踏掛版下の空洞充填材量は平面積だけでは決められない
橋台背面では、橋梁部と盛土部の境界付近で地盤や裏込め材の沈下などが生じると、踏掛版の下面とその下の地盤との間に空洞が形成されることがあります。踏掛版は橋台付近の段差を緩和する役割を持つ構造ですが、その下に空洞が生じた場合、補修方法の一つとして充填材を用いて空隙を埋めることがあります。
このとき現場で問題になりやすいのが、どれだけの充填材が必要になるのかという数量です。平面上で空洞の長さと幅が分かれば、面積までは比較的容易に求められます。しかし、充填材量は面積だけでは決まりません。踏掛版下面から空洞底面までの高さ、つまり空洞厚が場所ごとに異なるためです。
例えば、橋台に近い位置ではほとんど隙間がなく、橋台から離れるにつれて空洞が厚くなる場合があります。反対に、中央だけ局所的に深くなっていることもあります。空洞の端部が明確な直線になっているとも限りません。このような形状に対して、平面積全体へ一つの厚さを掛けるだけでは、実際の空洞体積との差が大きくなる可能性があります。
さらに注意したいのは、計算で求めた空洞体積と、施工時に使用する充填材量が必ずしも同じではないことです。充填材が想定範囲外へ流れる場合、内部の小さな空隙まで入り込む場合、施工中の材料状態が計算時の想定と異なる場合などがあるためです。
したがって、橋台踏掛版下の空洞充填材量を現場で体積計算するときは、単に長さ、幅、高さを掛けるのではなく、どこまでを空洞として扱うのか、空洞厚がどのように変化しているのか、計算数量と施工数量をどう分けるのかを順番に整理する必要があります。
視点1 空洞として計算する平面範囲を明確にする
最初に確認したいのは、体積計算の対象となる平面範囲です。踏掛版全体の下面に空洞が生じているとは限らないため、踏掛版の幅と長さをそのまま掛けて計算すると過大になる可能性があります。
空洞範囲を整理するときは、橋台側の境界、道路側の境界、左右方向の境界を平面上で把握します。調査孔から確認した結果、打音やその他の調査結果、既存資料、施工履歴など複数の情報がある場合は、それぞれが示している範囲を同じ平面図上に整理すると判断しやすくなります。
ここで重要なのは、「空洞が存在する可能性がある範囲」と「体積計算に採用する範囲」を混同しないことです。調査によって空洞の可能性が示された範囲が広くても、実際に空洞厚を確認できている測点が限られている場合があります。その状態で境界を確定したものとして計算すると、数量の根拠が不明確になります。
空洞範囲の端部では、空洞厚が徐々に小さくなってゼロに近づくことも考えられます。このような場所を長方形の空洞として扱うと、端部を過大に拾う可能性があります。逆に、測点の外側にも空洞が続いているにもかかわらず、確認できた測点だけを囲んで計算すれば過小になる可能性があります。
現場で体積計算する際は、平面範囲を決めた根拠を図面や記録に残すことが大切です。「踏掛版全面」とするのか、「調査で確認した範囲」とするのか、「施工対象として指定された範囲」とするのかによって数量は変わります。
補修設計や施工計画で範囲が指定されている場合は、その条件を優先して整理します。現地判断だけで対象範囲を広げたり狭めたりすると、設計数量と施工数量を比較できなくなるため、変更が必要な場合には変更した範囲と理由を記録しておくことが重要です。
視点2 空洞厚を一律にせず測点ごとに把握する
空洞充填材量の体積計算で最も数量に影響しやすいのが空洞厚です。例えば、同じ60平方メートルの範囲でも、平均空洞厚が0.02メートルなら体積は1.2立方メートルですが、0.05メートルなら3.0立方メートルになります。数センチの差でも、対象面積が広くなれば体積差は大きくなります。
そのため、空洞厚を一つの代表値だけで決めるのではなく、可能な範囲で複数の測点から確認することが重要です。調査孔などから空洞厚を直接確認できる場合は、各測点の位置と測定値を対応させます。
測点を配置するときは、橋台から道路方向へどのように空洞厚が変化しているのか、道路横断方向に偏りがないかを確認できる配置が望まれます。中央部だけを測定して、その値を全面に適用すると、左右端部や橋台付近の形状変化を捉えられません。
また、空洞厚として何を測っているのかを統一する必要があります。踏掛版下面から最初に接触する地盤面までなのか、軟弱化した部分を含めて補修対象となる深さまでなのかによって、同じ場所でも計算上の厚さは変わります。
空洞内部に崩れた土砂や緩んだ材料が存在する場合も注意が必要です。見た目上は空間が小さくても、補修計画によってはその部分の扱いが別途検討される場合があります。単純に「空気がある高さ」だけを空洞厚とするとは限らないため、施工対象となる範囲を確認してから体積計算へ反映します。
地中レーダなどの非破壊調査を利用する場合も、その結果だけから空洞厚を直接確定できるとは限りません。調査方法ごとに得られる情報や精度が異なるため、必要に応じて直接確認した測点などと組み合わせ、体積計算に採用する厚さの根拠を明確にします。
視点3 踏掛版下面と空洞底面の形状変化を分けて読む
空洞体積は、上側の踏掛版下面と下側の空洞底面との間にある空間です。そのため、空洞厚だけでなく、上面と下面がそれぞれどのような形状になっているのかを意識すると計算しやすくなります。
踏掛版下面は構造物の形状によって比較的整理しやすい一方、空洞底面となる地盤側は不規則になっている可能性があります。沈下が一様に発生しているとは限らず、局所的なくぼみや盛り上がりが残ることもあります。
例えば、橋台から道路側へ向かって空洞厚が0.01メートル、0.03メートル、0.06メートルと増加した後、再び小さくなるような形状であれば、一つの平均厚で全面を計算するより、形状変化に合わせて区間を分けた方が実態を表しやすくなります。
横断方向についても同様です。中央部だけが深い場合や、片側だけ沈下が大きい場合は、道路幅全体を同じ断面として扱うことはできません。縦断方向と横断方向の両方で空洞厚の変化を見る必要があります。
現場での体積計算では、複雑な曲面を完全に再現しなければ計算できないわけではありません。実務上は、形状変化が大きい位置で区画を分割し、それぞれを直方体、台形柱、平均断面など比較的単純な形状へ置き換えて計算する方法が使いやすくなります。
大切なのは、単純化した形状が現場の状態を大きく外していないか確認することです。区画を細かくすれば必ず正確になるわけではなく、測定値が少ないのに細かな区画だけを設定しても、推定値が増えるだけになります。測点数と形状の複雑さのバランスを取りながら分割します。
視点4 計算体積と実際の充填材使用量を区別する
現場で算出した空洞体積は、充填対象となる空間を幾何学的に表した数量です。一方、施工時に実際に必要となる材料量は、この幾何学的体積と一致しない場合があります。
例えば、充填材が地盤側の小さな隙間へ入り込むことがあります。計算上の空洞境界より先へ材料が流れる場合もあります。逆に、内部に土砂や既存材料が残っていて、計算した空間のすべてを充填材が占めない場合も考えられます。
このため、「推定空洞体積」と「材料手配量」と「実使用量」を分けて記録することが重要です。推定空洞体積は現場測定から算出した幾何学的な数量です。材料手配量は施工計画上必要と判断した数量であり、実使用量は施工終了時に実際に使用した数量です。
この三つを一つの数字として扱うと、施工後に数量差が生じた理由を追跡できません。例えば、推定空洞体積が3立方メートルで、実使用量が4立方メートルだったとしても、その1立方メートルの差が漏出によるものなのか、調査範囲外の空洞へ流入したものなのか、空洞厚の推定誤差なのかを記録がなければ判断できません。
必要量に余裕を持たせる場合でも、一律の割合をどの現場にも適用するのではなく、使用する材料の性状、空洞形状、施工方法、過去の施工実績、試験施工などを踏まえて設定することが望まれます。
特に流動性の高い材料を用いる場合は、想定範囲を越えて流れる可能性も考慮します。必要な流動性や施工方法は補修設計や材料仕様によって異なるため、体積計算だけで施工条件まで決めないことが大切です。
視点5 施工中の注入実績から計算数量を検証する
踏掛版下の空洞は、施工前に内部全体を直接確認することが難しい場合があります。そのため、事前の体積計算だけで完結させず、施工中の充填実績を使って空洞形状の推定を検証することが重要です。
注入口ごとに使用量を記録しておけば、どの位置で多くの材料が入ったのかを確認できます。事前に空洞厚が大きいと推定していた位置で使用量も多ければ、調査結果と施工実績がおおむね整合している可能性があります。
一方、空洞厚が小さいと考えていた位置で大量の材料が入った場合は、調査点の間に大きな空洞が存在していた、材料が別の空間へ流れた、境界部から漏出したなど複数の可能性を検討する必要があります。
施工中には、注入量だけでなく、注入位置、施工順序、材料の状態、漏出の有無、周辺の変化などを併せて記録すると、数量差の原因を追いやすくなります。
また、踏掛版に過度な作用を与えないよう、注入方法や施工条件は設計・施工計画に従って管理する必要があります。大量の材料を入れることだけを目的にせず、予定した範囲が適切に充填されたかを確認しながら進めます。
施工終了後には、事前計算した空洞体積と実使用量を比較します。この比較結果は、その現場の出来形確認だけでなく、同様の構造物で数量を見積もる際の参考資料にもなります。単に「何立方メートル使った」という記録ではなく、どの範囲に、どのような空洞厚を想定し、実際にどの程度使用したのかまで残すことで、実績データとしての価値が高まります。
踏掛版下の空洞体積を求める基本的な考え方
体積計算の基本は、空洞の平面積と厚さを把握することです。形状が単純で空洞厚がほぼ一定であれば、基本式は「空洞体積=空洞平面積×空洞厚」となります。
長方形に近い空洞であれば、平面積は「長さ×幅」で求められます。そのため、「長さ×幅×平均空洞厚」で概算できます。
ただし、この方法が有効なのは、空洞厚の変化が小さく、一つの代表値で表しても大きな誤差にならない場合です。橋台踏掛版下では、沈下量が位置によって異なる可能性があるため、実際には複数の測点から厚さを確認した上で適用する必要があります。
空洞厚が変化している場合は、「各区画の平面積×各区画の代表空洞厚」を計算し、区画ごとの体積を合計する方法が扱いやすくなります。
体積計算に使用する単位も統一します。長さをメートルで入力し、面積を平方メートル、体積を立方メートルとして整理すれば計算ミスを減らせます。空洞厚をミリメートルやセンチメートルで測定した場合、そのまま掛けず、メートルへ換算してから計算します。
例えば50ミリメートルは0.05メートルです。平面積が40平方メートルなら、40×0.05=2.0立方メートルとなります。単位換算を間違えると数量が大きく変わるため、計算表や現場記録では単位を明記しておくことが重要です。
空洞厚がほぼ一定なら面積と平均厚で計算する
空洞範囲の形状が比較的単純で、複数の測点における空洞厚の差が小さい場合は、平均空洞厚を使う方法が分かりやすくなります。
例えば、5か所で測定した空洞厚が0.035メートル、0.040メートル、0.045メートル、0.040メートル、0.040メートルだった場合、単純平均は0.040メートルです。対象面積が30平方メートルであれば、概算体積は30×0.040=1.20立方メートルとなります。
ただし、測点の配置が偏っている場合には単純平均が空洞全体を適切に代表しないことがあります。例えば、空洞が深い中央部に測点が集中していれば、平均値を全面へ適用すると過大になる可能性があります。
平均厚を使用するときは、測点が対象範囲をある程度均等に代表しているかを確認します。橋台側、道路側、左右方向に測点を配置し、局所的な深い部分だけを平均値として採用しないようにします。
また、空洞範囲の端部で厚さがゼロに近づいている場合には、その部分を同じ平均厚で扱うことが適切か検討します。必要に応じて中央部と端部を別区画に分けるだけでも、単純な全面平均より現況に近い数量を算出できます。
平均厚による方法は計算が簡単ですが、簡単であることと正確であることは同じではありません。測定結果を確認したうえで、平均値で代表できる形状かどうか判断することが前提です。
空洞厚が変化する場合は区画を分けて体積計算する
空洞厚が位置によって大きく異なる場合は、対象範囲を複数の区画に分け、それぞれの体積を求めて合計します。
例えば、橋台から道路方向へ10メートル、道路横断方向へ6メートルの対象範囲があり、全体を4区画に分けたとします。それぞれの面積を15平方メートルとし、代表空洞厚が0.02メートル、0.04メートル、0.06メートル、0.03メートルだったと仮定します。
各区画の体積は、15×0.02=0.30立方メートル、15×0.04=0.60立方メートル、15×0.06=0.90立方メートル、15×0.03=0.45立方メートルとなります。
合計すると2.25立方メートルです。
同じ60平方メートルに単純平均厚0.0375メートルを掛けても結果は2.25立方メートルになりますが、区画ごとに計算しておくことで、どこにどれだけの空洞があると想定したのかが明確になります。
実際の現場では各区画の面積が同じとは限りません。空洞範囲の境界や測点位置に合わせて区画を設定し、それぞれの面積と代表厚を使って計算します。
区画分けは、施工計画との対応にも役立ちます。注入口の配置と計算区画を対応させておけば、施工前の推定体積と注入口ごとの実使用量を比較しやすくなります。
断面形状が分かる場合は平均断面積で確認する
橋台から道路方向への縦断的な空洞形状が把握できる場合は、断面積を用いて体積を求める方法もあります。
基本的には、隣接する二つの断面の面積をA1、A2、その間隔をLとした場合、「体積=(A1+A2)÷2×L」として平均断面積から区間体積を求めます。
例えば、橋台から一定間隔で横断方向の空洞断面を整理できれば、それぞれの断面積を求め、隣接断面の平均面積に距離を掛けて体積を積み上げることができます。
この方法は、道路横断方向にも空洞厚の変化がある場合に有効です。中央が深く左右端が浅い断面などは、単純な幅×平均厚より、断面そのものを台形や複数の区画に分けて面積計算した方が形状を表しやすくなります。
ただし、断面間で急激に形状が変化している場合、間隔が広すぎるとその変化を拾えません。反対に、測定根拠がないのに細かな断面を設定しても計算精度が高くなるわけではありません。
断面法を使う場合も、どの測定データから断面を作成したのかを残し、推定区間と実測区間を区別しておくことが重要です。
空洞の端部が不明瞭な場合に注意したいこと
踏掛版下の空洞では、空洞がある場所とない場所の境界が明確に確認できない場合があります。ここは数量計算で誤差が生じやすい部分です。
調査孔Aでは空洞が確認され、数メートル離れた調査孔Bでは確認されなかった場合、実際の空洞端部はその間のどこかに存在すると考えられます。しかし、二つの測点だけでは正確な位置まで決められません。
このとき、空洞が確認された測点までをそのまま境界にすると過小になる可能性があります。反対に、空洞がない測点まで全面を空洞として計算すると過大になる可能性があります。
必要に応じて追加測点を設け、境界位置を絞り込む方法があります。追加調査が難しい場合は、計算上どこに境界を設定したのか、その根拠と不確実性を記録しておきます。
特に左右端部や道路側端部では、空洞厚が徐々に小さくなる形状が想定されることがあります。このような場所では、端部を三角形や台形に近似して体積を求める方法も考えられます。
重要なのは、境界が不明なのに確定した数値として扱わないことです。現場で体積計算する目的は、見た目の細かな数字を作ることではなく、施工に必要な数量を合理的な根拠で把握することです。
排水施設や構造物がある部分は別に整理する
踏掛版周辺には、橋台本体だけでなく、排水に関係する施設やその他の構造物が配置されている場合があります。空洞充填材量を計算するときは、これらを単純な空洞の一部として扱わないよう注意します。
計算対象範囲の中に構造物が存在する場合、その構造物が占める体積は充填材が入る空間ではありません。一方、構造物周囲に隙間が存在している場合は、その部分が充填対象になることがあります。
また、排水経路の内部へ充填材が流入すると、本来の機能に影響する可能性があります。どこまでを充填するのか、どの施設を保護するのかは、補修設計や施工計画に基づいて確認する必要があります。
計算上は、空洞全体を一度大きな直方体として求めてから構造物体積を一律に差し引くより、実際に材料が入る範囲を区画ごとに整理した方が分かりやすい場合があります。
施工対象外とする部分がある場合は、平面図上で明示しておけば、数量計算と施工時の注入管理を対応させやすくなります。
充填材の種類によって必要量の考え方が変わる
空洞へ使用する材料は、補修方法や要求性能によって異なります。セメント系の充填材、流動性を持たせた材料、軽量な充填材など、採用される材料の性質によって施工時の挙動も変わります。
そのため、幾何学的な空洞体積だけを見て材料発注量まで機械的に決定するのは適切ではありません。
流動しやすい材料では細かな隙間へ入り込む可能性があります。材料によっては施工時と硬化後で状態が変化します。材料の配合方法や供給方法によって、現場で管理する数量の単位や確認方法が異なる場合もあります。
したがって、まず空洞体積を材料とは独立した「立方メートル単位の空間量」として算出します。そのうえで、使用する材料の仕様、施工方法、施工計画に基づいて必要量を整理します。
計算段階で材料特性による補正を加える場合は、その補正分を元の空洞体積と混在させないことが重要です。「推定空洞体積が何立方メートルで、それに対して施工計画上何立方メートルを準備するのか」を分けて示すと、後から数量の根拠を確認できます。
充填時の漏出や想定外の広がりを数量管理に反映する
事前に空洞範囲を調査していても、実際に材料を充填すると想定外の場所へ流れることがあります。
空洞端部が完全に閉じていない場合、隣接する空隙へ材料が広がる可能性があります。地盤側に粗い空隙がある場合も、計算した空洞底面より内部へ材料が入り込むことがあります。
施工中に想定以上の材料が必要になった場合、単純に追加して終わるのではなく、どの注入位置で数量差が発生したのかを記録します。
また、目視できる場所へ材料が漏出した場合は、その量や位置を記録することで実使用量との差を説明しやすくなります。
事前体積が3立方メートルで実使用量が4立方メートルだった場合、「計算が間違っていた」とすぐに判断するのではなく、空洞範囲の推定、空洞厚の測定、材料の広がり、漏出などを確認します。
逆に、事前計算よりかなり少ない量で充填が終了した場合には、空洞範囲や空洞厚を過大に設定していた可能性だけでなく、予定範囲まで材料が到達しているかという施工面の確認も必要です。
数量差そのものが異常なのではなく、その差を説明できる記録を残すことが重要です。
空洞の原因を確認せず数量だけ決めない
踏掛版下の空洞補修では、何立方メートル充填すればよいかだけに意識が向きやすいですが、空洞が発生した原因の確認も重要です。
橋台背面の沈下、裏込め部分の変形、水の影響による材料移動など、空洞形成には複数の要因が考えられます。現場ごとに条件が異なるため、空洞が確認されたからといって原因を一つに決めつけることはできません。
例えば、水が継続的に入り込んでいる状況で空洞だけを充填しても、原因となる水の経路が残れば別の部分に影響が現れる可能性があります。
また、踏掛版下に空洞があることと、路面に見られる変状がすべて同じ原因であることも同義ではありません。路面状態、橋台周辺の排水状況、既往補修、地盤条件なども確認しながら補修方針を整理する必要があります。
体積計算は施工数量を決める重要な作業ですが、原因調査の代わりにはなりません。数量計算の前提となる空洞範囲そのものが原因によって変化する可能性もあるため、調査結果と補修方針を確認した上で計算します。
現場で体積計算するときの簡単な計算例
実際の考え方を整理するため、仮想的な条件で計算してみます。
踏掛版下で調査した結果、空洞が確認された平面範囲を長さ8メートル、幅5メートルとします。単純な平面積は8×5=40平方メートルです。
複数の測点で空洞厚を確認したところ、橋台側の区画では平均0.02メートル、中央では0.05メートル、道路側では0.03メートルだったとします。
ここで全面へ一つの平均厚を掛けるのではなく、長さ方向を3区画に分けることにします。
橋台側の区画を長さ2メートル、幅5メートル、空洞厚0.02メートルとすると、体積は2×5×0.02=0.20立方メートルです。
中央区画を長さ3メートル、幅5メートル、空洞厚0.05メートルとすると、3×5×0.05=0.75立方メートルです。
道路側区画を長さ3メートル、幅5メートル、空洞厚0.03メートルとすると、3×5×0.03=0.45立方メートルです。
これらを合計すると、推定空洞体積は1.40立方メートルとなります。
ここで得られた1.40立方メートルは、あくまで設定した空洞形状から求めた幾何学的体積です。実際の材料手配量を1.40立方メートルとするかどうかは、使用材料や施工計画などを確認して別途判断します。
また、施工後に実使用量が例えば1.70立方メートルとなった場合は、0.30立方メートルの差について確認します。調査区画の外側まで材料が広がったのか、空洞底面が想定より深かったのか、細かな空隙へ材料が入ったのかなどを施工記録と照合します。
このように、計算値そのものよりも、「どの範囲を、どの厚さで、どのように分割して計算したか」が重要になります。
計測値と計算条件を残して再計算できる状態にする
現場で体積計算を行うときは、最終的な立方メートルの数字だけを記録するのではなく、その数字を再計算できる情報を残すことが大切です。
最低限、空洞範囲、測点位置、各測点の空洞厚、使用した区画、区画面積、代表厚、計算日、計算時点の施工対象範囲などが追えるようにします。
例えば、「空洞体積2.8立方メートル」という数字だけが残っていても、後から調査点が追加されたときに再計算できません。どの測点を使って2.8立方メートルとしたのかが分かれば、新しい測定値を加えて計算を更新できます。
また、施工途中で空洞範囲が想定より広いと分かった場合にも、元の区画を残したまま追加区画として整理できます。
現場条件は施工中に変わることがあります。だからこそ、数量表は一度作って終わりではなく、調査時、施工計画時、施工時、完了時の数字を比較できる形式にしておくことが有効です。
写真を残す場合も、撮影しただけでは位置関係が分かりにくくなることがあります。どの測点、どの注入口、どの区画に対応する写真なのかを識別できるようにします。
こうした管理を徹底すると、発注数量と実使用量の差について説明しやすくなり、追加施工が必要になった場合にも根拠を整理しやすくなります。
点群や位置情報を現場の数量管理に生かす
橋台踏掛版下の空洞は構造物内部にあるため、外部から取得した点群だけで空洞内部を直接計測できるわけではありません。この点を混同しないことが重要です。
一方で、空洞調査に関連する測点位置や橋台周辺の形状、路面の状態、調査孔や注入口の位置などを三次元的に記録することは、数量管理の効率化につながります。
例えば、橋台周辺を座標付きで記録し、空洞厚を確認した測点を位置情報と対応させれば、どの場所で何センチメートルの空洞が確認されたのかを平面図上で整理しやすくなります。
測点の位置が曖昧なまま厚さだけ記録すると、後から区画分けを変更した際に測定値を正しく割り当てられません。測点位置と測定値をセットで管理することで、区画ごとの平均厚や断面形状を再計算しやすくなります。
また、施工前後の路面や橋台周辺の状態を三次元データとして残しておけば、補修前後の状況を同じ位置関係で確認できます。ただし、路面の形状変化と踏掛版下の空洞量を直接同一視することはできないため、それぞれ別の測定結果として扱います。
LRTK Phoneのように現場で位置情報と三次元計測を扱える機器を活用する場合も、空洞を透過して直接測る用途ではなく、調査位置や周辺形状、施工位置を共通の座標で記録する用途として整理すると、体積計算の根拠を管理しやすくなります。
まとめ 橋台踏掛版下の空洞充填材量は形状と施工実績の両方で管理する
橋台踏掛版下の空洞充填材量を現場で体積計算するときは、踏掛版の平面寸法だけから数量を求めないことが重要です。
最初に空洞として扱う平面範囲を決め、複数の測点で空洞厚を確認します。厚さがほぼ一定なら平面積と平均厚から計算できますが、場所による差が大きい場合は区画を分け、それぞれの面積と代表厚から体積を求めます。断面形状が把握できる場合は、平均断面積を利用して数量を確認する方法もあります。
さらに、計算で得られる推定空洞体積と、実際に準備する材料量、施工で使用した材料量は別の数字として管理する必要があります。実使用量が計算体積を上回った場合も下回った場合も、その差だけで計算の正誤を判断せず、空洞範囲、材料の広がり、漏出、施工状況などを確認します。
踏掛版下の空洞は内部形状を直接把握しにくいため、一つの測定値だけで全面を代表させるほど数量の不確実性が大きくなります。測点を位置情報と対応させ、計算区画、代表厚、施工実績を一連の記録として残すことが、数量を外しにくくする基本です。
現場で体積計算を効率化するには、計算式そのものを複雑にするより、どこを測り、どの形状として計算し、どの数量を実績と比較したのかを明確にすることが大切です。橋台周辺の形状や調査位置、注入口などを三次元の位置情報とともに整理したい場合は、LRTK Phoneを活用した現場計測と数量管理も検討できます。