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災害前後を3D比較するアプリの活用5ステップ|地形変化と被害範囲を可視化する方法

大雨による土砂崩れ、河川の増水、地震に伴う地盤変状などが発生したとき、現場担当者には限られた情報から被害の全体像を把握し、調査や復旧の優先順位を決めることが求められます。しかし、災害後の写真だけでは、どこが何メートル変化したのか、土砂がどこに堆積したのか、被害がどの範囲に及ぶのかを判断しにくい場合があります。

そこで役立つのが、災害前後の地形や構造物を3Dデータとして重ね合わせ、変化を見える形にするアプリです。点群データや標高モデルなどを適切に比較すれば、崩壊・堆積した場所、地盤の高さの変化、調査が必要な区間を把握しやすくなります。一方で、データの精度や座標の基準が異なるまま重ねると、実際には存在しない変化を被害と誤認するおそれもあります。

この記事では、災害前後の3D比較を実務で進めるための5ステップを中心に、アプリの選び方、差分解析の注意点、災害の種類ごとの活用方法、復旧計画へのつなげ方まで解説します。初動調査を担当する自治体職員、施工管理者、測量担当者、インフラ管理者が、結果を説明可能な記録として残すことを想定しています。

災害前後の3D比較アプリで何が分かるのか

災害前後の3D比較とは、異なる時点に取得した地形や構造物の三次元データを共通の位置基準にそろえ、その形状の差を確認する方法です。平面の地図や写真では把握しにくい高さ方向の変化も含めて検討できるため、被害の位置だけでなく、変化の程度や広がりを関係者間で共有する助けになります。

比較に用いられる代表的なデータには、地表や構造物の位置を多数の点で表した点群、地面の高さを格子状に記録した数値標高モデル、写真から再現した三次元形状などがあります。それぞれ表現できる対象と適した解析が異なります。例えば、斜面の侵食や土砂の堆積を調べる場合は、建物や樹木の影響を必要に応じて取り除いた地表面の高さを比較することが重要です。一方、護岸や擁壁の変形を調べる場合には、構造物の表面形状を保った点群比較が役立つことがあります。

アプリ上では、災害前後を半透明に重ねる表示、同じ地点の高さの差を色分けする表示、指定した線に沿う断面比較などが考えられます。対象範囲とデータ品質が条件を満たせば、地盤が低下した部分と上昇した部分を分けたり、その差分から体積を概算したりすることも可能です。ただし、赤く表示された領域が必ず危険区域を意味するわけではありません。色は設定した差分値を示すものであり、危険度や災害原因の判定には地質、構造、降雨、現地の損傷状況など別の情報が必要です。

また、3D比較から求められる「変化範囲」と、行政上の「被害認定範囲」や立入規制区域は同じものではありません。解析で抽出した範囲は調査対象を絞るための根拠の一つとして扱い、正式な判定が必要な事項は所定の調査・確認手続きと組み合わせます。この役割分担を最初に理解しておくと、便利な可視化結果を過信せず実務に取り込めます。

ステップ1|比較目的と災害前データを整理する

最初に決めるべきことは、何を知るために比較するのかという目的です。道路の通行再開に向けて法面の崩壊位置を把握するのか、河川内の堆積傾向を確認するのか、復旧工事のために土砂の量を概算するのかによって、必要な範囲、データの細かさ、成果の説明方法が変わります。目的が曖昧なまま広域のデータを読み込むと、処理に時間がかかったうえ、必要な判断材料が得られないことがあります。

例えば、斜面崩壊の初期把握では、崩壊箇所だけではなく上部斜面、流下経路、堆積先、周辺の道路や建物まで比較範囲に含めます。道路の沈下を調べる場合は、変化が疑われる舗装面に加え、比較の基準にできる安定した周辺部分も確保します。調査区域を広く取ればよいわけではなく、必要な地形の連続性と安全な計測範囲の両方を考慮することが大切です。

災害前のデータには、過去の地形測量成果、航空レーザ計測による点群、地形の標高格子、施工時の出来形記録、定期点検時の三次元計測成果などを使える場合があります。ここで必ず確認したいのは、取得時期、対象区域、水平位置の基準、標高の基準、地表面か構造物表面かというデータの性質、精度や欠測範囲です。単に「災害前」というだけでは十分ではありません。数年前の計測であれば、その間に行われた造成や補修による変化が含まれる可能性があります。

データが見つからない場所では、利用可能な過去の地形資料を基礎情報として扱い、比較できることとできないことを分けて整理します。等高線から作成した地形や粗い標高格子を高密度の災害後点群と比べても、細かな段差や小規模な堆積を確実に求められるとは限りません。計測の細かさが違う場合は、結果の表現を「変化の候補」「概況把握」などにとどめ、定量的な体積や深さの評価には追加調査が必要か判断します。

この段階で、ファイルの作成者、入手元、取得年月日、元のデータを保管する場所、加工の有無を台帳に記録しておくと、後の検証が容易になります。解析に適した形へ変換したデータを使う場合も、元データを上書きせず残しておきます。緊急時ほど、後から経緯を説明できる状態で作業を始めることが重要です。

ステップ2|安全を確保して災害後の3Dデータを取得する

災害後の計測では、精度の確保よりも先に作業者と周辺住民の安全を優先します。斜面の再崩落、増水、地盤の空洞化、落下物、電線の損傷、道路の不安定化などの危険がある場所へ、三次元データを取るためだけに無理に立ち入ってはいけません。立入規制や飛行に関するルール、現地管理者の指示を確認し、安全な範囲から取得できる手段を選びます。

広範囲の斜面や河川を把握したい場合は、上空から取得した写真やレーザ計測の成果が候補になります。道路沿いの擁壁、橋台、法面の局所的な形状を詳しく確認する場合は、地上からの計測が適することがあります。いずれの場合も、対象に死角がないか、樹木や瓦礫で地面が隠れていないか、水面や濡れた面によって計測が不安定にならないかを確認します。遠隔からの計測でも、見えていない場所の地形まで直接観測できるわけではありません。

取得するデータの範囲は、災害前データと重なる部分を意識して設定します。被害箇所の中央だけを測ると、重ね合わせに用いる安定した基準部分が不足し、位置合わせの信頼性が下がることがあります。可能であれば、被害を受けていないと現地状況から判断できる舗装面や堅固な構造物の周辺なども含め、解析後に確認できる独立した検証点も設けます。ただし、地震で広域に地盤が動いた場合には、一見無傷の地物でも動いていることがあるため、安定性を別途確認します。

位置情報を付けた現場写真も、3D計測と同時に集めると有用です。写真には撮影位置、撮影方向、対象物、撮影日時、現場の状況を対応づけます。位置情報の精度が十分でない写真を測量成果と同じ扱いにせず、概略位置を示す記録なのか、検証済み座標を持つ記録なのか区別しておきます。座標値だけでなく写真の向きや撮影対象を記録することで、解析画面の変化領域と実際の現場状況を結び付けやすくなります。

計測直後はデータの欠落、撮影の重複不足、座標記録の異常を現場から離れる前に確認します。再計測が困難な災害現場では、この簡単な品質確認が後工程の手戻りを防ぎます。取得後に追加の崩落や復旧作業が進む可能性もあるため、「災害後」の一括りにせず、計測した時刻を厳密に残すことが欠かせません。

ステップ3|座標と高さの基準を合わせて重ね合わせる

災害前後の3D比較で特に重要なのが、二つのデータを同じ基準で重ねる工程です。見た目で重なっているように見えても、水平位置がずれていたり、標高の定義が異なっていたりすれば、差分には計測対象の変化以外のずれが混入します。とりわけ急斜面では、小さな水平位置のずれが大きな高さの差として現れるため、色分けされた結果だけで判断するのは危険です。

まず、双方のデータが同じ座標系、同じ高さの基準、同じ単位を採用しているか確認します。緯度・経度で表した位置と平面上の座標をそのまま比較することはできず、高さも楕円体を基準とする値と標高を混同してはいけません。過去の成果と新しい成果で基準や補正条件が違う場合には、必要な変換を適切に実施し、変換内容を記録します。単位や軸方向の設定違いは、解析前に解消しておきます。

次に、被災による変化がないと判断できる場所や、信頼できる測量基準点を利用して位置合わせを行います。点群の自動位置合わせ機能は作業を助けますが、崩壊斜面や堆積土砂まで含めて全体を無理に一致させると、調べたい地形変化そのものが位置合わせの結果に吸収される場合があります。したがって、変化の大きい領域を基準に使わないこと、異なる方向と高さに分布する安定領域を確保することが基本です。

位置合わせ後は、調整に使用していない検証点や安定した表面で残差を確認します。残差が一方向に偏っている場合は、基準の取り違えや全体の回転、標高補正の問題が疑われます。場所によって偏りが変わる場合には、計測条件の違い、局所的な変形、元データの精度不足などが考えられます。残差の大きさと分布を保存し、比較可能な区域と注意が必要な区域を明示しましょう。

重要なのは、画面上の操作でずれをゼロに見せることではなく、どの程度の不確かさが残っているかを把握することです。後の差分解析では、この位置合わせ誤差と各時点の計測誤差を踏まえて、意味のある変化を判断します。精度の根拠を残すことで、解析者が交代しても結果を追跡できます。

ステップ4|差分を解析して地形変化と被害範囲を可視化する

座標がそろったら、目的に合う方法で差分を計算します。地盤の上昇や低下を調べる場合は、災害前後の地表面モデルを同じ格子にそろえ、対応する位置の高さを比較する方法が分かりやすいでしょう。例えば、災害後の標高から災害前の標高を引く設定であれば、正の差は地表面の上昇、負の差は低下を表します。ただし、これを直ちに「土砂が堆積した」「地面が流出した」と断定するのではなく、現場写真や計測時の状態と照合する必要があります。

ここで区別したいのが、地面そのものの高さを表すモデルと、樹木や建物など地表の上にある物体を含むモデルです。災害前には森林だった斜面が災害後に裸地となった場合、樹冠を含んだ災害前データと災害後の地面を比較すると、樹木がなくなった分まで地面の低下として現れます。土砂の移動を知りたいなら、可能な範囲で地表面を抽出し、建物・植生・仮設物などの扱いを両時点で統一する必要があります。

差分を色分けするときは、変化の方向と大きさが読み取れる凡例を設定します。例えば、低下側、変化が小さい範囲、上昇側を区別し、欠測や比較不能な場所は別の表示にします。色が目立つからという理由で閾値を任意に狭くすると、計測誤差まで被害のように見えてしまいます。閾値は元データの精度、位置合わせの残差、評価目的を踏まえて設定し、数値と理由を成果に残します。

被害範囲を求める際は、差分が設定した条件を超える連続領域を抽出し、現場確認と突き合わせて外周を整理します。この面積は、使用した範囲設定、格子の大きさ、欠測の扱い、抽出閾値によって変わります。そのため、算出した数値には必ず条件を付け、行政上の正式な被害区域や安全上の立入規制区域と混同しないようにします。また、差分が小さい場所でも亀裂や内部損傷が存在する場合があるため、変化が見えないことを安全の証明にはできません。

土砂量の概算が必要な場合は、格子ごとの高さの差に格子の面積を掛け、それを対象区域で合計する考え方を用います。正の差と負の差を別々に集計すれば、見かけ上の堆積量と侵食・流出量の傾向を整理できます。ただし、空隙を含む土砂の体積、移動前後の密度差、地表面に現れない地下の変化までは、この計算だけで分かりません。工事数量や搬出計画に用いる前には、必要な現地測量や材料条件の確認を加えます。

最後に、平面の差分図だけでなく、崩壊源から堆積先までの縦断面や道路を横切る横断面も確認します。断面を使うと、見た目の面積が小さくても深い侵食が生じた場所や、復旧設備との高さの関係を把握しやすくなります。解析画面を共有するときは、撮影日時、凡例、単位、対象範囲、比較できない場所を明記することが重要です。

ステップ5|結果を検証して復旧計画と情報共有に活用する

3D差分を作成しただけでは、復旧判断に使える成果とはいえません。解析で変化が大きいとされた場所、重要施設に近い場所、データが欠けている場所を中心に、可能な範囲で現地の状況と照合します。斜面では亀裂や湧水、道路では路肩の損傷、河川では流木や閉塞など、形状の差分だけでは判断できない状況も確認の対象にします。危険区域への進入が必要な検証は、専門的な安全判断と作業計画が整うまで実施しません。

復旧計画に結び付ける際には、変化量だけでなく、その場所が持つ機能を考慮します。同じ規模の地形変化でも、避難路に面する法面、孤立集落へ通じる道路、河川の流下を妨げる堆積箇所では、対応の優先度が異なります。3D比較は優先順位を考えるための客観的な材料を増やしますが、最終判断には人命への影響、二次災害の可能性、施設の重要性、追加調査の必要性などを含めた総合評価が不可欠です。

成果の共有では、専門家向けの詳細データと、意思決定者向けの説明資料を分けると伝わりやすくなります。詳細データには元データ、位置合わせの方法、検証結果、差分の計算条件を残します。説明資料では、対象区域の全体図、変化が大きい場所、現場写真、確認済み事項、未確認事項、次の調査が必要な場所を対応づけます。数値だけを切り出した資料は誤解を生みやすいため、測定時点と誤差の扱いを添えましょう。

また、災害後に応急復旧や土砂撤去が行われると、地形は短期間で変わります。初回計測、応急対応後、恒久復旧前、工事完了後など、段階ごとに記録を区別すれば、災害による変化と工事による変化を混同せずに管理できます。比較結果を更新する際も、以前の解析結果を消さず、どの時点同士を比較したのか追える状態に保ちます。

このように、3D比較アプリの活用は「可視化」で終わるものではありません。現地確認、対策検討、関係者との合意形成、施工記録へとつなげて初めて、災害対応の継続的な情報基盤になります。

実務で使いやすい3D比較アプリの選び方

アプリを選ぶときは、画面の見た目や3D表示の滑らかさだけで判断しないことが大切です。まず、自分たちが保有する点群、標高格子、三次元形状などのデータを読み込めるか、必要な形式に出力できるかを確認します。災害前は広域の標高モデル、災害後は高密度点群という組み合わせも想定されるため、異なるデータの性質を理解して扱える機能が必要です。単に二つの3Dモデルを並べられることと、精度を管理しながら差分を計算できることは別です。

次に、座標系と高さの基準を確認・設定できるかを調べます。位置合わせの操作、基準点の取り扱い、安定領域の選択、残差の表示、欠測部分の区別などを確認できると、結果を説明しやすくなります。自動重ね合わせに対応していても、解析者が検証できない仕組みだけに依存するのは避けたいところです。

必要な解析機能も用途で変わります。土砂災害では標高差の色分け、断面作成、区域抽出、概算体積の算出が候補になります。道路や擁壁などの構造物では、点群同士の表面距離や断面形状の比較が必要になる場合があります。アプリが計算しているのが鉛直方向の標高差なのか、表面までの最短距離なのかを把握せずに結果を混ぜると、同じ色や数値でも意味が異なるおそれがあります。

災害現場では通信が安定しないこともあります。現場での閲覧や記録に常時通信が必要か、データを事前保存できるか、大容量のデータを扱えるか、閲覧権限を関係者ごとに設定できるかも実務上の判断材料です。個人が写った写真や重要施設の詳細形状を扱う場合は、共有先とアクセス範囲の管理が欠かせません。

導入前には、過去の計測データを用いた小規模な試験を行い、解析担当者以外の職員にも成果を見てもらうとよいでしょう。データを読み込めても現場の判断に必要な説明ができないのであれば、運用方法を見直す余地があります。既存の点検記録や施工管理の仕組みとつなげられるかも含め、調査から復旧までの一連の作業で評価します。

土砂災害・河川・道路・構造物での具体的な活用例

土砂災害では、崩壊した斜面の上部から土砂が流下した経路、斜面下部に堆積した範囲を連続的に把握することが主な目的です。災害前後の地表面を比較すると、侵食傾向がある部分と堆積傾向がある部分を区別する手掛かりになります。ただし、樹木に隠れた地面の形や急斜面の欠測部分を過度に補間すると、実際とは違う体積になる可能性があります。必要に応じて追加計測を行い、推定部分を明示します。

河川では、出水後の土砂堆積、河岸の侵食、河道の狭まりなどを確認する用途が考えられます。河川内の変化は流下能力や周辺施設への影響の検討材料になりますが、水面下の河床を通常の写真だけで正確に再現できるとは限りません。水深や水の濁り、計測方法によって観測できない部分があるため、水中の形状を確認する必要がある場合は適切な別の測定方法を組み合わせます。水位の変動と地盤の変化も区別して整理します。

道路では、路肩の欠損、盛土の崩壊、法面の変形、落石堆積などの位置を3Dで共有できます。道路中心線に沿った縦断面や横断面を作れば、復旧工事で確認すべき高さや幅の変化を把握しやすくなります。一方、舗装の小さなひび割れや地盤内部の空洞は、広域3D比較だけでは見つけにくいことがあります。現場写真、近接点検、必要な非破壊調査などを併用する姿勢が重要です。

擁壁や橋台などの構造物では、表面形状のずれや局所的な変形を把握する補助資料として使えます。ただし、壁面が傾斜している場合には標高の差だけでは変形方向を適切に表せません。対象に応じて比較する方向を定義し、構造物の基準線や測量点で検証します。外形に大きな変化がなくても内部損傷が存在する可能性があるため、3Dデータから健全性を単独で判断しないことが必要です。

それぞれの活用例に共通するのは、アプリが示す差分をそのまま結論にしないことです。現場状況、対象物の特性、観測できていない場所を合わせて確認することで、災害対応に役立つ解釈へと近づけられます。

3D比較で起こりやすい誤差と判断ミスの防ぎ方

第一の落とし穴は、精度の異なるデータを同じ解像度であるかのように扱うことです。災害後の点群が細かくても、災害前の標高モデルが粗ければ、最終的に判別できる変化の細かさは制約されます。細かい格子へ補間しても元データに存在しない情報が増えるわけではありません。比較する数値の有効な細かさを決めるときは、両時点のデータ品質を基準に考えます。

第二の落とし穴は、位置合わせ誤差を変化量と混同することです。平坦な土地よりも急斜面では水平位置のずれが高さの差に強く反映されます。測量基準の確認と安定領域での残差評価を行い、必要であれば差分表示の閾値を調整します。小さな差が連続している場合も、地形の変化なのか系統的なずれなのかを先に確認しましょう。

第三の落とし穴は、地表の状態が異なるデータをそのまま引き算することです。植生の季節変化、積雪、仮設資材、車両、水位の変動、災害後の撤去作業などは、3D形状に差を生みます。解析前に地面と地物を区別し、比較対象から除く範囲を決めます。除外した区域は表示上で隠すだけでなく、成果に「比較対象外」として残すことが大切です。

第四の落とし穴は、変化が検出された範囲を被害の全範囲とみなすことです。地表形状が変わらないまま発生する損傷や、水面下・地下の変化は対象データに現れない可能性があります。反対に、解析で大きな差が出ても、計測条件や作業による変化かもしれません。差分で抽出した範囲は確認すべき候補として利用し、正式な被害判断に必要な検査や専門的評価を省略しないようにします。

これらの問題に対しては、計測精度、座標合わせの残差、差分閾値、欠測範囲、現地確認結果を一組の資料として保存する方法が有効です。「何センチ変わったか」という数字だけでなく、「どの条件ならそう判断できるか」を示すことが、誤解のない報告につながります。

平常時から備えるデータ管理と運用体制

災害が起きてから過去の三次元データを探し始めると、ファイルの所在や測量基準が分からず、比較まで進めないことがあります。平常時から重要な道路、河川、法面、造成地、公共施設などについて、既存の測量成果や出来形記録を整理し、どこにどの時点のデータがあるか確認できる状態にしておくと、初動が円滑になります。

保存する際は、対象区域、計測日時、取得方法、座標系、高さの基準、計測精度、ファイル形式、担当者、利用上の制限を一緒に記録します。三次元データそのものに加え、現場写真や図面、施工履歴、補修前後の記録も位置と時刻でひも付けると、災害発生時に参考情報を集めやすくなります。更新したデータを保存するときは、古いデータを上書きせず、時系列で追えるようにすることが基本です。

組織内では、計測を手配する担当、データの品質を確認する担当、差分を解析する担当、現場状況と照合する担当、対策の優先度を決定する担当を明確にします。一人で全工程を抱え込むのではなく、手順と記録の引き継ぎ方を決めておくことで、緊急時の担当者変更にも対応しやすくなります。外部の測量事業者や解析担当者と連携する場合も、成果の座標基準やデータの受け渡し条件を事前に共有しておくとよいでしょう。

また、通信障害や停電を想定し、重要な情報のバックアップと閲覧方法を検討します。大容量の3Dデータを誰もが同じ端末で扱えるとは限らないため、解析用の詳細成果に加えて、軽量な閲覧用データや変化箇所を示した資料を準備する運用も有効です。ただし、軽量化や簡略化によって数値の精度まで維持されるとは限らないため、閲覧用と解析用を区別します。

平常時の準備では、実際に小さな区域で災害前後を模した比較を試し、どのデータが不足し、どの工程で判断が止まるかを洗い出すことをおすすめします。訓練で見つかった問題を台帳や手順に反映しておけば、実際の災害対応で3D比較の価値を発揮しやすくなります。

災害前後の3D比較に関するよくある質問

災害前の点群がない場合でも比較できるのでしょうか。過去の標高モデルや施工時の測量成果など、利用目的に適したデータが残っていれば、条件付きで比較できる可能性があります。ただし、取得時期が古い場合や精度が低い場合には、細かな変化や土砂量の算定に向かないことがあります。適用できる分析の範囲を先に決め、分からない部分を明示することが大切です。災害後に初めて3D計測を行う場合でも、その成果を今後の追加崩落や復旧工事の比較基準として保存する意義があります。

写真を撮るだけで3D比較はできるのでしょうか。写真を使って三次元形状を再現する方法はありますが、撮影位置や画像の重なり、対象物の質感、基準点などの条件に結果が左右されます。位置情報付きの写真一枚から周辺の精密な地形モデルが自動的に得られるわけではありません。写真は被害の状況や撮影時点を示す記録として有用ですが、変化量を定量的に求めたい場合は用途に合う三次元計測が必要です。

3D比較で算出した土砂量をそのまま工事数量にしてよいのでしょうか。差分から求めた体積は、地表面モデル、比較範囲、欠測補間、測定精度などの条件に依存します。施工数量として用いるには、求められる管理基準や測量方法との適合を確認し、必要に応じて追加計測や現地確認を行います。特に土砂の締固めや水分状態が異なる場合、地形から求めた体積と運搬・処理の数量が一致するとは限りません。

変化が色で表示されなければ、その場所は安全なのでしょうか。必ずしもそうではありません。解析の閾値より小さな変化、計測できていない範囲、地下の空洞、構造物内部の損傷などは差分に表れないことがあります。3D比較は被害の見落としを減らす補助となりますが、危険の有無を保証するものではありません。安全性の判断は現地状況を踏まえた専門的な確認と組み合わせます。

現場担当者にも3D比較アプリを扱えるのでしょうか。閲覧や写真との照合は比較的取り入れやすい一方、座標変換、位置合わせ、差分の精度評価には専門的な知識が必要になる場合があります。最初は解析担当者が品質を確認した結果を現場担当者が共有・確認する流れを作り、段階的に操作範囲を広げる方法が現実的です。

まとめ|3D差分と位置情報付き現場記録を一緒に残す

災害前後の3D比較アプリを有効に使うには、災害前データの確認、災害後の安全な計測、座標と高さの統一、地形差分の適切な解析、結果の検証と共有という5つの工程を一続きで考えることが重要です。単に二つの形状を重ねれば被害量が分かるわけではなく、精度の違い、地表面と地物の区別、見えていない場所を明らかにしてこそ、復旧判断に活用しやすい成果になります。

実務では、変化を示す3Dデータと、現場で見た状況を示す写真や施工記録を対応づけることが欠かせません。数値だけでは分からない亀裂や排水状況、応急措置の履歴を位置と時刻で整理しておけば、後から解析結果を確認する際にも役立ちます。災害発生直後の記録だけでなく、応急復旧後や恒久復旧後の記録も同じ考え方で残せば、変化の経緯を追いやすくなります。

こうした現場情報の収集と管理には、LRTK Phoneの活用も選択肢になります。現場写真、位置情報、施工記録を関連づけて整理し、対象地点や記録日時を確認できる形で共有することで、別途実施する3D差分解析の結果と現場の状況を照合しやすくなります。解析そのものの精度は元データと解析手順によって決まりますが、位置の分かる記録を継続して蓄積することは、被害確認から復旧工事の進捗管理までをつなぐ土台になります。今後の災害に備え、まずは重要施設の現況と現場記録を整理するところから始めてみてはいかがでしょうか。

現場を3Dで残して、あとから測る。
実際の画面と動画で使い方を確認できます。

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