12条点検とは何を確認する制度なのか
12条点検とは、建築基準法第12条に基づく定期調査、定期検査、定期報告をまとめて表す実務上の通称です。法令上の正式名称が一律に「12条点検」と定められているわけではありません。対象となる建築物や設備について、所有者または管理者が資格者に調査・検査を行わせ、その結果を特定行政庁へ報告する制度として理解すると整理しやすくなります。国土交通省
建築物は、完成時に適法で安全な状態であっても、使用中の劣化や改修、用途の変化、物品の配置などによって状態が変わります。外壁や屋根にはひび割れ、浮き、腐食が生じることがあり、廊下や階段には物品が置かれて避難に支障が出る場合があります。換気設備、排煙設備、非常用の照明装置、防火設備、昇降機なども、経年や使用によって作動不良を起こす可能性があります。
定期報告制度は、こうした劣化や不適切な改変を一定の周期で確認し、事故や災害時の被害を防ぐための仕組みです。ただし、定期報告を実施したことだけで、次回までの安全が保証されるわけではありません。日常点検、保守契約に基づく点検、消防法など別の法令に基づく点検と組み合わせ、継続的に維持管理する必要があります。
実務では「12条点検を依頼する」という表現だけでは、依頼範囲が曖昧になりがちです。建築物の調査だけなのか、建築設備や防火設備も含むのか、昇降機の報告まで含むのかを、見積書や契約書で区分して確認することが重要です。
12条点検の4種類を全体像から整理
一般的な建物管理の実務では、12条点検を特定建築物定期調査、建築設備定期検査、防火設備定期検査、昇降機等定期検査の4種類に分けて整理することが多くあります。
特定建築物定期調査は、敷地、外部、屋上・屋根、内部、避難施設など、建築物そのものの状態を広く確認する区分です。建築設備定期検査は、換気設備、排煙設備、非常用の照明装置、給排水設備など、指定された建築設備の状態や機能を確認します。
防火設備定期検査は、防火扉、防火シャッター、耐火クロススクリーン、ドレンチャーその他の水幕を形成する防火設備などを確認する区分です。昇降機等定期検査は、エレベーター、エスカレーター、小荷物専用昇降機、段差解消機など、対象となる昇降機の安全性を確認します。
ただし、定期報告制度全体を厳密に整理すると、観覧車などの遊戯施設に関する定期検査報告もあります。そのため、「12条点検は制度上4種類だけ」と断定するのは適切ではありません。本記事の4種類は、一般的な建物管理で特に関係しやすい区分を整理したものです。遊戯施設を所有または管理する場合は、別区分の報告対象も確認する必要があります。国土交通省+1
4種類は単なる点検項目の分類ではなく、報告書、調査・検査方法、担当資格、提出時期が分かれています。同じ日に複数区分の現地確認を行っても、報告は原則として区分ごとに整理します。建築物の定期調査を実施したからといって、建築設備、防火設備、昇降機の定期検査まで完了したことにはなりません。
特定建築物定期調査で確認する内容
特定建築物定期調査では、建築物の敷地や構造、外部、屋上・屋根、内部、避難施設などについて、損傷、腐食、劣化、維持保全の状態を確認します。対象項目や調査方法は告示などで定められており、建物の用途や構造、設置状況によって該当する項目が異なります。
敷地周辺では、地盤沈下、敷地内排水、通路の確保、塀や擁壁の劣化などを確認します。敷地内に倉庫、設備、看板、植栽などが後から設置され、避難通路や消防活動上必要な空間を狭めていないかも重要です。
建築物の外部では、基礎、外壁、開口部、庇、軒裏、外部階段、手すりなどの状態を確認します。外壁仕上げ材の浮きや剥落のおそれ、金属部材の腐食、固定部の緩みは、通行者や利用者への危害につながる可能性があります。道路、通路、出入口に面する部分では、劣化の位置と落下時の影響をあわせて把握する必要があります。
屋上や屋根では、防水層、屋根材、笠木、排水口、屋上に設置された機器や架台などを確認します。排水口の詰まりや防水層の破断は漏水の原因になり、架台や看板の腐食は部材落下の危険につながります。安全に接近できない場所については、無理に立ち入らず、資格者と適切な調査方法を検討します。
建築物の内部では、床、壁、天井、柱、梁、廊下、階段、出入口などを確認します。仕上げ材の劣化だけでなく、避難経路への物品の放置、扉の開閉障害、階段や廊下の有効幅を狭める使用状況にも注意が必要です。
テナント工事や模様替えで間仕切りが追加された場合、避難経路、防火区画、排煙計画などへ影響することがあります。確認申請の要否とは別に、定期調査では現況に安全上、防火上、衛生上の支障がないかを確認します。過去の図面と現況が異なる場合は、変更時期や工事内容を整理して資格者へ伝えることが大切です。
なお、2025年7月1日施行の告示改正により、主要な換気設備、排煙設備、可動式防煙壁、非常用の照明装置の作動状況など、従来は特定建築物定期調査と建築設備定期検査で重複していた項目の一部が、建築設備定期検査側へ整理されました。また、各階の主要な常閉防火扉に関する一定の確認項目も、防火設備定期検査側へ移行しています。現在の業務分担は、古い報告書や旧様式だけで判断せず、施行後の様式と所管行政庁の案内で確認する必要があります。国土交通省+2国土交通省+2
建築設備定期検査で確認する内容
建築設備定期検査では、建築物に設けられた設備のうち、法令や特定行政庁の指定によって報告対象となる設備を検査します。一般に、換気設備、排煙設備、非常用の照明装置、給水設備、排水設備などが関係しますが、対象設備や報告範囲は地域によって異なります。
換気設備では、機械換気設備の作動、給気口や排気口の状態、送風機、風道、防火ダンパーなどを確認します。機器が運転していても、フィルターや風道の汚れ、開口部の閉塞、部品の損傷によって必要な性能を確保できない場合があります。
店舗や厨房などでは、油分や粉じんが付着しやすく、日常の清掃状態が検査結果に影響します。清掃記録、部品交換記録、異常発生時の対応記録を残しておくと、経年変化や不具合の原因を把握しやすくなります。
排煙設備では、排煙口、排煙窓、操作装置、排煙機、風道などの作動や状態を確認します。排煙窓の前に家具や商品が置かれている、操作装置が内装材で隠れている、改修後にワイヤーや窓が動かなくなっているといった状態は、火災時の機能を妨げます。
非常用の照明装置は、停電時に避難上必要な明るさを確保するための設備です。通常照明が点灯していても、非常電源への切替えや予備電源に不具合があれば、停電時に機能しません。器具の点灯状態、電源、設置状態などを、対象となる検査方法に従って確認します。
給水設備や排水設備が対象となる地域では、受水槽、配管、排水槽、衛生上必要な設備などについて、腐食、漏水、損傷、維持保全の状態を確認します。ただし、建物内のすべての給排水機器が一律に定期報告の対象になるわけではありません。
空調設備、電気設備、消防用設備などには、建築基準法以外の制度に基づく点検が必要なものもあります。設備台帳には、設備名だけでなく、根拠法令、点検区分、周期、担当者、報告先を分けて記録すると、異なる制度の点検を混同しにくくなります。
防火設備定期検査で確認する内容
防火設備定期検査は、火災時に防火区画を形成し、炎や煙の拡大を抑える設備が正常に機能するかを確認する検査です。
主な対象として、防火扉、防火シャッター、耐火クロススクリーン、ドレンチャーその他の水幕を形成する防火設備があります。ただし、建物に防火設備が設置されていれば、すべてが自動的に定期報告の対象になるとは限りません。建物の用途や規模、設備の閉鎖方式、国や特定行政庁の指定、経過措置などを確認する必要があります。
防火扉には、通常時から閉鎖して使用する常閉防火扉と、火災感知などに連動して閉鎖する随時閉鎖式の防火扉があります。扉本体や枠の変形、腐食、損傷、閉鎖状態、作動の円滑さ、物品の放置、固定の状態などを、該当する検査項目に沿って確認します。
2025年7月1日以降は、従来、特定建築物定期調査で確認していた各階の主要な常閉防火扉に関する一定の項目が、防火設備定期検査へ移されています。一方、常閉防火扉のすべてが同じ範囲で一律に対象となるわけではないため、対象扉の選定は現行の告示、様式、所管行政庁の案内に基づいて行います。
防火シャッターでは、シャッター本体、ガイドレール、駆動装置、連動機構、危害防止に関係する装置などを確認します。降下位置に商品棚、家具、間仕切り、配線があると、所定の位置まで閉鎖できません。天井改修や設備工事の後に、配管や看板が作動範囲へ張り出していることもあります。
感知器や制御装置と連動する設備では、信号を受けて作動するか、途中で停止しないか、所定の位置まで閉鎖するかを確認します。外観に異常がなくても、駆動部や連動機構に不具合があれば、防火区画を形成できません。
防火設備の作動範囲を空けることは、検査日だけの対策ではありません。荷物の搬入、店舗の陳列、催事の設営、清掃用具の仮置きなどで閉鎖範囲が塞がれないよう、床面表示や日常点検のルールを整える必要があります。
昇降機等定期検査で確認する内容
昇降機等定期検査では、対象となるエレベーター、エスカレーター、小荷物専用昇降機、段差解消機、いす式階段昇降機などについて、安全に使用できる状態かを確認します。設備の種類や仕様によって検査項目は異なります。
エレベーターでは、かご、昇降路、乗場、出入口の扉、駆動装置、制御装置、ブレーキ、主索や鎖、安全装置、非常時の連絡装置など、多数の項目を確認します。戸が開いた状態で走行しないための仕組みや、異常時に停止する装置は、利用者の安全に直結します。
エスカレーターでは、踏段、移動手すり、乗降口、くし板、駆動部、非常停止装置などを確認します。部品の摩耗や損傷、異物の挟まり、停止装置の不具合は、転倒や巻き込みにつながる可能性があります。
小荷物専用昇降機は人が乗る設備ではありませんが、扉、搬器、昇降路、駆動機構などの不具合によって、利用者や周囲の人へ危害を及ぼすおそれがあります。名称だけで対象を判断せず、かごの寸法、出入口、設置形態などの仕様と所管行政庁の基準を確認します。
昇降機の保守契約に基づく点検と、建築基準法に基づく定期検査報告は、目的と手続きが同じではありません。保守点検を定期的に実施していても、法定の定期検査報告が不要になるとは限りません。また、法定検査を行ったことを理由に、日常的な保守や故障対応を省略することもできません。
改修や更新を行った場合は、設備番号、設置場所、用途、積載量、停止階などの台帳情報を現況に合わせます。旧設備の記録が残ったままだと、別の設備の報告書や修繕履歴を参照する管理ミスが起こりやすくなります。
なお、遊戯施設の定期検査は昇降機等検査員が関係する場合がありますが、報告書上は昇降機とは別の区分として扱われることがあります。遊戯施設がある施設では、一般建物向けの4区分だけで管理を完結させないことが重要です。
「調査」と「検査」の違い
12条点検では、建築物については「定期調査」、建築設備、防火設備、昇降機等については「定期検査」という言葉が使われます。
特定建築物定期調査は、敷地、外部、屋上・屋根、内部、避難施設などを広く確認し、建築物全体の状態を把握する性格があります。目視、触診、打診、測定、図面や記録の確認などを、対象項目に応じて組み合わせます。
建築設備、防火設備、昇降機等の定期検査では、設備の作動、測定値、部品の状態、安全装置などを、設備ごとの基準に従って確認します。設備が設置されているだけでなく、必要な場面で所定の機能を発揮できることが重要です。
ただし、「調査」は簡易で「検査」は高度という意味ではありません。外壁、防火区画、避難施設、建築材料などの調査にも、建築構造、劣化、関係法令に関する専門知識が必要です。
管理者は、「現地確認をしたこと」と「定期報告を完了したこと」を分けて考える必要があります。調査・検査の結果を所定の報告書にまとめ、必要な図面や写真を添付し、指定された方法と期間で提出して初めて、報告手続きが進みます。
提出後に、特定行政庁や指定された受付窓口から補正や追加資料を求められる場合があります。提出日だけでなく、受付状況、補正内容、最終的な処理状況まで記録すると、報告漏れや未完了を防ぎやすくなります。
4種類すべてが同じ建物に必要とは限らない
12条点検に複数の区分があるからといって、すべての建物で4種類全部の報告が必要になるわけではありません。
特定建築物定期調査の対象であっても、報告対象として指定された建築設備が設置されていない場合や、所在地の特定行政庁が該当設備を指定していない場合には、建築設備定期検査の対象にならないことがあります。昇降機がなければ、昇降機等定期検査も発生しません。
反対に、建物全体が特定建築物定期調査の対象でなくても、設置されている昇降機が定期検査報告の対象になることがあります。建築物と昇降機は、対象判定の考え方が同一ではありません。
防火設備についても、防火扉が一枚あるという理由だけで、直ちに防火設備定期検査の報告対象になるとは限りません。建物の用途や規模、設備の種類、閉鎖方式、国と特定行政庁の指定などを確認します。
国は、不特定多数の人が利用する一定の建築物、自力避難が困難な人が就寝用途で利用する一定の施設、それらに設けられた防火設備、一定の昇降機などを対象として定めています。これに加えて、特定行政庁が地域の実情に応じて対象を指定できます。国土交通省
同じ敷地に複数棟がある場合や、増築部分、別館、立体駐車場がある場合は、棟ごとの用途、面積、設備の所属を整理します。ひとつの住所だから一件の報告でよいとは限らず、設備をどの棟へひも付けるかも確認が必要です。
複合用途の建物では、店舗、飲食店、事務所、共同住宅、駐車場などが混在します。対象用途に供する部分の床面積や階の位置を誤って集計すると、必要な報告を見落とす可能性があります。
建物の取得、所有者変更、管理会社変更の際は、前回報告書だけで対象を判断せず、現況の用途、規模、設備台帳、改修履歴を照合します。過去に対象外であっても、用途変更や制度改正、行政庁の指定変更によって現在は対象となっている場合があります。
12条点検の対象を判断する方法
対象判定では、最初に建物所在地を所管する特定行政庁を確認します。市や区が特定行政庁となる地域もあれば、都道府県が所管する地域もあります。所在地の市区町村が必ず報告先になるとは限りません。
次に、建物の用途、階数、延べ面積、対象用途に供する部分の床面積、その部分がある階、地下階の有無などを整理します。確認済証、検査済証、建築計画概要書、竣工図、過去の報告書は有力な資料ですが、記載内容と現在の使用状況が一致しているかを確認します。
建築設備については、換気設備、排煙設備、非常用の照明装置、給排水設備などの設置状況を整理します。防火設備については、種類、設置位置、常閉か随時閉鎖式か、感知器との連動方式などを確認します。昇降機については、種類、台数、設置時期、用途、仕様、設備番号を台帳化します。
特定行政庁から届く案内や通知は重要ですが、通知が届かなかったことだけを対象外の根拠にはできません。所有者や管理者の変更、送付先情報の不一致、行政台帳と現況のずれなどにより、通知を受け取れないことがあるためです。
用途変更、増築、設備更新、昇降機の撤去や新設があった場合は、前回の判定をそのまま引き継がず、現在の状態で再確認します。倉庫から店舗、事務所から福祉施設などへの用途変更は、対象区分や報告時期へ影響する可能性があります。
判断が難しい場合は、建物資料と設備一覧をそろえ、特定行政庁または制度に詳しい資格者へ確認します。問い合わせた日、窓口、確認した資料、回答内容を記録しておくと、後任担当者にも判断根拠を引き継ぎやすくなります。
4種類ごとの報告周期と提出時期
報告周期は、「建築物は3年に1回、建築設備、防火設備、昇降機は毎年」と説明されることが多く、実際にこの周期を採用する特定行政庁も多くあります。ただし、全国のすべての建物に同じ提出月が適用されるわけではありません。建物の用途、地域、設備の種類、検査済証の交付時期などに応じて、提出年度や提出期間が定められます。横浜市公式サイト+1
建築物は用途ごとに報告年度が割り当てられ、3年ごとの特定年度に提出する方式があります。建築設備や防火設備は毎年であっても、用途によって提出月が異なる場合があります。昇降機は、検査済証の交付月や前回の報告時期を基準に提出期間が設定される地域があります。
そのため、前回の現地調査日へ単純に3年または1年を足すだけでは、正しい提出期間にならない可能性があります。点検日、検査可能期間、報告対象年度、提出期限を分けて管理することが重要です。
提出期限の直前に依頼すると、不具合が見つかった際に、修理、部品手配、再確認、社内承認の時間を確保できません。提出期限から逆算し、資格者への依頼、資料準備、現地調査、結果確認、改善判断、報告書作成、提出という工程を組みます。
テナントへの入室調整、設備停止、館内放送、営業時間外の作業が必要な施設では、さらに余裕が必要です。複数区分を同じ時期に実施する場合でも、それぞれの提出期限を個別に確認します。
新築や改築後の初回報告については、検査済証の交付後に一定期間の報告が免除される場合や、翌年度から報告対象となる場合など、所管行政庁の運用によって確認事項があります。初回時期を自己判断で先送りせず、最新の案内を確認してください。
12条点検を実施できる資格者
定期調査や定期検査は、誰でも法定業務として実施できるものではありません。一級建築士、二級建築士、または法令に基づく区分ごとの資格者が行います。
区分ごとの資格として、特定建築物調査員、建築設備検査員、防火設備検査員、昇降機等検査員があります。資格者証を持つ者は、その資格に対応する範囲で調査・検査を行います。一級建築士または二級建築士が業務を行う場合の取扱いも定められています。国土交通省
同じ会社へ4種類をまとめて依頼する場合でも、各区分の担当者が必要な資格と実務体制を備えているかを確認します。建築物の調査に対応できる会社であっても、昇降機の検査まで自社で実施できるとは限りません。
依頼先を選ぶ際は、資格の有無だけでなく、対象用途の経験、建物規模への対応、設備停止やテナント入室の調整、報告書作成、提出後の補正対応まで確認します。
外部へ委託しても、所有者または管理者に必要な対応がすべて移るわけではありません。建物の使用状況、過去の改修、不具合履歴、入室制限などは、管理側から正確に提供する必要があります。
契約前には、対象区分、対象棟、対象設備、現地調査の範囲、報告書作成、提出代行、補正対応、再検査の扱いを明確にします。「12条点検一式」という表現だけでは、依頼者と受託者の認識がずれる可能性があります。
4種類の区分で起こりやすい実務上の誤解
よくある誤解は、特定建築物定期調査を実施すれば、建物内の設備もすべて検査済みになるという考え方です。建築物の調査と、建築設備、防火設備、昇降機の検査は別区分です。2025年7月の告示改正で一部項目の区分も変わっているため、旧報告書の担当範囲をそのまま現在へ当てはめないことが重要です。
消防法に基づく消防用設備等の点検と、防火設備定期検査も別の制度です。名称が似ていても、根拠法令、対象設備、資格、報告先、様式が異なります。消防用設備等点検を実施しているから、防火設備定期検査も完了しているとは限りません。
昇降機の保守点検と法定の定期検査報告も混同しやすい項目です。保守契約書の作業回数だけで判断せず、法定検査の実施日、報告書、提出状況を別に確認します。
前回対象だったから今回も同じ、前回対象外だったから今後も不要という判断も危険です。用途変更、増築、設備更新、制度改正、特定行政庁の指定変更により、対象範囲や様式が変わる可能性があります。
受付印や報告済みを示す書類があっても、どの区分の報告なのかを確認します。建築物の報告書だけを見て「12条点検はすべて完了」と判断すると、防火設備や昇降機の報告漏れにつながります。
指摘がなかったことを、建物全体に問題がないという保証として扱うことも避ける必要があります。定期調査・検査は、定められた項目と方法により、調査・検査時点の状態を確認するものです。対象外の設備、確認できない隠蔽部分、調査後に発生した不具合まで将来にわたって保証するものではありません。
12条点検を円滑に進める準備
12条点検を円滑に進めるには、依頼前に建物情報と設備情報を整理します。
まず、確認済証、検査済証、設計図、竣工図、増改築図面、用途変更に関する書類を集めます。すべてが残っていない場合は、保管資料の範囲を明確にし、過去の定期報告書、修繕記録、設備台帳などから補います。
次に、所有者名、管理者名、建物名称、所在地、用途、階数、床面積が、過去の報告書と一致するかを確認します。名称変更や所有者・管理者変更があった場合は、所管行政庁で必要な手続きも確認します。
設備台帳では、換気設備、排煙設備、非常用の照明装置、給排水設備、防火設備、昇降機などを区分して整理します。設備番号、設置階、設置場所、数量、管理識別情報、設置時期、更新履歴を記録すると、報告漏れを防ぎやすくなります。
前回の指摘事項は、改善済み、対応中、未対応に分けます。改善済みの場合は、修繕日、施工箇所、工事内容、完了写真を準備します。未対応の場合は、理由、応急措置、今後の予定を整理し、資格者へ伝えます。
調査・検査当日は、屋上、機械室、電気室、天井裏、倉庫、テナント区画などへ立ち入ることがあります。鍵、入室許可、立会者、作業場所、設備停止の可否を事前に調整します。
防火シャッター、排煙設備、非常用の照明装置などを作動させる場合は、利用者への案内や館内放送が必要になることがあります。営業時間中の実施が難しい施設では、休館日や営業時間外に設定します。
高所や狭所については、安全な接近方法を資格者と協議します。点検を急ぐあまり、危険な場所へ無理に立ち入ることは避け、必要に応じて足場、高所作業車、遠隔確認など、安全を確保できる方法を検討します。
指摘事項が見つかった後の対応
12条点検で指摘事項が見つかった場合は、報告書へ記載して終わりではありません。状態に応じて、立入制限、使用制限、応急措置、詳細調査、修繕、改修を検討します。
外壁材に落下のおそれがある場合は、下部への立入りを制限し、落下防止措置を講じたうえで詳細調査や改修を進めます。防火扉が閉まらない場合は、障害物の撤去で改善することもありますが、扉や金具、枠の変形が原因であれば修理が必要です。
非常用の照明装置が点灯しない場合は、器具、予備電源、配線などの原因を確認します。排煙窓が開かない場合は、操作装置、ワイヤー、窓本体、周辺の内装や物品などを切り分けます。
昇降機に安全上重要な不具合がある場合は、検査者や保守担当者の判断に基づき、運転休止を含む対応が必要になることがあります。管理者だけで継続運転の可否を決めず、専門者の指示を確認します。
指摘事項には、直ちに危険回避が必要なものと、計画的に改善するものがあります。利用者への危険、落下や火災時の影響、不具合の進行性、代替手段の有無などを踏まえて優先順位を決めます。
修繕を行った際は、報告書の項目番号、位置、工事内容、完了日、完了写真をひも付けます。見積書や請求書だけでは、どの指摘へ対応した工事か分からなくなる場合があります。
改修工事が周辺設備へ影響しないかも確認します。床仕上げの変更で防火扉が擦れる、天井工事で感知器や非常用照明の位置関係が変わる、配管工事で防火シャッターの作動範囲が狭まるといった二次的な不具合を防ぐ必要があります。
点検記録を次回へ引き継ぐ方法
12条点検は、一度実施して終わる業務ではありません。次回へ記録を引き継ぐことで、劣化の進行、修繕の効果、未対応事項を確認しやすくなります。
提出した報告書だけでなく、調査結果表、配置図、平面図、設備位置図、関係写真、修繕記録、行政庁からの通知、補正書類、受付状況を確認できる資料を一体で管理します。
写真は、損傷部分の近接写真だけでなく、撮影位置が分かる全景写真も残します。撮影日、階、部屋、方位、設備番号、図面上の位置を記録すると、次回の写真と比較しやすくなります。
同じ場所を毎回異なる名称で記録すると履歴が分断されます。「東側外壁」「道路側外壁」「正面右側」などの呼び方が混在しないよう、方位、通り芯、部屋番号、設備番号などのルールを統一します。
設備を交換した場合は、旧設備と新設備の関係を記録します。撤去済み設備を台帳から整理し、新しい設備番号、設置日、仕様、検査記録をひも付けます。
担当者が異動しても、対象判定の根拠、報告周期、提出期限、依頼先、未改善事項が分かるようにします。個人のメールや紙ファイルだけへ保存すると、引継ぎ時に情報が失われる可能性があります。
デジタルで管理する場合も、写真を大量に保存すること自体が目的ではありません。必要な記録を検索でき、図面上の位置を特定でき、前回と今回の状態を比較できる構成にすることが重要です。
まとめ
12条点検は、建築基準法第12条に基づく定期調査・定期検査・定期報告を表す実務上の通称です。一般的な建物管理では、特定建築物定期調査、建築設備定期検査、防火設備定期検査、昇降機等定期検査の4種類に分けて整理すると、対象と担当範囲を把握しやすくなります。
特定建築物定期調査では、敷地、外部、屋上・屋根、内部、避難施設などを確認します。建築設備定期検査では、換気設備、排煙設備、非常用の照明装置、給排水設備など、指定された設備を検査します。
防火設備定期検査では、防火扉、防火シャッター、耐火クロススクリーン、ドレンチャーなどを確認します。昇降機等定期検査では、エレベーター、エスカレーター、小荷物専用昇降機など、対象となる昇降機の安全装置や機械部分を確認します。
ただし、制度全体には遊戯施設の定期検査報告もあるため、12条点検が厳密に4種類だけで構成されると断定するのは適切ではありません。また、2025年7月1日から一部の調査・検査項目の区分が変更されています。
4種類すべてが同じ建物に必要とは限りません。建物の用途、規模、設置設備、国の指定、特定行政庁の指定により、対象区分が変わります。報告周期や提出期間も地域ごとに確認が必要です。
実務担当者は、区分ごとに対象、期限、資格者、報告状況、指摘事項を管理してください。図面、写真、設備位置、修繕履歴を関連付けて残すことで、報告漏れを防ぎ、次回の調査・検査や改善状況の確認を進めやすくなります。