CADで図面を修正したとき、図形の形状は変わったのに寸法値や寸法補助線が更新されず、変更前の表示が残ってしまうことがあります。変更箇所が少なければ発見しやすいものの、寸法が多い図面では見落としにつながり、製作、施工、数量確認、検査などの後工程へ影響するおそれがあります。
こうした不整合を減らすために利用されるのが、図形と寸法を関連付け、形状の変更に合わせて寸法を更新する仕組みです。ただし、寸法の追従は一つの設定だけで保証されるものではありません。寸法の関連付け、参照点の選び方、表示設定、拘束機能、更新や再関連付けの確認を組み合わせて管理する必要があります。
CADソフトによって機能名、対応する寸法種類、設定単位、操作手順は異なります。「連想寸法」「関連寸法」「寸法拘束」「パラメトリック寸法」などの名称が使われますが、図形を変更した結果として寸法表示が更新される機能と、寸法値を変更して図形を変形させる機能は同じではありません。利用中のCADで、何が更新され、どの操作で関連が失われるのかを確認することが重要です。
この記事では、CADの寸法自動調整を安定して使うための5つの設定と、寸法が追従しないときの確認方法を実務向けに解説します。
CADの寸法自動調整でできること
CADにおける寸法の自動調整とは、図形の端点、中心、交点、円や円弧などと寸法を関連付け、関連先の形状や位置を変更したときに、寸法の計測値や配置を更新する仕組みを指します。たとえば、長方形の幅を変更した際に、その幅を示す寸法値と寸法補助線が新しい形状へ追従すれば、寸法と図形の関連付けが機能していると判断できます。
自動調整の対象は、利用するCADソフト、製品構成、バージョン、寸法の種類によって異なります。長さ、水平、垂直、平行、角度、半径、直径、円弧長などの寸法が関連付けに対応する例があります。一方、座標寸法、引出線、外部参照内の図形に付けた寸法、特殊な注記オブジェクトなどは、作成方法や製品仕様によって関連付けの可否や更新方法が変わります。
ここで区別したいのが、図形変更に伴う寸法表示の更新と、寸法値による図形の制御です。通常の関連寸法は、図形を編集した結果を表示する注記として働きます。これに対して寸法拘束やパラメトリック機能は、設定した距離、長さ、角度、半径などを条件として図形を制御します。
通常寸法の文字列を手動で書き換えても、図形が同じ値へ変形するとは限りません。計測値を固定文字へ置き換える機能を使うと、図形が変更されても表示上は古い数値が残ることがあります。図形を制御したい場合は、単なる文字編集ではなく、対応する拘束機能や図形編集機能を使う必要があります。
寸法自動調整の目的は、修正操作を省くことだけではありません。図形と寸法表示の整合性を保ち、変更漏れや転記ミスを減らすことが主な目的です。設計変更が多い案件では、寸法を一つずつ手作業で修正する運用よりも、図形と関連付いた寸法を使う方が変更後の確認対象を整理しやすくなります。
ただし、関連寸法であっても、どのような編集にも必ず追従するわけではありません。参照先の図形を削除して描き直した場合、図形だけを別図面へ移した場合、分解や変換によってオブジェクト種類が変わった場合などは、関連が失われることがあります。ブロックや外部参照を含む図面では、内部要素の置換によって参照先を特定できなくなる場合もあります。
そのため、関連付けを有効にするだけでなく、関連を維持しやすい編集方法を選び、変更後に関連状態を確認することが必要です。追従機能は確認作業を補助するものであり、設計意図や寸法基準の妥当性まで自動で判断するものではありません。
設定1 寸法と図形の関連付けを有効にする
最初に確認したいのは、寸法と図形を関連付けて作成する設定です。関連付けが無効な状態で作成された寸法は、その時点の計測結果を持つ独立した寸法オブジェクトとなり、後から図形を編集しても自動更新されない場合があります。
CADソフトによっては、新しく作成する寸法の関連付けを環境設定、図面設定、システム変数などで切り替えられます。ただし、設定の保存先がアプリケーション全体なのか、図面ファイルなのか、テンプレートなのかは製品によって異なります。新規図面では追従するのに、受領図面や過去図面では追従しない場合は、寸法の作成時設定と既存寸法の状態を分けて確認します。
全体設定を有効に変更しても、すでに作成済みの非関連寸法が自動的に図形へ結び直されるとは限りません。多くのCADでは、新規作成時の設定と既存寸法の関連状態は別に扱われます。既存寸法に再関連付け機能が用意されている場合は、寸法補助線の起点ごとに正しい図形や参照点を指定します。
関連付けを確認するには、検証用の単純な図形と寸法を作成し、図形の端点や半径を少し変更します。寸法値だけでなく、寸法補助線の起点や寸法線の向きも意図どおり変化するかを確認します。片側だけが追従する場合は、寸法が部分的にしか関連付いていない可能性があります。
関連寸法は、図形のどの要素を参照しているかという情報を持ちます。一本の線分の両端を参照する寸法と、別々の図形の端点間を参照する寸法では、編集時の挙動が異なります。両方の参照点を同じ距離だけ移動すれば相対距離は変わらないため、寸法値が変化しないこともあります。
また、画面上で接して見える図形が、寸法の実際の参照先とは限りません。重複線、ハッチング境界、補助線、ブロック内要素、外部参照内要素などが重なる場所では、意図しない図形を参照していることがあります。後からその図形を削除、非表示、差し替えすると、寸法の関連が失われる原因になります。
関連が失われた寸法を警告表示する機能を備えたCADもありますが、警告の有無や表示方法は製品と設定によって異なります。警告が表示されないことだけを根拠に、すべての寸法が正常だと判断するのは避けます。大きな変更後は、関連状態の確認機能、寸法プロパティ、実測値との照合を組み合わせます。
再関連付けを行うときは、見た目が近い位置を任意に指定せず、端点、交点、中心などを正確に取得します。関連先を修復できても、誤った図形へ結び付ければ次回の変更で不整合が再発します。再関連付け後には小さな編集を試し、寸法値と補助線の両方が追従することを確認します。
設定2 寸法の基準点を図形上に正しく取得する
関連付けを有効にしていても、寸法作成時の基準点が正しくなければ期待どおりには追従しません。端点、交点、中点、中心、接点、垂足など、図形が持つ幾何学的な点を明確に指定することが重要です。
画面上では線の端に見える場所でも、拡大すると寸法補助線の起点がわずかに離れていることがあります。任意点を指定した場合や、正確な点取得機能が働いていない場合は、寸法が図形の近くに置かれているだけで、関連が成立していない可能性があります。
端点を指定するときは、対象線分の端点として認識されたことを確認してから決定します。交点を使う場合も、二つの図形が実際に交差しているかを確認します。平面表示では重なって見えても、高さ方向の座標や作業平面が異なるため、三次元上では交点を持たない場合があります。
半径寸法や直径寸法では、対応する円または円弧そのものを選択する方法が一般的です。円の近くに置いた補助点や中心線だけを基準にすると、円の半径を変更した際に意図した更新が行われないことがあります。円弧を線分群へ変換した場合など、参照対象のオブジェクト種類が変われば、元の関連は維持されない可能性があります。
図形が密集している場所では、参照候補を切り替える機能や選択循環に相当する機能が利用できる場合があります。不要な画層を一時的に非表示にする、対象部分を拡大する、選択候補を確認するといった準備も、誤選択の防止に役立ちます。
寸法の基準点は、単に正確な座標を選べばよいわけではありません。設計上、何を基準として示す寸法なのかを明確にする必要があります。仕上げ面間を示す寸法を中心線から取得すれば、壁厚や仕上げ厚の変更時に、表示値が本来示すべき距離と一致しなくなる可能性があります。
反対に、通り芯間寸法を仕上げ面から取得すると、仕上げ厚の変更によって本来固定したい基準寸法まで変化します。機能上は正しく追従していても、参照基準が設計意図と違えば図面として適切とはいえません。
寸法を作成した直後に、対象図形を一時的に動かして追従を確認し、操作を元に戻す方法は有効です。大量に寸法を配置してから問題へ気づくよりも、最初の数個で関連状態を確認した方が修正範囲を小さくできます。新しいテンプレートや他社作成の図面を使う場合は、特に早い段階で試験します。
複雑な輪郭では、将来の形状変更で消えにくい基準を選びます。面取りや丸み付けによって削除される角を参照すると、編集後に寸法が関連先を失うことがあります。必要に応じて中心線、通り芯、基準線、基準点などを用意し、設計上の基準から寸法を取得すると管理しやすくなります。
設定3 寸法スタイルと注釈尺度を統一する
寸法スタイルや注釈尺度は、図形との関連付けそのものを成立させる設定とは別です。ただし、文字高さ、矢印、寸法線間隔、単位表示、尺度別の配置が不統一だと、寸法が更新されていても重なりや表示崩れが起こり、追従不良のように見えることがあります。
寸法スタイルは、文字の大きさ、矢印の形状、寸法線から文字までの間隔、小数点以下の桁数、単位換算、ゼロの表示、寸法補助線の延長量などをまとめて管理する仕組みです。設定項目や名称はCADソフトによって異なりますが、同じ図面内で複数のスタイルが無秩序に混在すると、同種の寸法でも表示結果が変わります。
実務では、用途ごとに必要な寸法スタイルを整理し、検証済みのテンプレートへ登録すると管理しやすくなります。似た名前のスタイルを増やしすぎると、担当者ごとに異なる定義を選択しやすくなり、図面全体の統一性を損ないます。
図形変更への追従を確認するときは、寸法文字を手動移動した後の規則にも注意します。文字位置を保持する、寸法線上へ戻す、引出線を追加するなど、更新時の動きは寸法スタイルや個別プロパティによって変わる場合があります。値は更新されていても文字が図形へ重なった場合は、関連切れと決めつけず、文字配置の設定を確認します。
注釈尺度に対応するCADでは、モデル上の図形寸法と、印刷時に見せたい注釈の大きさを分けて管理できます。複数尺度を持つ注釈オブジェクトでは、尺度ごとに表示位置を個別調整できる場合があります。そのため、一つの尺度で位置を直しても、別の尺度では以前の配置が残ることがあります。
図形を変更した後は、実際に使用する代表的な尺度やレイアウトで寸法表示を確認します。平面図用の尺度では問題がなくても、詳細図用の尺度では文字や寸法線が重なる場合があります。尺度別位置を同期または初期化する機能がある場合は、必要性を確認したうえで利用します。
寸法を別図面へコピーするときは、貼り付け先に同名の寸法スタイルが存在するかだけでなく、その定義内容も確認します。同名でも図面ごとに設定が異なる場合があり、貼り付け後に文字高さ、矢印、精度、単位表示などが変化することがあります。
この表示変化は、寸法の関連付けが切れたことを直接示すものではありません。関連状態、実測値、スタイル定義を分けて調べることで、原因を誤認しにくくなります。
寸法値の文字上書きにも注意が必要です。計測値を別の固定文字へ置き換えている場合、図形が変更され内部の計測値が変わっても、表示文字が変化しないことがあります。特別な理由がなければ、計測値そのものを固定文字へ置き換えず、前置き文字や後置き文字などの補足機能を利用した方が整合性を保ちやすくなります。
設定4 幾何拘束と寸法拘束を使い分ける
図形変更時の形状崩れを防ぎたい場合は、幾何拘束と寸法拘束の活用を検討します。ただし、拘束機能の有無や作成・編集の可否は、CADソフトや製品構成によって異なります。通常寸法の関連付けと拘束寸法は役割が異なるため、目的に応じて使い分けます。
幾何拘束は、水平、垂直、平行、直交、接線、一致、同心、対称など、図形同士の幾何学的な関係を維持するために使われます。たとえば、長方形の辺に水平と垂直の条件を設定すれば、頂点の編集によって形状が不用意に斜めへ崩れることを防ぎやすくなります。
寸法拘束は、長さ、距離、角度、半径、直径などの数値を形状条件として設定する機能です。拘束値を変更すると、条件を満たすように図形が変形します。通常の関連寸法が編集結果を表示するのに対し、寸法拘束は図形を制御する入力条件として働きます。
部材幅、穴の中心間隔、円の直径など、数値を基準に繰り返し変更する形状では、寸法拘束が有効な場合があります。一方、完成形状の計測結果を図面へ示すだけなら、通常の関連寸法で足りることもあります。自動追従を目的とするだけで、すべての図面へ拘束を導入する必要はありません。
拘束を増やしすぎると、図形が意図した方向へ動かなくなったり、条件同士の矛盾が発生したりします。同じ距離を複数の条件で固定した場合や、水平条件と両立しない角度条件を追加した場合などは、過剰拘束や競合として扱われることがあります。
拘束は多いほど安全なのではなく、設計上維持すべき関係を選んで設定することが重要です。補助的な位置関係まで細かく固定すると、後から編集する担当者が変更意図を把握しにくくなります。
拘束を使う場合は、原点、通り芯、中心線、基準面など、動かさない基準を明確にします。図形同士が相対関係だけで結ばれていると、拘束値の変更時に図形全体が予期しない方向へ移動することがあります。
通常寸法と拘束寸法を同じ場所へ重ねると、どちらが形状を制御しているのか分かりにくくなります。表示方法、画層、色、命名規則などを利用し、設計用の拘束と成果図の注記を区別すると誤操作を減らせます。
既存図面へ途中から拘束を追加するときは、図形の精度を先に確認します。わずかに傾いた線、閉じていない輪郭、接続しているように見えて離れている端点へ拘束を追加すると、条件を満たすために図形が移動することがあります。複製データで挙動を検証してから本番図面へ適用します。
拘束の効果が大きいのは、繰り返し寸法変更する部品、定型形状、設計ルールが明確な範囲です。通常寸法の関連付けを基本とし、図形を数値で制御する必要がある場所へ限定して拘束を使うと、編集性と安全性を両立しやすくなります。
設定5 再計算と更新処理を確実に実行する
関連寸法は、通常は参照している図形の変更に合わせて更新されます。図形を編集した直後に寸法が変わらない場合は、最初から再計算だけに頼るのではなく、関連付けの有無、文字上書き、参照先の削除、対象オブジェクトの置換などを確認します。
画面上に変更前の形が残っている場合は、再表示や再生成に相当する処理で表示が正常になることがあります。ただし、一般的な再表示や再生成は、画面表示やオブジェクトの見え方を更新する処理であり、失われた寸法の関連付けを自動修復するものとは限りません。
関連が切れている場合は、対応する再関連付け機能を使って参照先を指定し直します。再表示で数値が変わらないからといって、繰り返し再生成を行うだけでは解決しないことがあります。寸法の状態表示やプロパティを確認し、表示問題と関連問題を分けて判断します。
外部参照内の図形に関連付けた寸法は、参照元の変更後に外部参照を再読み込みし、必要に応じて製品固有の寸法更新処理を実行します。外部参照の図形が削除されて別オブジェクトとして描き直された場合は、見た目が同じでも元の関連先が存在しないため、再関連付けが必要になることがあります。
図面を開いた直後に寸法表示が乱れている場合も、読み込み完了後に再表示し、関連状態を確認します。文字、線種、外部参照、注釈尺度などの読み込みや表示更新が影響している可能性はありますが、表示が直らない場合は参照先と寸法プロパティを調べます。
大規模図面では、再表示や再生成に時間がかかることがあります。作業効率を考慮して更新のタイミングを決める場合でも、保存、印刷、書き出し、納品の前には、外部参照の状態と主要寸法の整合性を確認します。
更新後は寸法値だけでなく、寸法補助線の接続先も確認します。数値が正しく見えていても、意図しない端点や別の重複線を参照している場合があります。形状を大きく変更した箇所や、複数の候補が重なる箇所は拡大して確認します。
ファイル変換や旧形式への保存では、関連寸法、注釈尺度、拘束などの情報が同じ状態で保持されないことがあります。変換後のファイルを再編集する予定がある場合は、変換先形式と受け渡し先CADの対応状況を確認し、代表的な寸法で追従試験を行います。
印刷用データを作成する直前には、外部参照の更新、関連切れの確認、代表寸法の再計測、使用尺度での表示確認を一連の作業として実施します。画面の見た目だけで判断せず、CADの計測機能で主要寸法を測り直し、表示値と図形寸法が一致していることを確認します。
寸法が図形変更に追従しない主な原因
寸法が追従しない代表的な原因は、寸法作成時に図形との関連付けが成立していないことです。関連付け設定が無効だった場合だけでなく、図形上の端点ではなく近くの任意点を指定した場合も、意図した関連が作られないことがあります。
関連付け先の図形を削除し、新しい図形へ置き換えた場合も注意が必要です。画面上では同じ位置、同じ形状に見えても、CAD内部では別のオブジェクトとして扱われるため、元の寸法が自動的に新しい図形へ関連し直されるとは限りません。
形状変更のたびに削除して描き直す操作を繰り返すと、寸法だけでなく拘束、ハッチング、引出線などの関連情報も失いやすくなります。端点移動、伸縮、頂点編集、半径変更、プロパティ編集など、元のオブジェクトを維持できる方法がある場合は、そちらを優先します。
図形の分解や結合も関連付けへ影響します。一本のポリラインを線分へ分解した場合や、複数の線分を一つのオブジェクトへ結合した場合は、元の要素や頂点の識別情報が変わり、寸法が非関連または部分関連になる可能性があります。
ブロック内の図形を参照する寸法では、ブロック定義の編集、再定義、置換に注意します。同じ名称のブロックでも、内部の図形構成が変われば、寸法が参照していた要素を特定できなくなる場合があります。
複写や貼り付けでも関連状態が変わることがあります。図形と寸法を一緒に複写した場合に関連が維持される製品でも、図形だけまたは寸法だけを別々に複写すると関係が切れることがあります。別形式を経由した貼り付けでは、関連情報が保持されない可能性もあります。
外部参照内の図形へ寸法を付ける運用では、参照元の編集方法と更新手順を決めておきます。参照元で図形を削除して描き直すと、同じ位置に線があっても元の参照対象は失われます。外部参照の再読み込み後に、警告表示と主要寸法を確認します。
寸法値の文字上書きが原因で、追従していないように見える場合もあります。内部の計測値が更新されていても、固定文字が表示されていれば画面上の数値は変わりません。寸法プロパティを確認し、計測値を置き換える上書きが設定されていないか調べます。
寸法補助線の起点を手動移動したことで、参照先自体が変わることもあります。文字位置の調整と、寸法補助線の起点変更は別の操作です。寸法を整える際は、どのグリップや編集点を動かしているかを確認します。
三次元図形では、作業平面や座標系、高さ方向の座標も確認します。平面表示では同じ位置に見えても、異なる平面上の図形を参照している場合があります。二次元図として扱うデータでも、不要な高さが残っていないかを確認すると誤選択を減らせます。
図形の変更方法別に確認したいポイント
線分の長さを変更する場合は、どちらの端点を動かしたかによって寸法の動きが変わります。片側の端点を固定したまま反対側を移動すれば、寸法値と対応する補助線が追従します。線分全体を移動した場合は長さが変わらないため、寸法値が同じままでも寸法の位置が移動することがあります。
長方形や多角形の頂点を編集する場合は、隣接辺との接続が保たれているか確認します。寸法が移動した端点へ正しく追従していても、輪郭が開いたり辺が斜めになったりすれば、図形自体が設計意図から外れます。必要に応じて幾何拘束や正確な点編集を利用します。
円の直径や半径を変更する場合は、円そのものの半径を編集したのか、図形全体を尺度変更したのかを区別します。均一尺度で形状が円のまま維持されれば直径や半径寸法は更新対象になりますが、変換後に楕円など別のオブジェクトになれば、元の寸法種類が成立しなくなる場合があります。
円弧の始点や終点を変更した場合は、半径が同じでも円弧長や中心角が変わります。半径寸法、角度寸法、円弧長寸法は参照する量が異なるため、必要な寸法ごとに更新結果を確認します。
面取りや丸み付けを追加すると、元の角を構成していた線の端部が変わります。角の交点を基準にした寸法は、仮想交点として扱われる場合と、参照を失う場合があります。処理結果はCADソフトや寸法の作成方法によって異なるため、変更後に補助線の接続先を拡大して確認します。
図形をトリムして短くする操作では、元のオブジェクトが維持される場合と、内部的な要素構成が変わる場合があります。製品や図形種類によって挙動が異なるため、トリム後に寸法値だけでなく関連状態も確認します。
図形を延長する操作では、延長側の端点を参照する寸法が更新されるか確認します。複数の図形が一点に集まる場所や、交点候補が増える場所では、別の図形を参照していないか注意します。
図形を回転した場合、図形の実長を示す平行寸法と、座標軸に対する水平寸法または垂直寸法では、表示する距離が異なります。回転後も辺の長さを示したいのか、水平または垂直の投影距離を示したいのかを決め、目的に合う寸法種類を使います。
拡大縮小では、図形そのものの大きさを変える操作と、印刷時の見た目を変える操作を区別します。図形を尺度変更すれば実寸が変わるため、関連寸法の値も変化します。印刷尺度だけを変更したい場合は、図形を拡大縮小せず、レイアウトや注釈尺度など対応する表示機能で調整します。
寸法自動調整を実務で安全に運用する方法
寸法自動調整を安定して運用するには、個人の操作だけでなく、図面作成ルールを統一することが重要です。関連付けを有効にする担当者と、非関連寸法を使う担当者が混在すると、同じ図面内に追従する寸法と追従しない寸法が共存します。
まず、使用する図面テンプレートで、寸法の関連付け、寸法スタイル、注釈尺度、点取得、画層などの基本設定を整理します。設定の保存単位はCADによって異なるため、テンプレートだけでなく、利用者側の環境設定が影響しないかも確認します。
次に、寸法作成時の基準を決めます。構造中心、仕上げ面、外形、通り芯、穴中心など、対象ごとに何を参照するかを明確にします。同じ部位に対して担当者ごとに異なる基準を使うと、図形変更後の寸法値に差が生じます。
設計変更では、元の図形を可能な範囲で維持する編集方法を優先します。削除して描き直す方法は分かりやすい一方で、寸法、拘束、ハッチング、引出線などの関連を失いやすくなります。端点編集やプロパティ変更で対応できる場合は、既存オブジェクトを直接変更します。
大きな変更前には図面を複製し、変更前後を比較できる状態にします。寸法の追従結果に問題があった場合、元の参照先や数値を確認できます。ファイル名、更新履歴、正式版の扱いを統一し、古い図面へ誤って戻らないようにします。
変更後の確認では、寸法値だけでなく、寸法補助線の起点、文字位置、尺度別表示、関連切れの警告を確認します。値が正しく見えても、別の図形を参照していれば、次回の変更で不整合が表面化する可能性があります。
代表的な箇所は、CADの計測機能で図形を測り直し、寸法表示と一致することを確認します。すべての寸法を手作業で測り直す必要はありませんが、変更範囲の外周、主要な中心間距離、全長、直径、角度など、後工程へ影響する寸法は重点的に検証します。
別形式へ変換する場合は、変換前後で寸法の関連状態が維持されるか確認します。閲覧専用データでは関連情報を必要としない場合もありますが、再編集する可能性があるデータでは、関連寸法や拘束を保持できる形式と受け渡し方法を選びます。
受領図面を編集するときは、自社設定を一括適用する前に、元図面の寸法状態を確認します。寸法スタイルの置換、データ整理、オブジェクト変換などによって、表示や関連情報が変わる可能性があります。複製データで処理結果を確認してから本番図面へ適用します。
寸法自動調整を過信しないことも重要です。自動追従は確認を不要にする機能ではなく、図形と寸法の整合性を保ちやすくする支援機能です。形状変更に合わせて数値が更新されても、その値が設計条件を満たすか、参照基準が適切かまでは自動判断されません。
最終確認では、図形、寸法、注記、数量、参照データの整合性を総合的に確認します。特に、寸法値の上書き、関連切れ、重複線、閉じていない輪郭、不要な高さを持つ線などは、見た目だけでは判別しにくい問題です。
運用ルールには、図形変更後の関連状態確認、必要な再関連付け、主要寸法の再計測、尺度別表示確認、印刷前確認まで含めます。担当者が変わっても同じ手順で検証できるようにすることで、寸法自動調整の効果を安定して得られます。
まとめ
CADの寸法を図形変更へ追従させるには、寸法と図形の関連付けを有効にすることが基本です。そのうえで、基準点を正しく取得し、寸法スタイルと注釈尺度を整理し、必要な範囲で幾何拘束や寸法拘束を使い、変更後の関連状態と表示を確認します。
特に重要なのは、寸法がどの図形のどの点を参照しているかを意識することです。画面上で寸法補助線が図形へ接して見えても、任意点を参照していたり、別の重複線へ関連付いていたりする場合があります。寸法作成直後に簡単な変更試験を行えば、早い段階で設定ミスを発見しやすくなります。
また、図形を削除して描き直す操作、分解や結合、別図面への貼り付け、ブロックや外部参照の置換は、関連付けが失われる原因になります。設計変更では既存図形を維持する編集方法を優先し、大きな変更後には警告表示、関連状態、主要寸法を確認します。
再表示や再生成は表示上の不整合を直す場合がありますが、失われた関連付けを必ず修復する処理ではありません。追従しない寸法は、関連状態、文字上書き、参照先の有無を確認し、必要に応じて再関連付けします。
寸法自動調整は、設計変更のたびに寸法を手作業で修正する負担を減らし、図形と表示値の不一致を防ぐために役立ちます。ただし、自動更新された数値が設計意図に合っているかを判断するのは実務担当者です。機能と確認手順を組み合わせ、変更に強い図面管理を行いましょう。
CAD図面の寸法情報を現場で確認し、測位結果や記録データと結び付けて活用する方法を検討する際は、LRTK Phoneの情報もあわせて確認してみてください。