上の劣化と安全上の異常を区別しながら、原因を検討します。
鳥の巣、落ち葉、ごみなどが堆積している場合は、排水不良、湿気、点検口の閉鎖不良につながることがあります。除去だけで終わらせず、侵入経路や水抜き部分の閉塞、付近の部材劣化を確認します。
視点5 照明・配線・点検口など付属部の状態
五つ目の視点は、照明器具、配線、配管、接続箱、点検口などの付属部です。これらのすべてが特定建築物の定期調査における広告板・広告塔の法定調査項目として個別に列挙されているわけではありませんが、落下防止や維持管理の観点から確認し、電気的な異常は必要に応じて専門の点検へ引き継ぎます。
外側から照らす照明器具では、本体の傾き、取付金物の腐食、固定ねじの欠落、カバーの浮き、支持アームの変形を確認します。器具が揺れている、配線が垂れ下がっている、支持金物に隙間がある場合は、接近方法を検討して追加確認します。
内照式看板では、点検口や開閉パネルの状態を確認します。留め具が閉まっているか、蝶番が腐食していないか、扉が変形していないか、補修後にねじやシールが適切に復旧されているかを見ます。
配線や配管では、被覆の損傷、支持金物の外れ、接続箱のふたの緩み、壁面貫通部のシール切れなどを確認します。配線が風で動く状態や、雨水が伝う状態は、電気的な不具合だけでなく、接続部や外壁への影響も考えられます。
照明方式を更新した看板では、使用していない器具、電源部、配線などが内部に残されている場合があります。固定されていない残置物は振動で移動し、点検口を開けた際に落下するおそれがあるため、現在使用していない部材も記録します。
照明設備の確認では、通電部へ不用意に触れません。電源停止や内部確認が必要な場合は、管理者および電気設備に詳しい専門者と連携します。濡れた状態、強風時、高所での無理な作業は避けます。
不点灯は分かりやすい異常ですが、点灯していることだけで器具や配線が安全とは判断できません。照明機能と、器具・カバー・配線支持部の落下防止を分けて確認することが重要です。
視点6 設置環境と落下時の被害範囲
六つ目の視点は、設置環境と落下時の影響範囲です。これは法定の判定基準そのものと同一ではありませんが、異常が見つかったときの応急対応や是正優先度を決めるために重要な情報です。
看板の真下や周囲に、歩道、主要出入口、車寄せ、駐車場、駐輪場、屋外席、待機場所などがないかを確認します。人が通行または滞留する位置の上にある場合は、軽量な部材でも早めに対応を検討します。
落下物は必ず真下に落ちるとは限りません。面板、カバー、シートなどは風の影響を受ける可能性があるため、道路側、隣地側、屋上設備側など複数方向の状況を確認します。ただし、飛散距離を現地の目視だけで正確に予測することは難しいため、安全側に立って範囲を設定します。
設置後に周辺の使われ方が変わっていないかも確認します。当初は人が近づかなかった場所に出入口や待機場所が設けられた場合や、駐車区画や駐輪場が看板直下へ移動した場合は、同じ劣化状態でも事故時の影響が変わります。
腐食を促進する可能性がある環境として、海塩粒子、積雪や凍結、排気、振動、飛来物、強い日射などがあります。建物周辺の状況や材料によって影響は異なるため、立地条件だけで腐食程度を断定せず、実際の部材状態と合わせて評価します。
雨水の流れも確認します。屋根や上階からの雨水、空調排水、屋上の水たまりなどが支持金物へ継続的にかかっている場合は、腐食やシール劣化の原因になり得ます。排水経路を改善せずに表面補修だけを行うと、再発する可能性があります。
危険度を考える際は、異常が進行する可能性と、落下した場合の被害の大きさを分けて整理します。緊急度の最終判断が難しい場合は、過小評価せず、立入制限などの暫定措置と専門者による確認を検討します。
点検前にそろえておきたい資料
現地調査前には、建物の配置図、立面図、屋上平面図、構造図、看板の設置図、基礎図、支持鉄骨図、取付詳細図などを集めます。看板設置時の工作物確認関係書類、検査関係書類、屋外広告物の許可書や更新資料も確認します。
施工写真があれば、完成後には見えないアンカー、下地、内部鉄骨、配線経路などを把握できます。外壁仕上げの内側や屋上防水の下に隠れる固定部は、施工時の記録が重要な手掛かりになります。
過去の定期調査報告書、屋外広告物の安全点検記録、補修記録、塗装履歴、照明交換記録も確認します。前回指摘が是正されたか、同じ場所で異常が再発していないかを追跡します。補修内容の記載が短い場合は、施工写真や作業報告書も探します。
表示内容や面板を変更した履歴も整理します。更新によって寸法、重量、開口、照明、風を受ける面積などが変わっている可能性があります。外観だけで当初と同じ仕様だと判断せず、改修内容を確認します。
資料が見つからない場合は、所有者、管理者、保守担当者へ聞き取りを行います。設置時期、修理履歴、強風時の異音、揺れ、部材落下、漏水、不点灯など、点検日に再現しにくい情報を収集します。
当日の作業条件も事前に整理します。屋上への入場方法、鍵、店舗営業時間、電源停止の可否、歩行者や車両の誘導、高所へ安全に接近する方法などを確認します。必要な部位を確認できない場合は、調査不能箇所として記録し、再調査方法を計画します。
現地調査で見落としを防ぐ進め方
現地では、全体から細部へ順番に確認します。最初に離れた位置から傾き、ねじれ、面板のずれ、建物との位置関係を把握し、その後に基礎、支柱、架台、鉄骨、接合部、取付部、面板、付属部、周辺環境へ進みます。
複数の看板がある場合は、識別番号と図面上の位置を照合します。同じ形の看板が並ぶ施設では、位置情報が曖昧だと是正指示や次回比較を誤る可能性があります。
写真は全景、中景、近接を組み合わせます。異常部分だけを拡大撮影すると、後から場所を特定できないことがあります。全体の中の位置、周囲との関係、部材の状態が分かるように記録します。
写真番号は図面や記録用紙と対応させ、撮影方向、撮影日、天候も残します。屋上東側、北面上部、突出看板下側など、位置の呼び方を統一すると関係者間で共有しやすくなります。
異常の記録は、さびあり、ひび割れありという記載だけで終わらせず、場所、範囲、程度、周辺への影響、前回からの変化、確認できなかった範囲を整理します。寸法を記録する場合は、計測方法や概算であることも明確にします。
点検口やカバーを開けた場合は、開放前、内部、復旧後を記録します。取り外したねじ、留め具、シール材の復旧が不十分だと、調査自体が新たな不具合の原因になります。開放によって安全に復旧できないおそれがある場合は、無理に作業しません。
高所作業では調査範囲より安全を優先します。強風、降雨、凍結、足場不良などで安全に接近できない場合は作業を中止し、確認できなかった箇所と理由を記録します。地上観察だけで代替した場合も、確認精度の限界を明記します。
異常を発見した場合の応急対応
落下や倒壊のおそれが高い状態を発見した場合は、正式な報告書の完成を待たずに、所有者や管理者へ速やかに共有します。部材が外れかけている、固定部が欠落している、支柱が大きく変形している、支持材に著しい腐食が見られる場合は、安全確保を優先します。
最初に、危険が及ぶ可能性のある範囲を検討します。真下だけでなく、風の影響や周囲の利用状況も考慮し、必要に応じて出入口、通路、駐車区画などを立入禁止にします。誘導表示や監視方法も含め、施設利用者が誤って入らない措置を講じます。
照明器具や配線に異常がある場合は、感電や火災を避けるため電源停止を検討します。電気設備の操作は、管理者や専門者と連携して実施します。濡れた看板内部や通電部へ不用意に触れてはいけません。
外れかけた部材の撤去や仮固定は、安全な作業方法を計画できる専門者が行います。腐食した部材は、触れることで別の箇所が破損する可能性があります。点検担当者が安全設備のない高所で応急処置を行うことは避けます。
応急対応を行った場合は、日時、対象箇所、対応内容、立入制限範囲、電源停止の有無を記録します。仮固定や立入制限は恒久対策ではないため、次の調査、補修、撤去等の期限と担当者を明確にします。
緊急性を判断できない場合も、異常を放置しません。写真、位置図、確認できた事実、確認できなかった範囲をまとめ、構造、看板施工、電気設備など必要な分野の専門者へ引き継ぎます。
是正工事で表面補修だけに終わらせない考え方
広告塔や看板の補修では、目に見える症状だけを整えると再発する可能性があります。さびを塗装で覆う、緩んだように見えるボルトを締める、外れた面板を戻すだけでは、原因が残る場合があります。
腐食が見つかった場合は、面板の継ぎ目、点検口、配線貫通部、水抜き孔、屋上防水などを確認し、雨水の侵入経路と滞留箇所を検討します。水が入り続ける状態で表面塗装だけを行っても、内部腐食が再発する可能性があります。
部材断面が減少している場合、塗装だけで元の強度へ戻るわけではありません。部材交換、補強、軽量化、撤去などを検討し、補強時には既存部材との接合方法と建物側への荷重伝達を確認します。
ボルトの緩みや欠落がある場合も、原因を確認します。接合面の変形、振動、孔の拡大、部材の不整合が残っていれば、単純な締付けだけでは再発する可能性があります。既存図面や施工記録と照合し、接合部全体として是正方法を検討します。
面板や表示内容を更新するときは、寸法、重量、厚さ、照明、風を受ける面積などの変化を確認します。構造や外観を変更する場合は、工作物確認や屋外広告物の変更手続きが必要か、事前に行政窓口へ確認します。
看板を撤去する場合は、アンカー孔、外壁、防水層、残置金物を適切に処理します。金物を途中で切断して根元だけ残すと、腐食、漏水、将来の脱落の原因になる可能性があります。
工事完了時には、仕上げ後だけでなく施工中の状態も記録します。交換した鉄骨、アンカー、補強材、防水処理などは、面板や仕上げを復旧すると見えなくなります。使用部材、施工範囲、施工写真を保管し、次回調査で参照できるようにします。
点検記録を維持管理に生かす方法
広告塔や看板の安全管理では、一回の調査結果だけでなく、過去からの変化を追える記録が重要です。腐食や変形は徐々に進む場合があるため、同じ位置を継続して比較できるようにします。
建物や敷地内の看板を台帳化し、識別番号、設置場所、種類、概算寸法、設置時期、支持方法、許可や確認の情報、改修履歴をまとめます。撤去済み、休止中、表示変更中などの状態も記載します。
撮影位置と方向をできるだけ固定します。毎回異なる角度から撮ると、傾きや変形の比較が難しくなります。全景、基礎または脚部、支持材、取付部、面板、付属部、周辺状況という撮影項目を決めておくと記録の抜けを減らせます。
管理者から寄せられた強風時の異音、揺れ、雨天時の漏水、不点灯、部品落下なども記録します。発生日時、天候、場所、対応内容を残し、次回調査の重点箇所へ反映します。
指摘事項には、応急措置、追加調査、恒久対策、対応期限、担当者、完了確認者を設定します。報告書を提出しただけで終わらせず、是正が完了したかを追跡します。
補修後は、指摘箇所が改善されたことに加え、点検口、防水、配線、外壁仕上げなどに新たな不具合が生じていないかを確認します。工事会社の完了報告と現地状態を照合することが重要です。
記録は担当者個人の端末だけに保存せず、建物の維持管理資料として引き継げる場所へ集約します。写真には識別番号、撮影位置、撮影方向を付け、図面や報告書から検索できる状態にします。
特定建築物の定期調査、屋外広告物条例に基づく点検、日常点検、修繕履歴を相互に参照できるようにすると、同じ異常の経過を追いやすくなります。ただし、それぞれの制度で必要な資格、方法、様式、提出時期は区別して管理します。
まとめ
12条点検で広告塔・看板の落下リスクを確認する際は、表示面の外観だけで安全性を判断しないことが重要です。特定建築物の定期調査では、外壁に緊結された広告板等や、屋上・屋根の広告塔等について、本体、接合部、支持部分の劣化や損傷を確認する項目があります。
一つ目の視点は、基礎、架台、支柱の傾きや変形です。全体の姿勢に加え、基礎周辺、脚部、屋上防水、排水状態も確認します。
二つ目は、鉄骨、ボルト、溶接部の腐食や緩みです。塗膜の下、部材の重なり、箱形看板の内部など、見えにくい範囲を異常なしと推定しないことが大切です。
三つ目は、建物側の取付部と外壁の劣化です。看板本体が健全でも、アンカーの固定先や外壁下地に異常があれば、支持性能へ影響する可能性があります。
四つ目は、面板、文字、縁材、側板などの脱落兆候です。浮き、ずれ、割れ、固定部の欠落、底部の腐食などを確認します。
五つ目は、照明、配線、点検口などの付属部です。定期調査の法定項目と補完的な維持管理確認を区別し、電気的な異常は専門の点検へ引き継ぎます。
六つ目は、設置環境と落下時の被害範囲です。人が通行・滞留する場所との位置関係を把握し、異常発見時の立入制限や是正優先度の判断に利用します。
建物に取り付けられた看板、屋上広告塔、地上の独立型広告塔、屋外広告物条例の対象物では、適用される制度や手続きが異なる場合があります。特定建築物の定期調査だけで安全管理が完結すると考えず、現地の条例、工作物関係資料、最新の提出要領を確認します。
異常を発見した場合は、報告書の完成を待たず、関係者への共有、危険範囲の立入制限、必要に応じた電源停止などを検討します。補修では表面だけを整えるのではなく、浸水、排水不良、接合部の変形などの原因まで確認します。
点検結果を図面、識別番号、写真、是正履歴と対応させて管理すれば、前回からの変化を比較しやすくなります。特定の製品やサービスに依存せず、関係者が継続して閲覧・更新できる方法で記録を残すことが、広告塔・看板の落下リスクを抑えるための基本です。