地籍調査の対象地が複数人の共有名義で、ちょうど共有物分割の協議や手続が進んでいる場合、通常の土地よりも資料確認を丁寧に行う必要があります。共有物分割では、現在の共有持分、分割後に誰がどの土地を取得する予定なのか、土地そのものを分けるのか、一人が取得して他の共有者に金銭を支払うのかなど、手続の内容によって土地と権利の状態が大きく変わり得るためです。
一方、地籍調査は、主に市町村などが主体となり、一筆ごとの土地について所有者、地番、地目を調査するとともに、境界の位置と面積を測量するものです。したがって、「将来こう分ける予定」という共有者間の計画と、「現在どの筆がどこまで存在しているか」という地籍調査上の確認事項を混同しないことが重要です。国土交通省の地籍調査Webサイトでも、地籍調査は一筆ごとの所有者、地番、地目を調査し、境界の位置と面積を測量する調査と整理されています。 ([地積情報システム][1])
この記事では、地籍調査の対象地が共有物分割中だった場合に、実務担当者が優先して確認したい資料を5つに整理します。土地所有者との立会い準備、測量資料の整理、共有者への説明、自治体内部での情報共有などに役立つ考え方として確認していきます。
地籍調査と共有物分割を同時に考えるときの基本
最初に押さえておきたいのは、「共有物分割」と「土地の分筆」は同じ意味ではないという点です。
共有物分割は、複数人が共有している財産について、その共有関係を解消するための手続です。民法では、原則として各共有者が共有物の分割を請求でき、共有者間で協議が調わない場合や協議をすることができない場合には、裁判所に分割を請求する仕組みが定められています。裁判による分割では、共有物を現物で分ける方法のほか、共有者に債務を負担させて他の共有者の持分の全部または一部を取得させる方法が定められ、これらの方法で分割できない場合や、分割によって価格を著しく減少させるおそれがある場合には競売を命じることができるとされています。 ([e-Gov 法令検索][2])
そのため、「共有物分割中」と聞いただけでは、土地に新しい境界線が生じるとは限りません。
たとえば、一筆の土地を二つに分けてそれぞれを別の共有者が取得する予定であれば、土地の分筆を伴う可能性があります。一方、一人の共有者が土地全体を取得し、他の共有者との間で金銭的な調整を行う方法なら、一筆の土地そのものを分けないケースもあります。
この違いを理解しないまま地籍調査を進めると、共有者が示した「将来の取得予定範囲」を既存の筆界と誤認したり、逆に共有物分割のために既に進んでいる測量成果を見落としたりするおそれがあります。
地籍調査では、登記所にある公図などを基に作成した資料を参考にしながら、土地所有者などの関係者による境界確認を行い、その後に確認した境界を測量します。したがって、共有者が「この線で分けることにした」と説明しただけで、その線が直ちに現在の筆界になるわけではありません。地籍調査上確認する既存の筆界と、共有物分割後に予定される新しい区画線は、明確に区別して記録する必要があります。 ([地積情報システム][3])
実務ではまず、現在の状態、共有者間で予定している状態、法的・登記上の手続が完了した後の状態という三つの時間軸に分けて情報を見ると整理しやすくなります。
確認資料1 登記事項証明書で現在の共有関係を確認する
最初に確認したい資料は、対象土地の登記事項証明書です。
共有物分割中であっても、地籍調査の実務では、まず登記されている土地の所在、地番、地目、地積、所有権に関する情報などを確認することが基本になります。共有土地であれば、誰が登記名義人になっているのか、それぞれの持分がどのようになっているのかを把握します。
ここで重要なのは、共有者の人数だけを確認して終わらないことです。
共有物分割の話が長期間続いている土地では、協議開始時点と地籍調査時点で共有者の状況が変わっていることがあります。共有者の死亡による相続、共有持分の移転、住所変更などが生じている可能性があるためです。共有物分割の古い資料だけを基準に関係者を特定すると、現在の登記情報と一致しない場合があります。
逆に、登記だけを見ればすべて分かるとも限りません。共有者間で既に一定の合意が成立しているものの、その内容に対応する登記手続がまだ完了していない段階もあり得ます。そのため、登記事項証明書は「調査時点で確認できる登記情報の重要な出発点」として扱い、共有物分割に関する他の資料と照合していくことが大切です。
また、同じ共有者が周囲の複数筆も所有している場合は、対象地一筆だけを見るのではなく、共有物分割の対象となっている土地の範囲そのものを確認する必要があります。
たとえば三筆を共有している共有者が、一筆ずつ単独取得することで共有を解消する協議をしているのであれば、一筆の内部に新しい境界を設けるとは限りません。反対に、一筆を二つ以上に分ける計画であれば、分筆を前提とする測量資料が別途作成されている可能性があります。
地籍調査担当者としては、登記事項証明書から現在の筆数、共有者、持分、関連する登記の状況を整理し、「共有物分割によって何が変わる予定なのか」を次の資料で確認する流れが分かりやすいでしょう。
確認資料2 共有物分割協議書や合意書で予定内容を確認する
二つ目は、共有者間で作成している共有物分割協議書、合意書、覚書などです。
ここで確認したい最大のポイントは、「共有物分割を進めている」という説明が、どこまで具体化しているかです。
口頭で分割方針を話し合っているだけなのか、分割案を図面にして検討している段階なのか、共有者間で内容について合意し書面を作成しているのかによって、資料の意味は大きく異なります。
特に注意したいのが、協議書の案と最終的に成立した合意内容を混同しないことです。
共有物分割では、当初案から土地の取得範囲が変更されることがあります。道路への接道、建物の位置、既存の塀や擁壁、排水施設、通路、土地の利用状況などを確認した結果、予定していた分割線を修正する場合もあります。
したがって、図面付きの共有物分割案が提出された場合でも、その図面が検討途中のものなのか、共有者間で最終的な合意内容として扱われているものなのかを確認する必要があります。
資料の日付も重要です。
同じ土地について複数の分割案が作成されていると、古い図面と新しい図面が現場資料の中に混在することがあります。地籍調査の立会い時に共有者の一人が旧案を持参し、別の共有者が変更後の案を示せば、その場で「境界が違う」という話になりかねません。
しかし、実際には既存筆界について意見が違うのではなく、共有物分割後の予定線について異なる版の資料を見ているだけというケースも考えられます。
そのため、共有物分割協議書などを確認するときは、作成日、対象地番、対象となる共有者、土地取得の方法、添付図面の有無、図面の版、協議が終了しているのか継続中なのかを一体として読み取ることが重要です。
さらに、共有物分割協議書に描かれた線を、現在の登記上の筆界と同じものとして扱わないことも欠かせません。
たとえば現在一筆である共有地を将来二筆に分ける予定なら、協議書の図面には将来の分割線が描かれている可能性があります。この線は、現在存在している隣接土地との筆界とは性格が異なります。
地籍調査の現場資料へ転記する場合も、「既存筆界に関する資料上の線」「現況の利用線」「共有物分割予定線」など、情報の意味が混ざらないように整理することが大切です。
確認資料3 裁判所関係書類で手続の段階を確認する
三つ目は、共有物分割について裁判手続が行われている場合の裁判所関係書類です。
共有者間の協議で共有物分割が成立しない場合や、協議自体ができない場合には、民法上、裁判所に共有物の分割を請求することができます。裁判所は、現物分割や、共有者に債務を負担させて他の共有者の持分を取得させる方法を命ずることができ、これらの方法で分割できない場合などには競売を命じることができます。 ([e-Gov 法令検索][2])
地籍調査の担当者にとって重要なのは、裁判の詳しい法律判断をすることではなく、「現在どの段階の資料なのか」を区別することです。
訴状に記載されている分割案は、一方当事者の請求内容である可能性があります。相手方の主張を記載した書面も同様に、それだけで最終的な分割内容が決まったことを意味するものではありません。
そのため、裁判中である場合には、共有者から提出された一枚の図面だけを見て「この線で確定した」と判断しないことが重要です。
確認したいのは、訴訟が係属中なのか、既に判決が出ているのか、その判決が確定しているのか、和解などによって手続が終了しているのかといった状態です。
判決書や和解調書など、手続の結果を示す資料が存在する場合は、対象土地、取得者、土地の分け方などを確認します。ただし、判決や和解の法的意味、登記への反映方法、必要な申請の種類は案件によって異なるため、地籍調査担当者だけで判断せず、実施主体の担当部署や、必要に応じて弁護士、司法書士、土地家屋調査士などの専門家に確認するのが安全です。
また、「共有物分割」と「遺産分割」を同じものとして扱わないことも大切です。
相続財産に属する共有物や共有持分について、共同相続人間で遺産分割を行う場面では、通常の共有物分割とは異なる規律が関係します。現行民法では、共有物の全部またはその持分が相続財産に属し、共同相続人間で当該共有物や持分について遺産分割をする場合、原則として共有物分割の裁判による処理とは区別されます。一方、相続開始から10年を経過した場合などには例外規定もあるため、「相続人同士で土地を分けている」という説明だけで手続を決めつけず、遺産分割なのか共有物分割なのかを資料上で確認する必要があります。 ([e-Gov 法令検索][2])
地籍調査側で必要なのは、裁判の勝敗を評価することではありません。どの資料が現在の判断材料として使えるのか、どこまで確定しているのかを整理し、境界確認で未確定の計画を確定事項のように扱わないことが重要です。
確認資料4 公図・地積測量図・既存測量資料で土地の形を確認する
四つ目は、公図、地積測量図、過去の測量図、境界確認に関する資料など、土地の位置や形状を確認できる資料です。
共有物分割中の土地では、権利関係の資料だけを見ていると、共有者が話している「東側」「道路側」「建物側」「半分」という表現が、実際の土地のどの範囲を示すのか理解しにくいことがあります。
そこで、既存の図面類と現地を対応させる作業が重要になります。
特に分筆を伴う共有物分割が計画されている場合、共有者側で既に測量を行い、分割予定線を検討している可能性があります。そのような場合は、既存の地積測量図と新たな計画図を分けて確認します。
地積測量図は、一筆の土地の測量結果を示す図面で、主に分筆登記の申請時などに提出されます。ただし、すべての土地に地積測量図が備えられているわけではありません。過去の分筆履歴がある土地では、現在の筆界を検討するうえで重要な資料となることがあります。 ([法務局][4])
ただし、図面が存在するからといって、その図面だけで地籍調査上の境界を機械的に決定するものではありません。
地籍調査では、登記所にある公図などを基に作成した資料を参考にしながら、土地所有者など関係者による境界確認を行い、その後に測量します。したがって、資料の位置付けと現地で確認する内容を分けて扱う必要があります。 ([地積情報システム][3])
そのため、共有物分割用に新たに作られた測量図を確認するときは、図面に描かれた線の意味を読み分ける必要があります。
既存筆界を示しているのか、現況構造物を示しているのか、将来の分筆予定線なのかを明確にします。一本の図面にすべての線が描かれている場合には、線種や注記を確認し、判別できなければ作成者や関係者に資料の意味を確認することが望まれます。
現地でも同じです。
共有者が「ここで二つに分けます」と杭を示した場合、その杭が既存の境界標なのか、共有物分割計画のために設けた仮の目印なのかでは意味が全く違います。
地籍調査で既存筆界を確認している場面では、その区別を記録しておかないと、後から写真だけを見た担当者が誤解する可能性があります。
写真を撮影する場合も、杭だけを大きく撮るのではなく、道路、建物、擁壁、側溝など周辺の地物との位置関係が分かる記録を残しておくと、その後の確認がしやすくなります。
確認資料5 登記申請関係資料で分割後への移行状況を確認する
五つ目は、共有物分割に伴う登記手続が既に開始されている場合の登記申請関係資料です。
共有物分割について共有者間の合意や裁判上の手続が終了していても、地籍調査を行うタイミングによっては登記手続が進行中ということがあります。
この状態では、手元にある登記事項証明書、共有者から提出された合意資料、現地で説明される所有関係が一致しない可能性があります。
たとえば、共有物分割によって一筆の土地を二つに分け、それぞれを別の共有者が取得する内容になっている場合には、分筆登記と権利に関する登記が関係する可能性があります。
一方、一人の共有者が対象土地全体を取得する形であれば、土地そのものを分筆せず、共有持分に関する権利の登記が中心になる場合があります。
つまり、「共有物分割が終わった」と聞いたからといって、必ず新しい地番が発生するわけではありません。
登記申請書の控えや受付状況を確認できる資料などが提出された場合には、何の登記が申請されているのか、対象地番はどれか、新しい土地の区画を生じさせる手続なのか、所有権関係を変更する手続なのかを確認します。
分筆登記では、土地の測量を行い、地積測量図を登記申請書の添付書類として提出するのが基本です。また、登記申請後は登記官による審査が行われるため、「申請した」という事実と「申請どおりに登記が完了した」という事実は区別して扱う必要があります。 ([法務局][5])
申請中であれば補正や取下げなどが生じる可能性もあるため、地籍調査の工程中に土地の登記状態が変わる場合は、どの時点の情報をどのように調査成果へ扱うかについて、実施主体の担当部署で確認・共有することが重要です。
地籍調査は一筆ごとの土地の所有者、地番、地目などを調査する制度ですから、調査期間中に分筆や所有権に関する登記が行われる場合には、資料の取得日を記録しておくと整理しやすくなります。 ([地積情報システム][1])
「登記事項証明書を取得した日」「共有物分割合意書を確認した日」「登記申請関係資料を受領した日」を明確にしておけば、後から情報が食い違ったときにも、単純な確認漏れなのか、その後に登記が動いた結果なのかを判断しやすくなります。
5つの資料を照合するときに注意したいポイント
共有物分割中の土地で最も避けたいのは、一つの資料だけを根拠に状況を判断することです。
登記事項証明書には調査時点で確認できる登記情報が記録されていますが、共有物分割の具体的な予定までは読み取れません。
共有物分割協議書には分割予定が示されることがありますが、協議途中の案である可能性があります。
裁判所関係書類も、訴状などの主張段階の資料と、判決や和解調書など手続の結果を示す資料では意味が異なります。
測量図には土地の形状が描かれていますが、既存筆界と将来の分割予定線が同じ図面上に表現されていることがあります。
登記申請資料は最新の動きを把握する材料になりますが、申請中なのか登記完了後なのかを区別しなければなりません。
したがって、実務では「所有関係」「共有物分割の内容」「手続の確定度」「土地の形状」「登記への反映状況」という五つの観点を合わせて確認することが有効です。
さらに重要なのが、資料の日付です。
共有物分割のように数か月から長期間にわたって状況が変化し得る案件では、同じ名称の資料でも作成日によって内容が異なることがあります。
ファイル名だけでは新旧が分からなくなるため、内部資料として整理するときは取得日や確認日を残し、「地籍調査立会い時点ではどの資料を基準に確認したか」が後から分かるようにしておくことが重要です。
また、共有者本人から聞いた説明についても、どの資料に基づく説明なのかを可能な範囲で確認します。
「もう分割は決まっています」という言葉だけでは、共有者全員の合意が成立しているのか、裁判中なのか、登記まで終わったのか分かりません。
実務では、「どのような資料で確認できますか」という形で客観的な資料へつなげることで、担当者ごとの解釈の差を小さくできます。
共有物分割中の境界立会いで起こりやすい混乱
共有物分割中の土地では、地籍調査の境界立会いでも独特の混乱が起こりやすくなります。
代表的なのが、既存筆界と共有者間の利用境界を混同するケースです。
共有地では、共有者同士が事実上土地を分けて利用している場合があります。たとえば、一人は土地の東側を駐車場として使い、もう一人は西側を畑として使用しているといった状況です。
現地にはフェンスや植栽、舗装の切れ目などが存在するかもしれません。
しかし、共有者間で利用範囲を分けている線が、当然に登記上一筆の内部に存在する筆界になるわけではありません。
共有物分割の協議では、その利用線を将来の分割線として採用することも考えられますが、それはあくまで共有物分割の内容として別に確認する必要があります。
また、共有者の一人だけが立会いに参加し、「他の共有者も同意している」と説明する場合にも注意が必要です。
地籍調査では土地所有者など関係者による境界確認が重要な工程となるため、共有地について誰に確認を求めるか、代理人による対応をどのように扱うかは、実施主体の手続に沿って整理する必要があります。2024年には、通知に反応しない所有者等について、一定の通知・到達確認・筆界案の送付などの手続を経て、20日以内に意見の申出がない場合に確認があったものとみなす「土地境界のみなし確認制度」が創設されました。ただし、積極的に立会いや図面等調査を拒む者は対象外であり、制度を適用するかどうかも地籍調査実施者の判断によります。したがって、「共有者の一人が来なければ必ず調査不能」とも、「一人が来れば当然に全員分を処理できる」とも一律にはいえません。 ([地積情報システム][6])
地籍調査担当者として重要なのは、共有者同士の民事上の争いをその場で解決しようとすることではありません。
現在確認しようとしている線が何を意味するのかを整理し、意見が一致しない場合はその状態を正確に記録して、実施主体の所定の手続へつなげることが重要です。
現物分割予定の場合に特に確認したいこと
共有物分割の中でも、地籍調査との関係を特に注意したいのが、土地そのものを分ける現物分割が予定されている場合です。
一筆の共有土地を物理的に複数の土地へ分け、それぞれを共有者が取得する内容であれば、将来的な分筆を想定した測量が進んでいることがあります。
この場合、現地には既に仮杭などが設置されている可能性があります。
しかし、その仮杭が「現在の筆界を示す杭」なのか「将来の分割予定線を示す杭」なのかを確認しないまま地籍調査の記録へ取り込むと、重大な取り違えにつながります。
特に、外周の既存筆界と内部の分割予定線が同じ種類の杭で表示されている現場では注意が必要です。
共有物分割用の測量図を確認し、杭番号、点名、座標、線の意味などを照合しておくと判別しやすくなります。
また、予定線が既存建物、擁壁、排水施設、私設管、通路などとどのような位置関係にあるかも重要です。
共有者間の話し合いの段階では単純な直線で土地を二分する予定だったものが、現地測量後に構造物との関係から変更されることがあります。
したがって、共有物分割の予定図を受け取った時点で、それを最終版として固定せず、資料作成日や協議状況を確認する必要があります。
さらに、既存の外周筆界について地籍調査上の確認が済んでいなければ、内部の分割予定線の検討にも影響が及ぶことがあります。
一筆の面積や形状の前提が変われば、「面積を二等分する」「一定の間口を確保する」といった分割計画も変更される可能性があるからです。
地籍調査と共有物分割のための測量が近い時期に行われている場合は、それぞれの成果が何を確認し、どの手続のために作成された資料なのかを関係者間で共有しておくことが大切です。
地籍調査の成果が共有物分割の内容そのものを決めるわけでも、共有物分割の予定図がそのまま地籍調査上の筆界になるわけでもありません。双方の目的を区別しながら、利用できる資料は相互に照合していく姿勢が重要です。
共有物分割と地籍調査の記録を後工程へ残す方法
共有物分割中の土地では、現場で正しく整理できても、その根拠を後工程へ残せなければ再確認が必要になります。
特に地籍調査は、資料調査、現地確認、測量、成果整理など複数の工程を経るため、最初に共有者から事情を聞いた担当者と、最終的に成果を確認する担当者が異なることがあります。
そこで重要になるのが、情報の意味を明確にした記録です。
たとえば現場写真を残す場合、「共有者Aが示した杭」とだけ記録するより、「共有物分割協議中の予定線を示す仮杭であり、既存筆界標として確認したものではない」といったように、何を示すものかが分かる記録にしておく方が後工程で役立ちます。
図面についても同様です。
将来の分割予定線を既存筆界と同じ線種で重ねてしまうと、時間が経過した後に意味を判別できなくなります。資料名、作成日、作成目的、確定資料か検討資料かを対応付けて保存することが重要です。
位置情報を伴う写真や測量結果を活用する場合も、単に大量のデータを保存するだけではなく、「何を確認するためのデータか」を明確にすることが必要です。
たとえば境界標、仮杭、既存構造物などを位置情報付きで記録しておけば、共有物分割後に現場条件が変わった場合でも、地籍調査時点の状況を比較しやすくなります。
ただし、GNSS測位やAR表示などによる位置確認は、筆界を法的に確定する行為そのものではありません。現地確認や資料照合を支援する手段として利用し、正式な地籍調査の手続や成果、必要な境界確認に置き換えないことが重要です。
共有物分割中の案件では、担当者間で「現在確認している筆界」「現況の利用線」「共有物分割予定線」「登記手続後に形成される可能性がある区画線」を視覚的に区別できるようにすると、説明ミスを減らしやすくなります。
また、共有者へ説明する場面でも、同じ地図や現地写真を見ながら話せると認識のずれを把握しやすくなります。
「こちらが現在確認している外周の筆界で、こちらが共有物分割で予定している内部線です」と分けて示せれば、共有者が何について確認しているのかも整理しやすくなります。
まとめ
地籍調査の対象土地が共有物分割中の場合は、「共有物分割をしている」という情報だけで境界や所有者を判断せず、複数の資料を時系列で照合することが重要です。
まず登記事項証明書で調査時点の共有者や持分、土地の基本情報を把握します。次に共有物分割協議書や合意書を確認し、どのような方法で共有状態を解消する予定なのかを整理します。裁判手続が進んでいる場合は、単なる当事者の主張なのか、既に判決や和解など手続の結果が示されているのかを区別します。
さらに、公図、地積測量図、既存測量資料などを使って、現在確認する筆界と共有物分割後の予定線を混同しないようにします。登記手続が始まっている場合には、登記申請関係資料も確認し、地籍調査の途中で土地の登記状態が変化していないかを追うことが大切です。
特に覚えておきたいのは、共有物分割予定線、現地の利用境界、現在確認する筆界は、それぞれ別の意味を持ち得るという点です。共有者が現地で示した線や杭をそのまま地籍調査上の境界として扱うのではなく、どの資料に基づき、何を示している線なのかを一つずつ整理することが、後工程のトラブル防止につながります。
共有物分割中の土地では、時間の経過とともに協議内容、共有者、登記状態が変わる可能性があります。そのため、資料の内容だけでなく取得日や確認日も残し、「その時点で何が確定し、何がまだ予定だったのか」を追跡できる状態にしておくことが実務上有効です。
こうした地籍調査の現場では、紙の図面や資料確認に加え、境界標、仮杭、構造物などの位置を現地で分かりやすく記録し、関係者間で共有できる環境も役立ちます。位置情報付きの現場記録や測位、点群、ARによる位置確認を効率化したい場合は、地籍調査や測量の正式な手続を補助する現場ツールとして、LRTK Phoneの活用を検討するのも一つの方法です。