LRTKレフィクシア株式会社

インフラ維持管理DXを始める6つのステップ|導入準備から現場定着まで解説

道路、橋梁、トンネル、河川施設、上下水道などの社会インフラを適切に維持管理するためには、点検結果や補修履歴を正確に把握し、限られた人員で効率的に管理することが重要です。しかし、現場では紙の点検帳票や個別の写真フォルダ、更新されていない施設台帳などが混在し、必要な情報を探すだけでも時間がかかるケースがあります。

こうした課題の解決に向けて注目されているのが、インフラ維持管理DXです。デジタル技術を活用して現場の情報収集から記録、共有、分析、補修計画までをつなぐことで、維持管理業務全体の効率化と高度化を目指します。

ただし、デジタル機器や管理システムを導入するだけでは、十分な効果は得られません。従来の業務フローを整理し、現場担当者が無理なく使える仕組みをつくり、蓄積したデータを維持管理の判断に活用することが重要です。

本記事では、インフラ維持管理DXをこれから始める実務担当者に向けて、導入準備から現場定着までの6つのステップを解説します。対象施設の選び方、データの整備方法、現場での運用設計、導入効果の検証方法まで、実務で押さえておきたいポイントを紹介します。

インフラ維持管理DXとは?導入が求められる背景と目的

インフラ維持管理DXとは、道路や橋梁、トンネル、河川施設、上下水道などの維持管理業務にデジタル技術を取り入れ、点検、診断、補修、記録、計画策定の進め方を改善していく取り組みです。

従来の維持管理では、点検現場で紙の帳票に記録し、事務所に戻ってから表計算ファイルや管理システムへ転記する方法が広く使われてきました。撮影した写真を整理し、施設番号や点検箇所と対応付ける作業にも時間がかかります。複数の担当者や協力会社が関わる場合は、記録形式の違いや情報共有の遅れも課題になります。

インフラ維持管理DXでは、こうした情報の分断を減らし、現場で取得したデータを維持管理業務に継続して利用できる状態を目指します。

例えば、点検現場で撮影した写真に位置情報や施設番号を関連付け、損傷箇所と点検結果を一元管理できれば、過去の記録を探す作業が容易になります。同じ場所を継続的に記録することで、ひび割れや変形、腐食などの変化を比較しやすくなる可能性もあります。

また、施設台帳と地図情報を関連付けることで、管理対象施設の分布や点検状況を視覚的に把握できます。点検が未完了の施設、補修を検討している箇所、過去に異常が確認された地点などを整理できれば、担当者間の情報共有や現地確認の計画にも役立ちます。

インフラ維持管理DXが求められる背景には、施設の老朽化、維持管理業務の担い手不足、点検対象施設の多さなどがあります。

社会インフラは供用開始から長い年月が経過するにつれて、劣化や損傷への対応が必要になります。一方、維持管理に投入できる人員や時間には限りがあります。そのため、従来と同じ方法で作業量の増加に対応することが難しくなる場合があります。

さらに、維持管理業務では経験豊富な担当者の知識に依存している作業も少なくありません。過去に補修した箇所や点検時の注意点が個人の記憶だけに残っていると、担当者の異動や退職によって重要な情報が引き継がれないおそれがあります。

デジタル化された施設情報や点検履歴を組織内で共有できれば、担当者が変わっても過去の経緯を確認しやすくなります。これは業務効率化だけでなく、維持管理の継続性を確保するうえでも重要です。

ただし、DXは単純な電子化と同じではありません。紙の帳票を電子ファイルに置き換えても、その後に転記や確認作業が残るのであれば、業務全体の負担が十分に減らない可能性があります。

重要なのは、情報の取得方法から保存、検索、判断、更新までを一連の流れとして見直すことです。例えば、点検写真を撮影した段階で施設情報と紐付け、事務所での再入力を減らし、次回点検や補修計画に利用できる仕組みを整えることがDXの具体的な方向性です。

インフラ維持管理DXを成功させるには、技術の導入自体を目的にせず、現場の負担軽減と維持管理の質の向上を両立させる視点が必要です。

ステップ1:対象施設と維持管理業務の現状を把握する

インフラ維持管理DXを始める最初のステップは、現在の維持管理業務を正確に把握することです。

いきなり新しい管理システムや計測機器を導入しても、現場の業務内容や課題が整理されていなければ、使いにくい仕組みになってしまう可能性があります。まずは、何を管理しているのか、誰がどのような作業を行っているのか、どこで時間や手間が発生しているのかを明らかにします。

最初に確認したいのは、管理対象となる施設の種類と数量です。

道路であれば舗装、側溝、標識、照明設備など、橋梁であれば橋面、床版、支承、排水設備など、施設の特性によって点検内容や記録方法が異なります。上下水道施設では、地上から確認できる設備と地下に埋設された設備で、位置確認の方法や必要な記録も変わります。

そのため、対象施設を一度にすべてデジタル化しようとするのではなく、施設の種類、管理範囲、点検頻度、情報管理の現状を整理することが重要です。

次に、点検から補修完了までの業務フローを確認します。

例えば、定期点検を実施する場合、事前に施設台帳や過去の点検結果を確認し、現場へ移動して点検を行い、写真や計測値を記録します。その後、結果を整理して報告書を作成し、必要に応じて補修の検討や関係者との協議を進めます。

この一連の流れの中で、どこに重複作業があるかを調べます。現場で紙に記入した内容を事務所で再入力している場合や、撮影写真のファイル名を手作業で変更している場合は、改善を検討する余地があります。

また、施設台帳と点検結果が別々に管理されている場合は、過去の情報を探す手間が大きくなっている可能性があります。点検担当者が必要な図面をすぐに確認できない場合も、業務効率に影響します。

現状把握では、現場担当者への聞き取りが欠かせません。

管理部門が考える課題と現場担当者が感じている課題は、必ずしも一致しないためです。管理部門ではデータの集約を重視していても、現場では端末の操作時間や通信環境、写真整理の負担が問題になっていることがあります。

例えば、手袋を着用した状態で操作しにくい、雨天時に端末を扱いにくい、地下施設では通信できない、日差しが強い屋外で画面が見づらいなど、現場特有の問題もあります。

こうした条件を把握せずに仕組みを導入すると、実際の運用段階で利用が進まない可能性があります。

現状調査では、業務に要する時間も確認しておくと効果的です。点検準備、現場記録、写真整理、報告書作成、過去資料の検索などに必要な時間を把握しておけば、導入後の改善効果を比較できます。

ただし、作業時間だけで評価するのは適切ではありません。点検内容の正確性や記録の完全性、異常発見時の対応速度なども維持管理では重要です。

現場の安全確保や必要な確認作業を省略して時間短縮を図ることは避けなければなりません。

最初の段階で目指すべきなのは、現場業務を無理に変えることではなく、現状の作業と情報の流れを可視化することです。その結果として、改善効果が期待できる業務を選び、次のステップで具体的な目標を設定します。

ステップ2:解決する課題と導入目標を明確にする

現状の業務を整理したら、次にインフラ維持管理DXで解決したい課題を明確にします。

DXの導入目的が曖昧なままだと、複数の機能を備えたシステムを導入しても、どの機能を優先して利用すべきか判断できません。現場の作業が複雑になり、結果として従来の方法に戻ってしまうことも考えられます。

そこで、現状調査で見つかった課題を、具体的な業務改善の目標に置き換えます。

例えば、点検写真の整理に時間がかかっている場合は、撮影した写真と施設情報を自動的または簡単な操作で関連付けられる状態を目指します。

過去の補修履歴を探しにくい場合は、施設番号や位置情報から必要な記録を検索できる仕組みを整えます。

複数の担当者が同じ施設を確認している場合は、点検状況や対応履歴を共有し、確認漏れや重複作業を減らすことが目標になります。

このように、課題と改善後の状態を対応させることが重要です。

導入目標を設定する際には、成果を確認できる評価指標も用意します。

代表的な指標として、点検記録の作成時間、写真整理に要する時間、報告書作成時間、過去資料の検索時間、現場から事務所への問い合わせ件数などが考えられます。

さらに、施設台帳の更新率、点検記録の入力完了率、写真と施設情報の紐付け率、補修履歴の登録状況なども評価対象になります。

例えば、従来は現場で撮影した写真を事務所で整理していた場合、導入前後で写真整理に必要な時間を比較します。同時に、撮影位置の誤登録や写真の紐付け漏れが増えていないかを確認することで、効率と品質の両面から評価できます。

維持管理DXでは、単に作業時間が短くなったかだけでなく、必要な情報を次の担当者が利用できる状態になっているかを確認することが大切です。

また、目標は短期的なものと中長期的なものに分けて考えると進めやすくなります。

短期的な目標としては、点検写真の整理負担の軽減、帳票の電子化、施設情報の検索性向上などがあります。比較的狭い業務範囲でも効果を確認しやすいため、導入初期の目標に適しています。

一方、中長期的には、施設ごとの劣化履歴の比較、補修優先順位の検討、維持管理計画の精度向上、複数部門間でのデータ共有などが考えられます。

ただし、蓄積したデータだけで施設の健全性や補修時期が自動的に正しく判断できるわけではありません。データの品質や量、分析方法、施設ごとの条件によって判断の信頼性は変わります。

特に構造物の安全性に関わる判断では、必要な専門技術者による評価や現地確認を引き続き実施する必要があります。

導入対象の優先順位も、この段階で決定します。

管理施設が多い場合は、すべての施設に同じ仕組みを一度に導入するよりも、課題が明確で効果を確認しやすい施設や業務から始める方が運用上の問題を把握しやすくなります。

例えば、点検写真の管理が複雑な道路附属物、補修履歴の確認が重要な橋梁、位置情報による管理が必要な埋設設備などは、それぞれ異なる導入効果を検証する対象になります。

目標設定では、現場担当者だけでなく、維持管理計画を担当する部門や情報管理部門とも認識を合わせることが重要です。現場で使いやすく、組織として継続的に運用できる目標を設定することが、DXを定着させる土台になります。

ステップ3:施設台帳・点検記録・位置情報を整理する

インフラ維持管理DXの基盤となるのが、施設情報や点検記録などのデータ整備です。

どれほど使いやすい管理システムを導入しても、登録されている施設情報が不正確であったり、記録形式が統一されていなかったりすると、十分な効果を得られません。

特に維持管理では、過去から蓄積された情報を活用することが重要になります。そのため、新しいデータを取得する仕組みを整えるだけでなく、既存の情報をどのように整理するかを検討する必要があります。

最初に確認するのは施設台帳です。

施設台帳には、施設名称、管理番号、所在地、施設の種類、設置時期、構造や設備の情報、管理担当部門などが記録されます。ただし、実際の記載内容は施設の種類や管理主体によって異なります。

複数の部署で台帳を管理している場合は、同じ施設に異なる番号が付けられていたり、名称が統一されていなかったりすることがあります。

こうした状態では、点検写真や補修履歴を正確に紐付けることが難しくなります。

そこで、施設を識別するための管理番号を整理し、原則として一つの対象を一貫した識別情報で扱えるようにします。

施設全体と個別の部材を分けて管理する場合は、両者の関係も明確にします。例えば、橋梁全体の管理番号と、支承や排水設備などの管理対象を識別する番号を関連付ければ、施設単位と部材単位の両方で履歴を追跡しやすくなります。

次に、点検記録の整理方法を統一します。

点検日、点検担当者、対象施設、確認箇所、損傷内容、写真、計測値、判定結果、対応状況などを、業務に必要な項目として整理します。

この際、すべての施設で同じ項目を使う必要はありません。道路舗装と機械設備では確認すべき内容が異なるため、共通項目と施設固有の項目を分けて管理すると運用しやすくなります。

過去の点検記録を取り込む場合は、元の記録に含まれていない情報を推測で補わないことも重要です。撮影位置が不明な写真や、計測条件が記録されていない数値は、その不確実性を残したまま扱う必要があります。

データを整理する過程で情報の欠落が見つかった場合は、確認が必要な項目として管理し、次回点検や現地調査で補完する方法を検討します。

位置情報の整理も重要な要素です。

インフラ施設は広範囲に分布しているため、地図上で管理対象を把握できる仕組みが役立ちます。施設台帳と位置情報を紐付ければ、点検対象の抽出や移動計画、異常箇所の確認などに利用できます。

ただし、位置情報を扱う際には精度と座標の扱いに注意が必要です。

一般的な地図表示に利用する位置情報と、補修工事や詳細な位置確認に利用する測量座標では、求められる精度が異なります。目的に応じて測位方法を選び、必要な場合は測量成果や基準点との整合性を確認します。

また、異なる時期や方法で取得した座標を統合する場合は、座標系、測地基準、標高の基準などを確認する必要があります。水平位置が一致して見えても、高さの基準が異なれば、データをそのまま比較できない場合があります。

写真や点群データなどの三次元情報を利用する場合も、取得日時、対象施設、計測方法、位置合わせの条件などを記録しておくことが重要です。

例えば、過去の点群と新しい点群を比較して変形を確認する場合、位置合わせの誤差や計測条件の違いが結果に影響する可能性があります。差分が確認されたからといって、それを直ちに施設の変位と判断することは避けるべきです。

さらに、データの保存先と管理責任を明確にします。

誰が記録を登録し、誰が確認し、どの段階で正式なデータとして確定するのかを決めておくことで、重複登録や誤更新を防ぎやすくなります。

点検結果と補修履歴を関連付ける際には、過去の記録を上書きするだけでなく、変更内容や更新日時を追跡できる仕組みが望まれます。

インフラ維持管理DXでは、データを大量に集めること自体が目的ではありません。必要な情報を正しく識別し、検索でき、次の判断に利用できる状態に整えることが重要です。

ステップ4:現場に適したデジタル技術と業務フローを設計する

データ管理の方針が決まったら、実際の現場で利用するデジタル技術と業務フローを設計します。

インフラ維持管理DXでは、現場記録用のモバイル端末、位置情報を取得する測位機器、三次元計測機器、地図情報を扱う管理システム、クラウドを利用した情報共有環境などが活用できます。

ただし、利用できる技術をすべて導入する必要はありません。ステップ2で設定した課題と目標に対して、必要な機能を選ぶことが重要です。

例えば、点検写真の整理が主な課題であれば、現場で撮影した写真に施設番号や点検箇所を関連付けられる仕組みが優先されます。

一方、広い区域に分布する施設の位置管理が課題であれば、地図情報と連携できる記録方法が必要になります。

構造物の形状や変形を継続的に把握したい場合は、対象物の条件に応じて三次元計測や定点計測の導入を検討します。

重要なのは、目的に合った計測精度と作業負担のバランスを考えることです。

すべての点検で高精度な三次元計測が必要になるわけではありません。施設の位置を概略的に把握するだけであれば、簡易的な位置記録で十分な場合もあります。

一方、施工位置の確認や詳細な変位計測などでは、求められる精度に応じて適切な測量方法を選択する必要があります。

現場で取得するデータの精度が不足している場合は、管理システム上で詳細に表示できても、位置の信頼性が向上するわけではありません。

次に、現場での操作手順を設計します。

例えば、点検開始前に対象施設を選択し、現場で写真と点検内容を記録し、作業終了後に内容を確認して登録する流れを考えます。

このとき、現場担当者が同じ情報を何度も入力する必要がないようにすることが重要です。

施設番号や所在地など、既存の台帳から取得できる情報は可能な範囲で再利用し、現場ではその場でしか取得できない情報を記録する構成が望まれます。

写真撮影時に位置情報や撮影日時を記録できる仕組みも有効ですが、位置情報の取得精度には注意が必要です。

特に橋梁の下、トンネル内、地下施設、高い構造物に囲まれた場所などでは、衛星測位による位置情報を安定して取得できない場合があります。測位できない場所では、施設番号や図面上の位置指定、既知点との対応など、別の方法で位置を特定する運用を用意しておきます。

また、通信環境が十分でない現場への対応も必要です。

山間部や地下施設では通信が不安定になることがあります。常時通信を前提とした仕組みでは、記録作業そのものが停止する可能性があります。

そのため、必要に応じて一時保存や通信回復後の同期ができる仕組みを検討します。ただし、オフラインで保存したデータを複数の担当者が更新する場合は、同期時の重複や競合をどう処理するかも確認しておく必要があります。

現場の安全性も運用設計に含めます。

端末画面の操作に集中することで周囲への注意が不足しないよう、記録を行う場所やタイミングを決めておくことが重要です。交通規制区域や高所、狭い通路、水辺などでは、従来の安全管理を優先したうえで機器を使用します。

さらに、現場から事務所にデータを共有した後の流れも設計します。

点検担当者が登録した記録を管理者が確認し、必要な場合は追加調査や補修検討へ進める仕組みがあれば、記録を保存するだけでなく業務に活用できます。

異常の報告が必要な場合は、通知の方法、確認責任者、対応期限なども明確にします。緊急性の高い異常については、データ登録だけで対応が完了したとみなさず、定められた連絡体制に従って速やかに報告することが必要です。

現場の入力作業を簡単にしながら、管理部門が必要とする情報を確実に残すことが、運用設計の中心になります。

ステップ5:小規模な実証運用で効果と課題を検証する

デジタル技術と業務フローを設計したら、次は小規模な実証運用を行います。

インフラ維持管理DXでは、最初からすべての施設や担当部門へ展開するのではなく、対象を限定して実際の業務で検証する方法が有効です。

現場で利用して初めて分かる操作上の問題や、既存の管理方法との違いを把握できるためです。

実証対象を選ぶ際には、課題が明確で、導入前後の比較を行いやすい業務を選びます。

例えば、一定範囲の道路附属物の点検、特定の橋梁群の写真管理、上下水道施設の位置記録などが考えられます。

ただし、操作しやすい現場だけを対象にすると、実際の運用環境で発生する問題を見落とす可能性があります。

屋外での作業、通信が不安定な場所、複数の担当者が関わる現場など、将来の利用環境をある程度反映した対象を選ぶことが望まれます。

実証運用を始める前には、導入前の作業時間と記録品質を確認します。

点検準備に必要な時間、現場での記録時間、写真整理時間、報告書作成時間などを把握しておけば、導入後の変化を確認できます。

例えば、現場で写真と施設情報を関連付けることで事務所での整理時間が減ったとしても、現場での入力時間が大幅に増えている場合は、業務全体として十分な改善が得られていない可能性があります。

そのため、一部分の作業だけでなく、点検開始から記録の確定までに必要な総作業時間を確認することが重要です。

品質面では、写真の紐付け漏れ、施設番号の誤登録、点検項目の未入力、位置情報の不整合などを確認します。

特に、従来の方法では記録できていた情報が新しい運用で欠落していないかを確認する必要があります。

入力画面を簡略化しすぎると、必要な点検内容が記録されなくなる可能性があります。逆に入力項目が多すぎる場合は、現場担当者の負担が増え、記録の遅れや入力漏れにつながることがあります。

実証運用では、こうした問題を発見し、入力項目や操作手順を調整します。

位置情報を利用する場合は、現場条件ごとに取得結果を確認します。

衛星測位を利用する機器では、周辺の構造物や樹木、衛星の配置、補正情報の受信状態などによって測位精度が変化します。一定の精度が得られた場所でも、別の環境で同じ結果になるとは限りません。

必要に応じて既知点との比較や再測定を行い、対象業務で要求される精度を満たしているか検証します。

また、取得した座標が既存の図面や施設台帳と一致するかも確認します。位置に差がある場合は、測位誤差だけでなく、図面の作成条件や座標系の違いなども検討する必要があります。

実証期間中は、現場担当者からの意見を継続的に集めます。

操作が分かりにくい、入力する項目が多い、必要な情報が画面に表示されない、現場で確認したい過去記録を探せないなど、具体的な問題を記録します。

改善点を把握したら、実証期間中に対応できるものと、将来的なシステム改善が必要なものに分けて整理します。

実証運用の終了時には、当初設定した評価指標に基づいて導入効果を判断します。

作業時間の削減だけでなく、記録品質、情報共有のしやすさ、担当者の負担、管理部門での利用状況などを総合的に確認します。

期待した効果が得られなかった場合も、直ちにDXそのものが適していないと判断する必要はありません。対象業務の選び方、入力手順、機器の適合性、データ管理方法などに改善の余地がある可能性があります。

小規模な実証運用の目的は、成功事例をつくることだけではありません。本格導入前に問題を発見し、継続して利用できる仕組みに修正することです。

ステップ6:教育・改善・データ更新の仕組みを定着させる

実証運用で効果を確認できたら、対象施設や担当部門への展開を進めます。

しかし、システムや機器を導入しただけでは、インフラ維持管理DXが現場に定着したとはいえません。

担当者が継続して利用し、取得したデータが維持管理の判断に活用される状態をつくることが必要です。

そのためには、教育、運用ルール、管理責任、継続的な改善を組み合わせて進めます。

まず、現場担当者が実際の業務を想定して操作できる教育環境を整えます。

操作説明だけでなく、点検対象施設の選択、写真撮影、点検内容の入力、記録の確認、データの送信までを一通り体験できるようにします。

特に、入力内容を間違えた場合の修正方法や、通信できない場合の対応、記録を登録できなかった場合の連絡方法などを確認しておくことが重要です。

利用者のデジタル機器への習熟度には差があるため、すべての担当者に同じ説明だけを行っても十分とは限りません。

操作に慣れていない担当者には、実際の現場作業に近い条件で繰り返し確認できる機会を設けます。複雑な操作を覚えることが目的にならないよう、日常業務で必要な機能から習得できる構成が望まれます。

次に、運用ルールを文書化します。

どの作業でデジタル記録を使用するのか、写真にはどの情報を付けるのか、入力内容を誰が確認するのか、誤登録が見つかった場合にどう修正するのかを明確にします。

紙の記録とデジタル記録を併用する場合は、どちらを正式な記録として扱うのかも決める必要があります。

正式な記録の所在が曖昧になると、同じ内容を二重に管理することになり、更新漏れや情報の不一致が発生する可能性があります。

一方で、法令、契約、発注者の要求などによって保存形式や提出方法が指定されている場合は、それらの条件を確認したうえで運用を設計します。

デジタル化によって、必要な記録の保存義務や確認手続きが自動的になくなるわけではありません。

さらに、データを継続的に更新する仕組みを整えます。

施設台帳は、一度整備すれば完成するものではありません。補修、更新、撤去、改築、新設などによって施設の状態が変化するため、最新情報を反映する必要があります。

例えば、補修工事が完了した場合は、施工日、対象箇所、対応内容、施工後の写真などを記録し、必要に応じて図面や施設台帳を更新します。

点検記録だけが増え、施設台帳や補修履歴が更新されない状態では、情報の一元管理という目的を十分に達成できません。

そのため、点検担当者、補修担当者、管理者などの役割を整理し、情報更新の責任を明確にします。

また、運用状況を定期的に確認することも重要です。

導入当初は利用されていた仕組みでも、担当者の異動や業務内容の変更によって、次第に使われなくなることがあります。

利用状況、未登録の記録、更新が滞っている施設、現場からの問い合わせ内容などを確認し、必要に応じて運用方法を改善します。

データの蓄積が進んだら、その活用範囲を広げることも検討できます。

例えば、同じ施設の点検写真や損傷記録を時系列で比較すれば、過去の状態を確認しやすくなります。補修履歴と点検結果を関連付ければ、同じ箇所で繰り返し発生している不具合の把握にも役立ちます。

ただし、画像の見え方や計測値には撮影条件、計測条件、評価方法の違いが影響します。記録上の変化を施設の劣化や変形と判断する場合は、必要な確認や専門的な評価を行うことが重要です。

将来的に分析機能を活用する場合も、元となるデータの品質を維持することが欠かせません。

現場定着の最終的な目標は、担当者が意識的にデジタル化のための作業を増やすことではなく、通常の維持管理業務を進めることで必要なデータが自然に蓄積され、次の業務に活用される状態をつくることです。

インフラ維持管理DXの導入で失敗しないための注意点

インフラ維持管理DXを進める際には、導入目的や運用方法によって成果が大きく変わります。

特に注意したいのは、技術の導入そのものが目的になってしまうことです。

多くの機能を備えたシステムであっても、現場で利用する機能が限られていたり、既存業務との連携が難しかったりすると、十分な効果を得られません。

そのため、必要な機能を整理し、実証運用によって現場への適合性を確認してから利用範囲を広げることが重要です。

また、従来の業務をそのままデジタル化するだけでは、作業負担が減らない場合があります。

例えば、紙の点検帳票に記入し、その内容を電子ファイルに転記していた業務で、紙の帳票と電子入力を両方必須にすると、かえって作業が増える可能性があります。

デジタル化に合わせて不要な転記や重複確認を見直し、必要な情報を適切なタイミングで記録できる業務フローに改善することが大切です。

一方、安全確認や品質管理に必要な工程まで削減しないよう注意しなければなりません。

インフラ維持管理では、点検の結果が施設の安全性や利用者の安心に関わります。記録作業の効率化と、点検・診断に必要な確認の省略は区別する必要があります。

次に注意したいのが、データの互換性です。

異なるシステムや機器を利用すると、データ形式、座標系、項目名、管理番号の扱いなどが異なる場合があります。

将来的に別の管理システムへ移行したり、複数の部署で情報を共有したりする可能性がある場合は、データを取り出せるか、必要な項目を引き継げるかを事前に確認しておきます。

特定の保存環境でしか閲覧できない形式に依存しすぎると、長期的な維持管理に支障が生じる可能性があります。

インフラ施設は長期間にわたって管理する対象であるため、現在の担当者や機器だけでなく、将来の担当者が記録を利用できることも重要です。

情報セキュリティへの対応も欠かせません。

施設の位置情報、詳細図面、設備情報などには、取り扱いに注意が必要な情報が含まれる場合があります。

そのため、利用者ごとのアクセス権限、データの共有範囲、端末の紛失時の対応、バックアップ、操作履歴の管理などを検討します。

外部の協力会社とデータを共有する場合は、閲覧や編集の権限を必要な範囲に限定し、業務終了後のアクセス管理も含めて運用を整えることが望まれます。

また、個人情報が含まれる写真や記録を扱う場合は、関係する法令や組織内の規程に沿って適切に管理する必要があります。

導入後の継続的な運用負担についても検討します。

新しいシステムを導入すると、利用者の追加や変更、機器の管理、データの整理、操作方法の問い合わせ対応などが発生します。

これらの業務を特定の担当者だけに任せてしまうと、その担当者が異動した際に運用が停滞する可能性があります。

管理責任者と実務担当者の役割を明確にし、操作手順やトラブル対応方法を共有することが重要です。

さらに、DXの効果を短期間の作業時間削減だけで判断しないことも大切です。

点検写真や補修履歴を継続して蓄積することで、過去の状態を比較しやすくなり、施設の維持管理計画を検討する際の情報が充実します。

こうした効果は、運用開始直後には十分に現れない場合があります。

そのため、短期的な業務効率の改善と、中長期的な情報活用の高度化を分けて評価することが望まれます。

インフラ維持管理DXを成功させるには、現場の使いやすさ、データの品質、長期的な管理体制をバランスよく整えることが重要です。

まとめ

インフラ維持管理DXは、社会インフラの点検や補修、記録管理などの業務にデジタル技術を活用し、効率化と維持管理の高度化を目指す取り組みです。

導入にあたっては、まず対象施設と現在の業務を把握し、解決したい課題を明確にすることが重要です。そのうえで、施設台帳や点検記録、位置情報を整理し、現場に適したデジタル技術と業務フローを設計します。

実際の導入では、小規模な実証運用によって操作性や効果を確認し、課題を改善しながら対象範囲を広げる方法が有効です。さらに、担当者への教育やデータ更新のルールを整えることで、継続的に利用できる仕組みを構築できます。

特に重要なのは、現場で取得した情報をその場限りの記録にせず、次回の点検や補修計画、関係者との情報共有に活用できる状態にすることです。

例えば、施設の位置、撮影した写真、点検内容、施工履歴などを関連付けて管理できれば、過去の記録を確認しやすくなり、現場と事務所の情報共有を効率化できる可能性があります。

インフラ維持管理DXの第一歩として取り組みやすいのが、現場写真と位置情報、施工記録のデジタル管理です。従来は別々に整理していた情報を関連付けることで、記録の検索性や引き継ぎのしやすさを改善できます。

こうした現場記録のDXを進める際に活用できるのが、LRTK Phoneです。

LRTK Phoneは、現場での位置情報の取得や写真・施工記録の管理に活用できる製品です。位置情報と現場の記録を関連付けることで、点検箇所や施工箇所の把握、過去の記録の確認、関係者間での情報共有を支援します。

例えば、道路附属物や設備の位置を記録したり、補修前後の状況を写真で残したりする際に、位置情報と記録を組み合わせることで、対象箇所を特定しやすくなります。位置精度が重要な業務では、現場環境や測位条件を確認し、必要な精度を満たしているか検証したうえで利用することが大切です。

また、現場で取得した情報を共有する仕組みを整えることで、管理担当者が必要な記録を確認し、次回点検や補修計画の検討に利用しやすくなります。

インフラ維持管理DXは、最初から大規模な仕組みを構築する必要はありません。まずは日常的な点検写真や位置情報、施工記録の管理からデジタル化を進め、実際の業務で効果を確認しながら活用範囲を広げることが現実的です。

現場記録の効率化と情報の一元管理を目指す場合は、LRTK Phoneの活用も検討しながら、自社の維持管理業務に適したDXの仕組みを構築していきましょう。

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