88条申請の対象を確認するとき、多くの実務担当者が迷うのは、単に「工事規模が大きいかどうか」だけでは判断できない点です。足場、架設通路、型枠支保工のような仮設物に関する計画もあれば、高さのある建築物や工作物、橋梁、ずい道、地山掘削、圧気工法、石綿等を伴う作業、廃棄物焼却施設の解体、工場設備の設置や変更など、確認すべき入口は複数あります。
現場では「88条申請」と呼ばれることが多いものの、法令上は労働安全衛生法第88条に基づく計画の届出として整理されます。そのため、対象となる条項、提出先、提出時期、添付する図面や書面、届出義務者を切り分けて確認することが重要です。この記事では、「88条申請 対象」で調べている実務担当者に向けて、対象判断を工事内容別に6つの分類で整理します。
88条申請の対象は工事名ではなく危険性と計画内容で確認する
88条申請の対象を整理するうえで、まず押さえておきたいのは、工事名だけで機械的に判断しないことです。たとえば「改修工事」「設備工事」「仮設工事」「解体工事」という名称だけでは、対象か対象外かは決まりません。同じ改修工事でも、高さのある建築物の改造を含む場合、一定規模の足場や架設通路を設ける場合、有害物の除去を伴う場合、別表第七に掲げられる機械等の設置や主要構造部分の変更を伴う場合では、確認すべき規定が変わります。
労働安全衛生法第88条は、危険または有害な作業を必要とする機械等、危険な場所で使用する機械等、危険や健康障害を防止するために使用する機械等の設置、移転、主要構造部分の変更について、一定の計画を事前に届け出る仕組みを定めています。また、建設業に属する事業のうち、重大な労働災害を生ずるおそれがある特に大規模な仕事や、厚生労働省令で定める一定の仕事についても、計画の届出が必要になります。
提出時期は条項によって異なります。法第88条第1項の機械等に関する届出は、当該工事の開始の日の30日前までに、所轄労働基準監督署長へ届け出る整理です。法第88条第2項の特に大規模な建設業の仕事は、当該仕事の開始の日の30日前までに厚生労働大臣へ届け出る整理です。法第88条第3項の一定の仕事は、当該仕事の開始の日の14日前までに所轄労働基準監督署長へ届け出る整理です。
実務上は、「88条申請が必要か」を着工直前の確認項目として見るのではなく、工事計画の初期段階で分類しておくことが安全です。対象になり得る分類を先に分けておけば、設計図、仮設計画、施工方法、工程表、作業範囲、設置期間、構造計算、安全対策の資料を早めに集められます。逆に、着工直前に対象であることに気づくと、工程の組み直し、関係者への再説明、図面の修正、監督署や関係部門への確認が重なり、現場の負担が大きくなります。
対象判断で特に注意したいのは、法令上の対象が「工事の種類」だけでなく、「高さ」「深さ」「支間」「長さ」「設置期間」「構造」「労働者の立入り」「有害物の発散のおそれ」など、具体的な条件と結びついている点です。社内の確認表を作るときも、「足場工事は対象か」ではなく、「足場の種類、高さ、組立てから解体までの期間、主要構造部分の変更の有無はどうか」というように、条件まで確認できる形式にする必要があります。
また、88条申請の対象かどうかは、施工者だけで判断を完結させるのではなく、元請、専門工事会社、設計担当、発注者、設備担当、安全衛生担当が同じ前提を共有することが重要です。特に、設計変更、工程短縮、施工範囲の分割、仮設計画の変更が入る現場では、最初は対象外と見ていたものが後から対象に近づくことがあります。対象判断は一度きりではなく、計画変更のたびに見直すものとして扱うと、見落としを減らせます。
分類1 仮設物や支保工を設置する工事
最初の分類は、足場、架設通路、型枠支保工など、現場の仮設物や支保工に関する工事です。88条申請の対象を調べる実務担当者にとって、最も身近で見落としやすい分類の一つです。仮設物は一時的に使うものという意識が強く、恒久構造物より軽く見られがちですが、作業床、通路、支柱、支保材、荷重の受け方、組立て解体の手順に不備があれば、墜落、崩壊、倒壊、コンクリート打設時の支保工破壊など、重大な災害につながるおそれがあります。
労働安全衛生規則では、法第88条第1項の対象となる機械等として、別表第七に掲げる機械等を設置、移転、または主要構造部分を変更しようとするときに、所定の届書、書面、図面等を添えて所轄労働基準監督署長へ提出する整理になっています。別表第七には、支柱の高さが3.5メートル以上の型枠支保工、高さおよび長さがそれぞれ10メートル以上の架設通路、つり足場や張出し足場、それ以外で高さ10メートル以上の構造の足場などが含まれます。
この分類で重要なのは、単に「足場を使うか」ではなく、足場の種類と高さ、構造、用途、設置箇所、組立図、配置図まで確認することです。つり足場や張出し足場は、地上から支持される足場とはリスクの現れ方が異なります。つり材、支持点、壁つなぎ、控え、作業床、昇降設備、資材荷重の管理が不十分だと、作業者の墜落だけでなく、第三者災害につながる可能性もあります。
型枠支保工では、支柱の高さ、打設するコンクリート構造物の概要、支保工の構造、材質、主要寸法、設置期間を確認する必要があります。コンクリート打設時は、打設速度、打設順序、偏荷重、支柱の沈下、水平力、つなぎ材の不足などが重なると、支保工全体の安定性に影響します。そのため、対象かどうかを判断する段階から、施工図、支保工計画図、組立手順、打設計画、安全管理の資料を一体で見ておくことが大切です。
架設通路についても、高さと長さの条件だけでなく、通路の勾配、幅、支持方法、手すり、床材、昇降時の動線、資材運搬との交錯を確認します。現場内の通路は日々使われるため、作業者が慣れてしまい、危険に気づきにくい場所でもあります。仮設物の届出対象判断では、設置時の構造だけでなく、施工中の使われ方、資材置場との位置関係、クレーン作業や車両動線との干渉も見ておくと、計画の実効性が高まります。
この分類でよくある見落としは、設置期間の扱いです。架設通路や足場については、組立てから解体までの期間が60日未満の場合の除外も規定されています。一方で、型枠支保工など別の扱いとなるものもあるため、「短期だから不要」と一律に判断するのは危険です。工程が伸びた場合、当初予定より長く設置する場合、施工区画を分けて順次盛り替える場合は、期間、構造、変更内容を改めて確認する必要があります。
分類2 高さのある建築物や工作物に関する工事
二つ目の分類は、高さのある建築物や工作物に関する建設、改造、解体、破壊の仕事です。高層の建築物や塔状の工作物は、墜落、飛来落下、倒壊、揚重作業中の接触、解体時の不安定化など、複数のリスクが重なります。88条申請の対象を整理するときは、建築確認や施工計画の区分だけでなく、労働安全衛生上の「高さ」と「作業方法」を切り出して確認する必要があります。
労働安全衛生規則第90条では、法第88条第3項の対象となる仕事として、高さ31メートルを超える建築物または工作物の建設、改造、解体または破壊の仕事が示されています。ただし、橋梁はこの区分から除かれ、別の条件で確認する必要があります。そのため、工作物という言葉だけでまとめず、橋梁に該当するものは橋梁の分類で確認することが重要です。
この分類では、「新築か解体か」よりも、「高さを伴う構造物に対してどのような作業を行うか」が重要です。新築であれば、鉄骨建方、外装、屋上設備、揚重、仮設足場、落下防止設備が中心になります。改造であれば、既存躯体との取り合い、補強前の一時的な不安定状態、作業床や開口部の管理が問題になります。解体や破壊であれば、解体順序、重機の作業範囲、落下物養生、周辺道路や隣接建物との関係、粉じんや騒音振動の管理も計画に含めて考える必要があります。
実務で迷いやすいのは、建物全体の高さと、作業する部分の高さを混同してしまうケースです。対象判断では、法令上の要件に照らして、対象となる建築物や工作物の規模、工事の内容、作業の範囲を確認します。屋上設備の更新、外壁改修、塔屋周辺の補修、煙突や広告塔の撤去など、工事件名だけでは高さのリスクが見えにくいものもあります。図面上の最高高さ、軒高、工作物の頂部、施工範囲の標高、足場計画を合わせて確認することが大切です。
また、高さのある工事では、88条申請の対象判断と同時に、作業主任者、墜落制止用器具、開口部養生、作業床、手すり、立入禁止範囲、揚重計画、強風時の中止基準など、別の安全衛生管理項目も連動します。88条申請は書類提出そのものが目的ではなく、重大な災害を防ぐために計画段階でリスクを洗い出す仕組みです。対象になり得る高さの工事では、届出資料を作る前に、施工手順が安全対策と矛盾していないかを確認することが欠かせません。
分類3 橋梁やずい道やダムなどの大規模土木工事
三つ目の分類は、橋梁、ずい道、ダムなどの大規模土木工事です。これらは一般的な建築物とは異なり、長大構造、地下空間、山岳部、河川上、交通供用部付近など、現場条件そのものが複雑になりやすい工事です。88条申請の対象を工事内容別に整理する際には、「橋梁」「ずい道」「ダム」という名称が入っているだけで判断するのではなく、支間、長さ、構造、施工場所、内部への労働者の立入り、立坑の有無などを確認します。
特に大規模な仕事として、法第88条第2項の対象になるものには、高さ300メートル以上の塔、堤高150メートル以上のダム、最大支間500メートル以上の橋梁、つり橋では1000メートル以上の橋梁、長さ3000メートル以上のずい道等、一定条件のずい道等、ゲージ圧力0.3メガパスカル以上の圧気工法による作業を行う仕事などが含まれます。これらは厚生労働大臣への届出として扱われる規模の大きい分類です。
一方で、法第88条第3項に関係する仕事として、最大支間50メートル以上の橋梁の建設等、一定の場所で行われる最大支間30メートル以上50メートル未満の橋梁上部構造の建設等、ずい道等の建設等も対象として整理されています。つまり、橋梁やずい道は、非常に大規模なものだけでなく、一定規模以上や一定条件に該当するものも確認対象になります。橋梁補修、上部工の架設、床版取替、仮桟橋、トンネル補修、坑口付近の作業など、工事件名が限定的でも該当性を確認すべき場面があります。
橋梁工事では、支間、架設方法、部材重量、作業場所の幅員、交通との近接、河川や海上での作業、ベントや支保工の配置、クレーンの据付条件が重要です。橋梁の補修工事でも、つり足場や作業構台を使う場合は、分類1の仮設物の観点も重なります。橋梁そのものの条件と、仮設物の条件を別々に確認すると、片方だけを見て対象判断を誤ることを防げます。
ずい道工事では、内部に労働者が立ち入るかどうか、掘削方法、支保パターン、換気、照明、避難、湧水、ガス、粉じん、運搬経路、切羽の管理が重要になります。ずい道の新設だけでなく、補修、拡幅、坑内設備更新などでも、作業場所が閉鎖的で退避が難しい場合には、計画段階の安全検討が欠かせません。長さや立坑の条件だけでなく、内部作業の有無と作業環境の管理をセットで見ることが実務上のポイントです。
ダムや大規模な塔状構造物では、施工期間が長く、関係者が多く、工区や工程が複雑になります。88条申請の対象判断では、工事全体の規模に加えて、施工段階ごとの危険性も確認します。仮設道路、作業構台、揚重設備、コンクリート打設、斜面対策、気象条件、緊急時の連絡体制などが計画と整合しているかを見ることで、届出資料が単なる形式的な書面ではなく、現場で使える安全計画になります。
分類4 掘削や土石採取や圧気工法を伴う工事
四つ目の分類は、地山の掘削、土石採取、坑内掘り、圧気工法など、地盤や地下、気圧条件に関係する工事です。この分類は、見た目には一般的な土工事や造成工事に見えることがあり、88条申請の対象確認から漏れやすい分野です。しかし、掘削面の崩壊、土砂の流入、重機との接触、酸欠や有害ガス、湧水、圧気による健康障害など、重大災害につながるリスクが高い作業が含まれます。
労働安全衛生規則第90条では、掘削の高さまたは深さが10メートル以上である地山の掘削の作業を行う仕事が示されています。ただし、ずい道等の掘削や岩石採取のための掘削は除かれ、さらに掘削機械を用いる作業で掘削面の下方に労働者が立ち入らないものは除かれる整理です。また、圧気工法による作業を行う仕事、掘削の高さまたは深さが10メートル以上の土石採取のための掘削、坑内掘りによる土石採取のための掘削も対象分類として確認が必要です。
この分類で重要なのは、「深さ」だけでなく「労働者がどこに立ち入るか」を確認することです。重機で掘削しているだけに見える工事でも、測量、丁張、排水ポンプ設置、法面確認、土留め材の設置、配管接続、埋戻し前の確認などで、作業者が掘削面の下方や近接部に入る場合があります。対象判断では、施工手順書だけでなく、実際の作業動線、点検動線、写真撮影位置、資材搬入位置まで確認する必要があります。
地山掘削では、土質、地下水、降雨、既設埋設物、近接構造物、掘削勾配、土留め方式、排水計画が安全性に直結します。計画段階で「標準勾配だから問題ない」と決めつけるのではなく、地盤調査資料、近隣の掘削実績、湧水の有無、重機の走行位置、土砂仮置き位置を確認することが大切です。掘削が段階的に深くなる現場では、ある時点から対象条件に近づくこともあるため、工程ごとの最大深さを確認する必要があります。
圧気工法では、通常の土工事とは異なる管理が必要です。作業室内の気圧、入退室管理、減圧、健康管理、緊急時対応、設備の故障時対応が重要になります。圧気工法を含む工事では、土木担当だけでなく、設備担当、衛生管理担当、医療対応の体制も含めて計画する必要があります。88条申請の対象確認は、工法が決まった後では遅れることがあるため、発注段階や施工方法の比較段階で候補に入れておくと安全です。
土石採取や坑内掘りも、一般の造成工事と混同しないようにします。採取目的、掘削方法、坑内の有無、作業者の立入り、搬出経路、崩落リスク、換気の必要性を確認し、工事内容がどの分類に当たるかを整理します。分類4は、図面上の平面範囲だけでは危険性が見えにくいため、断面図、施工ステップ図、現況写真、地盤情報、作業動線を合わせて確認することが重要です。
分類5 石綿等や焼却施設など有害性を伴う解体関連工事
五つ目の分類は、石綿等の除去、封じ込め、囲い込みや、廃棄物焼却施設の解体など、有害性を伴う解体関連工事です。88条申請の対象を考えるとき、どうしても墜落や崩壊などの物理的な危険に意識が向きがちですが、粉じんや有害物へのばく露、設備内部の残留物、解体時の発散、周辺環境への影響も重要な確認対象です。
労働安全衛生規則第90条では、建築物、工作物または鋼製の船舶に吹き付けられている石綿等の除去、封じ込め、囲い込みの作業を行う仕事が示されています。ただし、石綿等が使用されている仕上げ用塗り材はこの区分から除かれるため、材料の種類と作業内容を確認する必要があります。また、張り付けられている石綿等が使用されている保温材や耐火被覆材等の除去、封じ込め、囲い込みの作業のうち、石綿等の粉じんを著しく発散するおそれのあるものも確認対象です。
さらに、一定規模の廃棄物焼却炉を有する廃棄物焼却施設に設置された焼却炉、集じん機等の設備の解体等も対象として整理されています。火格子面積や焼却能力の条件が関係するため、単に「焼却施設の解体」という名称だけでなく、設備の仕様、対象範囲、過去の運転履歴、付着物の状況を確認することが重要です。
この分類では、「解体工事かどうか」だけではなく、「何を解体するか」「何が含まれているか」「作業によって何が発散するか」を確認します。建築物の一部解体、設備更新、内装撤去、配管保温材の撤去、煙突内部の補修、集じん設備の撤去など、工事件名だけでは有害物の存在が見えにくい場合があります。事前調査の結果、設計図書、過去の改修履歴、分析結果、施工範囲の写真を確認し、対象判断の根拠を残すことが重要です。
石綿等を伴う工事では、隔離、負圧、集じん排気、湿潤化、保護具、廃棄物の保管、作業後の清掃、周辺への掲示、作業記録など、多くの管理項目が関係します。88条申請の対象確認だけで完結するものではなく、関連する法令手続きや届出、作業基準、教育、健康管理とも連動します。そのため、現場担当者だけで判断せず、専門知識を持つ担当者や安全衛生部門と早期に確認することが望ましいです。
焼却施設の解体では、設備内に付着したばいじん、ダイオキシン類、重金属等の有害性を想定する必要があります。解体対象が炉本体だけでなく、集じん機、煙道、配管、灰出し設備、周辺の機械室に及ぶ場合、作業範囲の切り分けが不十分だと、計画に含まれていない有害物ばく露リスクが残ります。対象判断では、設備の構成、過去の運転履歴、清掃状況、解体順序、養生範囲、作業者の動線を確認することが大切です。
分類6 生産設備や主要機械や換気設備を設置変更する工事
六つ目の分類は、建設現場だけでなく、工場や作業場の設備設置、移転、主要構造部分の変更に関わるものです。88条申請という言葉は建設工事の文脈で語られることが多いですが、法第88条には、危険または有害な作業を必要とする機械等、危険な場所で使用する機械等、危険または健康障害を防止するために使用する機械等の設置、移転、主要構造部分の変更に関する届出も含まれます。工場設備の新設、ライン変更、局所排気装置の設置変更、プレス機械、溶解炉、化学設備などを扱う場合は、この分類を確認します。
労働安全衛生規則第85条では、法第88条第1項の対象となる機械等は、他の省令に定めるもののほか、別表第七に掲げる機械等とされています。第86条では、別表第七に掲げる機械等を設置、移転、または主要構造部分を変更しようとするとき、届書に必要事項を記載した書面と図面等を添えて所轄労働基準監督署長に提出することが定められています。別表第七には、動力プレス、一定規模の溶解炉、型枠支保工、架設通路、足場、有機溶剤の蒸気発散源を密閉する設備や局所排気装置など、多様な設備が含まれます。
この分類の実務上の難しさは、工事担当者が「建屋の改修」だけを見ていて、設備担当者が「機械の更新」だけを見ている場合に、全体として88条申請の対象確認が抜ける点です。既存工場に新しい生産設備を入れる、主要な機械の配置を変える、換気設備を更新する、薬品を扱う作業場所を変更する、作業者の常時滞在場所を変えるといった計画では、建築工事、電気工事、設備工事、安全衛生対策が一体で関係します。
主要機械の設置変更では、機械本体の仕様だけでなく、作業者の立ち位置、材料の搬入搬出、非常停止、ガード、インターロック、点検スペース、周辺設備との距離、動線、フォークリフトや台車との交錯を確認します。設備の能力が上がると、作業速度、騒音、熱、粉じん、蒸気、飛散物、挟まれ巻き込まれのリスクも変わることがあります。届出対象かどうかを確認するだけでなく、変更後の作業場として安全対策が成立しているかを確認することが重要です。
換気設備や局所排気装置などは、作業環境を守るための設備であるため、設置や変更の意味を軽視してはいけません。発散源、フードの位置、風量、排気経路、点検口、作業者の呼吸域、周辺の気流、排気先の安全性を確認しなければ、設備を設けても期待した効果が得られないことがあります。88条申請の対象判断では、単に設備名を照合するのではなく、作業内容、有害物の発生状況、設備の目的、作業場レイアウトをまとめて確認することが大切です。
工場や作業場の工事では、建設会社、設備会社、機械メーカー、発注者の生産技術部門、安全衛生部門が別々に資料を持っていることがよくあります。88条申請の対象確認を確実に行うには、工事契約前または基本設計段階で、設備一覧、レイアウト図、作業内容、使用物質、電気容量、排気設備、作業者数、稼働開始予定日を共有し、対象になり得る項目を早めに洗い出す必要があります。
対象判断を社内で漏らさないための確認手順
88条申請の対象を6つの分類で把握したら、次に重要なのは、社内の確認手順として定着させることです。現場担当者の経験だけに頼ると、よく扱う工種は判断できても、久しぶりに発生する工種や特殊な条件を伴う工事で見落としが起こります。特に、短期工事、夜間工事、部分改修、追加工事、工程変更、仮設計画の盛替え、設備更新を伴う工事では、対象判断が後回しになりやすくなります。
最初に行うべきことは、工事概要を分類することです。工事件名、発注者名、工期、施工場所だけでなく、仮設物の有無、高さのある建築物や工作物の有無、橋梁やずい道やダムの有無、掘削や圧気工法の有無、有害物や特殊解体の有無、別表第七に掲げられる機械等の設置変更の有無を確認します。この段階では、対象か対象外かを即断するよりも、「確認が必要な分類に該当するか」を広めに拾うことが大切です。
次に、規模条件と作業条件を確認します。足場であれば種類、高さ、設置期間、組立図と配置図を確認します。型枠支保工であれば支柱高さ、打設対象、構造、設置期間を確認します。建築物や工作物であれば高さ、工事内容、解体や改造の有無を確認します。橋梁であれば最大支間、上部構造、施工場所を確認します。掘削であれば深さまたは高さ、掘削面下方への立入り、土留めや排水を確認します。有害物を伴う工事であれば、事前調査と作業方法を確認します。設備工事であれば、別表第七に該当し得る機械等か、主要構造部分の変更かを確認します。
そのうえで、提出時期と届出先を確認します。法第88条第1項の機械等に関する届出では、工事開始日の30日前までという考え方が重要です。法第88条第2項の特に大規模な建設業の仕事では、仕事開始日の30日前までに厚生労働大臣へ届け出る整理になります。法第88条第3項の一定の仕事では、仕事開始日の14日前までに所轄労働基準監督署長へ届け出る整理です。対象の条項が違えば、提出時期も添付資料も変わるため、工程表に「88条確認期限」を入れておくと遅れを防げます。
また、対象判断の根拠を残すことも重要です。対象外と判断した場合でも、なぜ対象外としたのかを記録しておけば、後日、工程変更や設計変更が起きたときに再確認しやすくなります。たとえば、当初は足場の高さが対象条件に達しない計画だったが、外壁範囲の追加で高さが変わった場合、対象外判断の根拠を残していれば、変更時にすぐ気づけます。逆に、根拠が残っていないと、担当者が変わったときに同じ確認を最初からやり直すことになります。
社内確認では、現場写真と位置情報の管理も有効です。対象判断に関わる高さ、掘削範囲、仮設物の設置箇所、設備の配置、作業区画、周辺との関係を写真で残しておくと、関係者間の認識違いを減らせます。図面上では分かりにくい隣地との距離、道路との近接、資材置場、重機動線、昇降位置なども、現場写真と合わせることで説明しやすくなります。
最後に、判断に迷った場合は、社内だけで抱え込まないことです。所轄の労働基準監督署、元請の安全衛生担当、専門工事会社、設計者、労働安全衛生に詳しい専門家に早めに確認することで、手戻りを減らせます。88条申請の対象判断は、提出するかしないかの事務処理ではなく、工事計画の安全性を事前に確認するプロセスです。迷う場合ほど、早い段階で資料をそろえ、相談できる状態にしておくことが重要です。
まとめ 88条申請の対象は分類して早めに確認する
88条申請の対象は、工事件名だけで判断すると見落としやすくなります。仮設物や支保工、高さのある建築物や工作物、橋梁やずい道やダム、掘削や圧気工法、有害物を伴う解体関連工事、生産設備や主要機械や換気設備の設置変更という6つの分類で整理すると、どの観点で確認すべきかが見えやすくなります。
特に重要なのは、分類ごとに「対象になり得る条件」が違うことです。足場であれば種類、高さ、設置期間、型枠支保工であれば支柱高さ、建築物や工作物であれば高さ、橋梁であれば支間、ずい道であれば長さや内部立入り、掘削であれば深さや労働者の立入り、有害物工事であれば発散のおそれ、設備工事であれば別表第七に該当する機械等かどうかを確認します。こうした条件を工程初期に拾い上げることで、届出遅れ、資料不足、計画変更時の手戻りを防ぎやすくなります。
また、88条申請は、単に書類を出すための手続きではありません。計画段階で重大な労働災害につながるリスクを見える化し、構造、工法、配置、工程、安全対策の整合を確認するための重要な機会です。対象外と判断する場合でも、判断根拠を残し、設計変更や工程変更のたびに再確認する運用を整えることが、実務上の安全につながります。
現場での対象確認をより確実に進めるには、図面、工程表、作業手順書だけでなく、現場写真、位置情報、仮設物の配置、掘削範囲、設備の設置場所などを一元的に記録することが有効です。写真や位置情報を根拠資料として整理しておけば、関係者間の認識違いを減らし、所轄労働基準監督署や安全衛生担当者へ相談する際にも説明しやすくなります。88条申請の対象は、早めに分類し、条件を確認し、変更時に見直す運用を整えることが重要です。