施工検査では、出来形、品質、数量、写真、変更内容、施工記録など、現場で積み上げてきた情報が総合的に確認されます。CIMを活用すると、構造物や地形、施工範囲、測点、属性情報を立体的に整理できるため、検査前の確認作業を効率化しやすくなります。ただし、CIMモデルを作成しているだけで指摘が自然に減るわけではありません。検査で見られるポイントに合わせて、モデル、図面、写真、帳票、現地状況をつなげて準備しておくことが重要です。本記事では、CIMで施工検査の指摘内容を減らすために、実務担当者が事前に整えておきたい6つの準備を解説します。
CIMモデルと検査対象範囲を一致させる
CIMで施工検査の指摘内容を減らすために、最初に確認したいのは、CIMモデルの範囲と実際の検査対象範囲が一致しているかどうかです。施工検査では、完成した構造物そのものだけでなく、施工範囲、付帯施設、仮設撤去後の状態、取り合い部、周辺復旧、排水経路、安全施設なども確認対象になることがあります。CIMモデルが主要構造物だけをきれいに表現していても、検査で見られる範囲が抜けていると、説明資料として十分に機能しません。
たとえば、道路工事であれば舗装、路肩、側溝、集水桝、縁石、区画線、道路付属物、既設道路とのすり付けなどが関係します。河川工事であれば護岸、根固め、天端、法面、既設構造物との接続、施工ヤード復旧、水路や排水のつながりが確認されます。橋梁や構造物工事であれば、本体だけでなく基礎、支承部、排水装置、伸縮部、周辺埋戻し、点検動線などが説明に関わることがあります。CIMモデルを検査準備に使うなら、どこまでをモデルで説明し、どこからを図面や写真で補うのかをあらかじめ整理しておく必要があります。
検査前の段階では、まず発注図、変更図、施工図、出来形管理資料、工事完成図、現地写真を照合し、CIMモデルに反映されている範囲を確認します。このとき、モデルが設計段階の状態のまま残っていないか、施工時の変更が反映されているか、仮設や施工途中の情報が完成形と混在していないかを見ます。検査では完成状態を確認する場面が多いため、途中段階のモデルを使う場合は、どの情報が参考表示で、どの情報が完成形なのかを明確にしておくことが欠かせません。
特に指摘につながりやすいのは、モデル上の範囲と図面上の範囲が微妙に異なるケースです。平面図では含まれている排水施設がモデルに入っていない、横断図では表現されている法尻処理がモデルでは省略されている、現地には復旧範囲があるのにモデルでは施工境界が見えない、といった状態です。こうした差は、施工そのものの不備ではなくても、検査時には説明不足として扱われやすくなります。
CIMモデルは、完成形を立体的に示すだけでなく、検査員が確認したい場所へすぐにたどり着くための案内図としても使えます。そのためには、測点、距離標、構造物番号、部材名、施工区分、検査区分などが、図面や帳票と対応していることが重要です。モデル上では見えていても、帳票上の名称と一致していないと、説明のたびに担当者が補足する必要が出てしまいます。補足が多いほど、検査の流れは止まりやすくなり、結果として追加確認や指摘につながる可能性が高まります。
また、検査対象範囲の整理では、完成後に見えなくなる部分の扱いも重要です。埋設部、基礎部、背面処理、地中の配管や排水構造などは、現地で直接確認しにくい場合があります。CIM上で位置や構造を整理し、施工写真や品質記録と結び付けておけば、見えない部分をどのように施工し、どの記録で確認できるのかを説明しやすくなります。これにより、単に「写真があります」と説明するよりも、どの場所のどの部位を撮影した写真なのかが伝わりやすくなります。
施工検査前の準備としては、CIMモデルにすべてを詰め込むことよりも、検査対象を漏れなく説明できる状態にすることが大切です。モデルで表現する範囲、図面で補う範囲、写真で確認する範囲、帳票で根拠を示す範囲を分けておくと、当日の説明が安定します。CIMは見た目の分かりやすさに注目されがちですが、検査で指摘を減らすためには、モデルと検査対象範囲の対応関係を丁寧に整えることが土台になります。
設計変更と施工履歴をモデル上で追える状態にする
施工検査で指摘が出やすい場面の一つに、設計変更や現場対応の経緯が分かりにくい場合があります。工事では、地盤条件、既設構造物、埋設物、用地境界、施工条件、気象や周辺利用状況などにより、当初設計から変更が生じることがあります。変更自体は適切な手続きを経ていれば問題ではありませんが、検査時にその経緯を説明できないと、なぜ形状や数量が変わっているのか、どの資料を根拠に施工したのかが不明確になります。
CIMを活用する場合は、設計変更前と変更後の違いを、モデル上で追える状態にしておくことが有効です。変更箇所を色分けする、変更前形状を参考表示として残す、変更理由を属性情報や注記に整理する、関連する協議記録や承諾資料の番号を紐付けるなど、検査時に確認しやすい形に整えておきます。重要なのは、変更箇所を目立たせることだけではなく、変更の根拠と施工結果がつながっていることです。
たとえば、法面勾配の変更、構造物位置の微調整、排水施設の追加、舗装範囲の変更、既設物との取り合い変更などは、平面図や横断図だけでは全体の影響が分かりにくいことがあります。CIMモデルで変更前後を確認できるようにしておくと、変更がどの範囲に影響したのかを視覚的に説明できます。検査員にとっても、資料を行き来しながら読み解く負担が減るため、確認がスムーズになります。
施工履歴の整理では、いつ、どこで、何を、どの資料に基づいて施工したのかを追えることが重要です。CIMモデルに施工日、施工区間、担当工種、出来形確認日、品質確認日などを属性として持たせる場合は、帳票や写真の情報と矛盾しないようにします。モデル上の施工日と写真台帳の日付が異なる、施工区間名が出来形管理表と違う、変更番号が資料ごとにずれている、といった小さな不一致は、検査時に説明を複雑にします。
また、変更履歴を整理するときは、すべての過程を細かく表示するよりも、検査に必要な粒度に絞ることが大切です。あまりに多くの情報をモデルに載せると、かえって見づらくなり、重要な変更点が埋もれてしまいます。検査で確認されやすいのは、完成形に影響した変更、数量に影響した変更、品質確認に関わる変更、不可視部分に関わる変更、関係者協議を伴った変更です。これらを優先して整理すると、説明の焦点が定まりやすくなります。
施工履歴をCIMで追えるようにするもう一つの利点は、担当者が変わっても説明品質を保ちやすいことです。工事期間が長い現場では、設計、施工、出来形管理、写真整理、検査対応の担当者が途中で変わることがあります。紙資料や個人メモに経緯が分散していると、検査直前に情報を探す手間が増えます。CIMモデルを中心に変更箇所と関連資料を整理しておけば、担当者間の引き継ぎにも役立ちます。
ただし、CIMに履歴を持たせる場合は、確定情報と検討中情報を混同しないように注意が必要です。検討段階の案や一時的な施工計画が完成形と同じ表示になっていると、検査時に誤解を招くおそれがあります。変更内容は、確定済み、施工済み、参考表示、撤回済みなどの状態を分けて管理することが望ましいです。表示名や属性名も、現場内で統一しておくと混乱を防げます。
設計変更と施工履歴をモデル上で追える状態にしておくことは、検査時の説明を短くするための準備でもあります。検査では、長く説明することよりも、必要な根拠にすぐ到達できることが重視されます。CIMモデルを使って変更箇所を示し、その場で関連する図面、写真、帳票へつなげられる状態にしておけば、確認漏れや説明の行き違いを減らしやすくなります。結果として、指摘内容の多くを事前に解消できる可能性が高まります。
出来形・品質・写真を位置情報と結び付ける
施工検査でよく確認されるのは、設計どおりに施工されているか、必要な品質が確保されているか、施工過程が記録として残っているかという点です。CIMを検査準備に活かすには、出来形、品質、写真を単独の資料として扱うのではなく、位置情報と結び付けて整理することが重要です。どの場所の出来形なのか、どの部位の品質記録なのか、どの写真がどの施工段階を示しているのかが明確になっていると、検査時の説明が進めやすくなります。
従来の資料整理では、出来形管理表、品質管理表、写真台帳、図面が別々に作成され、それぞれの番号や測点を見ながら突き合わせることが多くあります。この方法でも確認はできますが、資料が多い現場では、該当箇所を探すだけで時間がかかります。CIMモデル上で測点や構造物位置を示し、関連する出来形値、品質記録、写真番号を紐付けておけば、検査時に確認したい場所を案内しやすくなります。
たとえば、コンクリート構造物であれば、打設区画、配筋確認、型枠確認、打設日、養生状況、出来形寸法、強度確認などが関係します。土工であれば、掘削範囲、盛土層、締固め管理、法面整形、出来形測定、排水処理などが関係します。舗装であれば、路盤、基層、表層、厚さ、幅員、勾配、施工日、温度管理などが確認対象になります。これらの情報を位置と一緒に整理しておくことで、検査時に「この場所の根拠資料はどれか」をすぐに示せます。
写真整理では、撮影位置と撮影対象を分けて考える必要があります。写真に位置情報が付いていても、撮影者が立っていた位置を示しているだけで、実際に写っている対象物の位置とは異なる場合があります。CIM上で写真を扱う場合は、撮影地点だけでなく、撮影対象の部位や範囲も分かるようにしておくと誤解を防げます。特に、遠景写真、全景写真、近接写真、不可視部分の施工写真では、どの範囲を示しているのかを明確にすることが大切です。
出来形情報については、設計値、実測値、差分、測定日、測定者、測定方法などを整理しておくと、検査前の自己確認にも役立ちます。CIMモデル上で出来形の測定点を表示できる場合は、測定点が設計上のどの位置に対応しているかを確認します。測点の取り違え、左右の取り違え、上下流の取り違え、起終点方向の誤認などは、検査時に指摘につながりやすい要素です。モデル上で位置を確認しておけば、こうした単純なミスを事前に発見しやすくなります。
品質記録については、試験結果の数値だけでなく、その試験がどの施工範囲を代表しているのかを整理することが重要です。品質管理の結果が帳票上では整っていても、検査時に対象範囲との関係を説明できないと、追加確認を求められることがあります。CIMモデルに品質確認の対象範囲を重ねることで、試験位置、施工ロット、材料使用範囲、施工日の関係が分かりやすくなります。これは、複数工区や複数業者が関わる現場で特に有効です。
また、写真、出来形、品質を位置情報と結び付けると、検査前の社内確認にも使いやすくなります。現場代理人、監理技術者、主任技術者、測量担当、品質管理担当、写真整理担当が同じモデルを見ながら確認できれば、資料の抜けや表記の違いに早く気付けます。検査直前になって写真不足や測定点の不明確さが見つかると対応が難しくなりますが、施工中からCIMと記録をつなげておけば、早い段階で補正できます。
注意したいのは、位置情報を付けること自体が目的にならないようにすることです。重要なのは、検査で確認したい情報に迷わず到達できることです。座標値、測点、構造物番号、写真番号、帳票番号がそれぞれ別のルールで管理されていると、位置情報があっても実務上は使いにくくなります。CIMを検査準備に使う場合は、どのキー情報で資料をつなぐのかを決めておく必要があります。測点を中心にするのか、構造物番号を中心にするのか、施工区分を中心にするのかを現場内で共有しておくと、資料整理の方向性がぶれにくくなります。
出来形、品質、写真を位置情報と結び付ける準備は、検査当日の指摘を減らすだけでなく、施工中の手戻り防止にもつながります。どこで何を確認したのかが見える状態になれば、未確認箇所や記録の薄い箇所を早めに把握できます。CIMは完成後の説明資料としてだけでなく、施工中から検査に向けて記録を積み上げるための基盤として活用することが大切です。
属性情報の不足や表記ゆれを事前に整える
CIMモデルを施工検査で活用する際、形状の正しさと同じくらい重要になるのが属性情報の整理です。属性情報とは、部材名、工種、材料、施工日、管理番号、測点、寸法、数量、品質区分、写真番号、関連資料番号など、モデルに付ける説明情報のことです。見た目のモデルが整っていても、属性情報が不足していたり、表記が資料ごとに揺れていたりすると、検査時に確認の流れが止まりやすくなります。
施工検査では、モデル上の部材や施工範囲が、図面、数量計算書、出来形管理表、写真台帳、品質管理資料と対応している必要があります。たとえば、モデルでは「排水構造物」と表示されているものが、図面では「側溝」、数量表では「道路側溝」、写真台帳では「排水路」となっている場合、同じ対象を指しているのか判断しにくくなります。現場内では分かっているつもりでも、検査時には第三者が短時間で資料を確認します。名称や番号の統一は、説明のしやすさに直結します。
属性情報の不足で起こりやすい問題は、モデルをクリックしても必要な情報が出てこないことです。形状は表示されているのに、部材番号がない、施工区間が分からない、写真番号が入っていない、出来形管理表との対応がない、といった状態では、結局ほかの資料を探す必要があります。CIMを検査で使うなら、すべての情報を過剰に入れる必要はありませんが、検査で参照する主要情報は最低限そろえておくことが望ましいです。
属性情報を整えるときは、まず項目名を統一します。同じ意味の項目が「施工日」「作業日」「完了日」のように複数あると、入力者によって使い分けがばらつきます。部材名、工種名、管理番号、測点、写真番号、資料番号など、検査時に使う項目は、入力ルールをあらかじめ決めておくと整理しやすくなります。特に複数人でモデルや資料を作成する場合は、表記ルールがないと、後から修正する手間が大きくなります。
次に、入力値の表記ゆれを確認します。全角と半角、漢字とひらがな、略称と正式名称、起点側と終点側、上流側と下流側、左右の表記、測点の書き方などは、現場でばらつきやすい部分です。検索や抽出を行う場合、表記が揺れていると同じ対象が別物として扱われることがあります。検査前に属性一覧を出力し、同じ種類の情報が同じ形式で入力されているか確認すると、見落としを減らせます。
また、属性情報は最新資料と一致している必要があります。施工中に変更があった場合、図面や帳票は更新されていても、CIMモデルの属性だけ古いまま残ることがあります。数量、施工日、材料区分、管理番号などが古いままだと、検査時に資料間の不整合として見られる可能性があります。モデルの形状だけを更新するのではなく、属性も合わせて更新する運用が必要です。
属性情報の整理では、空欄の扱いも重要です。未入力なのか、該当なしなのか、確認不要なのかが分からない空欄は、検査時に確認対象になりやすくなります。入力しない理由がある場合は、現場内でルールを決めておくとよいです。たとえば、該当しない項目には一定の表記を入れる、検査対象外の要素には対象外であることを示す、参考表示のモデルには属性の使い方を分けるなどの工夫が考えられます。
さらに、属性情報と数量の関係にも注意が必要です。CIMモデルから数量確認の補助を行う場合、モデルの単位、集計対象、控除条件、施工範囲、重複部分の扱いが明確でなければなりません。モデル上の数量と正式な数量計算書が一致しない場合でも、なぜ差があるのかを説明できる状態にしておくことが大切です。CIMモデルは説明や確認を補助するものとして使われることが多いため、正式資料との関係を曖昧にしないことが指摘防止につながります。
属性情報を整える作業は地味ですが、施工検査では大きな効果があります。検査時に必要な情報がすぐに表示され、資料間の名称や番号が一致していれば、確認は短時間で済みます。一方で、属性が不十分なモデルは、見た目が整っていても検査説明では使いにくくなります。CIMで指摘内容を減らすためには、形状だけでなく、情報の中身と表記の統一まで事前に整えることが欠かせません。
検査時に説明しやすい表示状態を準備する
CIMモデルを施工検査で使う場合、モデルの内容が正しいだけでは十分ではありません。検査時に説明しやすい表示状態を準備しておくことが重要です。検査当日にモデルを開いてから視点を探したり、不要な要素を非表示にしたり、対象部位を探したりしていると、確認の流れが悪くなります。CIMの良さは立体的に分かりやすく説明できることですが、その効果を出すには、事前に見せ方を設計しておく必要があります。
まず準備したいのは、検査の流れに沿った表示順です。起点から終点へ進むのか、工種ごとに確認するのか、構造物ごとに確認するのか、出来形、品質、写真の順に確認するのかを決めておきます。モデル内に視点を保存できる場合は、主要な確認箇所ごとに視点を用意しておくと、当日の操作が安定します。視点名も、測点や構造物番号、工種名と対応させておくと分かりやすくなります。
次に、表示する情報と非表示にする情報を整理します。施工検査では、確認したい対象が明確に見えることが大切です。周辺地形、既設物、仮設物、施工中の参考モデル、設計変更前の形状などをすべて表示したままだと、重要な部分が見えにくくなることがあります。検査対象を説明する画面では、必要な要素だけを表示し、補足が必要なときに関連情報を重ねるようにすると、説明が伝わりやすくなります。
色分けや分類表示も有効です。ただし、色を多用しすぎると意味が分かりにくくなるため、色のルールを簡潔に決めておくことが重要です。たとえば、完成形、変更箇所、不可視部分、検査対象外、既設構造物などを分ける場合でも、凡例や説明を用意しておかなければ、見る人によって解釈が変わります。検査時には、色の意味を短く説明できる状態にしておくと安心です。
断面表示や切り出し表示の準備も、指摘を減らすうえで役立ちます。施工検査では、表面から見えない部分や、図面だけでは関係が分かりにくい部分を確認することがあります。CIMモデルで断面を切り、構造物の内部、埋設物との位置関係、基礎と地盤の関係、排水経路、法面と既設地形の取り合いなどを見せられるようにしておくと、説明力が高まります。特に、完成後に見えない部分については、施工写真や記録と合わせて説明できるようにしておくことが重要です。
また、検査会場や現場での閲覧環境も考えておく必要があります。大きなモデルは動作が重くなることがあり、検査当日に表示に時間がかかると説明のリズムが崩れます。検査用に軽量化したモデル、確認箇所ごとの表示データ、静止画資料、断面図、位置図などを準備しておくと、万が一モデル操作がスムーズにいかない場合でも説明を続けられます。CIMを使うからといって、すべてをリアルタイム操作に頼る必要はありません。
検査時の説明では、担当者の操作習熟度も大切です。モデルを作成した人と検査で説明する人が異なる場合、説明担当者がモデルの構成や属性の見方を理解していないと、必要な情報をすぐに出せません。検査前には、実際の説明順に沿ってリハーサルを行い、視点移動、属性確認、写真表示、断面表示、資料参照の流れを確認しておくとよいです。操作に迷う箇所があれば、表示状態を見直すか、補助資料を用意します。
さらに、検査で想定される質問に対して、どの画面で答えるのかを決めておくことも有効です。変更箇所を聞かれた場合、出来形測定点を聞かれた場合、不可視部分の施工状況を聞かれた場合、既設構造物との取り合いを聞かれた場合など、想定質問ごとにモデルの表示や資料の場所を整理しておくと、当日の対応が落ち着きます。指摘は、施工内容の不足だけでなく、説明の不明確さから生じることもあります。見せ方の準備は、その不明確さを減らすための実務的な対策です。
CIMモデルは、情報量が多いほど良いというものではありません。検査時には、必要な情報を必要な順番で、短時間に分かりやすく示せることが重要です。表示状態を事前に整え、説明の流れを作っておくことで、検査員が確認しやすくなり、担当者も落ち着いて根拠を示せます。CIMで指摘内容を減らすためには、モデル作成の完成度だけでなく、検査での見せ方まで準備することが大切です。
現地確認とCIM確認の差を事前に洗い出す
CIMで施工検査の準備を進める際に見落としやすいのが、現地確認とCIM確認の差です。CIMモデルでは整って見える部分でも、現地では高低差、段差、汚れ、復旧状態、周辺物との離隔、排水の流れ、視認性、安全施設の配置などが気になることがあります。反対に、現地では問題なく見えていても、CIMモデルや図面と照合すると、測点、位置、名称、属性にずれが見つかることもあります。検査前には、CIM上の確認だけで完了とせず、現地との突き合わせを行うことが重要です。
現地確認では、まずCIMモデルで検査対象箇所を抽出し、その順番に沿って現場を確認します。モデル上で確認した施工範囲、構造物位置、取り合い部、変更箇所、不可視部分の記録箇所を現地で見て、説明に不足がないかを確認します。このとき、現地写真を撮るだけでなく、CIM上のどの要素に対応する写真なのかを整理しておくと、後で資料に戻しやすくなります。
現地とCIMの差でよく起こるのは、位置の微妙なずれです。測量基準、座標系、基準点、現地での位置出し、施工時の調整などにより、モデル上の位置と現地の見え方に差が出ることがあります。許容範囲内の差であっても、検査時に説明できなければ不安要素になります。特に、既設構造物との取り合い、境界付近、道路や水路との接続部、排水勾配に関わる箇所では、位置や高さの根拠を確認しておくことが大切です。
高さ方向の確認も重要です。CIMモデルでは平面位置が合っていても、現地で見ると段差や勾配が気になることがあります。舗装のすり付け、側溝天端、桝の高さ、法肩や法尻、構造物の天端、埋戻し後の地盤面などは、検査時に確認されやすい部分です。モデル、横断図、出来形記録、現地状況を合わせて確認し、説明が必要な箇所を事前に整理します。
排水や水の流れに関わる部分は、CIMだけでは判断しにくい場合があります。モデル上では勾配が確保されているように見えても、現地の細かな不陸、周辺の堆積物、仮設撤去後の状態、既設施設の状況によって、実際の水の流れに影響が出ることがあります。検査前には、排水先、集水箇所、滞水しやすい低い部分、既設側溝や水路との接続を現地で確認し、必要に応じて写真や説明資料を整理しておくとよいです。
また、CIMモデルでは省略されがちな細部にも注意が必要です。小型構造物、付属物、標識や柵、蓋、金物、復旧舗装の端部、境界付近の処理などは、モデル上で簡略化されることがあります。しかし、施工検査ではこうした細部が確認対象になることもあります。モデルに入っていないから検査対象外というわけではないため、モデルで説明しない部分は、図面や写真で補えるようにしておく必要があります。
現地確認とCIM確認の差を洗い出す際には、チェック結果をその場限りにしないことが大切です。気付いた差をメモに残し、CIMモデルを修正するのか、注記で補足するのか、写真資料を追加するのか、帳票との対応を直すのかを決めます。差があること自体よりも、その差を把握し、説明できる状態にしていることが重要です。検査時に初めて差が見つかると指摘になりやすいですが、事前に整理していれば、確認済み事項として落ち着いて説明できます。
さらに、検査前の社内確認では、CIM担当者だけでなく、現場をよく知る担当者も一緒に確認することが望ましいです。モデル上では正しく見えても、現場担当者から見ると「ここは実際には施工時に調整した」「この部分は写真で説明した方がよい」「この既設物は検査で聞かれそうだ」といった気付きが出ることがあります。CIM担当と現場担当の視点を重ねることで、検査前の準備精度が上がります。
あわせて、検査前の共有手順と役割分担も確認しておきます。モデル操作担当、工事全体の説明担当、出来形資料の説明担当、品質資料の説明担当、写真台帳の説明担当、現地案内担当などを必要に応じて整理し、質問に対して誰がどの資料で答えるのかを決めておくと、当日の説明が途切れにくくなります。検査用データや資料は最新版を使い、旧版や参考資料と混在しないように管理しておくことも大切です。
現地確認とCIM確認の差を事前に洗い出すことは、施工検査での指摘を減らすうえで非常に実務的な準備です。CIMは現場を分かりやすく表現する強力な手段ですが、現地そのものの確認を置き換えるものではありません。モデル、図面、帳票、写真、現地を相互に確認し、差がある部分を説明可能な状態にすることで、検査対応の安定感が高まります。
まとめ
CIMで施工検査の指摘内容を減らすには、モデルを作成するだけでなく、検査で確認される情報に合わせて準備することが重要です。検査対象範囲とモデルの範囲を一致させ、設計変更や施工履歴を追えるようにし、出来形、品質、写真を位置情報と結び付けて整理することで、説明の根拠が明確になります。さらに、属性情報の不足や表記ゆれを整え、検査時に説明しやすい表示状態を用意し、現地確認との差を事前に洗い出しておくことで、当日の確認がスムーズになります。
施工検査での指摘は、施工そのものの問題だけでなく、資料間の不一致、説明不足、記録の探しにくさ、現地と図面の関係の分かりにくさから生じることがあります。CIMは、これらの情報を立体的かつ位置に基づいて整理できるため、検査準備との相性が高い手法です。ただし、情報を入れればよいのではなく、検査員が確認したい順番で、必要な根拠にすぐ到達できる状態にすることが大切です。
実務では、CIMモデル、図面、出来形管理表、品質記録、写真台帳、現地確認を別々に扱うのではなく、相互に照合しながら準備を進めることが求められます。特に、測点、構造物番号、施工区分、写真番号、変更資料番号などの対応関係を整理しておくと、検査当日の説明が安定します。検査前の共有会やリハーサルを行い、担当者ごとの役割を明確にしておくことも、指摘を減らすうえで有効です。
CIMを施工検査に活かす目的は、見栄えのよいモデルを見せることではありません。現場で行った施工内容を、位置、形状、数量、品質、記録のつながりとして分かりやすく示すことです。そのためには、施工中から記録を位置と結び付け、変更や確認結果を整理し、完成時に説明しやすい状態へ積み上げる姿勢が欠かせません。
現場での位置出し、出来形確認、基準点補強、写真記録の整理まで一連で効率化したい場合は、現地で座標を確認できる機器や記録方法を組み合わせることで、CIMと現場情報をよりつなげやすくなります。