LRTKレフィクシア株式会社

赤外線外観検査で表面処理不良を見抜く6つの確認

赤外線外観検査は、対象物の表面に現れる温度分布や熱の変化を手がかりに、目視だけでは判断しにくい異常の候補を探る検査方法です。塗装、めっき、コーティング、酸化処理、洗浄後の表面管理など、表面処理の品質を確認する場面でも活用を検討できます。ただし、赤外線で見えているものは、あくまで温度差や放射の違いであり、表面処理不良そのものを直接表示しているとは限りません。そのため、赤外線外観検査を実務で使う場合は、処理条件、材質、表面状態、撮影条件、判定基準を分けて確認し、異常らしい熱画像を過信しない姿勢が重要です。

赤外線外観検査で表面処理不良を見る基本

表面処理不良は、製品の見た目だけでなく、耐食性、密着性、絶縁性、摺動性、接着性、塗装仕上がりなどに影響することがあります。たとえば、塗膜の厚みむら、めっきの付き回り不良、コーティングの未処理部、油分や水分の残り、下地処理不足、乾燥不足、局所的な密着不良などは、後工程や使用環境で問題として表面化する場合があります。外観上はわずかな色むらに見えるだけでも、機能面では大きな差につながることがあるため、早い段階で兆候をつかむことが重要です。

赤外線外観検査では、対象物から放射される赤外線を画像化し、温度分布として確認します。表面処理の状態が均一であれば、同じ条件で加熱または冷却したときの温度変化も比較的そろいやすくなります。一方で、膜厚の違い、密着状態の違い、含水や油分の残り、下地との熱伝導の違い、表面の光沢差などがあると、熱画像上に温度むらや不自然な境界として現れることがあります。この差を利用して、不良の可能性がある領域を絞り込むのが基本的な考え方です。

ただし、赤外線外観検査は万能ではありません。温度むらが見えたからといって、必ず表面処理不良であるとは言えません。周囲の熱源の映り込み、照明や作業者の反射、風による冷却、対象物の角度、材料の厚み差、内部構造の違いなどでも、赤外線画像には差が出ます。特に金属面や光沢のあるコーティング面では、実際の温度ではなく、周囲の熱が反射して異常のように見えることがあります。したがって、赤外線外観検査では、熱画像を読む技術だけでなく、現場条件を整え、なぜその差が出たのかを切り分ける確認手順が欠かせません。

表面処理不良を見抜くためには、単に赤外線カメラで撮影するだけでは不十分です。まず、どのような処理を行い、どのような不良を想定するのかを整理します。次に、対象表面の放射率や反射の影響を確認し、撮影条件をそろえます。そのうえで、正常品や良品範囲との比較、時間変化の観察、他の検査結果との照合を行います。この一連の確認を通じて、赤外線画像を品質判断に使える情報へ変えていくことが大切です。

確認1 表面処理の種類と不良モードを整理する

赤外線外観検査を表面処理不良の確認に使うとき、最初に行うべきことは、対象となる表面処理の種類と起こりやすい不良モードを整理することです。表面処理といっても、塗装、めっき、化成処理、コーティング、熱処理後の表面管理、洗浄、研磨、接着前処理など、目的も工程もさまざまです。赤外線で確認しやすい異常も処理の種類によって異なります。膜厚むらを見たいのか、密着不良を疑っているのか、未乾燥部を探したいのか、汚れや油分の残りを見たいのかによって、撮影条件や比較方法は変わります。

たとえば、塗装やコーティングでは、塗膜の厚み、乾燥状態、下地との密着、塗り残し、異物混入などが問題になります。膜厚が局所的に厚い部分は、加熱や冷却に対する応答が周囲と異なる場合があります。乾燥が不十分な部分は、表面温度の変化や冷え方に差が出ることがあります。密着が弱い部分は、下地との熱の伝わり方が周囲と異なり、一定条件下で温度むらとして現れる可能性があります。ただし、これらは材料や膜厚、撮影タイミングに左右されるため、事前に良品と不良品の傾向を確認しておく必要があります。

めっきや金属系の表面処理では、赤外線外観検査の扱いがさらに難しくなります。金属面は反射の影響を受けやすく、熱画像上の濃淡が実温度差ではない場合があります。めっきの付き回り不良や表面状態の違いがあると、放射率の差として見えることもありますが、同時に周囲の熱源を反射しているだけの可能性もあります。そのため、めっき表面を見る場合は、撮影角度、背景、周囲温度、照明、検査治具の位置をそろえ、反射による見かけのむらを取り除く工夫が必要です。

洗浄や脱脂の確認では、油分、水分、洗浄液残り、乾燥むらなどが対象になります。これらは赤外線画像で温度差として現れる場合がありますが、表面の濡れ具合や蒸発の状態によって見え方が変わります。洗浄直後、乾燥途中、完全乾燥後では、赤外線画像の意味が異なります。洗浄直後に見える低温部は水分の蒸発による冷却かもしれませんし、乾燥後に残るむらは油分や表面状態の違いを示している可能性があります。工程のどの段階で撮影するのかを決めずに検査すると、同じ現象を不良と見たり正常と見たりしてしまいます。

このように、赤外線外観検査では、不良の名前だけでなく、その不良が熱的にどのような差として現れる可能性があるのかを整理することが重要です。表面処理不良を一括りにして撮影するのではなく、処理工程、不良モード、発生位置、想定される熱画像の変化を事前に結びつけておくことで、判定のぶれを減らせます。検査担当者が見るべきポイントを共有しやすくなり、異常候補を見つけた後の原因調査も進めやすくなります。

確認2 放射率と反射の影響を見分ける

赤外線外観検査で表面処理不良を確認するうえで、放射率と反射の理解は避けて通れません。赤外線画像は対象物の温度をそのまま目視画像のように写しているのではなく、対象表面から放射される赤外線をもとに温度分布として表示しています。表面の材質、粗さ、光沢、色、膜厚、酸化状態などによって、同じ温度でも赤外線の出方が変わります。そのため、表面処理によって放射率が変化すると、実際の温度差が小さくても熱画像上では差が大きく見えることがあります。

特に注意したいのは、光沢のある表面や金属面です。これらは周囲の熱を反射しやすく、検査者、装置、照明、壁、近くの加熱物などが熱画像に映り込むことがあります。表面処理不良のように見える斑点や筋が、実際には周囲の物体の反射である可能性もあります。撮影角度を少し変えたときに熱画像上の模様が移動する場合や、対象物ではなく背景の変化に合わせて濃淡が変わる場合は、反射の影響を疑うべきです。

放射率の違いによる見かけの温度差と、実際の温度差を区別するには、撮影条件を変えて観察することが有効です。同じ対象を角度を変えて撮影したとき、温度むらの位置が対象物上に固定されて見えるか、画面上や反射方向に合わせて変わるかを確認します。対象を一定条件で加熱または冷却し、時間経過に伴う温度変化を見ることも役立ちます。表面処理不良による熱応答の違いであれば、時間変化の中で周囲と異なる挙動を示すことがあります。一方、反射による見かけのむらは、対象物の熱応答とは無関係に現れる場合があります。

表面処理後の製品では、同じ部品内でも表面状態が均一とは限りません。研磨方向、加工跡、下地の粗さ、塗膜の光沢、局所的な酸化状態などが混在すると、赤外線画像に複雑なむらが出ます。このむらをすべて不良と判断すると、過検出が増えます。逆に、放射率差を単なる見かけの差として片付けてしまうと、本当に処理状態が変わっている部分を見逃す可能性があります。重要なのは、放射率差そのものも表面状態の変化を示す情報になり得る一方で、それだけでは不良と断定できないという考え方です。

実務では、検査対象の表面状態に合わせて、背景を均一にする、不要な熱源を遠ざける、撮影角度を固定する、検査者の映り込みを避ける、一定距離から撮影するなどの基本条件を整えることが大切です。また、判定対象となる領域と比較対象となる正常領域を同じ画面内に収めることで、周囲条件の影響を相対的に見やすくなります。赤外線外観検査で表面処理不良を見抜くには、温度差を見るだけでなく、その温度差が対象表面に由来するものなのか、周囲から映り込んだものなのかを確認する視点が欠かせません。

確認3 前処理と乾燥状態のばらつきを確認する

表面処理不良の原因は、処理そのものだけでなく、その前に行う洗浄、脱脂、乾燥、研磨、下地調整などに潜んでいることが多くあります。赤外線外観検査で表面処理後のむらを見つけた場合、その場の仕上がりだけを見るのではなく、前処理工程の状態を確認することが重要です。前処理にばらつきがあると、後から塗装やコーティングを行っても、密着性や膜厚、乾燥状態に差が出やすくなります。赤外線画像に現れる温度むらは、最終処理の失敗ではなく、前工程の管理不足を示している場合があります。

洗浄や脱脂が不十分な部分では、油分や異物が表面に残り、処理液や塗料が均一に乗りにくくなります。このような部分は、見た目ではわずかなはじきや光沢差に見えるだけでも、赤外線画像では周囲と異なる熱応答として現れることがあります。油分は熱の伝わり方や表面の放射特性に影響する可能性があり、塗装後や加熱後にむらとして見えることがあります。ただし、油分の種類や量が少ない場合は赤外線だけで明確に判別できないため、必要に応じて別の確認方法と組み合わせる必要があります。

乾燥状態のばらつきも、赤外線外観検査で注目すべきポイントです。表面に水分や溶剤分が残っていると、蒸発による冷却や熱容量の違いによって、周囲より温度が低く見えることがあります。乾燥途中の製品を撮影する場合、温度むらが処理不良なのか、乾燥工程の途中経過なのかを見分ける必要があります。時間を置いて再撮影し、むらが消えるのか、同じ位置に残るのかを確認すると、乾燥不足と恒常的な表面状態差を切り分けやすくなります。

研磨やブラストなどの下地調整を行う場合は、表面粗さや加工方向の違いも熱画像に影響します。粗さが変わると放射率が変化し、同じ温度でも熱画像上の濃淡が変わることがあります。処理液の付き方や塗膜の密着にも影響するため、赤外線画像で一定方向の筋や帯状のむらが見える場合は、下地調整のむら、治具接触、搬送方向、作業姿勢なども確認対象になります。表面処理後の熱画像だけを見て原因を決めつけると、再発防止策がずれることがあります。

前処理と乾燥状態を確認する際には、工程ごとの撮影タイミングを決めておくと効果的です。処理前、洗浄後、乾燥後、表面処理直後、加熱または乾燥後、冷却後というように、必要な段階で比較できる記録を残すと、どの時点でむらが現れたのかを追いやすくなります。赤外線外観検査は最終検査として使うだけでなく、工程の途中で異常の芽を見つける用途にも向いています。前処理段階のばらつきを把握できれば、不良品の流出防止だけでなく、工程改善にもつながります。

確認4 加熱や冷却後の温度変化を比較する

表面処理不良は、常温で静止した状態の熱画像だけでは見つけにくいことがあります。対象物全体が周囲温度になじんでいる場合、膜厚差や密着差があっても、温度分布に明確な違いが出ないことがあります。そのような場合に有効なのが、加熱や冷却を与えた後の温度変化を比較する方法です。表面処理の状態が異なる部分は、熱の吸収、伝導、放散、冷却速度に差が出ることがあり、時間変化を観察することで異常候補を見つけやすくなります。

たとえば、塗膜やコーティングの厚みが局所的に違う場合、加熱後の温まり方や冷め方が周囲と異なることがあります。膜が厚い部分は熱容量や断熱性の違いによって、表面温度の変化が遅れて見える場合があります。逆に、下地との密着が弱い部分や空隙がある部分では、下地からの熱の伝わり方が変わり、加熱後または冷却後に局所的な温度差として現れる可能性があります。こうした差は、静止画像よりも時間を追った観察のほうが判断しやすいことがあります。

加熱や冷却を使う場合は、与える条件を安定させることが重要です。加熱源の距離、角度、時間、出力、対象物の初期温度、周囲温度、風の影響が変わると、熱画像の差が不良によるものか条件差によるものか分からなくなります。作業者ごとに加熱時間が違う、検査場所の風が当たる、部品の置き方が変わるといった小さな違いでも、判定の再現性に影響します。赤外線外観検査を工程に組み込むなら、加熱や冷却の手順をできるだけ一定にし、撮影タイミングも固定する必要があります。

時間変化を見るときは、異常候補の絶対温度だけでなく、周囲との相対的な変化を確認します。加熱直後に高く見える部分、時間が経っても冷めにくい部分、周囲より早く冷える部分、境界線が時間とともに目立つ部分など、挙動の違いに注目します。表面処理不良による差であれば、同じ位置に繰り返し現れることが多くなります。一方で、加熱むらや風の影響であれば、撮影ごとに位置や形が変わる場合があります。複数回の確認を通じて、再現性のあるむらかどうかを見極めることが大切です。

また、加熱や冷却を行う際には、対象物への影響にも注意が必要です。過度な加熱は表面処理そのものを変質させたり、製品に負荷を与えたりする可能性があります。検査のために品質を損ねてしまっては意味がありません。対象材料や処理膜の耐熱性、寸法変化、変色、残留応力への影響を考慮し、検査として許容できる範囲で条件を設定します。赤外線外観検査は非接触で行える利点がありますが、熱刺激を加える場合は、その刺激が製品に与える影響まで含めて管理する必要があります。

確認5 正常品との熱画像差を基準化する

赤外線外観検査で表面処理不良を見つけるためには、正常品との比較が非常に重要です。単独の熱画像を見て、ある部分が明るい、暗い、むらがあると感じても、それが不良なのか正常なばらつきなのかは判断しにくいものです。表面処理品には、形状、板厚、端部、穴周辺、曲面、治具接触部、搬送方向などによる自然な温度差が生じることがあります。これらを不良と誤判定しないためには、良品範囲の熱画像を蓄積し、正常時にどの程度のむらが出るのかを把握する必要があります。

正常品との比較では、同じ材質、同じ処理条件、同じ形状、同じ撮影条件で得られた画像を基準にします。条件が違う画像を比べると、差の原因が分からなくなります。たとえば、同じ製品でもロット、表面粗さ、処理液の状態、乾燥時間、室温、撮影距離が違えば、熱画像の見え方は変わります。基準画像を作る際には、単に一枚の良品画像を保存するだけでなく、複数の良品を撮影し、許容されるばらつきの幅を把握することが大切です。

基準化で重要なのは、不良らしい模様を探すだけでなく、判定しない領域や注意して見る領域を明確にすることです。製品の端部は放熱しやすく、中央部と温度が違って見えることがあります。穴や凹凸の周辺は形状の影響で熱画像が乱れやすくなります。曲面では撮影角度や反射の影響が大きくなります。治具で保持している部分は熱が逃げたり、接触によって温度が変わったりします。こうした構造上の温度差をあらかじめ整理しておくと、表面処理不良による異常候補を見つけやすくなります。

判定基準を作るときは、熱画像上の濃淡だけでなく、位置、形状、再現性、時間変化、外観との対応を含めて評価します。たとえば、同じ位置に毎回現れる帯状のむらがあり、工程の搬送方向や塗布方向と一致している場合は、表面処理工程のばらつきが疑われます。一方で、撮影ごとに場所が変わる斑点状のむらは、反射や周囲環境の影響かもしれません。正常品との違いを定性的に見るだけではなく、どのような差なら要確認とするのか、どのような差なら許容範囲とするのかを現場で共有しておくことが必要です。

赤外線画像の基準化は、一度作って終わりではありません。処理条件の変更、材料ロットの変更、設備の更新、治具の変更、季節による環境変化などによって、正常時の熱画像も変わることがあります。過去の基準だけに頼ると、現状の工程に合わない判定になる可能性があります。定期的に良品画像を見直し、不良解析結果や後工程での発見内容を反映させることで、基準の精度を高めていくことができます。赤外線外観検査を安定運用するには、画像を撮る仕組みと同じくらい、基準を育てる仕組みが重要です。

確認6 赤外線画像だけで判定せず外観確認と組み合わせる

赤外線外観検査は、表面処理不良の兆候を見つけるうえで有効な手段になり得ますが、赤外線画像だけで最終判断を行うのは慎重に考えるべきです。赤外線画像に現れる差は、温度、放射率、反射、形状、環境条件などが重なった結果です。表面処理不良の可能性を示すことはあっても、それだけで原因や不良内容を断定できるとは限りません。実務では、赤外線画像を異常候補の抽出に使い、外観確認、膜厚測定、密着確認、表面観察、工程記録などと組み合わせて判断することが安全です。

目視外観との照合は、最も基本的な確認です。赤外線画像でむらが見えた部分に、色むら、光沢差、はじき、ピンホール、しわ、異物、流れ跡、塗り残し、変色などがあるかを確認します。熱画像上では明確な差があるのに目視では何も見えない場合もありますし、目視で見える不具合が赤外線画像では目立たない場合もあります。両方の情報を重ねることで、表面処理不良の可能性をより現実的に判断できます。

膜厚や密着性が問題になる場合は、適切な測定や試験と組み合わせることが必要です。赤外線画像で膜厚むらの可能性がある領域を見つけたとしても、実際に膜厚が規格外かどうかは別途確認が必要です。密着不良が疑われる場合も、赤外線画像で見える温度差だけでは、密着不足、空隙、下地状態、熱伝導差のどれが原因か判断できません。異常候補の位置を赤外線で絞り込み、その部分を重点的に確認するという使い方が実務的です。

工程記録との照合も重要です。処理液の管理値、乾燥時間、炉内条件、搬送速度、作業者、治具、前処理条件、材料ロットなどの情報と熱画像を照らし合わせることで、異常の原因を追いやすくなります。たとえば、特定の時間帯に処理した製品だけに同じ熱画像むらが出る場合は、設備状態や環境条件に原因があるかもしれません。特定の治具位置に置かれた部品だけに異常が出る場合は、保持方法や熱の逃げ方が影響している可能性があります。赤外線画像を単独の検査結果として扱うのではなく、工程情報と結びつけることで、再発防止に役立つ情報になります。

また、検査担当者の教育では、赤外線画像の見え方に慣れることが欠かせません。正常な温度むら、反射による見かけの異常、形状による温度差、表面処理不良の可能性があるむらを区別するには、実例を蓄積して共有する必要があります。異常画像だけでなく、正常品でよく見られる紛らわしい画像も教育資料に含めると、過検出や見逃しを減らしやすくなります。赤外線外観検査は、装置を導入すればすぐに安定するものではなく、判定経験と基準づくりによって精度を高めていく検査です。

赤外線外観検査を工程管理に活かす考え方

赤外線外観検査は、不良品を見つけるためだけでなく、表面処理工程の安定性を把握するためにも活用できます。表面処理不良は、発生してから見つけるよりも、発生しやすい条件を早めにつかむほうが効果的です。赤外線画像を継続的に記録しておくと、温度むらの傾向、処理条件の変化、乾燥状態のばらつき、治具や設備の影響を確認しやすくなります。最終検査の合否だけでなく、工程の変化を示す指標として使うことで、品質管理の幅が広がります。

工程管理に使う場合は、検査の目的を明確にすることが重要です。全数検査として不良流出を防ぐのか、抜き取りで工程状態を監視するのか、新しい処理条件の妥当性を確認するのか、トラブル発生時の原因調査に使うのかによって、必要な撮影条件や記録内容は変わります。目的が曖昧なまま撮影を始めると、画像は増えても判断に使えない記録になってしまいます。どの工程で、どのタイミングで、何を正常とし、何を要確認とするのかを決めておく必要があります。

記録の残し方も大切です。赤外線画像だけを保存しても、撮影条件や工程条件が分からなければ、後から比較しにくくなります。対象品番、ロット、処理日時、撮影日時、撮影距離、撮影角度、加熱や冷却の条件、周囲環境、作業者、設備条件など、必要な情報を合わせて残すことで、異常が出たときの分析に使いやすくなります。特に表面処理工程は、温度、湿度、乾燥時間、処理液状態、作業間隔などの影響を受けやすいため、画像と工程情報を結びつけることが重要です。

赤外線外観検査を導入する際には、最初からすべての不良を自動で見つけようとしないほうが現実的です。まずは過去に発生した不良、再発を防ぎたい不良、目視では見つけにくい不良、後工程で大きな影響が出る不良など、優先度の高い対象に絞って検証します。良品と不良品の差が赤外線画像で安定して確認できるかを見極め、その後に対象範囲を広げると、運用上の混乱を減らせます。検査として使える不良と、赤外線だけでは判定が難しい不良を分けることも大切です。

現場で継続運用するには、検査結果を作業改善につなげる仕組みが必要です。赤外線画像で同じ位置にむらが出る場合、治具の接触や搬送条件を見直すきっかけになります。乾燥後の温度むらが増えた場合、乾燥条件や作業間隔を確認するきっかけになります。塗布方向に沿ったむらが出る場合、塗布条件や前処理の均一性を確認するきっかけになります。単に異常品を除外するだけでなく、なぜその熱画像になったのかを工程側へ戻すことで、赤外線外観検査は品質改善の道具になります。

まとめ

赤外線外観検査で表面処理不良を見抜くには、熱画像に現れる濃淡をそのまま不良と判断するのではなく、表面処理の種類、想定される不良モード、放射率、反射、前処理、乾燥状態、加熱や冷却後の温度変化、正常品との比較を順番に確認することが重要です。表面処理不良は、塗装やコーティングの膜厚むら、密着不良、洗浄不足、乾燥不足、下地調整のばらつきなど、さまざまな要因で発生します。赤外線画像はそれらの兆候を見つける手がかりになりますが、原因を直接示すものではありません。

実務では、まず確認したい不良を明確にし、撮影条件をそろえ、良品範囲を基準化します。そのうえで、反射や形状による見かけのむらを除外し、時間変化や再現性を確認します。赤外線画像で異常候補を見つけた後は、目視外観、膜厚確認、密着確認、工程記録などと照合し、総合的に判断することが安全です。特に表面処理品は、見た目、機能、工程条件が密接に関係するため、赤外線外観検査を単独の判定装置として扱うのではなく、工程理解と組み合わせて使う姿勢が求められます。

赤外線外観検査をうまく活用できれば、目視では気づきにくい処理むらの候補を早く見つけ、後工程での不具合や品質ばらつきを減らすきっかけになります。さらに、画像と工程情報を継続的に記録することで、表面処理工程の安定性を把握し、再発防止や作業条件の改善にもつなげられます。表面処理不良の確認方法を見直したい場合や、自社工程で赤外線外観検査をどのように使えるか相談したい場合は、お気軽にお問い合わせください。

現場を3Dで残して、あとから測る。
実際の画面と動画で使い方を確認できます。

LRTK Phoneの使い方・実例を見る
資料請求導入相談
現場をスマホで3DスキャンLRTK Phone実例を見る