LRTKレフィクシア株式会社

不動産売却前の12条点検で買主に示すべき8つの資料

不動産を売却するとき、買主が確認したいのは現在の外観だけではありません。建物がどのように調査され、どのような指摘を受け、その後どのように維持管理されてきたのかという履歴も、取得後の修繕費や管理負担を検討する材料になります。特に、店舗、事務所、共同住宅、宿泊施設、福祉施設など、建築基準法第12条に基づく定期報告の対象となり得る建物では、定期調査・定期検査に関する資料を早めに整理しておくことが重要です。

一般に「12条点検」と呼ばれるものには、特定建築物の定期調査、建築設備の定期検査、防火設備の定期検査、昇降機等の定期検査などがあります。これらは、対象となる建築物や設備について、所有者または管理者が資格者等に調査・検査を行わせ、その結果を特定行政庁へ報告する制度です。対象となる用途、規模、階数、設備、報告時期は全国ですべて同じではなく、政令や国土交通省令に加えて、特定行政庁の指定や運用を確認する必要があります。([国土交通省][1])

売却前に注意したいのは、「直近の報告書があるから問題ない」と決めつけないことです。買主が知りたいのは、報告書の有無だけではなく、調査範囲、指摘内容、行政への提出状況、是正の進捗、過去からの変化、設備ごとの検査状況まで含めた建物全体の管理状態です。

本記事で紹介する8つの資料は、全国一律にすべての不動産売買で買主への交付が義務付けられている資料セットではありません。物件の種類、取引条件、宅地建物取引業者による重要事項説明の対象、契約内容、個人情報や防犯上の配慮によって、開示方法や交付範囲は変わります。ここでは、買主の判断と引き渡し後の管理を円滑にするため、売主側で確認しておきたい実務資料として整理します。

売却前に12条点検資料を整理する意味

12条点検の資料を整理する目的は、単に「法律上の点検を実施している」と示すことではありません。建物の状態と維持管理の経過を可視化し、買主が取得後の調査、修繕、設備更新、次回報告などを検討できるようにすることが実務上の目的です。

買主が事業用不動産や収益不動産を取得した後は、建物の所有者または管理者として維持管理や定期報告に関わる可能性があります。直近の報告書に指摘が残っていれば、取得後に詳細調査、補修、部品交換、安全措置、再確認などが必要になることもあります。そのため、買主は指摘の有無だけでなく、指摘がどこにあり、どのような状態で、何が対応済みで、何が未対応なのかを確認しようとします。

売主側で資料が整理されていないと、買主から質問を受けるたびに、管理会社、調査資格者、施工会社、設備保守会社などへ問い合わせることになります。回答に時間がかかれば、買主が追加調査を求めたり、修繕費を保守的に見積もったり、契約条件を再検討したりする可能性があります。

反対に、点検報告書、行政への提出記録、是正履歴、図面、写真などが一連の資料として整理されていれば、既知の指摘と対応状況を説明しやすくなります。指摘がある建物であっても、事実関係、現在の安全措置、今後の対応方針が整理されていれば、買主は取得後の費用や工程を検討しやすくなります。

なお、12条点検と、既存住宅の売買で利用される建物状況調査は別の制度です。12条点検を実施しているからといって、売買対象部分の劣化や不具合がすべて確認されているとは限りません。反対に、建物状況調査を実施していても、12条点検に基づく調査・検査や特定行政庁への報告を代替するものではありません。([国土交通省][2])

また、資料を買主へ示すことと、原本や契約書を無条件に交付することは同じではありません。入居者情報、警備情報、鍵の管理情報、保守会社の価格条件などが含まれる場合は、閲覧、要約版の交付、個人情報を削除した写しの提供など、目的に応じた方法を検討します。

資料1 最新の定期調査・定期検査報告書

最初に準備したいのは、直近に実施した定期調査・定期検査の報告書一式です。対象建物によって必要な報告区分は異なりますが、主なものには特定建築物、建築設備、防火設備、昇降機等の区分があります。報告書、概要書、調査・検査結果表、別添資料など、区分ごとに定められた書類があるため、表紙だけでなく一式の保管状況を確認します。([国土交通省][1])

買主へ提示するときは、資料名、実施日、調査者または検査者、対象建物、対象設備、調査・検査範囲、判定結果が連続して確認できる状態にします。報告書の一部だけを抜き出すと、買主が調査範囲や判定の前提を把握できないことがあります。

特定建築物の定期調査では、敷地、地盤、建物外部、屋上・屋根、建物内部、避難施設などが対象項目になり得ます。建築設備、防火設備、昇降機等についても、それぞれ告示で調査・検査項目、方法、判定基準が定められています。ただし、実際の対象設備や報告区分は建物ごとに異なるため、一般的な項目をそのまま対象と決めつけず、所管する特定行政庁の案内と資格者の確認を優先します。([国土交通省][1])

買主に渡す資料には、対象となる報告区分を整理した一覧表紙を付けると理解されやすくなります。特定建築物、建築設備、防火設備、昇降機等のうち、報告対象である区分、対象外と確認できた区分、別時期に報告する区分を分けて記載します。対象外とする根拠が未確認であれば、「対象外」と断定せず、「所管窓口へ確認中」など、確認状況を示します。

ここで重要なのは、「報告書がある」という説明と「すべて問題がない」という説明を混同しないことです。報告書には、要是正、要重点点検、既存不適格などの記載が含まれる場合があります。また、立入りや接近ができず確認できなかった場所が記録されていることもあります。

買主への説明では、総合的な結果だけを示すのではなく、個別の指摘項目、未確認範囲、前提条件も確認できるようにします。報告書を要約した一覧を作る場合も、要約だけで原資料を置き換えず、原資料の該当箇所を参照できるようにします。

資料2 行政への提出状況が分かる受付資料

報告書が作成されていても、それだけでは特定行政庁への報告が完了しているか確認できません。売却前には、行政への提出日、受付状況、補正の有無が分かる資料を整理します。

紙で報告した場合は、受付日や受付番号が確認できる控え、副本、受付通知などが候補になります。オンラインで報告した場合は、到達通知、受付完了通知、申請番号、処理状況が分かる記録などを確認します。建築基準法令上の報告様式は押印不要となり、紙だけでなくオンラインによる報告も可能ですが、実際の受付方法、利用システム、通知の名称は特定行政庁によって異なります。したがって、紙の受付印がないことだけで未提出と判断するのは適切ではありません。([国土交通省][3])

売却前の確認では、報告書に記載された調査・検査日だけでなく、行政への提出日も照合します。提出後に差し替えや補正を行っている場合は、初回提出版だけでなく、補正後の最終版と、その経緯が分かる資料を整理します。

行政から追加資料や訂正を求められた場合は、最初に提出した報告書だけを買主へ示すと、現在の受付内容と食い違うおそれがあります。複数の版が存在するときは、ファイル名や表紙に作成日と版を付け、どれが最終版であるか分かるようにします。

受付が完了していることと、指摘事項が解消されていることは別です。行政への報告が受理されていても、要是正項目が残っている場合や、別途照会や対応を求められている場合があります。提出状況、行政からの連絡、是正状況を分けて説明します。

売却活動中に次回報告時期を迎える場合は、調査・検査の手配、費用負担、報告主体、資料の引き継ぎを売買契約や引渡条件との関係で整理します。ただし、当事者間の契約で費用や実務を分担しても、法令上の報告義務者の扱いまで当然に変更されるとは限りません。所有権移転日、管理権限の移行日、調査・検査日、報告期限を確認し、必要に応じて特定行政庁や資格者へ相談します。

資料3 調査結果表・指摘位置図・写真記録

定期報告書には指摘内容が文章や結果表で記載されますが、文章だけでは買主が具体的な場所や範囲を理解できないことがあります。そこで、調査・検査結果表に加えて、指摘位置図と写真記録を準備します。

位置図は、配置図、平面図、立面図、設備系統図などを使い、指摘箇所に番号を付けたものが分かりやすい形式です。写真にも同じ番号を付け、結果表の項目番号、是正記録の工事項目、設備番号と対応させます。

写真は、指摘部分の近接写真だけでなく、その場所が建物のどこにあるか分かる写真も残します。近接写真だけでは、現地で対象箇所を再特定できないことがあります。建物や室の全景、対象面、周辺状況、指摘部分という順に整理すると、位置関係を説明しやすくなります。

撮影日と撮影段階も重要です。点検時、修繕前、工事中、完了後の写真が混在していると、現在の状態を誤認させるおそれがあります。ファイル名や写真台帳に撮影日、対象箇所、撮影段階を記載し、時系列を明確にします。

屋上、外壁、避難経路、機械室など、図面上の名称と現場で使われている呼称が異なる場合もあります。「東面」などの方位表示を使う場合は、図面北、真北、現場での呼称が混同されないように基準を明記します。対象階、通り芯、部屋名、設備番号なども併記すると、引き継ぎ後の確認が容易になります。

立入りができなかった区画、足場や高所作業設備がなく接近できなかった部分、仕上げ材で隠れて確認できなかった部分については、未確認であることを明示します。未確認箇所は「異常なし」と同じ意味ではありません。未確認の理由、範囲、追加確認に必要な条件を整理し、買主が再調査の要否を判断できるようにします。

写真に位置情報や撮影方向を記録できる場合は、現地で同じ場所を再確認しやすくなります。ただし、衛星測位や端末の方位情報は、屋内、地下、建物際、金属設備の周辺などで誤差が生じることがあります。図面上の位置番号、階、部屋名、設備番号と併用し、位置情報だけで指摘箇所を確定しないことが大切です。

資料4 過去の定期報告書と経年比較資料

直近の報告書だけでは、指摘が今回初めて生じたものなのか、以前から継続しているものなのか判断できません。売却前には、保存されている範囲で過去の定期報告書も整理します。

経年比較で確認したいのは、同じ箇所に同様の指摘が繰り返されていないか、指摘範囲が広がっていないか、以前の要是正項目が今回も残っていないかという点です。単年度の判定だけでなく変化を見ることで、劣化の進行と維持管理の対応状況を把握しやすくなります。

過去の報告書を年度順に並べるだけでは違いを把握しにくいため、指摘箇所ごとに共通の管理番号を付けた経年比較資料を作成すると有効です。調査年度、指摘箇所、指摘内容、判定、対応状況、工事実施日、次回確認事項を対応させます。

以前の報告書にあった指摘が次回の報告書からなくなっている場合も、修繕済みと即断しないようにします。修繕によって解消したのか、調査対象や調査方法が変わったのか、記載方法が変わったのかを、工事記録、写真、位置図と照合します。

反対に、同じ場所について表現が変わっていることもあります。「ひび割れ」「亀裂」「仕上げ材の劣化」など、調査者や年度によって表現が異なる場合は、文言だけで別の指摘と判断せず、位置と写真を確認します。

調査・検査の項目、方法、判定基準、報告様式は改正されることがあります。例えば、定期報告制度に関する複数の告示は令和6年に改正され、令和7年7月1日に施行されたものがあります。年度をまたいで比較するときは、判定表現の違いが建物状態の変化によるものか、制度改正によるものかを区別します。([国土交通省][1])

過去の資料が一部見つからない場合は、欠けている年度と確認状況を明示します。「資料が見つからない」「当時は対象外だった」「実施の有無を確認できない」は意味が異なります。確認できた事実と推測を分けて記録します。

資料5 是正工事・修繕・再確認の記録

定期調査・定期検査で指摘があった場合、買主が特に確認したいのは、その後の対応状況です。是正工事や修繕を実施しているなら、どの指摘に対する工事であるか分かる記録を準備します。

工事名称だけでは、定期報告のどの項目に対応したのか判断できません。施工範囲、施工方法、実施日、完了日、対象設備、工事前後の状態が分かるようにし、定期報告の指摘番号と結び付けます。

修繕記録には、工事報告書、施工前後の写真、施工図、使用材料や交換部品の仕様資料、試運転や作動確認の記録などを含めます。ただし、すべての工事で同じ資料が作成されるわけではないため、存在しない書類を推測で補わず、保管できている資料の範囲を明示します。

工事を実施したことと、定期報告上の指摘が解消したことは必ずしも同じではありません。修繕後に調査資格者や検査資格者が再確認している場合は、その記録を添付します。再確認を行っていない場合は、「工事完了」「資格者による再確認は未実施」「次回報告時に確認予定」など、段階を分けて示します。

応急措置と恒久的な是正も区別します。立入禁止、落下防止ネット、設備の使用停止などは安全確保のために有効な場合がありますが、原因そのものを解消する恒久工事とは限りません。応急措置のみの場合は、現在の措置、継続管理の方法、恒久対応の検討状況を説明します。

すべての指摘を売却前に修繕できるとは限りません。未実施の項目がある場合は、対象箇所、現在の状態、安全上の対応、工事計画の確定状況を整理します。概算見積りを示す場合も、調査範囲、数量、工法、価格の有効期限などによって金額が変わる可能性を明記し、確定費用のように扱わないことが重要です。

なお、定期報告で指摘を受けた事実だけから、全国一律の期限で必ず売却前に是正しなければならないと断定することはできません。危険性、行政からの指導・命令、他法令、契約上の合意などによって必要な対応は異なります。安全に関わる指摘や行政からの連絡がある場合は、専門家と所管窓口に確認します。

資料6 確認済証・検査済証・設計図書

定期報告の内容を理解するには、建物がどのような計画で建築され、その後どのような変更が行われたかを確認できる資料が役立ちます。そのため、確認済証、検査済証、確認申請図書、竣工図、増築・用途変更・改修に関する資料を整理します。

確認済証は、建築確認を受けた計画が建築基準関係規定に適合することを確認した際に交付される書類です。検査済証は、工事完了後の完了検査を経て、検査対象となる建築物とその敷地が建築基準関係規定に適合していると認められた場合に交付される書類です。ただし、これらが存在することだけで、現在の建物状態や交付後の改修内容まで保証されるわけではありません。

売却前には、書類に記載された用途、構造、階数、床面積などと、登記情報、現在の利用状況、定期報告書の記載を照合します。差異がある場合は、単なる表記や測定方法の違いなのか、増築、用途変更、区画変更などが関係しているのかを確認します。

確認申請時の図面と現況が異なる場合は、変更手続きや工事記録を探します。間仕切り、防火区画、避難経路、階段、出入口、設備配置などの変更は、定期調査・定期検査の内容や買主の利用計画に影響することがあります。

買主が取得後に改修や用途変更を予定している場合、構造図、設備図、竣工図、改修図などの有無は検討に影響します。ただし、図面が存在していても現況と一致しているとは限りません。「竣工図あり」と「現況と照合済み」を区別します。

既存住宅の取引では、一定の建築・維持保全関係書類の保存状況が重要事項説明に関係します。国土交通省の資料では、確認済証、検査済証、建物状況調査結果報告書、定期調査報告書、耐震関係書類などが例示されています。ただし、対象となる取引や説明事項は宅地建物取引業法上の要件によるため、すべての事業用不動産売買に同じ形で適用されると説明しないようにします。([国土交通省][4])

原本が見つからない場合は、原本がないことを明示し、保管している写しや行政で確認できた記録を整理します。行政で閲覧・証明・台帳記載事項の交付を受けられる範囲や名称は自治体によって異なるため、原本の再発行が当然に可能であるかのように説明せず、所管窓口へ確認します。

資料7 建築設備・防火設備・昇降機の保守資料

建物本体の定期調査報告書だけを準備し、設備関係の資料を見落とすケースがあります。しかし、買主にとっては、建築設備、防火設備、昇降機等の状態も取得後の管理に直結します。

建物に報告対象となる建築設備、防火設備、昇降機等が設けられている場合は、該当する定期検査報告書を整理します。設備の種類によって報告区分や時期が異なるため、特定建築物の定期調査報告書と同じ年度のファイルだけを探しても、必要な資料がそろわないことがあります。

まず、建物内の設備を一覧化し、それぞれについて法定の定期検査報告書、日常点検、任意の保守点検、故障・修繕の記録があるかを確認します。法定検査と保守契約による点検は目的や根拠が同じとは限らないため、「保守会社が点検しているから定期報告も完了している」と判断しないことが重要です。

防火設備については、扉やシャッター本体の状態だけでなく、閉鎖を妨げる物品、連動機能、危害防止装置などが調査・検査や日常管理上の確認事項になることがあります。点検時に正常でも、その後のレイアウト変更や物品の仮置きで作動を妨げる可能性があるため、売却前の現況も確認します。

昇降機については、定期検査報告書に加え、保守点検記録、故障履歴、部品交換履歴、休止期間、次回点検予定などを整理します。昇降機の所有者には、建築基準法第12条第3項に基づく定期検査と報告が求められる場合がありますが、対象や手続きは所管窓口の案内を確認します。([国土交通省][5])

設備の修繕を複数回行っている場合は、設備番号や設置場所の表記を統一します。報告書では異常が記載され、修繕記録では別の名称が使われていると、対応済みか判断しにくくなります。

保守契約を買主へそのまま承継できるとは限りません。契約の承継可否、解約や名義変更の手続き、次回点検予定、機械室への入室方法などを確認します。契約書に価格条件、個人情報、秘密情報が含まれる場合は、開示の必要性と範囲を検討し、必要に応じて引き継ぎ事項だけを整理します。

資料8 建物状況調査・管理記録・告知資料

8つ目は、12条点検だけでは把握しきれない建物状態や管理履歴を補足する資料です。売買対象に既存住宅が含まれ、建物状況調査を実施している場合は、その結果を整理します。事業用建物や収益物件でも、日常点検記録、漏水履歴、事故・不具合記録、管理会社の報告、改修計画などをまとめます。

建物状況調査は、国の登録を受けた講習を修了した建築士が、既存住宅状況調査方法基準に従って行う調査です。定期報告制度とは目的、対象、調査範囲、報告先が異なります。どちらか一方を実施したことで、もう一方を実施したことにはなりません。([国土交通省][2])

既存住宅の売買では、媒介契約、重要事項説明、売買契約時の書面交付に関して、宅地建物取引業者に建物状況調査に関する一定の対応が求められます。ただし、建物状況調査の実施自体がすべての売主に一律に義務付けられているという意味ではありません。実施済みで要件を満たす調査結果がある場合に、結果の概要等が重要事項説明の対象になります。([国土交通省][2])

共同住宅等のうち鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造の住宅については、重要事項説明の対象となる建物状況調査結果の有効な期間が、2024年4月1日から調査実施後2年以内に見直されています。戸建住宅など他の区分と同じ期間であると決めつけず、建物種別と調査日を確認します。([国土交通省][6])

告知資料を作成するときは、定期報告の指摘と、それ以外の既知の不具合を分けて整理します。漏水、結露、設備停止、外装材の落下、扉の作動不良などが過去に発生していても、発生時期や調査範囲によっては直近の定期報告書に表れないことがあります。

管理記録には、発生日、場所、症状、応急対応、原因調査、修繕内容、その後の経過を記載します。原因が確定していない場合は、推測を事実のように書かず、「原因調査中」「複数の可能性を検討中」など、確認状況を正確に示します。

長期修繕計画や修繕予定がある場合も、定期報告の指摘との関係を整理します。計画に記載されているだけで実施が決まっていない工事については、実施済み、契約済み、発注準備中、検討中、未対応を区別します。

売主が把握している不具合や過去の事故について、何をどの範囲で説明・告知すべきかは、物件の種類、契約内容、重要性、買主の利用目的などによって異なります。定期報告書に記載がないことを理由に説明不要と判断せず、宅地建物取引業者、弁護士、建築士などの専門家と確認します。

8つの資料を買主に示す順序

買主への資料提示は、量を増やすだけでは十分ではありません。資料相互の関係が分かる順序で示す必要があります。

最初に、対象建物がどの定期報告区分に該当するかを説明します。特定建築物、建築設備、防火設備、昇降機等について、対象であると確認できた区分、報告時期、確認中の区分を示します。

次に、直近の報告書と行政への提出状況を示します。最新の調査・検査がいつ実施され、いつ提出され、補正や追加資料があったかを明確にします。その後、指摘位置図と写真を使って具体的な箇所を説明します。

続いて、過去の報告書と経年比較資料を示し、指摘がいつから存在するかを伝えます。是正済みの項目については、修繕記録、工事前後の写真、再確認記録を対応させます。未対応の項目は、現在の安全措置と恒久対応の検討状況を分けて説明します。

そのうえで、確認済証、検査済証、設計図書、設備保守資料を示します。最後に、定期報告以外の建物状況調査、管理履歴、既知の不具合、告知資料を補足します。

原本を最初からすべて交付するのではなく、閲覧用の資料索引を作成し、必要な資料を確認できるようにする方法もあります。索引には、資料名称、対象年度、作成者、原本・写し・電子データの区分、保管場所、開示状況、最新版の日付を記録します。

電子データで渡す場合は、法定報告、行政受付、指摘写真、是正工事、設計図書、設備保守、売買説明など、資料区分が分かるフォルダ構成にします。年度だけで分類すると、同じ指摘に関する報告書、写真、工事記録が別の場所に分散しやすいため、共通番号や索引で結び付けます。

個人情報、入居者情報、防犯上慎重に扱うべき情報、保守会社との秘密保持対象情報などが含まれる場合は、開示範囲を確認します。買主の検討に必要な情報を示しつつ、不要な個人情報やセキュリティ情報まで渡さないようにします。

また、資料を提示した日と提示した版を記録します。売買協議中に報告書の補正、追加調査、修繕が行われると、買主が確認した資料と最終版が異なることがあります。更新があった場合は、更新日と変更内容を通知し、旧版と最新版を混在させないことが大切です。

売却準備で起こりやすい資料不備

売却前の資料整理では、報告書の紛失だけでなく、複数の小さな不整合が問題になります。

よくあるのは、報告書の表紙は残っているものの、調査・検査結果表、別添資料、写真が欠けている状態です。これでは指摘の詳細や調査範囲を確認できません。紙のファイルだけでなく、過去のメール、共有フォルダ、記録媒体、管理会社の保管状況も確認します。

次に注意したいのが、行政へ提出した版と社内保管版が異なるケースです。提出後に補正したにもかかわらず、初回版だけが管理室に残っていることがあります。受付番号、提出日、版の日付を照合し、最終版を特定します。

写真番号と報告書の番号が一致していない場合もあります。売却前にすべて撮影し直す必要があるとは限りませんが、少なくともどの写真がどの箇所を示すか確認できる対照資料を作ります。現況写真を追加する場合は、点検時写真と混同しないように撮影日を明記します。

「是正済み」と記載されているものの、工事内容や完了日が分からない場合も注意が必要です。請求書や支払記録だけでは、具体的な施工範囲や作動確認の結果を確認できないことがあります。施工会社の報告書、工事写真、現地確認記録を探し、確認できない部分はそのまま明示します。

管理会社が保管していると思っていた資料が、契約終了や担当変更の際に引き継がれていないこともあります。売却を決めてから探し始めるのではなく、所有者、管理会社、調査会社、保守会社が保管する資料を早い段階で照合します。

建物名称や所有者名の変更も資料検索を難しくします。旧名称、旧所有者名、旧管理会社名で保存された資料がないか確認します。増築棟、別棟、区分所有部分がある場合は、どの報告書がどの建物や設備を対象としているかを明確にします。

売却活動中に新たな不具合が見つかった場合は、すでに作成した説明資料を更新します。点検時点では存在しなかった不具合であっても、売買前に把握したのであれば、直近の報告書だけを根拠に「問題なし」と説明しないことが重要です。

資料が見つからない場合は、内容を推測して作り直すのではなく、不足している資料、確認した保管先、代替できる記録、追加調査の要否を整理します。必要に応じて、特定行政庁への相談、現地再調査、資格者による確認を検討します。

まとめ 12条点検の記録を売却に活用する

不動産売却前に整理したい12条点検関連の資料は、最新の定期調査・定期検査報告書、行政への提出状況が分かる資料、調査・検査結果表と指摘位置図・写真、過去の報告履歴、是正工事の記録、確認済証・検査済証・設計図書、設備ごとの保守資料、建物状況調査や日常管理の記録です。

重要なのは、これらを全国一律の「必須8点」と説明しないことです。建物の用途、規模、所在地、設備、取引形態によって、定期報告の対象と買主へ示すべき資料は変わります。まず所管する特定行政庁の案内で対象区分と報告時期を確認し、売買上の開示・説明については宅地建物取引業者や専門家と整理します。

資料は単独で保管するのではなく、指摘箇所、写真、修繕、再確認を一つの流れとして結び付けます。買主が確認したいのは、報告書の存在だけではありません。どのような問題が確認され、どこまで対応され、取得後に何を引き継ぐ必要があるのかという全体像です。

未対応事項がある場合でも、対象箇所、現在の状態、安全措置、確認済みの事実、今後の検討事項が明確であれば、買主は売買条件や取得後の管理計画を具体的に検討できます。一方で、工事記録がないまま是正済みと説明したり、未確認範囲を異常なしとして扱ったりすると、売買後の認識相違につながります。

報告書、行政受付、写真、図面、修繕記録を照合し、事実、資格者の判定、売主側の予定を区別して示すことが大切です。位置情報付き写真を利用する場合も、図面上の番号や設備番号と併用し、測位誤差や方位誤差を前提に管理します。

12条点検資料の整理は、問題がないことを演出する作業ではありません。確認できた事実と未確認事項を分け、買主が取得後の責任と費用を判断できる状態にする作業です。売却前に不足資料を洗い出し、必要に応じて特定行政庁、建築士、各種検査資格者、宅地建物取引業者、弁護士などへ確認しながら、物件に合った開示資料を整えましょう。

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