LRTKレフィクシア株式会社

12条点検にドローンを使う前に確認したい法規と安全対策7点

建築基準法第12条に基づく定期調査、いわゆる12条点検では、高所にある外壁、屋根、庇、外部に設けられた工作物など、地上から確認しにくい部分を調べる場面があります。こうした調査でドローンを活用すると、仮設足場や高所作業車を用いる詳細調査の前に建物全体の状態を把握しやすくなり、劣化が疑われる箇所の抽出や追加調査範囲の検討に役立ちます。

一方、ドローンで外壁を撮影しただけで、その映像を12条点検の結果としてそのまま使用できるとは限りません。定期報告制度上の調査方法として利用できる範囲、航空法上の手続き、重要施設周辺の飛行規制、施設管理者との調整、第三者の立入管理、気象条件、撮影データの品質などを、現場ごとに確認する必要があります。

とくに都市部の建物では、人口集中地区等、人や車両との近接、隣接建物、道路、鉄道、電線、電波環境など、複数の条件が重なります。法令上の許可や承認を得ていても、現地で安全を確保できなければ飛行を実施すべきではありません。反対に、法令上の条件と調査目的を整理し、ドローンで確認する範囲と従来方法で補う範囲を分ければ、安全性と調査品質の両立を図れます。

この記事では、12条点検の実務担当者がドローン調査を計画するときに確認したい法規と安全対策を7点に分けて解説します。制度や指定区域は改正されることがあるため、実際の飛行前には国や自治体、警察、施設管理者などが公表する最新情報を確認してください。

12条点検でドローンを使う前に押さえたい基本的な考え方

12条点検という呼び方は、建築基準法第12条に基づく定期報告制度を広く示す実務上の表現です。実際の制度では、特定建築物、建築設備、防火設備、昇降機等が区分されており、建物の用途、規模、所在地、特定行政庁の指定によって報告対象や報告時期が異なります。

ドローンが活用される主な場面は、特定建築物の定期調査に関係する外壁、屋根、庇などの外部の確認です。ただし、どの調査項目でも自由にドローンへ置き換えられるわけではありません。ドローンは高所の状態を離れた位置から観察する手段として有効ですが、部材を直接動かす確認、触診、打診、作動確認、内部の確認などには適しません。

外壁のタイル、石貼り等やモルタル等については、対象となる仕上げや条件の範囲内で、打診と同等以上の精度を確保した赤外線調査が定期報告制度上の調査方法として位置付けられています。赤外線装置を搭載したドローンによる方法も対象になり得ますが、国が公表するガイドライン等に沿って調査計画、撮影、解析、精度確認、報告を行うことが前提です。乾式工法による仕上げなど、同じような外観でもガイドラインの適用対象外となるものがあるため、仕上げ工法の確認が欠かせません。

また、ドローンの操縦者と12条点検の調査者は、同じ役割とは限りません。飛行の安全を管理する操縦者に加え、建築物の構造、仕上げ、劣化現象、定期報告制度を理解する有資格の調査者が画像や調査結果を確認し、報告内容を判断する必要があります。操縦技術が高くても、外壁の浮き、ひび割れ、欠損、漏水跡、金物の腐食などを定期調査の基準に沿って評価できるとは限らないためです。

発注段階では、「ドローン調査を行う」という表現だけで契約範囲を決めないことが重要です。可視画像による外観確認なのか、赤外線調査を行うのか、異常が疑われる箇所を別途打診するのか、定期報告用の資料作成まで含むのかを明確にします。調査方法と成果物が曖昧なまま進めると、撮影後に必要な画像が不足したり、定期報告に使用できる条件を満たしていないことが判明したりするおそれがあります。

1. 12条点検でドローンを使える調査範囲を明確にする

最初に確認したいのは、今回の12条点検でドローンを何のために使用するかです。目的を単に「建物全体を撮影すること」とすると、必要な撮影条件や調査結果の評価基準が不明確になります。「外壁表面のひび割れや欠損を記録する」「タイル等の浮きが疑われる範囲を赤外線画像から抽出する」「屋根材のずれや脱落につながる変状を確認する」など、対象と判定目的を具体化する必要があります。

可視画像による調査では、外壁表面のひび割れ、欠損、剥がれ、錆汁、変色、シーリング材の破断、金物の腐食、屋根材のずれなどを記録できます。ただし、高倍率で撮影できたとしても、画像の解像度、撮影角度、光の方向、機体の揺れ、外壁との距離によって確認精度は変わります。画像上では線状の影がひび割れに見えることもあれば、細いひび割れが目地や模様に紛れることもあります。

赤外線調査では、外壁表面の温度分布から、仕上げ材の浮きが疑われる部分を抽出します。ただし、外壁表面に判定可能な温度差が現れる条件が整わなければ、適切な評価は困難です。日射の当たり方、方位、外気温、風、雲、降雨の履歴、外壁材の色、表面の濡れ、室内側の空調状態などが画像に影響します。

赤外線画像に温度差が現れたとしても、その部分が必ず浮いているとは限りません。下地構成の違い、補修跡、設備配管、日陰、反射、汚れなどが温度差として表れる場合があります。そのため、可視画像、建物図面、仕上げ表、過去の改修履歴、地上からの目視結果などを組み合わせて判定します。

ドローンによる赤外線調査を打診に代わる調査方法として用いる場合は、対象となる仕上げ材、建物の形状、撮影条件、解析方法、精度確認の方法を事前に整理します。とくに、タイル、石貼り等、モルタル等のうち制度上の対象となる範囲と、乾式工法など別の評価が必要な範囲を分けなければなりません。対象建物の仕上げ方法を図面や改修記録で確認せず、外観だけで調査方法を決めるのは避けるべきです。

また、ドローンでは確認しにくい死角も存在します。庇の上面、バルコニーの内側、設備機器の裏側、外壁の入隅、狭い隣棟間、金網やルーバーの内側などです。飛行できない範囲を事前に図面上で示し、地上からの目視、高所作業車、ロープアクセス、足場上からの調査など、現場条件に応じた方法で補完する計画を作ります。

12条点検では、調査できなかった部分を曖昧にしないことも重要です。未撮影箇所や判定困難箇所を成果物に明記し、追加調査の要否を判断できる状態にします。ドローンを使う目的は、調査したように見せることではなく、建物の安全性を適切に評価するための情報を増やすことです。

2. 機体登録と操縦者の技能を確認する

屋外で飛行させる機体重量100グラム以上の無人航空機は、原則として国への機体登録が必要です。登録されていない対象機体を飛行させることはできません。登録後は機体に登録記号を表示し、免除条件に該当する場合を除いて、機体識別情報を発信するリモート識別機能にも対応します。

機体登録の有効期間は3年であるため、過去に登録した機体でも、点検実施日に登録が有効かを確認します。所有者や使用者、機体情報に変更がある場合は、必要な変更手続きが完了しているかも確認します。赤外線カメラ、保護部材、照明、外付け機器などを追加した場合は、搭載状態での重量、重心、飛行性能、登録情報や許可・承認条件との整合を確認することが大切です。

操縦者については、国の無人航空機操縦者技能証明を取得していなければ、すべての飛行が禁止されるわけではありません。技能証明が必要となる場面や、許可・承認を省略できる条件は、飛行カテゴリー、機体認証、安全措置、飛行方法などによって異なります。

ただし、資格が一律の必須条件ではないことと、技能確認が不要であることは別です。建物外壁の近接飛行では、壁面からの風の跳ね返り、建物角部の乱流、電波の反射、測位精度の低下、障害物検知の誤作動などが起こる可能性があります。広い空き地での飛行経験だけでは、狭い外壁周辺を安全に飛行できるとは限りません。

発注者は、操縦者の経験を総飛行時間だけで判断せず、建築物調査に近い環境での経験を確認します。外壁への接近飛行、高層建物、狭い敷地での離着陸、目視外飛行、緊急着陸の訓練、補助者との連携などについて、実績と社内手順を確認すると現場への適性を判断しやすくなります。

操縦者と建築物の調査者を別の人が担当する場合は、撮影指示の伝達方法も決めておきます。調査者が必要とする画像の向きや範囲を操縦者が理解していなければ、同じ箇所を何度も飛行することになります。飛行回数が増えるほど、バッテリー交換、第三者の侵入、風の変化などによるリスクも増えます。

機体の仕様については、カタログ上の最大飛行時間だけでなく、点検用機器を搭載した状態での実用飛行時間を確認します。表示されている最大飛行時間は、無風に近い環境など一定の条件を前提としている場合があります。外壁付近で機体位置を細かく調整しながら飛行すると、通常より電力を消費する可能性があります。

3. 航空法上の飛行空域と飛行方法を確認する

12条点検でドローンを飛行させる場合、まず飛行場所が航空法上の飛行禁止空域に該当するかを確認します。代表的な確認対象は、空港等の周辺、緊急用務空域、地表または水面から150メートル以上の空域、人または家屋の密集している地域の上空です。人口集中地区を基礎として判定する区域には、告示で除外される区域が設けられる場合もあるため、最新の公的地図や指定状況で確認します。

都市部の12条点検では、人口集中地区等に該当する可能性が高いため、現場の所在地と飛行経路を地図上で確認します。現地の見た目だけでは判断できません。周辺に空き地が多い建物でも対象区域に含まれることがあり、反対に建物が多い場所でも個別の区域指定を確認する必要があります。

緊急用務空域は、災害時などに警察、消防その他の緊急用務を行う航空機の安全を確保するため、臨時に指定されます。通常時に指定されていなくても、飛行予定日までに状況が変わる可能性があります。ほかの空域に関する許可を得ていても、緊急用務空域が指定された場合は原則として飛行できないため、計画時だけでなく飛行直前にも公示を確認します。

飛行方法についても確認が必要です。夜間飛行、操縦者が機体とその周囲を直接目視できない目視外飛行、人または物件との間に必要な距離を確保できない飛行、催し場所上空の飛行、危険物の輸送、物件の投下などは、特定飛行に該当します。人口集中地区等の上空や空港等周辺などの飛行も特定飛行に含まれます。

特定飛行を行う場合は、飛行カテゴリー、立入管理措置、機体認証、操縦者技能証明、飛行方法などを踏まえて、国の許可や承認が必要かを確認します。一定の条件を満たすことで許可や承認が不要となる特定飛行もありますが、その場合でも、飛行計画の通報や飛行日誌の作成など、特定飛行に伴う運航ルールは別に確認しなければなりません。

建物の外壁に近づいて撮影する場合は、点検対象建物を飛行関係者が管理する物件として扱えるか、隣接建物、通行車両、街路灯、電線などの第三者物件との距離を確保できるかを分けて考えます。対象建物の所有者から承諾を得たからといって、周辺にあるすべての人や物件との関係が解決するわけではありません。

高層建物の調査では、地表または水面から150メートル以上になる可能性があります。ただし、煙突、鉄塔、高層建物などの高構造物から30メートル以内の空域については、一定の条件で150メートル以上の飛行禁止空域から除外される扱いがあります。空港等の周辺、緊急用務空域、人口集中地区等、飛行方法に関する規制は別に確認する必要があるため、高構造物に近いという理由だけで手続き不要と判断してはいけません。

建物の裏側へ回り込む飛行、屋上の塔屋を越える飛行、操縦者から機体が一時的に見えなくなる飛行は、目視外飛行に該当する可能性があります。補助者が機体を見ていれば常に目視内飛行になるわけではなく、航空法上の目視は原則として操縦者自身が機体とその周囲を直接確認することを指します。

許可や承認が必要な場合は、申請と補正に要する期間を工程に組み込みます。申請すれば必ず希望日までに許可されるとは限りません。飛行経路の変更や安全対策の追加を求められる可能性もあるため、建物管理者、調査会社、操縦者の間で飛行条件を早い段階から共有します。

4. 重要施設周辺の規制と現地固有の手続きを確認する

ドローンの飛行では、航空法以外の規制も確認しなければなりません。代表的なものが、重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行を原則として禁止する法律です。国の重要な施設等、外国公館等、防衛関係施設、空港、原子力事業所などの周辺には、航空法とは別の飛行禁止エリアが指定されます。

2026年7月14日に施行された改正により、重要施設の敷地や区域の周囲に設定される飛行禁止エリアは、従来のおおむね300メートルからおおむね1000メートルへ拡大されました。この規制は、航空法上の無人航空機に当たる100グラム以上の機体だけでなく、100グラム未満を含む小型無人機等も対象になり得ます。以前に飛行できた場所でも現在は指定区域に含まれる可能性があるため、飛行の都度、最新の対象施設と区域を確認します。

飛行禁止の例外に該当し、対象施設の管理者や土地の所有者等から必要な同意を得て飛行する場合でも、原則として飛行開始の48時間前までに、管轄警察署を経由して都道府県公安委員会へ通報する必要があります。海域を含む場合や、防衛関係施設、対象空港の周辺で飛行する場合などは、警察への通報に加えて関係機関への通報が必要となることがあります。具体的な同意先と通報先は、対象施設の種別と飛行区域によって確認します。

対象建物が重要施設そのものでなくても、飛行経路が周辺の飛行禁止エリアに含まれていれば規制を受ける可能性があります。都市部では、庁舎、外国公館、防衛関係施設、対象空港などが近くにあることを見落としやすいため、建物の住所だけでなく、離着陸地点、飛行経路、緊急時の退避範囲まで地図上で確認します。

敷地については、建物所有者や施設管理者から、飛行、離着陸、撮影、立入制限について必要な承諾を得ます。所有者から点検業務を受注していても、屋上、駐車場、公開空地、隣接地などの使用権限が別の管理者にある場合があります。区分所有建物では、管理組合、管理会社、専有部分の使用者などとの調整が必要になることもあります。

隣接地の上空へ機体が入る可能性がある場合は、土地所有者や管理者への事前説明と、必要な同意の有無を確認します。機体が敷地境界を越えない計画でも、通信断や強風時の退避、墜落時の立入管理範囲が隣接地に及ぶ可能性があります。通常経路だけでなく、異常時の影響範囲まで含めて調整します。

道路に面した建物では、道路交通への影響を確認します。道路上に操縦者や補助者を配置する、三脚や機材を置く、区画材で歩道を狭める、通行を一時的に制限するなどの行為は、道路使用許可や道路管理者との調整が必要になる場合があります。道路上空の飛行だけで一律に同じ手続きになるわけではないため、現場の使用方法と交通への影響を整理し、所轄警察署や道路管理者へ事前に確認します。

公園、河川、港湾、学校、病院、鉄道施設、発電施設などでは、それぞれの管理規則や利用条件が設けられている場合があります。航空法上の許可や承認があっても、施設管理者の承諾がなければ離着陸や撮影を行えないことがあります。鉄道や幹線道路の近くでは、機体の落下が重大な交通障害につながるため、施設側との協議が必要かを早めに確認します。

通信に使用する無線設備についても、国内の電波法に適合した機器を使用します。海外向けの機体や送信機は、周波数や送信出力が国内基準に適合していない可能性があります。技術基準への適合が確認できない機器や、通信距離を延ばす目的で独自に改造した無線設備は使用しないことが基本です。

法規確認では、「必要な手続きは何か」だけでなく、「誰が申請者となり、誰が同意し、いつまでに完了させるか」を明確にします。調査会社が航空法関係の申請を担当し、建物管理者が敷地利用や利用者周知を担当するなど、役割分担を文書化すると手続き漏れを防ぎやすくなります。

5. 第三者の立入りを防ぐ安全管理体制を整える

12条点検で最も優先すべき安全対策は、飛行経路や落下のおそれがある範囲に第三者を入れないことです。許可や承認を得ている場合でも、歩行者、入居者、来館者、車両などの上空を安易に飛行してよいわけではありません。

最初に、建物の形状、飛行高度、外壁との距離、風向き、機体の異常時動作などを踏まえて立入管理区画を設定します。区画は離着陸地点だけでなく、外壁沿いの飛行経路、機体が流される可能性のある方向、機体や部品が落下する可能性のある範囲まで考慮します。

建物の正面玄関、駐車場の出入口、搬入口、駐輪場、店舗前、通学路など、人の動きが集中する場所では、休館日や利用者の少ない時間帯への変更を検討します。区画材や表示だけでは人の侵入を確実に止められない場所には、補助者を配置して声掛けと誘導を行います。

補助者の役割は、単に機体を見守ることではありません。第三者や車両の接近、鳥の接近、風の変化、有人航空機、周囲の障害物などを監視し、操縦者へ速やかに伝える役割があります。飛行開始前に、通常停止と緊急停止の合図、連絡方法、判断権限を統一しておきます。

操縦者は、送信機の画面や撮影映像を確認している間、周囲への注意が薄くなる可能性があります。撮影担当者や調査者が操縦者へ連続して指示を出すと、安全確認の妨げになることもあります。操縦、撮影指示、安全監視の役割を分け、誰でも危険を認めたときに飛行中止を提案できる体制を整えます。

建物利用者への事前周知も重要です。飛行日時、対象範囲、立入制限箇所、騒音、撮影の目的、延期条件などを掲示や館内連絡で知らせます。突然ドローンが窓の近くへ接近すると、入居者が不安を感じたり、窓やバルコニーから身を乗り出したりする可能性があります。

窓、バルコニー、屋上などから人が現れる可能性がある建物では、管理者に利用制限や見張りを依頼します。ただし、避難経路を塞いだり、防火戸を固定したりしてはいけません。飛行安全のための措置が、建物の防災上の安全を損なわないようにします。

離着陸地点は、機体が横転した場合やプロペラが破損した場合にも第三者へ影響しにくい場所を選びます。砂、砂利、水たまり、落ち葉、ビニール片などがある場所では、機体が巻き上げて人や建物へ飛散させる可能性があります。地面の状態を確認し、必要に応じて安定した離着陸面を設けます。

墜落や不時着時の対応も計画に含めます。機体が屋根、庇、樹木、電線などに引っ掛かった場合、無理に回収しようとすると二次災害につながります。立入禁止範囲の拡大、施設管理者や関係機関への連絡、高所からの回収方法、専門作業者の手配などを事前に決めます。

6. 気象条件と機体トラブルへの対策を決める

ドローン調査の実施可否は、天気予報だけでなく、建物周辺の局所的な気象条件によって判断します。地上で風が弱くても、高層階や建物角部では風速が高くなることがあります。隣棟間では風が集中し、建物の風下側では乱れた気流が発生する可能性があります。

風速の中止基準は、機体の耐風性能だけで決めるべきではありません。機体が姿勢を維持できても、撮影画像がぶれたり、外壁との距離を一定に保てなかったりすれば、点検データとしての品質を確保できません。機体仕様の上限より余裕を持ち、安全と撮影品質の両方を満たす社内基準を設定します。

雨、雪、霧、結露などは、機体故障や視界不良の原因になります。雨が止んだ直後でも、外壁表面が濡れていると可視画像の見え方や赤外線画像の温度分布が変化します。赤外線調査では、撮影時に飛行できるかだけでなく、その前の天候履歴も確認する必要があります。

強い日射は、赤外線調査に必要な温度差を生じさせる一方、ガラス、金属、光沢のある外壁材で反射を起こす場合があります。雲の出入りによって日射条件が短時間で変化すると、同じ壁面を撮影した画像でも条件がそろわなくなることがあります。方位ごとに適切な時間帯を設定し、条件が変化した場合の中止や再撮影の基準を決めます。

低温時にはバッテリー性能が低下する可能性があります。高温時には、機体、バッテリー、撮影機器が熱を持ち、連続運用が難しくなることがあります。予備バッテリーを準備するだけでなく、保管温度、充電状態、膨張、端子の損傷、使用履歴などを確認します。

飛行前点検では、プロペラの欠けや変形、モーターの異音、機体の亀裂、ねじの緩み、カメラ固定部、バッテリー装着部、通信状態、測位状態などを確認します。点検用機器を取り付けた場合は、固定状態だけでなく、重心の変化やプロペラ、センサーへの干渉も確認します。

建物周辺では、外壁、金属屋根、鉄骨、設備機器などの影響により、測位や方位の検出が不安定になる場合があります。自動飛行や自動帰還の機能があっても、常に想定どおり動作するとは限りません。異常が生じたときに手動で安全な位置へ移動できる技能と空間を確保します。

通信が途切れたときの機体動作も確認します。自動帰還、上昇、着陸、その場での待機など、機種や設定によって動作が異なります。高層建物の近くで自動的に上昇すると、庇や上階の構造物へ接触する可能性があります。現場ごとに適切な通信断時の動作と帰還経路を設定します。

飛行経路の途中には、緊急着陸地点を確保します。機体異常が発生したとき、無理に離陸地点へ戻そうとすると、飛行時間が延びて墜落リスクが高まります。屋上、閉鎖した駐車区画、敷地内の空きスペースなど、第三者のいない場所を候補として整理します。

万一、事故や重大な異常が発生した場合は、直ちに飛行を中止し、負傷者の救護と周囲の危険防止を優先します。航空法上の事故または重大インシデントに該当する場合は、国への報告が必要です。報告対象か判断できない場合に備え、連絡先と社内の初動手順を実施計画に記載しておきます。

7. 撮影データの品質とプライバシーを管理する

ドローン調査では、飛行が無事に終わっても、必要なデータが取得できていなければ12条点検には活用できません。撮影前に、必要な解像度、撮影距離、角度、画像の重なり、ファイル形式、撮影位置の特定方法などを決めます。

可視画像は、建物全体の位置関係が分かる画像と、劣化状況を判定できる近接画像を組み合わせます。拡大画像だけでは、建物のどの部分を撮影したのか分からなくなることがあります。立面図や区画番号と対応させ、撮影位置、撮影方向、階数、通り芯などを記録します。

同じひび割れを異なる角度から撮影すると、幅や長さの見え方が変わります。画像上で寸法を測定する場合は、撮影距離、画角、対象面に対する角度、レンズ特性などの条件を管理しなければなりません。画像の画素数が多いだけで、正確な寸法を測れるとは限りません。

赤外線画像では、撮影時刻、外気温、天候、風、日射、対象面の方位、表面状態などを記録します。解析時に温度差だけを切り出すのではなく、可視画像と照合し、外壁の目地、補修跡、室内側の熱源などを確認します。

調査精度を確保するため、建物の一部で打診結果と赤外線画像を比較するなど、現地条件に応じた精度確認を行います。定期報告に赤外線調査を利用する場合は、対象範囲、撮影条件、解析、打診との併用、報告書の作成などについて、国のガイドライン等に沿って実施することが重要です。

撮影漏れを防ぐには、飛行終了後すぐに現地で画像を確認します。事務所へ戻ってから不足に気付くと、再度の飛行手続き、施設調整、立入管理が必要になる可能性があります。撮影担当者だけでなく、建築物の調査者が判定に使える画像かを確認します。

プライバシーへの配慮も欠かせません。外壁を撮影する過程で、住宅の窓、バルコニー、室内、通行人、車両のナンバーなどが写り込む可能性があります。点検に不要な範囲を撮影しない飛行経路と画角を設定し、建物利用者や周辺関係者へ撮影目的を周知します。

窓の正面で長時間停止する飛行は、必要性を慎重に検討します。外壁の確認に必要な場合でも、室内を撮影しにくい角度を選び、必要に応じてカーテンやブラインドを閉めてもらうなどの調整を行います。映像を広報や営業資料へ転用する場合は、点検目的での撮影とは別の利用として、権利者や写り込んだ人への対応を確認します。

撮影データは、閲覧できる担当者を限定し、適切な場所に保存します。個人や室内の様子が写った不要な画像は、点検記録として保存する必要性を確認したうえで、削除やマスキングを行います。外部の解析担当者へデータを渡す場合は、受け渡し方法、保管期間、目的外利用の禁止、業務終了後の削除方法などを契約や運用ルールで定めます。

報告書では、ドローンを使用した範囲、撮影方法、撮影条件、確認できなかった部分、追加調査を行った部分を明記します。ドローン画像から異常が確認できなかったことと、異常が存在しないことは同じではありません。調査可能な条件が整っていたかを含めて評価します。

ドローン調査前に作成したい実施計画

12条点検にドローンを使用する場合は、飛行計画と建築物調査計画を別々に扱うのではなく、一つの実施計画として整理すると管理しやすくなります。

実施計画には、対象建物、調査目的、調査項目、使用機体、撮影機器、操縦者、調査者、補助者、飛行経路、離着陸地点、立入管理区画、緊急着陸地点、飛行予定時間、延期条件、関係者への連絡方法などを記載します。

法令関係では、機体登録、リモート識別機能、航空法上の空域、飛行方法、許可や承認、飛行計画の通報、飛行日誌、重要施設周辺の規制、道路や公園などの管理ルールを確認します。それぞれについて、確認日、確認者、根拠資料、手続き状況を記録しておくと、飛行直前の再確認がしやすくなります。

建築物調査の計画には、立面ごとの撮影時間、必要な画像解像度、赤外線調査の条件、図面との対応方法、現地での精度確認方法、打診等で補完する範囲を記載します。外壁の方位ごとに日射条件が異なるため、飛行順序も調査品質を左右します。

実施前には、関係者による現地確認を行います。図面上では飛行できるように見えても、樹木、電線、看板、仮設足場、駐車車両などにより経路を確保できない場合があります。隣接建物の窓、屋上設備、鳥の営巣、人や車両の通常動線なども現地で確認します。

飛行当日は、気象、緊急用務空域、重要施設の指定状況、機体状態、通信状態、立入管理、建物利用状況を確認します。条件が計画と異なる場合は、その場の判断で無理に飛行せず、経路変更や延期を検討します。点検の予定を守ることより、第三者と作業者の安全を守ることが優先です。

飛行終了後は、画像の撮影範囲、鮮明さ、位置情報、赤外線画像の状態を現地で確認します。飛行記録、機体の異常、気象条件、計画から変更した内容も記録し、建築物の調査者へ引き継ぎます。

まとめ

12条点検におけるドローンは、高所作業の負担を減らし、建物全体の状態を効率的に把握するための有効な手段です。外壁、屋根、庇などを離れた位置から確認できるため、追加調査箇所の絞り込みや経年変化の記録にも活用できます。

ただし、ドローンを飛ばすこと自体が12条点検の目的ではありません。最初に、ドローンで確認できる調査項目と、打診、触診、作動確認など別の方法で補う項目を整理する必要があります。赤外線調査を外壁調査に利用する場合も、対象となる仕上げや条件を確認し、撮影条件と解析精度を確保したうえで、制度上求められる方法に沿って実施します。

飛行面では、機体登録、航空法上の許可や承認、飛行計画の通報、飛行日誌、重要施設周辺の規制、敷地や道路の管理ルールを確認します。とくに重要施設周辺の飛行禁止エリアは2026年7月14日の法改正施行によっておおむね1000メートルへ拡大されているため、過去の確認結果や古い資料だけに頼らず、飛行の都度、最新情報を確認することが重要です。

現場では、第三者の立入管理、補助者の配置、建物利用者への周知、緊急着陸地点の確保、気象条件の監視を徹底します。許可や承認があることは、安全性が自動的に保証されることを意味しません。現地条件が計画と異なる場合に飛行を中止できる体制まで含めて、安全管理と考える必要があります。

撮影後は、画像を建物の位置と対応させ、確認できなかった範囲や判定困難箇所を明示します。ドローン画像だけで結論を急がず、図面、改修履歴、地上調査、打診結果などを組み合わせることで、12条点検の信頼性を高められます。

現場を3Dで残して、あとから測る。
実際の画面と動画で使い方を確認できます。

LRTK Phoneの使い方・実例を見る
資料請求導入相談
現場をスマホで3DスキャンLRTK Phone実例を見る