CADで図面を編集していると、画面には線が表示されているのに、クリックしても選択できないことがあります。選択できなければ、移動、複写、削除、長さの確認、画層の変更など、基本的な編集操作を進められません。作業を急いでいるときほど何度もクリックしてしまいがちですが、線が選択できない原因は、クリック位置のずれだけとは限りません。
代表的な原因には、画層のロック、外部参照、編集空間の違い、図形の重なり、選択設定、ブロック化、図面データの不具合などがあります。画面上では同じ一本の線に見えても、図面内部での管理状態によって、適切な対処方法は異なります。
また、CADソフトによって画面構成や機能名は異なります。特定のコマンド名を探すよりも、「その線がどこに保存され、どのような単位で管理され、現在どの編集空間を操作しているか」を順番に確認することが重要です。原因を切り分けずに設定を変更すると、別の図形まで編集してしまったり、表示状態を元に戻せなくなったりする可能性があります。
この記事では、CADの線が選択できないときに確認したい7つの原因と、それぞれの見分け方、対処時の注意点を解説します。実務で起こりやすい状況を想定し、できるだけ図面を壊さずに確認を進める手順も紹介します。
CADの線が選択できない状態を切り分ける前提
線が選択できないと感じたときは、最初に「本当に線そのものが選択できないのか」を確認します。CAD画面には、線分のほかにもポリライン、円弧、寸法線、引出線、ハッチングの境界、画像の輪郭、ビューポートの枠、外部参照内の図形など、線のように見える要素が多数あります。
見た目が直線であっても、独立した線分として存在しているとは限りません。たとえば、一本の線に見える部分が、大きなポリラインの一辺である場合があります。ブロック内に含まれている線であれば、通常のクリックではブロック全体が選択されます。外部参照内の線であれば、参照している図面側から直接編集できない設定になっていることもあります。
まず、選択しようとしている位置を拡大し、線の中央付近をクリックします。交点や端点付近では、複数の図形が密集しているため、意図しない図形が優先されることがあります。表示倍率を上げてから、端点ではない部分を選択すると、単純なクリック位置の問題かどうかを判断しやすくなります。
次に、ほかの線を選択できるか確認します。図面内のすべての図形を選択できない場合は、個別の線ではなく、CADソフト全体の選択設定や一時的な動作不良が疑われます。一部の線だけ選択できない場合は、画層、外部参照、ブロック、編集空間など、その線固有の管理状態を調べます。
選択時に何らかの枠やまとまりが反応する場合も重要な手掛かりです。目的の線ではなく周囲全体が選択されるなら、ブロックやグループの可能性があります。ビューポートの枠だけが選択されるなら、現在操作している空間が異なる可能性があります。何も反応しない場合は、ロックされた画層、選択対象外の設定、表示の不具合などを確認します。
原因調査を始める前には、可能であれば元の図面を複製して保存しておくと安心です。選択設定や参照状態を変更すると、図面全体の表示や編集範囲に影響する場合があります。特に複数人で共有している図面では、調査用の複製データを使うことで、意図しない変更を防ぎやすくなります。
原因1 線が含まれる画層がロックされている
CADの線が選択できないときに、最初に確認したいのが画層の状態です。図面では、線種や用途ごとに画層を分け、誤編集を防ぐために一部の画層をロックすることがあります。ロックされた画層は画面に表示されていても、編集操作が制限されます。
ロック中の画層にある線をクリックしたときの動作は、CADソフトや設定によって異なります。選択はできても移動や削除ができない場合もあれば、選択時の表示が分かりにくくなったり、通常の図形とは異なる反応になったりする場合もあります。そのため、「選択できない」と感じていても、実際には選択後の編集だけが制限されている可能性があります。
画層管理の画面を開き、対象の線が属していると思われる画層のロック状態を確認します。線の画層が分からないときは、近くにある同じ色や同じ線種の図形を選択し、プロパティ情報から画層名を調べる方法があります。ただし、近くにある図形が必ず同じ画層とは限らないため、色だけで判断しないことが大切です。
ロックを解除する場合は、対象の画層が何のために保護されているかを確認します。基準線、座標基準、既存構造物、確定済みの設計線などは、誤操作を防ぐ目的で意図的にロックされていることがあります。理由を確認せずに解除すると、編集してはいけない図形を動かしてしまうおそれがあります。
一時的に編集する必要がある場合は、対象画層だけを解除し、作業後に再びロックします。すべての画層を一括で解除すると、選択範囲に含まれた保護対象まで変更される可能性があります。特に窓選択や交差選択を使う作業では、画面外や細部の図形を意図せず選択することがあるため注意が必要です。
画層がロックされていない場合は、非表示、フリーズ、印刷対象外など、ほかの画層設定も確認します。表示されている線が現在の図面ではなく、別の参照データから表示されている可能性もあります。画層名や色が似ていても、保存元が異なれば直接編集できないことがあります。
また、ビューポートごとに画層の表示状態を変えている図面では、モデル空間での状態とレイアウト上での状態が一致しない場合があります。あるレイアウトでは表示されているのに、別の空間では見つからないときは、画層そのもののロックだけでなく、ビューポート単位の表示設定も確認します。
原因2 線が外部参照や添付図面に含まれている
画面上に表示されている線が、現在開いている図面に直接保存されているとは限りません。建築、土木、設備、製造などの実務では、複数の図面を重ねて確認するため、別ファイルの内容を外部参照として読み込むことがあります。
外部参照内の線は、参照先の図面を背景として表示している状態です。そのため、通常の線分と同じように見えても、現在の図面側では一本ずつ選択して編集できないことがあります。クリックしたときに参照図面全体の枠が反応する場合や、まとまった単位として選択される場合は、外部参照である可能性が高いと考えられます。
まず、参照データの管理画面を確認し、現在の図面にどのような外部データが読み込まれているかを調べます。対象の線が参照図面に含まれている場合、直接変更するには元の参照図面を開いて編集する方法が基本です。元図面を修正して保存し、現在の図面で参照内容を更新すると、変更が反映されます。
ただし、参照元の図面が他部署や協力会社から支給されたものである場合、勝手に変更してはいけないことがあります。参照図面の役割は、編集用ではなく位置合わせや確認用であるケースも少なくありません。線を編集したい理由が、誤りの修正なのか、自分の図面へ転記したいのかによって、適切な対応は変わります。
参照内の一部を自分の図面で使いたい場合は、必要な図形を正しい手順で複製する方法や、参照データを現在の図面へ取り込む方法が考えられます。ただし、取り込みによって画層名、線種、文字スタイル、尺度などが増え、図面管理が複雑になることがあります。単に一本の線を編集したいだけでも、参照全体を取り込むと不要な情報まで混在するため、事前の整理が必要です。
外部参照に似た状態として、画像や書類データを下図として配置している場合もあります。画像に描かれている線は、CAD上の線分ではありません。画面では線として見えても、選択できるのは画像全体です。画像内の線をCAD図形として利用するには、必要な位置を確認しながら新たに作図するか、適切な変換処理を行う必要があります。
この原因を見落とすと、何度クリックしても反応しない線に対して、選択設定や画層設定を繰り返し変更してしまいます。線が選択できないときは、「現在の図面にある図形なのか、それとも別のデータを表示しているだけなのか」を早い段階で確認すると、切り分けが進みやすくなります。
原因3 モデル空間とレイアウト空間を取り違えている
CAD図面では、実寸で作図するモデル空間と、印刷用紙上の配置を整えるレイアウト空間を使い分けることがあります。レイアウトには、モデル空間の一部を表示するためのビューポートが配置されます。この仕組みを理解していないと、線は見えているのに選択できない状態が起こります。
レイアウト上でモデル図形を見ている場合、通常の状態ではビューポートという窓を通してモデル空間を表示しています。レイアウト側でクリックすると、モデル図形ではなくビューポートの枠や、レイアウト上に直接配置された文字、寸法、図枠などが選択されます。
モデル空間の線を編集したい場合は、モデル空間へ移動するか、ビューポート内のモデル編集状態へ切り替える必要があります。反対に、図枠やレイアウト上の注記を編集したい場合は、レイアウト側の編集状態へ戻します。現在どちらの空間を操作しているかは、カーソルの表示、画面の枠、状態表示などから確認できます。
ビューポート内へ入っている状態では、拡大や縮小の操作によって表示尺度が変わることがあります。線を選択するためにビューポート内へ切り替えたあと、意図せず表示範囲を動かすと、印刷レイアウトが崩れる可能性があります。尺度や表示位置を固定している図面では、編集前にビューポートのロック状態を確認すると安全です。
また、モデル空間とレイアウト空間の両方に似た線が存在する場合もあります。たとえば、モデル側に構造物の線があり、レイアウト側に印刷用の補助線が重ねて配置されていると、見た目だけではどちらの線か判断しにくくなります。クリックしても想定とは異なる図形が選択される場合は、空間を切り替えながら表示の違いを確認します。
レイアウト上で線が見えているのに、モデル空間へ移動すると見つからない場合は、ビューポートの表示範囲、画層の表示設定、座標位置なども確認します。図形が非常に離れた座標に存在している場合や、特定のビューポートだけで画層が表示されている場合は、単純に空間を切り替えただけでは同じ表示になりません。
選択できない線が図枠の内側にだけ表示されているなら、まずレイアウトとモデルのどちらにある図形かを調べます。編集空間の取り違えは、図面データそのものに異常がなくても発生するため、比較的よくある原因です。
原因4 別の図形や塗りつぶしが線の上に重なっている
線をクリックしているつもりでも、実際には手前にある別の図形が選択されていることがあります。CAD図面では、同じ位置に複数の線が重なっていたり、塗りつぶし、ハッチング、画像、マスク用の図形などが線の上に配置されていたりします。
特に、背景を隠すための塗りつぶしや、広い範囲に設定されたハッチングは、クリックした位置の選択を受け取ることがあります。見た目では細い線がはっきり表示されていても、選択順序によっては背面の線へ到達できません。
まず、対象箇所を大きく拡大してクリックします。選択後に表示されるプロパティ情報を確認し、線分、ポリライン、ハッチング、画像など、何が選択されているかを調べます。目的と異なる図形が選択されている場合は、重なりが原因である可能性があります。
複数の図形が同じ位置に存在する場合は、重なった候補を切り替えて選択する機能が利用できることがあります。この機能を使うと、カーソル位置にある複数の図形から、目的のものを選び分けられます。ただし、候補の名前だけでは判別しにくい場合があるため、選択時の強調表示やプロパティ情報を確認しながら進めます。
一時的に手前の図形を非表示にする方法も有効です。ハッチングや塗りつぶしが専用の画層に整理されていれば、その画層だけを一時的に非表示にすることで、背面の線を選択しやすくなります。作業後は表示状態を戻し、印刷結果に影響がないか確認します。
重なっている図形を削除して対処する場合は、削除対象を慎重に確認します。背景を隠すために必要な図形を消すと、文字や寸法が読みにくくなることがあります。重複線のように見えても、異なる画層や用途で使われている可能性があります。
同じ位置に重複した線が多数ある図面では、選択の問題だけでなく、印刷時の線の濃さ、データ容量、図形数の増加、編集ミスなどにもつながります。重複整理の機能を利用する方法もありますが、許容差の設定によって必要な線まで統合される可能性があるため、元データを保存してから実行することが大切です。
線の表示順序と選択しやすさは、必ずしも同じではありません。線が画面上で見えているからといって、クリック時に最優先で選ばれるとは限らないため、重なりを疑う視点が必要です。
原因5 選択フィルターや選択設定が影響している
CADには、特定の種類や条件に合う図形だけを選択するための機能があります。大量の図形から必要なものを抽出するときには便利ですが、設定が残っていると、通常の線が選択対象から外れることがあります。
たとえば、文字だけ、寸法だけ、特定の画層だけ、特定の色だけを対象にする選択条件が有効になっていると、それ以外の線をクリックしても選択できない場合があります。前の作業で使用した条件が解除されず、別の図面を開いたあとも影響していることがあります。
選択できない線が一部だけでなく、特定の種類に限られている場合は、選択フィルターを確認します。文字や円は選べるのに線分だけ選べない、特定の画層だけ反応しないといった規則性があるなら、選択条件が原因である可能性が高まります。
選択方法の設定も確認が必要です。クリックしてからコマンドを実行する操作と、コマンドを実行してから図形を指定する操作では、CADソフトの設定によって動作が異なることがあります。以前は先に線を選択できていたのに、突然選択状態が解除されるようになった場合は、事前選択に関する設定が変わっていないか確認します。
ドラッグによる窓選択の方向や範囲も、選択結果に影響します。枠の内側に完全に入った図形だけを選ぶ方法と、枠に触れた図形も含める方法では、選択される対象が異なります。一本の長い線の一部だけを囲んだ場合、選択方法によっては対象になりません。
グループ選択の設定が有効になっていると、一本の線を選ぼうとしても複数の図形がまとめて選択されます。利用者が「一本だけ選べない」と感じているケースでは、選択自体はできているものの、グループ単位で反応している可能性があります。
マウスやポインティング機器の設定も無関係ではありません。クリックとドラッグの判定が不安定になっていると、線をクリックしたつもりでも小さな選択枠が作られ、図形が選ばれない場合があります。ほかの画面操作でもクリックが不安定なら、入力機器やOS側の設定も確認します。
選択設定を初期状態に近づける場合は、一度に多くの項目を変更しないことが重要です。どの設定が原因だったのか分からなくなると、再発時の対応が難しくなります。まずフィルター、次に事前選択、続いてグループ選択というように、項目を一つずつ確認すると原因を特定しやすくなります。
原因6 線がブロックや複合図形の一部になっている
CADでは、複数の図形を一つのまとまりとして管理することがあります。代表的なものがブロック、グループ、ポリライン、寸法、引出線、ハッチングなどです。これらに含まれる線は、独立した線分と同じ方法では選択できない場合があります。
ブロック内の線をクリックすると、通常はブロック全体が選択されます。ドア、窓、設備記号、部品、注記記号など、繰り返し使用する図形はブロックとして登録されていることが多いため、一本だけを直接移動しようとしても、まとまり全体が反応します。
ブロック内の線を変更するには、ブロック編集のための状態へ切り替える方法があります。ただし、同じブロックを図面内で複数使用している場合、定義を変更するとほかの配置にも変更が反映されることがあります。一つの場所だけを直したいのか、同じ記号をすべて修正したいのかを確認してから編集します。
ブロックを分解して個別の図形へ戻す方法もありますが、安易な分解は避けた方が安全です。属性情報や連動関係が失われたり、管理単位がばらばらになったりする可能性があります。分解後に元の状態へ戻すのが難しいこともあるため、必要性を判断したうえで複製データを使って試します。
ポリラインの場合は、複数の線分が連続した一つの図形として管理されています。一辺をクリックしても、接続された形状全体が選択されることがあります。一部の頂点や辺だけを変更したいときは、頂点編集や部分編集に対応した方法を利用します。
寸法線や引出線も、線、矢印、文字が一つの寸法図形として管理されています。見えている線だけを削除したり移動したりするのではなく、寸法図形の設定や位置を調整するのが基本です。線だけを無理に分解すると、寸法値と実際の形状との連動が失われ、設計変更時に表示が正しく更新されない可能性があります。
ハッチングの境界線に見えるものも、独立した線とは限りません。ハッチングの表示パターンそのものや、関連付けられた境界の一部である場合があります。境界線を編集したいときは、その線が実際に存在するのか、ハッチングの見た目として表示されているだけなのかを確認します。
グループの場合は、複数の図形がまとめて選択されますが、ブロックとは管理方法が異なります。グループ選択を一時的に無効にすると、構成要素を個別に選べることがあります。ただし、共同作業のルールとしてグループ化されている場合は、作業後に元の管理状態へ戻します。
線が選択できないときは、独立した線分であるという前提をいったん外し、どのような複合図形に属しているかを確認することが大切です。
原因7 図面データや表示状態に不具合が起きている
画層、外部参照、編集空間、重なり、選択設定、ブロックを確認しても原因が分からない場合は、図面データや表示処理に一時的な不具合が起きている可能性があります。
CADでは、図面を長期間編集したり、複数のデータを取り込んだりすることで、不要な定義や不整合のある図形情報が蓄積することがあります。画面には線が表示されていても、選択判定が正常に行われない、拡大すると消える、表示位置とクリック位置がずれるといった症状が出る場合があります。
最初に試したいのは、画面の再描画や表示の再生成です。表示用の情報を更新することで、線の見た目と選択位置のずれが解消されることがあります。単に画面を拡大縮小するだけでは更新されない場合もあるため、CADソフトに用意されている表示更新の操作を確認します。
次に、図面を保存して開き直します。一時的な処理の不具合であれば、再読み込みによって正常に戻ることがあります。ただし、異常な状態のまま上書き保存すると元データへ戻れなくなる可能性があるため、別名で保存してから試す方法が安全です。
図面の検査や修復に相当する機能がある場合は、複製データに対して実行します。不整合のある図形や管理情報が見つかると、自動的に修正されることがあります。ただし、自動修復によって一部の図形が削除されたり、元の設定が変わったりする可能性もあるため、処理後は図面全体を確認します。
不要な画層、線種、ブロック定義などが大量に残っている場合は、未使用情報を整理することで動作が改善することがあります。整理処理を行う前には、参照されていないように見える定義が、本当に不要かを確認します。後工程で使う予定のブロックや、非表示の画層に必要な情報が残っている場合もあります。
特定の図面だけで問題が起きる場合は、その図面データに原因がある可能性が高いと考えられます。新しい空の図面では正常に線を選択できるか確認し、問題の図面から必要な範囲だけを新しい図面へ移す方法もあります。移行後に正常になるなら、元の図面に何らかの不整合が含まれていた可能性があります。
すべての図面で同じ症状が起きる場合は、CADソフトの設定、入力機器、グラフィック表示、利用環境などを確認します。ソフトの再起動や端末の再起動で改善することもあります。表示処理の設定を変更する場合は、現在の設定を記録し、問題が改善しなければ元へ戻せるようにします。
極端に大きな座標値を扱っている図面では、表示や選択の精度が不安定になることもあります。基準位置から遠く離れた場所に図形が存在していないか、意図しない座標へ図形が移動していないかを確認します。全体表示を実行した際に図面が非常に小さく見える場合は、遠方に不要な図形が存在する可能性があります。
図面の不具合を疑う段階では、原因を断定せず、複製データで一つずつ検証することが重要です。修復、整理、移行などの操作は図面全体へ影響するため、個別の線を選択するためだけに元データを大きく変更しないよう注意します。
CADの線が選択できないときの確認順序
線が選択できない原因を効率よく調べるには、影響範囲が小さく、元に戻しやすい項目から確認します。最初から図面修復や設定初期化を行うのではなく、表示と管理状態を順番に切り分けることが大切です。
まず、対象箇所を拡大し、線の中央をクリックします。近くの別図形や交点を避けることで、クリック位置の問題を除外できます。続いて、図面内のほかの線が選択できるか確認します。ほかの線を選択できるなら、問題は対象の線に限定されています。
次に、現在操作している空間を確認します。レイアウト上でモデル図形を見ている場合は、モデル空間へ切り替えるか、ビューポート内の編集状態を確認します。空間の違いが原因なら、図面設定を変更しなくても選択できるようになります。
その後、対象図形の画層状態を調べます。ロックの有無だけでなく、ビューポート単位の画層設定や、似た名前の画層が複数存在していないかも確認します。ロックを解除する場合は、対象画層だけに限定します。
画層に問題がなければ、外部参照や画像など、別データから表示されていないか確認します。クリック時に図面全体や大きな枠が反応するなら、外部参照や添付データの可能性があります。
続いて、重なりと複合図形を確認します。選択された図形の種類をプロパティ情報で確認し、目的の線ではない図形が反応していないかを調べます。ブロック全体、ハッチング、ポリライン、寸法などが選択される場合は、それぞれの編集方法へ切り替えます。
ここまでで原因が分からなければ、選択フィルターや事前選択などの設定を確認します。設定を変更するときは一項目ずつ行い、変更前の状態を記録します。一括で初期化すると、作業環境に合わせて設定されていた項目まで失われる可能性があります。
最後に、別名保存、開き直し、再描画、図面検査などを試します。図面全体へ影響する修復や整理は、必ず複製データで行います。この順序で進めることで、必要以上に図面を変更せず、原因を特定しやすくなります。
選択できない問題を再発させない図面管理
線を選択できない問題は、日常的な図面管理を整えることで減らせます。特に重要なのは、画層、外部参照、ブロック、編集空間の役割を明確にすることです。
画層名は、図形の用途が分かるように統一します。作成者ごとに異なる名称を使うと、どの画層をロックしてよいか判断しにくくなります。既存物、計画物、中心線、寸法、文字、補助線など、図面内での役割が分かる命名にすると、選択できない原因を調べやすくなります。
ロックする画層についても運用ルールを決めます。単に編集しない図形をすべてロックするのではなく、ロック理由が分かる状態にしておくことが大切です。作業終了時にロックを戻す担当や、解除してよい範囲を共有しておくと、共同作業での誤編集を防げます。
外部参照は、参照用と編集用を明確に分けます。元図面を修正する担当者、更新のタイミング、参照先の保存場所が不明確だと、線を編集できないだけでなく、古い図面を使い続ける原因にもなります。参照切れや重複参照を定期的に確認することも有効です。
ブロックやグループは、再利用や一括管理に便利ですが、目的なく多用すると編集しにくくなります。どの単位で変更を反映させたいかを考え、共通部品はブロック、一時的なまとまりはグループというように、役割を分けて運用します。
モデル空間とレイアウト空間の使い分けも統一します。図形本体はモデル空間、印刷用の図枠や注記はレイアウト空間など、配置ルールを決めることで、見えている線がどちらの空間にあるか判断しやすくなります。
重複線や不要図形を増やさないことも重要です。別図面から図形を取り込むときは、必要な範囲だけを移し、画層やブロック定義を整理します。図面全体を繰り返し複製すると、同じ位置に線が重なり、選択しにくい状態が発生しやすくなります。
作業の区切りごとに別名保存を行い、変更履歴を残しておくと、問題が発生した時点を特定しやすくなります。選択できない症状が突然発生した場合、直前の版と比較することで、参照追加、画層変更、ブロック化など、原因となった操作を探せます。
共同作業の図面で注意したいポイント
複数人で同じ図面を扱う現場では、線が選択できない問題が個人の操作だけでなく、図面運用の違いから発生することがあります。作成者には選択できても、別の担当者の環境では選択できない場合、保存状態、参照先、設定、利用している機能の違いを確認する必要があります。
外部参照の保存場所が各担当者の端末で異なると、参照内容が表示されなかったり、別の図面へ置き換わったりする可能性があります。共有フォルダの構成や相対的な保存関係を統一し、図面一式を移動しても参照関係が維持されるように管理します。
画層のロック状態や表示状態を変更したまま保存すると、次に開いた担当者が線を選択できないと感じることがあります。作業後に標準状態へ戻すルールを決めておくと、担当者ごとの状態差を減らせます。
ブロック定義を変更する場合は、影響範囲を共有します。一つの記号を修正したつもりでも、同じ定義を使うすべての配置が変わることがあります。逆に、ブロックを分解して個別編集すると、図面内の表現が統一されなくなる可能性があります。
図面を受け渡すときは、選択や編集が必要な範囲も明確にします。背景として参照する図面なのか、自由に編集してよい図面なのかが分からないと、選択できない状態を不具合と誤認することがあります。編集対象、参照対象、確定済み範囲を区別して共有することが重要です。
線が選択できない問題が発生したときには、変更前の図面へ戻れるようにします。担当者がそれぞれ別の方法で修復や分解を行うと、図面の整合性が崩れる可能性があります。原因、実施した確認、変更した設定、修正結果を簡単に記録しておくと、同じ問題が起きたときにも対応しやすくなります。
まとめ
CADの線が選択できないときは、線そのものの異常だけでなく、画層、外部参照、編集空間、重なり、選択設定、複合図形、図面データの状態を順番に確認する必要があります。
最初に対象箇所を拡大し、ほかの図形を選択できるか確認します。そのうえで、現在の編集空間、画層のロック、外部参照の有無、重なっている図形、ブロックやポリラインなどの管理単位を調べます。個別の管理状態に問題がなければ、選択設定や図面データの不整合を確認します。
大切なのは、原因が分からないまま画層を一括解除したり、ブロックを分解したり、図面全体を修復したりしないことです。影響の小さい確認から進め、図面全体へ変更を加える操作は複製データで試すと、安全に原因を切り分けられます。
また、選択できない問題を減らすには、画層名、ロック状態、外部参照、ブロック、モデル空間とレイアウト空間の運用を統一することが有効です。共同作業では、編集対象と参照対象を明確にし、変更履歴を残すことで、原因調査にかかる時間を短縮できます。
CAD図面を現場で活用する際は、図面上の線を編集できることだけでなく、現地の位置や形状と正しく結び付けることも重要です。図面情報と現場で取得した位置情報を組み合わせ、確認や記録の作業を効率化したい場合は、LRTK Phoneの活用方法もあわせて確認してみてください。