土木施工管理技士が土留め支保工の安全確認を重視する理由
土木工事では、道路、管路、擁壁、橋台、地下構造物などの施工に伴って地盤を掘削する場面が多くあります。掘削面をそのまま保持することが難しい場合には、土留め壁と支保工を組み合わせ、周囲の地盤を安定させながら作業空間を確保します。一般には土留め支保工と呼ばれますが、労働安全衛生規則では「土止め支保工」という用語が使われています。
土留め支保工は施工中に使用する仮設構造物ですが、地山の崩壊や部材の変形、脱落などが生じれば重大な労働災害につながるおそれがあります。そのため、完成した状態だけを見るのではなく、地盤、地下水、掘削の進行、支保工の取付状態、上載荷重、周辺地盤の変化を継続して確認することが重要です。
法令上も、土止め支保工の構造は、地山の形状、地質、地層、き裂、含水、湧水、凍結、埋設物などの状態に応じた堅固なものとすることが求められています。また、組立てに当たっては、部材の配置、寸法、材質、取付けの時期と順序を示した組立図をあらかじめ作成し、その組立図により組み立てることが定められています。([厚生労働省][1])
ここで注意したいのは、土木施工管理技士という資格と、労働安全衛生法令上の作業主任者が同じものではないことです。土止め支保工の切りばり又は腹起こしの取付け・取り外しの作業では、所定の技能講習を修了した者から土止め支保工作業主任者を選任することが必要です。また、掘削面の高さが2メートル以上となる地山の掘削では、対象となる作業について地山の掘削作業主任者の選任が必要になります。土木施工管理技士が現場管理を担う場合でも、法定の作業主任者の選任と職務を置き換えるものではありません。([mhlw.go.jp][1])
土留め支保工の安全管理では、施工計画段階、掘削開始前、掘削中、支保工設置後、降雨などで地山条件が変化した後、作業再開時、撤去時というように、時間の経過に沿って状態を見る必要があります。異常がないことを一度確認して終わるのではなく、前回から何が変わったかを把握する視点が大切です。
また、土留め支保工は単独の構造物として見るだけでは不十分です。土留め壁、腹起し、切梁などの部材に加え、掘削底面、周辺地盤、排水設備、仮設道路、重機の配置、資材置場、作業員の通路などが相互に影響します。土木施工管理技士には、個々の部材だけでなく、掘削現場全体の施工条件を関連付けて確認する視点が求められます。
確認1 掘削条件と地盤・地下水の状態を施工前に把握する
土留め支保工の安全管理は、掘削を始める前から始まっています。最初に確認したいのは、どのような地盤を、どの範囲まで、どのような手順で掘削するのかという基本条件です。設計図や施工計画だけでなく、現地の状態と照らし合わせて確認します。
地盤は見た目だけでは判断できないことがあります。同じ施工区間でも、砂質土、粘性土、盛土、埋戻し土などが混在している場合があります。過去の工事によって地盤が乱されていたり、地下構造物の撤去跡があったりすると、想定とは異なる地盤が現れることもあります。既存の地質資料や埋設物情報を確認するとともに、掘削の進行に合わせて実際に現れた地層や含水状態を観察することが必要です。
地下水の状態も重要です。掘削前には問題が見えなくても、一定の深さまで掘り下げた段階で湧水が増える場合があります。掘削面や底面から水が継続して出る状態では、地盤が軟弱化したり、細粒分が流出したりするおそれがあります。排水設備を準備するだけでなく、水がどこから流入しているか、排水によって周辺地盤へ影響が生じていないかも確認します。
地下埋設物にも注意が必要です。既設管路、ケーブル、基礎、地下構造物などがある場合、土留め壁や支保工を計画どおり設置できないことがあります。現場で部材位置を変更する必要が生じた場合には、施工上の都合だけで変更せず、組立図や設計条件との整合、支保工全体への影響を確認します。
施工計画段階では、掘削深さだけでなく、掘削幅、周辺構造物との離隔、地盤条件、地下水、施工ヤード、重機の配置、施工期間などを合わせて確認します。現場条件と計画条件に違いが見つかった場合は、その差異を整理し、必要な検討や計画変更を行ってから施工することが安全管理の基本です。
なお、明り掘削では、地山の崩壊や土石の落下による危険を防ぐため、点検者を指名し、その日の作業開始前、大雨の後、中震以上の地震の後に、作業箇所とその周辺の地山について浮石、き裂、含水、湧水などの状態変化を点検させることが労働安全衛生規則で定められています。([厚生労働省][1])
確認2 土留め壁と支保工の配置・取付状態を確認する
土留め支保工を設置するときは、部材が計画された位置と状態で取り付けられているかを確認します。土留め壁、腹起し、切梁、火打ちなどは、それぞれが独立して働くのではなく、組み合わせることで土留め壁を支持します。そのため、一部の部材だけを見るのではなく、荷重がどのように伝わる構成になっているかを確認することが大切です。
まず確認したいのは、組立図との一致です。労働安全衛生規則では、土止め支保工を組み立てる場合、矢板、くい、背板、腹起こし、切りばりなどの配置、寸法、材質、取付け時期、順序を示した組立図をあらかじめ作成し、その組立図により組み立てることが求められています。現場で地下埋設物や施工機械との干渉が生じても、施工の都合だけで部材位置や取付け時期を変更しないことが重要です。([厚生労働省][1])
次に確認するのが部材同士の接合状態です。切梁や腹起しは脱落を防止するため確実に取り付ける必要があり、切梁や火打ちの接続部なども堅固な状態とすることが求められています。外観上は設置されているように見えても、接合部に隙間やずれがないか、固定状態に異常がないかを近くで確認します。([厚生労働省][1])
土留め壁と腹起しの間に不自然な隙間がないか、切梁に偏った当たりが生じていないか、接合部がずれていないかといった位置関係も確認します。施工直後には問題がなくても、その後の掘削によって荷重条件が変わり、徐々に変位する場合があるためです。
支保工の周辺で溶接、切断、資材搬入など別の作業を行う場合も注意します。支保工を一時的な置場として使用したり、作業の都合で部材を無断で取り外したりすると、支保工全体の安全性に影響するおそれがあります。仮設構造物であっても、計画された構成を現場判断だけで変更しないことが基本です。
また、切りばり又は腹起こしの取付け・取り外しの作業は、法令上、土止め支保工作業主任者を選任すべき対象です。作業主任者には、作業方法の決定と直接指揮、材料や器具・工具の点検、保護具の使用状況の監視などの職務があります。土木施工管理技士は、工程や品質、安全の管理を担う立場から、作業主任者の法定職務と現場の施工管理が確実に連携するよう確認することが重要です。([mhlw.go.jp][1])
確認3 腹起し・切梁・火打ちなどの変形や緩みを点検する
土留め支保工では、設置後の変化を継続して確認することが重要です。特に腹起し、切梁、火打ちなどは、土留め壁から伝わる力を受ける主要部材です。施工開始時には正常だった部材でも、掘削の進行や周辺条件の変化によって変形、変位、緩みなどが現れることがあります。
点検では、部材の損傷、変形、腐食、変位、脱落の有無、切梁の緊圧の度合、接続部、取付け部、交差部の状態を確認します。これらは労働安全衛生規則第373条に示されている土止め支保工の法定点検項目です。([厚生労働省][1])
点検時期にも注意が必要です。土止め支保工を設けた後は、7日を超えない期間ごとに加え、中震以上の地震の後、大雨などにより地山が急激に軟弱化するおそれのある事態が生じた後にも点検することが定められています。異常を認めた場合は、直ちに補強又は補修を行う必要があります。自主的に毎日巡視することは有効ですが、それによって法定の点検時期や項目が置き換わるわけではありません。([厚生労働省][1])
実務では、法定点検に加えて前回からの変化を見ると異常を把握しやすくなります。例えば、切梁がわずかに曲がって見える場合でも、設置時からの状態なのか、その後に変化したのかで意味が異なります。初期状態を写真や計測値として記録しておけば、変化の有無を判断しやすくなります。
異音も一つの情報です。施工中に部材周辺から普段とは異なる音が生じた場合、それだけで原因を断定することはできませんが、接合部や周辺部材、土留め壁の状態を確認するきっかけになります。特に掘削直後や重機作業の後など、荷重条件が変化したタイミングでは注意します。
また、支保工そのものに目立った損傷がなくても、土留め壁の変位によって特定の切梁などに負担が集中する場合があります。土留め壁の変位、周辺地盤の沈下、湧水量の増加などと支保工の変化を合わせて確認することが重要です。
確認4 掘削の進行と支保工設置の順序を守る
土留め支保工では、どの部材を設置するかだけでなく、いつ設置するかが安全性に大きく関係します。掘削を先行しすぎると、必要な支保工が設置されていない状態で土留め壁の変位が進むおそれがあります。そのため、組立図や施工計画で定めた掘削と支保工設置の手順を守ることが基本です。
法令上、土止め支保工の組立図には部材の取付け時期と順序を示すことが求められています。したがって、現場の進捗が良いからという理由で掘削を予定以上に先行させたり、切梁や腹起しの取付けを後回しにしたりすることは避ける必要があります。([厚生労働省][1])
施工管理では、一定の段階まで掘削したら必要な支保工を設置し、取付状態を確認してから次の掘削へ進むという区切りを明確にします。作業員だけでなく、重機オペレーターにも掘削停止位置や次工程へ進む条件を共有しておくことが重要です。
掘削底面についても確認します。掘削機械のバケットで予定より深く掘り過ぎたり、部分的に深掘りしたりすると、設計や計画で想定した地盤条件から外れる場合があります。特に土留め壁や支保工の近くで局部的な深掘りが生じれば、周囲の地盤を乱す可能性があります。
掘削と支保工設置が並行して進む場合には、作業員と重機の接触防止も重要です。支保工の設置作業では人が土留め壁の近くへ入ることがあるため、掘削機械と同一範囲で同時に作業させないなど、工程だけでなく作業範囲の分離も検討します。
支保工を撤去するときも、埋戻しや構造物の施工状況と整合させて順序を管理します。設置時には慎重でも、撤去時に工程を優先して部材を先に外せば、土留め壁の支持条件が変化します。撤去作業についても作業主任者の直接指揮のもとで、計画した手順に従って進めることが必要です。([厚生労働省][1])
確認5 重機・資材・掘削土による上載荷重を管理する
土留め支保工を管理するときは、掘削内部だけでなく、掘削外側の地表面にも注意します。掘削箇所の近くに重機、資材、掘削土などを置くと、その荷重が周辺地盤を通じて土留め壁へ影響する可能性があります。
現場では掘削した土砂を一時的に掘削箇所の近くへ置きたくなることがあります。しかし、残土の仮置き位置や高さが施工計画時の想定と変われば、上載荷重条件も変化します。施工ヤードが狭いからという理由だけで土留め際へ集中して仮置きすることは避け、計画との整合を確認します。
重機の配置にも注意が必要です。掘削機械、揚重機械、運搬車両などが土留め壁の近くを通行したり停止したりすると、機械重量だけでなく走行時の振動や地盤の変形も影響要因になります。車両が同じ位置を繰り返し通行することで、土留め際にわだちや沈下が生じる場合もあります。
資材置場も同様です。鋼材、コンクリート製品、仮設材など重量のある資材を保管するときは、掘削との位置関係を確認します。現場では空いている場所へ資材を置く運用になりやすいため、置場と立入制限範囲をあらかじめ明確にし、搬入業者にも共有しておくと管理しやすくなります。
揚重作業中は、吊荷の落下だけでなく、揚重機械の設置位置やアウトリガーの支持地盤にも注意します。掘削部に近い位置では、地盤の支持条件が周囲と同じとは限りません。揚重計画と土留め計画を別々に扱わず、相互の影響を確認することが重要です。
土木施工管理技士は、土留め支保工の図面だけを見るのではなく、重機動線、資材配置、残土処理計画など現場運用まで確認します。昨日までなかった残土が積まれている、資材置場が移動している、重機の待機場所が土留め際へ変わっているといった小さな変更も、安全条件の変化として扱う必要があります。
確認6 雨天・湧水・周辺地盤の変化を継続して監視する
土留め支保工の安全性に影響を及ぼす要因の一つが水です。雨水や地下水によって地盤の含水状態や強度が変化すると、施工開始時とは異なる挙動を示すことがあります。そのため、通常時の巡視だけでなく、降雨や湧水量の変化、長期間の作業中断後など、現場条件が変化したタイミングで重点的に確認します。
雨天時には、掘削部へ地表水が流れ込まないよう排水経路を確保します。周辺地盤に水がたまっている場合には、水たまりだけを除去するのではなく、排水溝の詰まり、地盤沈下による勾配変化、流入経路の変化などがないか確認します。
掘削内部では、湧水量と発生位置の変化を観察します。以前より水量が増えている場合は、地下水条件や地盤の状態が変化している可能性があります。排水ポンプで処理できているから安全と判断するのではなく、水がどこから入り、周囲の地盤にどのような影響を与えているかを見ることが重要です。
土砂を伴う水が出ている場合にも注意します。地盤中の細粒分が水と一緒に流出している可能性があるため、周辺地盤の沈下やひび割れ、掘削底の軟弱化なども合わせて確認します。一つの現象だけで原因を断定せず、複数の変化を関連付けて確認します。
法令上は、明り掘削の地山について、その日の作業開始前、大雨の後、中震以上の地震の後に所定事項を点検することが求められています。また、土止め支保工については7日を超えない期間ごとの点検に加え、中震以上の地震の後、大雨などで地山が急激に軟弱化するおそれのある事態が生じた後にも点検が必要です。地山の点検と支保工の点検は対象と時期が異なるため、現場の点検表でも区別して管理すると漏れを防ぎやすくなります。([厚生労働省][1])
掘削外側の地盤にも変化が現れることがあります。土留め壁に沿った地盤の沈下、舗装の段差や新たなひび割れ、側溝の変形などは、周辺地盤の動きを確認する手掛かりになります。近隣構造物や仮設施設がある場合は、それらの変化にも注意します。
天候自体は管理できませんが、天候による条件変化を見込んで対応を準備することはできます。降雨前に排水設備や流入防止措置を確認し、降雨後には地山と支保工の法定点検時期に該当するかを確認したうえで、土留め壁、支保工、周辺地盤、掘削底の状態を重点的に確認します。
確認7 作業員の立入管理と異常時の対応手順を共有する
土留め支保工の事故防止では、構造物の点検だけでなく、人の動きを管理することも重要です。土留め支保工が設置された掘削部では、限られた空間の中で掘削、配管、型枠、鉄筋、測量など複数の作業が行われることがあります。作業が錯綜すると、重機との接触や異常時の退避の遅れにつながるおそれがあります。
まず、作業員がどこから掘削部へ出入りするのかを明確にします。昇降設備や通路を確保し、資材や機械によってふさがれないよう管理します。作業の進行に伴って仮設材や資材が増えると、当初確保していた通路が狭くなることがあるため、継続して確認します。
重機作業中には、作業員との接触だけでなく、支保工部材へ重機や吊荷が接触する可能性も考えます。バケットや吊荷が切梁などに接触すると、部材や接合部へ衝撃が加わるおそれがあります。重機の旋回範囲と支保工の位置関係を確認し、人と機械の作業範囲を整理します。
また、土止め支保工の切りばり又は腹起こしの取付け・取り外しを行う箇所では、関係する作業従事者以外の立入りを禁止する措置が法令で求められています。単なる注意喚起ではなく、表示その他の方法で立入禁止を明確にすることが必要です。([厚生労働省][1])
異常時の対応手順も事前に共有しておきます。支保工に変形が見られた、土留め壁の変位が進んでいる、急に湧水が増えた、周辺地盤に沈下が生じたといった場合に、誰へ連絡し、誰が作業中止を判断し、どの経路で退避するかを明確にします。
労働安全衛生法では、労働災害発生の急迫した危険があるとき、事業者は直ちに作業を中止し、労働者を作業場から退避させるなど必要な措置を講じなければならないとされています。異常の程度が判断できない状況で現場の都合を優先し、作業を続けることは避ける必要があります。([厚生労働省][2])
土木施工管理技士は、自分だけが安全条件を理解していればよいわけではありません。施工計画、立入禁止範囲、重機動線、異常時の連絡系統、退避経路を現場で実際に作業する人へ共有し、作業主任者や職長などの役割分担を明確にしておくことが重要です。
土留め支保工で特に注意したい事故の前兆
土留め支保工に関係する異常は、必ずしも突然大きな変形として現れるとは限りません。事故を防ぐためには、重大な異常になる前の変化を捉え、必要な確認につなげることが重要です。
確認したい変化の一つが周辺地盤です。土留め壁に沿って地盤が沈んでいる、舗装に新しいひび割れが生じている、側溝や縁石に段差が出ているといった変化があれば、その原因を確認します。地表面の変化は、地下の地盤変位と関係している可能性があります。
土留め壁そのものについては、傾き、はらみ、継ぎ目のずれなどに注意します。肉眼だけでは判断しにくい変化もあるため、基準点を決めて位置を測ったり、一定方向から写真を撮影したりすると比較しやすくなります。
支保工では、切梁の曲がり、腹起しとの接合部の隙間、部材のずれ、局部的な変形などを見ます。同じ箇所を継続して観察すると、変化を捉えやすくなります。
水の変化も重要です。湧水量が増えた、水が濁っている、掘削底の一部が軟らかくなっている、土留め壁の隙間から水が出ているといった現象は、地盤条件が変化している可能性を考えるきっかけになります。
一つの兆候だけで危険な状態と断定することは適切ではありませんが、複数の異常が同時に見られる場合には注意が必要です。例えば、降雨後に湧水が増え、同時に周辺地盤に沈下が現れ、支保工にも変化が見られる場合は、それぞれを別の問題として処理せず、関連性を確認します。
異常を見つけた時点で記録し、前回の状態と比較できるようにしておくことも重要です。ただし、法定点検で異常を認めた場合は、記録して経過を見るだけでは足りず、土止め支保工について直ちに補強又は補修することが求められています。([厚生労働省][1])
掘削深さだけで危険度を判断しない
土留め支保工を考えるとき、掘削深さは重要な条件ですが、深さだけで安全性を判断することはできません。同じ掘削深さでも、地盤の種類、地下水、掘削幅、周辺構造物、上載荷重などによって現場条件は異なります。
比較的浅い掘削でも、軟弱な盛土地盤や地下水の多い地盤では崩壊のおそれが高まる場合があります。反対に、掘削深さだけを見て危険度を判断すると、排水や土留めの確認が不十分になる可能性があります。
道路脇や既設構造物の近くで掘削する場合には、車両交通による荷重や振動、既設構造物の基礎、地下埋設物なども施工条件になります。施工ヤードが狭ければ、重機や資材を掘削部から十分に離せず、計画時の配置から変更が必要になることもあります。
また、掘削面の高さが2メートル以上となる地山の掘削は、法令上、地山の掘削作業主任者を選任すべき作業に該当します。ただし、2メートル未満なら無条件に安全という意味ではありません。地山の崩壊等による危険がある場合には、掘削深さにかかわらず、その危険を防止するための措置を検討する必要があります。([mhlw.go.jp][1])
土木施工管理技士は、「深いから危険」「浅いから安全」という単純な見方ではなく、地盤、水、荷重、施工順序、周辺環境を合わせて確認することが重要です。
土留め支保工の点検は施工段階ごとに考える
土留め支保工の点検を実効的に行うには、施工段階に合わせた確認と、法令で定められた点検時期の両方を管理することが重要です。
施工前には、地盤条件、地下水、埋設物、掘削範囲、重機配置、資材置場などを確認します。この段階では、施工計画や組立図と現場条件が一致しているかを見ることが中心です。
土留め壁を設置した段階では、位置、接合状態、周辺地盤の状態などを確認します。掘削を進める段階では、土質の変化、湧水、壁面の変位、掘削深さなどを確認します。
支保工を設置した後は、腹起し、切梁、火打ちなどの位置と接合状態を確認し、設置時の状態を基準として変化を追います。さらに、土止め支保工については7日を超えない期間ごとの法定点検と、中震以上の地震後、大雨などで地山が急激に軟弱化するおそれのある事態が生じた後の点検を管理します。([厚生労働省][1])
一方、明り掘削の地山については、その日の作業開始前、大雨の後、中震以上の地震の後に、点検者による所定の点検が求められています。土止め支保工の点検と地山の点検は混同せず、それぞれの対象、時期、項目を点検表や施工計画に反映することが大切です。([厚生労働省][1])
降雨後、休日明け、大きな掘削を行った後、重機配置を変更した後など、現場条件が変わったタイミングでは、法定点検の対象となるかを確認するとともに、必要に応じて自主点検も追加します。毎日同じ内容を形式的に見るのではなく、何が変わった直後なのかを意識すると異常を見つけやすくなります。
支保工を撤去する段階では、埋戻しや構造物の施工状況を確認し、支持条件の変化を踏まえて作業します。設置時だけ厳しく管理し、撤去時に注意が薄れることを避ける必要があります。
写真と計測記録を残して変化を比較する
土留め支保工の異常を早く見つけるには、目視点検に加えて記録を残すことが有効です。特に現場写真や計測値は、過去の状態と現在の状態を比較するための資料になります。
写真を撮影するときは、主要箇所について撮影位置や方向をある程度そろえておくと比較しやすくなります。土留め壁全体、切梁接合部、周辺地盤、掘削底、排水状況など、変化を確認したい場所を決めておくと管理しやすくなります。
写真だけでは分かりにくい場合には、位置や高さなどを計測して記録する方法もあります。重要なのは、測定機器の精度だけではなく、同じ基準で継続して比較できることです。初期値がなければ変化量を判断しにくいため、施工初期の状態を残しておくことが役立ちます。
例えば、土留め壁上端の位置や周辺地盤の高さを継続的に確認すれば、肉眼では把握しにくい変化を捉えられる場合があります。変化が見つかったときは、発生時期を工程、天候、掘削状況、重機配置などと照らし合わせることで原因を検討しやすくなります。
現場写真には、撮影日時や場所が分かるように管理しておくと後から確認しやすくなります。大量の写真を撮るだけでは、必要な記録を探せない状態になりやすいため、施工区間、部材、施工段階などの情報と結び付けて整理します。
近年は現場の形状を三次元的に記録する方法も活用できます。土留め周辺の地盤や仮設構造物の状態を記録しておけば、施工前後の状況を比較する補助資料として利用できます。ただし、三次元計測や写真記録は、法令に基づく点検、作業主任者の職務、現場巡視を代替するものではありません。安全確認を補助する記録手段として位置付けることが重要です。
土木施工管理技士が現場全体を見ながら判断することが重要
土留め支保工の安全管理では、個々の点検項目を確認することに加え、現場全体の関連性を見ることが重要です。
例えば、切梁に変形が見つかった場合、切梁だけを見て原因を判断するのではなく、土留め壁が変位していないか、周辺に残土が積まれていないか、湧水が増えて地盤条件が変わっていないかなどを確認します。
同様に、掘削底に水がたまっている場合も、排水するだけで終わらせず、水の流入経路や周辺地盤の状態を確認します。舗装にひび割れが発生した場合には、舗装だけの問題なのか、土留め周辺の地盤変位と関係しているのかを考えます。
安全管理と工程管理も切り離せません。工程が遅れているから掘削を急ぐ、資材置場がないから土留め際へ置く、重機を移動する時間がないから近い位置で作業するといった判断が重なると、施工計画時の条件から外れていきます。
実際の現場では変更が生じることがあります。重要なのは、変更を無条件に避けることではなく、作業方法、重機配置、掘削順序、部材配置などを変更するときに、土留め支保工と地山の安全性への影響を確認し、必要に応じて設計者や関係者と協議して計画を見直すことです。
土木施工管理技士が現場巡視を行う際には、チェック項目だけを順番に見るのではなく、前回から変わったものを探す意識が役立ちます。新しく置かれた資材、増えた湧水、変わった重機動線、地盤の沈下など、変化を起点に確認することで、計画条件からのずれを把握しやすくなります。
一方で、法令上の責任区分は明確にしておく必要があります。土木施工管理技士が安全管理に関与していても、対象作業で必要となる地山の掘削作業主任者や土止め支保工作業主任者の選任と法定職務を省略することはできません。施工管理と作業主任者の直接指揮を適切に連携させることが重要です。([mhlw.go.jp][1])
まとめ
土木施工管理技士が土留め支保工で事故を防ぐためには、支保工部材だけを見るのではなく、掘削、地盤、地下水、上載荷重、作業手順、重機、人の動きまで含めて管理することが重要です。
施工前には地盤条件や地下水、埋設物などを把握し、組立図や施工計画と現場条件に違いがないか確認します。施工中は、土留め壁や腹起し、切梁、火打ちなどの配置と接合状態を確認するとともに、掘削の進行に伴う変形、変位、緩みなどを継続して観察します。
特に法令上の点検時期は明確に管理する必要があります。土止め支保工は、設置後7日を超えない期間ごと、中震以上の地震の後、大雨などで地山が急激に軟弱化するおそれのある事態が生じた後に所定項目を点検し、異常を認めた場合は直ちに補強又は補修します。明り掘削の地山についても、その日の作業開始前、大雨の後、中震以上の地震の後に所定の点検が必要です。([厚生労働省][1])
また、土止め支保工の切りばり又は腹起こしの取付け・取り外しでは土止め支保工作業主任者、掘削面の高さが2メートル以上となる地山の掘削では対象となる作業について地山の掘削作業主任者の選任が必要です。土木施工管理技士の資格だけでこれらの法定職務を代替できると捉えず、役割分担を明確にして現場を管理することが大切です。([mhlw.go.jp][1])
写真や計測記録を残しておけば、土留め壁、支保工、周辺地盤、掘削底などの変化を比較しやすくなります。ただし、記録や三次元計測は法定点検の代わりではなく、安全確認を補助する手段です。
現場を記録する方法として、LRTK Phoneのような三次元計測に対応した機器を利用できる場合は、土留め周辺や施工状況を後から比較するための補助情報として整理する考え方があります。目視点検、法定点検、作業主任者による直接指揮を基本としたうえで、写真や計測記録を組み合わせることが、施工中の変化を把握しやすい管理につながります。