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地籍調査で相続放棄後の土地は?立会前に見る5点

地籍調査の対象地について登記名義人がすでに死亡しており、さらに親族から「相続放棄をしました」と説明された場合、通常の相続未登記の土地と同じ感覚で立会を進めるのは注意が必要です。相続放棄は家庭裁判所への申述が必要な手続であり、民法上、相続の放棄をした者はその相続について初めから相続人とならなかったものとみなされます。そのため、「登記簿に亡くなった人の名前が残っているから、その子に所有者として確認を求める」といった単純な整理では処理できない場合があります。([裁判所][1])

さらに、一人が相続放棄していても別の共同相続人がいるケース、先順位の相続人が全員放棄した結果として次順位の親族が相続人となるケース、相続人全員が放棄するなどして相続する者がいなくなり、相続財産清算人の選任状況を確認すべきケースなど、状況はさまざまです。裁判所も、相続人全員が相続放棄して結果として相続する者がいなくなった場合を、相続財産清算人の選任手続の対象となる例として案内しています。([裁判所][2])

地籍調査は、主に市町村が主体となって、一筆ごとの土地の所有者、地番、地目を調査し、境界の位置と面積を測量する調査です。現地調査等では、土地の所有者その他の利害関係人やその代理人などの協力を得ながら土地境界を確認していきます。そのため、相続放棄が絡む土地では、現地に行く前の権利関係整理が調査効率を大きく左右します。([地籍総合情報システム][3])

この記事では、地籍調査の担当者が相続放棄後の土地を扱うとき、立会前に確認しておきたい5つのポイントを、現場で起こりやすい混乱とともに整理します。なお、個別案件における相続人の確定、相続放棄の法的効力、通知先の最終判断などは、地籍調査担当者だけで断定せず、実施主体の法務担当や必要に応じて弁護士、司法書士などの専門家と確認することが安全です。

地籍調査で相続放棄後の土地が難しくなる理由

相続放棄後の土地で最初に理解しておきたいのは、「相続放棄された土地」という独立した土地の種類があるわけではないという点です。相続放棄は、特定の山林だけ、特定の農地だけといった形で財産を選んで放棄する手続ではありません。裁判所は、相続放棄を被相続人の権利や義務を一切受け継がない選択として案内しており、相続放棄をするには家庭裁判所への申述が必要です。([裁判所][1])

したがって、「この土地は長年利用していないので土地だけ放棄した」「親族内でこの筆はいらないと言った」といった説明を聞いた場合、その言葉をそのまま法律上の相続放棄として扱わないことが重要です。遺産分割でその土地を取得しないことと、家庭裁判所への申述による相続放棄は別の手続です。相続放棄の有無を地籍調査上の前提にするのであれば、口頭説明だけでなく、申述が受理されているかを確認できる資料の有無を整理する必要があります。裁判所では、相続人や被相続人に対する法律上の利害関係人などを対象に、相続放棄・限定承認の申述の受理の有無を照会する手続が案内されています。([裁判所][4])

また、相続放棄した人が一人いるからといって、その土地が所有者のいない土地になったとは限りません。共同相続人の一部だけが放棄している場合もありますし、先順位の相続人が全員放棄したことによって、次順位の親族について相続関係を確認する必要が生じる場合もあります。裁判所の相続放棄手続案内でも、第一順位の子やその代襲者、第二順位の直系尊属、第三順位の兄弟姉妹やその代襲者という区分に応じて必要戸籍が整理されています。([裁判所][1])

ここを確認せず、「長男が放棄したので所有者不明」と判断してしまうと、本来確認すべき別の相続人が存在するにもかかわらず、その人への通知や確認を飛ばしてしまうおそれがあります。

反対に、親族から「みんな放棄した」と聞いただけで、最後に残ったと思われる親族へ所有者として立会依頼を送ることにも注意が必要です。誰がどの順位に属し、誰について相続放棄の申述が受理されているのかを、確認可能な資料に基づいて整理しなければ、地籍調査上の関係者を正しく特定できません。

地籍調査では、現地で境界標を探したり測量したりする作業が目立ちますが、相続放棄案件では現地作業より先に「人の整理」が必要になります。登記事項、戸籍関係資料、相続放棄に関する確認資料、既存の地籍調査資料などをつなぎ、現在の権利関係を整理してから現場へ進むことが重要です。

立会前に見る1:相続放棄が正式に行われているか

立会前の第一の確認点は、「相続放棄したらしい」という伝聞ではなく、家庭裁判所に相続放棄の申述がされ、その受理の有無を確認できているかどうかです。

相続放棄は、単に相続人同士で「私は土地はいらない」と意思表示するだけで成立する手続ではありません。裁判所の案内では、相続放棄をするには家庭裁判所にその旨を申述しなければならないとされています。また、相続放棄は被相続人の権利や義務を一切受け継がない選択として説明されています。([裁判所][1])

地籍調査の担当者にとって重要なのは、相続放棄の有効性について独自に法律判断を下すことではなく、「現在確認している人物を所有者等として扱う前提が整っているか」を確認することです。

例えば、登記簿上の所有者Aが死亡し、その子Bに地籍調査の案内をしたところ、「私は相続放棄しました」と回答されたとします。このとき、Bが昔から土地を管理していた、境界の位置を詳しく知っている、といった事情があったとしても、それだけでBを現在の相続人として扱ってよいとは限りません。相続放棄の申述が受理された人は、相続関係を整理する際には放棄者として扱う必要があります。([裁判所][5])

一方、Bから得られる現地情報に価値がないという意味でもありません。Bが過去の土地利用や境界標の位置を知っているのであれば、筆界に関する事実関係を確認するための情報提供者になる可能性があります。しかし、「境界の事情を知っている人」と「現在その土地について所有者等として確認を求める相手」は同じとは限りません。

ここを分けて記録しておくと、後工程で混乱しにくくなります。

相続放棄の受理の有無については、裁判所が照会手続を案内しています。ただし、照会できる者の範囲や必要書類は裁判所の案内に従う必要があり、地籍調査の実施主体が当然に照会できると決めつけるべきではありません。実際にどの資料で、どこまで確認するかは、実施主体の権限、内部手続、個人情報の取扱いを踏まえて判断します。([裁判所][4])

相続放棄案件では、「放棄したと言っている」という情報自体を消す必要はありません。むしろ、誰がいつその説明をしたのか、受理の事実を確認できているか、確認に用いた資料は何か、次の確認先は誰かという形で履歴を残すことが重要です。

立会前に見る2:次順位を含む現在の相続関係

第二の確認点は、相続放棄した人だけを見るのではなく、その放棄を踏まえて現在誰を相続関係者として確認すべきかを整理することです。

相続放棄では、放棄した本人についての確認ができれば終わりではありません。例えば、被相続人の子が全員相続放棄している場合、その後の相続関係を確認する必要があります。配偶者の有無、直系尊属の状況、兄弟姉妹や必要に応じた代襲者の状況など、相続関係全体を見なければ、現在確認すべき人物を特定できない場合があります。裁判所の手続案内でも、第一順位、第二順位、第三順位ごとに戸籍の確認範囲が分けられています。([裁判所][1])

地籍調査の現場で避けたいのは、「最初に連絡した相続人が放棄していたので調査不能」と早い段階で判断してしまうことです。最初に連絡した人が相続人ではなくなっていることと、その土地について確認対象となる別の相続人が存在しないことは別の問題です。

実務では、登記名義人の死亡が分かった段階で相続関係を追い、相続放棄が確認された場合には、その結果を相続関係図などに反映させながら次の確認対象を整理していく方法が分かりやすくなります。

このとき重要なのが、戸籍上・法的な関係と実際の連絡状況を混ぜないことです。「住所が分からない」「郵便が戻ってきた」「連絡が取れない」といった所在・応答の問題と、「相続放棄によって相続人として扱わない」という権利関係の問題は別です。

相続人であることが確認できるものの所在が分からないケースと、所在は分かっているが相続放棄が確認されたケースでは、その後に検討すべき地籍調査上の手続が異なります。地籍調査では、所有者等が所在不明の場合や、通知に無反応の場合について、それぞれ一定の手続が用意されています。([地籍総合情報システム][6])

また、登記名義が亡くなった人のままであることもあります。登記簿の名義だけを見て現在の相続関係を判断せず、必要な範囲で戸籍等を確認し、誰を通知・確認の対象とするかを整理することが重要です。

「登記名義人」「死亡確認」「相続関係」「相続放棄の受理確認」「現在の連絡対象」「立会または図面等調査の対象」を分けて管理すると、複雑案件でも状態を追いやすくなります。

地籍調査の対象地域に古い相続未登記地が多い場合、この整理方法は相続放棄案件以外でも役立ちます。数十年前に死亡した所有者の名義が残り、その後さらに相続が発生している土地では、一つの筆について関係者が多数になることがあります。現地立会の日程を決めてから戸籍関係を調べ始めるのではなく、早い段階で権利関係の整理を進める方が手戻りを抑えやすくなります。

立会前に見る3:相続財産清算人が選任されているか

第三の確認点は、相続人全員が相続放棄して結果として相続する者がいなくなった場合などに、相続財産清算人が選任されているかどうかです。

「親族全員が相続放棄した」と聞くと、「それなら土地はすでに国のものになっている」と考えてしまうことがあります。しかし、相続放棄した人がいることと、対象土地がその時点で直ちに国有地になることは同じではありません。

裁判所は、相続人の存在・不存在が明らかでないとき、相続人全員が相続放棄して結果として相続する者がいなくなった場合も含め、家庭裁判所が申立てにより相続財産清算人を選任する手続を案内しています。相続財産清算人は相続財産の清算を行い、清算後に残った財産は、特別縁故者への分与がされる場合などを除き、最終的に国庫へ帰属することになります。したがって、「相続放棄=即時に国有地」と整理するのは不正確です。([裁判所][2])

ここで注意したいのは、「親族全員」という言葉の範囲です。現地で土地を管理していた家族が全員放棄していても、法律上確認すべき別順位の相続関係者が残っている可能性があります。そのため、相続人がいない案件として扱う前に、前章で説明した相続関係の整理が必要になります。

相続財産清算人がすでに選任されている場合は、氏名だけでなく、選任を確認できる資料を確認し、地籍調査についてどのような形で通知、照会、現地調査等を進めるかを実施主体内で整理します。

反対に、清算人が選任されていないからといって、地籍調査担当者が独自の判断で過去の相続放棄者を現在の所有者の代わりとして扱うのは避けるべきです。地籍調査上の通知・確認主体と、過去の事情を知る情報提供者は分けて考えます。

特に山林、原野、長期間利用されていない農地などでは、現地に詳しい人と現在の法的な関係者が一致しないことがあります。近隣住民が「昔はAさんの山だった」「その後は息子さんが草刈りしていた」「息子さんは相続を放棄したらしい」と詳しく説明してくれたとしても、それは筆界調査の参考情報として記録する内容と、権利関係の確認とは分けて扱う必要があります。

相続財産清算人の有無を確認することは、単に相続法上の問題を整理するためではありません。誰に現地調査等の通知を行い、誰から必要な確認を得るのかという地籍調査の実務に関係するためです。

立会前に見る4:誰に立会と筆界確認を求めるべきか

第四の確認点は、現地立会の案内を「土地に一番詳しそうな人」へ送るのではなく、地籍調査上、誰を所有者等として通知・確認の対象にする案件なのかを整理することです。

地籍調査における土地境界の調査では、土地の所有者その他の利害関係人またはこれらの者の代理人による現地での立会等を得て実施するのが基本です。また、境界確認は現地立会だけに限定されず、図面等の送付や集会所等で図面等を確認する「図面等による調査」という方法もあります。([地籍総合情報システム][6])

相続放棄案件では、この「誰が確認する人なのか」が通常より分かりにくくなります。

例えば、被相続人A、その子B、隣接所有者Cという土地関係を考えます。Bは以前Aと一緒に土地を管理しており、境界標の位置も知っています。しかしAの死亡後、Bの相続放棄が確認され、別の人物Dが現在確認すべき相続人となっているとします。

この場合、Bの説明は筆界を調査するための参考情報になる可能性があります。一方で、Bが土地の事情を詳しく知っているという理由だけで、Bを現在の所有者として扱うことは適切ではありません。

逆にDは土地を一度も見たことがなく、「どこにある土地なのかもよく分からない」と答えるかもしれません。それでも、現在の権利関係を整理するうえではDの立場を無視できません。

つまり相続放棄案件では、「現地を知っている人」「現在の所有者等として確認対象となる人」「隣接地所有者等」「過去の測量や土地利用を知る人」などから得られる情報の種類を分けて考える必要があります。

この整理をしておけば、立会当日に「放棄した人がなぜ所有者として扱われているのか」「現地を知らない相続人に何を確認してもらうのか」といった混乱を減らせます。

また、現地に来られない所有者等についても、図面等による調査が可能な場合があります。したがって、地籍調査では必ず全員が同じ時間に現地へ集まらなければ一切進められない、というわけではありません。実施主体が適用可能な方法を確認しながら進めることが重要です。([地籍総合情報システム][6])

さらに、令和6年、つまり2024年の地籍調査作業規程準則改正により、現地調査等の通知に無反応な所有者等に対する「土地境界のみなし確認制度」が創設されました。ただし、これは所有者が分からなくても自由に境界を決められる制度ではありません。地籍調査実施者が図面等調査の通知を到達確認可能な方法で送り、筆界に関する情報を総合的に考慮して筆界案を作成し、その筆界案を所有者等に送付したうえで、到達日から20日間に意見の申出がない場合などに、筆界案の確認があったものとみなす仕組みです。積極的に立会いや図面等調査を拒んでいる者や、必要な通知・筆界案の到達が確認できない場合は対象外とされています。([地籍総合情報システム][6])

相続放棄案件だからこそ、立会日の調整より先に「誰に、どの立場で、何を確認してもらうのか」を明確にしておくことが重要です。

立会前に見る5:筆界資料と現地の利用状況

第五の確認点は、相続関係だけに意識を集中させず、筆界そのものを調査するための資料と現地状況を十分に整理しておくことです。

相続放棄が絡む土地では、現在の所有者等が土地の沿革や現況に詳しくないことがあります。そのため、既存資料と現地情報を丁寧に整理する価値が高くなります。

まず確認したいのが、登記所に備え付けられている地図や公図、地積測量図、過去の地籍調査関係資料、道路や水路に関する資料、既設の境界標、石積み、擁壁、法面、畦畔、古い塀などです。

ただし、現地に存在する構造物が、そのまま筆界を意味するわけではありません。塀、畦、水路、石積みなどは筆界を検討する手掛かりになることがありますが、その設置経緯や変遷を確認し、既存資料や周辺の状況と突き合わせて評価する必要があります。

さらに地籍調査の担当者が押さえておきたいのが、「筆界」と「所有権界」は同じ概念ではないという点です。

法務省は、筆界を、土地が登記された際にその土地の範囲を区画するものとして定められた線と説明しており、所有者同士の合意などによって変更することはできないとしています。一方、所有権の範囲を画する線は筆界とは異なる概念で、両者は一致することが多いものの、一致しない場合もあります。([法務省][7])

相続放棄案件では、「父からここまでがうちの土地だと聞いていた」「隣の人とはこの木を境に使っていた」といった説明が出ることがあります。その情報は筆界を検討する材料の一つになり得ますが、それだけで筆界が決まるわけではありません。

誰がどの位置を境界だと認識していたのか、その認識は何に基づくのか、既存図面と整合するのか、境界標は存在するのか、隣接地側の資料や説明と整合するのか、と一段ずつ検証することが大切です。

土地管理が長期間十分に行われていない場所では、境界標が草木に埋もれていたり、倒木、盛土、浸食などによって現況が変わっていたりすることもあります。立会当日になって初めて探索を始めると、関係者を長時間待たせることになり、十分な確認ができないまま日程を再設定する可能性もあります。

事前踏査が可能な案件では、境界標候補や特徴的な構造物の位置を先に確認し、写真と位置情報をセットで残しておくと効率的です。

特に山林や広い農地では、「大きな木の近く」「水路から少し上」「古い石垣の端」といった言葉だけの記録は後から再現しにくくなります。土地所有者や現地精通者の高齢化、世代交代などが進めば、同じ説明をもう一度聞けるとは限りません。

そのため、地籍調査では権利関係の整理と並行して、将来もう一度確認できる現地記録を残すことが重要になります。

相続放棄案件で避けたい実務上の思い込み

相続放棄後の土地を扱う際、最も避けたいのは、一つの情報だけから結論を急ぐことです。

代表的なのが、「相続放棄した人には何も聞いてはいけない」という考え方です。

相続放棄によって現在の相続人として扱わないことと、過去の土地利用や境界について知識を持っていることは別問題です。正式な確認主体として扱えるかどうかを整理したうえで、過去の事実を知る人物として情報を得ることには意味があります。

逆に、「昔から管理しているから現在の所有者だろう」という判断も避けなければなりません。

現在草刈りをしている人や、近所から所有者と思われている人が、必ずしも現在の権利者とは限りません。現地管理の実態は重要な調査情報ですが、登記や相続関係の確認とは分けて記録します。

また、「相続放棄されたら国有地」という思い込みにも注意が必要です。

相続人全員が相続放棄して結果として相続する者がいなくなった場合でも、裁判所は相続財産清算人の選任・清算手続を案内しており、清算後に残った財産が最終的に国庫へ帰属する流れです。相続等によって土地を取得した人が一定の要件の下で土地を国庫に帰属させる「相続土地国庫帰属制度」もありますが、これは相続放棄とは別の制度です。([裁判所][2])

もう一つ注意したいのが、「境界を知っている人がいないので測量すれば決まる」という考え方です。

高精度に座標を測れることと、筆界の根拠を判断できることは同じではありません。測量は位置を正確に記録するために重要ですが、どの位置を筆界として扱うかについては、既存資料、境界標、土地の沿革、関係者から得られる情報などを総合して調査する必要があります。筆界そのものは、所有者同士の合意だけで自由に変更できる線ではありません。([法務省][7])

位置情報技術が高精度になった現在ほど、「測れた位置」と「地籍調査の手続を経て確認された筆界の位置」を明確に区別して管理することが重要です。

地籍調査を止めないための事前整理

相続放棄案件では、一件ごとの確認に時間がかかりやすいため、立会直前に調べ始めると地区全体の工程に影響することがあります。

そのため、調査地区内の所有者調査を始めた段階で、死亡名義、相続未登記、相続放棄の申告、住所不明、共有者多数など、対応に時間を要しそうな筆を早めに抽出しておくことが有効です。

例えば相続放棄の申告があった時点で、その人の案件を単純に「立会不可」として終わらせるのではなく、何が確認済みで何が未確認なのかを整理しておきます。

登記名義人の死亡は確認済みなのか、相続関係はどこまで追えているのか、相続放棄の受理は確認できているのか、次順位の確認が必要なのか、相続財産清算人の選任状況を確認する段階なのか、通知先を決められる段階なのかといった状態を管理すると、担当者が変わっても案件を引き継ぎやすくなります。

地籍調査では地区全体で多数の筆を同時に扱います。複雑案件を担当者の記憶だけで管理すると、「親族に電話したところまでは覚えているが、その人が相続人だったのか放棄者だったのか分からない」といったことが起こりかねません。

さらに、権利関係の記録と現地調査の記録を関連付けて管理することも重要です。

例えば、ある筆について現在の相続関係の確認に時間がかかっている間にも、隣接地側の資料調査や、実施主体の権限と手続の範囲内で現地の境界標候補を確認できる場合があります。権利関係が確定するまで現地情報を一切集めないという運用ではなく、可能な調査を分けて進めることで、最終的な現地調査等を効率化できます。

地籍調査は一つの筆だけで完結する仕事でもありません。一つの境界点は複数筆に関係するため、一筆の所有者確認が遅れることで周辺筆の調査にも影響が及ぶことがあります。

だからこそ、相続放棄のような複雑案件を早い段階で見つけ、権利関係整理、資料調査、現地踏査、通知準備を分けて進めることが重要になります。

現地情報を座標で残すことが将来の確認を助ける

相続放棄が絡む土地では、過去の土地事情を知る人が限られていることがあります。そのため、現地で一度確認できた情報を、後から再確認できる形で残す価値が高くなります。

特に境界標候補、古い石杭、鋲、石積みの端、水路の交点、擁壁端部、道路境界付近などは、写真だけで保存すると後から場所を特定しにくい場合があります。

山林で「この石杭を確認した」という写真が残っていても、周囲が似た植生であれば、数年後に同じ地点へ到達することは簡単ではありません。草木が伸びたり伐採されたりすれば、写真の背景も変わります。

そこで役立つのが、現地写真と位置座標を組み合わせた記録です。

例えば現地確認の段階で、境界標候補や参考物の位置を測位し、その地点の写真、方向、確認日、確認者、参考とした資料などを関連付けておけば、後日の再調査や別担当者への引継ぎがしやすくなります。

ただし、ここでも重要なのは、測位した点をそのまま筆界として確定扱いしないことです。

現地で見つけた杭が筆界標なのか、単なる構造物なのか、過去の測量用仮杭なのかは別途確認が必要です。したがって、「筆界確認済み点」「境界標候補」「参考構造物」「現況位置」といった意味を分けて管理することが望まれます。

高精度な位置情報は、筆界を法律上自動的に決めるものではありません。しかし、確認した対象を正確な位置にひも付けて記録し、別の日に同じ場所へ戻るための補助として活用できます。

相続放棄案件のように、調査が一度で完結せず、相続関係の確認後に再度現地へ行く可能性がある土地では、こうした再現可能な記録が特に役立ちます。

また、隣接する複数の境界標候補をまとめて位置情報化しておけば、公図や既存図面との関係を検討するときにも整理しやすくなります。現場の情報を単発の写真として残すのではなく、「どの筆の、どの付近に、何があったのか」という地理情報として管理する発想が重要です。

LRTK Phoneでは、現場で取得した位置情報や測位写真などを扱い、クラウドで共有・管理する機能が案内されています。こうした機能を、事前踏査や再確認の記録を残すための補助として使うことができます。ただし、LRTK Phoneによる測位結果だけで筆界を確定できるわけではありません。地籍調査で求められる手続、既存資料、所有者等による確認などを踏まえたうえで、現地情報を位置にひも付けて記録する用途として活用することが重要です。([Lefixea Irtk][8])

まとめ:権利関係を整理してから立会へ進む

地籍調査で相続放棄後の土地を扱うときは、「放棄した人がいる」という一点だけで処理方法を決めないことが重要です。

まず、家庭裁判所への相続放棄の申述が受理されているかを確認し、その結果を踏まえて現在誰を相続関係者として確認すべきかを整理します。相続人全員が放棄して結果として相続する者がいなくなった場合などには、相続財産清算人の選任状況も確認対象になります。([裁判所][1])

そのうえで、地籍調査上誰に通知し、誰に筆界確認を求めるべきなのかを判断していきます。現地立会だけでなく図面等による調査が可能な場合もあり、無反応所有者等については2024年に創設された土地境界のみなし確認制度が適用できる場合もありますが、いずれも所定の要件と手続に従う必要があります。([地籍総合情報システム][6])

同時に、権利関係の整理だけで現場調査が終わるわけではありません。公図や地積測量図、既存の境界標、道路や水路、地形、過去の土地利用などを確認し、筆界を調査するための材料を積み重ねる必要があります。

相続放棄した人が過去の境界を詳しく知っていることもあれば、現在確認すべき相続人が土地を一度も見たことがないこともあります。だからこそ、「現在の権利関係を確認する作業」と「筆界に関する事実を集める作業」を分け、最後に両者をつなぐ進め方が重要です。

さらに、境界標候補や現況構造物を一度確認できたのであれば、写真だけではなく位置情報とともに残しておくことで、その後の再調査や担当者間の引継ぎを効率化できます。相続放棄や所有者探索によって調査期間が長くなる土地ほど、再現可能な現地記録の価値は高くなります。

地籍調査では、正確に測ることと同じくらい、「何を確認して測った点なのか」を明確にすることが大切です。現地の境界標候補や参考物を高精度な座標と写真で記録し、後工程でも活用できる現場情報として残したい場合には、LRTK Phoneを活用した測位・記録の方法も検討できます。ただし、製品による測位はあくまで記録・確認を支援する手段であり、筆界の法的・手続的な確認を代替するものではありません。([Lefixea Irtk][8])

現場を3Dで残して、あとから測る。
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