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土木施工管理技士の橋梁補修で見落としやすい管理6項目

土木施工管理技士が橋梁補修で管理すべき範囲は広い

橋梁補修は、傷んだ部分を直せば終わりという工事ではありません。土木施工管理技士には、既設構造物の状態を把握し、設計図書や施工計画と現場条件を照合しながら、品質、安全、工程、出来形、記録を一体的に管理する役割が求められます。特に橋梁は供用しながら施工するケースも多く、一般車両や歩行者、周辺施設への影響まで考えなければなりません。

新設工事では、設計図書に基づいてゼロから構造物をつくっていくため、施工条件を比較的整理しやすい面があります。一方、橋梁補修では既設構造物そのものが施工対象です。図面に表れている寸法と実際の形状が完全には一致しない場合や、着手前には確認できなかった劣化が施工途中で見つかる場合があります。そのため、最初に決めた施工計画を機械的に進めるだけでは対応しきれません。

橋梁補修を担当する土木施工管理技士に重要なのは、予定どおり施工することだけではなく、「現場で確認した事実をもとに、どこまで予定どおり進めてよいか」を判断できる管理体制をつくることです。補修範囲、既設部の健全性、下地状態、使用材料、施工環境、交通条件、記録方法などを一つずつ確認し、設計条件との差異があれば関係者と共有しながら進める必要があります。

また、橋梁補修は完成後に隠れてしまう部分が多い工事です。断面修復を行えば補修前の鉄筋状態やはつり範囲は見えなくなり、表面被覆を行えば下地処理の状況を完成後に直接確認することは難しくなります。だからこそ、施工途中の確認と記録が非常に重要です。

本記事では、土木施工管理技士が橋梁補修で見落としやすい管理事項を6項目に整理し、現場でどのように確認していけばよいかを解説します。

橋梁補修が新設工事より管理しにくい理由

橋梁補修の難しさは、施工を始めるまで実際の劣化状態を完全には把握できない点にあります。外観から見えるひび割れや浮きだけでなく、はつり後に鉄筋の腐食が想定より広範囲に確認されることや、既設部材の断面欠損が予想より大きいこともあります。

つまり、橋梁補修では設計段階で想定された補修数量と、現場で実際に必要になる数量が変わる可能性があります。土木施工管理技士は、この差を単なる数量増減として処理するのではなく、どこで、なぜ、どの程度変化したのかを追えるようにしておく必要があります。

さらに橋梁には、床版、桁、横桁、橋脚、橋台、支承、伸縮装置、高欄、排水設備など、多くの部材があります。一つの不具合が別の部材の劣化につながっていることも珍しくありません。例えば、排水機能が十分でないことで漏水が続き、その水が桁端部や支承周辺に回り込んで劣化を進行させている場合があります。このようなケースでは、表面に現れた損傷だけを補修しても、原因となる水の経路を把握しなければ再び変状が生じる可能性があります。

施工場所そのものも管理を難しくします。橋梁下面、高所、狭い桁間、交通規制区間などでは、通常の地上作業より資機材の搬入や測定、写真撮影が難しくなります。作業できる時間帯が限られる現場では、施工と検査のタイミング調整も重要です。

橋梁補修では、「設計図書に書かれた施工を実施する管理」と「現場で判明する条件変化を適切に整理する管理」を同時に行う必要があります。この二つを分けずに考えることが、補修工事を安定して進める基本です。

管理項目1 着手前に既設構造物の状態と施工条件を確認する

最初の管理項目は、着手前の現況確認です。橋梁補修では、施工開始後に既設構造物の状態を確認するのでは遅い場合があります。工事に着手する前に、施工対象となる部位の位置、形状、損傷状態、周辺設備、作業空間などを把握しておくことが重要です。

設計図や補修図を確認するときは、図面上の部材番号だけで判断せず、現地のどの場所を示しているのかまで照合します。橋梁下面では似たような部材が連続しているため、径間、左右、起終点方向、桁番号などの基準を現場内で統一しておかなければ、施工位置や写真位置の取り違えにつながります。

現況確認では損傷そのものだけでなく、施工するための条件も確認します。足場から対象部位へ手が届くか、施工機械や工具を使用できる空間があるか、材料の搬入経路を確保できるか、養生範囲を設けられるかといった点です。図面では施工可能に見えても、既設配管や添架物などによって実際の作業空間が狭くなっていることがあります。

補修箇所の周辺についても確認が必要です。例えば、断面修復予定箇所の近くにひび割れや漏水跡がある場合、設計上の補修範囲だけで現況を整理すると、施工途中で追加確認が必要になります。着手前に周囲まで広めに観察し、補修対象と周辺変状の関係を把握しておくと、その後の判断がしやすくなります。

既設構造物では、過去の補修跡にも注意します。色や表面形状が周囲と異なる部分があれば、既往補修の可能性を考えます。既設補修材と今回使用する材料との取り合いや、既往補修部をどこまで残すのかによって施工方法が変わることがあるためです。

着手前確認の目的は、単に施工場所を見ておくことではありません。設計条件と現場条件の差を施工開始前にできるだけ整理し、「予定どおり施工できる部分」と「確認が必要な部分」を分けることが重要です。

管理項目2 補修範囲と施工境界を曖昧にしない

橋梁補修で見落としやすい二つ目の管理項目が、補修範囲と施工境界です。補修工事では、「おおよそこの辺り」という管理では数量も品質も正確に追いにくくなります。

例えばコンクリートの断面修復では、事前に設定された補修範囲と、打音やはつり作業によって判明した実際の劣化範囲が異なることがあります。この場合、施工前、調査後、はつり後、補修後という各段階で範囲を記録しておくと、数量変更の根拠を整理しやすくなります。

重要なのは、補修面積だけを見るのではなく、境界位置を明確にすることです。同じ面積でも、補修箇所が一つの大きな範囲なのか、複数の小さな範囲に分かれているのかによって施工性は変わります。既設部との取り合い長さも変わるため、単純な面積だけでは現場の状態を表せません。

ひび割れ補修でも同様です。ひび割れ延長だけを管理すると、分岐している部分や幅が変化する部分、漏水を伴う部分などの違いが記録から抜け落ちやすくなります。どの位置のひび割れをどの方法で処置したのかが分かるよう、位置と施工内容を対応させることが大切です。

また、塗装や表面保護など面で施工する補修では、施工境界が不明確だと塗り残しや重複施工を確認しにくくなります。桁番号や部材番号、測点、構造上の節点など、現場で再現できる基準を利用して範囲を区切ると管理しやすくなります。

補修範囲が施工途中で変わった場合には、作業員間だけで共有して終わらせないことも重要です。施工管理側で変更理由を把握し、必要に応じて発注者や監督側などの関係者と確認したうえで進めます。土木施工管理技士が補修範囲を管理する際には、「どこを施工したか」だけでなく、「なぜその範囲になったのか」を説明できる状態をつくっておく必要があります。

管理項目3 下地処理と既設部材の状態を途中工程で確認する

三つ目は、完成すると見えなくなる下地処理の管理です。橋梁補修では、仕上がった表面だけを見ても施工途中の品質を十分に確認できません。したがって、次工程へ進む前の中間確認が重要になります。

コンクリートの断面修復では、劣化した部分を除去した後の状態確認が一つの重要なタイミングです。はつり範囲、既設コンクリートの状態、露出した鉄筋の状態、施工面の清掃状況などを確認し、次工程へ進める条件が整っているかを判断します。

鉄筋が露出した場合には、腐食状態や断面の状況を確認します。事前想定と明らかに異なる状態が見つかった場合には、現場だけの判断でそのまま覆ってしまうのではなく、施工方針を確認することが必要です。一度補修材で覆われると、完成後に元の状態を確認することは困難になります。

表面保護工や接着を伴う補修でも、下地処理は品質に大きく関係します。表面に脆弱部、粉じん、油分、水分などが残っていると、材料が本来想定された状態で施工できないことがあります。そのため、材料を塗布する直前の下地状態を確認する工程が欠かせません。

下地処理管理で起こりやすい問題は、作業と検査のタイミングがずれることです。現場では工程を進めたいという意識が強くなりやすく、確認前に次工程へ進んでしまうと、後から写真や目視で確認できなくなります。土木施工管理技士は、どの工程で立会いや自主確認が必要なのかを施工前に整理し、作業班と共有しておくことが重要です。

特に橋梁下面では、作業場所が分散していることがあります。同じ日に複数の桁や径間で作業が進むと、確認漏れが起こりやすくなります。施工箇所ごとに進捗状態を把握し、「下地処理済み」「確認済み」「次工程施工済み」といった段階を混同しないよう管理する必要があります。

管理項目4 材料の施工条件と養生条件を管理する

四つ目の管理項目は、補修材料と施工環境です。橋梁補修では、補修材、接着材、被覆材など、施工条件が品質に影響する材料を使用することがあります。材料名や使用量だけを管理していても、適切な状態で施工されたかまでは確認できません。

まず確認したいのが、使用材料が施工計画や仕様に合っているかという点です。搬入時には種類、数量、状態などを確認し、保管についても材料ごとの条件に合わせて管理します。高温になる場所や雨掛かりする場所への放置を避けるなど、施工前の取り扱いにも注意が必要です。

施工時には、気温、湿度、降雨、風、施工面の水分状態などが影響する場合があります。重要なのは、「今日は施工できそうだから進める」という感覚的な判断だけに頼らず、採用している材料の施工条件や施工計画を確認することです。

橋梁下面は直射日光を受けにくい一方で、風が通り抜けたり、水分が残りやすかったりする場所があります。河川上の橋梁や海岸部などでは、周辺環境によって施工条件が変化することもあります。同じ橋の中でも桁下と橋面上で環境条件が異なるため、橋全体を一つの条件として扱うのではなく、実際の施工箇所の状態を見ることが大切です。

養生についても同様です。材料を施工した直後に次の工程へ移ればよいとは限りません。必要な養生時間や施工後の保護条件を確認し、その間に雨、水、衝撃などの影響を受けないよう管理します。

工程を急ぐあまり、材料の養生と他工種の作業が干渉することもあります。補修箇所の近くで別作業を進めた結果、粉じんや水が付着する可能性も考えられます。土木施工管理技士は補修作業だけを見るのではなく、周囲で同時に進んでいる工種まで含めて施工環境を調整する必要があります。

管理項目5 足場や交通規制を含めた安全条件を施工と一体で管理する

五つ目は、安全管理です。橋梁補修では、高所作業、橋梁下面作業、交通規制内作業などが発生しやすく、施工方法と安全設備を切り離して考えることができません。

例えば橋梁下面で補修する場合、足場を設置しただけで安全管理が完了するわけではありません。実際に作業する場所まで安全に移動できるか、工具や材料を持った状態でも通行できるか、開口部や段差が適切に管理されているかを確認する必要があります。

補修作業では、はつり片、粉じん、塗料などが周辺へ飛散する可能性もあります。橋梁の下に道路、歩道、河川、鉄道、建物などがある場合は、第三者への影響を考えた養生や作業方法が必要です。足場内部だけを見て安全と判断するのではなく、上下方向を含めた周辺環境まで確認します。

交通規制を伴う工事では、規制時間と施工時間の関係も重要です。作業そのものが終わっていても、養生や資機材撤去、清掃、安全確認が完了していなければ規制を解除できません。規制終了時刻から逆算し、各工程をどこまで進めるのかを判断する必要があります。

橋面上の補修では、一般車両や歩行者との離隔を確保しながら作業する場合があります。作業員が施工に集中することで規制境界へ近づいてしまうことも考えられるため、施工位置と安全区域を同時に管理することが重要です。

また、天候変化への対応も橋梁工事では重要です。強風や降雨などによって、作業場所の安全性や材料施工条件が変わることがあります。施工できるかどうかを品質面だけで判断せず、安全面を含めて総合的に確認します。

土木施工管理技士は、安全設備を準備することだけではなく、「現在予定している施工方法を、その安全設備の中で本当に実施できるか」を確認する必要があります。施工計画が変われば安全計画にも影響するため、両者を一体として見直すことが重要です。

管理項目6 写真と計測結果を補修位置にひも付けて記録する

六つ目は記録管理です。橋梁補修では施工写真を多く撮影しますが、写真枚数が多いことと、施工履歴を正確に残せていることは同じではありません。

特に注意したいのは、写真を見ただけでは場所が分からなくなるケースです。橋梁下面では似た形状が続くため、数週間後に写真を整理したとき、どの径間、どの桁、どの位置を撮影したのか判断できないことがあります。撮影時から位置情報を意識し、補修箇所と写真を対応させることが大切です。

撮影対象も工程ごとに整理します。補修前の変状、下地処理後、鉄筋や既設部材の状態、材料施工中、完成後など、完成すると見えなくなる部分を優先して残します。同じ場所を工程ごとに撮影すると、施工前後の変化を追いやすくなります。

計測結果も同じです。補修面積、ひび割れ延長、施工厚さなどを記録しても、どの箇所の値なのか分からなければ後の数量確認に使いにくくなります。位置、寸法、工程、施工日などを関連付けて管理することで、記録の価値が高まります。

施工途中で補修範囲が変更された場合には特に記録が重要です。施工前の想定範囲と実施工範囲を比較できれば、数量変更の経緯を説明しやすくなります。逆に、完成後の写真だけしか残っていないと、なぜ範囲が変わったのか確認できなくなることがあります。

現場記録は工事完成時の提出資料だけのために作るものではありません。補修履歴として残ることで、将来の点検や再補修時にも役立ちます。土木施工管理技士は、「今回の工事を説明できる記録」と「数年後に見ても場所と内容が分かる記録」の両方を意識することが重要です。

コンクリート橋の補修で注意したい管理ポイント

コンクリート橋の補修では、ひび割れ、浮き、剥離、鉄筋腐食、漏水跡など、さまざまな変状を扱います。ここで重要なのは、表面に見えている状態だけで補修内容を決めつけないことです。

例えばコンクリート表面に浮きが確認された場合、実際にはその周囲にも劣化が広がっていることがあります。施工前調査で設定された補修範囲を基準にしつつ、はつりや下地処理の段階で現況を改めて確認する必要があります。

断面修復では、既設コンクリートと補修部との境界管理も重要です。施工範囲を大きくすればよいわけではなく、設計図書や施工計画に沿って必要な範囲を適切に処理します。既設部を過度に傷めないよう施工方法にも注意が必要です。

ひび割れ補修では、幅や延長だけでなく、ひび割れの状態を把握します。水分が確認される場合や、周辺に他の変状がある場合などは、単純に見た目だけで同じ処置を繰り返さず、条件を確認します。

コンクリート橋では、補修完了後に外観上きれいに仕上がることがあります。そのため完成時の見た目だけに注目しやすいのですが、実際には下地処理、既設鉄筋の確認、施工環境、養生など、完成後に見えない工程の管理が重要です。

鋼橋の補修で注意したい管理ポイント

鋼橋の補修では、腐食、塗膜の劣化、局部的な断面減少、接合部周辺の状態などに注意します。鋼部材は桁端部、接合部、排水設備周辺など、場所によって水や汚れが滞留しやすい条件が異なります。

塗装などの補修を行う場合、仕上げだけでなく素地調整の状態が重要です。既存の劣化部や付着物が適切に処理されているか、次工程へ進む前に確認します。狭い箇所や部材が重なる部分は目視しにくいため、確認方法を施工前に考えておくことが大切です。

鋼橋ではボルトや添接部など形状が複雑な部分も多く、平らな面と同じように施工できるとは限りません。施工しにくい部分ほど見落としが生じやすいため、作業完了の確認を面積だけで済ませず、部位ごとに確認する必要があります。

また、鋼橋の腐食は水の流れと関係している場合があります。腐食部分だけを補修対象として見るのではなく、その上部や周辺に漏水、排水不良、土砂堆積などがないかを合わせて観察すると、劣化原因を整理しやすくなります。

伸縮装置や支承まわりは周辺条件まで確認する

伸縮装置や支承周辺は、橋梁補修で特に周辺条件を見落としやすい場所です。車両通行による影響、水、土砂などの影響が集まりやすく、一つの部材だけを見て施工すると周囲の問題が残ることがあります。

伸縮装置付近では、路面との高さ関係や周囲の舗装状態、排水状況なども確認します。補修後に段差が生じれば走行性に影響する可能性があるため、単体の寸法だけではなく取り合いを見ることが重要です。

支承付近では、桁端部、橋座面、周辺コンクリートなどを合わせて確認します。狭い空間であるため目視しにくく、施工前後の写真も同じ方向から撮れないことがあります。どの位置をどの角度から記録するかをあらかじめ考えておくと、後で比較しやすくなります。

これらの箇所では、周囲に土砂や水がたまっていることで状態確認そのものが難しい場合があります。清掃後に初めて確認できる変状もあるため、清掃前後の状態を分けて把握することが大切です。

排水機能の不具合を補修対象から切り離して考えない

橋梁補修では、ひび割れや腐食など目立つ変状に意識が向きやすい一方、排水設備の状態確認が後回しになることがあります。しかし、水は橋梁のさまざまな部位に影響するため、補修箇所と排水経路を切り離して考えないことが重要です。

橋面から流れた水が想定した経路で排水されず、桁端部や橋脚周辺へ流れている場合があります。排水管周辺に漏水跡があれば、その跡だけを清掃するのではなく、水がどこから来ているのかを確認します。

また、排水口に土砂などが堆積すると、水が周囲に滞留することがあります。補修工事の施工範囲外であっても、周辺状態として把握しておけば、変状の原因を考える材料になります。

土木施工管理技士が補修工事を管理するときは、施工対象だけを拡大して見る視点と、橋梁全体からその場所を見る視点を使い分けることが大切です。局所的な補修を確実に行いながら、周囲に同じ変状を生み出す条件が残っていないかを見ることで、より実効性のある維持管理につなげやすくなります。

橋梁下面や狭い場所では位置確認の精度が重要になる

橋梁下面では、似た部材が連続するため位置取り違えが起こりやすくなります。補修箇所が数か所であれば目視で管理できても、数十か所、数百か所と増えると、写真と施工箇所の対応を人の記憶だけで管理するのは難しくなります。

まず現場内で位置表現を統一することが基本です。径間、桁番号、橋脚番号、起終点方向、左右など、誰が見ても同じ位置を指せるルールを決めます。「手前側」「奥側」など、立つ場所によって変わる表現だけに依存すると混乱しやすくなります。

補修箇所の寸法測定でも同じです。面積や延長を測る場合、どの基準から測った寸法なのかを残しておかなければ再現できません。補修図に番号を振り、写真、計測結果、施工数量を対応させると整理しやすくなります。

橋面上や周辺の開けた場所では、高精度な位置情報を利用できる環境であれば、座標を施工記録の補助として活用する方法もあります。ただし、橋梁下面や桁間などでは衛星測位条件が不安定になる可能性があるため、位置情報だけに依存せず、部材番号や現地基準との照合を併用することが重要です。

位置管理の目的は、高度な測量を行うことそのものではありません。補修した場所を施工中にも完成後にも再現できる状態にすることです。位置と記録を結び付けておけば、施工数量の確認や将来の点検にも利用しやすくなります。

工程管理では追加補修が発生する前提を持つ

橋梁補修では、着手後に追加確認や補修範囲の変更が発生する可能性があります。そのため、新設工事と同じ感覚で工程を詰め過ぎると、一つの変更が全体工程へ大きく影響することがあります。

代表的なのが、はつり後に想定以上の劣化が確認された場合です。施工範囲の確認や関係者との協議が必要になれば、その間は次工程へ進めない可能性があります。すべての作業を一本道で組むと、確認待ちによって現場全体が停止しやすくなります。

そのため、複数箇所を施工する工事では、確認が必要な場所と進められる場所を分けて管理することが有効です。ただし、施工順序を変更する場合には、安全設備、材料、作業員配置、交通規制などとの整合も確認します。

材料の養生時間も工程へ組み込む必要があります。作業時間だけで予定を組むと、養生が必要な状態で次工程を急ぐことになりかねません。施工時間、検査時間、養生時間、移動時間を分けて考えることが重要です。

また、橋梁補修では天候の影響を受ける工種があります。雨が降ればすべての作業が停止するとは限りませんが、施工面の状態や材料の条件によっては実施できない作業があります。天候によって切り替えられる作業を準備しておくと、工程を調整しやすくなります。

土木施工管理技士に求められる工程管理は、予定表を守ることだけではありません。現況変化が発生しても品質や安全を落とさず、全体を組み替えられる余裕を持たせることが重要です。

品質管理では完成後に見えなくなる部分を先に残す

橋梁補修の品質管理で特に意識したいのが、不可視部分の記録です。完成後に確認できる仕上がりだけを中心に写真を残していると、施工途中の重要な状態が不足することがあります。

例えば断面修復であれば、施工前の変状、はつり後の状態、鉄筋の状態、下地処理、補修材施工、完成という流れを追えるようにします。すべて同じ位置で撮影できれば比較しやすくなります。

補修面の寸法を記録するときも、完成後だけではなく施工途中の範囲を把握します。実際にはつった範囲と完成面積が異なる場合があるため、数量管理に必要な段階を考えて計測します。

写真撮影では、対象だけを大きく写した写真と、その場所が分かる写真を組み合わせることも有効です。拡大写真だけでは状態は分かっても位置が判別できず、全景写真だけでは細かな状態が確認できません。何を証明する写真なのかを考えて撮影する必要があります。

記録は多ければよいわけではありません。大量の写真があっても整理されていなければ必要な情報を探すのに時間がかかります。補修箇所番号、施工日、工程、写真などを一定のルールで管理し、後から施工履歴を追える形にしておくことが重要です。

土木施工管理技士は補修履歴を次の維持管理につなげる

橋梁補修工事の記録は、その工事を完成させるためだけのものではありません。橋梁は補修後も継続して供用され、将来また点検や補修が行われます。そのとき、過去にどの場所をどの範囲で補修したのかが分かれば、変状の推移を判断しやすくなります。

例えば、以前補修した部分の周囲に新たな変状が発生している場合、過去の記録と比較することで位置関係を把握できます。過去の補修範囲が不明確だと、新しい変状なのか、既往補修部の再変状なのかを判断するための情報が不足します。

そのため、施工管理段階から将来の利用を意識した記録を残すことが大切です。「写真番号だけで現場位置が分からない」「施工面積は分かるが形状が分からない」「補修日が分からない」といった状態を避け、位置と施工履歴を対応させます。

位置情報を扱える測量・記録機器を利用できる環境では、現地計測や位置付き写真などを補助的に利用する方法もあります。例えばLRTK Phoneのように位置情報を扱える機器を現場記録へ取り入れる場合でも、測位環境や現場条件を確認し、橋梁下面など衛星測位が難しい場所では既設部材や基準点との照合を組み合わせることが重要です。

デジタル化の目的は紙をなくすことではありません。現場で確認した位置、寸法、写真、施工内容を結び付け、後から検索・比較しやすい情報にすることです。土木施工管理技士が施工中からこの視点を持っていれば、工事完成時の整理負担を減らしながら、将来利用しやすい補修履歴を残せます。

まとめ 橋梁補修は施工前と施工途中の管理で差がつく

橋梁補修で土木施工管理技士が見落としを防ぐには、完成時の仕上がり確認だけでは不十分です。重要なのは、施工前から施工途中にかけて現場条件を継続的に確認し、その結果を次工程へ確実につなげることです。

まず着手前には、設計図書と既設構造物の位置、形状、損傷状態、作業条件を照合します。次に補修範囲と施工境界を明確にし、施工途中で範囲が変化した場合には理由を含めて記録します。下地処理や既設部材の状態は完成後に確認できなくなるため、次工程へ進む前の中間確認を徹底します。

材料については、種類だけではなく施工環境や養生まで含めて管理することが大切です。安全面では、足場や交通規制を独立した管理項目として考えるのではなく、実際の施工方法と組み合わせて確認します。そして写真や計測結果については、補修位置と対応させ、後から施工履歴を追える状態にしておくことが重要です。

橋梁補修では、施工を始めてから初めて分かることがあります。だからこそ、「予定と違う状態が出ないこと」を前提にするのではなく、「違いが見つかったときに確実に確認し、記録し、関係者と共有できること」を管理の中心に置く必要があります。

土木施工管理技士が現場で持つべき視点は、補修材を施工したかどうかだけではありません。どの場所で、どのような状態を確認し、どこまで処理し、どの条件で施工したのかを一連の情報として管理することが、橋梁補修の品質と説明性を高めます。

補修箇所が多い橋梁では、写真、寸法、施工範囲、位置情報を別々に管理すると整理作業も増えます。現場の位置と記録をより効率よく結び付けたい場合は、現地での計測や位置付き記録を一つの流れにまとめられるLRTK Phoneの活用も検討すると、橋梁補修における施工管理や補修履歴の整理を効率化する手段の一つになります。

現場を3Dで残して、あとから測る。
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