LRTKレフィクシア株式会社

12条点検で防火区画貫通部の隙間を見逃さない6チェック

建物の防火区画は、火災による炎や煙の拡大を一定の範囲に抑え、避難や消防活動に必要な時間を確保するための重要な構成です。ただし、防火区画をつくる壁や床に配管、配線、ケーブル、風道などを通すと、その部分には開口が生じます。貫通物の周囲が設計上予定された方法で処理されていなければ、壁や床が連続しているように見えても、防火上の弱点になるおそれがあります。

防火区画貫通部の不具合は、新築時だけでなく、設備更新、通信線の追加、テナント工事、配管撤去などの後に発生することがあります。しかも、対象箇所の多くは天井裏、シャフト、機械室、床下などにあり、日常巡回では確認しにくいのが実情です。

本記事では、建築基準法第12条に基づく定期調査を受ける建物の所有者、管理者、設備担当者に向けて、防火区画貫通部の隙間や処理不良を見逃しにくくする6つの実務チェックを解説します。ここで示す6チェックは、法令上の調査項目を六つに分けたものではありません。法定調査の代わりではなく、点検前の準備、日常の維持管理、是正工事の記録を進めるための整理方法です。

12条点検と防火区画貫通部の基本

実務で使われる「12条点検」は、一般に建築基準法第12条に基づく建築物の定期調査、建築設備の定期検査、防火設備の定期検査、昇降機等の定期検査をまとめて表す通称です。正式な制度上は対象ごとに調査または検査の区分があり、実施できる資格者や報告書も同一ではありません。

すべての建物が同じ対象、同じ周期、同じ報告内容になるわけでもありません。国が一律に対象とする建築物や設備がある一方、地域の実情に応じて特定行政庁が対象を定める場合があります。また、調査・検査項目や報告様式は改正されることがあるため、建物所在地を所管する特定行政庁の最新案内を確認する必要があります。

特定建築物の定期調査に関する国の調査項目には、給水管、配電管その他の管または風道について、区画貫通部の充填等の処理状況を確認する項目が設けられています。したがって、防火区画貫通部は単なる自主点検だけのテーマではなく、建築物の定期調査とも関係する部位です。ただし、具体的な調査方法、調査できる範囲、判定の扱いは、現行の告示、建物の状況、提出先の運用に基づいて資格者が判断します。

防火扉や防火シャッターなどの作動状況を確認する防火設備の定期検査と、防火区画を構成する壁や床、区画貫通部を確認する建築物の定期調査は、同じ「防火」に関係していても確認対象が完全に同じではありません。風道が区画を貫通する箇所では、防火ダンパーや風道の構成が関係するため、建築物の調査と建築設備の検査を切り離して考えないことも重要です。

防火区画貫通部とは、防火区画を構成する壁や床を、給排水管、配電管、電線管、ケーブル、ケーブルラック、風道などが通過する部分を指します。必要な防火性能は、壁や床だけで成立するものではありません。貫通物と開口周囲の処理を含め、区画として求められる性能が途切れない状態にする必要があります。

適合方法は一種類ではありません。壁または床の構造、厚さ、貫通物の材質、寸法、本数、配置、保温材の有無、施工方向などによって、適用できる告示仕様や国土交通大臣認定の仕様が異なる場合があります。大臣認定を用いる場合は、材料名だけでなく、認定書で定められた構成や適用条件との整合を確認することが欠かせません。

そのため、表面が何らかの材料で埋まっているだけでは、適切な処理と断定できません。一方、表面に凹凸があるという理由だけで、直ちに不適合と決めることもできません。管理者の事前確認では、目視できる異常と資料上の未確認事項を分け、最終的な法定調査の判定は資格者へ委ねることが安全です。

防火区画貫通部の隙間が見逃されやすい理由

防火区画貫通部の隙間が見逃されやすい理由の一つは、対象箇所の位置が分かりにくいことです。通常の壁や床は室内から広い範囲を見渡せますが、設備の貫通部は天井裏、配管シャフト、電気シャフト、機械室、床下、設備機器の背面などに集中しています。点検口を開けても、手前の配管や下地材に遮られ、奥側や反対側を確認できないことがあります。

もう一つの理由は、建物の使用開始後も設備工事が繰り返されることです。通信環境の更新、監視設備の追加、空調設備の改修、給排水管の更新、テナントの入退去などにより、新たな配管やケーブルが防火区画を通ることがあります。工事の主目的が設備機能の追加や復旧であると、防火区画の復旧確認が工程から抜け落ちる可能性があります。

既存の貫通部へ新しいケーブルを追加する工事にも注意が必要です。もともとの処理が適切であっても、追加配線のために充填部を切り欠いたり、ケーブルを押し込んだりすれば、周囲に隙間や割れが生じることがあります。表面だけを埋め直しても、内部の空洞や必要な奥行き不足を外観から確認できない場合があります。

撤去工事後も同様です。配管やケーブルを抜いても、残った穴が自動的に防火上適切な状態へ戻るわけではありません。切断した管やスリーブが空洞のまま残る、ケーブルを抜いた細い穴が放置される、板や一般的な断熱材で一時的に塞がれるといった状態は、遠目では見落としやすくなります。

管理側で防火区画の位置が共有されていないことも原因になります。通常の間仕切り壁と区画壁は、仕上げ後の外観だけでは区別しにくい場合があります。図面が古い、改修図が更新されていない、テナント工事の完了資料が建物側へ引き継がれていないと、施工者が区画壁と認識せずに開口を設けるおそれがあります。

さらに、防火区画貫通部は単独の材料ではなく、壁または床、貫通物、スリーブ、充填部、支持方法などの組み合わせで成立します。表面に材料が見えることだけを根拠に判断すると、貫通物の種類が適用範囲外であること、ケーブルが過密であること、配管の動きで処理部が破損していることなどを見落としかねません。

こうした事情から、12条点検当日に見える場所だけを短時間で確認するのではなく、事前に防火区画と貫通部の候補を整理し、確認可能な状態を準備しておくことが重要です。

チェック1 防火区画の位置と貫通部を図面で特定する

最初のチェックは、防火区画を構成する壁と床の位置を把握し、設備が通過する可能性のある場所を図面上で特定することです。確認対象の母数が分からないまま現場を歩くと、見つけやすい箇所だけを確認して終了しやすくなります。

まず、竣工図、各階平面図、防火区画図、設備図、配管図、配線図、改修図などを集めます。一種類の図面だけで判断するのではなく、建築図と設備図を照合します。防火区画の位置と設備経路を重ねて見ることで、貫通部が生じる可能性の高い場所を絞り込めます。

図面が現況と一致しているかも確認します。竣工後に増築、用途変更、間仕切り変更、設備更新などが行われている場合、竣工時の図面だけでは現在の区画や設備経路を把握できないことがあります。改修工事の完了図、施工写真、工事申請書、テナント工事の記録を確認し、現況との差を整理します。

階段、吹き抜け、エレベーター周辺、配管シャフト、電気シャフト、機械室、用途の異なる部分の境界は、設備貫通が集中しやすい候補です。ただし、これらがすべて同じ法令上の防火区画になるわけではありません。建物ごとの設計図書と現行の扱いに基づいて判断します。

候補箇所を抽出したら、現場で共通して使える位置番号を付けます。階、室名、通り芯、壁の向き、床か壁か、床からのおおよその高さなどを組み合わせると、図面と写真を対応させやすくなります。同じ設備室に多数の貫通部がある場合、「設備室の壁」という記録だけでは、後日どの箇所を指すのか分かりません。

位置番号は、定期調査だけでなく、補修見積り、是正工事、完了確認、次回の点検にも使える形式にします。建物内で表記方法を統一しておけば、担当者や工事会社が変わっても履歴を追いやすくなります。

現場で図面にない貫通部を見つけた場合は、写真を撮るだけで終わらせず、どの壁または床を通っているのか、反対側はどの室なのか、いつの工事で設けられた可能性があるのかを確認します。現況を図面へ反映し、未確認事項を台帳に残すことが大切です。

防火区画の全体像を先に整理すると、点検口の開放、入室調整、高所作業設備の準備、停電や設備停止の要否なども計画しやすくなります。点検当日に初めて図面を確認する運用では、限られた時間内に確認漏れが生じやすくなります。

チェック2 充填部の欠損・ひび割れ・剥離を確認する

二つ目のチェックは、貫通物と壁または床との間に設けられた充填部や処理部の状態確認です。単に穴が見えるかどうかではなく、処理部が周囲の壁、床、管、ケーブルなどへ連続して接しているかを見ます。

明らかな隙間がある、光が通る、反対側が見える、材料が脱落しているといった状態は、早めに資格者や専門工事会社へ確認を依頼すべき兆候です。ただし、隙間の幅だけで安全性を決めることはできません。細い隙間であっても仕様上許容されるとは限らず、反対に表面の凹凸だけで不適合と断定することもできません。

ひび割れを見つけた場合は、幅、長さ、方向、貫通物との位置関係を記録します。表面だけの変化か、内部まで続く破損かは外観だけで確定できないことがあります。前回写真と比較できるよう、同じ方向と距離から撮影しておくと変化を追いやすくなります。

剥離や脱落は、片側だけの確認では見逃しやすい不具合です。床貫通部では上面が整っていても、下面側の材料が落下している場合があります。壁では室内側が覆われていても、シャフト側で欠損していることがあります。安全に確認できる範囲で、壁の両側、床の上下を確認します。

貫通物と処理部の境界も重要です。配管の熱伸縮、振動、支持不良、ケーブル束の自重などにより、周囲に環状の隙間が生じることがあります。ケーブル束が沈み、上側に空隙ができている場合や、配管が動いて充填部に割れが生じている場合は、処理部だけでなく支持状態も合わせて確認します。

化粧板、カバー、保温材などで取り合いが隠れている場合は、見える仕上げ面だけで判断しません。ただし、管理者が無理に取り外すと、設備を損傷したり、既存の処理を壊したりするおそれがあります。確認が必要な範囲と安全な方法を調査員や設備担当者と協議します。

材料の色、硬さ、外観だけで種類を推定することも避けます。似た外観でも用途や性能が異なる場合があり、塗装や経年変化によって見え方も変わります。仕様書、施工要領書、認定関係資料、施工写真などと照合し、資料がなければ「材料不明」「仕様未確認」と記録します。

ひび割れや隙間を見つけた直後に、一般的なシーリング材や補修材を上から塗り込む対応は適切ではありません。既存の構成や必要寸法を確認せずに表面だけを覆うと、内部の状態が分からなくなり、適用条件から外れる可能性があります。まず現況を記録し、原因と仕様を確認したうえで是正方法を決めます。

チェック3 配管・ケーブルの増設跡と撤去跡を追う

三つ目のチェックは、竣工後に追加または撤去された設備の跡を確認することです。防火区画貫通部の不具合は、材料の経年変化だけでなく、後施工によって発生することがあります。

最初に、空調機器の更新、通信配線の変更、監視設備の追加、照明制御の改修、給排水設備の更新、テナント内装工事など、直近の工事履歴を集めます。工事名称だけでは貫通の有無が分からないため、施工範囲図、配線経路図、完了写真、工事報告書まで確認します。

現場では、周囲より新しい管やケーブルに注目します。色、汚れ、ラベル、支持金具、保温材の状態が周辺と異なる設備は、後から追加された可能性があります。その設備が区画壁や床を通過している場合、既存処理を切り欠いていないか、周囲に隙間がないかを確認します。

ケーブル束では、外周だけでなく束の内部も課題になります。新しいケーブルを中央へ押し込むと、外側は埋まっているように見えても、内部に空隙が残ることがあります。追加本数が増え、認定または設計上の条件と異なる状態になっていないかも資料で確認します。

将来用のスリーブや予備開口にも注意が必要です。将来の設備増設を想定した開口であっても、未使用期間中の処理が不要になるわけではありません。ふたや板が付いているだけの場合は、それが設計上予定された構成なのか、仮塞ぎのままなのかを記録から確認します。

撤去跡では、短く切断された管、残置されたスリーブ、ケーブルを抜いた細い穴、不要になった開口を確認します。紙、一般的な発泡材、断熱材などが詰められている場合は、見た目だけで防火上の処理と扱わず、使用材料と施工方法を確認します。

使われていない管が区画を貫通したまま残る場合は、片側だけでなく両端を確認します。片側が閉じられていても、残置方法が設計上または認定上の条件に合うかは別の問題です。撤去するのか、残置するのか、残置時にどの処理を行うのかを専門家と整理します。

テナント工事が多い建物では、天井や壁を閉じる前の工程確認が有効です。配管や配線を通した段階、貫通処理を施工した段階、仕上げを閉じる前の段階で写真を残せば、完成後に見えなくなる部分も追跡できます。

設備工事を発注するときは、貫通部の復旧を工事範囲へ明記します。施工箇所、適用仕様、施工者、確認者、写真提出、図面更新までを決めておくと、誰が復旧を担うのか曖昧になりにくく、次回の12条点検でも履歴を追いやすくなります。

チェック4 壁・床・貫通物・処理方法の組み合わせを照合する

四つ目のチェックは、隙間の有無だけでなく、壁または床、貫通物、処理方法の組み合わせが、設計図書や施工資料と整合しているかを確認することです。

防火区画貫通部の性能は、充填材の名称だけで決まるものではありません。区画を構成する壁または床の種類と厚さ、貫通物の材質、外径、断面、本数、間隔、スリーブ、保温材、充填深さ、施工方向などが関係します。ある条件で使用できる方法を、別の壁や別の貫通物へそのまま転用できるとは限りません。

まず、対象が壁貫通か床貫通かを区別します。同じような材料が使われていても、壁用と床用で適用条件が異なる場合があります。壁の場合は、中実の壁か中空の壁か、壁厚や構成が資料と一致しているかを確認します。

次に、貫通物を分類します。金属管、樹脂管、電線管、単独ケーブル、ケーブル束、ケーブルラック、風道などでは、確認すべき条件が異なります。保温された配管は、管だけでなく保温材を含む構成が適用条件に関係する場合があるため、外から見える管径だけで判断しません。

施工表示や識別ラベルが残っている場合は、資料照合の手掛かりになります。ただし、表示があるだけで現況の適合が保証されるわけではありません。表示された仕様と実際の壁、床、貫通物が一致しているか、施工後にケーブル追加や材料変更が行われていないかを確認します。

反対に、表示がないことだけを理由に直ちに不適合と断定することも避けます。古い建物では、現在と同じ表示方法が採られていない場合があります。竣工図、仕様書、確認関係書類、改修記録、施工写真を調べ、資料が不足する場合は資格者や設計者へ判断を依頼します。

風道が防火区画を貫通する箇所では、配管やケーブルの充填処理と同じ見方だけでは不十分です。防火ダンパーの位置、風道の構成、区画との取り合い、支持状態、点検可能性などが関係します。風道周囲の隙間だけを見て終了せず、建築設備の検査担当者とも情報を共有します。

大臣認定の仕様を採用している箇所では、現場での小さな変更にも注意が必要です。材料、寸法、壁種、貫通物の本数などが認定条件と異なれば、外観が整っていても認定仕様どおりとはいえません。国土交通省が過去に公表した事例でも、認定仕様と異なる施工が建築基準法違反と判断されています。

資料照合で不明点が残る場合は、「問題なし」と断定せず、「仕様確認が必要」「認定資料未確認」「壁種不明」など、未確認事項を具体的に記録します。外観上の状態と法令上の適合判断を分けて管理することが、見逃しと誤判定の防止につながります。

チェック5 天井裏・シャフト・床下など見えにくい場所を確認する

五つ目のチェックは、通常の室内巡回では見えない場所を計画的に確認することです。防火区画貫通部は設備経路が集中する隠蔽部に多く、点検口やシャフト扉を開けなければ確認できない箇所があります。

天井裏では、廊下と室内の境界、用途の異なる室の境界、階段や吹き抜けの周辺、機械室との境界など、図面上で区画壁が通る可能性のある位置を先に確認します。無計画に点検口をのぞくだけでは、通常の間仕切り壁と防火区画を構成する壁を区別できません。

点検口を開けても対象箇所が見えない場合は、「異常なし」と扱わないことが重要です。手前の配管、天井下地、機器などで視界が遮られる場合は、「確認不能」「一部確認」などに区分し、追加調査が必要な位置を残します。

配管シャフトや電気シャフトでは、扉を開けた正面だけでなく、側面、上部、下部、各階の床貫通部を確認します。配管が密集した箇所では、手前の処理部によって奥側の隙間が隠れることがあります。照明の方向を変え、必要に応じて鏡や撮影機器を使い、無理のない範囲で死角を減らします。

床下空間がある建物では、床貫通部の下面側を確認します。室内側が整っていても、床下側で剥離や脱落が生じている可能性があります。ただし、床下には酸欠、転倒、感電、漏水、害虫などの危険がある場合があります。建物の安全管理手順に従い、必要な教育、保護具、監視体制を整えます。

制御盤、空調機器、配管ヘッダー、収納棚などの背面も見逃しやすい場所です。機器を無理に移動させると設備事故につながるため、反対側の室から確認できないか、施工写真や図面で補えないかを検討します。

使用中のテナント区画では、入室時間、営業への影響、警備解除、立会者、什器移動を事前に調整します。鍵だけを用意しても、点検口の下に商品棚や機器があれば開放できません。確認したい位置を図面で示し、必要な養生や移動範囲を早めに共有します。

高所の点検口では、適切な脚立、作業台、足場などが必要です。机や椅子を代用して短時間で確認することは避けます。事前確認であっても作業安全を優先し、準備が整わない場合は別日調査を計画します。

隠蔽部を確認するために、管理者の判断だけで壁や天井を壊すことも適切ではありません。破壊を伴う調査が必要な場合は、目的、範囲、設備停止、復旧方法、建物利用への影響を整理し、資格者、設計者、施工者と協議します。

見えにくい場所では、無理に確認済みの数を増やすより、確認できた範囲と確認できなかった範囲を明確にすることが重要です。未確認箇所を位置番号で特定しておけば、追加調査や次回工事の際に確認できます。

チェック6 写真・位置番号・是正履歴を一体で残す

六つ目のチェックは、確認結果を後から再現できる形で記録することです。防火区画貫通部は似た外観の箇所が多いため、写真だけを大量に保存しても、場所を特定できなければ維持管理に活用できません。

写真は、位置が分かる全景と、処理状態が分かる近接写真を組み合わせます。全景では室名、扉、柱、設備機器などの周辺情報を含め、近接写真では貫通物全体と壁または床との取り合いが分かるように撮影します。

隙間、ひび割れ、剥離を記録するときは、正面だけでなく斜め方向からも撮影すると、段差や浮きを確認しやすくなります。寸法を測る場合は、どの位置を測定したかが分かるようにします。測定値だけを記録し、測定位置が不明になることを避けます。

写真のファイル名や台帳には、位置番号、階、室名、壁または床の別、撮影方向、撮影日を記録します。「写真001」のような連番だけでは、担当者が交代したときや、複数の工事会社へ是正を依頼するときに混乱します。

図面にも同じ位置番号を記入します。写真台帳、図面、指摘一覧、見積書、是正報告の番号を統一すれば、別の箇所を誤って補修するリスクを減らせます。

管理者の事前確認では、「異常が見当たらない」「要確認」「要是正候補」「確認不能」など、建物内で使う区分を統一します。ただし、これらは管理用の区分であり、法定調査の判定区分と混同しないようにします。管理者の確認は、資格者による定期調査に代わるものではありません。

要確認とした箇所には、何が不足しているかを具体的に記載します。施工仕様書の確認、反対側からの目視、点検口の追加開放、過去の工事記録の照合など、次の行動が分かる表現にすると対応を進めやすくなります。

是正工事を行った場合は、施工前、施工途中、施工後の写真を残します。完成後の表面だけでは、内部の構成や必要な奥行きを確認できない場合があります。仕上げで隠れる部分は、閉鎖前に位置番号を写し込んで撮影します。

是正記録には、施工日、対象箇所、壁または床の種類、貫通物、採用仕様、施工者、確認者、関連資料の保管場所を記載します。どの条件を確認して補修方法を選んだのかが追跡できる状態にすることが重要です。

次回の点検では、前回の指摘箇所だけでなく、是正後に設備が追加されていないかも確認します。一度適切に是正した箇所でも、新しいケーブルが追加されれば状態が変わります。写真台帳を時系列で比較できるようにしておくと、変化を見つけやすくなります。

12条点検前に管理者が準備しておきたい資料と段取り

12条点検の前には、現場を見やすくするだけでなく、判断に必要な資料を整理します。防火区画貫通部は外観だけで適否を判断できない場合があるため、図面と施工記録の有無が確認の精度に影響します。

準備したい資料は、竣工図、防火区画図、各階平面図、設備図、改修図、工事完了図、過去の定期調査報告書、指摘一覧、是正報告、施工写真などです。すべてがそろわない場合でも、現存する資料と不足資料を分けて整理し、調査員へ事前に伝えます。

過去の報告書では、区画貫通部だけでなく、区画壁、防火扉、防火シャッター、排煙設備、風道、防火ダンパーなどの関連指摘も確認します。防火区画の問題は一つの部位だけで完結しない場合があるため、周辺設備の履歴と合わせて見ることが大切です。

直近の工事一覧には、建築工事だけでなく、電気、空調、給排水、通信、防犯、入退室管理などの工事も含めます。小規模な配線追加であっても、防火区画を貫通した可能性があれば確認対象として扱います。

当日の立会者は、鍵を管理しているだけでなく、工事履歴やテナントとの調整状況を説明できる人が望まれます。一人で把握できない場合は、建築担当、設備担当、テナント管理担当の連絡先を整理し、必要時に確認できる体制をつくります。

点検口の位置、開閉方法、必要工具も事前に確認します。ねじ止めの点検口、家具の上にある点検口、警戒区域内の点検口などは、当日すぐに開けられないことがあります。養生、警備解除、設備停止、立入り手続きの要否まで確認します。

建物利用者への周知も必要です。天井点検口の開放では、ほこりや小さな落下物が生じる可能性があります。執務室、店舗、医療施設などでは、商品、書類、精密機器への養生と作業時間の調整が欠かせません。

確認できなかった場所の扱いも、調査員と事前に相談しておくと円滑です。後日確認するのか、確認不能として報告書へ記録するのか、追加資料で判断できるのかを整理します。未確認箇所を曖昧なまま残さないことが重要です。

12条点検は、当日に建物を案内するだけで完了する作業ではありません。資料整理、現場へのアクセス確保、工事履歴の共有を事前に行うことで、隠れた不具合や未確認箇所を把握しやすくなります。

指摘を受けた後の是正と再発防止

防火区画貫通部について指摘を受けた場合は、表面の隙間を急いで埋めるのではなく、指摘内容、対象位置、原因を確認します。同じように見える不具合でも、材料の欠損、後施工による破損、適用条件との不整合、資料不足など、必要な対応は異なります。

最初に、指摘箇所の位置番号、図面、写真を照合します。位置が曖昧なまま工事を発注すると、施工者が別の貫通部を補修するおそれがあります。写真だけで特定できない場合は、調査員と現地で再確認します。

次に、壁または床の構造、厚さ、貫通物の種類、寸法、本数、保温材、既存処理の方法を整理します。設計図書、確認関係書類、認定関係資料、施工記録などを調べ、適用できる是正方法を検討します。

是正方法は、材料の入手しやすさや施工のしやすさだけで決めません。対象となる壁、床、貫通物へ適用できることを確認し、必要寸法、下地、支持、施工手順を守ります。認定仕様を用いる場合は、認定条件と現況が一致するかを確認します。

既存処理の上へ別の材料を重ねる場合も、組み合わせの適否を確認します。材料を追加すれば性能が高まるとは限りません。既存材を撤去する必要があるのか、部分補修が認められるのかを施工前に整理します。

貫通物が過密な場合は、単純な充填だけで対応できないことがあります。不要な配線を撤去する、経路を分ける、開口を再構成するなど、設備計画から見直す必要が生じる場合もあります。

工事中は、区画壁や床を新たに傷めないようにします。不具合部分を撤去するときに開口を広げすぎたり、壁内部を破損したりすると、補修範囲が拡大します。既存設備を動かす場合は、漏水、感電、通信停止、空調停止などのリスク管理も必要です。

是正完了後は、管理者の外観確認だけで終了せず、必要に応じて調査員、設計者、工事監理者などへ確認を依頼します。特定行政庁や報告機関から是正報告の様式、添付書類、期限が示されている場合は、その指示に従います。

再発防止では、設備工事の申請から完了までの流れを見直します。着工前に防火区画の位置を確認し、貫通の有無を申請書へ記載し、施工中と閉鎖前に写真を撮り、完了時に図面と台帳を更新する手順を標準化します。

テナント工事では、工事申請書に防火区画貫通の有無、予定箇所、施工方法、施工者を記載させ、完了写真を提出させる運用が有効です。建物側の様式を統一すれば、工事会社が変わっても必要な情報をそろえやすくなります。

小規模工事を一律に記録対象外としないことも重要です。通信線一本の追加でも、区画壁に新たな穴を設けたり、既存処理を切り欠いたりすれば、防火上の確認が必要になる可能性があります。小さな変更を継続的に記録することが、長期的な見逃し防止につながります。

防火区画貫通部で起こりやすい判断ミス

防火区画貫通部の確認で起こりやすい判断ミスは、表面が埋まっていることだけで問題なしとすることです。外観が平滑でも、内部に空洞がある、必要な厚さや奥行きが確保されていない、適用外の壁や貫通物に使われている可能性があります。

反対に、表面に凹凸や色むらがあるだけで不適合と断定することも適切ではありません。施工方法によって外観は異なります。確認すべきなのは、明らかな欠損や隙間の有無に加え、資料で確認できる仕様と現況が整合しているかです。

「前回の12条点検で指摘されなかったから問題ない」という判断にも注意が必要です。前回後に設備が追加された、前回は点検口がなく確認できなかった、資料不足で判定できなかったなど、現在の状況が変わっている可能性があります。

「新築時から同じ状態だから適切だろう」という推測も根拠にはなりません。竣工時の施工記録がなく、設計条件との整合を確認できない場合は、経過年数だけで適否を判断できません。

充填材らしいものが入っていることを理由に、安全だと考えることも避けます。一般的な断熱材、発泡材、パテ状材料などが使われている可能性があります。材料名が分からない場合は推測で記録せず、資料確認が必要な状態として扱います。

風道貫通部を、配管やケーブルと同じ方法だけで確認するのも誤りです。風道には防火ダンパーや風道自体の構成が関係する場合があります。区画との位置関係、支持、点検口を含め、建築設備の担当者と連携して確認します。

点検口から見えない場所を「異常なし」と扱うことも避けます。確認できないことと、不具合がないことは別です。「確認不能」「一部確認」と区分し、追加確認の必要性を記録します。

管理者の事前確認と、資格者が行う法定調査を混同しないことも重要です。管理者の確認は、明らかな異常を早期に見つけ、資料と現場を準備するためのものです。法令への適合性や報告書上の判定は、対象制度、建物条件、現行の調査基準を踏まえて資格者が行います。

まとめ

12条点検で防火区画貫通部の隙間を見逃さないためには、目に見える穴だけを探すのではなく、防火区画の位置、設備工事の履歴、壁や床の構造、貫通物の種類、処理方法、施工記録を一体で確認する必要があります。

最初に図面から防火区画と貫通部の候補を整理し、充填部の欠損、ひび割れ、剥離を確認します。そのうえで、後から追加または撤去された配管やケーブルを追い、現況と設計図書や施工資料を照合します。

天井裏、シャフト、床下などの見えにくい場所は、確認できないまま「異常なし」とせず、確認不能箇所として位置を特定します。追加調査の要否を資格者と相談し、無理な立入りや破壊調査を避けることも重要です。

確認結果は、位置番号、図面、全景写真、近接写真、工事履歴を関連付けて残します。是正時は一般的な材料で表面を覆うのではなく、壁または床と貫通物に適用できる方法を確認し、施工途中を含む記録を保存します。

防火区画貫通部の管理は、12条点検の直前だけに行うものではありません。設備工事やテナント工事のたびに、着工前の区画確認、施工中の写真記録、完了時の図面更新を行うことで、次回点検時の確認漏れを減らせます。

多数の貫通部を継続して管理する場合は、紙の図面だけに頼らず、スマートフォンやタブレットを使って位置番号、現場写真、是正状況をその場で関連付ける方法も有効です。特定の製品を前提にせず、担当者が交代しても履歴を追える仕組みを整えることが、点検準備から是正確認までの確実性を高めます。

現場を3Dで残して、あとから測る。
実際の画面と動画で使い方を確認できます。

LRTK Phoneの使い方・実例を見る
資料請求導入相談
現場をスマホで3DスキャンLRTK Phone実例を見る