基準局のモバイル回線では何にデータ量を使うのか
GNSSを利用したRTK測位では、基準局で観測した衛星信号をもとに補正に必要なデータを生成し、移動局側へ届ける仕組みが使われます。基準局をインターネットに接続して補正データを配信する場合、固定回線を利用できない現場ではモバイル回線が有力な通信手段になります。
そこで実務担当者が気になるのが、「基準局を1か月運用すると、モバイル回線のデータ量はどのくらい必要なのか」という点です。
一般的な動画通信と比べれば、RTK用の補正データそのものは比較的小さなデータです。しかし、基準局を24時間連続で稼働させれば、毎秒少量の通信でも1か月では無視できない容量になります。また、使用する衛星システムの数、配信するRTCMメッセージの種類、送信周期、遠隔監視の有無などによって通信量は大きく変わります。
そのため、「基準局なら月に何GB」と一律に決めるのは適切ではありません。重要なのは、基準局から実際に送信される平均データ量と稼働時間を把握し、それを月間容量へ換算することです。
たとえば、平均通信速度が1kbpsのデータを30日間途切れなく送信すると、単純計算では約0.32GBになります。平均10kbpsなら約3.2GB、20kbpsなら約6.5GB、50kbpsなら約16GBです。ここには通信プロトコルの付加情報、接続処理、遠隔監視、ログ転送などを十分に含めていないため、実際の契約容量は計算結果より余裕を持たせる必要があります。
基準局の回線選定では、補正データだけを見て最小容量を選ぶより、「平常時にどの程度使うのか」「最大時にどこまで増える可能性があるのか」「容量超過時に通信速度が変化すると運用へどのような影響が出るのか」を確認することが大切です。
以下では、月間3GB、5GB、10GB、20GB、30GB、50GB以上という6段階を目安として、どのような基準局運用に適しているかを考えていきます。ただし、各容量は特定の基準局に必ず当てはまる保証値ではありません。最終的には実機で通信量を測定し、運用条件に合わせて判断することが基本です。
基準局の通信量を決める4つの要素
基準局の月間通信量を考えるうえで、最初に確認したいのが配信データの平均速度です。補正データは一定量が常に流れるとは限らず、採用するメッセージ構成や観測衛星数などによって瞬間的なデータ量が変化します。そのため、仕様上の最大値だけでなく、実際の運用状態における平均通信速度を確認することが重要です。
二つ目は配信周期です。位置情報に関係する一部のデータを1秒ごとに送信する設定と、数秒ごとに送信する設定では、月間通信量にも差が生じます。ただし、通信量を減らすことだけを目的に送信周期を長くすればよいわけではありません。必要な測位性能との兼ね合いがあるため、受信機側が必要とする情報と運用目的を基準に設定する必要があります。
三つ目は稼働時間です。同じデータ速度でも、作業時間だけ起動する基準局と24時間365日に近い運用を行う固定基準局では、通信量が大きく異なります。1日8時間の運用と24時間運用では、単純な稼働時間だけで3倍の差があります。
たとえば平均20kbpsの通信が発生すると仮定した場合、24時間連続で30日運用すれば単純計算で約6.5GBです。一方、1日8時間だけなら補正データ部分は約2.2GB相当となります。現場作業時間に合わせて電源を入れる方式なのか、無人で常時稼働させる方式なのかによって必要容量は変わります。
四つ目は補正データ以外の通信です。基準局に遠隔監視機能を持たせている場合、状態確認、ログ送信、設定変更、時刻同期、保守用通信などが発生することがあります。機器や運用方法によっては、ソフトウェア更新や大きなログの取得によって一時的に通信量が増える場合もあります。
つまり、基準局の月間容量を求めるときは、「RTCMのデータ量×運転時間」だけでは不十分です。補正データの配信量を基礎として、接続維持に伴う通信、再接続、遠隔管理、保守なども含めて考えることで、実際の運用に近い容量を見積もれます。
月間容量3GB前後が目安になるケース
月間3GB前後は、基準局用のモバイル回線としては比較的小さな容量です。常時稼働する基準局に無条件で選べる容量ではなく、通信量が少ないことを確認できている場合や、運用時間が限定されている場合の候補と考えるのが安全です。
30日間24時間通信するとした場合、3GBで収まる平均速度は単純計算でおおむね9kbps程度です。実際には補正データ以外の通信や通信上の付加情報も加わるため、平均通信速度がこの値に近い状態で3GBを選択すると余裕がほとんどありません。
一方、工事現場で作業日の昼間だけ基準局を使用し、夜間や休日は停止するのであれば、3GB程度でも運用できるケースがあります。たとえば通信量が比較的小さく、1日数時間から8時間程度しか使用しない場合です。
ただし、月間3GB程度で運用するなら、実測による確認が特に重要です。机上計算では2GB程度だから3GBで十分だと判断しても、再接続が多い環境や遠隔確認を頻繁に行う運用では余裕が減ります。月末に容量へ近づく運用では、作業日数が少し増えただけでも想定を超える可能性があります。
また、基準局を設置した直後は通信量が安定しないことがあります。設定確認のために遠隔接続を繰り返したり、ログを取得したりすることで、通常月より多くの通信を使う場合があるためです。
この容量帯は、「通信量を十分把握したうえで小容量に抑えたい基準局」向けの目安です。初めて設置する基準局や、通信量をまだ測定できていない基準局については、もう少し容量に余裕を持たせたうえで実績を確認する方法が扱いやすいでしょう。
月間容量5GB前後が目安になるケース
月間5GB前後になると、限定時間運用の基準局だけでなく、データ量が比較的小さい常設基準局でも検討しやすくなります。
30日間24時間連続で使用する場合、5GBは単純計算で平均約15kbps程度に相当します。したがって、補正データと周辺通信を合わせた平均速度が十分に低ければ、常時稼働でも収まる可能性があります。
ただし、ここで注意したいのは瞬間速度と平均速度の違いです。基準局の通信量は常に一定とは限りません。衛星の観測状況や送信するメッセージによってデータ量が変化するため、短時間だけ測定して「10kbpsだったから大丈夫」と判断するのは避けたほうがよいでしょう。
少なくとも通常運用をある程度継続し、1日単位あるいは数日単位の実績から月間量を推定するほうが現実的です。曜日によって稼働時間が違う場合には、その差も含めて計算します。
5GB前後は、日中のみ継続的に稼働する現場用基準局では比較的余裕を取りやすい容量です。たとえば1日8時間程度の運用なら、24時間連続運用と比較して補正データ部分は約3分の1になります。そのため、平均データ速度がやや大きい設定でも収まりやすくなります。
一方、24時間稼働させる固定基準局では、5GBを採用する前に通信量を実測しておきたいところです。運用開始後に配信する衛星システムを増やしたり、メッセージ構成を変更したりすると、当初の見積もりから通信量が増えることがあります。
容量を小さく抑えることより、必要な補正情報を安定して届けられることのほうが重要です。5GBを基準にする場合も、通信量を減らすためだけに必要な補正データまで削らないよう注意が必要です。
月間容量10GB前後が目安になるケース
月間10GB前後は、基準局のモバイル回線を検討するときに余裕を持たせやすい容量帯の一つです。
30日間24時間連続運用した場合、10GBは単純換算で平均約31kbps程度に相当します。もちろん、すべてを補正データに使えるわけではありませんが、平均数kbpsから十数kbps程度の配信であれば、遠隔監視などの周辺通信を含めても一定の余裕を確保しやすくなります。
現場担当者にとって重要なのは、「平均月に足りる容量」ではなく、「多少条件が変わった月にも止まりにくい容量」を選ぶことです。
たとえば通常月の利用量が4GBだったとしても、それだけを見て5GBを選ぶと余裕は1GBしかありません。基準局の設定確認や保守作業を実施した月に通信量が増えれば、上限へ近づく可能性があります。これに対して10GBなら、同じ利用状況でも余裕を取りやすくなります。
特に、工事期間中に基準局を毎日使用する場合、月によって作業日数が変化します。通常は平日のみだったとしても、工程によって休日作業が増えることがあります。利用日数の変動を毎月細かく予測するより、ある程度の余裕を確保しておくほうが運用管理は単純になります。
また、24時間稼働させる基準局でも、実測値が十分低ければ10GBで収まる可能性があります。基準局を新設するときには、まず余裕のある容量で運転し、1か月程度の実績を確認してから適正容量を判断する方法も有効です。
ただし、10GBという数字自体に特別な意味があるわけではありません。平均通信速度が30kbps近くになる場合には、24時間運転すると理論上の通信量だけで10GBへ近づきます。そのような環境では、さらに上の容量を検討する必要があります。
月間容量20GB前後が目安になるケース
月間20GB前後は、複数の衛星システムや比較的多くの補正データを扱う基準局、遠隔管理を積極的に行う基準局などで検討しやすい容量です。
30日間24時間連続で通信した場合、20GBは平均約62kbps相当です。この程度の余裕があれば、補正データだけではなく、装置状態の確認やログ通信などを行う環境でも容量不足を避けやすくなります。
基準局では、衛星観測情報を多く送れば通信量も増える傾向があります。複数のGNSSを利用し、多数の衛星に関する観測データを短い周期で配信する構成では、シンプルな構成よりデータ量が大きくなることがあります。
ただし、「衛星数が2倍なら通信量も必ず2倍」という単純な関係ではありません。メッセージの種類、構造、配信周期などが関係するためです。そのため、20GBが必要かどうかも名称や設定項目だけでは判断せず、実際の通信量を見る必要があります。
この容量帯は、通信量の細かな節約より基準局を継続運用しやすくすることを重視する場合にも向いています。現場で毎月残容量を確認し、上限へ近づくたびに設定を調整するような運用は担当者の負担になります。測位に必要な設定を維持したまま、通信容量には余裕を持たせるほうが管理しやすいケースがあります。
また、基準局が遠隔地にあり、担当者が簡単には訪問できない場合も余裕を持たせたいところです。通信容量の不足だけを理由に現地対応が必要になる状況は避けたいからです。
通常の補正データ配信だけで10GBを大きく下回る基準局であっても、保守や遠隔作業を含めた運用全体の安定性を重視するなら、20GB程度まで選択肢を広げて考える価値があります。
月間容量30GB前後が目安になるケース
月間30GB前後は、補正データを24時間継続して配信しながら、遠隔監視や保守通信にも比較的余裕を持たせたい基準局で検討できる容量です。
30日間連続通信した場合、30GBは単純計算で平均約93kbpsに相当します。補正データの平均通信速度が数十kbpsで推移する構成でも、一定の余裕を確保できる可能性があります。
固定基準局では、一度設置すると長期間同じ設定を使い続けるとは限りません。対応する衛星システムを増やしたり、補正データの送信設定を見直したり、監視項目を追加したりする可能性があります。そのため、現在必要な通信量だけを基準に契約容量を決めると、将来設定を変更したときに容量不足になることがあります。
30GB程度まで余裕を持たせると、基準局の設定変更に対する自由度も高めやすくなります。
ただし、容量が大きければ通信品質も高くなるわけではありません。月間データ容量と、電波状態、遅延、通信途絶、上り通信の安定性は別の問題です。30GBの容量が十分残っていても、基準局を設置した場所のモバイル通信が不安定なら補正データが途切れることがあります。
したがって、このクラスの容量を選ぶ場合も、容量だけで安心するのではなく、現地の通信品質を確認する必要があります。特に基準局は屋外設備や離れた場所へ設置されることがあり、アンテナや筐体の設置位置によってモバイル通信状態が変化するケースがあります。
通信容量には余裕があるのにRTK測位が不安定な場合は、データ量ではなく通信品質や補正データの遅延など、別の原因を切り分けることが重要です。
月間容量50GB以上を検討したいケース
月間50GB以上は、通常の補正データ配信だけを考えると大きめの容量ですが、基準局を単なる補正データ送信装置ではなく、遠隔管理拠点として運用する場合には選択肢になります。
50GBを30日間24時間で均等に使用すると、平均約154kbpsに相当します。そのため、一般的な低容量の補正データ配信だけで50GBを使い切るとは限りません。
それでも大容量を検討する理由として、基準局周辺の通信機器を同じ回線へ接続しているケースがあります。たとえば保守用端末、監視設備、データ収集装置などが同一のモバイル回線を共有すると、基準局単体から推定した通信量では足りなくなる可能性があります。
また、観測ログなど比較的大きなデータを遠隔地へ定期的に転送する運用でも通信量が増えます。リアルタイム補正データは毎秒の容量が小さくても、長時間蓄積した観測ファイルをまとめて転送すると、月間総量に与える影響が大きくなる場合があります。
ここで大切なのは、「基準局用回線なのだから補正データしか流れない」と決めつけないことです。ネットワーク構成を確認し、その回線を実際にどの機器が利用するかまで把握する必要があります。
遠隔保守時に大容量データを扱う可能性がある場合や、将来的に通信用途を増やす計画がある場合には、50GB以上を検討する意味があります。
一方で、補正データしか流さず実測値が毎月数GBに収まっている基準局なら、必要以上に大きな容量を確保しても運用上の効果は限定的です。重要なのは大容量を選ぶことではなく、実際の利用量に対して適切な余裕を確保することです。
基準局の月間データ量を計算する方法
基準局の必要容量は、平均通信速度が分かれば概算できます。
考え方は非常にシンプルです。平均通信速度をkbpsで測定し、それを1秒当たりのバイト数へ変換して、1日の秒数、月間日数を掛けます。
1kbpsは1秒当たり1,000bitです。8bitで1byteなので、1kbpsは約125byte毎秒となります。
これを24時間、30日間続けると約324MBです。したがって、24時間連続稼働する場合は「平均1kbpsにつき月間約0.32GB」と覚えておくと概算しやすくなります。
平均5kbpsなら約1.6GB、10kbpsなら約3.2GB、20kbpsなら約6.5GB、30kbpsなら約9.7GB、50kbpsなら約16.2GB、100kbpsなら約32.4GBです。
ただし、これは通信量の概算値です。実際のネットワークでは補正データ本体以外にも通信に必要な情報が付加されます。また、接続確認や切断後の再接続、監視、ログ取得などが発生するため、計算値をそのまま契約容量の上限として使うのは避けたほうがよいでしょう。
さらに重要なのが稼働率です。
基準局を1日12時間だけ運用するなら、24時間運用の約半分になります。1日8時間なら約3分の1です。月20日だけ使用する工事現場なら、30日連続運転よりさらに少なくなります。
たとえば平均30kbpsの基準局が1日8時間、月25日稼働すると仮定します。24時間30日なら約9.7GBですが、稼働時間を考慮すれば補正データ部分は約2.7GB相当です。この条件なら5GB程度でも収まる可能性があります。
一方、同じ平均30kbpsでも24時間365日運用する固定基準局なら、月10GB近くを継続的に使う計算になります。この場合、10GBを上限にすると余裕がほとんどないため、20GB以上を検討する考え方が出てきます。
このように、必要容量は基準局の機種名よりも「平均通信速度×稼働時間」に強く左右されます。
最も確実なのは、実際の基準局を予定している設定で一定期間運転し、モバイル通信側でデータ利用量を測る方法です。1日や数時間だけでは日ごとの変動を把握しにくいため、可能であれば複数日の実績を確認します。
その実績を1か月へ換算し、さらに保守作業や稼働日増加に備えた余裕を加えれば、現場に適した月間容量を判断しやすくなります。
想定より通信量が増える原因
基準局のデータ量を計算したにもかかわらず、実際の利用量が想定より多くなることがあります。その場合、まず確認したいのがRTCMの配信設定です。
配信するメッセージの種類を増やした場合や、配信周期を短くした場合は、通信量が増える可能性があります。また、利用するGNSSの構成を変更すると、観測対象となる衛星数や送信データが変化することがあります。
設定変更後は、「測位できているから問題なし」で終わらせず、通信量にも変化がないか確認すると安全です。
次に確認したいのが稼働時間です。当初は作業時間だけ基準局を動かす予定だったのに、運用の都合から24時間電源を入れたままにすると、通信量は大幅に増えます。1日8時間を前提にした見積もりなら、24時間化によって理論上は約3倍になる可能性があります。
遠隔監視も見落としやすいポイントです。小さな状態情報だけを送る仕組みなら影響は限定的ですが、詳細ログや観測ファイルまで自動転送する構成では通信量が増えることがあります。
ソフトウェアや設定データの更新も平常時とは違う通信です。更新頻度が低くても、実施した月だけ通信量が増える場合があります。毎月の平均値だけを見るのではなく、最大利用月も確認しておくことが重要です。
また、基準局とは直接関係のない通信が発生していないかも確認します。一つのモバイル通信装置を複数機器で共有している場合、ほかの機器の通信まで基準局の利用量として計上されます。
通信量が予想以上に大きい場合は、基準局のRTCM設定をすぐに削るのではなく、まず何が通信しているのかを切り分けます。必要な補正情報を減らして測位性能へ影響を与えてしまっては本末転倒です。
モバイル回線の容量を決めるときの注意点
基準局のモバイル回線を決めるときは、月間データ容量だけを比較しないことが重要です。
まず確認したいのが、容量を使い切った後の通信条件です。契約している月間容量を超えたときに通信速度が大幅に変化すると、補正データの配信へ影響する可能性があります。
RTK測位では、データ量そのものが非常に大きくなくても、補正情報を継続的に受け取れることが重要です。通信が極端に遅れたり途切れたりすれば、基準局で正常にデータを生成していても移動局側の測位状態に影響することがあります。
そのため、毎月ほぼ上限まで使う容量設計は避けるのが無難です。
たとえば実績値が月8GBなら、10GBでぎりぎり運用するより、運用変動を吸収できる容量を検討します。必要な余裕率は運用条件によって異なるため一律には決められませんが、「通常月の実績が上限に近づかないこと」を判断基準の一つにすると管理しやすくなります。
次に重要なのが上り通信です。基準局では、現場からインターネット側へ補正データを送信する構成が多いため、一般利用で注目されやすい受信側だけではなく、送信側の安定性も確認します。
設置予定地点で通信できるかどうかは、机上の通信エリア情報だけでは判断しきれない場合があります。周囲の地形、建物、設備、アンテナ位置などによって状態が変化する可能性があるため、可能であれば実際の設置場所で確認することが望ましいです。
基準局を高い位置へ設置してGNSSアンテナの上空視界を確保しても、モバイル通信機器が金属製の収納設備の内部に置かれることで通信状態が変わることも考えられます。GNSS受信環境とモバイル通信環境は別々に確認する必要があります。
さらに、通信容量だけでなく回線障害への備えも考えます。重要な現場で一つの基準局へ多数の作業者が依存する場合、基準局の停止が現場全体へ影響します。電源、基準局本体、モバイル通信のどこに問題が起きても補正データは止まる可能性があります。
通信容量を十分に確保することは大切ですが、それだけで基準局の安定運用が完成するわけではありません。
基準局を安定運用するために通信量と一緒に確認したいこと
基準局をモバイル回線で運用するとき、データ容量と同時に確認したいのが基準局座標です。
RTKでは基準局の座標が測位成果の基準になります。通信が安定して補正データを受信できていても、基準局へ設定した座標に誤差があれば、移動局の位置にも系統的なずれが生じる可能性があります。
新しく基準局を設置するときは、モバイル回線がつながったことだけで運用開始とせず、使用する座標の決定方法、座標系、アンテナ位置なども確認します。
基準局アンテナの固定状態も重要です。強風、振動、施工中の接触などによってアンテナ位置が変化すれば、通信には問題がなくても測位結果へ影響する可能性があります。固定基準局では、設置直後だけでなく定期的に外観や取付状態を確認すると安心です。
電源についても同様です。モバイル回線のデータ容量が十分でも、基準局や通信装置が再起動を繰り返していれば補正データが途切れます。基準局の通信障害が発生した場合は、モバイル回線だけを原因と決めつけず、電源、通信、受信状況、装置状態を順番に切り分けます。
さらに、運用開始時には「正常時の状態」を記録しておくことが役立ちます。正常時の通信量、衛星受信状況、補正データ配信状態、基準局座標、設置状況などを残しておけば、不具合発生時に以前との違いを確認できます。
特に通信量については月末の合計値だけではなく、1日当たりの平均や変化を見ると異常を見つけやすくなります。普段は1日100MB程度なのに突然数百MB以上へ増えた場合、設定変更やログ転送などが発生していないかを確認するきっかけになります。
逆に、普段発生している通信量が急にほぼゼロになった場合も注意が必要です。基準局が停止している、インターネットへ接続できていない、補正データが送信されていないといった可能性を確認する必要があります。
つまり、通信量は単なる契約容量の管理指標ではなく、基準局の稼働状態を確認する一つの情報として利用できます。
現場でRTK測位を利用する場合には、基準局側の状態と移動局側の記録を関連付けて残すことも有効です。いつ、どこで、どのような測位状態だったのかが分かれば、後から成果を確認するときにも原因を追いやすくなります。
まとめ|基準局のデータ量は実測して余裕を持たせる
基準局のモバイル回線に必要なデータ量は、基準局という名称だけでは決まりません。RTCMの平均データ速度、配信周期、稼働時間、衛星システムの構成、遠隔監視やログ転送の有無などによって大きく変わります。
24時間30日間の連続通信を単純計算すると、平均1kbpsにつき月間約0.32GBです。平均10kbpsなら約3.2GB、20kbpsなら約6.5GB、50kbpsなら約16GB、100kbpsなら約32GBが一つの計算上の目安になります。
この考え方から、通信量が小さく稼働時間も限定される基準局では3GB前後、比較的軽い運用では5GB前後、ある程度の余裕を確保するなら10GB前後、常時運用や通信量の多い構成では20GBから30GB前後、補正データ以外の大容量通信も行う場合には50GB以上を検討するという6段階で整理できます。
ただし、これらは契約容量を機械的に決める基準ではありません。同じ基準局でも設定や運転時間を変更すれば必要容量は変化します。
最も実務的なのは、使用予定の設定で基準局を実際に稼働させ、数日から1か月程度の通信量を記録して月間利用量を把握する方法です。そのうえで、作業日増加、設定変更、再接続、遠隔保守、ログ取得などによる変動を考え、通常時の利用量に余裕を加えて容量を決めます。
また、モバイル回線の容量が十分でも、基準局座標、GNSSアンテナの設置環境、電源、通信品質などに問題があれば高精度測位を安定して継続することは難しくなります。通信量だけを個別に管理するのではなく、基準局から現場での測位、成果の保存までを一連の運用として管理することが重要です。
現場で取得した位置情報を写真や施工記録と結び付けて残したい場合には、LRTK Phoneを活用する方法があります。基準局や補正情報を利用した高精度測位と、現場写真、位置情報、施工記録の管理を組み合わせることで、単にその場で位置を確認するだけでなく、いつどこで何を確認したのかを後工程まで追いやすくなります。基準局の通信環境を整える際は、補正データを安定して届ける仕組みとあわせて、LRTK Phoneによる現場記録の残し方まで含めて運用を設計すると、測位データを実務で活用しやすくなります。