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12条点検で赤外線調査の精度を高める天候条件5項目

建築基準法第12条に基づく定期報告制度では、対象となる特定建築物について、外壁のタイル、石貼り等の仕上げ材、モルタル等の劣化や損傷を確認します。外装仕上げ材の浮きが進行すると剥落につながるおそれがあるため、建物の所有者や管理者は、対象範囲と適切な調査方法を整理しておくことが重要です。

外壁調査には、手の届く範囲の打診、足場や高所作業車等を利用した打診、地上または無人航空機から行う赤外線調査などがあります。赤外線調査は、外壁表面から放射される赤外線エネルギーを熱画像として記録し、健全部と浮きがある部分で生じる表面温度差を手掛かりに状態を判定する方法です。

ただし、赤外線装置で撮影すれば、いつでも同じ精度で浮きを検出できるわけではありません。日射、環境温度、風、調査前の降雨、雲や影、周辺建築物からの放射熱などにより、壁面の温まり方と冷え方が変化するためです。国土交通省のガイドラインでも、これらの条件を事前に把握し、赤外線調査に適さない部分を明確にしたうえで調査計画へ反映することが求められています。

本記事では、12条点検で赤外線調査を利用する際に確認したい天候条件を5項目に分け、方位や時間帯の考え方、当日の実施判断、報告に残すべき記録まで解説します。

12条点検における赤外線調査の位置づけ

「12条点検」は実務上広く使われる呼び方ですが、法令上は、特定建築物の定期調査、建築設備の定期検査、防火設備の定期検査、昇降機等の定期検査などに分かれます。本記事で扱う赤外線調査は、主として特定建築物の定期調査における外壁の調査方法です。

国土交通省は、タイル、石貼り等のうち乾式工法によるものを除く仕上げ、モルタル等について、手の届く範囲の打診等に加え、おおむね10年に一度、落下により歩行者等へ危害を加えるおそれのある部分を全面的に調査する考え方を示しています。赤外線調査を用いる場合は、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有する方法として実施する必要があります。地上に設置した赤外線装置による調査についても、同等以上の精度を判断する際には国のガイドラインを参照する扱いです。([国土交通省][1])

ただし、「おおむね10年」という表現だけで実施時期を一律に決めることはできません。対象建築物、過去の全面調査や改修の実施時期、告示上の例外、報告先となる特定行政庁の運用などを確認する必要があります。また、赤外線調査を選択しただけで、対象壁面の全範囲を調査済みと扱えるわけではありません。

赤外線調査では、適切な撮影角度や離隔距離を確保できることに加え、対象壁面に判定可能な温度差が生じることが必要です。軒裏、出隅、入隅、庇の下、深い凹部、日射条件が不十分な面、障害物で撮影できない部分などは、適用が難しい場合があります。

国のガイドラインは、事前調査によって赤外線調査が可能な部分を明確にし、適用が難しい部分には代替方法を検討する構成を示しています。浮きの確認が必要な範囲については、単なる遠望目視だけで代替できると考えず、打診等の適切な方法へ切り替えることが大切です。赤外線調査は外壁調査全体を構成する一つの手段であり、建物ごとの条件に応じて打診と組み合わせて使用します。

赤外線調査の精度が天候に左右される理由

赤外線調査は、外壁内部を透視して空隙を直接撮影する方法ではありません。赤外線装置が捉えるのは、撮影時点で外壁表面から放射される赤外線エネルギーです。装置はその強度を見かけの表面温度へ換算し、温度分布として表示します。

健全な部分と浮きがある部分では、仕上げ材から下地や躯体へ熱が伝わる状態が異なります。そのため、日射で温められる過程や、日射が弱まって冷える過程で、表面温度差が現れる場合があります。しかし、温度差の大きさや現れる時刻は、浮きの深さや広さ、仕上げ材の厚さ、色、表面状態、下地構成などによって変わります。

熱画像上で周囲より高温または低温に見える部分が、すべて浮きとは限りません。影、反射、補修材、汚れ、湿潤、窓や金属部、室内空調、換気設備の排熱などでも温度差が生じます。反対に、浮きが存在していても、壁面に十分な熱変化がなければ、周囲との温度差が小さくなり検出しにくいことがあります。

さらに、赤外線装置が示す温度は、対象表面の放射率、撮影角度、離隔距離、周囲からの反射などの影響も受けます。したがって、一定の温度差を超えた箇所を機械的にすべて浮きとする方法は適切ではありません。熱画像、同じ構図の可視画像、建物図面、補修履歴、撮影条件、打診結果を総合して判定する必要があります。

調査精度を高める基本は、対象壁面にどのような熱負荷が加わり、表面温度がどのように変化しているかを把握することです。その判断に大きく関係するのが、日射、外気温と壁面温度の推移、降雨後の乾燥状態、風、雲や周辺環境の5項目です。

天候条件1 日射量と日照の安定性

第一の条件は、対象壁面へ判定に必要な日射が得られるかどうかです。日射によって壁面が温まると、健全部と浮きがある部分の熱応答の違いが表面温度差として現れやすくなります。

ただし、天気予報が晴れであることと、対象壁面に有効な日射が当たることは同じではありません。建物の方位、季節の太陽高度、庇、バルコニー、隣接建物、樹木、看板などにより、壁面の全部または一部が日陰になる場合があります。同じ壁面でも、上層部には日射が当たり、低層部は周辺建物の影に入ることがあります。

事前調査では、各壁面について、日射が当たり始める時刻、壁面が温まる時間帯、影が移動する範囲、日射が弱まり始める時刻を確認します。方位だけで予定時刻を決めるのではなく、対象建物固有の日照条件を把握することが重要です。

日照の安定性も確認します。晴れと曇りが短時間で繰り返されると、壁面への熱負荷が不連続になります。撮影時だけ日が差していても、その直前まで厚い雲に覆われていれば、判定に必要な熱履歴が形成されていない可能性があります。反対に、長時間の強い日射を受けた後でも、壁面の構成や撮影時刻によっては温度差が判別しにくいことがあります。

必要な日射時間や日射量に、すべての建物へ一律に適用できる数値はありません。仕上げ材、下地、壁面方位、季節、浮きの状態などが異なるためです。調査実施者は、予備撮影や同一部位での打診との照合により、その建物で浮きを検出できる条件を確認します。

建築研究所が特定の試験壁を年間観測した研究では、浮きの深さや大きさ、季節によって検出できる時刻が異なり、深い位置の疑似浮きでは日射の蓄積が必要となる場合がありました。また、一度の撮影だけでは検出できない可能性があり、時刻を変えた複数回撮影の必要性が示されています。ただし、この研究で得られた日射量や時間は特定の試験体と方位における結果であり、その数値を別の建物へそのまま適用することはできません。([けんけん公式サイト][2])

時間を変えて複数回撮影することは、温度分布の変化を把握するうえで有効です。ただし、同じ位置に温度差が繰り返し現れたという理由だけで浮きと確定することはできません。補修跡や材質の違いなど、壁面に固定された別の要因でも温度模様は再現するため、可視画像や打診結果と照合します。

天候条件2 外気温と壁面温度の推移

第二の条件は、外気温の数値だけではなく、外気温と壁面温度が時間とともにどのように変化しているかです。赤外線調査では、壁面が加熱または冷却される過程で温度差が現れるため、単純に気温が高い日ほど有利、低い日ほど不利とはいえません。

朝から外気温が上昇し、対象壁面へ日射が当たる状況では、壁面が温まる途中に温度差が現れる場合があります。一方、外気温と壁面温度が長時間ほぼ変化せず、日射による加熱も弱い場合は、健全部と浮きがある部分の差を捉えにくくなることがあります。

冬季でも、安定した日射によって壁面に適切な温度変化が生じれば、調査できる場合があります。夏季でも、壁面が急速に高温となる、空調排熱の影響が大きくなる、日射条件が短時間で変化するといった状況では、撮影時刻を慎重に選ぶ必要があります。季節による太陽高度の変化は、庇やバルコニーの影、周辺建物の影の長さにも影響します。

調査当日は、天気予報の最高気温だけを記録するのではなく、撮影前後の外気温と壁面温度の推移を確認します。壁面温度が上昇中なのか、ほぼ一定なのか、下降中なのかを把握すれば、同じ温度模様でも解釈しやすくなります。

室内側の条件も外壁表面温度へ影響します。機械室、厨房、浴室、冷蔵設備、空調された室、吹き抜けなどが外壁の内側にある場合、室内外の温度差や設備運転によって局所的な温度模様が生じることがあります。異常が見つかったときは、平面図、室用途、設備の運転状況と照合します。

本撮影の時刻を事前に一点だけ固定するより、予備撮影を行い、温度分布の変化を確認しながら本撮影へ移る工程のほうが安全です。予定時刻になったことではなく、対象壁面に判定可能な条件が形成されていることを基準にします。

天候条件3 降雨後の乾燥状態と表面水分

第三の条件は、調査前の降雨と壁面の乾燥状態です。撮影時に雨が降っていなくても、直前または前日に降った雨の影響が残っている場合があります。

外壁表面が濡れていると、水分の蒸発によって表面温度が低下します。目地、ひび割れ、凹部、汚れがある部分では、水分の残り方が周囲と異なり、熱画像に局所的な温度差として現れることがあります。この温度模様を浮きによるものと誤認すると、判定精度が低下します。

表面が乾いて見えても、目地や仕上げ材、下地側に水分が残っている可能性があります。乾燥に要する時間は、降雨量、降雨時間、風向、外壁材の吸水性、目地やひび割れの状態、壁面方位、日射、気温などで変わります。したがって、「雨が上がってから何時間」という一律の待機時間だけで実施可否を決めるのは適切ではありません。

北面、日陰、凹部、庇下などは、日射を受ける面より乾燥が遅れることがあります。同じ建物でも壁面ごとに状態が異なるため、一面が乾いたことを理由に建物全体を調査可能と判断しないようにします。

降雨後は、可視画像で濡れ色、雨だれ、目地周辺の変色を確認し、熱画像で広がりのある低温部や不規則な温度模様がないかを確認します。安全に近づける範囲では表面状態を確認し、判定への影響が疑われる面は待機、延期、別方法への切替えを検討します。

朝露や結露にも注意が必要です。晴天の早朝でも、夜間の放射冷却により表面に水分が付着している場合があります。日射が当たりにくい面では湿潤状態が長く続くことがあるため、予定時刻ではなく現地の乾燥状態を確認してから撮影します。

水分による温度異常は、漏水や含水の手掛かりになる場合もありますが、外壁の浮き調査とは目的が異なります。熱画像に低温部があるという事実だけで、浮き、漏水、内部結露などの原因を確定することはできません。浮きの判定に不適切な湿潤状態であると判断した場合は、無理に解析せず、条件が整ってから再調査します。

天候条件4 風速と壁面の冷却

第四の条件は風です。風が壁面を通過すると対流によって表面から熱が奪われ、日射で温められている壁面でも表面温度が下がります。風が強い場合や風速が大きく変動する場合は、健全部と浮きがある部分の温度差が小さくなったり、短時間で温度分布が変化したりする可能性があります。

風の影響は建物全体で均一ではありません。出隅、建物上部、塔屋周辺、建物間の狭い空間などでは風が強まりやすく、壁面中央部や低層部とは異なる冷却状態になることがあります。地上で感じる風が弱くても、高層部では風が強い場合があります。

風速だけでなく、風向と変動も確認します。対象壁面へ正面から当たる風と、建物の反対側から回り込む風では、壁面の冷え方が異なります。突風が断続的に吹くと、連続して撮影した画像であっても条件がそろわない可能性があります。

赤外線調査の適否について、すべての建物へ共通する単一の風速基準を示すことは困難です。日射量、外壁構成、建物形状、撮影距離、装置の性能、同一部位での検証結果などによって影響が異なるためです。調査計画では、使用する方法と対象建物に応じた継続、待機、中止の判断条件を定めます。

無人航空機を使う場合は、熱画像の判定条件に加え、飛行の安全性、機体の安定性、航空法その他の関係法令、周辺環境を確認する必要があります。飛行できることと、赤外線調査に適した熱条件があることは別の判断です。どちらか一方でも条件を満たさなければ、延期や方法変更を検討します。

調査中は開始時だけでなく、壁面や時間帯が変わるごとに風の状態を確認します。風が強まった時刻や対象面を記録しておけば、解析時に温度分布の変化と気象条件との関係を検討できます。

天候条件5 雲・影・周辺からの放射熱

第五の条件は、雲、影、反射、周辺からの放射熱です。これらは熱画像上に浮きと似た温度模様を作ることがあり、誤判定を防ぐうえで重要な確認項目です。

薄い雲が太陽を通過すると、目視では明るさの変化が小さくても、壁面へ加わる日射量が変動します。撮影前後で雲量や日射状態が変わった場合は、画像を同一条件として単純に比較しないようにします。

建物自身が作る影にも注意が必要です。庇、バルコニー、縦樋、看板、手すり、設備架台などの影が壁面にかかると、影の境界に沿って温度差が生じます。影が移動すれば、その影響を受けた温度模様も変化します。

熱画像と同じ構図の可視画像を取得すれば、影、補修跡、汚れ、開口部、設備などの位置を照合しやすくなります。国のガイドラインも、可視画像を熱画像の解析と組み合わせることで、判定をより正確にできるとしています。

周辺建築物、窓ガラス、金属面、日射を受けた屋根などからの放射や反射も外乱になります。赤外線装置は対象面からの放射だけでなく、表面で反射された周囲の赤外線エネルギーの影響を受けるため、見かけ上の高温部や低温部が生じることがあります。

換気口、排気口、空調設備、照明、機械室などの近くでは、設備の排熱や運転状態によって外壁温度が変わる場合があります。設備が間欠運転する建物では、撮影時刻ごとの運転状況も記録します。

反射が疑われる場合は、撮影位置や角度を変え、温度模様の見え方が変化するかを確認します。ただし、角度を変えて模様が消えたことだけで原因を確定したり、模様が残ったことだけで浮きと確定したりしないようにします。材質差、補修跡、含水など、別の要因も含めて総合的に評価します。

方位と時間帯を組み合わせた調査計画

赤外線調査の精度を高めるには、天候条件の確認に加え、壁面の方位と時間帯を組み合わせて計画する必要があります。

一般的には、東面は朝から午前に日射を受けやすく、西面は午後に温まりやすい傾向があります。南面は比較的長い時間日射を受けることがありますが、季節の太陽高度や庇の形状によって日照範囲が変わります。北面は直達日射を受けにくいことが多いため、周辺環境や外気温の変化を踏まえ、赤外線調査を適用できるか慎重に判断します。

これらはあくまで一般的な傾向であり、固定的な撮影時刻を示すものではありません。建物の緯度、季節、立面形状、周辺建物、樹木、地形などによって、実際の日照条件は変わります。

一つの建物を一つの時間帯だけで撮影すると、各方位で判定に適した温度変化を捉えられない可能性があります。建物規模や方位に応じて、午前と午後に分ける、壁面ごとに別日を設定する、日射を受ける前後で複数回撮影するといった工程を検討します。

可能であれば、調査予定日と近い季節に現地で日射と影の動きを確認します。現地確認が難しい場合は、配置図、立面図、周辺建物の高さ、太陽位置などを用いて影の範囲を想定し、当日の予備撮影で修正します。

調査計画には、予定時刻だけでなく、条件が整わなかった場合の代替時間帯や代替方法を含めます。午前中の雲が多い場合に午後へ変更する、特定の面だけ別日に実施する、適用困難な部分を打診へ切り替えるなど、現場で無理に撮影を続けない仕組みを準備します。

国のガイドラインでは、想定される天候、環境温度、風速、周辺建築物等からの放射熱、調査前の降雨による外壁表面の状態を踏まえて計画書を作成し、必要に応じて撮影時間帯、装置位置、撮影角度を変えられるよう検討することが示されています。

当日の実施可否を判断する確認方法

調査当日は、現場へ到着した時点で直ちに本撮影を始めるのではなく、事前に設定した適用条件と現地状況を照合します。実施、待機、延期、調査方法の変更のいずれが適切かを、調査責任者が判断できる体制を整えます。

最初に、対象壁面へ日射が当たっているか、雲による遮断が繰り返されていないか、影が対象範囲へ移動していないかを確認します。続いて、外気温と壁面温度の推移、乾燥状態、風向と風速、周辺設備の運転状況、反射源の有無を確認します。

国のガイドラインでは、調査の実施に先立ち、同一部位で打診と赤外線調査を行い、赤外線による浮きの検出状況を確認することが示されています。その結果、検出が難しい部位は、測定条件を変更するか、打診で対応します。

照合部位で打診結果と熱画像の傾向が対応しない場合は、日射不足、撮影時刻、風、湿潤、反射、壁面構成、撮影角度、装置設定などを見直します。条件を調整しても検出状況が改善しない場合は、その壁面への赤外線調査の適用を見送り、打診等の方法へ切り替えます。

撮影中に天候が変わった場合は、変化前後の画像を同じ条件として扱わないようにします。雲が増えた、風が強くなった、雨粒が当たり始めた、影が入ったといった変化があれば、時刻と対象壁面を記録します。

日射が短時間だけ戻っても、壁面に必要な熱履歴が直ちに形成されるとは限りません。再開前に予備撮影を行い、温度分布の変化と照合部位の検出状況を確認します。予定日に終えることより、判定根拠を説明できる調査結果を得ることを優先します。

精度を落としやすい運用上の失敗

代表的な失敗は、天気予報の晴れ表示だけで調査日を確定することです。予報が晴れでも、対象面が隣接建物の影に入る、薄雲が続く、直前の降雨で壁面が湿っているといった状況はあります。天気予報は日程判断の資料であり、現地の適用条件を代替するものではありません。

次に、建物全体を同一条件として扱う失敗があります。南面で良好な画像が得られても、北面、庇下、凹部、低層部に同じ条件を適用できるとは限りません。壁面や区画ごとに、赤外線調査が可能な範囲と別方法が必要な範囲を分けます。

撮影時刻を一つに固定することも精度を下げる原因です。温度差がまだ形成されていない時刻や、日射条件が変わった後だけを撮影すると、浮きを捉えにくくなります。予備撮影によって温度分布の推移を確認し、本撮影の時刻を調整します。

熱画像だけを保存し、可視画像、撮影位置、撮影方向を残さない運用も避けるべきです。熱画像だけでは、影、縦樋、窓、補修跡、設備、汚れなどとの位置関係を正確に確認できない場合があります。立面図上の範囲、画像番号、撮影位置を対応させます。

装置が表示する温度差だけで自動判定する運用も危険です。温度差は、浮きの状態だけでなく、仕上げ材、表面色、含水、日射、風、反射などで変わります。建物ごとの検証を行わず、一律のしきい値だけで浮きを確定しないようにします。

補修履歴を確認しないと、補修材や施工方法の違いによる温度模様を浮きと誤認する可能性があります。改修図、補修範囲、施工時期、外壁材の変更箇所を事前に整理し、可視画像と熱画像へ反映します。

判定不能箇所を曖昧にすることも問題です。日射不足、湿潤、反射、障害物、撮影角度などで判定できなかった範囲は、調査済み範囲と明確に分けます。必要な範囲には、別日の再撮影や打診等を設定します。

赤外線調査の品質は、装置の性能だけでは決まりません。適用条件の把握、事前調査、計画書、打診との照合、撮影、解析、代替調査、報告までを一つの工程として管理することが重要です。

調査結果を12条点検の報告につなげる記録

赤外線調査を定期調査の結果へ反映するには、浮きと判定した位置だけでなく、どのような条件で調査し、どの範囲をどの方法で確認したかを説明できる記録が必要です。

国のガイドラインでは、赤外線調査の報告書に、建築物概要、調査実施体制、調査実施日、調査時の天候と環境条件、装置の設置箇所と型式、赤外線調査を実施した箇所とその他の方法で調査した箇所、適用条件のチェック、打診との併用範囲と結果、外壁調査結果図、熱画像、可視画像などを含めることが示されています。また、撮影した熱画像は分析後の判定に用いるため、すべて保存することとされています。

実務では、調査日、撮影時刻、天候、外気温、壁面温度の推移、風向と風速、調査前の降雨、壁面方位、日射と影、撮影位置、撮影角度、対象範囲を対応させます。天候が途中で変化した場合は、変化した時刻と、その前後に取得した画像を区別します。

熱画像と可視画像には、建物名、壁面、階、通り芯、撮影位置など、後から追跡できる識別情報を付けます。画像ファイル名だけに依存せず、立面図上の撮影範囲と画像番号を対応させると、取り違えを防ぎやすくなります。

調査範囲は、赤外線調査を実施して判定できた範囲、打診で確認した範囲、その他の適切な方法で調査した範囲、条件不足などで判定できなかった範囲に分けます。熱画像を撮影したことと、適切な条件で判定を完了したことは同じではありません。

同一部位で打診と赤外線調査を照合した結果については、照合位置、打診結果、熱画像上の特徴、条件調整の内容、赤外線調査の適用可否を記録します。赤外線で検出しにくいと判断した部分があれば、代替方法とその理由を残します。

判定結果は、浮きと判定した箇所、追加確認が必要な箇所、影や反射などの外乱と判断した箇所、判定不能箇所を区別します。熱画像だけで原因を確定できない部分を、無理に一つの劣化原因へ結び付けないことが重要です。

赤外線調査の実施者が作成する報告書と、特定建築物調査員等が定期報告制度に基づいて取りまとめる調査結果は、役割を区別して管理します。最終的な定期調査の報告は、資格者による確認と、報告先の様式や運用に沿って行う必要があります。定期報告の対象や運用は地域の特定行政庁が定める部分もあるため、最新の案内を確認します。([国土交通省][3])

調査後の画像や気象記録は、次回調査や補修後の確認にも役立ちます。同じ壁面について、季節、時間帯、撮影位置などの条件を可能な範囲でそろえれば、過去画像との比較がしやすくなります。ただし、条件が異なる画像同士の温度値を単純比較せず、撮影時の環境条件を併せて評価します。

まとめ 天候条件を管理して赤外線調査の信頼性を高める

12条点検で赤外線調査を活用する際は、日射、外気温と壁面温度の推移、降雨後の乾燥状態、風、雲や周辺環境という5つの条件を総合的に確認します。どれか一つの数値だけで実施可否を決めるのではなく、対象壁面に判定可能な熱変化が生じているかを確認することが重要です。

日射については、対象壁面へ十分かつ安定して当たっているか、その前の時間帯にどのような熱履歴があったかを確認します。外気温については、気温の高低だけでなく、壁面温度を含む時間変化を見ます。降雨後は表面と目地周辺の乾燥状態を確認し、水分による温度模様を浮きと誤認しないようにします。

風が強い場合は、壁面の冷却によって温度差が変化する可能性を考慮します。雲、影、反射、設備の排熱については、熱画像と可視画像を照合し、必要に応じて撮影時刻や角度を変えて影響を確認します。

さらに、壁面の方位ごとに時間帯を分け、事前調査と予備撮影によってその建物に適した条件を確認します。調査の前には同一部位で打診と赤外線調査を照合し、検出が難しい範囲は条件を変更するか、打診等へ切り替えます。

赤外線調査の目的は、見栄えのよい熱画像を作ることではありません。外壁仕上げ材の浮きを、説明可能な根拠と適切な精度で確認し、剥落による危害の防止につなげることです。天候、壁面方位、撮影時刻、熱画像、可視画像、打診結果、判定不能範囲を一体として記録し、報告先の最新要領に沿って定期調査へ反映することが、信頼性の高い運用につながります。

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