LRTKレフィクシア株式会社

CADデータから機密情報を削除する6つの確認ポイント

CADデータを社外へ渡す際は、図面上に表示されている会社名や担当者名を消すだけでは十分とは限りません。CADデータには、画面に見えている線や文字のほかにも、非表示の画層、図面外に置かれたオブジェクト、部品やブロックの属性、外部参照先、作成者情報、座標情報、コメント、旧版の図形などが含まれている場合があります。

印刷結果や閲覧画面では見えなくても、受け取った側が画層の表示を切り替えたり、図形を移動したり、プロパティを確認したりすると、削除したつもりの情報が表示される可能性があります。顧客名や現場名だけでなく、社内のフォルダ構成、案件番号、設備の配置、製品の内部構造、未承認の設計案などが伝われば、情報漏えいや契約上の問題につながりかねません。

安全に共有するためには、元のCADデータを直接編集するのではなく、共有専用の複製データを作成し、共有目的に不要な情報を段階的に削除することが大切です。さらに、削除後のデータを別の環境で開き、受け手の視点から再確認する必要があります。

この記事では、CADデータから機密情報を削除するときに確認したい6つのポイントを、実務で使いやすい流れに沿って解説します。特定のソフトウェアに依存しない内容として、建築、土木、測量、設備、製造など、幅広い分野のCAD業務で応用できる考え方を整理します。

CADデータに含まれる機密情報の範囲

CADデータに含まれる機密情報として最初に思い浮かぶのは、図枠に記載された会社名、顧客名、現場名、担当者名、住所、連絡先などです。しかし、実際に確認すべき範囲は、図面上に表示されている文字だけではありません。

図面を作成する過程では、設計者が検討用の図形を別の画層へ移したり、旧案を図面の外側へ退避したりすることがあります。完成図では見えなくても、データ内には設計途中の情報が残っています。受け手が全画層を表示したり、図面全体を表示したりすれば、通常画面では見えなかった内容を確認できる可能性があります。

画層名にも注意が必要です。画層名に顧客の略称、案件番号、設備名、担当部署名、設計段階、重要度などが含まれていると、図形を削除しても名称から内部情報を推測される場合があります。たとえば、非表示の画層に「未承認」「見積用」「原価検討」「別案」などの名称が付いていれば、社内の検討状況が伝わる可能性があります。

ブロック、部品、シンボルなどに登録された属性も確認対象です。図面上には短い名称しか表示されていなくても、属性情報として正式な顧客名、型式、管理番号、製造条件、担当者、原価区分などが保存されていることがあります。配置されていない未使用の定義であっても、CADデータの内部に残っていれば、検索や再配置によって内容を確認できる可能性があります。

また、ファイルの作成者、最終更新者、会社名、作成日時、コメント、キーワードなどが文書プロパティに保存されている場合があります。外部参照のパスには、社内のサーバー名、利用者名、部署名、案件フォルダなどが含まれることもあります。図面そのものに問題がなくても、これらの付帯情報から組織内部の状況が読み取られるおそれがあります。

土木や測量、建築のCADデータでは、座標値も重要な機密情報です。住所や現場名を削除していても、公共座標、基準点、標高、方位、周辺地形などが残っていれば、場所を特定できる場合があります。製造分野では、部品形状、内部構造、公差、材質、加工条件など、形状そのものが機密情報になることもあります。

したがって、CADデータの機密情報を削除する際は、文字検索だけで完了させるのではなく、表示情報、非表示情報、属性情報、参照情報、位置情報、履歴情報を含めたデータ全体を確認する必要があります。

確認ポイント1 作成者情報と文書プロパティを確認する

最初の確認ポイントは、CADデータに保存されている作成者情報と文書プロパティです。これらは図面の表示領域には現れないことが多く、通常の目視確認だけでは見落としやすい情報です。

文書プロパティには、作成者名、最終更新者名、会社名、部署名、件名、タイトル、説明、キーワード、コメント、作成日時、更新日時などが保存されている場合があります。共有目的に必要のない個人名や組織名が含まれている場合は、削除または一般化を検討します。

とくに注意したいのが、件名やコメント欄です。図面の作成者がメモとして顧客名、案件番号、現場の課題、未承認事項などを入力していることがあります。図面を開いた直後には表示されなくても、受け手がプロパティ画面を確認すれば内容を読める可能性があります。

ファイル名にも同様の注意が必要です。図面内の顧客名を削除していても、ファイル名に顧客名、工事名、契約番号、担当者名、施設名などが含まれていれば、情報は残ったままです。社外共有用のファイル名は、共有目的に必要な範囲で簡潔に設定し、社内だけで使用する管理番号や略称をそのまま使わないほうが安全です。

共有するフォルダ名や圧縮データの名称も確認します。CADデータだけを安全な名称へ変更しても、上位フォルダや送付用の圧縮データに案件名が残っていれば、機密情報の削除は不十分です。複数の図面をまとめる場合は、ファイル名、フォルダ名、送付件名を含めて統一的に確認します。

保存先の履歴やテンプレート名が残る場合もあります。テンプレート名に部署名や顧客名が含まれていたり、保存先の情報から社内のフォルダ構成が推測できたりする可能性があります。共有専用の新しいデータを作成し、必要な図形だけを移す方法もありますが、その場合は尺度、文字、線種、座標、属性などが正しく引き継がれているかを確認しなければなりません。

プレビュー画像や縮小表示にも注意が必要です。図面内の機密情報を削除した後でも、ファイル一覧に表示されるプレビューに削除前の状態が残る場合があります。共有用データを保存し直したうえで、一度閉じて再度開き、プレビューや文書情報が更新されているか確認します。

作成者情報を削除する場合でも、社内の承認記録まで失わないようにします。外部共有用データから個人名を削除しても、社内の管理台帳には、作成者、確認者、共有日、共有先、対象版を記録しておくことが重要です。CADデータ内の情報と社内の管理記録を分けることで、情報保護と追跡性を両立できます。

確認ポイント2 非表示の画層と図面外の図形を確認する

2つ目の確認ポイントは、非表示の画層と図面外に置かれた図形です。CADデータから機密情報を削除する際に、特に見落としが起こりやすい部分です。

CADによる作図では、完成図に表示しない情報を別の画層へ分ける運用がよく行われます。検討案、既存図、撤去範囲、施工手順、測量メモ、原価検討、他社から受領した参考図、未確定の設備配置などが、非表示の画層に残っていることがあります。

画層を非表示、凍結、印刷対象外などの状態にしても、その画層の図形がデータから削除されたわけではありません。受け手が画層設定を変更すれば、非表示だった図形を確認できる可能性があります。そのため、共有に不要な画層は隠すだけでなく、共有用データから削除できるか検討する必要があります。

削除前には、すべての画層を一覧で確認します。画層名だけで判断せず、実際に表示を切り替えて内容を確認することが大切です。一見すると不要に見える画層でも、必要な寸法や基準線が含まれている場合があります。反対に、必要な画層名の中に、共有対象外の図形が混在している場合もあります。

画層名自体も機密情報になることがあります。顧客名、案件番号、設備区分、担当会社、施工段階、承認状態などが画層名に含まれている場合は、図形を削除しても情報が残ります。必要な画層については、共有先に伝わっても問題のない一般的な名称へ変更することを検討します。

図面の外側に置かれた図形も確認します。作図中にコピー元の図形や旧案を図面枠の外へ移動し、そのまま残しているケースがあります。通常の印刷範囲には入らず、画面上でも小さく表示されるため、完成時の確認では見落としやすい部分です。

全図形の範囲を表示したときに、主図面から大きく離れた場所まで表示範囲が広がる場合は、図面外に不要なオブジェクトが残っている可能性があります。離れた図形を確認し、共有に必要のない旧案、補助線、文字、寸法、表などを削除します。

レイアウトや印刷用シートも順番に確認します。現在使用しているレイアウト以外に、社内確認用、旧版、検討用、別案件用のシートが残っている場合があります。モデル空間だけを確認して共有すると、不要なレイアウトから機密情報が漏れるおそれがあります。

レイアウト内の非表示ビューポート、印刷対象外の注釈、図枠の外側に置かれた文字も確認対象です。印刷されないから安全とは限りません。共有先が編集可能なCADデータを受け取る場合は、印刷範囲外の情報も閲覧できます。

不要な画層や図形を削除した後は、表示更新を行い、残った図形が正しく表示されるか確認します。削除によって、寸法の参照先、ハッチングの境界、線種、注釈、部品属性などが変化する場合があります。機密情報を消すことだけに集中せず、図面としての整合性も確認する必要があります。

確認ポイント3 ブロックや部品の属性情報を確認する

3つ目の確認ポイントは、ブロック、部品、シンボルなどに付与された属性情報です。図面上に表示される文字を削除しても、内部の属性値や定義に機密情報が残っている場合があります。

ブロックや部品には、品名、型式、管理番号、材質、数量、設置場所、担当者、顧客コード、製造条件などを登録できる場合があります。図面上では一部の属性だけを表示し、その他の属性を非表示にしているケースもあります。受け手が属性編集画面やプロパティ画面を開くと、非表示の情報を確認できる可能性があります。

共有前には、図面上に配置されている部品だけでなく、登録されている属性項目と属性値を確認します。顧客名、社内コード、原価区分、発注先、担当者名など、共有目的に不要な情報は削除または一般化します。

属性値を空欄にしても、属性項目の名称から内部情報が推測されることがあります。たとえば、社内だけで使う管理項目や承認区分が属性名として残っている場合です。共有先に不要な属性項目は、値だけでなく定義そのものを除けるか確認します。

未使用のブロックや部品定義にも注意が必要です。図面上に配置されていなくても、過去に使用した定義がデータ内に残っている場合があります。その定義に別案件の名称、旧製品の仕様、顧客専用の部品、担当者名などが含まれていれば、再挿入や定義一覧の確認によって情報が見える可能性があります。

不要要素を整理する機能を使えば、使用されていない定義を削除できる場合があります。ただし、自動整理ですべての機密情報が安全に削除されるとは限りません。使用中と判断された定義には不要情報が残ることがあり、反対に、共有後の編集に必要な定義が削除される可能性もあります。実行前に対象を確認し、実行後に図面の表示や編集性を確認することが重要です。

製造分野では、部品の形状履歴や設計意図が機密情報になる場合があります。完成形だけを共有するつもりでも、内部に元形状、加工前形状、補助形状、拘束条件、パラメータなどが残っていれば、設計過程を推測される可能性があります。

共有目的が閲覧や干渉確認だけであれば、詳細な設計履歴を持たない共有用形状へ変換する方法も考えられます。ただし、変換によって寸法精度や形状の再現性が変わる場合があるため、利用目的に応じて判断します。施工や製造に使うデータでは、必要な情報を削除しすぎると作業ミスにつながります。

図枠やタイトル欄も、ブロックとして作られていることがあります。画面上の顧客名を削除しても、属性の初期値や候補値に元の名称が残っている場合があります。図枠を別案件から流用している場合は、表示内容だけでなく属性定義まで確認します。

属性情報の確認では、図面上に見える情報、非表示属性、定義済みの初期値、未使用定義の4つを分けて確認すると、削除漏れを減らせます。

確認ポイント4 外部参照と埋め込みデータを確認する

4つ目の確認ポイントは、外部参照と埋め込みデータです。CADデータは、単独のファイルだけで構成されているとは限りません。別のCADデータ、画像、表、文書、点群、地形、設備台帳などを参照している場合があります。

元のCADデータから顧客名や社内情報を削除しても、参照先のデータに情報が残っていれば、共有時に漏れる可能性があります。また、参照先そのものを渡さなくても、参照パスやファイル名から社内の情報が推測されることがあります。

絶対パスには、社内サーバー名、端末の利用者名、部署名、案件フォルダ、顧客名などが含まれる場合があります。共有先で参照が見つからなかったとき、警告画面や参照管理画面に元のパスが表示される可能性があります。

共有前には、登録されている参照を一覧で確認し、共有目的に必要な参照だけを残します。不要な参照は解除し、必要な参照は共有専用のフォルダ構成へ変更します。共有先へ渡す必要がある参照データについても、元のCADデータと同じ基準で機密情報を確認します。

参照データを一つのCADデータへ統合する方法もありますが、統合しただけで機密情報が消えるわけではありません。参照元の画層名、部品名、属性、コメント、座標情報などが、統合後のデータへ引き継がれる場合があります。統合後は、新しい一つのCADデータとして再度確認する必要があります。

画像データにも注意します。図面上では必要な部分だけを切り抜いて表示していても、元画像全体が参照または埋め込みされている場合があります。表示範囲の外に、人物の顔、車両番号、住所、管理票、周辺施設、別の設備などが写っている可能性があります。

表示枠で隠すだけでは、元の画像情報は残ります。共有が必要な範囲だけを別の画像として作成し、その画像へ置き換える方法を検討します。置き換え後は、解像度、尺度、位置、向きが適切か確認します。

表や帳票を埋め込んでいる場合は、非表示の行や列、別シート、数式、コメントなどに注意します。CAD画面上では一部のセルしか表示されていなくても、元データに原価、数量、連絡先、担当者、見積条件などが含まれている場合があります。

共有目的が図面上の表を閲覧することだけであれば、必要な範囲を静的な図形や共有用の画像へ変換する方法もあります。ただし、変換後の数値や文字が正しく読めるか、桁が欠けていないかを確認します。

点群や地形データでは、図面よりも広い範囲の現況情報が含まれている場合があります。対象施設だけでなく、近隣敷地、建物内部、設備配置、通行人、車両などが記録されている可能性があります。表示範囲を限定しただけでは元データが残るため、共有に必要な範囲を切り出したデータを作成します。

外部参照を整理した後は、共有予定のデータだけを新しいフォルダへ集め、そのフォルダ内のデータだけで正しく開けるか確認します。社内の元フォルダへ接続した状態では、不足している参照を自動的に読み込んでしまい、共有先での状態を正しく再現できないことがあります。

確認ポイント5 座標情報と場所を特定できる要素を確認する

5つ目の確認ポイントは、座標情報と場所を特定できる要素です。住所、施設名、現場名を削除していても、座標値や周辺形状から場所が分かる場合があります。

土木、測量、建築、設備管理のCADデータでは、公共座標、任意座標、基準点、測点、標高、方位角、通り芯などが使われます。共有先が座標系や地域の情報を知っていれば、図面の絶対位置を推定できる可能性があります。

機密性の高い施設、未公開の開発計画、重要設備などでは、正確な位置情報自体が機密情報になることがあります。共有目的に絶対位置が必要ない場合は、共有用データの原点を移動し、任意座標へ変換する方法を検討します。

ただし、単純に図形を移動すれば安全になるわけではありません。文字、属性、基準点名、座標一覧、表、コメントなどに元の座標値が残っている場合があります。外部参照や画像の位置情報が変換されず、元の場所を示したままになることもあります。

座標を変更すると、測量成果、設備台帳、施工管理データ、外部参照との整合が失われます。そのため、閲覧用、協議用、施工用など、利用目的に応じて共有データを分けることが重要です。閲覧用には任意座標を使い、施工用には必要な関係者だけへ正しい座標を提供するなど、共有範囲を調整します。

基準点名、点番号、標高、路線名、測点番号なども、場所を特定する手掛かりになります。図面上の文字を削除していても、点オブジェクトの属性や未使用定義、画層名に残っている可能性があります。

周辺地形、道路形状、河川、建物配置、敷地境界などから場所が推定される場合もあります。対象範囲だけを共有する場合は、周辺情報を必要最小限まで減らします。背景図、座標グリッド、行政界、地番に相当する情報なども、目的に不要であれば削除を検討します。

方位情報も確認対象です。北方向、座標軸、道路の向き、周辺施設との位置関係がそろうと、住所がなくても場所を推測しやすくなります。共有先が必要とする情報が相対的な形状や寸法だけであれば、絶対方位を除く方法も考えられます。

製造分野では、地理的な位置ではなく、製品を特定できる形状や属性が問題になります。部品番号、試作番号、材質、加工条件、公差、取引先コード、製造設備の識別情報などは、共有目的に不要であれば削除します。

また、製品の内部構造や詳細形状そのものが知的財産となる場合があります。共有目的が外形確認だけであれば、内部構造を除いた簡略形状を作成する方法があります。必要以上に詳細な形状を共有しないことで、設計情報の流出範囲を抑えられます。

位置や形状を加工した後は、共有目的に必要な精度が残っているか確認します。機密保護のために必要情報まで削除すると、施工、製造、干渉確認、数量算出などに支障が出ます。情報を削除する前に、受け手が何に利用するのかを整理することが重要です。

確認ポイント6 共有用データを別環境で再確認する

6つ目の確認ポイントは、機密情報を削除した共有用データを、別の環境で再確認することです。作業を行った端末で問題なく見えるからといって、共有先でも同じ状態になるとは限りません。

同じ端末では、社内の参照ファイル、フォント、テンプレート、画像、設定ファイルなどが自動的に読み込まれる場合があります。そのため、参照の不足や不要情報の残存に気づかないことがあります。

共有用データを新しいフォルダへ移し、実際に送る予定のファイルだけを置いた状態で開きます。参照警告が表示されないか、不要なファイルを探していないか、図面の一部が欠けていないかを確認します。

可能であれば、元の社内フォルダや共有先へ接続していない環境で確認します。共有先に近い状態を再現することで、外部参照の漏れやパス情報の残存を見つけやすくなります。

図面を開いた後は、通常表示だけでなく、すべての画層、レイアウト、表示範囲、属性、プロパティを確認します。全画層を表示し、図面全体を表示し、図形や文字を検索します。

検索では、顧客名、案件名、担当者名、住所、連絡先、社内番号、施設名、製品名、フォルダ名など、削除対象として想定した語句を確認します。正式名称だけでなく、略称、旧名称、英数字の管理番号なども対象にすると、見落としを減らせます。

可能であれば、作成者とは別の担当者が確認します。作成者は図面の背景を知っているため、見慣れた文字や名称を機密情報として認識しにくいことがあります。第三者が共有目的に必要かどうかという視点で見ると、余分な情報を発見しやすくなります。

別担当者には、単に表示崩れを確認してもらうのではなく、共有先、共有目的、削除対象を伝えます。何を機密情報として扱うかが共有されていなければ、確認者によって判断が変わってしまいます。

閲覧用データへ変換する場合は、変換前と変換後の両方を確認します。閲覧用形式に変換すると編集しにくくなることはありますが、文字、画像、プロパティ、添付情報などが残る場合があります。形式変換だけで安全になったと判断しないことが重要です。

送付対象の一覧も確認します。共有用データが安全でも、同じフォルダに元データ、バックアップ、自動保存データ、作業メモ、参照元データが含まれていれば、誤送付の可能性があります。

最終確認後のファイルだけを送付専用のフォルダへ移し、送付直前に再度開きます。ファイル名、更新日時、版番号、容量、図面内容を照合し、確認済みのデータと実際に送るデータが一致していることを確認します。

CADデータから機密情報を削除する実務手順

実務では、6つの確認ポイントを個別に見るだけでなく、一定の順序で進めると作業しやすくなります。

最初に元のCADデータを保全し、共有専用の複製を作成します。元データを直接編集すると、必要な情報まで削除した場合に復旧が難しくなります。複製したデータには、共有用であることが分かる名称を付け、元データと明確に区別します。

次に、共有目的を整理します。受け手が図面を閲覧するだけなのか、寸法を確認するのか、図形を編集するのか、施工や製造に使用するのかによって、残すべき情報は異なります。

共有目的が閲覧だけであれば、編集情報や詳細属性を減らせる場合があります。一方、施工や製造に使用する場合は、座標、寸法、形状精度などを残す必要があります。安全性だけを優先して必要情報を削除すると、業務上のミスにつながります。

共有目的を決めたら、図面上に見える情報から確認します。図枠、注記、表、引出線、写真、背景図、部品属性などを確認し、顧客名、住所、担当者名、連絡先、案件番号、社内コード、原価情報、未承認事項などを削除または一般化します。

文字を別の図形で覆い隠す方法は避けます。目隠し用の図形を移動または削除されると、元の文字が表示されるためです。共有に不要な情報は、元の文字や属性そのものを削除します。

次に、非表示の画層、図面外のオブジェクト、未使用のレイアウト、ブロック定義、属性、コメントなどを確認します。不要要素を整理する機能を使う場合は、削除対象を確認してから実行します。

続いて、外部参照、画像、表、文書、点群などを確認します。不要な参照を解除し、必要な参照は共有専用のデータへ置き換えます。参照先のデータについても、機密情報を確認します。

その後、座標、基準点、標高、方位、周辺地形などを確認します。絶対位置が不要な場合は、共有用の任意座標へ変換する方法を検討します。変換後は、相対寸法や図形の位置関係が正しいかを確認します。

文書プロパティ、ファイル名、フォルダ名、プレビューも確認します。図面内の情報だけでなく、送付物全体から機密情報が伝わらない状態にします。

最後に、共有予定のファイルだけを別のフォルダへ集め、別環境と別担当者で確認します。確認結果は社内の記録として残し、誰が、いつ、どの版を、どの共有先へ送ったのかを追跡できるようにします。

機密情報の削除で起こりやすい失敗

CADデータから機密情報を削除する作業では、いくつかの典型的な失敗があります。

代表的なのが、情報を非表示にしただけで削除したと判断することです。画層を非表示にする、印刷対象から外す、図形で覆う、表示範囲を切り抜くといった操作では、元の情報が残る場合があります。共有先が設定を変更すれば、隠した情報が表示される可能性があります。

元データを直接編集することも避ける必要があります。削除作業中に必要な寸法、属性、参照情報などを消してしまうと、元の状態へ戻せない場合があります。必ず共有用の複製を作成し、元データは保全します。

ファイル名の変更だけで別データになったと考えるのも危険です。名前を変更しても、文書プロパティ、画層、属性、外部参照などは引き継がれます。複製後も、データ内部を確認しなければなりません。

不要要素の一括整理を過信することにも注意します。自動機能は、共有目的や機密性を判断できません。未使用の定義を削除できても、使用中の属性に残った顧客名までは削除されない場合があります。

形式変換だけで安全になったと判断するのも失敗の一つです。変換後のデータにも、文字、画像、添付、プロパティ、座標などが残ることがあります。変換後のデータを改めて確認する必要があります。

座標をずらす際に、寸法や参照関係を壊すケースもあります。図形だけを移動し、画像、点群、注釈、属性などが元の位置に残ると、図面が不整合になります。座標を加工する場合は、すべての関連要素を確認します。

確認済みとは異なるファイルを送付する失敗もあります。作業フォルダに複数の版があると、未処理のデータを選択してしまう可能性があります。最終確認後のデータだけを送付専用フォルダへ移し、送付直前に開いて確認します。

機密情報を削除しすぎて、業務に必要な情報まで失うことも問題です。相手が施工や製造に使う場合、必要な座標、寸法、形状、公差などを消すと、作業ミスの原因になります。共有目的と削除範囲を事前に整理することが欠かせません。

安全なCADデータ共有を継続するための運用

CADデータの機密情報削除を担当者の注意だけに任せると、確認範囲や判断基準にばらつきが生じます。継続的に安全な共有を行うためには、社内の手順として整理することが重要です。

まず、CADデータを社外共有するときは、必ず共有専用の複製を作成するルールを設けます。元データ、社内確認用データ、外部共有用データの保存場所と名称を分けることで、誤編集や誤送付を防ぎやすくなります。

次に、共有目的ごとの基準を作ります。閲覧用、見積用、協議用、施工用、製造用などに分け、残す情報と削除する情報を決めます。毎回ゼロから判断するのではなく、用途別の基準を用意すると、作業時間を短縮できます。

確認項目には、文書プロパティ、ファイル名、画層、レイアウト、図面外の図形、ブロック属性、外部参照、画像、座標、コメント、送付対象を含めます。確認者が順番に点検できる形にすると、担当者による確認漏れを減らせます。

図枠や部品のテンプレートも見直します。初期値として個人名、部署名、顧客名などが登録されていると、削除漏れが繰り返し発生します。共有を前提とした汎用テンプレートを用意すると、毎回の修正を減らせます。

画層名や属性名の命名ルールも重要です。社内情報を含む名称を安易に使わず、共有されても問題のない一般的な名称を基本とします。社内専用の情報が必要な場合は、外部共有時に削除しやすい構造へ分けておきます。

承認手順では、作成者と確認者を分けることが有効です。別担当者が共有目的と削除対象を確認し、最終ファイルを承認します。小規模な組織で担当者を分けにくい場合でも、時間を置いて再確認したり、別の端末で開いたりすることで、見落としを減らせます。

共有後の管理も必要です。共有先、共有日、対象ファイル、版番号、確認者、利用目的などを記録します。差し替えが必要になった場合に、どのデータが誰へ渡ったのかを確認できれば、迅速に対応できます。

受け手に再配布の可能性がある場合は、利用範囲を明確に伝えます。ただし、注意書きだけで情報漏えいを完全に防ぐことはできません。再配布される可能性を前提として、最初から必要最小限の情報だけを渡すことが基本です。

まとめ

CADデータから機密情報を削除するときは、図面上に表示されている顧客名や担当者名だけでなく、作成者情報、文書プロパティ、非表示の画層、図面外の図形、ブロック属性、外部参照、埋め込みデータ、座標情報まで確認する必要があります。

非表示、切り抜き、印刷対象外といった設定は、情報を完全に削除する操作ではありません。受け手が画層や表示設定を変更すれば、隠れていた情報が現れる可能性があります。共有に不要な情報は、共有用データから実体を削除することが重要です。

実務では、元データを保全して共有専用の複製を作り、共有目的に応じて残す情報と削除する情報を整理します。そのうえで、表示情報、非表示情報、属性情報、参照情報、座標情報、最終送付物の順に確認すると、作業を進めやすくなります。

削除後のデータは、元の作業環境とは異なるフォルダや端末で開き、可能であれば別担当者が確認します。実際に送付するファイルを送付直前に開き、確認済みの版と一致しているかを照合することも欠かせません。

CADと現場情報を連携する業務では、写真や点群に含まれる位置情報、周辺情報、撮影対象にも同じ考え方が必要です。LRTK Phoneで取得した位置情報付き写真や現場データをCADと組み合わせる場合も、社内保存用と外部共有用を分け、共有目的に必要な範囲を明確にすることが大切です。

CADデータの確認手順とLRTK Phoneによる現場情報の管理を一体的に整備することで、設計データと現場データの利便性を保ちながら、不要な情報の流出を防ぎやすくなります。

現場を3Dで残して、あとから測る。
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