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出来形ARチェックで階段蹴上げ寸法のズレを見抜く4確認

階段の出来形ARチェックで蹴上げ寸法を見る意味

階段の出来形確認では、階段全体の位置や幅だけでなく、一段ごとの蹴上げ寸法が設計意図に沿って施工されているかを確認することが重要です。蹴上げとは、隣り合う踏面同士の鉛直方向の高さ差を指します。完成した階段を見たときに全体として整っているように見えても、特定の一段だけ高さが異なっていたり、最下段や最上段で高さ調整が集中していたりすることがあります。

こうした差は、階段全体を正面から見ただけでは気づきにくい場合があります。特に、周囲の舗装や床仕上げ、踊り場、縁石、構造物の仕上げ高さなどが施工途中で変化すると、階段本体の寸法が設計どおりでも、実際に使用する状態では最初の一段や最後の一段だけ高さの見え方が変わることがあります。そのため、出来形確認では階段単体ではなく、接続する完成面を含めて見る必要があります。

出来形 AR チェックは、こうした高さ関係を現場で把握するための補助的な方法として活用できます。設計データや基準となる位置情報を現地空間へ重ねて表示し、施工された階段と比較することで、どの段に差がありそうかを視覚的に探しやすくなります。従来の計測では一つずつ数値を取得して記録する作業が中心になりますが、ARを併用すると、設計形状と現物の関係を現場で確認しながら測定対象を絞り込めます。

ただし、AR画面に設計形状が重なって見えることだけを根拠として、蹴上げ寸法が適合していると判断するのは適切ではありません。表示位置には、使用する座標、端末の姿勢、測位状態、設計データの基準、現場環境などの影響が加わります。出来形 AR チェックは、現場で差異の候補を発見し、確認すべき場所を把握する用途に向いていますが、最終的な出来形判定は工事ごとの設計図書、施工管理基準、発注者の要求事項、現場で定められた測定方法などに基づいて行う必要があります。

階段では、とくに一段だけを見るのではなく、連続した高さの関係を見ることが重要です。一段ごとの差が小さく見えても、複数段にわたって同じ方向にずれていれば、上端や下端で大きな差として現れる可能性があります。反対に、階段全体の高さが合っていても、途中で高さを調整した結果、一部の蹴上げだけが周囲と異なるケースも考えられます。

そこで、階段の蹴上げ寸法を出来形ARチェックで確認するときは、「高さ基準と完成面」「各段の連続性」「累積高さ」「AR表示と実測の照合」という4つの観点で整理すると、確認漏れを減らしやすくなります。

確認1 設計上の高さ基準と完成面をそろえて確認する

最初に確認したいのは、AR上で表示している設計データと、現場で比較している階段が同じ高さ基準で扱われているかという点です。蹴上げ寸法は隣接する踏面間の高さ差なので、一見すると絶対的な標高が多少ずれていても測れそうに思えます。しかし、出来形ARチェックでは階段全体の位置や上端、下端、踊り場との接続まで確認するため、設計と現地で基準が一致していることが重要になります。

まず設計図から、どの高さが基準になっているのかを確認します。階段では構造体の高さと仕上げ後の高さが異なることがあります。コンクリート下地の状態を示している図面と、仕上げ材を含む完成高さを示している図面を混同すると、AR上の設計形状と現物に一定の差が生じる可能性があります。その状態で一段ごとのズレを判断すると、本来は仕上げ厚の違いであるものを施工誤差と見てしまうおそれがあります。

屋外階段では、下端が舗装や歩道、広場などにつながっていることもあります。この場合、階段の最下段を確認するときには、階段本体だけでなく周囲の完成面も見る必要があります。階段施工時点では適切だった蹴上げでも、その後に舗装面が施工されることで実際の高さ関係が変わることがあります。逆に、舗装が未施工の段階で完成時の蹴上げを判断しようとすると、まだ施工されていない層を無視することになります。

最上段も同様です。階段上部の床面や踊り場が別工程で施工される場合には、現在見えている面が最終完成面なのかを確認します。最上段だけ蹴上げが高いように見えても、後工程で仕上げ材が入る設計であれば、完成後には設計上の関係になる可能性があります。一方で、すでに完成面であるにもかかわらず設計値と差がある場合には、階段または接続部の高さを詳しく確認する必要があります。

出来形 AR チェックでは、設計階段の踏面や蹴上げ線を現地に重ね、現在の仕上がりとの位置関係を確認します。このとき、設計形状全体が現物に対してほぼ同じ方向へ一定量ずれて見える場合は、一段だけの施工誤差と決めつけず、座標や高さ基準、データの配置条件を先に確認します。階段全体が一様にずれているのか、特定の段だけが設計形状から外れているのかを切り分けることが重要です。

また、高さ基準だけでなく平面上の位置も確認しておくと、AR表示を読みやすくなります。階段と設計データの平面位置がずれていると、端末を見る角度によって踏面線と蹴上げ線が異なる位置に重なり、高さ方向の差なのか平面方向の差なのか判断しにくくなるためです。階段側面や壁際、手すり基礎など、位置を確認しやすい特徴点がある場合には、それらも参考にして設計と現地の対応関係を確認します。

つまり、一つ目の確認では、いきなり一段ごとの数値を見るのではなく、「何を基準として比較しているのか」をそろえることがポイントです。完成面、設計高さ、階段位置、周辺構造物との接続条件が合った状態を作ってから、次の段階として蹴上げ寸法の連続性を見ていきます。

確認2 各段の蹴上げ寸法を連続して比較する

二つ目の確認は、一段ごとの蹴上げ寸法を連続して比較することです。階段の出来形では、一段の高さが設計値に近いかだけでなく、隣り合う段とのばらつきにも注意が必要です。

たとえば、階段全体の高さが設計にほぼ合っていても、途中の一段が低く、その次の一段が高く施工されていれば、最終的な上端高さは合うことがあります。この場合、階段全体の始点と終点だけを測定すると異常を把握できない可能性があります。利用者が歩くときには一段ごとの高さの変化を連続して踏むため、部分的な高さ差を見つけるには各段を順番に確認することが大切です。

出来形 AR チェックでは、設計上の各踏面高さを現地の階段へ重ねることで、どの位置から差が生じているかを視覚的に確認できます。下から上へ順番に見ていき、設計上の踏面線と実際の踏面がどの程度一致して見えるかを追います。最初の数段は合っているのに途中から少しずつ外れる場合と、特定の一段だけ急に外れる場合では、想定される原因が異なります。

途中から少しずつ差が大きくなるのであれば、一段ごとの施工寸法がわずかに偏っている可能性や、設計データと実物の全体的な高さ関係に差がある可能性を考えます。一段だけ明確に異なる場合には、その段付近の型枠、仕上げ、下地など、局所的な施工条件を確認するきっかけになります。

ただし、AR画面だけで数ミリ単位の蹴上げ差を確定させようとするのではなく、ARで違和感が見つかった段を実測対象として整理する使い方が現実的です。AR上の見え方は端末の姿勢やカメラ視点によって変化するため、画面上で線が完全に一致するかだけを基準にすると判断が不安定になることがあります。まずARで階段全体を俯瞰し、差が疑われる箇所を見つけ、必要に応じて高さを計測するという流れにすると、出来形確認を進めやすくなります。

実測するときも、単に「一段目」「二段目」と記録するだけではなく、後から場所が分かるような管理方法が必要です。階段の下端から段番号を統一して数える、測点名を決める、側面の基準方向を統一するなど、現場内で同じルールを使用すると記録を比較しやすくなります。測定する人によって段番号の数え方が変わると、確認結果を共有したときに別の段を指してしまう可能性があります。

また、踏面には水勾配や仕上げの凹凸などが存在する場合があります。そのため、どの位置で高さを取得するかも統一しておくことが重要です。踏面の前端付近、中央付近、左右どちら側など、工事の確認方法に応じた測定位置を決めておかないと、同じ段でも測る位置によって数値が変わる可能性があります。

階段幅が広い場合は、片側だけを見るのではなく、左右方向の状態にも注意します。蹴上げ高さそのものは同じ設計でも、踏面に傾きやねじれがあれば、階段の左側と右側で高さ差の見え方が変わることがあります。出来形ARチェックでは正面だけでなく、必要に応じて複数方向から設計線と実物の関係を見ることで、一方向の確認だけでは気づきにくい変化を発見しやすくなります。

重要なのは、蹴上げ寸法を孤立した数値として扱わないことです。前後の段との関係を連続して見ることで、「どこから変わったのか」「一段だけなのか」「複数段で同じ傾向なのか」を把握できます。これが、ARを階段出来形に活用する大きなポイントです。

確認3 最上段と最下段を含めた累積高さを確認する

三つ目は、各段の蹴上げだけでなく、階段全体の累積高さを確認することです。階段では、一段ごとの寸法確認と階段全体の高さ確認を組み合わせることで、ズレの性質を把握しやすくなります。

階段が十数段ある場合、一段ごとの差が小さくても、同じ方向への差が複数段続けば、上端ではまとまった高さ差になる可能性があります。反対に、各段の高さを途中で調整しながら施工していると、最上段の高さは設計に近くても、その途中に高さの大きい段と小さい段が混在することがあります。

このため、最下段から最上段までの高さを確認したうえで、各段の蹴上げとの関係を見ることが重要です。出来形ARチェックでは、設計階段全体を現地へ表示することで、下端が合っている状態で上端がどのように見えるかを確認できます。下端では一致しているのに上へ進むほど設計面との高さ差が広がっていくなら、段数や一段ごとの高さ、施工された位置関係を詳しく確認する必要があります。

反対に、上端と下端がともに設計形状へ合っているように見えても、そこで確認を終わらせないことが大切です。途中で高さを調整している可能性があるからです。上端、下端、途中という三つの領域を分けて確認すると、階段全体の関係をつかみやすくなります。

特に最下段は見落としやすい部分です。階段本体の施工時には、下側の舗装や床がまだ未完成ということがあります。後から周囲の仕上げ高さが決まると、完成時の一段目の蹴上げが変わって見えます。そのため、最下段については階段の踏面だけではなく、階段へ進入する側の完成面と組み合わせて確認します。

最上段も同じ考え方です。上部の踊り場や床面と、最上段の踏面との高さ関係を確認します。階段本体の段数や蹴上げが合っていても、踊り場の仕上げ高さが異なれば、最後の一歩だけ高さの関係が変化します。出来形として階段を確認するときは、構造物の境界で管理範囲を切り離すのではなく、実際につながる面まで確認することが実務上重要です。

AR表示を利用すると、階段全体の設計形状を視覚的に見ながら、どの段から差が発生しているのかを追うことができます。設計上の踏面線が階段の下部では実物と重なり、上部へ行くほど実物から離れる場合には、単純な位置ずれとは違う傾向が見えます。一方、全段がほぼ同じ量だけ上または下へずれて見える場合は、蹴上げ寸法ではなく全体の高さ基準やAR配置条件を疑う必要があります。

このように、ARで見えるズレの「形」を観察すると、次に何を測るべきか判断しやすくなります。全体が一定方向へずれているのか、段が進むごとに差が拡大しているのか、一段だけ不連続なのかを区別することがポイントです。

また、階段の段数そのものも確認しておく必要があります。設計上の段数と施工された段数が異なれば、当然ながら一段ごとの高さや上端高さの関係も変わります。通常は施工前の段階で確認される事項ですが、出来形ARチェックでは設計形状を重ねることで、段位置の対応関係を再確認しやすくなります。

階段全体の累積高さを見ることは、一段ごとの施工精度を見ることと対立するものではありません。むしろ両者を組み合わせることで、全体として合っているのに途中だけ違うケースと、各段は似ているものの累積で差が出るケースを区別できます。

確認4 AR表示の位置合わせと現地計測を照合する

四つ目は、AR表示そのものが正しく現地へ対応しているかを確認し、必要な箇所を現地計測と照合することです。出来形 AR チェックを行う際に最も注意したいのは、画面に表示された設計形状をそのまま確定値として扱わないことです。

ARは現場理解を助ける有効な手段ですが、表示にはさまざまな要素が関係します。設計データに設定された座標、現場で利用する基準、端末の測位状態、端末の姿勢、周囲の受信環境、データの高さ情報などが一致していなければ、画面上に位置差が現れます。

たとえば、階段全体が設計形状に対して同じ量だけ横方向へずれている場合、すべての階段が施工ミスであるとは限りません。AR上の設計配置が現場基準と一致しているかを確認する必要があります。同様に、階段全体が一定量だけ高く、または低く見える場合にも、高さ基準の設定を確認します。

出来形ARチェックを開始する前には、可能であれば階段以外の既知の特徴点も利用して整合を確認します。周囲に設計位置が明確な構造物や基準となる位置があれば、それがAR表示と現地で適切に対応しているかを見ます。階段だけを見て位置合わせを判断すると、施工された階段側に差があるのか、AR表示側に差があるのか切り分けにくくなる場合があります。

また、同じ場所でも端末を見る方向や距離を変えて確認することが有効です。一方向から見ると設計線が合っているように見えても、別方向から見ると位置差が確認できることがあります。とくに階段は踏面と蹴上げが連続する立体形状なので、斜め方向から見るだけでは奥行き方向の差を高さ差と誤認する可能性があります。

正面、側面、斜め方向などから状態を確認し、設計形状と実物の対応関係が安定しているかを見ます。端末の表示が移動するたびに大きく変わる場合には、その状態のまま細かな寸法を判断しないようにします。

AR上で差が疑われる場所を見つけたら、実測値との照合に進みます。ここで重要なのは、ARと実測を競合する方法として考えないことです。ARは広い範囲を素早く確認し、異常候補を探すのに向いています。一方、寸法の適否を判断する際には、その工事で定められた測定方法による確認が必要になります。

たとえば、複数段のうち一段だけ設計線との位置関係が異なる場合、その段と前後の段を実測し、実際に蹴上げの差が存在するか確認します。実測でも差が確認された場合は施工状態を詳しく調べます。実測では問題がなくARだけがずれて見える場合には、ARの位置合わせや表示条件を再確認します。

この照合作業を行うことで、「ARで見えた違和感」と「実際の出来形寸法」を分けて管理できます。出来形ARチェックを効果的に運用するためには、画面上の一致だけを目指すのではなく、設計データ、現物、測定結果という三つを相互に確認することが大切です。

なお、ARによる確認は、法令上の検査や発注者指定の出来形管理方法を自動的に置き換えるものではありません。どの方法を正式な出来形確認として使用できるかは、対象工事の設計図書、仕様書、施工管理基準、発注者との協議内容などを確認する必要があります。ARは現地確認や施工管理を支援する手段として位置付け、その上で必要な測定と記録を行うことが安全です。

階段の出来形ARチェックを行う実務手順

階段の出来形ARチェックを実務で行う場合には、最初から細部を見るより、階段全体から局所へ確認範囲を絞っていくと進めやすくなります。

まず、使用する設計データが対象階段の最新状態を反映しているか確認します。施工変更や高さ変更が行われているにもかかわらず古いデータを表示すると、現場との不一致を施工誤差と誤認してしまいます。図面の版、階段位置、段数、上端高さ、下端高さ、周辺仕上げとの接続条件などを確認したうえで現場へ持ち込みます。

次に、階段周囲でAR表示と現地位置の関係を確認します。階段全体を画面に入れ、設計された階段の輪郭と実物がどのように重なるかを見ます。この段階では、一段ごとの細かな差よりも、全体が大きくずれていないかを見ることを優先します。

全体位置がおおむね対応していることを確認したら、下端側から各段を追います。設計上の踏面高さと現物の踏面位置を連続して比較し、どこから関係が変わるかを見ます。このとき、画面だけを見ながら歩くのではなく、足元の安全を確保することが重要です。階段は高低差が連続する場所であり、端末操作に集中すると転倒の危険があるため、停止した状態で確認するなど、現場の安全ルールに従って作業します。

続いて、上端側からも同じ階段を確認します。下から見た場合と上から見た場合では、設計線と実物の重なり方が異なって見えることがあります。特に最上段と踊り場との関係は、下側からだけでは把握しにくいことがあるため、接続する完成面を含めて確認します。

ARで差が疑われる段が見つかった場合は、その段だけを測るのではなく、前後の段も一緒に確認します。仮に五段目が高く見える場合、四段目から五段目の高さ差と、五段目から六段目の高さ差を見ることで、どこに変化が集中しているか分かります。単独の寸法だけではなく連続性を見るという考え方がここでも重要です。

さらに、必要に応じて最下段と最上段の標高差を確認し、設計上の階段全体の高さと照合します。各段の蹴上げ、段数、階段全体の高さという三つを合わせることで、施工状態を整理しやすくなります。

最後に、確認結果を記録します。AR画面、現況写真、測定位置、測定値、設計値などを対応付けて残せれば、現場での再確認や関係者への共有が容易になります。重要なのは、後から別の担当者が見ても「どこの段を、どの基準で、何と比較したのか」が分かるようにすることです。

蹴上げ寸法のズレを見落としやすい場面

階段の出来形確認では、施工状態によってズレを見落としやすい場所があります。その代表が、最初と最後の一段です。

最下段は周辺舗装や床面の高さに影響されます。階段が先に完成し、周囲の舗装が後から施工される現場では、階段施工直後と最終完成後で最下段の見かけの蹴上げが変わります。このため、階段工だけの出来形を確認して終わりにせず、接続する工種が完成した段階でも高さ関係を確認すると安心です。

最上段も、踊り場や建物床、通路の仕上げ厚によって状況が変わります。設計図に示された高さが構造面なのか仕上げ面なのかを確認し、実際に測っている面と合わせます。

また、型枠や仕上げ施工の都合で、誤差調整が特定の段へ集中するケースにも注意が必要です。階段全体の高さを合わせることを優先した結果、最後の数段で蹴上げを調整すると、始点と終点は設計に近くても段ごとの差が残ることがあります。出来形ARチェックで全段を連続して見る意味はここにあります。

段鼻部分の形状にも注意が必要です。階段の設計データがどの位置を踏面基準として作成されているかによって、AR上で比較すべき線が変わります。現物には面取りや仕上げ材、段鼻形状が存在することがあるため、見た目の先端だけを基準に設計データと比較すると、意図した計測位置と異なる場合があります。

仕上げ前後の違いも重要です。下地段階のデータと完成仕上げを比べたり、完成設計データを下地へ重ねたりすると、各段に同じような差が生まれます。この場合は施工不良ではなく、比較条件が違っている可能性があります。

階段の左右端で高さが異なる場合にも注意します。排水などを目的として踏面に勾配が設けられている場合、その勾配を考慮せず左右の高さを比べると、本来の設計形状を誤差と判断するおそれがあります。設計上どの方向にどのような面が設定されているかを確認したうえで、同じ条件の位置を比較します。

さらに、AR表示を見る地点にも配慮が必要です。非常に近い位置から一段だけを見ると、その部分の差は見やすい一方、階段全体の累積的な変化が分かりにくくなります。逆に遠くから全体を見るだけでは、一段だけの違いを見逃しやすくなります。全景確認と局所確認を分けて行うことで、両方の特徴を補えます。

出来形ARチェックの記録を施工管理に生かす

出来形ARチェックは、その場で見るだけで終わらせず、施工管理の記録と結び付けることで価値が高まります。

階段で差が見つかったときに必要なのは、単に「蹴上げにズレあり」という情報だけではありません。どの階段の何段目なのか、どちら側で確認したのか、設計上どの高さなのか、現地ではどの高さだったのか、周囲の仕上げは完成していたのか、といった条件を一緒に残すことが重要です。

施工途中で確認した場合には、確認時点も明確にします。階段本体施工直後なのか、仕上げ施工後なのか、周囲の舗装完成後なのかによって、同じ場所でも比較条件が異なるからです。

また、修正を行った場合は修正前と修正後の状態を対応付けて記録すると、後から施工経緯を説明しやすくなります。ARを利用すると、設計形状と現物の位置関係を視覚的に共有できるため、数字だけでは伝わりにくいズレの場所を説明するときにも役立ちます。

たとえば、現場担当者がARで違和感を見つけ、測定担当者が実測し、その結果を施工担当者へ共有するという流れを作ることもできます。この場合、ARは正式な測定結果そのものではなく、確認箇所を発見し、関係者間で場所を共有するための情報として機能します。

階段のように同じ形状が連続する構造物では、「上から四段目」なのか「下から四段目」なのかというだけでも伝達ミスが起こる可能性があります。確認方向や段番号の基準をあらかじめ統一し、記録上も同じルールを使うことが重要です。

出来形 AR チェックを日常的な施工管理へ組み込むのであれば、異常があったときだけ使うのではなく、確認のタイミングをある程度そろえる方法もあります。型枠段階、施工直後、仕上げ後など、工事の内容に応じて確認時点を決めておけば、後工程で初めて寸法差に気づくリスクを抑えやすくなります。

特に、後から修正しにくい階段では早めの確認が重要です。完成後に蹴上げ寸法の違いが確認されると、修正範囲が大きくなる可能性があります。施工途中で設計形状と現況を確認できれば、次工程へ進む前に追加測定を行う判断材料になります。

LRTK Phoneを階段の出来形確認に活用する

階段の出来形ARチェックでは、現地で設計位置と施工状態を確認できる環境を整えることで、図面と現場を往復しながら確認する手間を減らしやすくなります。

LRTK Phoneを活用する場合も、基本的な考え方は同じです。まず使用する座標や設計データが現場と対応していることを確認し、そのうえで階段周囲から設計形状と実物の関係を確認します。

現場では最初から一段ごとの細かな差だけを見るのではなく、階段全体の位置、下端、上端、周辺完成面の順に確認します。その後、下から上へ踏面を追い、設計形状との関係が変化する段を探します。

差が疑われる箇所があれば、現場で必要な測定を追加します。ARによる視覚確認と位置情報を使った現場計測を組み合わせることで、どこを詳しく確認すべきか整理しやすくなります。

階段だけでなく、擁壁、側溝、縁石、舗装、構造物天端など周辺の施工物も位置情報を持つデータとして管理できれば、階段単体では分からない接続部の高さ関係も確認しやすくなります。とくに屋外階段では、階段下端と舗装、階段上端と通路といった異なる工種の境界が重要です。

また、現場で確認した座標や写真、点群などを施工記録へ結び付ければ、内業時にも確認内容を振り返りやすくなります。階段のどの場所で違和感があったのかを現場の記憶だけに頼らず、位置情報を伴うデータとして残すことで、再確認時の対象を特定しやすくなります。

出来形ARチェックの目的は、AR上で現物と設計を見た目だけ完全に一致させることではありません。現場と設計の差を発見し、実測や施工記録と結び付けながら、確認すべき場所を明確にすることにあります。

そのためLRTK Phoneを利用する場合でも、測位状態や設計データの基準を確認しながら使うことが重要です。AR表示に差が見えた場合には、施工誤差と即断せず、座標設定、設計データ、現場基準、測位状態、実測結果を順番に確認します。

こうした運用を行えば、階段のような連続形状だけでなく、施工物の位置、高さ、通り、設計形状との差を現場で確認するさまざまな出来形管理へ応用できます。

まとめ

階段の蹴上げ寸法を出来形ARチェックで確認するときは、一段だけを見て判断するのではなく、階段全体を一つの連続した形状として確認することが重要です。

最初に確認すべきなのは、設計上の高さ基準と現場の完成面が一致しているかです。構造面と仕上げ面を混同すると、正しく施工されていてもAR上で高さ差が見える可能性があります。特に最下段と最上段は周囲の舗装や床、踊り場などの高さに影響されるため、接続する完成面まで含めて確認します。

次に、一段ごとの蹴上げを連続して比較します。階段全体の始点と終点だけが合っていても、途中で高さ調整が行われていれば、一部の段に差が残る可能性があります。下から上まで設計形状と現物を追い、どこから差が発生しているかを見ることがポイントです。

三つ目は累積高さです。各段の小さな差が同じ方向へ続くと、上端でまとまった差になることがあります。反対に、階段全体の高さが合っていても、途中の段で差を相殺している場合があります。そのため、各段の蹴上げと階段全体の高さを組み合わせて確認します。

四つ目は、AR表示と実測の照合です。画面上に見える差をそのまま施工誤差と判断するのではなく、ARの位置合わせ、座標、高さ基準、測位状態などを確認したうえで、必要な場所を実測します。ARは正式な検査方法を自動的に置き換えるものではなく、設計と現場の違いを見つけ、追加確認すべき場所を特定するための支援手段として使うことが重要です。

階段の出来形は、完成後の見た目だけでは一段ごとの小さな変化を判断しにくいことがあります。そこで設計形状を現地へ重ねて全体を見渡し、違和感のある場所を絞り込み、実測結果と組み合わせることで確認作業を整理できます。

現場で設計データと施工物を照らし合わせながら、階段の高さ関係や各段の位置を効率的に確認したい場合は、出来形ARチェックと現場計測を一つの流れで運用できるLRTK Phoneの活用を検討するとよいでしょう。

現場を3Dで残して、あとから測る。
実際の画面と動画で使い方を確認できます。

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