LRTKレフィクシア株式会社

12条点検で煙突のひび割れと支持金具の腐食を調べる5項目

12条点検における煙突調査の位置づけ

建築基準法第12条に関係する定期報告・定期点検では、対象となる建築物や設備などについて、法令、告示、特定行政庁の案内に基づいて状態を確認します。実務ではこれらをまとめて「12条点検」と呼ぶことがありますが、民間の特定建築物に関する定期調査、国や地方公共団体が管理する建築物の定期点検、建築設備や防火設備の定期検査などは、根拠となる条項や報告・点検の区分が同一ではありません。

本稿では、主に特定建築物の定期調査で確認する煙突を想定し、煙突本体、建築物との接合部、付帯金物を調べる際の実務上の視点を整理します。実際の対象、報告時期、調査資格者、使用様式、追加項目は、建物の用途、規模、所在地、所有形態などによって異なることがあります。煙突が設置されているという理由だけで、全国一律の周期や同一様式による報告が必要になるとは限りません。

国の定期調査に関する告示では、「建築物に設ける煙突」について、煙突本体と建築物との接合部の劣化・損傷、付帯金物の劣化・損傷を、必要に応じて双眼鏡などを使用した目視により確認する項目が設けられています。判定基準には、煙突本体や接合部の著しいひび割れ、肌分かれなど、付帯金物の著しい錆や腐食などが示されています。

また、建築基準法施行令第138条第1項第1号に該当する高さ6メートルを超える煙突では、調査結果表上、煙突本体の鉄筋露出、腐食、著しい錆、錆汁、ひび割れ、欠損などと、アンカーボルト等の著しい錆、腐食、緊結不良などを確認する区分が設けられています。ただし、この区分への該当性や定期報告上の取扱いは、煙突の高さの算定、建築物との関係、所在地の制度運用などを含めて確認する必要があります。([国土交通省][1])

実務でいう付帯金物には、支持バンド、ブラケット、控え材、接続プレート、ボルト、ナット、アンカーボルトなどが含まれることがあります。ただし、すべての煙突に同じ部材があるわけではなく、構造形式によって名称、配置、役割が異なります。調査結果表の名称だけで範囲を決めず、設計図書と現況を照合し、どの部材が煙突を支持し、どこへ荷重を伝えているかを把握することが重要です。

煙突は屋上、外壁面、塔屋上部など、地上から詳細を確認しにくい位置に設けられることがあります。遠方から見える範囲だけで異常の有無を判断すると、背面、金具裏面、頂部、基部などの劣化を見落とすおそれがあります。12条点検では、確認できた範囲だけでなく、確認方法、視認条件、死角、未確認部分を記録し、必要な場合は別途詳細調査へつなげる姿勢が求められます。

煙突の不具合を放置するリスク

煙突の劣化で注意したいのは、外装材やコンクリート片などの落下、支持力の低下、雨水の浸入、排気経路の不具合です。煙突本体にひび割れ、浮き、剥離、欠損が生じると、劣化した部分が落下する可能性があります。直下が屋上通路、設備点検経路、出入口、駐車場、歩道などであれば、部材の大きさだけでなく、人が立ち入る頻度や落下範囲も含めて安全上の影響を検討する必要があります。

支持金具やアンカーボルトの腐食は、煙突の姿勢を保持し、風や地震などによる力を建築物や基礎へ伝える機能に影響する可能性があります。表面に錆が見えているだけでは残存断面や支持性能を確定できませんが、層状の錆、孔食、著しい減肉、破断、変形、ボルトやナットの脱落などが認められる場合は、通常の表面錆より慎重な評価が必要です。

鉄筋コンクリート製の煙突では、ひび割れなどから水分が浸入し、内部の鉄筋が腐食すると、腐食生成物の膨張によって周囲のコンクリートに新たなひび割れ、浮き、剥離、欠損が生じることがあります。錆汁は内部の鉄筋や埋込み金物の腐食を示唆する兆候となり得ますが、目視だけで発生源や腐食範囲を確定することはできません。

鋼製煙突では、外部からの雨水だけでなく、排気中の水分、結露、温度変化、排気成分、塗膜の劣化などが腐食に影響します。外面が比較的きれいでも、継ぎ目、フランジ、支持バンドの内側、断熱材の内側、内部ライニング周辺など、見えない部分で劣化している可能性があります。定期調査の目視範囲を超える確認が必要な場合は、運転停止条件や安全手順を整えたうえで、設備または構造の専門者による詳細調査を検討します。

煙突の異常は、ひび割れだけ、錆だけという単独の現象で現れるとは限りません。ひび割れの近くに錆汁がある、支持金具の下に雨だれ跡がある、基部の防水層が切れている、補修材の境界から再び水が入っているなど、複数の兆候が関連していることがあります。異常の位置関係を整理すると、劣化原因や水の移動経路を推定しやすくなります。

点検前に確認しておきたい資料と現場条件

現地調査の前には、煙突の位置、材質、概略高さ、固定方法、周辺状況を資料で確認します。竣工図、構造図、設備図、煙突詳細図、屋上平面図、確認申請関係図書、過去の定期調査結果、修繕履歴、工事写真、設備管理記録などが主な資料です。資料がそろっていない場合は、不足を理由に現況を推測で埋めず、確認できた事項と未確認事項を分けて整理します。

図面では、煙突が建築物に一体的に設けられているのか、独立基礎に固定されているのか、外壁へブラケットで支持されているのかを確認します。支持位置や支持間隔が把握できれば、現地で確認すべき金具を事前に洗い出せます。図面と現況が異なる場合は、煙突の増設、交換、撤去、支持方法の変更、設備更新などの履歴がないかを管理者へ確認します。

高さ6メートルを超える煙突に該当する可能性がある場合は、高さの根拠となる図面や現況寸法も確認します。屋上に設けられた煙突では、高さの算定起点について行政上の取扱いを確認する必要がある場合があります。現場の見た目だけで法令上の区分を断定せず、所在地の特定行政庁が示す取扱いや現在使用されている調査結果表と照合します。

過去の点検写真がある場合は、同じ位置を比較できるように準備します。前回からひび割れが伸びているか、錆の範囲が広がっているか、補修材が再び割れていないかを確認するには、撮影方向と位置が対応した記録が有効です。過去写真に方角や部材番号がなく比較できない場合は、今回から記録方法を統一します。

現場条件では、屋上への立入方法、施錠、点検通路、手すりや親綱設備の有無、開口部、稼働設備、高温部、排気、電気設備、配管、配線、足元の段差などを確認します。煙突に接近できても、安全な作業姿勢を確保できない場合があります。無理な姿勢での接近、設備への乗り移り、手すり外への身の乗り出しなどを前提とした調査計画は避けなければなりません。

設備を停止しなければ確認できない部分がある場合は、建物管理者や設備管理者と事前に調整します。調査者が独断で設備を停止、開放、分解してはいけません。通常の定期調査で確認できない範囲については、未確認理由を記録し、安全な停止条件や接近方法を整えた別途調査として計画します。

点検項目1|煙突本体のひび割れ・肌分かれ・欠損

最初に確認するのは、煙突本体のひび割れ、肌分かれ、欠損、浮き、剥離、変形などです。建築物に設ける煙突の告示上の方法は、必要に応じて双眼鏡などを使用した目視確認が基本です。法定の調査項目として実施する目視確認と、原因や深さを調べるための追加調査を混同せず、目視で判定できない状態は無理に断定しないことが重要です。

ひび割れを見るときは、幅だけでなく、長さ、方向、位置、連続性、段差、周囲の変色、錆汁の有無を確認します。縦方向、円周方向、斜め方向では、温度変化、乾燥収縮、鉄筋腐食、支持部の変位など、関係する要因が異なる可能性があります。ただし、ひび割れの方向だけで原因を確定することはできません。複数の兆候と設計条件、使用状況、補修履歴を合わせて評価します。

鉄筋コンクリート製の煙突では、ひび割れに錆汁が伴っていないか、コンクリートが浮いていないか、欠損部から鉄筋が露出していないかを確認します。露出鉄筋に著しい錆や断面減少が疑われる場合、周囲のコンクリートにも浮きや剥離が広がっている可能性があります。落下のおそれを否定できない場合は、直下の利用状況を確認し、安全措置の要否を速やかに検討します。

モルタルや塗装などの仕上げがある場合は、仕上げ層だけのひび割れなのか、下地まで続く可能性があるのかを観察します。目視だけで深さを確定できないため、補修材の浮き、ひび割れを境にした段差、錆汁、白華、欠損などの併発状況を記録します。打診、接触、部分的な仕上げ撤去などが必要な場合は、法定調査の通常範囲とは別の詳細調査として、安全と所有者の承認を確保して実施します。

れんがやブロックで構成された煙突では、材料の割れだけでなく、目地の欠落、開き、洗掘、ずれ、傾き、部分的な膨らみを確認します。目地を横断するひび割れや、複数段にわたるずれが見られる場合は、表面上の軽微な劣化と決めつけず、全体の変形や支持状態との関係を確認します。

鋼製煙突では、コンクリートのひび割れに相当する確認として、鋼板の腐食、孔食、膨れ、局部的な減肉、継ぎ目の開き、溶接部の割れが疑われる兆候、変形などを見ます。特に、塗膜が割れている部分、錆が塗膜を押し上げている部分、フランジ周辺、水平面、雨水が流れ込む上端部は劣化が集中しやすい箇所です。

補修済みの部分も確認対象です。補修材の周囲に新たなひび割れがある、補修部分が浮いている、境界部から錆汁や白華が出ている場合は、劣化原因が残っている可能性があります。過去の補修範囲と現在の異常範囲を照合し、再発、補修範囲外の新規劣化、補修材自体の劣化を区別して記録します。

点検項目2|建築物との接合部・基部の劣化

煙突本体に目立つ異常がなくても、建築物との接合部や基部で劣化が進んでいることがあります。接合部は、煙突に作用する荷重を建築物や基礎へ伝える部分であり、材料や形状が切り替わる場所でもあります。温度変化、振動、雨水、風による繰り返し変位などの影響が集中する可能性があるため、本体と一体で確認します。

屋上から煙突が立ち上がる形式では、煙突の根元、防水層との取り合い、基礎コンクリート、固定プレート、アンカーボルト周辺を確認します。基部に円周状のひび割れがある、煙突と基礎の境界に隙間がある、固定部周辺のコンクリートが欠けている、プレート下から錆汁が出ているといった状態は、変位、水の浸入、埋込み金物の腐食などを検討する手がかりになります。

防水層との取り合いでは、シーリング材の破断、剥離、硬化、隙間、押さえ金物の浮き、防水層の破断などを確認します。接合部から雨水が入ると、屋内漏水だけでなく、アンカーボルトや埋込み金物の腐食につながる可能性があります。防水材の劣化と煙突の変位が同時に生じている場合もあるため、漏水跡だけを補修して原因確認を終えないことが重要です。

外壁面に設けられた煙突では、壁貫通部、ブラケット取付部、外壁との隙間、固定部周辺のひび割れや変色を確認します。煙突と外壁の間隔が狭いと、地上側から見えない背面に水分や汚れが滞留することがあります。外側の見える面が健全でも、背面や接触面の状態は別途確認が必要です。

基礎コンクリートでは、アンカーボルト周辺のひび割れ、欠損、浮き、剥離、錆汁を確認します。アンカーボルトを中心に放射状のひび割れが伸びている、固定プレート周囲が盛り上がっている、プレート下から錆汁が流れている場合は、埋込み部分を含む腐食や膨張が疑われます。ただし、目視だけでアンカーの定着状態や残存耐力を判断することはできません。

基部周辺の排水状態も確認します。排水勾配、ドレンの詰まり、防水層の不陸などにより、煙突基部や固定金物の周囲に水がたまると、金属部材が湿潤状態になりやすくなります。腐食部材だけを交換しても、水が滞留する原因が残れば再び劣化する可能性があります。

接合部では、煙突の傾き、ずれ、局部的な変形も観察します。目視による印象だけで傾斜量を断定せず、異常が疑われる場合は、測定基準を定めた計測や構造の専門者による確認へつなげます。過去写真や設計図と比較できる場合は、変化の有無を確認します。

点検項目3|支持金具・アンカーボルトの錆と腐食

支持金具は、煙突の姿勢を保ち、風や地震などによる力を建築物や基礎へ伝える部材です。告示では、建築物に設ける煙突の付帯金物について著しい錆、腐食などを確認し、高さ6メートルを超える煙突に関する区分では、アンカーボルト等の著しい錆、腐食、緊結不良などを確認する判定基準が示されています。

確認対象には、支持バンド、ブラケット、控え材、接続プレート、ボルト、ナット、座金、アンカーボルト、溶接部などがあります。構造によっては、ステイやワイヤ状の支持材が設けられている場合もあります。図面に記載された部材が現地に存在するか、撤去、交換、追加、取付位置の変更が行われていないかも確認します。

腐食状態は錆の色だけで判断しません。薄い表面錆、塗膜下の膨れ、層状に剥がれる錆、孔食、部材端部の欠損、著しい減肉では、支持機能への影響が異なります。ボルトのねじ山が失われている、ナットの角が崩れている、プレートに孔が開いている、部材が部分的に消失している場合は、進行した腐食を疑います。

支持バンドの内側やブラケットと外壁の接触面は、目視しにくい部分です。外側の塗膜が残っていても、裏面で水分が滞留して腐食が進んでいる可能性があります。金具端部から錆汁が出ている、接触面が膨らんでいる、煙突との間に不均一な隙間がある場合は、見えない部分の状態を考慮し、必要に応じて詳細調査を計画します。

異種金属が接触する部分では、水分や電解質が存在する条件により局部的な腐食が進むことがあります。固定部だけに腐食が集中している、絶縁材や保護材が欠損している、特定の接触面から錆汁が出ている場合は、材料の組合せと水の滞留状況を確認します。表面塗装だけで再発を防げるとは限りません。

ボルトやナットは、錆のほか、緩み、脱落、変形、座金のずれ、締結部の隙間を確認します。ただし、目視で締付けトルクを確定することはできません。合いマークがある場合はずれの有無を参考にできますが、合いマークだけで緊結状態が保証されるわけではありません。

点検時に無計画な増し締めを行うことは避けます。腐食したボルトに力を加えると破断する可能性があり、過大な締付けが部材や基礎へ影響する場合もあります。定期調査では現状を記録して判定し、締付け確認や交換が必要な場合は、設計条件、施工要領、安全手順を確認できる専門者へ引き継ぎます。

溶接部では、溶接線に沿った割れが疑われる線状の開口、錆汁、塗膜の割れ、母材との境界の腐食、局部変形を確認します。目視で割れが疑われても、深さや範囲を確定できない場合は、適切な非破壊検査などの詳細調査を検討します。

一つの金具に著しい腐食が見つかった場合は、同じ材質、同じ高さ、同じ方角、同じ納まりの金具も確認します。雨がかり、日照、風向き、海塩粒子、排気、結露などの環境条件が共通していれば、複数の金具で似た劣化が進んでいる可能性があります。

点検項目4|錆汁・白華・漏水跡などの周辺兆候

煙突の劣化は、ひび割れや腐食部分そのものだけでなく、周囲に現れる兆候から把握できることがあります。代表的なものは、錆汁、白華、雨だれ跡、変色、塗膜の膨れ、湿潤跡、シーリング材周辺の汚れです。

錆汁は、鉄筋、鋼材、ボルト、埋込み金物などの腐食生成物が水分とともに表面へ流れ出した可能性を示します。煙突本体のひび割れから錆汁が出ている場合は内部鉄筋や金物、支持金具の下側に集中している場合は金具裏面やボルト周辺、固定プレート下から出ている場合は埋込み部分を発生源として疑います。ただし、流れ跡は移動するため、見えている位置だけを発生源と断定しません。

白華は、コンクリートやモルタル中を移動した水分に伴って、表面に白色の析出物が現れる現象です。白華だけで直ちに構造上重大な不具合と判断することはできませんが、水分の移動経路が存在する手がかりになります。近くにひび割れ、浮き、欠損、錆汁がある場合は、周辺を含めて状態を確認します。

雨だれ跡は、頂部、笠状部材、継ぎ目、固定金具などから水が流れている位置を推定する手がかりになります。特定の筋だけが変色している場合は、その上部にひび割れ、隙間、塗膜欠損、排水不良がないかをたどります。下側の汚れだけを撮影して終えず、水の入口と考えられる上側まで確認します。

鋼製煙突では、塗膜の膨れ、割れ、剥がれが腐食の兆候となることがあります。表面の小さな膨れでも、塗膜下で錆が広がっている可能性があります。単なる色あせや汚れなのか、下地から塗膜が浮いているのかを観察し、判別できない場合は未確定として記録します。

基部周辺の屋内側に漏水跡がある場合は、煙突との接合部、防水層、壁貫通部との位置関係を確認します。屋内の染みが煙突直下から離れていても、防水層や下地を伝って水が移動している可能性があります。屋上側と屋内側を平面図や簡易スケッチで対応させると、調査範囲を整理しやすくなります。

周辺兆候は、点検時の天候や表面の乾燥状態によって見え方が変わります。雨天直後は湿潤箇所を把握しやすい一方、表面が濡れて細いひび割れや錆の境界を見分けにくくなることがあります。乾燥時には水の流れが分かりにくいため、管理者への聞き取りや雨天時の既存写真も参考にします。

点検項目5|頂部・背面・高所など見えにくい範囲

煙突点検で起こりやすい問題の一つが、見える範囲だけを確認して調査を終えることです。煙突は高さがあり、頂部、外壁側の背面、支持金具の裏側、屋根や庇に隠れた部分などに死角が生じます。

告示上は、必要に応じて双眼鏡などを使用した目視確認が示されていますが、遠方目視には限界があります。細いひび割れ、ボルトの緩み、金具裏面の腐食、断面減少などは、地上や離れた位置から判定できない場合があります。画像を拡大しても、撮影距離、解像度、角度、光の条件が不十分であれば、確認済みとは扱えません。

まず、煙突を複数方向から観察できるかを確認します。屋上設備、壁、配管、塔屋などで一方向しか見えない場合は、見えなかった面と理由を記録します。未確認の面を「指摘なし」や「異常なし」と同じ意味で扱わないことが重要です。

頂部では、笠状部材の変形、ひび割れ、欠損、固定金具の腐食、部材の緩み、堆積物などを確認します。頂部の部材が破損すると、雨水が内部へ入りやすくなる可能性があります。落下するおそれのある部品や仕上げ材がないかも確認します。

煙突の背面や外壁との狭い隙間は、乾燥しにくく、落ち葉や土埃がたまりやすい場合があります。表側と背面で劣化状態が異なる可能性があるため、鏡、適切な撮影機器、安全に設置できるカメラなどを用いて確認できるか検討します。機器を使用しても判別できない部分は、未確認範囲として残します。

高所の詳細確認が必要な場合は、足場、高所作業用設備、適切な昇降設備など、対象と現場条件に合った接近方法を計画します。手すりを越える、設備へ乗る、不安定なはしごを使用するなど、安全を損なう方法で近接確認してはいけません。通常の定期調査で安全に確認できない場合は、無理に完結させず、追加調査の必要性を報告します。

煙突内部については、点検口の有無、稼働状態、高温、排気、堆積物、酸素欠乏や有害物質のおそれなど、外部とは異なる危険があります。法定の外観目視だけで内部の健全性を保証することはできません。内部確認が必要な場合は、設備停止、換気、測定、立入管理などの安全条件を整えた別途調査として実施します。

煙突の材質別に押さえる劣化の特徴

煙突の劣化を整理するには、材質と構造形式を把握する必要があります。同じひび割れや腐食という表現でも、材質によって対象となる部位と影響が異なります。

鉄筋コンクリート製では、ひび割れ、錆汁、鉄筋露出、浮き、剥離、欠損が主な確認事項になります。内部の鉄筋腐食が進むと、周囲のコンクリートにひび割れや剥離が生じることがあります。落下のおそれがある浮きや欠損が疑われる場合は、直下の安全確保を優先します。

モルタル仕上げがある場合は、仕上げ材だけのひび割れや浮きと、下地の損傷を区別する必要があります。ただし、目視だけでは断定できないため、補修履歴、錆汁、白華、段差、打継ぎ位置などを記録し、必要に応じて詳細調査へつなげます。

鋼製では、塗膜劣化、錆、孔食、減肉、継ぎ目の腐食、溶接部の損傷、変形を確認します。水がたまりやすい水平部分、支持バンドの内側、フランジ、ボルト接合部、上端部、断熱材や外装材の継ぎ目などを重点的に見ます。

れんがやブロックを使用した煙突では、材料の割れ、目地の欠落、開き、ずれ、傾き、膨らみが重要です。外側の仕上げに異常が少なくても、内部側の材料や目地が排気や結露の影響を受けている可能性があります。内部の状態は外観だけで確定しないようにします。

複数材料を組み合わせた煙突では、材料の境界部を注意して確認します。鋼製煙道とコンクリート基礎の接合部、金属製笠とモルタル面の境界、外装材と支持金具の取り合いなどは、熱膨張や変位の違いによって隙間やひび割れが生じることがあります。

材質が図面から確認できず、仕上げ材によって下地が隠れている場合は、見た目だけで内部構造を断定しません。報告書には、確認できた表面材、推定にとどまる事項、確認できなかった部分を区別して記載します。

点検写真と調査記録を残す方法

煙突の点検記録では、異常部分の拡大写真だけでなく、位置を特定できる全景写真が重要です。拡大写真だけでは、煙突のどの高さ、どの方角、どの支持金具なのかを後から判断できないことがあります。

建物または屋上全体、煙突全景、各面、基部、接合部、支持金具、頂部の順に撮影すると、位置関係を整理しやすくなります。異常部分は、全景、周辺、近接の順で記録し、同じ部位であることが追えるようにします。

ひび割れは、起点と終点、周囲の部材、方向が分かるように撮影します。安全に尺度を添えられる場合は、ひび割れと同じ面に配置します。斜めからの撮影では幅を比較しにくいため、可能な範囲で正対します。ただし、危険な姿勢を取ってまで尺度を添えたり、正対したりしてはいけません。

支持金具では、金具全体、固定部、ボルト、接触面が分かる角度を記録します。腐食部だけを極端に拡大すると部材を特定できないため、部材番号や位置記号を付け、全景写真と対応させます。

記録には、調査日、天候、煙突の稼働状況、確認位置、撮影方向、確認方法、視認距離、異常の種類、概略範囲、未確認部分を記載します。前回と比較する場合は、同じ方向とおおむね同じ距離から撮影できるようにします。

判定できない部分を「異常なし」と記録しないことが重要です。障害物がある、高所で近接できない、設備が稼働中で確認できない、画像が不鮮明で判断できないなど、未確認理由を具体的に記録します。そのうえで、追加調査の必要性と優先度を検討します。

写真番号を平面図、立面図、簡易スケッチ上の位置と対応させると、建物管理者や補修担当者へ情報を引き継ぎやすくなります。図面がない場合は、方位、屋上設備、外壁面、支持位置などを示す簡易位置図を作成します。

異常を発見した後の対応手順

煙突に異常を発見した場合は、最初に危険の内容と影響範囲を整理します。コンクリート片、仕上げ材、金属部品などが落下するおそれを否定できない場合は、詳細な原因調査より先に、直下や周辺への立入り制限、通路変更などの安全措置を検討します。

次に、異常が表面的な劣化にとどまる可能性が高いのか、支持性能や構造安全性に関係する可能性があるのかを整理します。ひび割れの深さ、金具の残存断面、アンカーボルトの定着状態、煙突の傾斜量などは、通常の目視調査だけでは判断できないことがあります。必要に応じて構造、設備、防水などの専門者による詳細調査を行います。

緊急性が高い可能性のある状態として、部材が既に脱落している、支持金具が破断または脱落している、煙突に明らかな変形や不安定な挙動がある、アンカーボルト周辺のコンクリートが大きく欠損している、落下しかけた部材があるといった状況が挙げられます。ただし、写真や遠方目視だけで安全性を確定せず、現地条件を踏まえて専門者が判断します。

応急措置を行った場合は、実施日、範囲、方法、立入制限の内容、解除条件を記録します。落下防止、立入制限、設備停止などは恒久補修の完了を意味しません。詳細調査、補修設計、施工、完了確認、再点検までの流れを管理します。

補修後は、外観が整ったかだけでなく、劣化原因への対策が行われたかを確認します。雨水の浸入経路、水の滞留、支持部の緩み、異種金属の接触、防水層の不連続などが残っていれば、同じ箇所または周辺で劣化が再発する可能性があります。

補修工事の写真、使用材料、施工範囲、交換部材、施工後の状態を保存すると、次回点検で比較できます。支持金具の一部を交換した場合は、交換していない同種金具も含めて点検範囲を再整理します。

煙突の12条点検でよくある見落とし

よくある見落としは、煙突本体だけを撮影し、支持金具を確認していないことです。本体の表面に目立つひび割れがなくても、支持バンド、ブラケット、アンカーボルトが腐食している場合があります。本体と支持部分を別々に見るのではなく、煙突に作用する力がどの部材を通って建築物や基礎へ伝わるかを意識します。

次に、地上や屋上通路から見える一面だけで判定することがあります。煙突の背面、建物側、頂部、金具の裏側では、見える面より劣化が進んでいる可能性があります。確認できない面は未確認範囲として残し、異常がない面として扱いません。

錆と汚れの取り違えにも注意が必要です。排気や雨だれによる汚れに見えても、その上部に腐食部やひび割れが存在する場合があります。変色を見つけたら、上方向へたどり、水や腐食生成物の発生源を検討します。

補修跡をそのまま健全部と考えることも見落としにつながります。補修材で覆われた部分では、内部の状態を直接確認できません。補修材の浮き、境界部のひび割れ、変色、錆汁、白華などから再劣化の兆候がないかを確認します。

金具に錆がある場合に、塗装だけで解決すると決めつけることも避けます。断面欠損、ボルトの緩み、接触面の腐食、水の滞留などが残っていれば、表面処理だけでは支持機能を回復できない可能性があります。必要な補修方法は、残存状態と原因を確認して決めます。

過去の報告書の記載をそのまま転記してはいけません。前回記録は比較資料として有用ですが、部材の状態は時間とともに変化します。今回確認した事実、確認方法、未確認範囲を新たに記録します。

所在地や建物条件によって、報告対象、報告時期、様式、追加項目などが異なることがあります。過去に使用した様式や他地域の運用を無条件で流用せず、点検を行う時点で、所在地の特定行政庁が公表している案内と調査結果表を確認します。

まとめ|煙突本体と支持部分を一体で確認する

12条点検で煙突を調べるときは、煙突本体のひび割れだけでなく、建築物との接合部、基部、支持金具、アンカーボルト、周辺に現れる錆汁や漏水跡、見えにくい頂部や背面まで関連付けて確認することが重要です。

第一の項目は、煙突本体のひび割れ、肌分かれ、欠損、鉄筋露出、鋼板の腐食などです。ひび割れの幅だけでなく、方向、長さ、段差、錆汁の有無、補修後の再発を確認します。

第二の項目は、建築物との接合部と基部です。防水層との取り合い、基礎コンクリート、壁貫通部、固定プレート周辺を確認し、雨水浸入、変位、埋込み金物の腐食を示す兆候を探します。

第三の項目は、支持金具とアンカーボルトです。表面の錆だけでなく、孔食、減肉、緩み、脱落、変形、裏面の腐食、溶接部の損傷が疑われる兆候まで確認します。

第四の項目は、錆汁、白華、雨だれ跡、塗膜の膨れなどの周辺兆候です。見えている異常の位置だけで判断せず、水の入口や腐食の発生源を上流側へたどります。

第五の項目は、頂部、背面、高所などの見えにくい範囲です。確認できなかった部分を異常なしとせず、未確認の理由、確認方法の限界、追加調査の必要性を記録します。

点検の品質を高めるには、同じ位置を継続して比較できる写真と記録が欠かせません。全景と近接写真、撮影方向、部材番号、異常範囲、未確認箇所を対応させれば、補修判断と次回点検への引き継ぎが行いやすくなります。最終的な判定と報告は、最新の法令、告示、所在地の特定行政庁が示す案内、実際の建物条件に基づいて行うことが必要です。

現場を3Dで残して、あとから測る。
実際の画面と動画で使い方を確認できます。

LRTK Phoneの使い方・実例を見る
資料請求導入相談
現場をスマホで3DスキャンLRTK Phone実例を見る