CADの線種尺度がレイアウトごとに変わる仕組み
CADで破線や一点鎖線を設定したとき、モデル空間では適切に見えていた線が、レイアウトを切り替えると実線のように見えたり、線の間隔が極端に広がったりすることがあります。同じ図形を表示しているのに見え方が変わるため、図形そのものが壊れたように感じることもあります。
ただし、多くのケースでは形状データの破損ではなく、線種表示に関係する複数の尺度設定が組み合わさっていることが原因です。代表的なDWG系CADでは、図面全体の線種尺度、オブジェクトごとの線種尺度、モデル空間の表示尺度、ペーパー空間の線種尺度、ビューポート尺度などが最終表示に関係します。設定名や保存単位は製品やバージョンによって異なるため、同じ考え方をすべてのCADへそのまま当てはめないことが重要です。オートデスクヘルプ+2オートデスク+2
モデル空間は、建物、構造物、部品、地形などを原則として実寸で作図する領域です。一方、レイアウトは、そのモデルを用紙上のどの位置に、どの縮尺で配置して出力するかを整える領域です。モデル空間で実寸作図した対象を、レイアウト内のビューポートを通して所定の縮尺で見せるため、モデル単位と紙面単位の関係が線種の見え方に影響します。
ここで確認したいのは、破線間隔をモデル上の長さに応じて見せたいのか、印刷後の紙面上でほぼ一定に見せたいのかという方針です。紙面基準で線種をそろえる設定が有効であれば、縮尺の異なるビューポートでも、紙面上の線種間隔を統一しやすくなります。反対に、モデル基準で表示する設定では、ビューポート尺度の違いが紙面上の線種間隔へ表れます。
一つのレイアウト内に縮尺の異なる複数のビューポートを配置する場合は、特にこの方針が重要です。全体図と詳細図を同じ用紙へ配置するとき、紙面基準でそろえるのか、モデル基準の差を残すのかによって、適切な設定が変わります。
したがって、線種尺度の問題を解決するときは、表示がおかしい図形だけをすぐに修正するのではなく、全体設定、オブジェクト設定、レイアウト設定、ビューポート設定を順番に確認します。原因を切り分けずに数値を何度も変更すると、あるレイアウトでは直っても、別のレイアウトや印刷結果が崩れることがあります。
確認1 全体線種尺度が図面に合っているか
最初に確認したいのが、図面全体に適用される線種尺度です。これは、読み込まれている破線や一点鎖線などのパターンを、図面内でどの程度の大きさで表示するかを決める基本倍率です。代表的なDWG系CADでは、線種定義が持つパターン長に全体倍率とオブジェクト倍率が関係し、最終的な表示間隔が決まります。
全体線種尺度が小さすぎると、破線の一つ一つが細かくなり、縮小表示では切れ目が見えにくくなります。画面の解像度や表示倍率によっては、細かな隙間がつぶれて実線のように見えることもあります。反対に、全体線種尺度が大きすぎると、破線の間隔が広がり、短い線分の中に十分なパターンが入らないため、意図した破線に見えない場合があります。
適切な値は、図面の単位、対象物の大きさ、出力縮尺、使用する線種定義によって異なります。特定の数値をすべての図面へ当てはめる方法は安全ではありません。建築、土木、機械、設備など、図面の用途が違えば、同じ種類の破線でも紙面上で求められる見え方が変わります。
確認するときは、モデル空間で代表的な長さの線を選び、破線間隔が図面内容に対して適切かを見ます。非常に短い線だけでは線種パターンが収まりきらず、全体設定の良否を判断しにくいため、比較的長い中心線、境界線、隠れ線などを確認対象にします。
全体線種尺度を変更すると、原則として多くのオブジェクトに影響します。特定の一本だけを直したい場面で全体値を変更すると、それまで正常だった線種まで崩れるおそれがあります。変更前には現在値を記録し、代表的な複数の線種を見ながら調整することが大切です。
レイアウトごとに見え方が異なる場合でも、基準となる全体線種尺度が極端では、その後の比較が難しくなります。まずモデル空間で基準表示を確認し、その後にペーパー空間とビューポート側を確認する流れが効率的です。
全体尺度を調整した後は、画面の拡大縮小だけで判断せず、表示更新を行い、レイアウトと印刷プレビューも確認します。画面上で切れ目が見えにくくても、出力では適切に表現される場合があり、反対に画面では正常でも出力条件で見え方が変わる場合があります。
確認2 オブジェクトごとの線種尺度が統一されているか
図面全体の線種尺度が適切でも、一部の線だけ見え方が異なる場合は、オブジェクトごとの線種尺度を確認します。代表的なDWG系CADでは、図面全体の倍率とは別に、線、ポリライン、円弧などのオブジェクトへ個別の線種尺度を設定できます。
たとえば、全体線種尺度が同じでも、ある線の個別倍率が一、別の線が十であれば、両者の破線間隔は大きく異なります。モデル空間では表示倍率の関係で差に気づきにくくても、レイアウトや印刷プレビューでは目立つことがあります。
個別倍率がばらつく原因としては、他図面からのコピー、外部データの読み込み、過去図面の流用、線種が見えにくいときの一時的な調整などが考えられます。新規オブジェクトへ適用する現在の線種尺度を変更できる製品では、作成時期によって個別倍率が異なることもあります。代表的なDWG系CADの現在オブジェクト線種尺度は、新しく作成するオブジェクトへ全体線種尺度に対する倍率として適用されます。オートデスクヘルプ
線種がレイヤー設定ではなく、オブジェクト側へ直接指定されている場合もあります。レイヤーの線種を変更しても表示がそろわないときは、対象オブジェクトがレイヤー設定を継承しているかを確認します。線種だけでなく、色や線の太さにも個別指定が残っていると、図面管理が複雑になりやすくなります。
確認作業では、正常に表示されている線と異常な線をそれぞれ選択し、プロパティを比較します。線種名が同じでも、個別線種尺度、所属レイヤー、オブジェクト種類、長さ、標高などが異なっていないかを確認します。
複数のオブジェクトをまとめて選択したときに、個別尺度の欄が空欄や混在表示になる場合は、選択したオブジェクトの設定が統一されていない可能性があります。その場合は、意図的に異なる尺度を使うオブジェクトを除外したうえで、用途ごとの基準値へそろえます。
ただし、すべてのオブジェクトを機械的に同じ値へ変更するのは避けます。短い補助線や特殊な図示では、個別尺度を調整して線種を見せている場合があります。変更前にレイヤーの用途と図面表現の意図を確認することが必要です。
ポリラインでは、頂点をまたいで線種パターンを連続させるか、各区間でパターンを再開させるかを選べる製品があります。短い区間が連続するポリラインで各頂点からパターンが再開されると、破線が実線に近く見える場合があります。既存ポリラインは、新規作成用の設定を変更しただけでは更新されないことがあるため、対象オブジェクトのプロパティも確認します。オートデスクヘルプ
確認3 ペーパー空間の線種尺度設定が適切か
レイアウトごとに線種の見え方が変わる問題で、特に重要なのがペーパー空間における線種尺度の扱いです。代表的なDWG系CADには、ビューポート内の線種をモデル基準で表示する方法と、紙面上でほぼ一定の間隔にそろえる方法があります。
紙面基準で線種をそろえる設定が有効な場合、同じ線種を使用するオブジェクトは、ビューポート尺度が異なっていても、レイアウト上で近い間隔に見えるよう調整されます。全体図と詳細図を同じ用紙へ配置しても、印刷後の破線間隔を統一しやすくなります。
一方、紙面基準の調整が無効な場合は、線種パターンがモデル空間側の尺度を基準に表示されます。この状態では、ビューポート尺度の違いが紙面上の線種間隔へ反映されます。異なる縮尺の図を並べると、同じ線種でも一方は細かく、もう一方は粗く見えることがあります。
どちらが適切かは、図面の目的と社内ルールによって変わります。紙面上の読みやすさを重視する図面では、異なるビューポート間でも線種間隔をそろえる運用が一般的です。一方、モデル上のパターン長を縮尺に応じて見せたい場合は、モデル基準の運用を選ぶこともあります。
代表的なDWG系CADでは、ペーパー空間の線種尺度設定をレイアウトごとに保持できる場合があります。そのため、あるレイアウトでは紙面基準、別のレイアウトではモデル基準になっていると、同じモデルを参照していても見え方が変わります。過去図面から複製したレイアウトと、新規作成したレイアウトで値が異なる可能性もあります。オートデスクヘルプ+1
確認するときは、正常なレイアウトと異常なレイアウトを比較し、ペーパー空間の線種表示に関係する設定が同じかを確認します。設定を変更した直後はビューポート内の表示が自動更新されないことがあるため、再作図後に判断します。
レイアウト内に複数のビューポートがある場合は、それぞれの見え方も比較します。すべてのビューポートで同じ異常が出ているなら、レイアウト設定や全体線種尺度の影響が疑われます。一つだけ異常なら、そのビューポートの尺度、レイヤー状態、表示範囲を重点的に確認します。
レイアウト上へ直接作図した線と、ビューポートを通して表示されるモデル空間の線では、尺度の扱いが異なる場合があります。表題欄、用紙枠、注記などをペーパー空間へ直接作図している場合は、モデル内の線と同じ数値へ一括変更しないよう注意します。
確認4 ビューポート尺度がレイアウト間で揃っているか
線種の見え方がレイアウトごとに異なるときは、各ビューポートに設定されている尺度を確認します。レイアウト名や図面タイトルが同じ縮尺を示していても、実際のビューポート尺度が一致しているとは限りません。
ビューポート内部を拡大縮小すると、設定していた尺度が変わることがあります。表示範囲がほぼ同じに見えても、プロパティ上で任意倍率になっていれば、寸法、注釈、線種表示の確認条件がそろいません。
ただし、紙面基準で線種をそろえる設定が有効な場合は、ビューポート尺度が異なっていても、紙面上の線種パターンは均一になるよう補正されます。したがって、ビューポート尺度が違うだけで必ず線種間隔が変わるわけではありません。尺度差が直接表れやすいのは、モデル基準の線種表示になっている場合や、レイアウト間で紙面基準の設定が統一されていない場合です。オートデスク+1
同じ縮尺の図面を複数のレイアウトへ配置している場合は、正常なビューポートの設定値を基準に比較します。目視だけで合わせず、プロパティ上の標準尺度または倍率を確認します。
尺度を確定した後は、ビューポートのロック状態も確認します。ロックされていないビューポートでは、図面確認のための拡大操作が保存され、意図せず倍率が変わることがあります。尺度を確定したビューポートをロックする運用は、再発防止に有効です。
一つのレイアウトに異なる縮尺の詳細図を配置する場合は、線種を紙面基準で統一するのか、モデル尺度に応じて変化させるのかを事前に決めます。方針が曖昧なままでは、ビューポートごとの個別調整が増え、図面の再利用や修正が難しくなります。
ビューポート尺度の確認では、同じオブジェクトの同じ範囲を比較することも重要です。破線パターンは線の始点、終点、表示範囲、クリップ位置によって見え方が違う場合があります。尺度差とパターン開始位置の違いを混同しないようにします。
ビューポートごとにレイヤーの表示状態を変えられるCADでは、別レイヤーにある似た線を比較している可能性もあります。レイアウトごとに線種が変わったように見えても、実際には異なるオブジェクトが表示されている場合があるため、レイヤー名とオブジェクトの同一性を確認します。
確認5 注釈尺度や現在尺度が影響していないか
文字、寸法、引出線、記号などを複数の縮尺に対応させるため、注釈尺度を使用するCADがあります。通常の線やポリラインが注釈オブジェクトになるとは限りませんが、代表的なDWG系CADでは、モデル空間の線種表示を現在の注釈尺度に連動させる設定があります。
この連動設定が有効な場合、モデルタブの注釈尺度を変更すると、同じ線でもモデル空間上の見え方が変わります。反対に、連動設定を無効にすると、モデル空間の線種表示へ注釈尺度を反映しない運用にできます。これは主にモデル空間での表示に関係する設定であり、ペーパー空間の線種統一設定とは分けて確認する必要があります。オートデスクヘルプ+1
一方、新しく作成する線の個別線種尺度は、注釈尺度とは別の現在オブジェクト線種尺度によって決まる製品があります。元本文のように、作図時の注釈尺度がそのまま新規オブジェクトの個別線種尺度になると一括して説明するのは正確ではありません。モデル表示への注釈尺度の影響と、新規オブジェクトへ設定される個別倍率は、別の項目として確認します。
過去に作成した線と最近追加した線で破線間隔が違う場合は、作成時の現在オブジェクト線種尺度、コピー元オブジェクトの個別設定、所属レイヤーを比較します。コピーで作成した線は、コピー元の個別尺度を引き継ぐ場合があります。
ビューポートごとに注釈尺度が異なると、注釈対応の文字、寸法、記号などの表示状態やサイズが変わります。そのため、線種の問題と同時に注記類も不統一に見えることがあります。ただし、通常の線の破線間隔を確認するときは、まず全体線種尺度、個別線種尺度、ペーパー空間の線種設定を優先します。
確認するときは、モデル空間の注釈尺度、モデル空間の線種連動設定、レイアウト内のビューポート尺度、対象オブジェクトの個別線種尺度を分けて見ます。すべてを一度に変更すると、どの設定が原因だったのか分からなくなります。
注釈対応の記号や複合オブジェクトを調べる場合は、登録されている尺度とビューポートの注釈尺度も確認します。通常の線やポリラインであれば、注釈オブジェクトの尺度一覧を主原因と決めつけないことが重要です。
図面内で使用する尺度を必要以上に増やさないことも、設定ミスの予防につながります。実際に使用する縮尺を整理し、レイアウト名、図面タイトル、ビューポート尺度の対応を明確にします。
確認6 図面単位と読み込み元の単位が一致しているか
線種尺度の問題が外部から取り込んだデータだけで発生する場合は、図面単位の不一致を疑います。CADでは、ミリメートル、メートル、センチメートルなど、異なる単位系で図面が作成されます。単位が異なるデータを変換せずにコピーまたは挿入すると、図形の大きさと線種パターンの相対関係が崩れることがあります。
たとえば、ある図面の一単位が一ミリメートル、別の図面の一単位が一メートルとして運用されている場合、同じ数値でも実際の長さの意味は千倍異なります。挿入時に単位変換が正しく行われれば形状の大きさは調整されますが、コピー方法、挿入設定、ブロック定義、外部参照の設定によって結果が変わるため、見た目だけで判断しないことが重要です。
単位の不一致は、図面内の既知寸法を測ることで見つけやすくなります。通り芯間隔、構造物幅、部品寸法、測点間距離などを測定し、想定した数値になっているかを確認します。
ブロックや複合オブジェクトの内部に、別単位で作成されたデータが含まれる場合もあります。外形寸法は合っていても、ブロック内部の個別線種尺度や線種定義が異なり、内部だけ表示が不自然になることがあります。
外部参照を使用している場合は、参照元図面と参照先図面の単位、挿入倍率、基準点を確認します。参照元で正常に見える線種が参照先で異常になるときは、参照先の全体線種尺度やペーパー空間設定も合わせて比較します。
外部データを受け取った時点で単位を確認し、基準長さと照合する運用が重要です。単位が不明なまま見た目だけを合わせて拡大縮小すると、寸法、面積、数量、座標に問題が残るおそれがあります。
線種尺度だけを補正して見た目を整えても、図面単位が誤っていれば根本解決にはなりません。測量成果、点群、座標データ、地形モデルなどをCADへ重ねる業務では、単位、座標系、基準点を線種表示とは別に検証します。
図面ごとに異なる単位を使用する業務では、図面枠や管理台帳へ単位を明記します。新しいレイアウトを作成するときも、出力縮尺だけでなくモデル単位を確認し、過去図面の設定を無条件に流用しないことが重要です。
確認7 再作図と表示更新が完了しているか
設定値を修正しても線種表示が変わらない場合は、再作図や表示更新が行われているかを確認します。CADの画面表示は、処理負荷を抑えるために表示情報を一時的に保持することがあり、線種尺度やビューポート設定を変更しても、直ちにすべての表示へ反映されない場合があります。
この状態で設定が間違っていると判断し、さらに別の数値へ変更すると、再作図後に線種が極端な状態になることがあります。設定を一項目変更したら、再作図を実行し、モデル空間とレイアウトの両方で結果を確認します。
画面の拡大縮小やレイアウト切り替えで更新される場合もありますが、大きな図面、外部参照が多い図面、複数のビューポートを持つ図面では、全ビューポートを対象とする再作図が必要になることがあります。代表的なDWG系CADでは、ペーパー空間の線種尺度やビューポート尺度を変更した後に再作図を行うよう案内されています。オートデスクヘルプ+1
画面上の表示と印刷結果が一致しない場合は、印刷プレビューを確認します。画面表示では破線が細かすぎて実線に見えても、プレビューでは適切に分かれていることがあります。反対に、画面では正常でも、印刷倍率や用紙設定によって意図しない見え方になる場合があります。
印刷設定では、用紙サイズ、印刷範囲、出力倍率、線の太さ、印刷スタイルなども確認します。レイアウトを原寸で出力する前提なのに、印刷時に用紙へ合わせる倍率が設定されていると、紙面上の線種間隔や文字サイズも一緒に変わります。
レイアウトは通常、用紙上の実寸を基準に作成し、ビューポート側でモデルの縮尺を調整します。印刷段階でさらに倍率を掛ける場合は、その運用が意図したものかを確認します。
表示異常が特定の端末だけで発生する場合は、描画設定や表示環境も確認対象です。ただし、最初から端末固有の問題と決めつけず、同じファイルの印刷プレビューや別端末での表示を比較し、図面設定の問題か画面表示だけの問題かを切り分けます。
ファイルを閉じて開き直すことで表示が更新される場合もありますが、未保存の変更を失わないよう注意します。設定変更前のファイルを残し、別名保存で比較できる状態にしておくと安全です。
線種尺度の問題を効率よく切り分ける手順
線種尺度の問題を早く解決するには、思いついた設定を無作為に変更するのではなく、影響範囲の広い項目から順番に確認します。まず、問題が図面全体に発生しているのか、一部の線だけに発生しているのかを整理します。
すべての破線や一点鎖線が異常であれば、全体線種尺度、ペーパー空間の線種表示設定、ビューポート尺度を確認します。一部の線だけ異常であれば、個別線種尺度、レイヤー設定、ポリラインの線種生成、図形の作成元を調べます。
次に、モデル空間とレイアウトのどちらで異常が発生しているかを確認します。モデル空間ですでに異常であれば、全体尺度、個別尺度、モデル空間の注釈尺度連動、図面単位を優先します。モデル空間では正常で、レイアウトだけ異常なら、ペーパー空間の線種表示設定とビューポート尺度を重点的に調べます。
続いて、すべてのレイアウトで発生するのか、特定のレイアウトだけで発生するのかを比較します。全レイアウトで同じなら、図面全体の設定が原因である可能性があります。特定のレイアウトだけなら、そのレイアウトに保持される線種設定、ビューポート尺度、表示状態、複製元を確認します。
一つのレイアウト内で一部のビューポートだけ異常な場合は、正常なビューポートとの設定差を確認します。尺度値だけでなく、レイヤー表示、表示範囲、注釈尺度、ロック状態を比較します。
設定を変更するときは、一度に一項目だけ変更します。複数の設定を同時に変えると、表示が改善しても原因を特定できません。変更前の値、変更した項目、再作図後の結果を記録すると、再発時の確認にも役立ちます。
正常な図面がある場合は、その図面を基準に比較する方法が有効です。全体線種尺度、レイアウト設定、ビューポート尺度、図面単位、代表オブジェクトの個別尺度を順番に比較します。ただし、正常に見える図面でも、個別調整の積み重ねで偶然整っている場合があるため、数値を無条件にコピーしないことが重要です。
最終確認では、画面表示だけでなく印刷プレビューを使用します。提出や施工で使用する図面は、最終的な用紙または固定された電子図面での可読性が重要だからです。
レイアウトごとの表示差を防ぐ運用ルール
線種尺度の問題は、発生後に修正するより、図面テンプレートと作業ルールを整備して予防するほうが効率的です。複数の担当者が同じ図面を編集する環境では、設定方針を統一しないと、レイアウトごとに異なる調整が残りやすくなります。
まず、図面全体で使用する線種と基準尺度を決めます。中心線、隠れ線、既設線、計画線、境界線などの用途ごとに、使用する線種とレイヤーを整理します。担当者ごとに類似線種を追加すると、同じ用途の線でもパターンが異なり、図面の統一感が失われます。
次に、個別線種尺度は例外的な調整として扱います。基本はレイヤーと全体尺度で管理し、個別尺度を使用する場合は理由を明確にします。短い線分で線種が見えないという理由だけで個別調整を繰り返すと、図面全体の設定変更が難しくなります。
レイアウトについては、標準用紙サイズと標準ビューポートを持つテンプレートを用意します。設定確認済みのレイアウトを複製して使用すれば、ペーパー空間の線種表示方法や印刷条件のばらつきを減らせます。
ただし、過去案件のレイアウトを流用する場合は、モデル単位、使用縮尺、線種定義が現在の案件と一致しているかを確認します。見た目が似ているだけで流用すると、不要な尺度設定や個別調整まで引き継ぐことがあります。
ビューポートは、尺度確定後にロックするルールを設けます。ロック前には、表示範囲、尺度、注釈尺度、レイヤー状態を確認します。変更が必要になった場合は、作業後に再度ロックします。
レイアウト名へ縮尺や用途を含めると管理しやすくなります。平面図、詳細図、全体図などの用途と尺度が分かる名称にすれば、誤ったレイアウトへの出力や設定コピーを防ぎやすくなります。ただし、名称だけを信用せず、実際のビューポート尺度も確認します。
外部図面を取り込む際は、単位、基準座標、線種、レイヤー、個別尺度を確認する受入手順を設けます。受領データをそのまま本図面へコピーするのではなく、確認用ファイルで基準長さを測定したうえで取り込むと安全です。
図面完成前には、代表的なレイアウトだけでなく、すべての出力対象レイアウトを確認します。一枚目が正常でも、追加作成したレイアウトや過去図面から複製したレイアウトでは設定が異なることがあります。
CAD図面と現場データをつなげるときの注意点
CAD図面は、設計や作図だけでなく、現場で取得した座標、写真、点群、距離、面積、体積などを整理する基盤としても活用されます。現場データをCADへ重ねるときは、線種尺度だけでなく、図面単位、座標系、基準点、標高の整合性を確認することが重要です。
現場で取得した線や点をCADへ取り込んだ際、線種が極端に細かく見える場合があります。このとき、取得データの精度や形状に問題があると決めつける前に、取り込み先図面の単位、挿入倍率、全体線種尺度を確認します。
点群や測量データから作成した線は、非常に短い線分や多数の頂点で構成されることがあります。見た目は一本の曲線でも、内部では細かな区間に分かれていると、線種パターンが区間ごとに再開され、実線に近く見える場合があります。この場合は、線種尺度だけでなく、図形構造とポリラインの線種生成設定を確認します。
現場データを図面化するときは、元データを保存し、CAD上で編集した成果と区別できるようにします。不要な頂点の整理や線の結合を行う場合も、元の測定結果を失わない運用が必要です。
現場で取得した位置情報付き写真や点群をCAD業務へつなげる方法として、LRTK Phoneを活用する選択肢があります。LRTK Phoneでは測位、位置情報付き写真、点群取得などの機能が案内されており、取得データをクラウド上で確認し、CAD関連の作業へ展開できます。ただし、利用できる機能や出力形式は契約内容、端末、アプリのバージョンなどで変わる可能性があるため、導入時点の仕様を確認します。Lefixea Irtk+2Lefixea Irtk+2
どのような取得方法を使う場合でも、CADへ読み込む前に単位、座標系、基準点を確認することが重要です。現場データの取得精度が高くても、図面側の設定が一致していなければ、正しい位置や大きさで重なりません。表示上の線種問題と、座標や寸法の問題を分けて判断します。
まとめ
CADの線種尺度がレイアウトごとに変わるときは、単一の設定だけでなく、複数の尺度が重なっている可能性を考える必要があります。基本となる確認項目は、全体線種尺度、オブジェクトごとの個別尺度、ペーパー空間の線種表示設定、ビューポート尺度、モデル空間の注釈尺度連動、図面単位、表示更新の七つです。
モデル空間ですでに線種が異常なら、全体線種尺度、個別尺度、モデル空間の線種表示設定、図面単位を優先して確認します。モデル空間では正常で、レイアウトだけ異常なら、ペーパー空間の線種表示設定とビューポート尺度を重点的に調べます。一部のオブジェクトだけ異常なら、個別プロパティやポリラインの構造を確認するのが効率的です。
ビューポート尺度が違っていても、紙面基準で線種を均一化する設定が有効なら、紙面上の線種間隔はそろえやすくなります。そのため、尺度差だけを原因と決めつけず、レイアウトごとの線種設定が統一されているかを確認します。
注釈尺度については、モデル空間の線種表示へ影響する設定と、新規オブジェクトへ適用される個別線種尺度を分けて考えます。この二つを混同すると、既存線と新規線の差や、モデル空間とレイアウトの差を正しく切り分けられません。
設定を変更するときは、一度に一項目だけ変更し、その都度再作図と印刷プレビューを行います。複数の数値を同時に変えると、原因が分からなくなり、別のレイアウトを崩すおそれがあります。
再発防止には、線種、レイヤー、全体尺度、ペーパー空間の表示方針をテンプレート化し、ビューポートを尺度確定後にロックする運用が有効です。外部図面や現場データを取り込む際も、単位と基準長さを確認してから作業を進めます。
線種尺度は見た目だけの設定ではなく、設計意図、既設と計画の区別、中心位置、境界範囲などを読み手へ正しく伝えるための重要な要素です。画面表示だけで終わらせず、最終的な出力状態まで確認しましょう。