CLAS測量を公共測量に活用したいと考えたとき、最初に確認すべきなのは、センチメートル級の測位ができるかどうかだけではありません。令和8年(2026年)の制度において、CLASをどのような測量に利用できるのか、作業規程の準則に適合するのか、測量成果として必要な精度を確認できるのかという点が重要です。
結論からいうと、令和8年10月時点で確認できる公表資料では、CLASによる単点測位が公共測量の標準的な成果作成方法として一般に位置付けられているわけではありません。令和8年5月12日に準天頂衛星システムの公式サイトで公開された研究紹介でも、CLASの測位解の精度を確認する有効な点検方法が確立されていないことが、公共測量への適用に関する課題として説明されています。
一方、作業規程の準則には、規定されていない新しい測量技術を使用するための特例があります。適切な作業マニュアルや精度検証資料を整え、測量計画機関が必要な精度を確認し、所定の手続きを踏むことで、個別の公共測量への適用を検討できる仕組みです。
そのため、CLASは公共測量に無条件で使えるという判断も、すべての公共測量で一切使用できないという判断も適切ではありません。測量目的、成果の種類、要求精度、適用する作業規程、事前の技術的確認を整理して判断する必要があります。
また、令和7年4月には全国の標高成果が改定され、測地成果2024に基づく運用が始まりました。令和8年度には地殻変動補正パラメータも更新されています。CLASで取得した座標と既存の公共測量成果を比較するときには、座標の基準時点や高さの取り扱いにも注意が必要です。
この記事では、令和8年のCLAS測量を公共測量に活用する際に確認したい5つのポイントを、制度上の位置付け、作業規程、測位精度、座標管理、成果確認の順に解説します。測量計画機関の担当者、測量会社の技術者、自治体の発注担当者、施工管理者が、導入前に何を確認し、どのような資料を準備すべきかを具体的に整理します。
令和8年のCLAS測量と公共測量の基本的な関係
CLASとは、準天頂衛星システムから配信される補強情報を利用して、高精度な衛星測位を行うセンチメータ級測位補強サービスです。GNSSによる測位情報に補強データを組み合わせることで、一般的な単独測位よりも高い位置精度を目指す仕組みです。
CLASの特徴は、対応受信機が衛星からの補強信号を直接受信できるため、補強情報を取得するための地上通信回線を必須としない点です。山間部、道路工事現場、河川管理区域、通信環境に制約がある場所などで、位置情報を取得する手段として期待されています。
ただし、通信回線が不要であることと、測位環境に制約がないことは同じではありません。測位衛星や補強信号を送信する衛星からの電波を十分に受信できなければ、測位精度の低下や観測の中断が発生する可能性があります。
また、対応受信機であっても、測位演算の仕様、初期化処理、座標の出力方法などによって、得られる結果や品質管理に利用できる情報が異なる場合があります。
CLASの公式なサービス仕様には、所定の条件において、静止体で水平6cm以下、垂直12cm以下という95%の測位誤差指標があります。移動体については水平12cm以下、垂直24cm以下という指標が示されています。
これらはサービス性能に関する統計的な指標であり、すべての現場や測点で、その範囲内の誤差が保証されることを意味しません。
一方、公共測量では、測量の種類に応じて必要な精度や観測方法、点検方法、成果の整理方法などが定められています。例えば、新たな公共基準点を設置する測量と、道路工事で施工位置を概略確認する作業では、位置情報に求められる信頼性が異なります。
ここで重要なのが、測位技術としての性能と、公共測量の成果として採用できる条件を分けて考えることです。
CLASで高精度な座標を取得できたとしても、それだけで公共測量の成果になるわけではありません。測量目的に対して十分な精度があることに加え、採用する観測方法の妥当性、既知点との整合性、独立した点検、必要な記録の保存などを確認する必要があります。
令和7年3月31日の作業規程の準則の改正では、全国の標高成果改定への対応、GNSS標高測量の導入、三次元点群データを利用した断面図作成方法の追加などが行われました。
しかし、GNSS標高測量が公共測量に導入されたことは、CLASによる任意の測位方法がすべて公共測量で認められたことを意味しません。
GNSS標高測量は、所定の作業方法や精度管理によって標高を決定する測量です。CLASを利用した単点観測とは、観測方式や補強情報、点検方法の取り扱いが異なるため、混同しないことが大切です。
令和8年にCLAS測量の導入を検討する場合には、まず公共測量であるかどうかを整理し、次に適用する作業規程を調べ、そのうえでCLASの利用可能性を検討する順序が合理的です。
ポイント1:公共測量に該当する業務と適用する作業規程を確認する
CLAS測量を公共測量に利用できるか判断する最初のポイントは、対象業務が測量法上の公共測量に該当するかどうかを確認することです。
測量法第5条に規定する公共測量には、基本測量以外の測量で、測量の実施費用の全部または一部を国や公共団体が負担・補助して行うものなどが含まれます。ただし、測量法施行令では一定の測量が除外されており、実施主体や費用負担だけでなく、作業内容や規模、精度などを踏まえた確認が必要です。
一般的な現場計測や施工管理のための位置確認が、必ず公共測量に該当するわけではありません。
例えば、道路整備事業に伴って新しい基準点を設置する測量では、後続の測量や工事で利用する位置の基準を確立する必要があります。そのため、基準点の等級や観測方法に応じた精度管理が重要です。
一方、工事現場で仮設資材の設置位置を記録する作業や、施工写真に位置情報を付ける作業は、必ずしも公共測量として実施するものではありません。
ただし、公共工事の中で行う作業であれば、公共測量に該当しなくても、発注仕様書や施工管理基準で精度や記録方法が指定される場合があります。
つまり、公共工事で使用する測量技術と、測量法上の公共測量として採用する測量方法は、同じ意味ではありません。
発注者と受注者が最初に確認したいのは、CLASで取得する座標を何に使用するのかという点です。公共基準点の成果として提出するのか、地形測量の補助資料として利用するのか、施工管理上の参考位置として保存するのかによって、適用する基準が変わります。
さらに、測量計画機関が採用している作業規程の確認が必要です。
公共測量では、測量法第34条に基づく作業規程の準則が、測量作業規程を作成する際の標準的な規準として位置付けられています。測量計画機関は、この準則を準用して作業規程を作成できます。
国土地理院が公表する令和8年2月4日更新の作業規程の準則に関するQ&Aでは、準則の最終改正として令和7年3月31日の一部改正が案内されています。
この改正では、全国の標高成果の改定に関連する規定の見直しや、3級水準測量に関するGNSS標高測量の導入などが行われました。
ただし、すべての公共測量が同一の作業規程を適用しているとは限りません。土地改良事業や土地区画整理事業などでは、事業目的に対応した測量作業規程が使用される場合があります。
そのため、準則だけを確認するのではなく、実際の発注業務に適用される規程、製品仕様書、特記仕様書などを特定することが重要です。
実務では、発注仕様書にGNSS測量による観測と記載されている場合にも注意が必要です。この記載だけでは、CLASを使用してよいことが明確になっているとは限りません。
GNSS測量には複数の方式があります。既知点を基準に観測する方式と、衛星からの補強情報を利用する方式では、観測条件や点検方法が異なります。
単に衛星測位を使用することが認められているという理由で、すべての補強方式を同じ条件で使用できると解釈するのは適切ではありません。
発注者に確認するときは、CLASを使用してよいかという質問だけでなく、CLASによって取得した座標をどの成果項目に採用したいのか、その成果に求められる精度は何か、適用する規程に対応する観測方法があるかを説明すると、協議が進めやすくなります。
例えば、道路改良事業で現況構造物の位置を測定する場合、設計用の正式な地形測量成果を作成するのか、既存図面との位置関係を確認する補助作業なのかを区別します。
前者では公共測量の作業規程や精度管理が重要になり、後者では発注者が求める使用目的と許容精度を確認することが中心になります。
この段階で作業の位置付けを明確にしておけば、CLASを利用する範囲と、既存の規程に基づく別の測量方法を採用する範囲を適切に分けられます。
公共測量に関わる担当者は、測量の実施目的、成果の利用先、適用規程、発注者の要求事項を事前に文書化しておくことが望ましいです。
これにより、現場では問題なく測位できたものの、成果提出時に測量方法の適合性を説明できないという事態を防ぎやすくなります。
ポイント2:CLASの利用条件と作業規程第17条の適用を確認する
2つ目のポイントは、CLASを利用した測量方法が、適用する作業規程でどのように扱われるかを確認することです。
令和8年のCLAS測量を検討する際、特に重要なのが作業規程の準則第17条です。この条文には、準則に定められていない新しい測量技術を使用する場合の取り扱いが規定されています。
準則第17条第2項では、計画機関が準則に定めのない新しい測量技術を使用する際、使用する資料、機器、測量方法などによって必要な精度を確保できることを検証結果等に基づいて確認し、あらかじめ国土地理院の長の意見を求めることとされています。
また、第17条第3項では、国土地理院が新しい測量技術による測量方法に関するマニュアルを定めた場合、そのマニュアルを精度確認のための資料として使用できる仕組みがあります。
ただし、この特例があるからといって、CLASを用いた任意の測量方法を自由に公共測量へ適用できるわけではありません。
第17条第3項を適用するには、対象となる測量方法に対応した国土地理院のマニュアルがあるか、その適用条件を満たすかを確認する必要があります。
対応するマニュアルがなく、第17条第2項による新技術の適用を検討する場合には、独自の作業マニュアルと精度検証結果を準備することが重要です。
特にCLASでは、一般的な測位性能に加えて、測位結果をどのような方法で独立して点検するかが重要になります。
令和8年5月に公開された研究紹介でも、CLASの公共測量への一般的な適用に関する課題として、測位解の精度を保証する有効な点検方法が確立されていないことが説明されています。
ただし、これは研究紹介で示された技術上の課題であり、すべての個別案件について特例適用を一律に否定する法令上の規定を意味するものではありません。個別の適用可能性は、規程、作業内容、精度検証結果などに基づいて判断する必要があります。
CLASを公共測量の成果作成方法として提案する場合には、適用する作業規程の特例を利用できるかどうかを、事前に測量計画機関と国土地理院に確認することが重要です。
ここで準備したい資料は、単なる測量機器の仕様説明ではありません。
まず、使用する受信機がCLASの補強信号に対応していること、どのような測位演算を行うこと、座標をどの基準で出力すること、測位品質をどのような情報から判断することを整理します。
受信機が表示する測位状態の種類、補強情報の有効性を判断できる項目、観測値や品質指標の記録方法なども確認対象になります。
次に、現場での観測手順を明確にします。
観測開始から測位解が安定するまでの扱い、観測時間、再初期化の手順、独立観測の回数、測位品質が低下した場合の中止条件、再測方法などを定めます。
これらの条件は、CLASについて全国一律に定められた公共測量の合格手順として扱うものではありません。対象業務に必要な精度と、事前に確認した作業方法に基づいて設定する必要があります。
さらに、測量成果の精度を検証した資料を用意します。
既知座標との比較結果、異なる時間帯で取得した座標の差、観測環境の違いによる影響、異常な測位結果が発生した場合の検出方法などを記録し、提案する測量方法の妥当性を説明します。
このとき、1か所で良好な結果が得られたという資料だけでは、十分な説明にならない場合があります。
公共測量の対象地域には、開けた平地だけでなく、樹木の近く、構造物の周辺、斜面、道路沿いなど、受信条件の異なる地点が含まれるからです。
検証では、実際に適用したい現場条件を想定し、測位品質が変化した場合の影響も確認することが重要です。
例えば、開けた場所では安定した座標を取得できても、擁壁の近くでは反射波の影響によって位置が偏る可能性があります。
このような環境でCLASによる観測を行う場合には、受信機が良好な測位状態を表示しているだけで判断せず、既知点との比較や別の観測方法による確認が必要です。
また、精度検証資料に加え、作業方法、精度管理方法、点検方法などを定めた作業マニュアルも重要になります。
国土地理院では、準則にも既存のマニュアルにも定められていない新技術を公共測量で使用する場合、事前に作業マニュアルと精度検証報告を提出し、内容の確認を受けるよう案内しています。
新しい技術を初めて適用する場合には、確認に時間を要することもあるため、早い段階で相談することが推奨されています。
令和8年にCLASの公共測量への利用を検討する際は、技術的に測定できることを示すだけでなく、規程上の取り扱い、精度を確認する手段、異常値への対応まで説明できる状態にすることが大切です。
特例の適用可能性は個別の計画内容や検証結果によって判断されるため、CLAS対応機器を導入したという事実だけで公共測量への採用が保証されるものではありません。
ポイント3:要求精度とCLASの実測精度を比較する
3つ目のポイントは、CLASの公表精度をそのまま成果精度として扱わず、対象業務で要求される精度と実際の測位結果を比較することです。
CLASはセンチメータ級測位補強サービスという名称ですが、これはすべての観測地点で数センチメートル以内の誤差に収まることを保証するものではありません。
公式のサービス仕様には、所定の条件における測位誤差として、静止体で水平6cm以下、垂直12cm以下、移動体で水平12cm以下、垂直24cm以下という95%の指標が示されています。
これらの数値は、定められた利用条件を前提とするものであり、公共測量のすべての精度区分にそのまま対応するわけではありません。
また、95%という統計的な指標は、個々の測定値が必ずその範囲内に収まるという意味ではありません。実際の測量では、現場条件や観測方法によって誤差が変動する可能性を考慮する必要があります。
例えば、公共基準点を設置する測量では、基準点の等級や観測方式に応じた精度管理が求められます。
位置の基準となる成果では、平面位置だけでなく、高さ方向の誤差も重要です。
一方、工事現場で既存構造物の位置関係を概略把握する用途では、公共基準点測量と同じ水準の精度を必要としない場合もあります。
ただし、その場合でも、発注仕様書で求められている精度を確認しなければなりません。
重要なのは、CLASのサービス仕様と、成果に要求される許容誤差と、現地で確認した実測精度をそれぞれ区別することです。
現場で精度を検証する場合には、まず信頼できる既知点を用意します。
既知点の座標は、対象業務で採用する測地基準に整合している必要があります。過去の図面に記載された座標を無条件に正しい値として扱うのではなく、成果の基準時点や改定履歴を確認します。
次に、CLASによって同じ地点を観測し、既知点座標との差を求めます。
平面位置についてはX座標とY座標のそれぞれの差を確認し、必要に応じて水平位置の差の大きさも算出します。
例えば、既知点とCLAS測位結果のX座標差が0.03m、Y座標差が0.04mだった場合、水平位置の差の大きさは約0.05mです。
ただし、この値が許容範囲に入るかどうかは、対象測量の規程と要求精度によって異なります。水平位置の差が5cmだから常に合格という判断はできません。
高さ方向についても同様です。
既知点の標高とCLASによる測定値を比較する場合には、両者が同じ標高体系で求められていることを確認したうえで較差を評価します。
実測精度を確認するときに、特に注意したいのが再現性と正確さの違いです。
同じ地点で連続して観測し、似た座標が得られたとしても、その座標が正しいとは限りません。
周囲の構造物による反射や測位計算上の系統的な偏りがあれば、連続観測の結果が安定していても、既知点から一定方向にずれている可能性があります。
この問題を確認するためには、測位状態が安定した後の連続観測だけでなく、測位をいったん終了して再初期化する独立観測や、時間帯を変えた再観測も有効な検証手段になります。
同じ時間帯に短い間隔で複数回測定した結果は、衛星配置や反射環境が似ていることがあります。
独立性を重視した点検では、時間帯、初期化状態、観測方法などを変えることで、同じ原因による誤差を見逃しにくくする工夫が必要です。
ただし、再初期化や時間帯の変更を何回行えば公共測量の精度を保証できるという全国一律の基準が、CLASの単点測位に対して確立されているわけではありません。
実施する公共測量に必要な精度と作業方法に基づき、適切な点検手順を設定することが重要です。
現場の受信環境も検証対象です。
上空が開けた場所では衛星信号を安定して受信しやすい一方、高層建築物の近く、橋梁の下、樹木の周囲、法面の近くでは測位条件が悪化することがあります。
GNSSでは、衛星数が十分でも衛星の配置が偏っていたり、反射波の影響を受けたりすることで、測位結果が不安定になる場合があります。
そのため、衛星数だけで品質を判断するのではなく、衛星配置を示す指標、測位解の状態、補強情報の有効性、受信状況、観測値のばらつきなどを総合的に確認することが望ましいです。
測位解が一時的に不安定になった場合には、単に時間を延長して観測を続けるのではなく、原因を確認する必要があります。
アンテナの設置状態、周囲の遮蔽物、補強信号の受信状況などを調べ、必要に応じて観測地点や観測方法を変更します。
また、アンテナ高や測量対象点までのオフセットも誤差要因になります。
ポール先端のアンテナ位置から地面上の測点の座標を求める場合、アンテナ高の設定やポールの傾斜に誤りがあれば、測位演算自体が安定していても対象点の座標はずれます。
機器が傾斜補正機能を備えている場合でも、その機能の適用条件や校正状態を確認する必要があります。
公共測量にCLASを適用するための精度検証では、受信機の表示精度だけでなく、実際の測点座標に影響する要因まで含めて評価することが重要です。
最終的な合否は、適用する作業規程や事前に確認された作業マニュアルに基づいて判断します。
CLASのサービス精度が十分に見える場合でも、必要な精度を独立した点検で確認できなければ、正式な測量成果としての採用は慎重に判断すべきです。
ポイント4:測地成果2024と座標・標高の整合性を確認する
4つ目のポイントは、CLASで取得した座標と公共測量成果の座標を、同じ基準で比較できる状態にすることです。
令和8年のCLAS測量では、測位精度だけでなく、測地成果2024への対応を確認する必要があります。
国土地理院では、令和7年4月1日に電子基準点、三角点、水準点等の標高成果を改定しました。この改定により、衛星測位を基盤とする新しい標高体系への移行が行われ、測量成果の名称も測地成果2024となりました。
令和7年4月1日の全国的な改定では、対象となる基準点について主に標高値が改定され、緯度経度や平面直角座標の数値は、この改定を理由として全国一斉に変更されたわけではありません。
ただし、地震などに伴う個別地域の成果改定や、過去の測量成果の取り扱いについては別途確認が必要です。
そのため、令和7年以前の標高成果と令和8年に取得した測量結果を比較する場合には、成果の基準を確認する必要があります。
特に注意したいのが、楕円体高と標高の違いです。
GNSSによる衛星測位では、基準となる楕円体面からの高さである楕円体高を求めることができます。しかし、土木工事や公共測量で一般的に扱う標高は、楕円体高と同じものではありません。
標高を求める際には、ジオイド高などを利用した適切な換算が必要です。
令和7年4月以降の測量では、新しいジオイド・モデルであるジオイド2024日本とその周辺が使用されています。
一般的な地域では、楕円体高からジオイド高を差し引くことによって標高を求めます。
ただし、一部の離島では、地域ごとの高さの基準面に対応するため、基準面補正量も考慮する必要があります。
例えば、CLAS対応受信機が楕円体高を出力しているにもかかわらず、その数値をそのまま工事用の標高として扱うと、大きな誤りにつながります。
また、標高を出力できる受信機でも、使用しているジオイド・モデルや補正方法が古い場合には、最新の成果と一致しない可能性があります。
このような問題を防ぐためには、受信機の出力項目、測地基準、ジオイド・モデル、座標変換方法を確認することが大切です。
もう一つ重要なのが、座標の今期と元期の違いです。
GNSSによる観測では、地殻変動の影響を受けた観測時点の座標が得られる場合があります。
一方、公共測量の基準点成果は、定められた基準時点に対応する座標として管理されています。
このため、観測時点の座標と成果表の座標を比較する際には、必要な地殻変動補正を適切に取り扱わなければ、実際の測位誤差とは異なる座標差が生じる可能性があります。
日本では地殻変動が継続しているため、特に高精度な位置比較を行う場合、観測した日付や適用した補正パラメータの確認が重要です。
令和8年度には、2026年4月1日から2027年3月31日までを適用期間とする地殻変動補正パラメータ.2026が公開されています。
このパラメータは、セミ・ダイナミック補正に使用するものです。
令和8年に観測したデータを処理する際には、採用する測量方法や座標変換処理に応じて、適用するパラメータとその使用条件を確認する必要があります。
ただし、すべてのCLAS測位結果に対して、利用者が同じ補正を追加すればよいわけではありません。
受信機や測位処理の仕様によっては、今期座標から元期座標への変換などがすでに行われている場合があります。
補正済みの座標に同じ補正を重ねて適用すると、かえって位置がずれるおそれがあります。
そのため、受信機から出力された座標がどの基準に対応しているか、観測時点の座標なのか、成果の基準時点に対応した座標なのかを確認することが必要です。
実際の現場では、CLASで取得した座標を既存の公共基準点や施工管理用の座標データと比較する場面があります。
このとき、両者に差が生じたとしても、すぐにCLASの精度不足と判断するのは適切ではありません。
まず、同じ測地基準と座標系を使用しているか、地殻変動補正の取り扱いが一致しているか、標高については同じ高さの基準に整合しているかを確認します。
平面直角座標系を利用する場合には、対象地域に対応する系番号も確認が必要です。
経緯度から平面直角座標への変換方法を誤ると、測位そのものが正常でも、後続の図面や点群データとの整合性が失われます。
特に、過年度の測量成果と令和8年の新しい観測結果を統合する案件では注意が必要です。
例えば、令和6年に作成された道路台帳の座標と、令和8年にCLASで取得した構造物の位置を比較するとします。
道路台帳の元データがどの測地成果に対応しているか、標高改定への対応が行われているか、過去の測量成果に補正が必要かを確認しないまま統合すると、差の原因を正しく判断できません。
さらに、土木工事では設計座標、施工座標、出来形管理座標を複数の担当者が取り扱います。
各担当者が異なる座標変換設定を使用すると、同じ測点に対して異なる座標が保存される可能性があります。
このような不一致を防ぐためには、使用する座標系、測地成果の区分、ジオイド・モデル、補正パラメータの適用条件を、作業開始前に統一することが重要です。
CLASで取得する位置情報を公共測量の成果作成に使用する場合には、座標変換の処理内容と使用したパラメータを追跡できるようにしておくことが望ましいです。
測位精度が良好でも、座標の基準が一致していなければ、測量成果としての整合性を確保することはできません。
令和8年のCLAS測量では、測地成果2024との整合性確認を、精度管理と同じくらい重要な作業として位置付ける必要があります。
ポイント5:測量成果の点検方法と提出資料を確認する
5つ目のポイントは、CLASで取得した観測結果について、測量成果として必要な点検方法と提出資料を整理することです。
公共測量では、現場で座標を取得できたことだけで作業が完了するわけではありません。
観測結果を整理し、定められた精度が確保されていることを確認し、測量成果や記録として提出できる状態にする必要があります。
CLASの公共測量への適用を検討するときには、この成果確認の方法が特に重要になります。
まず、公共測量に関する手続きを理解しておく必要があります。
測量法第36条では、測量計画機関が公共測量を実施する際、あらかじめ公共測量実施計画書を提出し、国土地理院の長の技術的助言を求める手続きが定められています。
また、測量法第40条第1項では、測量計画機関が公共測量の成果を得たとき、その写しを遅滞なく国土地理院の長に提出することが定められています。
実施計画書では、測量の目的、地域、期間、精度、方法などを明確にする必要があります。
CLASのような新しい測量方法を使用する場合には、既存の規程との関係や精度検証の考え方を整理しておくことが重要です。
特に、準則第17条に基づく新技術の適用を検討する場合、通常の実施計画書を提出するだけで十分とは限りません。
適用しようとする新技術の作業マニュアルや精度検証報告などを準備し、事前に内容の確認を受ける必要があります。
測量成果の点検では、取得した座標が要求精度を満たしているかを確認します。
ただし、CLASの場合は、受信機に表示される測位品質の情報だけで成果の正確さを証明できるとは限りません。
例えば、受信機が良好な測位状態を表示していても、アンテナ高の入力ミス、座標変換設定の誤り、周囲の反射波による影響などがあれば、実際の測点座標に誤差が含まれる可能性があります。
そのため、成果確認では、既知点との較差や独立した観測結果との比較を重視する必要があります。
現場で取得したデータには、観測点の識別情報だけでなく、観測した日時、観測位置、使用した測位方式、測位解の状態、受信衛星数、補強情報の受信状況などを記録しておくと、後から観測結果を評価しやすくなります。
補強情報の更新状況や遅延に関する指標を取得できる機器では、その情報も品質管理の判断材料になります。
ただし、表示される項目や意味は機器によって異なるため、数値を記録するだけでなく、何を示す指標なのかを理解しておくことが重要です。
観測点の周囲に遮蔽物があった場合には、その状況も記録します。
建物や樹木の位置、アンテナの設置方法、観測時の作業条件を写真などで残すことで、測位結果に差が生じた原因を後から検討できます。
また、同じ地点を再観測した場合には、前回の座標との差だけでなく、観測条件に違いがあったかも確認します。
例えば、午前中の観測では良好な結果が得られたものの、午後の観測では既知点との差が大きくなった場合、衛星配置や受信環境の変化が関係している可能性があります。
このとき、都合のよい測位結果だけを残して成果とするのではなく、異常が生じた経緯と再測の判断を記録することが大切です。
測位結果を採用しなかった場合にも、採用しなかった理由を整理しておくと、精度管理の説明がしやすくなります。
公共測量の成果として提出する場合には、対象業務に応じて成果表、観測記録、計算記録、精度管理表、点検記録などを適切に整理する必要があります。
必要な成果品の種類や書式は、適用する作業規程、測量の種類、製品仕様書などによって異なります。
そのため、CLASを使用する場合にも、提出資料を独自に省略してよいわけではありません。
また、公共測量では、作業の種類や適用する規程、計画機関の指定などに応じて、測量成果の検定が必要となる場合があります。
すべての測量成果について一律に同じ検定が必要というわけではありませんが、国土地理院が公表する公共測量の手続きに関する資料では、成果検定の重要性が説明されています。
CLASを使った新しい測量方法についても、必要な点検や検定を省略できるという前提で計画することは避けるべきです。
成果確認を円滑に進めるためには、現場作業の開始前に、どの資料を作成し、誰が確認し、どの段階で成果を採用するかを決めておくことが有効です。
特に、測量計画機関と測量作業機関の間で、成果の採用条件を共有しておくことが重要です。
例えば、CLASで測定した既知点の較差が事前に設定した管理値を超えた場合、再観測を行うのか、既存の規程に基づく別の測量方法に切り替えるのかを明確にします。
また、補強信号を受信できなくなった場合や測位品質が不安定になった場合の対応も決めておきます。
このような運用ルールがないまま測量を進めると、現場で得られた座標の採否を担当者ごとの判断に委ねることになり、成果の信頼性を統一しにくくなります。
CLASを公共測量へ適用するためには、機器の性能、作業方法、精度検証、座標管理、成果点検までを一体として設計することが重要です。
測位作業の効率化だけを目的にせず、最終成果の正確さを説明できる仕組みを整えることが、実務上の大きなポイントになります。
CLAS測量を現場に導入するときの具体的な判断例
令和8年のCLAS測量では、公共測量への適用と、施工管理や現場記録への活用を区別することで、現実的な導入方法を検討しやすくなります。
ここでは、公共測量に関係する代表的な現場を想定して、判断の考え方を整理します。
最初の例は、道路整備事業で新しい公共基準点を設置する場合です。
この場合、測量成果は後続の道路設計や施工、維持管理で利用される可能性があります。そのため、適用する作業規程に基づいて必要な精度を確保し、観測方法と点検方法を明確にする必要があります。
CLASで座標を取得できたとしても、それだけで公共基準点の正式な成果として採用できるわけではありません。
CLASを成果作成方法として使用したい場合には、測量計画機関と協議し、準則第17条に基づく取り扱いを含めて、事前に国土地理院へ相談することが適切です。
必要な精度検証や手続きを実施できない場合には、規程で認められた測量方法を採用する判断が必要です。
一方、CLASによって道路沿いの構造物の概略位置を確認したり、現地調査の補助情報を取得したりすることは、正式な公共基準点成果の作成とは別の用途として検討できます。
次の例は、河川管理区域で護岸や河川構造物の位置を確認する場合です。
河川では測量対象の範囲が広く、通信環境が安定しない場所もあります。そのため、衛星から補強信号を取得できるCLASの特徴を活かせる場面があります。
例えば、護岸の損傷位置や点検対象箇所の座標を記録し、写真と結び付けて管理する用途が考えられます。
ただし、護岸の変位量を高精度に比較する目的で使用する場合には、観測誤差と実際の変位を区別できる精度が必要です。
測位結果の誤差と同程度の小さな変位を評価しようとしても、変位が実際に生じたのか、観測値が変動しただけなのかを判断できない可能性があります。
そのため、維持管理の位置記録に利用する場合と、正式な変位計測の成果に利用する場合では、必要な精度と点検方法を分けて考えることが重要です。
3つ目の例は、山間部の道路工事や斜面対策工事です。
山間部では通信環境に制約があることから、CLASの利用が候補になる場合があります。
しかし、通信回線が不要だからといって、山間部で常に高精度な測位ができるわけではありません。
山や樹木によって衛星方向が遮られる場合、測位可能な衛星数や衛星配置が制限されます。谷地形や法面の近くでは、反射波による影響にも注意が必要です。
現地で実際に観測し、測位品質を確認したうえで、使用できる範囲を判断することが重要です。
例えば、上空が開けた施工ヤードで位置情報を取得し、斜面内部の観測が難しい場所では別の測量方法を利用するなど、現場条件に応じた使い分けが考えられます。
最後の例は、公共工事の施工写真や出来形管理資料を整理する場合です。
現場写真に撮影位置や時刻、施工箇所の情報を結び付けることで、後から工事記録を確認しやすくなります。
ただし、位置情報付き写真を保存することと、公共測量の成果として位置を保証することは異なります。
位置情報が施工記録の整理や確認を目的とするものなのか、正式な出来形測定値として使用するものなのかによって、必要な精度管理が変わります。
そのため、写真記録、位置確認、施工管理、公共測量の成果作成を、すべて同じ精度条件で扱わないことが重要です。
CLASは現場の位置情報取得を効率化する選択肢ですが、測量成果としての適合性とは切り分けて導入範囲を決めることが、実務上の安全な進め方になります。
令和8年のCLAS測量でよくある疑問
CLAS測量を令和8年の公共測量に活用しようとする担当者からは、制度上の扱いや精度確認について、いくつかの共通した疑問が生じます。
まず、令和8年になればCLASを公共測量で自由に使えるようになるのかという疑問があります。
令和8年になったことだけを理由に、CLASが標準的な公共測量方法として認められるわけではありません。
確認できる公表資料では、CLASの公共測量への一般的な適用には、測位解の精度を確認する点検方法などの課題が示されています。
新しい測量技術として適用を検討する場合には、実施する業務に応じて必要な資料を整え、適用する作業規程の特例や国土地理院への事前相談を通じて判断する必要があります。
次に、CLAS対応受信機で高精度な測位状態が表示されれば、公共測量の精度を満たしたと判断できるのかという疑問があります。
測位状態の表示は品質管理の参考になりますが、それだけで公共測量の成果精度が保証されるわけではありません。
実際の測点座標には、衛星配置、受信環境、アンテナ設置、観測方法、座標変換などの影響が含まれます。
そのため、既知点との比較や独立した点検によって、必要な精度を満たしているか確認する必要があります。
また、令和7年のGNSS標高測量の導入によって、CLASでも水準測量を代替できるようになったのかという疑問もあります。
GNSS標高測量が公共測量に導入されたことと、CLASを使用した任意の方法で水準測量を代替できることは同じではありません。
GNSS標高測量には、所定の観測方法や精度管理方法があります。CLASによる単点観測をそのまま適用できると解釈することは避ける必要があります。
CLASの測位結果と既存の公共基準点の座標が一致しない場合、どちらを優先すればよいかという疑問も実務上重要です。
この場合、単純に新しい観測結果を優先するのではなく、既存基準点の成果が現在も有効か、地殻変動や標高改定の影響を受けていないか、CLAS側の座標基準が一致しているかを確認します。
既存基準点の成果に異常が疑われる場合には、必要に応じて適切な手続きや別の測量方法による確認を検討します。
さらに、CLASによる現場写真の位置記録にも公共測量の手続きが必要なのかという疑問があります。
施工状況の記録や現場管理を目的とした位置情報の取得は、必ずしも公共測量に該当するわけではありません。
ただし、測量法上の公共測量に該当する業務の一部として位置情報を取得する場合や、成果の作成方法としてCLASを使用する場合には、適用する作業規程や手続きの確認が必要です。
また、公共測量に該当しない施工管理用途であっても、発注者の仕様書や出来形管理基準に従わなければならない場合があります。
最後に、CLASで取得した座標を点群データや設計図面と組み合わせてもよいかという疑問があります。
位置情報を付与して現場データを整理すること自体は、活用方法の一つです。
ただし、CLASで取得した座標を基準として点群や設計モデル全体を位置合わせする場合には、その座標の誤差がデータ全体に影響する可能性があります。
特に、複数時期の点群を比較する場合や、設計座標に対して出来形を評価する場合には、位置合わせに使用した基準点の精度と座標系の整合性を確認する必要があります。
位置合わせの見た目が一致していても、要求精度を満たしているとは限りません。
測量成果として使用する場合には、独立した検証点を設けるなど、適切な方法で精度を確認することが重要です。
まとめ:CLASの公共測量への活用は規程・精度・成果確認をセットで判断する
令和8年のCLAS測量は、通信環境に制約がある現場での高精度な位置情報取得や、施工管理、維持管理、現場記録の効率化に活用できる可能性があります。
しかし、CLASがセンチメータ級の測位を目指す技術であることと、公共測量の標準的な測量方法として認められていることは別の問題です。
令和8年時点の公表資料では、CLASを公共測量の正式な成果作成方法として利用する際に、測位精度を確認する点検方法などの課題が示されています。
そのため、CLAS対応機器で座標を取得できたという理由だけで、公共測量の成果として採用することは適切ではありません。
公共測量への活用を検討する際には、まず測量の目的と適用する作業規程を確認します。
次に、準則第17条に基づく新技術の取り扱いを整理し、必要に応じて測量計画機関と国土地理院に事前相談します。
さらに、CLASの実測精度を既知点との比較や独立した観測によって検証し、必要な成果精度を満たせるか確認することが重要です。
令和8年の測量では、測地成果2024への対応も欠かせません。
座標の今期と元期、使用する地殻変動補正パラメータ、ジオイド・モデル、標高の換算方法などを整理し、既存の公共測量成果との整合性を確保する必要があります。
また、測量成果の点検や提出についても、観測結果だけでなく、作業方法、精度管理、計算処理、異常値への対応などを追跡できる記録が重要になります。
こうした確認を行うことで、CLASを適用できる可能性のある業務と、規程に基づく別の測量方法を採用すべき業務を判断しやすくなります。
一方、公共測量の正式な成果作成とは別に、工事現場の写真記録や位置情報の整理、施工履歴の共有などに高精度な位置情報を活用することも有効です。
現場で測定した位置情報を、いつ、どこで、何を確認した記録なのかと結び付けて管理することで、後から施工状況を確認したり、関係者間で情報を共有したりしやすくなります。
そのような現場記録の管理を効率化する選択肢として、LRTK Phoneの活用も考えられます。
LRTK Phoneは、現場の写真や位置情報、施工記録を関連付けて整理する用途に活用できる自社プロダクトです。
測点の位置、撮影日時、施工箇所の情報などを一体的に管理することで、紙の野帳や個別の写真ファイルだけでは把握しにくかった現場情報を整理しやすくなります。
例えば、道路工事で確認した構造物の位置、河川点検で記録した損傷箇所、造成工事で取得した施工状況の写真などを位置情報と関連付けることで、現場担当者と管理担当者が同じ場所の情報を確認しやすくなります。
さらに、取得した現場記録をLRTKクラウドで共有し、点群データを活用する業務ではLRTK点群CADとの連携を検討することで、測量・施工・維持管理の各段階で情報を再利用しやすくなります。
ただし、LRTK Phoneで取得・管理した位置情報を公共測量の正式な成果として利用する場合には、機器や記録管理機能の有無とは別に、適用する作業規程や必要な精度検証、成果確認の条件を満たす必要があります。
また、LRTK Phoneを利用すること自体がCLASへの対応や公共測量への適合を保証するものではありません。利用する測位方式や機器構成、対応する補強情報については、それぞれの仕様を確認することが重要です。
令和8年のCLAS測量を検討する際は、正式な測量成果に必要な精度と手続きを確保しながら、現場写真や位置情報、施工記録の管理にも目を向けることが大切です。
公共測量の品質確保と現場情報管理の効率化をそれぞれ適切に進めることが、実務に合った測量DXの実現につながります。