張り出し地形では体積計算の底面接続に注意が必要
点群ビューアを使った体積計算は、盛土や掘削土、砕石、残土、法面などの数量を確認するときに便利です。現場を三次元の点群として取得しておけば、平面的な測点だけでは把握しにくい地形の起伏を確認しながら計算範囲を設定できます。一方で、点群が存在しているからといって、そのまま自動的に正しい体積が得られるとは限りません。
特に注意したいのが、張り出し、えぐれ、オーバーハングに近い形状など、一つの平面位置に対して上下方向に複数の表面が存在する地形です。点群をXY平面へ投影して高さを扱う2.5Dの地表面モデルや、それに近い考え方で体積を算出する方式では、基本的に一つの平面位置に対して代表的な高さを扱います。そのため、崖や法面の一部が前方に張り出し、同じ平面位置付近に上側の面と下側の面が存在する形状は、単純な地表面として表現しにくい場合があります。
このような地形を、単純な地表面や基準面との間の体積として処理すると、計算方式や面生成の設定によっては、実際には連続していない部分同士が計算上つながることがあります。たとえば、上側に張り出した岩盤の先端と、その下にある地表の点との間へ面が生成された場合、本来は空間である部分まで対象形状の一部として扱われる可能性があります。
本記事では、このように対象面と基準側の面などが意図しない形で結ばれ、実際とは異なる計算形状になる状態を、便宜上「誤った底面接続」と表現します。実際の体積算出方法は点群ビューアやソフトウェアによって異なり、TINやグリッドによる2.5D計算、二つの地表面の高さ差による計算、閉じたメッシュを用いる計算などがあります。したがって、使用する機能がどのような方法で体積を求めているかを確認することが前提です。
対象範囲の外周や内部に複雑な段差があるにもかかわらず、一続きの面として処理すると、点群そのものは取得できていても、生成される計算形状が現地と異なることがあります。
そのため、「体積計算 点群ビューア」と検索して作業方法を調べる実務担当者は、計算ボタンを押す前に、点群からどのような面や高さモデルが作られているのかを確認することが重要です。体積の数値だけを見るのではなく、計算対象の形状、基準面、外周、断面などを合わせて確認する必要があります。
張り出し地形への基本的な対策は、複雑な形状を無理に一つの計算対象として扱わないことです。上側と下側、張り出し部と通常地形、急変部と比較的単純な部分を分けて考えることで、意図しない面の接続や高さモデルの不整合を見つけやすくなります。
ここからは、点群ビューアを利用して張り出し地形の体積計算を行う際に役立つ4つの工夫を、実務の流れに沿って解説します。
工夫1 張り出しの上下を同じ面として扱わず領域を分割する
最初の工夫は、張り出し地形を最初から一つの領域として計算しないことです。地形が大きく張り出している場所では、上側の地形と下側の地形を一つの2.5D表面として表現することが難しい場合があります。
通常の盛土のように、上空から見たときに外周の内側へ一つの地表面が広がっている形状であれば、範囲を囲み、基準面を設定することで比較的理解しやすい体積計算ができます。しかし、崖の下に空洞状の部分があり、その上に岩盤や土砂が張り出している場合は事情が異なります。
たとえば平面表示だけで範囲を指定すると、張り出し部の上面と、その真下付近にある下側地形が同じ平面範囲に含まれます。点群を面化したりグリッド化したりする処理によっては、その間が一つの地形として表現される可能性があります。その結果、現地では空間になっている場所まで計算形状へ含まれ、目的によっては体積が実態より大きく見えることがあります。
こうした問題を避けるには、まず点群ビューア上で張り出し形状の境界を見つけます。重要なのは、単に色の違いや点密度の違いだけを見るのではなく、地形の向きが急激に変わる場所を確認することです。水平に近い上面から急斜面へ移行する位置、斜面が内側へ入り込む位置、張り出し先端の下側などは、計算領域を分ける候補になります。
分割するときには、上側地形を一つの区画、下側地形を別の区画として考えます。張り出しの側面についても、一つの高さ関数として扱いにくいのであれば、使用する計算方式に応じてさらに領域を分けることを検討します。重要なのは、計算上の領域分割を、実際の地形構造と計算目的に対応させることです。
分割すると計算作業が増えるように思えるかもしれません。しかし、一つの複雑な範囲で得た体積について後から原因不明の差異を調査するより、最初から形状ごとに区切って確認したほうが検証しやすい場合があります。それぞれの区画について計算条件と結果を確認できるため、異常な数値が出た場合にも原因を絞り込みやすくなります。
また、分割は細かければよいわけではありません。必要以上に多数の区画へ分けると、境界の管理が煩雑になり、区画間に隙間や重複を作る原因にもなります。分割の基準は、地形構造が変化する場所、計算方法を変える必要がある場所、基準面の考え方が変わる場所とすると整理しやすくなります。
張り出し部の下側に十分な点群が存在しない場合にも、領域を分けて扱う考え方が役立つことがあります。見えていない場所を周囲の点から補間して一つの面にすると、処理方式や設定によっては、実際には確認できていない形状を計算へ含めることになります。そのような場所は、十分に計測できている地形と欠測が大きい地形を区別し、結果の扱いも分けて考えるほうが安全です。
体積計算では、一つの大きな数値を早く出すことより、どの範囲をどの条件で計算した数値なのか説明できることが重要です。張り出し地形を領域ごとに分割しておけば、「上側の範囲」「下側の範囲」「通常の法面部分」といった形で結果を確認でき、計算の根拠を整理しやすくなります。
工夫2 断面表示で地形の重なりと底面候補を確認する
二つ目の工夫は、平面表示や通常の3D表示だけで判断せず、断面表示を使って張り出し形状を確認することです。張り出し地形では、XY平面上で近い位置に複数の高さの表面が存在することがあります。そのため、上から眺めるだけでは上下関係が分かりにくくなります。
断面表示にすると、張り出し部分の上面、側面、その下側の地形を縦方向の形状として把握できます。これにより、「この上面と下側地形は本当に連続しているのか」「間に空間があるのか」「どの位置を境界として分割すべきか」を判断しやすくなります。
確認するときは、張り出し方向に沿った断面だけでなく、その方向と交差する断面も見ることが有効です。一方向の断面では自然に見えても、少し横へずらすと大きなくぼみや点群の欠損が存在する場合があります。特に複雑な法面や岩盤では、張り出しの形が一定とは限りません。
断面上で注意したいのは、点と点の間へ生成された面が現地形状と矛盾していないかという点です。上側の端点と下側の点が大きく離れているのに、計算モデル上ではその間に面が生成されている場合、その面は直接計測された地表ではなく、補間や面生成の処理によって形成された可能性があります。
補間そのものが常に問題なのではありません。点群から連続面やグリッドを作る方式では、点のない位置の高さを推定する処理が使われる場合があります。重要なのは、補間される範囲や方向が現場の地形と計算目的に対して妥当かどうかを確認することです。
張り出し部では、この「どの点を同じ表面として扱ってよいか」という判断が通常地形より重要になります。地表面に沿って隣接する点が適切に結ばれているのであれば問題になりにくい一方、張り出し上面の点と、その真下付近にある別の地表面の点が同じ表面として扱われると、本来存在しない形状が形成される可能性があります。
基準面を決める際にも断面表示が役立ちます。たとえば仮置き土のように比較的単純な形状であれば、周囲の地盤を参考に基準面を想定できる場合があります。しかし、張り出し地形では、単純な水平面を基準面として設定するだけでは目的に合わないことがあります。
「何に対する体積を知りたいのか」を先に整理する必要があります。現況地形と計画面との差を確認したいのか、特定の張り出し土塊の数量を把握したいのか、ある基準高さ以上の部分を確認したいのかによって、適切な基準面や計算方式は変わります。
断面上で基準面を重ねて確認できる場合は、地表面との交差位置も見ておきます。基準面が意図しない位置で上側地形や下側地形と交差していると、使用する方式によっては計算対象が想定と異なる範囲になる可能性があります。
また、張り出しの先端部だけを見るのではなく、その前後を含めて断面を確認することが大切です。不自然な面接続は、張り出しそのものだけでなく、その周囲にある点群欠損や点密度の急な変化と関係して現れることもあります。
断面確認は、計算後にも利用できます。体積結果に違和感がある場合、同じ断面位置を再度表示して、計算に使われている形状と実測点の関係を確認します。数値だけを何度も再計算するより、形状を断面で見たほうが問題の位置を発見しやすい場合があります。
このように、張り出し地形では断面表示を「結果確認用の表示機能」だけではなく、「計算条件を決めるための確認手段」として使うことがポイントです。
工夫3 計算範囲と基準面を区画ごとに設定する
三つ目の工夫は、地形を分割した後、それぞれの区画に適した計算範囲と基準面を設定することです。張り出し地形を分割しても、すべての区画へ同じ基準面を無条件に適用すると、別の不整合が生じることがあります。
体積計算では「どの点群を使うか」と同じくらい、「どの範囲を計算するか」「何を基準として高さ差や体積を求めるか」が重要です。同じ点群からでも、外周の取り方や基準面の条件、計算方式が異なれば結果は変化します。
まず計算範囲については、実際に数量を求めたい対象の境界と一致しているか確認します。張り出し部分を分割した場合、上側の区画と下側の区画が意図せず重複していないか、逆に境界付近に取りこぼしが生じていないかを確認します。
平面表示だけで境界を作成すると、張り出しの上下が同じ位置に重なって見えるため、範囲指定が難しくなることがあります。その場合は、断面表示や3D表示を併用しながら、どちらの地形を対象としているのか確認します。
特に注意したいのが、外周線を地表面の輪郭だと考えすぎることです。体積計算における外周は、単なる見た目の輪郭ではなく、どこまでを数量算出対象とするかを定義する境界として使われます。張り出し部の外周を平面投影だけで囲むと、上面と下面の関係を十分に表現できない場合があります。
次に基準面を設定します。現況と別時点の点群を比較するのであれば、対応する二つの地形面の高さ差を求める方法が考えられます。一方、特定の基準高さから上の体積を確認するのであれば水平面を用いる場合があります。また、周辺地盤などから基準となる地形面を設定する方法もあります。
ここでは、使用する体積計算方式を区別して考えることが重要です。閉じたメッシュやソリッドとして体積を求める方式では、対象を囲む表面の整合性が重要になります。一方、2.5Dのグリッドや高さモデルを用いる方式では、平面上の各セルなどで対象面と基準面の高さ差を求め、その差を面積方向へ積算して体積を算出する方法があります。この場合、必ずしも明示的な閉じた3D形状を作るわけではありません。
したがって、「上面、底面、側面で閉じているから正しい」と一律に判断するのではなく、使用している点群ビューアがどのような方式で体積を計算しているかを確認し、その方式で張り出し形状を適切に表現できるかを見る必要があります。
たとえば、張り出し上面だけを対象にしたいのに、同じ平面位置に存在する下側地形まで一つの高さモデルや計算領域として扱われると、目的とは異なる体積になる可能性があります。反対に、基準面の高さや形状が適切でなければ、本来含めたい部分が除外されることもあります。
この問題を避けるため、区画ごとに「この体積は、どの地形とどの基準との関係を表しているのか」を言葉で説明できる状態にします。たとえば「張り出し上面と設定した基準面の間」「現況面と施工前面の差」「法面上部の対象範囲と基準高さの差」といった形です。
説明できない基準面を使っている場合は、計算条件を再確認する余地があります。点群ビューア上で数値を得られたことと、その数値が実務上の目的に合った数量であることは別だからです。
また、複数区画を最後に合算する場合は、各区画で計算条件の意味がそろっているかも確認します。ある区画では現況と施工前地形の差を計算し、別の区画では水平面からの体積を計算している場合、それらを単純に足してよいかは計算目的によって判断が必要です。
区画分割は、単なる操作上のテクニックではなく、計算の意味を明確にする方法です。張り出し地形のような複雑な対象では、一括計算よりも、意味のそろった小さな計算へ分けたほうが結果を説明しやすい場合があります。
工夫4 分割前後の体積と3D形状を比較して異常を見つける
四つ目の工夫は、分割後の計算結果だけを正解と決めつけず、分割前後の体積と3D形状を比較することです。計算条件の違いによって結果がどの程度変わるかを見ることで、意図しない面接続や高さモデルの影響を発見しやすくなります。
張り出し地形を一つの領域として計算した結果と、上側・下側などに分割した結果を比較します。ここで見るべきなのは、数字の一致そのものではありません。分割方法によって計算対象の定義が変わっている場合、結果が異なることは自然です。
重要なのは、「なぜ差が生じたのか」を3D形状や計算条件から説明できることです。
一括計算したモデルで張り出しの下に大きな三角形状の面や不自然な壁面が形成されており、分割するとそれがなくなるのであれば、一括計算時の面生成で意図しない接続が生じていた可能性があります。
反対に、分割によって本来連続している地形まで切り離してしまうと、境界付近を取りこぼす場合があります。そのため、分割した結果だけを見るのではなく、元の点群、生成された面、範囲境界を重ねて確認することが重要です。
体積差の確認では、全体値だけでなく区画ごとの値にも注目します。大きな対象の一部で誤接続や不適切な補間が起きていても、全体体積に占める割合が小さければ、総量だけを見て異常に気付けないことがあります。
一方、張り出しが大きい現場では、一カ所の不適切な面生成によって本来対象外の空間が計算へ含まれ、分割前後で明確な差が生じる可能性もあります。
数値差を評価するときに、「何パーセント以内なら正しい」と一律に決めるのは適切ではありません。対象規模、求められる精度、点群の取得状態、計測方法、基準面の設定、使用する計算方式などによって評価方法は変わります。業務で定められた精度管理方法や仕様がある場合は、それに沿って評価する必要があります。
3D表示では、視点を固定せず複数方向から確認します。張り出し地形は、一方向から見ると自然でも、裏側や下側から見ると不自然な面が見える場合があります。下側から確認できる表示機能がある場合は、張り出しの底部や意図しない面を確認する際の参考になります。
また、面だけでなく元の点群も同時に意識します。生成面がきれいに見えると、それが実測形状そのものだと感じやすくなります。しかし、点の存在しない場所に大きな面が形成されていれば、そこは実測点そのものではなく、補間や面生成の影響を受けている可能性があります。
そのため、体積計算の結果確認では「数値を見る」「面を見る」「点を見る」という三つの確認を組み合わせることが大切です。数値がもっともらしくても形状がおかしければ再確認が必要ですし、形状が自然に見えても基準面の設定が目的と異なれば数値の意味が変わります。
分割前後を比較することで、計算条件に対する結果の変化も確認できます。境界を少し変更しただけで体積が大きく変わる場所があれば、その付近は計算範囲や補間条件などの影響を受けやすい区域である可能性があります。そのような場所は、追加の断面確認や、必要に応じた現地確認を行う候補になります。
点群ビューアによる体積計算では、一度計算した値をそのまま完成値として扱うのではなく、複雑地形では条件を変えた比較を検証工程へ組み込むことで、見落としを減らしやすくなります。
張り出し地形を計測するときに点群側で確認したいこと
張り出し地形の体積計算を安定させるには、ビューア上の処理だけではなく、元となる点群の取得状態も重要です。どれだけ丁寧に領域分割しても、必要な地形が計測できていなければ形状を十分に判断できません。
まず確認したいのが、張り出しの下側まで必要な範囲の点群が取得されているかです。上方や一方向から地形を取得した場合、張り出し部分によって下側が遮られ、点群の空白が生じることがあります。
この空白が大きい状態で面や高さモデルを生成すると、処理方式や設定によっては離れた点の間が補間されたり、広い三角形が生成されたりする場合があります。張り出し上部に多くの点があっても、下部や側面に点がなければ三次元形状全体を十分に把握できているとは限りません。
可能であれば、対象を複数方向から確認できるように計測します。斜面の正面だけでなく、左右や下側から取得できる条件があれば、張り出しの裏側や側面を把握しやすくなります。ただし、現場では足場や安全管理、立入範囲などの制約があります。無理に計測範囲を広げるのではなく、安全に取得できる範囲を前提として計画する必要があります。
点群ビューアへ読み込んだ後は、点のない領域を意識して確認します。面や補間表示を使っていると連続して見える場所でも、元の点群を確認すると大きな欠損が存在する場合があります。
特に張り出し先端から下側へ向かう部分は、計測方向によって死角になることがあるため注意が必要です。ここに十分な点がない場合、その部分の形状を点群だけから確定できているとは言いにくくなります。
不要点も確認します。樹木、草、資材、重機、構造物などが地形点として残っていると、処理方式によってはそれらの点が地表面モデルへ影響する可能性があります。張り出し地形ではもともと形状が複雑なため、地表面ではない点が混じると異常を見抜きにくくなることがあります。
単に点を大量に残すのではなく、計算対象の地表を表している点かどうかを確認することが重要です。
点密度のばらつきにも注意します。密な部分と極端に粗い部分が隣接していると、面生成や補間の設定によっては、粗い範囲で広い間隔を補うような形状になることがあります。張り出し部の境界で点密度が急に落ちている場合は、面化した際の形状を重点的に確認します。
さらに、複数回に分けて取得した点群を統合している場合は、それぞれの位置関係にも注意が必要です。異なる計測データの間に位置や高さのずれがあると、本来同じ地形である部分が二重に見えたり、段差のように表現されたりすることがあります。
張り出しの上側と下側を別方向や別時点で計測している場合、位置合わせのずれによって実際には存在しない厚みや隙間のように見える可能性があります。そのため、体積計算に入る前に、共通して取得できている地形や確認点などを利用し、位置関係に不整合がないか確かめておくことが大切です。
点群の品質確認は、体積計算へ入る前の重要な工程です。計算式やビューアの機能だけでなく、入力する点群がどの範囲をどの程度表現できているかによって、得られる結果の信頼性は変わります。
体積計算の再現性を高めるために条件を記録する
張り出し地形では、通常の地形より計算条件が複雑になりやすいため、どのように分割し、どの基準面を使ったのかを記録することも重要です。
体積の数値だけを保存しても、後から同じ結果を再現できるとは限りません。計算対象範囲、使用した点群、基準面、不要点の除外条件、分割位置、計算方式などが分からなければ、別の担当者が再計算したときに異なる数値が出ることがあります。
特に張り出し地形では、境界の決め方による影響が大きくなる可能性があります。「この位置から上側地形として分割した」「この断面で上側と下側の間に空間が確認できたため別領域とした」といった判断を残しておくと、後から計算の根拠を説明しやすくなります。
計算時点の点群データも区別できるようにします。施工前、施工途中、施工後など複数時点の点群を扱う場合、どのデータを使った計算なのか混同しないようにする必要があります。
同じ現場名でも、計測日や処理条件が違えば形状は異なる場合があります。再計算するときに別時点のデータを使えば、同じ範囲を指定しても結果が変わります。
計算範囲についても、単に「法面全体」のような名称だけでなく、どこで区切ったのか分かる状態にしておくことが大切です。ビューア上で範囲を保存できる場合は、計算結果と対応する形で管理すると確認しやすくなります。
断面位置の記録も役立ちます。張り出しを判断した代表的な断面が分かれば、後から同じ位置を見て、当初の判断条件を確認できます。
計算条件の記録は、担当者間で結果を共有する際にも重要です。「体積は何立方メートルだったか」という情報だけでは、その数値が何を表しているのか十分に伝わりません。
「どの点群の、どの範囲を、どの基準面や比較面に対して、どの計算方式で求めたか」が分かると、実務上の数量として比較しやすくなります。
また、張り出し地形の処理方法を現場内である程度統一しておけば、担当者による差も抑えやすくなります。毎回まったく異なる考え方で分割すると、時系列比較や担当者間比較が難しくなるためです。
ただし、すべての地形へ同じ分割ルールを機械的に当てはめる必要はありません。地形の特徴に応じて判断しつつ、その判断理由を記録することが重要です。
点群ビューアを体積計算の単発ツールとして使うのではなく、計測、確認、条件設定、計算、検証、記録までを一連の作業として管理すると、張り出し地形のような難しい対象でも結果を追跡しやすくなります。
点群ビューアを使った体積計算で避けたい考え方
張り出し地形に限らず、点群ビューアで体積計算を行う際には、いくつか避けたい考え方があります。
一つは、点群が細かければ自動的に正しい体積になると考えることです。点の数が多いことと、対象形状を計算目的に合う形でモデル化できることは同じではありません。
張り出しの上面だけが高密度で取得されていても、下面が取得されていなければ、立体形状全体を十分に表現しているとは限りません。点密度だけで品質を判断せず、必要な場所に点が存在しているかを見る必要があります。
もう一つは、3D表示が滑らかなら正しいと考えることです。点群から生成された面は、表示上きれいにつながって見えることがあります。しかし、滑らかであることは現地との一致を保証するものではありません。
むしろ張り出し地形では、実際には不連続な表面が補間によって連続して見えることが問題になる場合があります。きれいなモデルほど、元の点群との対応を忘れずに確認することが大切です。
また、一括計算のほうが分割計算より正確だと一律に考えるのも適切ではありません。計算範囲を細分化すると境界管理が必要になりますが、一括計算では使用する方式によって複雑な形状を十分に表現できない場合があります。
どちらが適切かは地形や計算方式によって異なります。張り出しや空洞、急な折れ、平面位置が重なる複数の高さ面が存在する場合には、分割したほうが計算の意味を整理しやすい場合があります。
反対に、何でも細かく分割すればよいという考え方も避ける必要があります。細分化しすぎれば、境界の重複や取りこぼしが増える可能性があります。
重要なのは、地形の構造と計算目的に応じた単位で分けることです。分割数ではなく、各区画について計算対象を説明できるかどうかを基準にします。
そして、体積の数値だけで正誤を判断することも避けたいところです。たとえば過去の経験から「このくらいの大きさなら、この程度の体積だろう」と予想していて、その付近の値が出たとしても、計算形状や基準条件が正しいとは限りません。
現況面と基準面の差をプラス側とマイナス側で集計するような計算では、区域ごとの差が総量では目立ちにくくなる場合もあります。そのため、最終値だけでなく区画別の結果や3D形状、断面を確認することが重要です。
体積計算は、点群を読み込み、範囲を囲み、数値を出せば終わる作業ではありません。特に張り出し地形では、「使用する計算方式が対象の三次元形状をどのように表現しているのか」を意識する必要があります。
どの点や面が同じ地形として扱われているのか、基準面との関係が計算目的に合っているのか、生成された形状が現地形状として妥当なのかを確認することで、意図しない接続や不適切な補間を見つけやすくなります。
まとめ
点群ビューアで張り出し地形の体積計算を行う場合は、通常の盛土や比較的単純な地表面と同じ感覚で、一つの範囲を囲んですぐに計算するのではなく、地形の上下関係と使用する計算方式を確認することが重要です。
張り出し形状では、平面的に同じ位置の近くへ複数の高さ面が存在することがあります。特にXY平面へ投影して高さを扱う2.5Dの面生成や体積計算では、このような形状を一つの地表面として表現しにくい場合があります。そのため、処理方式や設定によっては、本来は離れている上側と下側の地形が一続きの面や高さモデルとして扱われる可能性があります。
対策の第一歩は、張り出しの上下を無理に同じ領域として扱わず、地形構造に合わせて計算範囲を分割することです。上側、下側、通常法面などに分けることで、計算上の面接続や高さモデルの状態を確認しやすくなります。
次に、断面表示を使って上下の地形関係を確認します。平面や一般的な3D表示では把握しにくい空間やえぐれも、断面にすると位置関係を理解しやすくなります。張り出し先端だけでなく、その周辺を複数の断面で確認することがポイントです。
分割後は、それぞれの区画に適した計算範囲と基準面を設定します。「どの地形とどの基準との関係を表す体積なのか」を説明できる条件にしておけば、結果の意味が明確になります。また、2.5Dの高さ差を積算する方式なのか、閉じたメッシュなどから体積を求める方式なのかによって確認すべき点が異なるため、使用する機能の計算方法も把握しておくことが大切です。
さらに、分割前後の体積と3D形状を比較することで、意図しない接続や補間が体積へ与える影響を見つけやすくなります。数値だけではなく、元の点群、生成された面、断面、基準面を合わせて見ることが大切です。
張り出し地形では、元となる点群の取得状態も結果に大きく関わります。上面だけではなく、可能な範囲で側面や下面の形状を把握し、点群の欠損、不要点、点密度の偏り、複数計測間の位置関係を確認してから計算へ進むことが重要です。
そして、最終的な体積だけでなく、使用した点群、範囲、基準面、分割位置、断面位置、計算方式などの条件も記録しておけば、後から再計算したり別の担当者が確認したりするときにも判断の根拠を追いやすくなります。
「体積計算 点群ビューア」という作業で重要なのは、計算機能を使うことそのものではなく、三次元地形を使用する計算方式の中でどのような領域として扱い、何を基準として数量化するかを明確にすることです。特に張り出し、えぐれ、急な段差を含む現場では、形状を分けて確認することで、意図しない面接続や補間の影響を見つけやすくなります。
現場で取得した点群を確認し、複雑な地形を三次元で把握しながら距離や面積、体積などの計測につなげたい場合は、LRTK Phoneを活用した現場計測と点群確認も選択肢になります。計測したデータを点群として確認し、必要な範囲の数量把握へつなげることで、張り出し地形を含む現場でも、計算結果だけではなくその根拠を確認しながら作業を進めやすくなります。