LRTKレフィクシア株式会社

地震後の建築限界点検|軌道と構造物で見る6つの変位

地震後の建築限界点検が重要な理由

地震後の鉄道施設では、レールの破断や構造物の倒壊といった目立つ損傷だけでなく、軌道と周辺構造物の位置関係が変わっていないかを確認する必要があります。外観上は大きな損傷が見られなくても、軌道が数センチ横へ移動したり、ホーム端や柱がわずかに線路側へ傾いたりすれば、列車が安全に通過するための空間が地震前より狭くなっている可能性があるためです。

建築限界は、単に地面へ固定された枠ではありません。軌道中心やレール面を基準として、列車の走行に必要な空間を確保するために設定されるものです。そのため、地震によって軌道そのものが移動すると、建築限界を確認する際の基準位置も変わります。構造物が地震前と同じ位置に残っていたとしても、軌道が構造物側へ近づけば、両者の離隔は小さくなります。

反対に、軌道の位置に大きな変化がなくても、橋脚、ホーム、柱、擁壁、トンネル覆工などが線路側へ変位すれば、建築限界への接近が生じます。実務では軌道担当者が軌道変位を確認し、構造物担当者が橋梁やトンネルの損傷を確認することがありますが、各担当が自分の対象だけを見ていると、軌道と構造物の相対的な接近を見落とすおそれがあります。

地震後の点検では、施設が壊れているかどうかだけでなく、列車が通過する空間を現況の軌道に合わせて再確認することが重要です。軌道の横移動、高低変化、カント変化、橋梁の変位、ホームや柱の傾斜、トンネルや擁壁の変形を同じ位置情報の上で整理することで、建築限界への影響を判断しやすくなります。

また、地震直後に異常が見つからなくても、余震、降雨、地盤内の水分移動、盛土の緩みなどによって、その後に変位が進行する場合があります。初回点検の結果だけで長期的な安全を判断せず、必要に応じて時間を置いた再測定や余震後の再点検を行うことが欠かせません。

点検の方法、運転規制、判定値、復旧手順は、鉄道事業者が定める実施基準や災害時の取扱いに従う必要があります。この記事で扱う内容は、個別路線の数値基準を示すものではなく、実務担当者が地震後の建築限界点検を計画するときに確認したい基本的な視点を整理したものです。

点検を始める前に確認する基準と資料

地震後に現地へ入る前には、対象区間の建築限界に関する資料と、地震前の施設状態を示す資料を可能な限り集めます。建築限界図、線形図、軌道中心の座標、レール面の高さ、曲線半径、カント、構造物一般図、設備配置図、直近の検査記録などが主な確認対象です。

過去の測量成果や出来形記録が残っていれば、地震前後の変位を比較するための有力な資料になります。ただし、図面や過去の記録が必ずしも現在の施設状態と一致しているとは限りません。改修や設備更新が記録へ反映されていない場合もあるため、資料の数値をそのまま現況とみなさず、現地確認によって整合を確かめる必要があります。

点検範囲は、揺れが大きかった場所だけで機械的に区切らないことが大切です。盛土と橋梁の境界、橋台背面、トンネル坑口、切土と盛土の境界、構造形式が変わる場所、地盤改良範囲の端部などでは、変位や段差が集中する可能性があります。地震計の情報や巡回結果に加え、施設条件を踏まえて点検範囲を設定します。

曲線部、分岐器周辺、ホーム区間、橋梁端部、トンネル坑口などは、建築限界の余裕が一様ではない場所です。代表的な一断面だけを確認して終えるのではなく、変位が始まる位置、最大となる位置、元の状態へ戻る位置を連続的に把握する必要があります。

点検の優先順位もあらかじめ決めておきます。最初に確認すべきなのは、列車と直ちに接触するおそれがある突出物、レールの大きな変形、構造物の崩落や転倒、電気設備の垂下、斜面からの落石などです。緊急性の高い異常を確認した後に、詳細な座標測定や断面測定へ移ります。

地震後の現場では、余震、落下物、感電、斜面崩壊、不安定な足場など、通常点検とは異なる危険があります。測定作業へ集中するあまり、退避経路や周辺の安全確認を後回しにしてはいけません。安全に接近できない箇所は、離れた位置から観察し、適切な立入体制や設備を整えてから詳細点検を行います。

通常時の軌道整備目標、災害時の運転規制、建築限界の支障判定、構造物の健全度判定は、それぞれ目的が異なります。軌道変位が通常の整備目標を超えたことだけで、直ちに建築限界へ支障しているとは限りません。一方、個々の変位が小さくても、軌道と構造物が互いに接近する方向へ動いていれば、建築限界上の余裕が失われることがあります。

変位1 軌道の横移動と通り変化

地震後に最初に確認したい変位の一つが、軌道の左右方向への移動です。強い地震動、盛土の側方変位、路盤の変形、締結部のずれ、橋台背面の変状などにより、軌道中心が地震前の位置から横へ移動することがあります。

横移動には、短い区間で急に折れ曲がるような変位と、長い区間にわたって緩やかに移動する変位があります。急な折れは目視でも見つけやすい一方、周辺の地盤や構造物も同じ方向へ動いている場合には、緩やかな変位を見た目だけで判断することは困難です。

軌道の横移動を調べる際は、片側のレールだけでなく、左右レールの位置を測って軌道中心を求めます。片側レールの座標だけを比較すると、軌間の変化やレール単体の局所的なずれを、軌道全体の移動と取り違える可能性があります。左右レールの位置、軌間、軌道中心を分けて記録することが重要です。

建築限界との関係を見るためには、現況の軌道中心からホーム端、柱、橋梁防護設備、トンネル側壁、標識、配管、ケーブル支持物などまでの距離を確認します。地震前の軌道位置との差だけでなく、構造物との現況離隔を直接把握することが必要です。

たとえば、軌道がホーム側へ移動した一方で、ホーム躯体が反対側へ移動していれば、両者の離隔は必ずしも小さくなりません。反対に、軌道とホームの両方が互いに近づく方向へ変位すれば、それぞれの変位量が小さくても、離隔の減少量は大きくなります。したがって、軌道と構造物を同じ座標系で測ることが重要です。

曲線部では、軌道中心から構造物までの単純な水平距離だけで判断することはできません。曲線半径、カント、車両の偏りなどを踏まえ、対象区間に適用される建築限界の条件で評価する必要があります。地震によって曲線の通りが変化している場合は、地震前の線形条件をそのまま使わず、現況線形を確認します。

通り変化を連続的に把握するためには、異常が疑われる一点だけでなく、その前後の区間も測定します。前後の正常区間を含めて確認することで、変位の開始位置、最大位置、収束位置を把握できます。構造境界や橋台付近では測定間隔を細かくし、急な方向変化を見落とさないようにします。

変位2 軌道の沈下・隆起と高低変化

軌道の上下方向の変位は、列車の走行状態だけでなく、上方施設やホームとの位置関係にも影響します。地震後には盛土、路盤、道床、橋台背面などが沈下し、軌道面が地震前より低くなることがあります。反対に、路盤の隆起、地盤変形、構造物端部の突き上げなどにより、軌道面が局所的に高くなる場合もあります。

軌道が沈下すれば、上方の構造物との静的な距離は広がるように見えます。しかし、前後区間との間に段差が生じると、列車の上下動が大きくなり、静止状態の断面確認だけでは評価できない問題が生じます。走行時の動揺を含めた安全確認は、鉄道事業者の基準と手順に従って行う必要があります。

軌道が隆起した場合には、トンネル天端側の設備、橋梁上の上部施設、架空の設備などとの上下方向の余裕が小さくなる可能性があります。局所的な隆起は短い距離で発生することもあるため、離れた基準点から見た絶対高さと、近接するレール間の高低差を分けて確認します。

橋台背面やボックス構造物の接続部では、土工部と構造物部で支持条件が異なります。そのため、地震後に片側だけが沈下し、軌道へ段差や折れが生じることがあります。見た目には小さな変化でも、構造境界では変化率が大きくなる可能性があるため、測点間隔を細かくして確認します。

駅ホームでは、軌道の沈下によってホームが相対的に高くなる場合があります。ホーム端とレール面の高さ関係が変われば、乗降条件だけでなく、車体下部や側面との位置関係にも影響します。横移動も同時に発生している場合は、上下方向と左右方向の変位を組み合わせて評価することが必要です。

高さ測定に使用する基準点についても注意が必要です。地震の影響を受けた構造物上の点を基準として測ると、基準点と軌道が同じ量だけ沈下している場合に、変位を発見できないことがあります。可能な範囲で影響区域外の安定した基準へ接続し、絶対的な高さ変化を確認します。

緊急点検で安定した基準点へ接続できない場合は、暫定的な基準で測定したことを記録します。後日、安定点から再測定したときに結果を比較できるよう、使用した点、測定方法、機器、時刻、気象条件などを残しておくことが重要です。

変位3 カント変化と軌道面のねじれ

曲線部では、外側レールと内側レールの高さに差を設けるカントが列車の姿勢に影響します。地震によって左右レールの高さ関係が変わると、軌道中心の平面位置に大きな変化がなくても、列車が通過する空間の傾きが地震前と異なる可能性があります。

カントが変わると、建築限界断面を考える際の傾きも変化します。その結果、車両上部に近い柱、ホーム上屋、トンネル側壁、配管、ケーブル支持物などとの離隔が小さくなる場合があります。レール面付近の離隔だけを測り、安全と判断することはできません。

確認では、一断面における左右レールの高さの差だけでなく、その差が線路方向へどのように変化しているかを調べます。カントが本来連続的に変化する区間で、地震後に局所的な段差や急な変化が生じていないかを確認します。

緩和曲線やカントの移行区間では、もともと左右レールの高さ関係が少しずつ変わります。そのため、測定値だけを見て異常と判断するのではなく、設計値、過去の検査値、前後区間の連続性と比較することが大切です。

直線部でも、地震による不同沈下によって左右レールに高低差が生じる場合があります。直線だからカント確認が不要と考えず、軌道面の傾きとして測定します。橋梁支承の変位や路盤支持力の偏りが原因となることもあるため、軌道下部の構造状態と合わせて確認します。

さらに注意したいのが、軌道面のねじれです。線路方向の短い距離で左右レールの高低関係が変化すると、車両の各車輪が異なる高さを通ることになります。これは列車の姿勢や動揺へ影響するため、建築限界の静的な断面だけではなく、軌道状態の判定として別途確認が必要です。

測定点は、レール頭頂面の一定位置に統一します。継目、損傷、付着物などの局所的な影響を受けない位置を選び、同じ条件で再測定できるよう記録します。異常が疑われる断面だけでなく、前後の断面も連続して測ることで、変化の範囲を明確にできます。

変位4 橋脚・橋台・桁の移動

橋梁部では、橋脚、橋台、支承、桁、軌道がそれぞれ異なる量と方向へ変位する可能性があります。橋脚が傾き、支承がずれ、桁が横へ移動し、その上の軌道がさらに道床内でずれれば、複数の変位が重なって建築限界へ影響します。

橋梁点検では、桁が落下していないことだけで安全を判断してはいけません。防護設備、避難通路、点検通路、排水管、配線支持物、桁部材などが線路側へ移動していないかを確認します。部材そのものに破損がなくても、桁とともに移動して軌道へ接近している可能性があります。

支承部では、移動量、回転、浮き上がり、固定部の損傷、変位制限部材との接触などを確認します。桁端や橋台に衝突痕がある場合は、地震時に大きな相対移動が生じた可能性があります。ただし、衝突痕が示す最大移動位置と、地震後に停止している現在位置が同じとは限りません。現況位置は実測によって確認します。

橋台背面では、背面土の沈下や側方変位によって、軌道に通り変化と高低変化が同時に生じることがあります。桁上の軌道と土工部の軌道で支持条件が異なるため、接続部に段差や折れが集中する可能性があります。

斜橋や曲線橋では、橋軸方向への移動が線路に対する横方向の接近として現れる場合があります。橋梁図面上の橋軸方向と、軌道に対する左右方向が一致しないため、変位量をそのまま建築限界評価へ使わず、線路座標へ変換して確認します。

橋梁上の建築限界点検では、同じ断面内で軌道中心、左右レール、桁部材、防護設備、付属設備の位置を測定します。橋梁担当と軌道担当が別々に測定する場合も、共通の基準点と測点番号を使用し、後で重ね合わせられる状態にしておく必要があります。

部材の位置だけでなく、固定状態も重要です。地震によってボルトや支持金具が緩み、点検時には建築限界外にあっても、列車通過時の振動や風圧で動く可能性があります。可動するおそれがある部材は、静止位置の測定に加えて固定状況を確認します。

変位5 ホーム・柱・付属設備の傾斜

駅構内には、ホーム端、上屋柱、照明、案内設備、柵、配線支持物、排水設備など、多数の施設が軌道に近接して配置されています。地震後には、ホーム躯体の沈下や傾斜、目地部の段差、柱脚の損傷、取付金具の回転などが建築限界へ影響する可能性があります。

ホーム端の確認では、軌道中心からの水平距離と、レール面からの高さを組み合わせて測定します。ホーム全体が一様に動くとは限らず、構造目地や基礎条件の違いによって、一部だけが線路側へ変位する場合があります。

曲線ホームでは、軌道とホーム端の離隔が場所によって異なります。代表的な数点だけを測ると、局所的に最も接近した場所を見落とす可能性があります。軌道の横移動、カント変化、ホーム躯体の傾斜を合わせて確認し、厳しい断面を特定します。

柱は、基部の位置だけでなく、上部の傾きも確認します。柱脚にほとんど移動がなくても、柱が線路側へ傾けば、上部に取り付けられた照明や案内設備が建築限界へ接近することがあります。高さ方向に複数の測点を設け、どの高さで最も近づくかを把握します。

取付設備では、本体だけでなく、ブラケット、ボルト、蓋、ケーブル、配管などの突出を確認します。地震によって点検蓋が開いたままになったり、ケーブルが支持部から外れて垂れ下がったりすることも考えられます。通常時には建築限界外に収まる可動部材でも、閉鎖や固定が不完全であれば支障物となる可能性があります。

応急復旧で取り付けた仮設材にも注意が必要です。仮設の支持材、固定金具、養生材、照明、ケーブルなどが、元の施設より線路側へ突出する場合があります。損傷部を直した後は、復旧作業によって新たな支障物をつくっていないかを再確認します。

ホームでは旅客安全も別に確認する必要があります。建築限界が確保されていても、床面の段差、傾斜、亀裂、開口などが残っていれば、旅客の転倒や滞留につながります。列車との接触防止と、旅客を安全に扱える状態の確認を分けて実施します。

変位6 トンネル・擁壁・斜面の変形

トンネルでは、覆工のひび割れや剥落だけでなく、断面全体の変形、継目のずれ、側壁の押し出し、路盤の隆起などを確認します。地震による変形が小さく見えても、軌道側の横移動やカント変化と重なることで、建築限界の余裕が大きく減る可能性があります。

トンネル内には、配管、ケーブル、樋、標識、照明、支持金具などの付属設備があります。覆工本体が建築限界外にあっても、設備の固定部が外れ、線路側へ垂れ下がれば支障物となります。暗所では距離感がつかみにくいため、照明方向を変えて観察し、疑わしい箇所は実測します。

断面測定では、側壁下部、車両側面に近い高さ、車両肩部に近い位置、天端付近など、建築限界との関係が厳しくなりやすい位置を含めます。少数の測点だけでは局所的な押し出しを捉えられない場合があるため、過去の内空測定結果やひび割れ状況を参考に測点を設定します。

坑口部では、トンネル本体だけでなく、斜面、落石防護設備、擁壁、排水設備などを含めて点検します。地震直後には安定して見えても、余震や降雨によって岩塊や土砂が移動する可能性があります。初回点検後も条件に応じて監視を継続することが重要です。

線路脇の擁壁では、壁面の傾斜、はらみ出し、基部の移動、目地の開き、背面地盤の亀裂を確認します。壁本体だけでなく、天端に設置された柵、配管、ケーブルなどが線路側へ傾いていないかを調べます。

擁壁の位置を確認するときは、壁面上の一点だけでなく、基部、中間部、天端の位置を測ります。これにより、壁全体の平行移動と、傾斜や局部変形を分けて考えられます。再測定のために測点を残し、時間経過による変位の増加を確認できるようにします。

斜面からの落石や土砂は、点検時点で線路内へ到達していなくても、建築限界へ侵入する可能性のある不安定物として扱う必要があります。線路上の物件だけでなく、上方に残る浮石や緩んだ防護設備も確認し、必要に応じて監視や撤去を行います。

6つの変位を相対位置で評価する方法

地震後の建築限界点検では、6つの変位を個別に判定して終えるのではなく、軌道と構造物の相対位置として評価します。軌道が構造物側へ動き、構造物も軌道側へ動いた場合、両者の接近量はそれぞれの変位量を組み合わせたものになります。

たとえば、軌道がホーム側へ移動し、同時にホーム上部が線路側へ傾いていれば、ホーム端の基部よりも上部で離隔が厳しくなる可能性があります。さらにカントが変化して列車の姿勢がホーム側へ傾く条件になれば、最小余裕が生じる高さも変わります。

評価の基本は、現況の左右レール位置から軌道中心とレール面を定め、現況カントを反映したうえで、周辺構造物や設備の位置を同じ断面へ重ねることです。地震前の図面へ現況構造物だけを記入するのではなく、軌道と構造物の両方を現況値で扱います。

断面を設定する位置も重要です。直線の一般部だけでなく、曲線、緩和曲線、カント移行部、分岐器周辺、構造物境界、橋台背面、ホーム目地、トンネル継目などでは、複数の断面を設定します。

測定結果には、最小離隔だけでなく、その位置、高さ、対象部材、変位方向、測定時刻、測定方法を記録します。同じ離隔値でも、安定したコンクリート壁と、余震で動く可能性がある仮設設備では、管理上の扱いが異なります。

測定誤差も考慮しなければなりません。基準点の不確かさ、機器の精度、機器設置の誤差、測点の再現性などを踏まえ、測定値が限界に近い場合は慎重に判断します。数値上わずかに建築限界外であることだけを理由に、安全側と断定することは避けるべきです。

余裕が小さい箇所では、より精度の高い方法で再測定したり、運転条件を制限したりする対応を検討します。具体的な判定と取扱いは、鉄道事業者の実施基準、関係部署の協議、現場責任者の指示に従います。

地震後の測量で基準点を確認する方法

地震後の測量では、基準点そのものが動いている可能性を考える必要があります。地震前から使用している点であっても、盛土、橋台、ホーム、トンネル覆工などとともに変位していれば、同じ点を使っても地震前と同じ座標系を再現できません。

可能であれば、地震の影響が小さいと考えられる複数の基準点を使い、点間の距離や高低差が地震前と一致するかを確認します。一つの点だけを正しいものとして扱わず、複数点の整合から安定性を判断します。

開けた場所では衛星測位を利用し、広域的な位置関係を確認する方法があります。一方、トンネル、高架下、建物付近、樹木や斜面に囲まれた場所では、衛星信号の遮蔽や反射が測定結果へ影響することがあります。表示された座標をそのまま採用せず、既知点との比較や測位品質の確認を行います。

トンネル内や衛星測位が難しい場所では、影響範囲外の基準点から測量網を導入します。導入経路にある点が動いている可能性も考慮し、閉合確認や往復観測によって誤差を確認します。

緊急点検で暫定基準点を設ける場合は、その点が暫定であることを明確にします。設置場所、固定方法、使用期間、観測時刻、座標系、後日再確認する条件を記録し、確定した測量成果と混同しないようにします。

再点検で同じ位置を測れるよう、測点の再現性も確保します。距離標、柱番号、構造物番号、レール継目、目地などと関連付け、位置図と写真を残します。単に「橋台付近」などと記録すると、次回に異なる断面を測ってしまう可能性があります。

携帯型の測位機器を利用する場合も、機器を持って測っただけでは建築限界判定に必要な精度が保証されるわけではありません。補正情報の取得状態、測位解の状態、アンテナ姿勢、遮蔽環境、測定時間などを確認し、品質情報とともに記録します。

応急措置後に再点検すべき項目

建築限界へ接近した設備や部材が見つかった場合、撤去、固定、支持追加、軌道整正などの応急措置を行うことがあります。しかし、作業を完了しただけで安全確認が終わるわけではありません。措置後の状態を再測定し、列車の通過空間が確保されているかを確認する必要があります。

設備を撤去した場合は、切断部、残存金具、ボルト、ケーブルなどが突出していないかを見ます。傾いた部材を固定した場合は、固定後の位置だけでなく、余震や列車通過時の振動で再び動かない状態かを確認します。

軌道整正を行った場合は、建築限界との離隔だけでなく、通り、高低、軌間、カント、締結状態、道床や路盤の支持状態を確認します。一箇所の離隔を確保するために軌道を移動した結果、反対側や前後区間で余裕が小さくなる可能性があるためです。

橋梁部では、軌道だけを整正しても、桁や支承に残留変位がある場合があります。構造物側の状態が安定しているかを確認し、必要に応じて変位監視を継続します。

仮設の支持材、養生材、照明、電源ケーブルなどを設置した場合は、それらも建築限界点検の対象です。復旧作業のために設置した物件が、新たな支障物になっていないかを作業終了時に確認します。

運転再開後に速度制限や監視を行う場合は、対象区間、監視箇所、測定頻度、再点検の条件を明確にします。余震が発生した場合、変位が一定量増えた場合、強い降雨があった場合など、再確認へ移る条件を事前に整理しておくと対応しやすくなります。

応急措置後の点検値は、措置前の値と同じ測点、同じ座標系で比較します。測定方法が変わった場合は、その違いを記録し、単純な数値比較で変位が増減したと判断しないようにします。

点検記録を復旧計画へつなげる方法

地震後の点検記録には、異常の有無だけでなく、何を基準として、どの位置を、どの方法で測定したかを残します。地震の発生時刻、点検時刻、余震の有無、天候、運転状況、立入条件、使用した機器、測定者、基準点、座標系などを整理します。

写真は、対象物だけを近接撮影するのではなく、場所が分かる全景、軌道との位置関係が分かる中景、損傷や測点が分かる近接写真を組み合わせます。測点番号を写真と測定表で一致させることで、後から位置を確認しやすくなります。

ひび割れや段差を撮影する場合は、寸法の参考となるスケールを適切な位置へ置きます。ただし、写真の遠近によって寸法が異なって見える可能性があるため、重要な判定を写真だけで行わず、実測値を記録します。

図面上では、軌道と構造物を別々に記載するだけでなく、同じ断面に重ねて示すと、相対位置を把握しやすくなります。地震前、地震直後、応急措置後、再点検時の位置を時系列で整理すれば、変位が収束しているか、進行しているかを確認できます。

測定値を更新するときは、過去の値を上書きせず、履歴として保存します。同じ測点について複数回の結果を残し、測定時刻、測定者、機器、基準点の違いを確認できるようにします。

関係者へ情報を共有するときは、「異常なし」という結論だけでなく、確認した範囲と確認できなかった範囲を分けて伝えます。高所や暗所のため近接できなかった場所、基準点の安定性を確認できていない測量、暫定座標で整理した結果などは、制約を明記します。

地震後の復旧は、初動点検、詳細点検、応急措置、運転再開、恒久復旧という複数の段階に分かれます。各段階の記録を共通の測点番号と位置情報でつなげることで、担当者が交代しても状況を追跡しやすくなります。

まとめ

地震後の建築限界点検では、軌道の横移動と通り変化、軌道の沈下・隆起と高低変化、カント変化と軌道面のねじれ、橋脚・橋台・桁の移動、ホーム・柱・付属設備の傾斜、トンネル・擁壁・斜面の変形という6つの変位を確認することが重要です。

各変位を単独で見るだけでは、列車が通過する空間への影響を正しく把握できない場合があります。現況の軌道中心、レール面、カントを基準として、周辺構造物や設備との相対位置を同じ断面で確認する必要があります。

とくに曲線部、橋台背面、構造物境界、ホーム目地、トンネル坑口などでは、複数の変位が重なりやすくなります。代表点だけでなく前後区間を連続的に測定し、変位の開始位置、最大位置、収束位置を把握します。

測量では基準点自体の変位を疑い、複数点の整合確認や安定した基準への接続を行います。暫定基準を使う場合は、その条件を記録し、後日の確定測量と区別します。

応急措置を行った後も、措置後の位置、固定状態、周辺区間への影響を再確認します。初回点検で異常がなくても、余震や降雨などによって変位が進行する可能性があるため、現場条件に応じて再点検と監視を継続します。

地震後の限られた時間の中で測点位置、写真、測定値を正確に結び付けるには、現場で位置情報を取得し、その場で記録を整理できる仕組みが役立ちます。携帯型の高精度測位端末を活用して点検位置や変位箇所を共有したい場合は、LRTK Phoneを用いた現場記録の方法を確認することで、初動点検から復旧後の再測定まで一貫した位置管理につなげられます。

現場を3Dで残して、あとから測る。
実際の画面と動画で使い方を確認できます。

LRTK Phoneの使い方・実例を見る
資料請求導入相談
現場をスマホで3DスキャンLRTK Phone実例を見る