LRTKレフィクシア株式会社

CADとBIM・CIMの違いは?導入判断に役立つ6つの比較軸

CADとBIM・CIMの基本的な違い

建築、土木、設備、製造などの実務で図面を扱っていると、CADとBIM・CIMの違いが分かりにくいと感じることがあります。どちらも形状を画面上に表現できるため、CADは二次元、BIM・CIMは三次元と理解されることもあります。しかし、この分け方だけでは、それぞれの本質や導入効果を正確に捉えられません。 CADは、線、円、文字、寸法、面、立体などを使用して、対象物の形状や位置関係を表現する仕組みです。紙図面をデジタル化したような二次元CADだけでなく、立体形状を作成できる三次元CADもあります。そのため、三次元で表示できるかどうかだけでは、CADとBIM・CIMを区別できません。 BIM・CIMは、三次元形状に部材の名称、分類、材質、寸法、数量、工程、施工条件、点検情報などを関連付け、設計から施工、維持管理まで活用する考え方です。画面上に表示された柱や道路、橋脚、配管、法面などが、単なる線や面ではなく、意味を持つ要素として管理されます。 一般的には、BIMは建築物を中心とした情報モデル、CIMは道路、橋梁、河川、造成、トンネルなどの土木構造物や地形を中心とした情報モデルとして説明されます。ただし、実際のプロジェクトでは建築、土木、設備、測量、施工管理が相互に関係するため、両者をまとめてBIM・CIMと表現することがあります。 CADの主な役割は、設計内容を図面や形状として正確に表すことです。一方、BIM・CIMは、形状と関連情報を共通のモデル上で管理し、複数の工程や関係者が再利用できるようにすることを重視します。 つまり、CADとBIM・CIMの違いは、図面作成用の道具と三次元表示用の道具という単純な関係ではありません。図形を中心に管理するのか、意味を持つ要素と属性情報を中心に管理するのかという、データの考え方と業務運用の違いです。 導入を判断するときは、どちらの方が新しいか、高機能かという視点だけで比較しないことが重要です。現在の業務で何に時間がかかっているのか、どの情報を後工程で使いたいのか、誰と共有するのかを整理し、必要な仕組みを選ぶ必要があります。

比較軸1 データ構造とモデルの意味

一つ目の比較軸は、作成するデータの構造です。同じ建物や構造物を画面上に表示していても、CADとBIM・CIMでは、内部で保持しているデータの意味が異なります。 二次元CADでは、線、円弧、文字、寸法、ハッチングなどの図形要素を組み合わせて図面を作成します。平面図に二本の平行線を描けば、人はそれを壁や道路の境界として理解できます。しかし、データ上では単なる二本の線として保存されている場合があります。 図面を見る人は、線種、画層、注記、寸法などから意味を判断します。一方、システム側は、それが壁なのか、舗装境界なのか、仮設物なのかを自動的に判別できないことがあります。形状の意味は、図面を読む人の知識や社内ルールに依存します。 三次元CADでは、立体形状を作成し、さまざまな方向から確認できます。ただし、立体形状を作っただけでBIM・CIMモデルになるわけではありません。形状に名称や分類、材質、管理番号などが設定されていなければ、情報活用の面では三次元図面に近い状態です。 BIM・CIMでは、モデルを構成する要素が、役割や属性を持つ情報単位として管理されます。例えば、建築物の柱であれば、断面寸法、高さ、材質、階、施工区分などを関連付けられます。道路であれば、路線、幅員、舗装構成、施工区間、管理番号などを登録できます。 形状に情報が関連付けられていると、条件に一致する要素を検索したり、特定の部材だけを表示したりできます。材質別、施工区分別、階別、工区別といった単位で要素を抽出することも可能になります。 この違いは、データの再利用性に大きく影響します。CAD図面では、図面上の文字や線を人が読み取り、別の帳票や管理資料へ転記する作業が発生することがあります。BIM・CIMでは、必要な属性が正しく登録されていれば、モデルから情報を取り出して集計や確認へ利用できます。 ただし、BIM・CIMに属性を登録すれば、必ず使いやすいデータになるわけではありません。同じ意味の情報が異なる名称で登録されたり、単位が統一されていなかったりすると、検索や集計の精度が下がります。 例えば、同じ材料を複数の表記で登録すると、集計時に別の材料として扱われる可能性があります。高さをミリメートルで入力する担当者とメートルで入力する担当者が混在すれば、数値の比較が難しくなります。 BIM・CIMでは、要素の分類、属性名、入力形式、単位、命名規則を事前に決める必要があります。自由に情報を登録できることは利点ですが、統一されたルールがなければ、情報量が多いだけの扱いにくいモデルになります。 導入判断では、現在の成果物が図面として完成すれば十分なのか、図面に含まれる情報を後工程でも利用したいのかを確認します。図面作成と印刷が業務の中心であれば、CADの簡潔なデータ構造が向いている場合があります。 一方、数量確認、工程管理、施工記録、点検履歴などへ情報をつなげたい場合は、意味を持つ要素として管理できるBIM・CIMが有効です。どの情報を再利用するのかが明確であるほど、導入効果を判断しやすくなります。

比較軸2 扱える情報と活用範囲

二つ目の比較軸は、扱える情報の種類と活用範囲です。CADでも形状、寸法、位置、名称、材料、注意事項など、多くの情報を図面上に記載できます。ただし、その多くは人が読んで理解することを前提としています。 図面上に部材名や材質を文字として記載すれば、設計意図を伝えられます。しかし、複数の図面から特定の材質だけを抽出したり、一定条件に該当する部材の数量を集計したりするには、別の作業が必要になることがあります。 CAD図面の情報は、平面図、断面図、詳細図、数量表などに分散しやすいという特徴もあります。必要な情報がどの図面に書かれているかを探し、図面間の関係を読み解かなければならない場合があります。 BIM・CIMでは、形状と属性情報を関連付けることで、情報を横断的に扱いやすくなります。特定の材料を使用する部材、一定期間に施工する要素、点検期限が近い設備などを、条件に基づいて抽出できます。 建築分野では、構造、設備、仕上げなどの情報を同じ空間上で確認し、納まりや干渉を検討できます。土木分野では、地形、道路、橋梁、地質、既設構造物、地下埋設物、施工ヤードなどを重ね、位置関係を把握できます。 また、工程情報とモデルを関連付ければ、施工段階ごとの状態を確認できます。施工前、施工中、完成時といった時間の変化をモデルで表現すれば、作業順序や仮設計画を関係者へ説明しやすくなります。 数量情報を関連付けた場合は、設計変更に伴う数量の変化を確認する用途にも利用できます。ただし、数量の算出方法や対象範囲が統一されていなければ、モデルから得た値と積算用の値が一致しない可能性があります。 BIM・CIMは、登録できる情報が多いこと自体が目的ではありません。利用予定のない属性まで細かく入力すると、モデル作成と更新の負担が増えます。項目が多すぎると、空欄、入力間違い、古い情報の残存も起こりやすくなります。 必要な情報は、モデルの利用目的から逆算して決めます。設計確認に使うモデルと、施工計画に使うモデルでは必要な属性が異なります。数量確認、出来形管理、維持管理など、用途が変われば求められる詳細度も変わります。 例えば、関係者への形状説明だけが目的であれば、細かな材質情報や管理番号まで登録する必要はないかもしれません。維持管理まで利用するのであれば、点検対象、更新時期、管理区分などの情報が必要になります。 導入時には、誰が、どの工程で、何を判断するために情報を使うのかを明確にします。利用者と利用場面が決まっていれば、必要以上にモデルを複雑化せず、効果につながる情報へ絞り込めます。 CADとBIM・CIMを比較するときは、入力できる情報の量だけでなく、入力した情報を実際に検索、集計、共有、更新できるかを確認することが重要です。情報を登録しても利用されなければ、入力作業だけが増えてしまいます。

比較軸3 設計変更と図面整合への対応

三つ目の比較軸は、設計変更への対応と図面間の整合性です。建築や土木のプロジェクトでは、設計条件、現場状況、発注者の要望、施工方法などによって変更が発生します。 CADで平面図、断面図、立面図、詳細図などを個別に作成している場合、一つの設計変更を複数の図面へ反映する必要があります。構造物の位置や高さを変更すれば、平面図だけでなく、縦断図、横断図、寸法、注記、数量なども確認しなければなりません。 変更の影響範囲が広いほど、修正箇所の見落としが起こりやすくなります。平面図では修正済みでも、断面図や詳細図に古い形状が残ると、図面間の不整合につながります。 複数の担当者が異なる図面を編集している場合は、変更内容の伝達も重要です。どの図面を誰が修正するか、どの時点のデータが最新版かを管理しなければなりません。 三次元CADを使用していても、二次元図面を別々に作成している場合は、同じ問題が起こります。立体形状を変更しても、個別に作成した図面や注記が自動的に更新されるとは限りません。 BIM・CIMでは、一つのモデルを基に平面、断面、立面などを生成する運用が可能です。モデル上の要素を変更し、その結果を関連する表示へ反映する仕組みを整えれば、図面間の不整合を減らしやすくなります。 例えば、構造物の高さを変更した場合、モデルから生成した断面表示にも変更を反映できます。属性や数量がモデルと連動していれば、関連する情報の更新にもつなげられます。 ただし、BIM・CIMであれば、すべての情報が自動的に更新されるわけではありません。モデルから切り離して編集した図面、手作業で追加した文字、別のファイルで管理している数量表などは、自動更新の対象外になる場合があります。 要素同士の関係設定が不十分であれば、期待した範囲まで変更が反映されない可能性もあります。自動更新される部分と、担当者が確認すべき部分を区別する必要があります。 設計変更に強い運用を作るには、どの情報をモデルから生成し、どの情報を個別に管理するかを決めます。変更の起点、修正担当者、確認担当者、承認手順、版管理方法も明確にしなければなりません。 変更頻度が高く、一回の変更が多くの図面や数量へ影響するプロジェクトでは、BIM・CIMの効果を得やすくなります。変更前後のモデルを比較することで、影響箇所を確認しやすくなる場合もあります。 一方、定型的な図面を短時間で作成し、変更範囲も限定される業務では、CADによる直接編集の方が効率的なことがあります。モデルの更新手順を追加するよりも、必要な図面だけを修正した方が早い場合があるためです。 導入を判断するときは、年間の図面枚数だけでなく、変更回数、変更一回当たりの影響範囲、整合確認にかかる時間を調べます。変更のたびに多数の図面を照合している場合は、モデルを中心とした管理へ移行する価値があります。

比較軸4 情報共有と合意形成の進め方

四つ目の比較軸は、関係者間の情報共有と合意形成です。CAD図面は、設計者、施工担当者、協力会社、発注者などの間で情報を伝える基本的な手段として広く使用されています。 図面の様式や記号に慣れている関係者であれば、必要な寸法、範囲、仕様などを短時間で確認できます。承認済みの図面を配布し、図面番号や改訂番号で管理する運用も行いやすい方法です。 一方、複雑な立体形状、高低差、地下構造、施工順序などは、二次元図面だけでは理解しにくい場合があります。複数の平面図や断面図を頭の中で組み合わせ、完成形を想像しなければならないためです。 図面を読む経験が少ない関係者には、どの線がどの構造物を表すのか、どの高さに配置されるのかが伝わりにくいこともあります。説明者と確認者で完成形の認識が異なると、施工段階で手戻りが発生する可能性があります。 BIM・CIMでは、三次元モデルを回転、拡大、断面表示しながら確認できます。地形と構造物、既設設備と新設設備、完成形と仮設計画などを重ねることで、位置関係を直感的に共有しやすくなります。 構造物の内部や地下部分も、表示を切り替えながら確認できます。図面上では重なって見える箇所でも、三次元モデルで高さ方向の関係を確認すれば、干渉や作業空間の不足に気付きやすくなります。 施工手順を段階ごとに表示すれば、重機の配置、資材の搬入経路、作業員の動線などを検討する材料にもなります。安全協議や施工前の説明で、関係者の認識を合わせる用途にも活用できます。 ただし、モデルを共有するだけでは、情報共有の問題は解決しません。どのモデルが最新版なのか、誰が更新できるのか、どの情報が承認済みなのかを管理する必要があります。 古いモデルと新しいモデルが同じ保存場所に存在すると、誤ったデータを基に判断する危険があります。ファイル名、改訂番号、更新日、承認状態などを確認できる運用が必要です。 また、すべての関係者が詳細なモデルを快適に閲覧できるとは限りません。モデルのデータ量が大きい場合や、使用する端末の性能が限られている場合は、表示に時間がかかることがあります。 受け手の業務に合わせて、全体モデル、必要部分だけを抽出したモデル、二次元図面、画像、帳票などを使い分けることが重要です。情報量が多いモデルをそのまま渡すよりも、確認対象を絞った方が意思決定しやすい場合があります。 CADには、確定した情報を図面単位で配布しやすいという利点があります。BIM・CIMを導入しても、図面が不要になるとは限りません。モデルは形状や関係性の確認に使い、正式な指示や承認には図面を使う運用も考えられます。 導入効果を評価するときは、モデルを作成できたかではなく、設計者以外の関係者が内容を理解し、意見を返し、判断に利用できたかを確認します。合意形成の手順まで整備されて初めて、BIM・CIMの情報共有効果が表れます。

比較軸5 導入負担と必要な運用体制

五つ目の比較軸は、導入に必要な負担と運用体制です。CADは多くの組織で長年使用されており、操作経験者、既存図面、標準図、図枠、記号、画層構成などが蓄積されています。 既存のテンプレートや作図ルールが整っていれば、担当者は定められた手順で図面を作成できます。過去の図面を複写して修正することで、定型的な成果物を効率よく作ることも可能です。 BIM・CIMを導入する場合は、作成用の環境を用意するだけでは不十分です。モデルの作成基準、属性項目、座標系、詳細度、ファイル構成、保存場所、確認方法、納品方法などを決める必要があります。 担当者の教育も欠かせません。CADの操作に慣れている人でも、BIM・CIMでは要素同士の関係や属性情報を意識してモデルを作成します。画面上で形状が完成していても、内部構造が適切でなければ、後工程で情報を利用できません。 例えば、複数の部材を一つの形状として作ると、個別の数量や属性を管理できない場合があります。反対に、細かく分割しすぎると、要素数が増えて更新や確認が複雑になります。 モデルをどの単位で作るかは、利用目的に合わせて決めます。設計確認に必要な単位、施工管理に必要な単位、維持管理に必要な単位が異なる場合は、工程間の引き継ぎ方法も検討します。 作成担当者だけがBIM・CIMを理解していても、組織全体の効果にはつながりません。設計担当者、施工担当者、測量担当者、積算担当者、管理者などが、自分の業務でモデルをどのように利用するかを理解する必要があります。 運用ルールがないまま導入すると、担当者ごとに要素名、属性名、入力単位が異なり、モデル同士を統合しにくくなります。保存場所やファイル名が統一されていなければ、最新版を探す作業にも時間がかかります。 一方で、最初から全社共通の大規模な運用基準を完成させようとすると、準備に時間がかかり、実務への導入が進まないことがあります。対象業務を限定し、小規模な案件で作成方法と利用方法を検証する方が現実的です。 初期段階では、干渉確認、施工手順の説明、土量確認、出来形比較など、成果を測定しやすい用途を選びます。導入前後で作業時間、修正回数、確認漏れ、協議時間などを比較すれば、効果を判断できます。 BIM・CIM導入では、モデル作成者の作業時間だけで評価しないことも重要です。設計段階の作業が増えても、施工段階の確認、修正、数量整理、維持管理の情報収集が減るのであれば、プロジェクト全体では効果がある可能性があります。 反対に、モデルを作成した後で誰も利用せず、従来のCAD図面も同じ手順で作り続けるのであれば、二重作業になります。導入時には、新たに追加する作業だけでなく、廃止または簡略化できる作業を決める必要があります。

比較軸6 向いている業務とプロジェクト

六つ目の比較軸は、どのような業務やプロジェクトに向いているかです。CADとBIM・CIMにはそれぞれ得意な場面があり、すべての案件を同じ方法で進める必要はありません。 CADは、二次元図面を迅速に作成する業務、既存図面を修正する業務、定型的な詳細図を多数作成する業務に向いています。成果物が図面中心で、関係者も従来の図面運用に慣れている場合は、CADを継続する方が効率的です。 小規模な改修や既存設備の一部変更など、対象範囲が限定されている案件でもCADが有効です。必要な情報を平面図、断面図、注記などで十分に伝えられるのであれば、全体をモデル化しても効果が小さい場合があります。 短期間で図面を作成しなければならず、設計変更や後工程での情報利用が少ない業務でも、CADの直接的な操作が適しています。モデルの属性や関係を設定するよりも、必要な線や寸法を入力した方が早いためです。 BIM・CIMは、複雑な形状を扱う案件、複数分野が同時に関係する案件、変更が多い案件、設計情報を施工や維持管理まで利用する案件に向いています。 建築分野では、構造と設備の干渉を確認する場合や、部屋、部材、設備などの情報を横断的に管理する場合に効果を得やすくなります。複雑な納まりを三次元で確認し、関係者と共有する用途にも適しています。 土木分野では、地形と構造物の関係、掘削や盛土の範囲、道路や橋梁の線形、既設構造物との干渉、施工段階ごとの状態などを確認する場面で活用できます。 地下構造物や埋設物が多い案件では、平面図だけでは高さ方向の関係が分かりにくいため、三次元モデルが有効です。施工ヤードが狭い現場では、重機、仮設設備、搬入経路などを含めた検討にも利用できます。 ただし、プロジェクトの規模が大きければ、必ずBIM・CIMが適しているとは限りません。モデルの利用者が限られ、後工程で情報を再利用しない場合は、作成負担に対して効果が小さくなることがあります。 反対に、小規模な案件でも、構造が複雑で説明が難しい場合や、施工制約が多い場合には、三次元モデルが役立ちます。案件金額や面積だけでなく、複雑さと情報利用の範囲で判断することが重要です。 導入判断では、形状の複雑さ、設計変更の頻度、関係者数、プロジェクト期間、情報を再利用する工程数を確認します。これらが多いほど、BIM・CIMによる情報統合の効果を得やすくなります。 現在の業務で、図面の読み違いが多い、変更の反映に時間がかかる、現場との認識合わせが難しい、数量確認を繰り返しているといった課題がある場合は、BIM・CIMを検討する価値があります。 一方、現在のCAD運用で品質と生産性を確保できている業務まで無理に変更する必要はありません。効果が期待できる案件や工程へ重点的に導入する方が、負担を抑えながら成果を得られます。

CADからBIM・CIMへ移行する判断手順

CADからBIM・CIMへの移行を検討するときは、機能の比較から始めるのではなく、現在の業務課題を整理することから始めます。導入目的が曖昧なままでは、モデルを作成すること自体が目的になりやすいためです。 最初に、どの工程で時間、手戻り、確認漏れが発生しているかを洗い出します。設計変更の反映、図面間の整合確認、数量集計、施工担当者への説明、現況との照合など、具体的な作業単位で整理します。 次に、それぞれの課題がBIM・CIMによって改善できるかを検討します。図面の作成速度だけが問題であれば、CADのテンプレートや作図ルールを改善する方が有効な場合があります。 複数図面の不整合や分野間の干渉が問題であれば、モデルを中心とした管理が効果を発揮しやすくなります。現況と設計の位置関係を確認したい場合は、三次元モデルと計測データの連携が有効です。 その後、モデルを誰が作成し、誰が使うかを決めます。作成担当者だけでなく、施工担当者、測量担当者、管理者などが利用できるかを確認します。 利用者が決まったら、必要な情報と詳細度を設定します。形状確認だけに使うのであれば、細かな属性を登録する必要はありません。数量や維持管理に使うのであれば、必要な分類と属性を定義します。 初めて導入する場合は、対象案件や対象範囲を絞ることが重要です。すべての構造物を詳細にモデル化するのではなく、干渉が多い部分、施工説明が難しい部分、数量管理が必要な部分などを選びます。 試行後は、モデル作成時間だけでなく、確認、協議、修正、施工時の手戻りまで含めて評価します。設計工程の負担が増えても、プロジェクト全体の作業が減っている可能性があります。 評価結果を基に、継続する用途、改善する用途、使用をやめる用途を分けます。効果が高かった作業は手順を標準化し、他案件へ展開します。 移行は、既存のCADを直ちに廃止することではありません。過去の図面や社内標準を活用しながら、効果が高い範囲からBIM・CIMを導入する方法が現実的です。

BIM・CIM導入で起こりやすい失敗

BIM・CIM導入で起こりやすい失敗は、目的を決めずにモデル作成を始めることです。三次元化すること自体が目標になると、見栄えの良いモデルが完成しても、設計確認や施工管理に使われないことがあります。 次に起こりやすいのは、必要以上に細かいモデルを作ることです。すべての部材や設備を詳細に表現すると、作成時間とデータ量が増えます。変更のたびに多数の要素を更新しなければならず、古い情報も残りやすくなります。 属性情報の登録しすぎにも注意が必要です。将来使う可能性だけを理由に多くの入力項目を設けても、入力担当者と確認方法が決まっていなければ、空欄や誤入力が増えます。 必要な属性は、現在予定している用途を基準に絞ります。将来の利用に備える場合も、追加可能な構造を用意し、最初からすべてを入力しない方法があります。 従来の業務手順を変えずに、モデル作成だけを追加することも失敗につながります。CAD図面を従来どおり作成し、同じ内容を別にモデル化すると、単純な二重作業になります。 どの図面をモデルから生成するのか、どの帳票を自動化するのか、どの確認作業を廃止できるのかを決める必要があります。導入によって増える作業と減らせる作業を同時に整理することが重要です。 特定の担当者だけに作業が集中することも問題です。一人だけがモデルの構造や更新方法を理解している状態では、その担当者が不在になると作業が止まります。 作成ルール、確認方法、保存場所、更新手順を文書化し、複数人が扱える状態を作ります。作成者以外にも、閲覧と確認ができる担当者を増やす必要があります。 現場でモデルを利用する方法を準備していないことも、導入効果を下げる原因です。設計部門では詳細なモデルを閲覧できても、施工現場で表示できなければ、情報共有にはつながりません。 現場では、必要な範囲だけを表示し、設計位置と現在位置を比較できる仕組みが求められます。通信環境や端末性能も考慮し、現場で無理なく使えるデータ量に調整します。 モデルの品質は、細かさや見栄えだけで評価するものではありません。必要な利用者が、必要な時点で、正しい情報を確認できるかが重要です。

CADとBIM・CIMを併用する方法

実務では、CADとBIM・CIMのどちらか一方だけを選ぶのではなく、両方を併用する方法が現実的です。モデルを中心に全体形状や干渉を確認し、詳細な寸法や正式な指示には二次元図面を使用できます。 BIM・CIMモデルは、全体の形状、位置関係、施工順序などを確認するために利用します。一方、加工指示、細かな寸法、注記などは、CAD図面の方が短時間で作成しやすい場合があります。 既存案件では、過去のCAD図面が重要な資料です。すべての図面をモデル化し直すのではなく、今回の工事に必要な範囲だけを三次元化し、元の図面と組み合わせて使う方法があります。 新規案件でも、初期段階では簡易なモデルで配置や基本形状を検討し、詳細設計ではCAD図面を併用できます。施工段階では、重要箇所だけをモデルで確認し、日常的な作業指示には図面を使うことも可能です。 併用するときは、モデルと図面のどちらを正式な情報とするかを決める必要があります。両方を別々に修正すると、形状や寸法が一致しなくなる可能性があります。 変更の起点、更新の順番、確認担当者を明確にします。モデルから生成した図面と、個別に編集した図面が混在する場合は、その区別も管理しなければなりません。 例えば、全体形状はモデルを正式情報とし、詳細な注記は図面で管理する方法があります。その場合、形状変更は最初にモデルへ反映し、モデルから図面を再生成した後で注記を確認します。 CADの操作性とBIM・CIMの情報連携を組み合わせれば、既存業務を大きく崩さずに段階的な改善を進められます。併用は移行途中だけの方法ではなく、それぞれの長所を生かす継続的な運用として有効です。

現場計測データとBIM・CIMを連携する考え方

BIM・CIMを施工段階で活用するには、設計モデルだけでなく、現場で取得した情報を連携する仕組みが重要です。施工現場の地形、構造物、出来形、進捗は日々変化します。 設計モデルが正確でも、現況が反映されていなければ、施工判断に十分利用できません。設計上の位置と実際の施工位置を比較し、差がある箇所を早期に把握する必要があります。 従来は、現場で取得した測定値を帳票へ記録し、事務所へ戻ってCAD図面へ入力する作業が行われてきました。この方法では、転記、座標入力、写真整理などに時間がかかります。 数値の入力間違い、写真と測点の対応ミス、反映漏れが起こる可能性もあります。計測から確認までに時間がかかると、施工が進んだ後で差異に気付くこともあります。 現場で取得した座標、写真、点群などを、設計データと同じ座標上で管理できれば、現況と計画を比較しやすくなります。構造物の設置位置、掘削範囲、盛土形状などを三次元で確認できます。 点群は、現場の表面形状を多数の点で記録するデータです。一点ずつ測る方法では把握しにくい地形の起伏や構造物の形状を面的に確認できます。 CAD図面やBIM・CIMモデルと点群を重ねれば、設計形状と現況の違いを視覚的に確認できます。差異がある箇所を把握し、追加計測や修正の必要性を検討する材料になります。 ただし、データを重ねるときは、座標系、高さ基準、単位をそろえなければなりません。異なる基準のデータをそのまま表示すると、実際には正しく施工されていても、モデル上ではずれて見えることがあります。 計測日時も重要です。異なる日に取得した点群や写真を比較する場合は、施工の進行状況が異なります。いつ取得したデータなのかを記録し、比較対象を明確にします。 現場計測からモデル確認までの運用も決める必要があります。誰が計測し、誰がデータを確認し、差異があった場合に誰へ連絡するかを明確にします。 計測データを保存するだけでは、施工改善にはつながりません。取得した情報を設計担当者や施工管理者が確認し、必要に応じて施工方法や設計情報へ反映する流れが必要です。 LRTK Phoneのように、現場で位置情報付きの写真や点群を取得できる仕組みを利用すれば、現況記録をCADやBIM・CIMで扱うデータへつなげやすくなります。 現場の状態を共通の座標上で記録することで、どこを撮影した写真なのか、どの範囲を計測した点群なのかを整理しやすくなります。設計モデルと現場の状態を往復できる環境を整えれば、BIM・CIMを設計時だけでなく、施工管理や出来形確認にも活用できます。

まとめ

CADとBIM・CIMの違いは、二次元と三次元の違いだけではありません。CADは、図面や形状を正確かつ効率的に作成することを得意とします。 BIM・CIMは、形状に名称、材質、数量、工程、管理情報などを関連付け、設計、施工、維持管理の複数工程で利用することを重視します。 導入判断では、データ構造、扱える情報、設計変更への対応、情報共有、運用体制、対象業務という六つの比較軸で検討することが重要です。 図面作成が中心で、変更範囲や情報共有の対象が限定されている業務では、CADが効率的です。複数分野の調整、頻繁な変更、施工計画、数量管理、維持管理まで情報を利用したい場合は、BIM・CIMの効果を得やすくなります。 ただし、BIM・CIMを導入するだけで業務が自動的に改善されるわけではありません。利用目的、必要な詳細度、属性項目、更新担当者、共有方法を決め、モデルを実務で使い続けるための運用が必要です。 CADとBIM・CIMを対立するものとして考える必要もありません。全体形状や情報連携はBIM・CIMで管理し、詳細な作図や既存図面の活用にはCADを使うなど、業務に応じて併用できます。 さらに、設計情報を現場で活用するには、現況を正確に計測し、同じ座標上で比較する仕組みが欠かせません。位置情報付き写真や点群を取得できるLRTK Phoneを活用することで、CADやBIM・CIMの設計データと現場の状態を結び付け、設計から施工、出来形確認まで一貫した情報活用へつなげられます。

現場を3Dで残して、あとから測る。
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