養殖場の給餌管は、飼料を水槽へ安定して届けるための重要な設備です。吐出口の位置が設計からずれると、飼料が水槽の一部に偏って落下したり、水流によって想定外の場所へ移動したりする可能性があります。魚が集まりにくい位置へ投入されれば、摂餌状況を確認しにくくなり、残餌の増加や水質管理への負担につながることもあります。
一方、給餌管の施工では、水槽の縁や架台から寸法を追うだけで位置を決めるケースもあります。しかし、水槽が円形で基準線を取りにくい場合や、複数の水槽に同じ配置を繰り返す場合、巻尺だけでは中心方向や高さを安定して再現することが難しくなります。施工途中で架台や配管支持材の位置が変われば、基準としていた場所自体が動くこともあります。
そこで役立つのが、設計された座標へ作業者を誘導する座標ナビです。吐出口の目標点を座標として準備し、現地で現在位置と目標位置との差を確認すれば、複雑な寸法の追い出しを減らしながら配置作業を進められます。ただし、座標ナビの画面に表示された残距離だけを見て施工すると、座標系、高さ、測定位置、配管の変形などを原因とするずれを見落とすおそれがあります。
この記事では、陸上養殖施設などに設置される水槽を想定し、給餌管吐出口を水槽内の計画位置へ配置する手順を解説します。既設施設への増設、複数水槽への展開、架台上からの配管施工、完成後の位置確認までを見据え、座標ナビを実務で安全に使うための確認事項も紹介します。
座標ナビを給餌管吐出口の配置に使う目的
座標ナビは、現地で取得した現在位置と、あらかじめ登録した目標座標との差を表示し、作業者を計画位置へ誘導する方法です。水槽中心、給餌管の支持位置、吐出口中心などを同じ座標基準で管理すれば、水槽の縁から何度も寸法を追わなくても、設計上の位置関係を現地で確認できます。
特に円形水槽では、吐出口の位置を「水槽中心から一定の距離」「基準方向から一定の角度」として設計することがあります。この条件を現地で巻尺だけにより再現するには、正確な水槽中心と基準方向の両方が必要です。水槽の周囲に設備や通路があると、中心を通る基準線を設けることも簡単ではありません。目標点を座標化しておけば、中心からの距離と角度を現地で個別に復元する代わりに、吐出口の目標座標へ直接誘導できます。
矩形水槽でも、座標ナビは有効です。水槽壁からの離れを測る方法では、どの面を基準にしたか、内面と外面のどちらから測ったか、仕上げ材の厚さを含むかといった解釈の違いが生じます。座標として管理すると、吐出口中心などの測定対象を明確にしたうえで、共通の基準から位置を確認できます。
また、座標ナビは新設時の配置だけでなく、施工後の記録にも利用できます。吐出口の完成位置を測定して保存すれば、設計位置との差を確認でき、給餌の偏りが見つかったときに配置との関係を検討できます。配管を交換する際も、過去の完成座標が残っていれば、元の配置を再現するための手掛かりになります。
ただし、座標ナビで目標点に到達したことと、設備として適切に機能することは同じではありません。飼料の落下位置は、吐出口の座標だけでなく、吐出方向、風、水流、飼料の形状、搬送方式や搬送速度、管端の高さなどにも左右されます。座標ナビは配置を支援する手段として使い、最終判断は設備条件と試験給餌の結果を含めて行う必要があります。
手順1 水槽と給餌設備の設計条件を整理する
最初に、水槽と給餌設備に関する設計条件を整理します。ここで条件が曖昧なまま座標を作成すると、座標ナビが正しい点へ誘導していても、施工対象としては誤った位置になる可能性があります。まず、水槽の形状、寸法、中心位置、壁面の厚さ、管理用通路、点検設備、排水設備、水流発生装置などの配置を確認します。
円形水槽の場合は、設計上の中心と現地の施工中心が一致しているかを確認します。水槽外周の複数箇所を測定して中心を求める場合、施工誤差によって完全な円になっていないこともあります。そのため、設計座標上の中心を使うのか、完成した水槽形状から求めた中心を使うのかを、施工目的に応じて決める必要があります。複数の水槽で同じ給餌条件を再現したい場合は、中心の決め方も統一します。
次に、吐出口の配置条件を確認します。水槽中心からの距離だけでなく、吐出口が向く方向、管端の高さ、水面との離れ、通常運転時の水位、給餌時の水流方向まで整理します。水位には運転上の変動があるため、単に「水面から何センチ」とするだけでは施工基準が安定しません。高さを管理する場合は、基準となる計画水位や構造物の標高も併記しておくと、現地で解釈しやすくなります。
給餌管の支持方法も重要です。吐出口だけを目標位置へ合わせても、上流側の支持材に無理な力がかかっていれば、固定後に管が戻ったり、運転時の振動で位置が変化したりします。配管の材質、継手の構造、メーカーが示す施工条件、温度変化による伸縮、飼料搬送時の振動などを考慮し、支持点と吐出口を一体の系として検討します。
さらに、吐出口周辺の保守空間を確認します。給餌管は、詰まりの除去、清掃、摩耗確認、部品交換などの作業が必要になることがあります。位置だけを優先して点検しにくい場所へ配置すると、日常管理の負担が増えます。作業者が安全に接近できるか、取り外した管を移動できるか、工具を使用する空間があるかも施工前に確認します。
この段階では、図面の版や更新履歴もそろえておきます。水槽図、設備配置図、配管図で異なる版を参照すると、水槽中心や設備位置が一致しない場合があります。施工に使用する図面を明確にし、吐出口の座標を作成した根拠が後から追跡できる状態にすることが重要です。
手順2 使用する座標系と高さの基準を統一する
座標ナビを使用する前に、設計データと現地測定で使う座標系を統一します。座標値は数字だけを見ても、その基準を判別できません。同じ場所でも、測地座標、平面直角座標、施設独自のローカル座標など、採用する基準によって値が変わります。異なる座標系の値をそのまま組み合わせると、目標点が水槽外や別の設備付近に表示されることがあります。
屋外施設では、公的な基準に接続した平面座標を使用する方法があります。一方、建屋内や既設設備内では、施設の柱芯、水槽中心、建物通り芯などを基準にしたローカル座標が使われることもあります。どちらを使う場合でも、座標系の名称、原点、軸の向き、単位を明確にします。
ローカル座標では、X軸とY軸の向きを取り違えないことが重要です。図面の上方向を北としているとは限らず、施設の長手方向を任意の軸としている場合もあります。また、測量分野と設計ソフトでは、XとYの扱いや表示順が異なることがあります。座標を入力する前に、既知の二点以上を使って軸方向と距離を確認します。
高さについても共通の基準が必要です。標高を使うのか、施設内の基準床をゼロとするのか、水槽天端を基準とするのかを決めます。GNSSを利用する測位では、表示される高さが楕円体高なのか標高に相当する値なのかなど、使用する機器や設定によって扱いが異なります。設計図の高さ基準と一致していることを確認せずに数値だけを比較すると、平面位置は合っているのに吐出口の高さがずれることがあります。
給餌管の施工では、座標ナビによる平面誘導と、レベル測定や水槽構造からの直接測定を組み合わせる方法もあります。上空視界が確保できる屋外では座標ナビで平面位置を求め、吐出口高さは水槽天端や施設基準高から確認するという分担が考えられます。屋内や屋根の下など、衛星測位が不安定な場所では、屋外で設定した基準点から別の測量方法で位置を移す必要があります。
座標系を変換する場合は、一点だけで変換結果を判断しないようにします。原点の移動だけでなく、回転、尺度、高さの関係が含まれることがあるためです。変換方法に応じて必要数の基準点を用意し、水槽周辺にある複数の確認点で変換後の座標を照合して、対象範囲で許容できる一致が得られているかを確認します。
最終的には、施工に使う座標一覧に、座標系、高さ基準、単位、対象部位、図面版を記載します。現場で座標値だけが切り離されても、どの基準の値かを判断できるようにしておくことが、誤配置の防止につながります。
手順3 吐出口の目標座標を作成する
座標基準を統一したら、吐出口の目標座標を作成します。このとき最初に決めるべきなのは、吐出口のどの部分を目標点とするかです。管の中心線、管端面の中心、ノズル先端、飼料が管から離れる位置など、候補となる点は複数あります。施工者と設計者が別の点を想定すると、同じ図面を見ていても完成位置がずれます。
施工管理では、現地で再現しやすい物理的な点を採用することが基本です。たとえば、管端面中心を目標点とする場合は、測定器の位置から管端面中心へどのように補正するかをあらかじめ決めます。管の外周上面しか測れない場合は、管径や姿勢を考慮して中心位置を求める必要があります。
円形水槽で、水槽中心から一定の半径と方向角によって吐出口を配置する場合は、その条件から平面座標を計算できます。ただし、角度の基準方向と回転方向を統一しなければなりません。北方向を基準にするのか、施設の軸方向を基準にするのか、時計回りで表すのかを明確にします。
複数の水槽へ同じ相対配置を展開する場合は、水槽ごとの中心座標と基準方向を使って目標座標を作成します。水槽中心の座標に同じ差分を加えるだけでは、水槽ごとに向きが異なる施設へ対応できないことがあります。各水槽の回転方向を考慮し、吐出口が水流や点検通路に対して同じ関係になるように配置します。
吐出口の座標と併せて、支持点や配管経路の確認座標も作成すると施工しやすくなります。吐出口だけを一点で管理すると、その点を中心に配管が回転できてしまい、吐出方向を決められません。吐出口より上流側の管中心や支持金具の位置を第二の点として用意すれば、管の方向を座標で確認できます。
目標座標を作成した後は、水槽形状との関係を図面上で確認します。吐出口が水槽の内側にあるか、水槽壁や点検設備と干渉しないか、配管が通路や手すりを横切らないかを確認します。数値入力の桁違い、符号の反転、座標順序の入れ替えがあると、目標点が大きく移動します。水槽中心から目標点までの計算距離を設計条件と比較することで、入力誤りを見つけやすくなります。
現地へ渡す座標データには、水槽番号、吐出口番号、点名、平面座標、高さ、対象部位を関連付けます。「給餌管」とだけ記載すると、複数系統がある現場で選択を誤る可能性があります。点名を規則化し、座標ナビの画面でも対象を識別できるようにします。
手順4 現地基準点と測位環境を確認する
現地作業を始める前に、座標ナビの基準が正しく再現されているかを確認します。座標データが正しくても、測位環境や機器設定に問題があれば、表示される現在位置がずれます。いきなり吐出口の施工を始めず、位置が分かっている確認点で測定結果を照合します。
確認点には、移動や変形のおそれが小さく、水槽施工時の座標と関連付けられている点を使います。仮設物、取り外し可能な架台、舗装上の消えやすい印などは、長期的な基準として適さない場合があります。既設点を使う際も、衝撃、沈下、改修工事などによって動いていないかを確認します。
GNSSを利用する座標ナビでは、衛星からの信号を受信できる環境が必要です。建屋、屋根、金属製の水槽、配管、架台などの近くでは、信号が遮られたり反射したりして、位置が不安定になることがあります。測位状態が良好と表示されていても、周辺環境による影響を完全には判別できない場合があります。
水槽の内側へ測定器を近づけると、壁面や設備によって受信環境が変わることがあります。そのため、確認点で良好だったことだけで判断せず、実際に吐出口を誘導する位置でも測位値の変化を観察します。静止しているのに座標や残距離が動き続ける場合は、その場で位置を確定しません。
補正情報を利用する測位では、通信状態や補正情報の経過時間も確認します。通信が一時的に途切れると、画面表示が継続していても、位置の信頼性が変化する可能性があります。測位状態、補正情報の受信状態、観測の安定性を合わせて判断します。
確認点では、一方向から近づくだけでなく、いったん離れてから再び測定する往復確認が有効です。同じ点で近い結果が再現されるかを見ることで、表示が一時的に合っただけなのか、安定しているのかを確認できます。可能であれば、別の確認点でも座標差を調べ、原点だけでなく方向や尺度の不整合がないことを確かめます。
屋内、水槽の下、屋根の深い位置などで衛星測位が成立しにくい場合は、無理に座標ナビだけで完結させないことが重要です。屋外の基準点から施設内へ座標を移し、現場条件に適した測定方法を併用します。座標ナビの利用範囲を事前に区切ることで、不安定な表示を施工基準として採用するリスクを減らせます。
手順5 座標ナビで吐出口の平面位置を誘導する
測位環境を確認したら、座標ナビに対象となる吐出口の目標点を表示します。最初に、水槽番号と吐出口番号が施工対象と一致しているかを確認します。複数の水槽が規則的に並ぶ施設では、隣の水槽の座標を選択しても、画面上の距離が不自然に見えないことがあります。点名、図面、現物表示を照合してから誘導を始めます。
座標ナビの画面には、目標までの距離や方向が表示されます。ただし、その距離が水平距離なのか、三次元の直線距離なのか、東西方向と南北方向の差を個別に示しているのかは、使用する機器や機能によって異なります。取扱説明や設定を確認して表示の意味を理解したうえで、平面位置を調整します。
作業者が測定器を持って移動する場合、測定している位置と実際の吐出口中心は一致しません。アンテナや測定基準点を吐出口中心へ直接置けないときは、偏心量を管理する必要があります。たとえば、水槽縁の安全な位置で測定し、そこから既知の距離だけ張り出した治具によって吐出口を合わせる方法があります。
偏心用の治具を使う場合は、治具の長さだけでなく方向も確認します。長さが正しくても、目標方向から傾けば吐出口中心は横へずれます。水準器などで姿勢を管理し、治具の取付部に遊びがないことを確かめます。毎回異なる持ち方で合わせると、複数水槽間の配置差が大きくなります。
吐出口の平面位置に近づいたら、一度に固定せず、前後左右の座標差を小さくしていきます。残距離だけを見ると、どの方向へ修正すべきか分かりにくい場合があります。東西方向と南北方向の差、または施設軸方向とそれに直交する方向の差を確認すると、配管をどちらへ動かすべきか判断しやすくなります。
管を動かす際は、吐出口だけでなく上流側の挙動も観察します。配管継手や支持材に弾性があると、手を離した後に位置が戻ることがあります。測定中に作業者が管を押さえ続けていると、一時的には座標が合っていても、固定後の完成位置は変わります。管が自然な状態に戻ったところで再測定します。
また、測定器を管へ取り付ける場合は、取付荷重で細い配管がたわまないようにします。測定中だけ管が下がり、機器を外すと元へ戻ると、高さだけでなく平面位置も変わることがあります。必要に応じて仮支持を設け、完成時に近い荷重状態で位置を確認します。
平面位置が目標に近づいたら、仮固定します。この段階では締結を完了せず、高さと吐出方向を調整できる余裕を残します。仮固定後に再び座標を測定し、支持金具の締付けによって管が引かれていないかを確認します。
手順6 高さと吐出方向を調整して仮固定する
平面位置を合わせた後は、吐出口の高さと方向を調整します。飼料の到達位置は管端の平面座標だけで決まるものではありません。吐出口が高いほど風の影響を受けやすくなる場合があり、低い場合は水位変動や飛沫の影響を受ける可能性があります。管端が水面近くにある場合は、水や湿気の侵入、飼料の付着、清掃性なども考慮します。
高さの確認では、設計上の高さ基準と現地水位を区別します。運転中の水面は、給排水量や設備の状態によって変化することがあります。施工当日の水面だけを基準にすると、通常運転時の離れが設計と一致しない可能性があります。構造物の基準高や計画水位を使って吐出口高さを決め、実際の水面との関係は補足確認として扱います。
座標ナビで高さを確認する場合は、表示値の安定性と高さの種類を確認します。一般に、衛星測位による高さは平面位置より変動しやすい場合があります。施工で求める許容差が小さい場合は、水準測量や構造物からの直接測定を併用し、一つの表示だけで確定しないことが大切です。
次に、吐出方向を合わせます。管端中心が同じ位置にあっても、管軸が異なれば飼料の落下範囲は変わります。水槽中心方向へ向けるのか、水流に対して上流側へ向けるのか、接線方向へ投入するのかは、飼育方法や設備設計によって異なります。設計図に矢印だけが記載されている場合は、その基準方向を現地座標へ置き換えて確認します。
吐出方向は、吐出口中心と上流側の第二点を使って確認できます。二点の座標を結ぶ線を管軸の基準とすれば、目視だけに頼らず方向を管理できます。短い距離で方向を確認すると小さな測定差が角度へ大きく影響するため、可能な範囲で離れた二点を使うと安定します。
管端に曲がり部やノズルがある場合は、配管本体の軸と実際の吐出方向が一致しないことがあります。最終的に飼料が出る部位の姿勢を確認し、回転可能な継手がある場合は位置合わせ後に動かないよう管理します。締付けによってノズルが回る構造では、締付け後の方向を再確認します。
仮固定後は、平面位置、高さ、方向をもう一度測定します。高さを直したことで平面位置が動いたり、方向調整によって管端中心が移動したりするためです。三つの条件を順番に一度ずつ合わせるのではなく、相互の影響を見ながら繰り返し調整します。
許容差は、測定器の表示分解能だけで決めないようにします。設計上必要な配置精度、配管の施工性、飼料の拡散範囲、測位環境、管の変形量を踏まえて設定します。必要以上に小さな数値へ合わせることに時間を使うより、給餌機能に影響する方向や高さを含めて総合的に確認することが重要です。
手順7 試運転・試験給餌後に位置を確定する
座標上の配置が完了しても、すぐに本固定を完了するのではなく、設備の仕様と施設の手順に従って、可能な範囲で運転状態を確認します。給餌管に搬送用の空気や飼料が流れると、停止中には生じなかった振動や反力が発生することがあります。配管が長い場合や支持間隔が広い場合は、運転時に管端が揺れ、落下位置が変化する可能性があります。
給餌方式には、空気搬送、機械搬送、重力落下などの違いがあります。乾式の給餌管へ試験目的で水を流すと、飼料の付着や閉塞、機器の不具合につながるおそれがあるため、設備が水洗浄に対応していることを確認できない限り通水しません。試運転に使用する媒体や手順は、設備メーカーの仕様と施設の運用基準に従います。
試運転前には、水槽内の生体、作業者、周辺設備への影響を考慮し、施設の運用手順に従います。設備の試運転条件と通常運転条件が異なる場合は、その違いも記録します。少量の試験だけで通常運転時の状態を断定せず、搬送量や運転時間による変化を確認できるようにします。
試験給餌では、飼料が水面のどこへ到達するかを観察します。吐出口の直下だけでなく、水流によって移動した後の分布も確認します。水槽中心へ向けたつもりでも、風、送気、水流、吐出速度によって落下位置が偏ることがあります。座標上の位置が設計どおりでも期待した分布にならない場合は、設計条件や運転条件を含めて原因を整理します。
残餌が特定の場所へ集まる場合、吐出口位置だけが原因とは限りません。魚の行動、水流の偏り、飼料量、給餌間隔、粒径、排水位置などが影響します。座標ナビによる測定結果は、配置が計画どおりかを切り分けるための記録として使います。
運転時に管が動いた場合は、支持位置や固定方法を見直します。吐出口を強く拘束するだけでは、別の継手や配管部分へ負担が移る可能性があります。支持材、配管、継手の状態を確認し、設備全体として無理のない固定になるよう調整します。
調整後は、配管を本固定し、再度完成位置を測定します。締結作業によって位置が変わることがあるため、固定前の座標だけを完成記録にしないことが重要です。平面座標、高さ、吐出方向、測定対象部位、測定日時、測位状態を記録します。
最後に、完成した吐出口と水槽番号の対応を現物でも確認します。座標データが正しく保存されていても、記録上の点名を取り違えると、保守や再施工で誤った情報が参照されます。現物表示、写真、図面、座標記録を同じ識別番号で関連付けておくと、後工程で活用しやすくなります。
座標ナビの残距離を誤読しないための注意点
座標ナビの残距離が小さくなっただけで、吐出口の配置が完了したと判断しないことが重要です。残距離の表示には、水平距離、三次元距離、座標軸ごとの差など複数の考え方があります。平面上では一致していても、高さが大きく異なれば三次元距離は残ります。反対に、水平距離だけを表示している場合は、高さがずれていても目標到達と見えることがあります。
方向表示にも注意が必要です。作業者の移動方向を基準に矢印を表示する方式では、立ち止まっていると方位が安定しにくいことがあります。画面の矢印だけを見て細かな調整を繰り返すと、目標点の周囲を行き来する可能性があります。残距離が小さくなった段階では、座標軸ごとの差や現地の基準方向も使って位置を追い込みます。
測定位置と吐出口中心の違いも、代表的な誤読要因です。測定器のアンテナ位置が目標座標に一致していても、アンテナを取り付けた治具の先にある吐出口が同じ座標とは限りません。アンテナ高、水平偏心、取付方向を正しく反映する必要があります。
測位値が変動していると、瞬間的に残距離がゼロに近づくことがあります。その瞬間に印を付けても、安定時の位置は目標から外れている可能性があります。一定時間静止して表示の変動幅を確認し、値が落ち着いてから位置を決めます。いったん固定した後に離れて再測定し、同じ結果が再現されることも確認します。
水槽周辺では、金属部材、水面、建屋などの周辺環境が測位に影響する場合があります。特定の方向から水槽へ近づいたときだけ値が変わる場合は、周辺環境の影響を疑います。測位状態の表示だけに依存せず、既知点確認、往復測定、別手段による照合を組み合わせることが大切です。
座標ナビは、作業者を目標付近へ効率よく誘導するうえで有効ですが、設計座標そのものの正しさを保証するものではありません。誤った点を選択した場合でも、座標ナビは選択された点を目標として案内します。水槽番号、吐出口番号、図面版、座標系を作業開始前に確認する工程を省かないようにします。
複数水槽で配置品質をそろえる記録方法
複数の水槽を持つ養殖場では、一つの吐出口を正確に配置するだけでなく、全体の配置品質をそろえることが重要です。施工者ごとに測定方法が異なると、座標値が近くても、測定対象部位や偏心補正の違いによって実際の位置に差が生じます。
まず、測定対象を統一します。管端面中心を記録するのか、ノズル先端を記録するのかを決め、すべての水槽で同じ方法を使います。測定器を直接当てられない場合は、共通の治具と取付方向を使用します。治具の寸法は使用前に確認し、変形や緩みがあれば交換または調整します。
次に、点名の付け方を統一します。施設区画、水槽番号、給餌系統、吐出口番号が分かる点名にすると、後から検索しやすくなります。似た名称を使う場合は、数字や文字の読み違いにも注意します。現物の表示と座標データの名称を一致させることが重要です。
完成記録には、設計座標と測定座標の両方を残します。差分だけでは、後から座標基準や入力内容を検証しにくくなります。平面差、高さ差、測定日時、測定者、測位状態、使用した高さ基準、図面版などを関連付けます。
吐出方向は一点の座標だけでは表しにくいため、管軸上の二点を測定する方法や、基準方向に対する角度として記録する方法があります。写真を併用する場合は、撮影位置と方向が分かるようにし、写真だけで寸法を判断しないようにします。
試験給餌の結果も、吐出口の完成座標と関連付けると有効です。飼料の落下範囲、運転時の振れ、水流との関係などを記録すれば、複数水槽の差を検討できます。配置に問題がないのに給餌分布が異なる場合は、水流や設備運転条件など、別の要因へ調査を進めやすくなります。
定期点検では、完成時の座標を基準として吐出口の移動を確認できます。ただし、測定方法や座標基準が変わると単純比較できません。初回施工時の測定条件を残し、同じ対象部位と基準で再測定します。配管交換や支持材の改修を行った場合は、変更前後の座標と作業内容を記録します。
このように、座標ナビを単発の位置出しに使うだけでなく、設計、施工、試運転、維持管理をつなぐ記録として活用すると、給餌設備の状態を継続的に把握しやすくなります。
まとめ
座標ナビで養殖場の給餌管吐出口を配置するには、目標座標へ近づくだけでなく、座標系、高さ基準、測定対象部位、吐出方向、配管の支持状態を一体として確認する必要があります。
最初に水槽と給餌設備の設計条件を整理し、使用する座標系と高さ基準を統一します。次に、管端面中心など現地で再現可能な点を吐出口の目標座標として作成し、現地の確認点で座標ナビの基準と測位環境を確かめます。
施工時は、測定器の位置と吐出口中心の偏心を補正しながら平面位置を合わせ、高さと吐出方向を調整して仮固定します。その後、設備の仕様に沿った試運転や試験給餌によって運転時の振動、飼料の落下範囲、水流との関係を確認し、本固定後の座標を完成記録として保存します。
座標ナビの残距離は便利な指標ですが、その数値だけでは施工品質を判断できません。表示される距離の種類、測位値の変動、アンテナの偏心、目標点の選択、座標系の一致を確認し、必要に応じて高さ測定や直接寸法との照合を行うことが大切です。
複数水槽への配置を効率化し、設計座標への誘導から完成位置の記録まで現場で行いたい場合は、座標ナビを活用できるLRTK Phoneの導入を検討してみてください。